説明

ボタン、装飾品およびそれらの製造方法

【課題】従来よりも少量のマイナスイオン発生粉末で充分な健康増進効果が得られるボタン、装飾品およびそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】硬化したポリエステル樹脂からなるシート材100を打ち抜き加工して、円柱型の基材11を得る。次に、基材11を切削することにより、基材11の裏面側にリング状の凹部12を形成する。次に、ポリエステル樹脂にマイナスイオン発生粉末が混入された第1の注型液15を凹部12に注型し、当該第1の注型液15を乾燥により凝固させる。次に、第2の注型液16としてのポリエステル樹脂を更に凹部12に注型し、当該第2の注型液16を乾燥により凝固させる。その後、基材11に面削・研磨・艶出し加工等を施すことによってボタンを完成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイナスイオンを発生させるボタン、装飾品およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康ブームのもと、健康増進効果を奏するマイナスイオンが着目されている。マイナスイオンによって得られる作用としては、例えば、血液浄化作用、細胞の賦活作用、抵抗力の増加作用、自律神経の調整作用、活性酸素の無毒化作用等が知られている。このようなマイナスイオンによる効果が容易に得られるよう、例えば、特開2003−250605号公報には、マイナスイオンパウダーを混入した合成樹脂材料から形成されたボタン(衣服用付属部品)の発明が開示され、特開2001−161414号公報には、エポキシ樹脂にマイナスイオン発生原石の粉末を混入した材料で形成された装飾品の発明が開示されている。なお、以下においては、「マイナスイオンパウダー」や「マイナスイオン発生原石の粉末」のようにマイナスイオンを発生させる成分(物質)からなる粉末のことを「マイナスイオン発生粉末」という。
【特許文献1】特開2003−250605号公報
【特許文献2】特開2001−161414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記従来技術によれば、ボタンや装飾品には比較的多量のマイナスイオン発生粉末が埋め込まれる。マイナスイオン発生粉末はボタンや装飾品を形成する樹脂(例えば、ポリエステル樹脂)と比較すると高価であるので、ボタン・装飾品全体のコストが高くなる。例えば、特開2003−250605号公報に開示された発明によると、図16に示すように、ボタン90はボタン本体91とマイナスイオン発生層92とによって構成されている。従って、マイナスイオン発生粉末はボタン本体91の裏面側全体に埋め込まれていることになり、高コストとなっている。また、特開2001−161414号公報に開示された発明によると、装飾品の製造の際、図17に示すような枠材97の空間部98内に、マイナスイオン発生粉末を混入したエポキシ樹脂が充填される。従って、マイナスイオン発生粉末は枠材97の内部全体に埋め込まれていることになり、高コストとなっている。
【0004】
そこで、本発明は、従来よりも少量のマイナスイオン発生粉末で充分な健康増進効果が得られるボタン、装飾品およびそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、ボタンの製造方法であって、
前記ボタンを形成する基材を切削することにより前記基材に凹部を形成する凹部形成工程と、
マイナスイオンを発生させるマイナスイオン発生粉末を前記基材に接着可能な樹脂に混入した液体を、第1の注型液として前記凹部に注型する第1の注型工程と、
前記第1の注型工程で前記凹部に注型された前記第1の注型液を乾燥させる第1の乾燥工程と、
前記第1の乾燥工程の後、前記樹脂を第2の注型液として前記凹部に更に注型する第2の注型工程と、
前記第2の注型工程で前記凹部に注型された前記第2の注型液を乾燥させる第2の乾燥工程と
を含むことを特徴とする。
【0006】
第2の発明は、第1の発明において、
前記凹部形成工程では、前記基材を構成する面のうちの1つの面の一部を切削することにより前記凹部が形成されることを特徴とする。
【0007】
第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記凹部形成工程では、前記凹部が平面リング状に形成されることを特徴とする。
【0008】
第4の発明は、第1から第3までのいずれかの発明において、
前記第1の注型液には、前記樹脂と前記マイナスイオン発生粉末とを接着させる硬化剤が含まれていることを特徴とする。
【0009】
第5の発明は、第1から第4までのいずれかの発明において、
前記マイナスイオン発生粉末には、チタン、ゲルマニウム、トルマリン、モナザイト、またはバイオセラミックのうちの少なくとも1つが含まれていることを特徴とする。
【0010】
第6の発明は、第1から第4までのいずれかの発明において、
前記マイナスイオン発生粉末には、チタン、ゲルマニウム、トルマリン、モナザイト、またはバイオセラミックのうちの少なくとも2つが含まれていることを特徴とする。
【0011】
第7の発明は、第1から第4までのいずれかの発明において、
前記マイナスイオン発生粉末には、チタン、ゲルマニウム、トルマリン、モナザイト、およびバイオセラミックが含まれていることを特徴とする。
【0012】
第8の発明は、装飾品の製造方法であって、
前記装飾品を形成する基材を切削することにより前記基材に凹部を形成する凹部形成工程と、
マイナスイオンを発生させるマイナスイオン発生粉末を前記基材に接着可能な樹脂に混入した液体を、第1の注型液として前記凹部に注型する第1の注型工程と、
前記第1の注型工程で前記凹部に注型された前記第1の注型液を乾燥させる第1の乾燥工程と、
前記第1の乾燥工程の後、前記樹脂を第2の注型液として前記凹部に更に注型する第2の注型工程と、
前記第2の注型工程で前記凹部に注型された前記第2の注型液を乾燥させる第2の乾燥工程と
を含むことを特徴とする。
【0013】
第9の発明は、基材と、
前記基材に設けられた凹部に埋設された凝固物であって、マイナスイオンを発生させるマイナスイオン発生粉末を前記基材に接着可能な樹脂に混入した液体の凝固物である第1の凝固物と
からなるボタンである。
【0014】
第10の発明は、第9の発明において、
前記凹部を形成する領域内において前記第1の凝固物が埋設されている領域よりも上方の領域に埋設された凝固物であって前記樹脂の凝固物である第2の凝固物を更に含むことを特徴とする。
【0015】
第11の発明は、第9または第10の発明において、
前記凹部は、前記基材を構成する面のうちの1つの面の一部に形成されていることを特徴とする。
【0016】
第12の発明は、第9から第11までのいずれかの発明において、
前記凹部は、平面リング状に形成されていることを特徴とする。
【0017】
第13の発明は、第9から第12までのいずれかの発明において、
前記第1の凝固物には、前記樹脂と前記マイナスイオン発生粉末とを接着させる硬化剤が含まれていることを特徴とする。
【0018】
第14の発明は、第9から第13までのいずれかの発明において、
前記マイナスイオン発生粉末には、チタン、ゲルマニウム、トルマリン、モナザイト、またはバイオセラミックのうちの少なくとも1つが含まれていることを特徴とする。
【0019】
第15の発明は、第9から第13までのいずれかの発明において、
前記マイナスイオン発生粉末には、チタン、ゲルマニウム、トルマリン、モナザイト、またはバイオセラミックのうちの少なくとも2つが含まれていることを特徴とする。
【0020】
第16の発明は、第9から第13までのいずれかの発明において、
前記マイナスイオン発生粉末には、チタン、ゲルマニウム、トルマリン、モナザイト、およびバイオセラミックが含まれていることを特徴とする。
【0021】
第17の発明は、基材と、
前記基材に設けられた凹部に埋設された凝固物であって、マイナスイオンを発生させるマイナスイオン発生粉末を前記基材に接着可能な樹脂に混入した液体の凝固物である第1の凝固物と
からなる装飾品である。
【発明の効果】
【0022】
上記第1の発明によれば、ボタンの作製の際、基材に凹部が形成され、当該基材に接着可能な樹脂にマイナスイオン発生粉末を混入した液体が上記凹部に注型される。このため、基材に設けられた凹部内のみにマイナスイオン発生粉末が埋め込まれたボタンが作製される。これにより、マイナスイオン発生粉末が埋め込まれたボタンが従来よりも安価に作製される。また、上記基材に接着可能な樹脂にマイナスイオン発生粉末を混入した液体が上記凹部に注型(第1の注型)された後、上記基材に接着可能な樹脂(マイナスイオン発生粉末を含まない樹脂)が更に凹部に注型(第2の注型)される。第2の注型により基材と樹脂(マイナスイオン発生粉末を含まない樹脂)とが確実に密着するので、マイナスイオン発生粉末が凹部から抜け出ることが抑止される。
【0023】
上記第2の発明によれば、ボタンを構成する面のうちの1つの面の一部のみにマイナスイオン発生粉末が埋め込まれる。これにより、従来よりも少量のマイナスイオン発生粉末が埋め込まれたボタンが作製される。
【0024】
上記第3の発明によれば、平面リング状に形成された凹部にマイナスイオン発生粉末が埋め込まれる。これにより、上記第2の発明と同様、従来よりも少量のマイナスイオン発生粉末が埋め込まれたボタンが作製される。
【0025】
上記第4の発明によれば、基材に接着可能な樹脂とマイナスイオン発生粉末とが固められるので、マイナスイオン発生粉末についての基材への密着性が高められる。
【0026】
上記第5の発明によれば、チタン、ゲルマニウム、トルマリン、モナザイト、またはバイオセラミックのうちの少なくとも1つを含むボタンが作製される。これにより、マイナスイオンの発生による健康増進効果が得られるボタンが提供される。
【0027】
上記第6の発明によれば、マイナスイオンを発生させる複数の成分を含むボタンが作製される。これにより、より高い健康増進効果が得られるボタンが提供される。
【0028】
上記第7の発明によれば、マイナスイオンを発生させる様々な成分を含むボタンが作製される。これにより、様々な健康増進効果が得られるボタンが提供される。
【0029】
上記第8の発明によれば、装飾品の作製の際、基材に凹部が形成され、当該基材に接着可能な樹脂にマイナスイオン発生粉末を混入した液体が上記凹部に注型される。このため、基材に設けられた凹部内のみにマイナスイオン発生粉末が埋め込まれた装飾品が作製される。これにより、マイナスイオン発生粉末が埋め込まれた装飾品が従来よりも安価に作製される。また、上記基材に接着可能な樹脂にマイナスイオン発生粉末を混入した液体が上記凹部に注型(第1の注型)された後、上記基材に接着可能な樹脂(マイナスイオン発生粉末を含まない樹脂)が更に凹部に注型(第2の注型)される。第2の注型により基材と樹脂(マイナスイオン発生粉末を含まない樹脂)とが確実に密着するので、マイナスイオン発生粉末が凹部から抜け出ることが抑止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、以下においては、ボタンが衣服等に取り付けられた状態において当該衣服等と接する面がある側を裏面側といい、それとは異なる面がある側(外部から視認される面がある側)を表面側という。
【0031】
<1.第1の実施形態>
<1.1 ボタンの構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る「ボタンの製造方法」によって作製されるボタン10を裏面側斜め上方から見た斜視図である。このボタン10を形成する基材11は、ポリエステル樹脂が硬化したものであって、例えば厚さ8ミリメートルの(ポリエステル樹脂が硬化した)シート材を例えば直径20ミリメートルのサイズで打ち抜き加工することによって得られたものである。図1に示すように、ボタン10の裏面側は略平面状に形成されており、糸通し穴181を有する凸状のボタン足18が裏面側の中央部に取り付けられている。また、ボタン10の裏面側においては、基材11にリング状の凹部12が形成されており、マイナスイオンを発生させるマイナスイオン発生粉末が、固められた状態で当該凹部12に埋め込まれている。また、図1に示すように、ボタン10の表面側全体はドーム状に形成されている。このような形状のボタンは「天丸ボタン」などと呼ばれているので、以下においてもこのボタン10のことを「天丸ボタン」という。
【0032】
<1.2 ボタンの製造方法>
図2から図5を参照しつつ、本実施形態に係る天丸ボタン10の製造方法について説明する。図2は、本実施形態における天丸ボタン10の製造方法の手順を示すフローチャートである。まず、図3(a)に示すような硬化したポリエステル樹脂からなるシート材100を、作製しようとする天丸ボタン10のサイズに応じて打ち抜き加工する(ステップS10)。これにより、図3(c)に示すような円柱型の基材11が得られる。その際、図3(b)に示すように、1枚のシート材100からは複数の基材11が得られる。
【0033】
次に、基材11を切削することにより、基材11の裏面側に図3(d)に示すようなリング状の凹部12を形成する(ステップS12)。図4は、図3(d)のA−A線断面図である。ステップS12で基材11の裏面側にリング状の凹部12が形成されることによって、図4に示すように、凹部12の外周面と基材11の外周面とを側面とする凸部(以下、「外側凸部」という。)13が裏面側の周縁部に形成され、凹部12の内周面を側面とする凸部(以下、「内側凸部」という。)14が裏面側の中央部に形成される。なお、裏面側の上方から見た平面図は図5に示すようなものとなる。
【0034】
次に、ポリエステル樹脂に後述するマイナスイオン発生粉末が混入された第1の注型液15としての液体を、図3(e)に示すように、基材11の裏面側に形成された凹部12に注型する(ステップS14)。ここで、本実施形態における第1の注型液15の成分について詳しく説明する。本実施形態においては、第1の注型液15の90%はポリエステル樹脂であって、残りの10%はマイナスイオンを発生させる成分およびそれらの成分(物質)を作製中の天丸ボタン10に埋め込むために必要な成分(以下、これらの成分をまとめて「マイナス成分」という。)である。マイナス成分の内訳は、チタン(Ti):8%,ゲルマニウム(Ge):10%,トルマリン:30%,モナザイト(鉱石):30%,バイオセラミック:12%,エポキシ樹脂:10%となっている。これらの成分のうちチタン,ゲルマニウム,トルマリン,モナザイト(鉱石),およびバイオセラミックによってマイナスイオン発生粉末が構成されている。また、エポキシ樹脂は、強い接着力を有しており、マイナスイオン発生粉末を構成する各成分とポリエステル樹脂とを固めるための硬化剤として機能する。なお、第1の注型液15の構成・構成比やマイナス成分の構成・構成比については上述のものには限定されない。
【0035】
次に、第1の注型液15を乾燥によって凝固させる(ステップS16)。第1の注型液15の凝固後、第2の注型液16としてのポリエステル樹脂を更に凹部12に注型する(ステップS18)。次に、第2の注型液16を乾燥によって凝固させる(ステップS20)。なお、第2の注型液16が凝固したときに図3(f)に示すような状態となるよう、ステップS18での注型が行われるようにする。すなわち、第2の注型液16の凝固物によって、外側凸部13および内側凸部14を形成する面からやや突出するドーム状部分が形成されるよう、ステップS18では、外側凸部13および内側凸部14を形成する面にほぼ等しい高さまで第2の注型液16を凹部12に注型する。
【0036】
ここで、本実施形態において2回の注型(ステップS14,S18)が行われる理由について説明する。本実施形態においては、マイナスイオン発生粉末にはマイナスイオンを発生させる様々な成分(物質)が含まれている。第1の注型液15には硬化剤としてのエポキシ樹脂が含まれているが、1回だけ注型が行われた場合には、マイナスイオンを発生させる成分が完全には基材11に密着せず、一部の成分が凹部12から抜け出てしまう。そこで、基材11を形成する樹脂(ポリエステル樹脂)と同じ樹脂のみからなる液体を第2の注型液16として凹部12に注型して(その後)凝固させることにより、第1の注型液15の凝固物が凹部12から抜け出ることを抑止している。
【0037】
第2の注型液16の凝固後、図3(g)に示すように、第2の注型液16の凝固物のドーム状部分を面削するとともに、内側凹部14を面削してボタン足18を嵌め込むための凹部17を形成する(ステップS22)。
【0038】
次に、図3(h)に示すように、表面側全体がドーム状になるように基材11に面削を施す(ステップS24)。その後、作製中の天丸ボタン10全体に研磨・艶出し加工を施し(ステップS26)、糸通し穴181を有し磁石入りの樹脂で作製されたボタン足18を凹部17に嵌め込んで接着させる(ステップS28)。以上の手順によって、図1に示したような天丸ボタン10が完成する。
【0039】
なお、本実施形態においては、ステップS12によって凹部形成工程が実現され、ステップS14によって第1の注型工程が実現され、ステップS16によって第1の乾燥工程が実現され、ステップS18によって第2の注型工程が実現され、ステップS20によって第2の乾燥工程が実現されている。
【0040】
<1.3 効果>
本実施形態によれば、天丸ボタン10の作製の際に、リング状の凹部12が基材11に形成される。そして、(基材11を形成する樹脂と同じ樹脂である)ポリエステル樹脂にマイナスイオン発生粉末を混入した液体が上記凹部12に注型され、当該液体を乾燥させる工程などを経た後、天丸ボタン10が完成する。これにより、リング状の凹部12にマイナスイオン発生粉末が埋め込まれた図1に示すような天丸ボタン10が作製される。このように作製された天丸ボタン10については、マイナスイオン発生粉末は基材11に設けられたリング状の凹部12内にのみ埋め込まれているのであって、基材11の表面側全体あるいは裏面側全体にマイナスイオン発生粉末が埋め込まれているのではない。このため、ボタンに埋め込まれるマイナスイオン発生粉末の量が従来よりも少なくなるので、マイナスイオン発生粉末が埋め込まれたボタンを従来よりも安価に作製することができる。
【0041】
ここで、本実施形態に係る製造方法で作製されたボタン(ここでは「試験対象ボタン」という。)を用いて「社団法人韓国遠赤外線協会」で行われた試験の結果について説明する。この試験では、試験対象ボタンから放出される単位体積当たりのマイナスイオンの数の測定と試験対象ボタンから発せられる遠赤外線の放射率・放射エネルギーの測定とが行われた。
【0042】
図6は、上記試験によるマイナスイオンの数の測定結果を示す図である。なお、図6では、「試験対象ボタン」のことを「SKKヘルスボタン」と記している。この試験は、室内温度22℃,湿度32%,大気中マイナスイオン数が102/ccという条件下で8グラムの試験対象ボタンを用いて行われている。図6に示すように、単位体積当たり750個のマイナスイオンが試験対象ボタンから放出されている。このことから、この試験対象ボタンによって空気中のマイナスイオンの数が(この試験対象ボタンの無い状態と比べて)約7.5倍に増加したことが把握される。例えば特開2003−250605号公報に記載のボタンからは単位体積当たり約200個のマイナスイオンが放出されており、当該ボタンと比較しても、この試験対象ボタンからは充分な量のマイナスイオンが放出されていることが把握される。
【0043】
図7は、上記試験による放射率・放射エネルギーの測定結果を示す図である。また、図8は、(遠赤外線の)波長別の放射率を示すグラフであり、図9は、(遠赤外線の)波長別の放射エネルギーを示すグラフである。なお、上記放射率は、黒体(光や電磁波などを全て吸収する性質を持った仮想的な物質)によって得られる放射率を1としたときの相対的な値である。また、図9では、「試験対象ボタン」のことを「sample」と記しており、黒体のことを「black body」と記している。この試験は、37℃の条件下で行われており、フーリエ変換赤外線スペクトル計(FT-IR Spectrometer)を使用して測定が行われている。図7に示すように、この試験対象ボタンから発せられる遠赤外線の放射率は0.902となっており、その放射エネルギーは3.48×102となっている。また、図8および図9より、この試験対象ボタンから発せられる遠赤外線の放射率・放射エネルギーが比較的黒体におけるものに近いことが把握される。
【0044】
以上の試験結果より、本実施形態に係る製造方法で作製されたボタンからは健康増進効果を奏するのに充分な量のマイナスイオンが放出されるとともに充分な遠赤外線の放射が行われることが把握される。すなわち、本実施形態によれば、従来よりも少量のマイナスイオン発生粉末で充分な健康増進効果が得られるボタンが実現される。
【0045】
また、本実施形態によれば、(基材11を形成する樹脂と同じ樹脂である)ポリエステル樹脂にマイナスイオン発生粉末を混入した液体が第1の注型液15として(基材11に形成された)凹部12に注型され、当該第1の注型液15の凝固後、更に第2の注型液16としてのポリエステル樹脂が凹部12に注型される。基材11と第2の注型液16の凝固物とは互いに確実に密着するので、マイナスイオン発生粉末が凹部12から抜け出ることが抑止される。
【0046】
さらに、本実施形態によれば、チタン,ゲルマニウム,トルマリン,モナザイト(鉱石),およびバイオセラミックによってマイナスイオン発生粉末が構成されている。これら各成分については、以下のような様々な作用があることが知られている。チタンについては、例えば、人の血行を良好にする作用が知られている。ゲルマニウムについては、例えば、(人の)体内を中性に保つ作用が知られている。具体的には、血液中に酸化物が蓄積して体内に陽イオンが増加しているときには、ゲルマニウムは酸化物が体内から除去されるように作用する。一方、体内に陰イオンが増加しているときには、ゲルマニウムは水素イオン(陽イオン)を増加させるように作用する。このように、ゲルマニウムには、血液中における酸とアルカリの平衡状態を維持する作用がある。トルマリンについては、例えば、人の血行を良好にする作用や保温効果が知られている。モナザイトについては、例えば、物質の活性化作用が知られている。バイオセラミックについては、例えば、空気を浄化する作用,脱臭・抗菌作用が知られている。また、これらの成分については、いずれもマイナスイオンを発生させることが知られている。以上より、マイナスイオンを発生させ、それぞれが異なる効果を奏する様々な成分(物質)が本実施形態に係る製造方法で作成されたボタンに含まれることになる。これにより、様々な健康増進効果が得られるボタンが実現される。
【0047】
<2.第2の実施形態>
<2.1 ボタンの構成>
図10は、本発明の第2の実施形態に係る「ボタンの製造方法」によって作製されるボタン20を裏面側斜め上方から見た斜視図である。このボタン20を形成する基材21は、上記第1の実施形態と同様、例えば厚さ8ミリメートルの(ポリエステル樹脂が硬化した)シート材を打ち抜き加工することによって得られたものである。ボタン20の裏面側では、基材21にリング状の凹部22が形成されており、マイナスイオンを発生させるマイナスイオン発生粉末が固められた状態で当該凹部22に埋め込まれている。また、図10に示すように、このボタン20には4個の糸通し穴が設けられている。このような形状のボタンは「四つ穴ボタン」などと呼ばれているので、以下においてもこのボタン20のことを「四つ穴ボタン」という。
【0048】
<2.2 ボタンの製造方法>
図11から図13を参照しつつ、本実施形態に係る四つ穴ボタン20の製造方法について説明する。図11は、本実施形態に係る四つ穴ボタンの製造方法の手順を示すフローチャートである。なお、図11におけるステップS40からステップS50までの手順(シート材を打ち抜き加工する工程から第2の注型液を乾燥させる工程までの手順)については、上記第1の実施形態におけるステップS10からステップS20までの手順(図2参照)と同様であるので、説明を省略する。
【0049】
上記第1の実施形態と同様の手順により、図11のステップS50が終了した時点においては、作製中のボタンは図12(f)に示すような状態となっている。すなわち、第2の注型液26の凝固物によって、外側凸部23および内側凸部24を形成する面からやや突出するドーム状部分が形成されている。次に、図12(g)に示すように、裏面側全体がドーム状となるように基材21に面削を施す(ステップS52)。次に、表面側の周縁部に断面ドーム状の凸部27がリング状に形成され、そのリング状の凸部27によって表面側の中央部に凹部28が形成されるよう、図12(h)に示すように基材21に面削を施す(ステップS54)。
【0050】
次に、基材21の表面側から裏面側までを貫通する穴(糸通し穴)29を形成する(ステップS56)。これにより、作製中の四つ穴ボタン20を表面側上方から見ると図13(a)に示す状態となり、裏面側上方から見ると図13(b)に示す状態となる。その後、作製中の四つ穴ボタン20全体に研磨・艶出し加工を施す(ステップS58)。以上の手順によって、図10に示したような四つ穴ボタン20が完成する。
【0051】
<3.変形例>
上記各実施形態においては、「ボタン」についての製造方法を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。切削により基材に凹部を形成することができるものであれば、ブローチ,ペンダント,ネックレス,ブレスレットなどの装飾品の製造方法にも本発明を適用することができる。
【0052】
また、上記各実施形態においては、マイナスイオン発生粉末を埋め込むための凹部がリング状に形成されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、図14(a)〜(d)に示すように、円形に形成された凹部30にマイナスイオン発生粉末が埋め込まれる構成としても良い。
【0053】
さらに、上記各実施形態においては、マイナスイオン発生粉末はチタン,ゲルマニウム,トルマリン,モナザイト(鉱石),およびバイオセラミックによって構成されているが、本発明はこれに限定されない。上記複数の成分のうち少なくとも1つの成分がマイナスイオン発生粉末に含まれていれば、本発明を適用することができる。なお、より大きな健康増進効果が得られるようにするためには、上記複数の成分のうち2つ以上の成分がマイナスイオン発生粉末に含まれていることが好ましい。
【0054】
<4.従来技術との対比>
最後に、本発明と従来技術との相違点、当該相違点に基づく本発明の有利な効果について説明する。特開2003−250605号公報に開示された発明によると、図16に示すように、ボタン90はボタン本体91とマイナスイオン発生層92とによって構成されている。このマイナスイオン発生層92は、ボタン本体91の裏面側全体に形成されている。このような構成になっている理由は以下のとおりである。このボタン90の基となるシート材(プレート)900は、不飽和ポリエステル樹脂材料から形成されたプラスチックシート94の背面に、マイナスイオン発生粉末を不飽和ポリエステル樹脂材料に混入した材料で形成されたプラスチックシート95を貼り付けることによって作製される(図18参照)。そして、その作製されたシート材(プレート)900を打ち抜き装置により円板状に打ち抜くことによってボタン90が作製される。このように、特開2003−250605号公報に開示された発明によれば、ボタンの基となるシート材900そのものにマイナスイオン発生粉末が埋め込まれており、しかもそのマイナスイオン発生粉末はシート材900の一面全体に埋め込まれている。このため、作製されるボタン90を裏面側の上方から見ると、図15(a)に示すように、裏面側全体にマイナスイオン発生粉末が埋め込まれている。このように、多量のマイナスイオン発生粉末がボタンに含まれることになり、高コストとなっている。また、特開2001−161414号公報に開示された発明によっても、多量のマイナスイオン発生粉末が装飾品に含まれることになる。この理由は、当該装飾品の製造の際、図17に示すような枠材97の空間部98内に、マイナスイオン発生粉末を混入したエポキシ樹脂が充填されるからである。
【0055】
これに対し、本発明では、切削によって(ボタンの)基材に凹部が形成され、その凹部内にマイナスイオン発生粉末が埋め込まれる。このため、必要な量だけのマイナスイオン発生粉末をボタンに埋め込むことが可能となる。例えば、上記第1の実施形態によれば、マイナスイオン発生粉末は、図15(b)に示すように、ボタン10の裏面側全体のうちリング状に形成された凹部12内のみに埋め込まれる。このように、本発明によれば、従来よりも少量のマイナスイオン発生粉末がボタンに埋め込まれることとなり、コストが低減する。
【0056】
また、従来、樹脂(ポリエステル樹脂等)にマイナスイオン発生粉末が混入された液体を(ボタンの基材に形成された)凹部に注型しても、当該凹部からマイナスイオン発生粉末が抜け出てしまっていた。「ボタンからマイナスイオン発生粉末が抜け出ることを抑止する」という課題は、従来技術によっては解決されていない。
【0057】
これに対し、本発明では、「マイナスイオン発生粉末を基材に接着可能な樹脂に混入した液体を凹部に注型した後、基材に接着可能な樹脂を更に凹部に注型する」という製造方法によって、「ボタンからマイナスイオン発生粉末が抜け出ることを抑止する」という課題が解決されている。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る「ボタンの製造方法」によって作製されるボタンを裏面側斜め上方から見た斜視図である。
【図2】上記第1の実施形態における天丸ボタンの製造方法の手順を示すフローチャートである。
【図3】上記第1の実施形態における天丸ボタンの製造方法について説明するための図である。
【図4】図3(d)のA−A線断面図である。
【図5】上記第1の実施形態において、作製中の天丸ボタンを裏面側から見た平面図である。
【図6】上記第1の実施形態に係る「ボタンの製造方法」で作製されたボタンについて、試験によるマイナスイオンの数の測定結果を示す図である。
【図7】上記第1の実施形態に係る「ボタンの製造方法」で作製されたボタンについて、試験による放射率・放射エネルギーの測定結果を示す図である。
【図8】上記第1の実施形態に係る「ボタンの製造方法」で作製されたボタンについて、遠赤外線の波長別の放射率を示すグラフである。
【図9】上記第1の実施形態に係る「ボタンの製造方法」で作製されたボタンについて、遠赤外線の波長別の放射エネルギーを示すグラフである。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る「ボタンの製造方法」によって作製されるボタンを裏面側斜め上方から見た斜視図である。
【図11】上記第2の実施形態における四つ穴ボタンの製造方法の手順を示すフローチャートである。
【図12】上記第2の実施形態における四つ穴ボタンの製造方法について説明するための図である。
【図13】上記第2の実施形態において、作製中の四つ穴ボタンを表面側および裏面側から見た平面図である。
【図14】上記各実施形態の変形例について説明するための図である。
【図15】本発明と従来技術との相違点を説明するための図である。
【図16】従来例におけるボタンの構成を示す図である。
【図17】従来例における装飾品の製造方法について説明するための図である。
【図18】従来例におけるボタンの製造方法について説明するための図である。
【符号の説明】
【0059】
10…天丸ボタン
11,21…基材
12,22…凹部
13,23…外側凸部
14,24…内側凸部
15,25…第1の注型液
16,26…第2の注型液
20…四つ穴ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボタンの製造方法であって、
前記ボタンを形成する基材を切削することにより前記基材に凹部を形成する凹部形成工程と、
マイナスイオンを発生させるマイナスイオン発生粉末を前記基材に接着可能な樹脂に混入した液体を、第1の注型液として前記凹部に注型する第1の注型工程と、
前記第1の注型工程で前記凹部に注型された前記第1の注型液を乾燥させる第1の乾燥工程と、
前記第1の乾燥工程の後、前記樹脂を第2の注型液として前記凹部に更に注型する第2の注型工程と、
前記第2の注型工程で前記凹部に注型された前記第2の注型液を乾燥させる第2の乾燥工程と
を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
前記凹部形成工程では、前記基材を構成する面のうちの1つの面の一部を切削することにより前記凹部が形成されることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記凹部形成工程では、前記凹部が平面リング状に形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第1の注型液には、前記樹脂と前記マイナスイオン発生粉末とを接着させる硬化剤が含まれていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記マイナスイオン発生粉末には、チタン、ゲルマニウム、トルマリン、モナザイト、またはバイオセラミックのうちの少なくとも1つが含まれていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記マイナスイオン発生粉末には、チタン、ゲルマニウム、トルマリン、モナザイト、またはバイオセラミックのうちの少なくとも2つが含まれていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記マイナスイオン発生粉末には、チタン、ゲルマニウム、トルマリン、モナザイト、およびバイオセラミックが含まれていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
装飾品の製造方法であって、
前記装飾品を形成する基材を切削することにより前記基材に凹部を形成する凹部形成工程と、
マイナスイオンを発生させるマイナスイオン発生粉末を前記基材に接着可能な樹脂に混入した液体を、第1の注型液として前記凹部に注型する第1の注型工程と、
前記第1の注型工程で前記凹部に注型された前記第1の注型液を乾燥させる第1の乾燥工程と、
前記第1の乾燥工程の後、前記樹脂を第2の注型液として前記凹部に更に注型する第2の注型工程と、
前記第2の注型工程で前記凹部に注型された前記第2の注型液を乾燥させる第2の乾燥工程と
を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項9】
基材と、
前記基材に設けられた凹部に埋設された凝固物であって、マイナスイオンを発生させるマイナスイオン発生粉末を前記基材に接着可能な樹脂に混入した液体の凝固物である第1の凝固物と
からなるボタン。
【請求項10】
前記凹部を形成する領域内において前記第1の凝固物が埋設されている領域よりも上方の領域に埋設された凝固物であって前記樹脂の凝固物である第2の凝固物を更に含むことを特徴とする、請求項9に記載のボタン。
【請求項11】
前記凹部は、前記基材を構成する面のうちの1つの面の一部に形成されていることを特徴とする、請求項9または10に記載のボタン。
【請求項12】
前記凹部は、平面リング状に形成されていることを特徴とする、請求項9から11までのいずれか1項に記載のボタン。
【請求項13】
前記第1の凝固物には、前記樹脂と前記マイナスイオン発生粉末とを接着させる硬化剤が含まれていることを特徴とする、請求項9から12までのいずれか1項に記載のボタン。
【請求項14】
前記マイナスイオン発生粉末には、チタン、ゲルマニウム、トルマリン、モナザイト、またはバイオセラミックのうちの少なくとも1つが含まれていることを特徴とする、請求項9から13までのいずれか1項に記載のボタン。
【請求項15】
前記マイナスイオン発生粉末には、チタン、ゲルマニウム、トルマリン、モナザイト、またはバイオセラミックのうちの少なくとも2つが含まれていることを特徴とする、請求項9から13までのいずれか1項に記載のボタン。
【請求項16】
前記マイナスイオン発生粉末には、チタン、ゲルマニウム、トルマリン、モナザイト、およびバイオセラミックが含まれていることを特徴とする、請求項9から13までのいずれか1項に記載のボタン。
【請求項17】
基材と、
前記基材に設けられた凹部に埋設された凝固物であって、マイナスイオンを発生させるマイナスイオン発生粉末を前記基材に接着可能な樹脂に混入した液体の凝固物である第1の凝固物と
からなる装飾品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−168(P2010−168A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160159(P2008−160159)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(508185649)杉浦金属株式会社 (1)
【Fターム(参考)】