説明

ボイラ燃焼制御装置

【課題】ボイラの空燃比定値制御において、Oの変化に対するCOの排出特性に特有の特性がある場合、COの定値制御が不安定になる等の、制御上の制約やCO濃度制御上の問題点があった。
【解決手段】ボイラ1に供給する燃料流量および空気流量を制御する空気流量制御装置22及び燃料流量制御装置21を有し、空燃比設定値に基づいて空気量を制御するボイラ燃焼制御装置において、ボイラの排ガス内のO濃度に基づいて第1の調整信号を作成するO制御装置26と、ボイラの排ガス内のCO濃度の変化率に基づいて第2の調整信号を作成するCO変化率制御装置27を備え、ハイセレクタ28で第1の調整信号と第2の調整信号の内、優先度の高い調整信号を選択し、空燃比設定値にバイアス(偏倚)信号として与えることにより、省エネルギーで低公害な燃焼システムを構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火力発電所などのボイラに供給する燃料流量および空気流量を制御するボイラ燃焼制御装置に関するもので、特に負荷変動時において空気量を適切に制御して排ガス内のCO排出の抑制を行うようにしたボイラ燃焼制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のボイラの燃焼制御において、ボイラの負荷に対する燃料量、空気量の調整はあらかじめ保有している、空燃比(燃料と空気との比率)設定特性に応じた空気過剰率制御が行われている。この空気過剰率制御(空燃比制御)に、O(酸素)制御とCO(一酸化炭素)制御を付加する場合には、排ガス内のO濃度測定値とO濃度目標値との偏差を用いて変換係数として演算により空燃比設定値を補正する方式がとられ、さらに、排ガスのCO濃度を測定し、CO濃度目標値との差の変換係数を上記排ガスO濃度目標値に乗算して排ガスO濃度の最終目標値を得た後、実測されたO濃度との偏差により補正された空燃比制御によりボイラ空気量調整がなされている。(特許文献1および特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−117627号公報(図3、図4)
【特許文献2】特開平6−180116号公報(図3、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のボイラ燃焼制御装置においては、空燃比設定装置により、燃料量に応じた空気量を調整する空燃比設定システムが適用され、更にO制御とCO制御が付加されている。この場合の空燃比設定において、CO制御のコントローラ出力、O制御のコントローラ出力をカスケード信号にて加算して空燃比設定の変更を行う方式で構成されているので、排ガスのCO濃度制御を実施する場合もO濃度制御を併用して実施しておくことが必要であり、又Oの変化に対するCOの排出特性に特有の特性がある場合、COの定値制御が不安定になる等の、制御上の制約やCO濃度制御上の問題点があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、O濃度制御が先行して実施されていなくてもCO排出抑制制御が実施でき、またCO濃度制御の方法においても適切なCO制御により燃焼空気量を適切にすることができるボイラ燃焼制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るボイラ燃焼制御装置は、ボイラに供給する燃料流量および空気流量を制御するボイラ燃焼制御装置において、ボイラに供給される空気流量を検出する空気流量検出装置からの信号に基づいてボイラに供給する空気流量を制御する空気流量制御装置、ボイラに供給される燃料流量を検出する燃料流量検出装置からの信号に基づいてボイラに供給する燃料流量を制御する燃料流量制御装置、燃料流量検出装置で検出された燃料流量の計測値から、その燃料流量に応じて設定されている空燃比設定値を算出する空燃比設定装置、ボイラの排ガス内のO(酸素)濃度とO濃度目標値との偏差に基づいて第1の調整信号を作成するO制御装置、ボイラの排ガス内のCO(一酸化炭素)濃度の変化率とCO濃度変化率の上限目標値との偏差に基づいて第2の調整信号を作成するCO変化率制御装置、第1の調整信号と第2の調整信号の内、優先度の高い調整信号を選択するハイセ
レクタ、このハイセレクタで選択した調整信号を空燃比設定装置で算出した空燃比設定値にバイアス(偏倚)信号として与えて制御信号を作成し、その制御信号を空気流量制御装置の制御値とする第1の演算手段、ボイラの蒸気圧力を検出し、その検出された圧力とボイラ圧力目標値との偏差に基づいて制御信号を作成するボイラマスタ、このボイラマスタで作成された制御信号を燃料流量制御装置の制御値とする第2の演算手段を備えたものである。
【0007】
また、この発明に係るボイラ燃焼制御装置は、ボイラに供給する燃料流量を検出し、その検出された燃料流量を基に燃料流量を調整する燃料調整制御系と、ボイラに供給する空気流量を検出し、その検出された空気流量を基に空気流量を調整する空気量調整制御系とを有したボイラ燃焼制御装置において、ボイラの蒸気圧力を検出し、その検出された圧力信号によりボイラ燃焼制御信号を作成するボイラマスタを有し、ボイラマスタで作成したボイラ燃焼制御信号を燃料調整制御系と空気量調整制御系に与える第1の制御装置と、検出された燃料流量を基に、その燃料流量に応じて設定されている空燃比設定値を算出する空燃比設定装置を有し、空燃比設定装置で算出された空燃比設定値の制御信号を空気量調整制御系に与える第2の制御装置と、ボイラの排ガス内のO(酸素)濃度とO濃度目標値との偏差に基づいて第1の調整信号を作成するO制御装置を有し、O制御装置からの第1の調整信号により空燃比設定装置で算出した空燃比設定値にバイアス(偏倚)を与える第3の制御装置と、ボイラの排ガス内のCO(一酸化炭素)濃度の変化率とCO濃度の変化率の上限目標値との偏差に基づいて第2の調整信号を作成するCO変化率制御装置を有し、CO変化率制御装置からの第2の調整信号により空燃比設定装置で算出した空燃比設定値にバイアス(偏倚)を与える第4の制御装置とを備え、第3の制御装置からの第1の調整信号と、第4の制御装置からの第2の調整信号の内、優先度の高い調整信号をハイセレクタを用いて選択し、ハイセレクタで選択した調整信号により空燃比設定装置で算出した空燃比設定値にバイアス(偏倚)を与えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明のボイラ燃焼制御装置は、CO(一酸化炭素)濃度制御を行う場合、O濃度制御と併用して、あるいは単独で、空燃比制御が達成できるようになり、必要量以上の燃焼空気量の供給を抑制することや、ボイラが不完全燃焼となりCOが発生しているような燃焼状態が発生しない限界の空燃比制御できるようになるので、精度高く燃焼空気ファンの動力と排ガスの熱ロスを削減することができ、また良好なボイラ燃焼によるCOの排出抑制を達成することができる。
またCO濃度が異常に増加した場合も、その濃度の変化率を検出し空燃比制御の信号へバイアスを与える制御をすることで、排ガス内のCO排出抑制制御を取り入れることにより燃焼空気量を適切にしているので、省エネルギー上からも、公害防止上からも有利なボイラ燃焼方法が取れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1を示す全体構成図である。
【図2】この発明の実施の形態2を示す全体構成図である。
【図3】この発明の実施の形態3を示す全体構成図である。
【図4】この発明の実施の形態4を示す全体構成図である。
【図5】燃料流量に応じた空燃比の特性を示す図である。
【図6】ボイラ負荷に応じた排ガス内のO濃度特性を示す図である。
【図7】O濃度の変化に対する排ガス中のCO濃度特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1におけるボイラ燃焼制御装置を図1に基づいて説明する
。図1において、ボイラ1の所定の壁部にバーナが設置され、このバーナに燃料供給路2および空気供給路3からそれぞれ燃料および空気を供給し、ここで燃料と空気が混合されて燃焼することにより、ボイラ1内の被加熱対象、例えば水を加熱して配管4から蒸気を出力し、図示しない次工程に送られる。またボイラ1で燃焼した排ガスは排気管5を通じて集塵機6を経由して煙突7から排出される。
【0011】
燃料供給路2にはボイラ1に供給する燃料量を調整する調整弁などの燃料流量調整手段8とボイラ1に供給される燃料流量を検出する燃料流量検出装置9が設けられ、また空気供給路3にはボイラ1に供給する空気量を調整する可変速送風機とVVVFなどの空気流量調整手段10とボイラ1に供給される空気流量を検出する空気流量検出装置11が設けられている。さらに、配管4には蒸気圧力を検出する蒸気圧力検出装置12とボイラ1の負荷を検出するボイラ負荷検出装置13が設けられ、また排気管5にはCO(一酸化炭素)の濃度を検出するCO濃度検出装置14とO(酸素)の濃度を検出するO濃度検出装置15が設けられている。
【0012】
ボイラ制御装置20は、燃料流量検出装置9で検出した燃料流量に基づいて燃料流量調整手段8により燃料流量を調整する燃料流量制御装置21からなる燃料調整制御系と、空気流量検出装置11で検出した空気流量に基づいて空気流量調整手段10により空気流量を調整する空気流量制御装置22からなる空気量調整制御系とを有している。
またボイラ制御装置20は、蒸気圧力検出装置12で検出したボイラ1の蒸気圧力とボイラ圧力目標値との偏差に基づいてボイラ燃焼制御信号を作成するボイラマスタ23を有し、ボイラマスタ23で作成したボイラ燃焼制御信号を、燃料調整制御系と空気量調整制御系に与える第1の制御装置を備えている。即ち、ボイラマスタ23で作成したボイラ燃焼制御信号は、燃料流量制御装置21および空気流量制御装置22の流量制御値へ演算手段としての乗算器24a、24bを経由してバイアス信号の制御値として与えられる。
【0013】
またボイラ制御装置20は、燃料流量検出装置9で検出された燃料流量を基づいて、その燃料流量に応じて設定されている図5に示す空燃比設定値を算出する空燃比設定装置25を有し、この空燃比設定装置25で算出された空燃比設定値の制御信号を空気量調整制御系に与える第2の制御装置を備えている。
【0014】
さらにボイラ制御装置20は、ボイラ1から排出される排ガスのO(酸素)制御とCO(一酸化炭素)制御を行うための制御装置も付加されている。
即ち、O濃度検出装置15で検出された排ガス内のO(酸素)濃度計測値と、ボイラ負荷検出装置13で検出されたボイラ負荷に応じて設定されているO濃度目標値との偏差に基づいて第1の調整信号を作成するO制御装置26を有し、このO制御装置26からの第1の調整信号により空燃比設定装置25で算出した空燃比設定値にバイアス(偏倚)を与えて、空燃比設定値を補正する第3の制御装置を備えている。
【0015】
また、CO濃度検出装置14で検出された排ガス内のCO(一酸化炭素)濃度の変化率と、CO濃度の変化率の上限目標値との偏差に基づいて第2の調整信号を作成するCO変化率制御装置27を有し、このCO変化率制御装置27からの第2の調整信号により空燃比設定装置25で算出した空燃比設定値にバイアス(偏倚)を与えて、空燃比設定値を補正する第4の制御装置を備えている。
CO濃度の変化率の検出方法は、短時間の計測スキャン時間ΔT(通常1秒前後)の間で計測されたCO濃度の前回値COoldと今回値COnewとの差の計測時間内での変化量であり、変化率の許容限度値ΔCO(通常100ppm)以上となった時に検出をおこなう。その関係式は次の通りとなる。
(COnew−COold)/ΔT>ΔCO
【0016】
ハイセレクタ28はO制御装置26から出力される第1の調整信号の制御値と、CO変化率制御装置27から出力される第2の調整信号の制御値を比較し、第1の調整信号と第2の調整信号の内、優先度の高い(例えば制御値の大きい方)調整信号を選択する。そしてハイセレクタ28で選択された調整信号は、空燃比設定装置25からの空燃比設定値にバイアス(偏倚)する制御値として演算手段の乗算器24cに与えらる。乗算器24cは、空燃比設定値にハイセレクタ28で選択された調整信号をバイアス(偏倚)し、そのバイアスされた制御信号を空気流量制御装置22の目標制御値としている。
ハイセレクタ28の具体的な構成としては、各種変換器からの電圧信号を2点入力し、2つの入力信号のうち高い方を選択して電流信号または電圧信号を出力する変換器などが用いられる。
【0017】
ハイセレクタ28は、CO変化率制御装置27が負荷変動時のCO濃度の変化率を検出し、あらかじめ設定している変化率の許容限度値ΔCO以上になった場合、O制御装置26の第1の調整信号の出力値からCOの変化率が実質零になるまでCO変化率制御装置27からの第2の調整信号の出力値を優先して出力する。ここでCOの変化率が実質零とは30ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。
【0018】
次にこの発明の実施の形態1の動作について説明する。
ボイラ1のバーナ燃焼において、燃料と空気を混合して燃焼しているが、この燃料と空気の比率(空燃比)を、理論空気量を基準として空気過剰率である図5に示す空燃比をあらかじめ設定しておき、この空燃比を使用して燃焼している燃料に応じて供給する空気量を設定している。
即ち、燃料流量検出装置9で検出した燃料流量に基づき空燃比設定装置25で空燃比設定値を算出し、空気流量制御装置22は、この空燃比設定値を目標値として空気流量が最適になるよう、空気流量検出装置11で検出された空気流量に基づき空気流量調整装置10を制御する。その場合、空燃比設定値は、ボイラマスタ23で作成されたボイラ燃焼制御信号により乗算手段24bでバイアスされ、ボイラ1の蒸気圧力に応じて修正されている。
【0019】
一方、ボイラマスタ23で作成されたボイラ燃焼制御信号は乗算手段24aでバイアスされて燃料流量制御装置21の制御値が作成され、燃料流量制御装置21は燃料流量が最適になるよう、上記制御値から燃料流量検出装置9で検出された燃料流量に基づき燃料流量調整装置8を制御し、燃料流量を調整する。
【0020】
一般にボイラの燃焼において、燃料流量が定格値近傍、つまり燃料流量が大きいときは空燃比は小さくてよいが、燃料流量が小さい低負荷域では燃料と空気との混合性が良くなく、空気量を多く供給する必要があり、低負荷域での空燃比の設定は図5に示すように大きくしないと発煙してしまう。すなわち、空燃比は燃料流量に対して一定ではなく、燃料流量の低下に伴って上昇するという非線形特性を有している。
【0021】
しかしながら、図5に示す空燃比の設定により空気量の供給を継続すると、ボイラの燃焼特性の変化で燃焼空気の供給が必要以上に過剰供給状態となり不経済な運用となる場合や、空気供給不足となり不完全燃焼で黒煙を起こし公害面で問題となる場合がある。
そこで、過剰空気が適切に供給されていることを確認するために、排ガス内のO(酸素)濃度をO濃度検出装置15で検出すると共にボイラ負荷検出装置13でボイラ負荷を検出し、O制御装置26で図6に示すボイラの負荷(蒸気量)と排ガスのO濃度との特性になるように、空燃比設定装置25で設定した空燃比設定値に、図1の乗算器24cを使用してO補正のバイアスを与え、排ガスのO制御として供給空気量の補正を行っている。
【0022】
この方法で使用する排ガスO濃度制御のみでは、O濃度を計測する排ガス内に外部空気が混入した場合には燃焼状態を正確には見出せないことが有る。そこで、排ガス中に残存する可燃成分のCO濃度を検出し、排ガス内のCO濃度がCO濃度目標値になるように、排ガスO濃度調節の設定値をCO濃度検出値に応じて修正して制御するCO制御装置を設けることが従来行われていた。
【0023】
この場合、O濃度の変化に対するCO濃度値のCO排出特性を100%の負荷と25%の負荷を例として図7に示すが、O濃度が低下し空気過剰率が低下してくると、不完全燃焼が発生しCO濃度値が急激に増加する急峻な特性と、O濃度が増加した場合にはCO濃度値の低下は緩慢な特性を保有する場合がある。
図7に示すCOの特性があるボイラにCOの定値濃度制御を摘要した場合、その制御が不安定となり、高濃度のCOが排出される場合や、必要以上の燃焼空気が供給されることになり、環境保全上からも好ましくなく、省エネルギー上からも不経済である。
【0024】
そこでこの発明においては、CO制御装置に代えてCO変化率制御装置27を設け、さらにハイセレクタ28を用いて、O制御装置26からの第1の調整信号の制御値とCO変化率制御装置27からの第2の調整信号の制御値を比較し、優先度の高い調整信号を選択する。ハイセレクタ28で選択された調整信号は、乗算器24cにて空燃比設定装置25からの空燃比設定値にバイアス値として与えて、空燃比設定値を補正するようにしたものである。
【0025】
即ち、ハイセレクタ28は、通常動作時はO制御装置26からの第1の調整信号を選択し、図6に示すボイラの負荷(蒸気量)と排ガスのO濃度との特性になるように、空燃比設定装置25からの空燃比設定値に乗算器24cを使用してO補正のバイアスを与え、排ガスのO制御として供給空気量の補正を行っている。
しかし、CO変化率制御装置27が負荷変動時のCO濃度の変化率を検出し、あらかじめ設定している変化率の許容限度値ΔCO以上になった場合、ハイセレクタ28は、O制御装置26の第1の調整信号からCO変化率抑制制御装置27からの第2の調整信号に優先して切り替え、COの変化率が実質ゼロになり、COが未検出になるまでその状態を継続する。
【0026】
このように実施の形態1の発明は、負荷変動時等にCOが急激に増加した場合に、ハイセレクタ28を使用して、O制御の信号からCO変化率抑制制御の信号に優先選択して調整信号を切り替え、この調整信号を空燃比制御の信号にバイアスを与えることにより、不完全燃焼が防止でき、公害防止上からも有利なボイラ燃焼方法が取れる。このハイセレクタ方式を使用することにより、O濃度制御が先行して実施されていない場合も高濃度のCOの排出抑制が可能である。
【0027】
実施の形態2.
次にこの発明の実施の形態2におけるボイラ燃焼制御装置を図2に基づいて説明する。図2において、図1に示す実施の形態1におけるボイラ燃焼制御装置に加えて、ボイラ制御装置20内にCO未検出制御装置29を装備し、CO未検出制御装置29の出力をハイセレクタ28に調整信号の制御値として入力するようにしたものである。その他の構成は図1と同じに付き、同じ符号を付して説明を省略する。
【0028】
CO未検出制御装置29は、CO濃度検出装置14で検出された排ガス内のCO濃度値とCO濃度値の上限管理値との偏差に基づいて第3の調整信号を作成する。即ち、CO未検出制御装置29は、CO濃度値の上限管理値を例えば30ppm、さらに好ましくは10ppm以下とし、CO濃度が実質未検出になるまで調整信号を出力する。
ハイセレクタ28は、O制御装置26からの第1の調整信号である制御値と、CO変
化率制御装置27からの第2の調整信号である制御値と、CO未検出制御装置29からの第3の調整信号である制御値との3個の調整信号を比較し、優先度の高い(絶対値の大きい)調整信号を取り出し、乗算器24cはハイセレクタ28で取り出した調整信号の大きさに応じて空燃比設定装置25からの空燃比設定値にバイアス(偏倚)を与え、空燃比設定値を補正している。
【0029】
実施の形態1の発明においては、O制御装置26からの偏差の第1の調整信号と、CO変化率制御装置27からの第2の調整信号をハイセレクタ28で選択した調整信号を作成しているが、この第2の調整信号はCOの変化率で信号を作成しているために、COの排出が高濃度の排出状態で整定する場合がある。そこで実施の形態2の発明においては、ハイセレクタ28は、各偏差に基づいた3個の調整信号の絶対値を比較し、優先度の高い調整信号を取り出しているので、CO未検出制御装置29の第3の調整信号が零になるように、O制御装置26の管理目標値の設定変更を行い、両制御装置の偏差が零になるように制御する。
【0030】
この実施の形態2の発明は、負荷安定時にCO濃度の管理上限値を超えたCO濃度が計測された場合に、O制御装置26の調整信号からCO未検出制御装置29の調整信号へ優先選択して調整信号を切り替え、CO濃度が実質未検出になるまでCO未検出制御装置29からの出力を優先してハイセレクタ28へ出力するので、通常の燃焼状態における低濃度のCOの連続排出も削減することができる。
【0031】
一方、CO濃度の管理上限値を下回ったCO濃度が計測された場合は、CO未検出制御装置29の第3の調整信号の絶対値でも比較しているので、この第3の調整信号が選択されることとなり、通常の燃焼状態において、低濃度のCOの連続排出により、不必要な燃焼空気量を減少することができ、燃焼空気ファンの動力と排ガスの熱ロスを削減ができる。この方式を採用することによりO濃度制御が先行して実施されていない場合も高濃度のCOの排出抑制が可能である。
【0032】
実施の形態3.
次にこの発明の実施の形態3におけるボイラ燃焼制御装置を図3に基づいて説明する。図3において、図2に示す実施の形態2におけるボイラ燃焼制御装置に加えて、ボイラ制御装置20内にCO排出特性データベース30を装備している。その他の構成は図1および図2と同じに付き、同じ符号を付して説明を省略する。
【0033】
ボイラ1の燃料燃焼特性において、空燃比を増加させてO濃度を計測した場合、排ガス内のO濃度とCO濃度の特性にはCOが未検出に至る燃焼特性と、COの排出が少量ではあるが生成継続するボイラ固有のCO排出特性がある。図7に示す曲線C2のCO排出特性がCO未検出の排出特性であり、図7に示す曲線C1のCO排出特性がO濃度が
増加しても少量のCOは生成継続する排出特性である。
【0034】
CO排出特性データベース30は、このような数種のボイラのCO排出特性を保有している。このCO排出特性データベース30から当該ボイラ1の排出特性に合わせて、CO未検出制御装置29のCO濃度の上限管理値として、図7に示すCO最低値検出のCOminか、CO検出が零のCOzeroの選択を行い、CO未検出制御装置29の管理目標値COsvとして設定を行う。
【0035】
CO未検出制御装置29の制御の方法は、計測されたCO濃度値COnewがCO濃度の
管理目標値COsvを超える場合に、CO濃度が実質未検出の管理目標値COsvとなるようにハイセレクタ28に制御値を出力する。
CO濃度の管理目標値は国の排出基準値(300ppm)未満の通常30ppm程度と
する場合が好ましい。
【0036】
この実施の形態3の発明は数種のボイラのCO排出特性を保有しているCO排出特性データベース30から、当該ボイラの排出特性に合わせてCO濃度の上限管理値としてCO未検出制御装置29の管理目標値COsvの設定を行うので、適正なCO排出の管理目標値が設定され、通常の燃焼状態における低濃度のCOの連続排出も削減することができる。
【0037】
実施の形態4.
次にこの発明の実施の形態4におけるボイラ燃焼制御装置を図4に基づいて説明する。図4において、図3に示す実施の形態3におけるボイラ燃焼制御装置に加えて、ボイラ制御装置20内にCO変化率警報装置31を装備している。その他の構成は図1乃至図3と同じに付き、同じ符号を付して説明を省略する。
CO変化率警報装置31は、CO変化率制御装置27がCOの変化率を算出し、CO濃度の変化率の上限管理値との偏差が設定された値以上となった場合に、発電所などの管理員へブザーやランプなどで警報発令等を伝達する。
【0038】
この実施の形態4の発明はCO変化率制御装置27にてCOの変化率を算出し、CO濃度の変化率の上限管理値との偏差が設定された値以上となった場合に、CO変化率警報装置31により発電所などの管理員へ警報発令等を伝達するので、CO濃度が異常に増加しているボイラの異常燃焼の状態を早期に発電所などの管理員が把握でき、ボイラの良好な燃焼状態への移行措置を取ることが可能となるので、ボイラの良好な運転状態の継続と、公害面での黒煙の発生を早期に防止することができる。
【0039】
なお実施の形態4の発明は、実施の形態3におけるCO未検出制御装置29およびCO排出特性データベース30を有するボイラ燃焼制御装置にCO変化率警報装置31を装備したものについて説明したが、CO未検出制御装置29が装備されていない実施の形態1の発明およびCO排出特性データベース30が装備されていない実施の形態2の発明にCO変化率警報装置31を装備したものにも適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1:ボイラ 2:燃料供給路
3:空気供給路 4:配管
5:排気管 6:集塵機
7:煙突 8:燃料流量調整手段(調整弁)
9:燃料流量検出装置 10:空気流量調整手段
11:空気流量検出装置 12:蒸気圧力検出装置
13:ボイラ負荷検出装置 14:CO濃度検出装置
15:O濃度検出装置
20:ボイラ制御装置 21:燃料流量制御装置
22:空気流量制御装置 23:ボイラマスタ
24a、24b、24c:演算手段(乗算器)
25:空燃比設定装置 26:O制御装置
27:CO変化率制御装置 28:ハイセレクタ
29:CO未検出制御装置 30:CO排出特性データベース
31:CO変化率警報装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラに供給する燃料流量および空気流量を制御するボイラ燃焼制御装置において、前記ボイラに供給される空気流量を検出する空気流量検出装置からの信号に基づいて前記ボイラに供給する空気流量を制御する空気流量制御装置、前記ボイラに供給される燃料流量を検出する燃料流量検出装置からの信号に基づいて前記ボイラに供給する燃料流量を制御する燃料流量制御装置、前記燃料流量検出装置で検出された燃料流量の計測値から、その燃料流量に応じて設定されている空燃比設定値を算出する空燃比設定装置、前記ボイラの排ガス内のO(酸素)濃度とO濃度目標値との偏差に基づいて第1の調整信号を作成するO制御装置、前記ボイラの排ガス内のCO(一酸化炭素)濃度の変化率と、CO濃度変化率の上限目標値との偏差に基づいて第2の調整信号を作成するCO変化率制御装置、前記第1の調整信号と第2の調整信号の内、優先度の高い調整信号を選択するハイセレクタ、このハイセレクタで選択した調整信号を前記空燃比設定装置で算出した空燃比設定値にバイアス(偏倚)信号として与えて制御信号を作成し、その制御信号を前記空気流量制御装置の制御値とする第1の演算手段、前記ボイラの蒸気圧力を検出し、その検出された圧力とボイラ圧力目標値との偏差に基づいて制御信号を作成するボイラマスタ、このボイラマスタで作成された制御信号を前記燃料流量制御装置の制御値とする第2の演算手段を備えたボイラ燃焼制御装置。
【請求項2】
ボイラマスタで作成された制御信号を、第1の演算手段が作成した制御信号に乗算して空気流量制御装置の制御値とするようにした請求項1に記載のボイラ燃焼制御装置。
【請求項3】
ボイラの排ガス内のCO(一酸化炭素)濃度値と、CO濃度値の上限管理値との偏差に基づいて第3の調整信号を作成するCO未検出制御装置を備え、ハイセレクタはO制御装置からの第1の調整信号と、CO変化率制御装置からの第2の調整信号と、前記CO未検出制御装置からの第3の調整信号の3個の信号を比較し、その絶対値の大きい信号を選択し、前記ハイセレクタで選択した調整信号を空燃比設定装置で算出した空燃比設定値にバイアス(偏倚)信号として与えるようにした請求項1または請求項2に記載のボイラ燃焼制御装置。
【請求項4】
数種のボイラのCO排出特性を有したデータベースを備え、適合するCO排出特性に合わせて前記データベースからCO未検出制御装置のCO濃度値の上限管理値を選択し、この管理値として検出零のCOzeroと最低値検出のCOminのいずれかの信号が選択できるようにした請求項3に記載のボイラ燃焼制御装置。
【請求項5】
CO変化率制御装置が検出した、排ガス内のCO(一酸化炭素)濃度の変化率とCO濃度変化率の上限目標値との偏差が、所定の値を超えた場合に警報発令を出力する警報装置を備えた請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のボイラ燃焼制御装置。
【請求項6】
ボイラに供給する燃料流量を検出し、その検出された燃料流量を基に燃料流量を調整する燃料調整制御系と、ボイラに供給する空気流量を検出し、その検出された空気流量を基に空気流量を調整する空気量調整制御系とを有したボイラ燃焼制御装置において、
前記ボイラの蒸気圧力を検出し、その検出された圧力信号によりボイラ燃焼制御信号を作成するボイラマスタを有し、前記ボイラマスタで作成したボイラ燃焼制御信号を前記燃料調整制御系と前記空気量調整制御系に与える第1の制御装置と、
前記検出された燃料流量を基に、その燃料流量に応じて設定されている空燃比設定値を算出する空燃比設定装置を有し、前記空燃比設定装置で算出された空燃比設定値の制御信号を前記空気量調整制御系に与える第2の制御装置と、
前記ボイラの排ガス内のO(酸素)濃度とO濃度目標値との偏差に基づいて第1の調整信号を作成するO制御装置を有し、前記O制御装置からの第1の調整信号により
前記空燃比設定装置で算出した空燃比設定値にバイアス(偏倚)を与える第3の制御装置と、
前記ボイラの排ガス内のCO(一酸化炭素)濃度の変化率とCO濃度の変化率の上限目標値との偏差に基づいて第2の調整信号を作成するCO変化率制御装置を有し、前記CO変化率制御装置からの第2の調整信号により前記空燃比設定装置で算出した空燃比設定値にバイアス(偏倚)を与える第4の制御装置とを備え、
前記第3の制御装置からの第1の調整信号と、前記第4の制御装置からの第2の調整信号の内、優先度の高い調整信号をハイセレクタを用いて選択し、前記ハイセレクタで選択した調整信号により前記空燃比設定装置で算出した空燃比設定値にバイアス(偏倚)を与えるようにしたボイラ燃焼制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−99608(P2011−99608A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254149(P2009−254149)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】