説明

ボトム二重巻き容器用インカール金型

【課題】紙を基材とするカップ状容器において、底面を含む貼り合わせ部における基材端面からの水分の浸透を防止できる、耐水性と密封性が優れた紙カップを提供することを課題とする。
【解決手段】胴部形成用ブランクを巻き付けたマンドレル金型の対向する位置に配置されて巻き付けられた胴部形成用ブランクの底部方向に移動することによって胴部形成用ブランクの下部端面をカップ内側にカールさせると同時に、カール端面をさらに内側に押し込む形状を持つ可動爪と可動爪を支点を中心に回転させてカール端面を二重にカールさせて底部形成用ブランクの周縁折り返し部との隙間に押し込む可動棒とを備えていることを特徴とするインカール金型。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙容器の製造装置に関し、特に筒状の胴部材と底部材とを用いた紙カップ等の紙容器であって、たとえば液状物等の接触する箇所に紙端面が露出しない構造の紙カップの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ジュース等の飲料を充填し、上部の開口部を蓋材で密封して使用する紙カップは、紙を基材とし両面にポリエチレン等の熱可塑性樹脂層を設けた積層材料を所定の形状に打ち抜いたブランクを、胴部に接合部を設けて成形した紙カップが一般的であった。
【0003】
また、酸素や水蒸気等のガスに対するバリア性を必要とする場合、前記胴部の積層材料として、例えば、表側から、ポリエチレンフィルム/紙/ポリエチレンフィルム/アルミニウム箔/ポリエチレンテレフタレートフィルム/ポリエチレンフィルム、またはポリエチレンフィルム/紙/ポリエチレンフィルム/金属酸化物蒸着層を有するプラスチックフィルム/ポリエチレンフィルムのようなバリア性の優れた層を含む構成の材料を用いて成形した紙カップ等の紙容器を用いることが多かった。
【0004】
紙カップの接合部のバリア性を確保するため、例えば、紙カップの胴部を構成する胴部材の接合部の両側端の端面を保護するための端面処理(エッジプロテクト)の方法として、図2(a)〜(c)に示すスカイブヘミングと呼ばれる方法も知られている。
【0005】
この方法では紙基材(101)に熱可塑性樹脂(102)を積層した図2(a)に示すような積層シートからなる胴部材(100)の最外層端縁部を切削ミーリング方式あるいは切削ベルナイフ方式等により図2(b)に示すように胴部材(100)の厚みの約半分をスカイブ(切削)する。次に、スカイブ(切削)した残りの半分を削除面が内側になるようにヘミング(折り返し)し、図2(c)に示すように熱可塑性樹脂によって紙端面を保護する。
【0006】
上記、紙端面のスカイブヘミング加工を行うためには、あらかじめ打ち抜いた胴部材(ブランク)を紙カップに成形する前に、特別の加工機械を用いて紙端面のスカイブヘミング加工を行うことが必要である。また、スカイブ端面を一直線上にそろえるため、カップ成形機でスカイブヘミング加工をすると同時にカップ成形をすることは困難であった。このようにスカイブヘミング加工は複雑な加工工程を経なければならず、さらに、用紙をスカイブ(切削)するため紙粉が発生し、紙粉の完全除去が困難であった。
【0007】
スカイブヘミング加工はさらに、スカイブ深さの管理が難しく成形後にスカイブ部からの切れが発生する場合があり、サイドシール等が安定しないという問題もあった。加えて、スカイブヘミング加工でのスカイブ後の折り返し接着には糊を使用するため、糊の量や位置等の管理が難しかった。
【0008】
スカイブヘミング加工を行わずにバリア性に優れたカップ状紙容器を作製する方法として、紙基材の端面がフィルムで覆われたブランクを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
この紙基材の端面を保護した、バリア性を有するカップ状紙容器においては、胴部貼り合わせ部の内側の端縁は全体にわたって熱可塑性樹脂層が紙基材から延出して作製されている。このように、紙基材から延出した熱可塑性樹脂層のフィルムは、カップ成形する際
に、不規則に成形されてしまい、本来の目的である紙基材の端面を被覆することが十分にできなかった。また、カップ状紙容器としての仕上がりが悪く、外観的に不具合が生じてしまう等の問題があった。
【0010】
さらに、少なくとも内面に熱可塑性樹脂層が設けられた紙を基材とする積層シートを所定の形状に打ち抜き、一方の側端縁に外方に延出する樹脂部を、基材の端面に沿って、密着被覆させたブランクを、他方の側端縁の内側となるように重ね合わせ、密着することにより胴部貼り合わせ部を形成することが提案されている(特許文献2参照)。
【0011】
この紙容器では、カップ状容器の場合、開口部に胴部材の上端縁部を巻き込んでフランジ部が形成されているため、前記フランジ部で、基材の紙の厚みによる段差部が生じる。そのため、前記フランジ部の上面に蓋材を重ね、そのまま加熱シールした場合、前記段差部により密封を確実に行うことができなかった。特に、前記フランジ部が扁平状態の場合、前記基材の厚みによる影響が大きかった。
【0012】
また、前記密封を確実に行うために、前記フランジ部の上面の段差部を埋めるため、別の樹脂等からなる充填部材を設け、段差部を解消するために前記段差部の位置の密封シールを部分的に行なわなければならなかった。
【0013】
さらに、内面に熱可塑性樹脂層が設けられた紙を基材とする積層シートを所定の形状に打ち抜き、一方の側端縁に外方に延出する樹脂部を外面側に折り返した折り返し樹脂部を有するブランクを、他方の側端縁の内側となるように重ね合わせて基材に密着することにより胴部貼り合わせ部を形成した紙容器も提案されている(特許文献3参照)。
【0014】
この紙容器は、貼り合わせ部における内面側基材端面は、熱可塑性樹脂層で被覆することにより保護されている。特許文献3にはまた、カップ状容器の場合、開口部に胴部材の上端縁部を巻き込んでフランジ部が形成されているため、前記フランジ部で、基材の紙の厚みによる段差部が生じるため、前記フランジ部の上面に蓋材を重ね、そのまま加熱シールした場合、前記段差部により密封が確実に行うことができなかったという問題に対する解決策も用意されている。
【0015】
カップ状紙容器の胴部貼り合わせ部および開口部フランジ部における紙基材端面のバリア性を確保するために以上のような方法が提案されてきたが、容器底面部における胴部材下端縁部の端面のバリア性を確保することについてはまだ不十分であるという問題が残されていた。すなわち、カップの底部材の周縁部分の端面は胴部材下端の折り返し部によって挟まれているが、胴部材下端は容器内側に折り返された状態で固定されており端面が空中に露出しているために紙端面からの水の浸入に弱いことである。
【0016】
これに対して、紙を主体とし、両面に熱可塑性樹脂層を有する基材シートからなる胴部形成用ブランクと底部形成用ブランクを用いて形成される紙カップであって、胴部形成用ブランクをその両端部を重ね合せシールして、筒状に形成し、底部形成用ブランクの周縁部を下方に折り曲げ、筒状の胴部形成用ブランクの下部に差込み、胴部形成用ブランクの下端部を内側に折り返し、更に上部を内側に折り返すことによって、胴部形成用ブランクの下端部が上部折り返し部と底部形成用ブランクの下方折り曲げ部との間に位置した状態で、胴部形成用ブランクの下端部と上部折り返し部と底部形成用ブランクの下方折り曲げ部が密着シールされている紙カップが提案されている。
図3(A)には従来の紙カップの底部(環状脚部)の断面略図を、図3(B)には胴部形成用ブランクの下端部をプロテクトした上記の紙カップの同様の図を示した。
【0017】
従来の紙カップの底部は図3(A)に示したように、底部材(20)の周縁に形成され
た起立部(21)の端部を挟み込む形で胴部材(18)の下端部(23)が内側に折り返されて接着された構造で環状脚部(22)が形成されており、底部材の端縁は密封されているが胴部材の下端部は断面が大気中に露出した状態となっている。
【0018】
これに対して、前記の、胴部形成用ブランクの下端部が上部折り返し部と底部形成用ブランクの下方折り曲げ部との間に位置した状態で、胴部形成用ブランクの下端部と上部折り返し部と底部形成用ブランクの下方折り曲げ部が密着シールされている紙カップにおいては、図3(B)に示したように、底部材(20)の周縁に形成された起立部(21)の端部を挟み込む形で胴部材(18)の下端部(23)が内側に折り返されて接着された構造で環状脚部(22)が形成されているのみならず、胴部材(18)の下端部(23)がその先端の上部折り返し部(24)においてさらに内側に折り曲げられて胴部材の端面が胴部材と底部材の起立部(21)の間に挟まれて封止されている。
【0019】
これにより、胴形成用ブランク底部の紙端面が被覆されているので、カップの底部から液体が紙端面より浸み込んで紙を濡らして紙の層間の強度が低下することがない。内容物側からの浸み込みだけでなく、外側からの浸み込みも防止されるので、ボイルやレトルト殺菌、または水に漬けて冷却することに耐える耐水性を有する紙カップが出来るようになる。
【0020】
しかしながら上記の紙カップを製造する場合に、胴部形成用ブランクの下端部を内側に二度折り返すことが必要になるので、従来の折り返し治具(インカール金型)では簡易に安定して折り返すことが出来なかった。このような事情から従来の工程の大幅な変更なしに底部の耐水性を確保できる紙カップの製造装置が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開昭51−122566号公報
【特許文献2】特開2005−272010号公報
【特許文献3】特開2008−222245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
紙を基材とするカップ状容器の製造において、底面を含む貼り合わせ部における基材端面からの水分の浸透を防止できる、耐水性と密封性が優れた紙カップを簡易に安定して製造できる装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の請求項1の発明は、 胴部形成用ブランクと底部形成用ブランクを用いて紙カップを形成する紙カップ成形機の環状脚部の胴部材ブランク下部端面を内面にカールさせて底部形成用ブランクの端部周縁の露出を防止する構造を形成するインカール金型であって、 胴部形成用ブランクを巻き付けたマンドレル金型の対向する位置に配置されて、巻き付けられた胴部形成用ブランクの底部方向に移動することによって胴部形成用ブランクの下部端面をカップ内側にカールさせると同時に、カール端面をさらに内側に押し込む形状を持つ可動爪と可動爪を支点を中心に回転させてカール端面を二重にカールさせて底部形成用ブランクの周縁折り返し部との隙間に押し込む可動棒とを備えていることを特徴とするインカール金型である。
本発明の請求項2の発明は、2個以上の可動爪が円周方向に等間隔で設置されていることを特徴とする請求項1に記載のインカール金型である。
本発明の請求項3の発明は、胴部形成用ブランクに接する部分の可動爪の幅は5mm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のインカール金型である。
本発明の請求項4の発明は、少なくとも胴部形成用ブランクの円周方向端面の重ね合わされた位置に可動爪が配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインカール金型である。
本発明の請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載のインカール金型を用いたことを特徴とする紙カップの製造方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の請求項1に係る発明によれば、 胴部形成用ブランクと底部形成用ブランクを用いて紙カップを形成する紙カップ成形機の環状脚部の胴部材ブランク下部端面を内面にカールさせて底部形成用ブランクの端部周縁の露出を防止する構造を形成するインカール金型であって、 胴部形成用ブランクを巻き付けたマンドレル金型の対向する位置に配置されて、巻き付けられた胴部形成用ブランクの底部方向に移動することによって胴部形成用ブランクの下部端面をカップ内側にカールさせると同時に、カール端面をさらに内側に押し込む形状を持つ可動爪と可動爪を支点を中心に回転させてカール端面を二重にカールさせて底部形成用ブランクの周縁折り返し部との隙間に押し込む可動棒とを備えているインカール金型であるので、上記二重カールが簡易にかつ安定して行えることによって底部からの基材への浸水に対する耐性をも確保できる紙カップを製造することが出来る。
【0025】
本発明の請求項2に係る発明によれば、2個以上の可動爪が円周方向に等間隔で設置されているインカール金型を用いることによって環状脚部の全周を均等に折り返すことが可能となった。
【0026】
本発明の請求項3に係る発明によれば、胴部形成用ブランクに接する部分の可動爪の幅は5mm以上であるインカール金型を用いることによって、折り返し時の胴部形成用ブランクの凹みを防止することが出来るようになる。
【0027】
カップ状容器の成形に於いては底部に胴部材の下端縁部を巻き込んで環状脚部が形成されているため、前記環状脚部で、基材の紙の厚みによる段差部が生じる。この段差部は胴部形成用ブランクを筒状に成形する両端部の接合部で著しい。そのため、前記胴部材の下端縁部を内側に二重に巻き込もうとする場合に、前記段差部により巻き込みを確実に行うことが出来ずに端面封止を確実に行うことができない場合があった。
本発明の請求項4に係る発明は、少なくとも胴部形成用ブランクの円周方向端面の重ね合わされた位置に可動爪が配置されているインカール金型を用いることによって、段差がある場合でも胴部材下端縁部の二重巻き込みを確実に行うことが出来るようにしたものである。
【0028】
本発明のインカール金型を用いて製造する紙カップは、紙を主体とし、両面に熱可塑性樹脂層を有する基材シートからなる胴部形成用ブランクと底部形成用ブランクを用いて形成される紙カップであって、胴部形成用ブランクをその両端部を重ね合せシールして、筒状に形成し、底部形成用ブランクの周縁部を下方に折り曲げ、筒状の胴部形成用ブランクの下部に差込み、胴部形成用ブランクの下端部を内側に折り返し、更に上部を内側に二重に折り返すことによって、胴部形成用ブランクの下端部が胴部形成用ブランクの上部折り返し部と底部形成用ブランクの下方折り曲げ部との間に位置した状態で、胴部形成用ブランクの下端部と上部折り返し部と底部形成用ブランクの下方折り曲げ部が密着シールされていることによって、胴部形成用ブランクの下端端縁部の露出が封止されて端面が保護された状態になる。
【0029】
本発明のインカール金型を用いて製造する紙カップは、胴形成用ブランク底部の紙端面が被覆されているので、カップの底部から液体が紙端面より浸み込んで紙を濡らして紙の層間の強度が低下することがない。内容物側からの浸み込みだけでなく、外側からの浸み
込みも防止されるので、ボイルやレトルト殺菌、または水に漬けて冷却することに耐える耐水性を有する紙カップが出来るようになる。
【0030】
また、胴部材下部のカーリング量を増して端部を胴部材と底部材の間に挟みこんで封止することにより底部においても部材端面の露出がなくなることによって、胴部材接合部、上部フランジ部のエッジプロテクトと併せて、紙カップを構成する紙基材のすべての端部についてエッジプロテクト化が可能になり、今まで使用できなかった新分野(レトルト、トイレタリー、調味料、サプリメント、他)への展開が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】紙カップの製造工程を示す説明図。
【図2】スカイブヘミング加工によるエッジプロテクトの断面説明図。
【図3】紙カップの底部貼り合わせ部断面説明図。(A)は従来の紙カップの胴部材下端部、(B)はボトム二重巻き込みを行って熱圧着した状態の紙カップの断面説明図である。
【図4】ボトム二重巻き込み紙カップの底部貼り合わせ部断面説明図。(A)は胴部材下端部のカール状態、(B)はAを熱圧着した状態の断面説明図である。
【図5】従来紙カップの成形:底部材をマンドレル金型に吸着させて胴部材底部へ装入。
【図6】従来紙カップの成形:カールイン金型にマンドレル金型を押し付けてカールイン。
【図7】従来紙カップの成形:ローレットで押し付け加熱して環状脚部を形成。
【図8】ボトム二重巻き込み紙カップの成形:底部材をマンドレル金型に吸着させて胴部材底部へ装入。
【図9】ボトム二重巻き込み紙カップの成形:カールイン金型にマンドレル金型を押し付けてカールイン。
【図10】ボトム二重巻き込み紙カップの成形:エキスパンダで押し付け加熱して環状脚部を形成。
【図11】従来のカールイン金型による胴部材下端部のカール付与。
【図12】本発明のカールイン金型による胴部材下端部のカール付与。
【図13】本発明のカールイン金型の可動爪の非使用時の状態。
【図14】本発明のカールイン金型の可動爪のカーリング使用時の状態。
【図15】紙カップ成形機の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に本発明の実施形態の例を必要に応じて図面を参照しながら説明する。
図1は紙カップの製造工程を示す説明図であり、 図15は本発明のインカール金型を用いた巻き取り形式タイプの紙カップ成形機の一実施例を示す概略図である。
【0033】
通常、紙カップは、内面及び外面に熱可塑性樹脂層が設けられた、紙を主体とする基材シートから構成されている。
図1は紙カップの製造工程の一例を簡単に示す説明図である。
【0034】
図1に示すように、胴部材(18)を、両側端縁上部にそれぞれ切欠き部(31)(32)を設けた胴部材ブランク(10)の、一方の端縁(11)をもう一方の端縁(12)に重ね合わせて胴部貼り合わせ部(15)を形成させて円筒形状とする。また、底部材(20)は、円形状で、下向きに起立させた周縁部(21)を有する。そして、前記胴部材(18)の下部内面に、底部材(20)の周縁部(21)の外面を接合させる。
【0035】
さらに周縁部(21)を覆うように、前記胴部材(18)の下端縁部を内方に折り曲げ、底部材の周縁部(21)内面に接合させて環状脚部(22)を形成させる一方、胴部材の上部周縁を外方に、1周以上巻き込み、フランジ部(16)を形成させて紙カップとする。
以上の構造は、テーパー状の紙カップに限定されず、円筒状のカップ状紙容器であっても同様である。
この時に胴部材の貼り合わせ部(15)の上下の部分に於いては胴部材(18)の両端部が重なるために上部のフランジ部と底部の環状脚部の形成に当たってはいくつかの工夫がなされている。
【0036】
紙カップには通常フランジ部(16)が設けられており、胴部材(18)の貼り合わせ部(15)の上端においては、両側端縁上部にそれぞれ切欠き部(31)(32)を設けた胴部材ブランク(10)を用いることによって、胴部材の上部周縁を外方に1周以上巻き込んで、少なくとも3重構成のフランジ部を形成した際、貼り合わせ部においても、基材が、前記貼り合せ部以外の部分と同様の3重構成の巻き込み状態となる。
ここで、たとえば、この切欠き部(31)(32)の形状を異なる形状とすることにより、少なくとも3重構成のフランジ部(16)の上面を平坦にしても、フランジ部上面に、前記貼り合せ部の位置に生じる段差を解消することができる。
【0037】
同様に底部においても胴部材の貼り合わせ部(15)の下端部(19)の部分の胴部材は円周上の他の部分に比べて巻き込みがしにくく、従来のカールイン金型では特に確実に二重に巻き込む点で不安定さが残っていた。
そのために、胴部材の下端部を二重に巻き込むための補助装置として、カールイン金型の1回目の巻き込みを終わった状態で胴部材の下端縁部をさらにもう一回同一方向へ巻き込む向きに誘導する曲面を持った可動爪をカールイン金型に組み込むことによって底部の二重巻き込みを簡単に確実にすることが出来るようになった。
【0038】
インカール金型を用いた紙カップの底部の成形工程のうちでボトム一重巻きの紙カップの場合の底部断面とボトム二重巻きの場合の底部断面を、それぞれ工程順に図5〜図10に示した。
【0039】
図5はボトム一重巻きの紙カップの底部成形工程で底部材(20)を円錐台状のマンドレル金型(C1)に吸着させて胴部材(18)底部へ装入した状態を示している。
底部材(20)はその周端部(21)を起立させて起立部を形成した状態で起立部の裏面をバキュームでマンドレル金型(C1)の円錐台頂面に吸着されており、マンドレル金型の側面には胴部貼り合わせ部(15)で接着されて筒状に成形された胴部材(18)が巻きつけられている。
この状態からマンドレル金型(C1)を対向する位置(この図では上方)にあるボトムインカール金型(C2)に向けて移動させて胴部材下端部(19)の内側への巻き込み(カールイン)を開始する。
【0040】
図6は図5に続いてカールイン金型(C2)の内面にマンドレル金型(C1)を押し付けて胴部材下端部(19)をそのエッジ(23)からカールイン金型の内側の曲面に沿って内側へ巻き込んだ状態を示している。この状態では巻き込まれた胴部材下端部(19)は底部材(20)の起立部(21)の内周とは接着されていない。
【0041】
図7は図6に続いて巻き込まれた胴部材下端部(19)を底部材(20)の起立部(21)の内周と接着するために胴部材下端部の折り曲げた内周側からローレット(C3)で押し付け加熱して環状脚部を形成した状態を示している。この接着にはローレット以外にも図10に示したようなエキスパンダ(C4)等も用いることが出来る。
【0042】
図8はボトム二重巻きの紙カップの底部成形工程で底部材(20)を円錐台状のマンド
レル金型(C1)に吸着させて胴部材(18)底部へ装入した状態を示している。
底部材(20)はその周端部(21)を起立させて起立部を形成した状態で起立部の裏面をバキュームでマンドレル金型(C1)の円錐台頂面に吸着されており、マンドレル金型の側面には胴部貼り合わせ部(15)で接着されて筒状に成形された胴部材(18)が巻きつけられている。
この状態からマンドレル金型(C1)を対向する位置(この図では上方)にあるボトムインカール金型(C2)に向けて移動させて胴部材下端部(19)の内側への巻き込み(カールイン)を開始する。
【0043】
図9は図8に続いてカールイン金型(C2)の内面にマンドレル金型(C1)を押し付けて胴部材下端部(19)をそのエッジ(23)からカールイン金型の内側の曲面に沿って内側へ二重に巻き込んだ状態を示している。
実際には底部円周のすべての部分で確実かつ均等に二重に巻き込むことは難しく、特に胴部材貼り合わせ部(15)の下端部では胴部材(18)が重なっているためにより困難であった。この状態では巻き込まれた胴部材下端部(19)は底部材(20)の起立部(21)の内周とは接着されていない。
【0044】
図10は図9に続いて巻き込まれた胴部材下端部(19)を底部材(20)の起立部(21)の内周と接着するために胴部材下端部の折り曲げた内周側からエキスパンダ(C4)で押し付け加熱して環状脚部を形成した状態を示している。この接着にはエキスパンダ以外にも図7に示したようなローレット(C3)等も用いることが出来る。
【0045】
つぎに、紙カップ成形機に本発明のインカール金型を用いた一実施形態を説明する。
図15は本発明のインカール金型を用いた巻き取り形式タイプの紙カップ成形機の一実施例を示す概略図である
【0046】
図15に示す紙カップ成形機は紙カップの胴部材用ウェブ状シートを供給する巻き取り部(60)、ダイカッティング部(61)、カップ成形部(62)、底部材供給部(63)、底部材成形部(64)、トップカール成形部(65)から構成されている。
そして、ダイカッティング部(61)とカップ成形部(62)の間に、ダイカッティング部(61)で打ち抜かれた胴部材ブランク(54)をカップ成形部(62)に搬送するための咥え爪(66)が施されているタンテーブル(67)が設けられている。
【0047】
また、紙カップの成形は巻き取り部(60)から供給された、一方の端縁に端縁保護熱可塑性樹脂層が施された紙カップの胴部材用ウェブ状シートがロールフィールド方式により打ち抜き金型が設けられているダイカッティング部(61)方向に間欠搬送される。
【0048】
また、巻き取り部(60)とダイカッティング部(61)の間に紙カップ端面折り返し装置(69)が設けられている。そして一方の端縁に端縁保護熱可塑性樹脂層が施された紙カップの胴部材用ウェブ状シートが搬送され、紙カップ端面折り返し装置(69)の適宜の位置で停止する。停止と同時に紙カップ端面折り返し装置(69)が作動して、紙基材の端縁に延設されていた端縁保護熱可塑性樹脂層が折り返され紙基材の端面が端縁保護熱可塑性樹脂層で覆われて、次工程に搬送される。
【0049】
次に、ダイカッティング部(61)に備えられている雄金型と雌金型により紙基材の端面が端縁保護熱可塑性樹脂層で覆われた紙カップの胴部材用ウェブ状シートが適宜の形状に打ち抜かれる。そしてタンテーブル(67)の咥え爪(66)で咥えられながら打ち抜かれた胴部材ブランク(54)の両端周辺がホットエアーあるいは電熱ヒーター等により熱可塑性樹脂が溶融されカップ成形部(62)のマンドレル金型(68)に巻き付けられ
る。
さらに、マンドレル金型(68)に巻き付けられた胴部材ブランク(54)が筒状に成形されると同時に胴部材ブランク(54)と逆皿形状に成形されている底部材(71)が結合接着され一体化する。
【0050】
前記、マンドレル金型(68)に巻き付けられた胴部材ブランク(54)の、紙カップの内側の紙基材の端面は端縁保護熱可塑性樹脂層により完全に覆われている。
また、ダイカッティング部(61)に設けられている雄金型と雌金型により適宜の形状に打ち抜かれた胴部材ブランク(54)以外の紙カップの胴部材用ウェブ状シートは抜きカスとして排出される。
【0051】
また、底部材用巻き取り紙(82)は通常胴部材ブランク(54)と同じ材質構成の積層シートが用いられる。また、底部材用巻き取り紙(82)はあらかじめ適宜の寸法にスリット加工が施され底部材供給部(63)に供給される。そして、底部材供給部(63)に供給された底部材用巻き取り紙(82)は底部成形部(64)にロールフィールド方式で搬送される。
【0052】
また、底部成形部(64)に搬送される手前で底部材用巻き取り紙(82)がターンバー(73)によって水平方向の流れが垂直方向の流れに変えられ底部成形部(64)に搬送される。そして、底部成形部(64)で底部材用巻き取り紙(82)は適宜の大きさの円形状に打ち抜かれると同時に逆皿形状に成形される。
【0053】
さらに、逆皿形状に成形された底部材(71)はカップ成形部に設けられているマンドレル金型(68)の先端部のバキュームにより逆皿型状の底部がマンドレル金型(68)の先端平面部に吸着され上記のように胴部材ブランク(54)の内側面と底部材(71)の内側面が結合接着され一体化する。また円形状に打ち抜かれた後に、逆皿形状に成形されている底部材(71)以外は抜きカス(83)として連設して排出され巻き取られる。
【0054】
また、胴部材ブランク(54)の内側面と逆皿形状に成形されている底部材(71)の内側面が結合接着され一体化されている底部に、胴部形成用ブランク(54)を巻き付けたマンドレル金型の対向する位置に配置されている、巻き付けられた胴部形成用ブランク(54)の底部方向に移動することによって胴部形成用ブランクの下部端面をカップ内側にカールさせるR形状の凹面を備えたインカール金型が近接して、加熱部(72)からホットエアー等が施される。
【0055】
本発明のインカール金型を備えた装置に於いては、これと同時に、カール端面をさらに内側に押し込む形状を持つ可動爪と、可動爪を支点を中心に回転させてカール端面を二重にカールさせて底部形成用ブランク(54)の周縁折り返し部との隙間に押し込む可動棒とを備えたインカール金型の可動爪によって胴部材ブランク(54)の下端部を二重に内側に折り込み、逆皿形状に成形されている底部材(71)の外側面との隙間にくるように環状脚部が成形される。
【0056】
図12には本発明のカールイン金型による胴部材下端部のカール付与の状態を示した。図11は比較のために示した従来のカールイン金型による胴部材下端部の一重でのカール付与の状態である。使用時にはカールイン金型(C2)の図では右方向からマンドレル金型が移動してくるがマンドレル金型とその表面に吸着されている底部材は省略してある。
【0057】
図12のカールイン金型(C2)には胴部材底部(19)のエッジが接触して内側にカールするように設計された曲面の内周側の位置に、カール中にエッジ(23)をさらに重ねてカールするように誘導する曲面を有する可動爪(1)が設置されており、この可動爪
(1)は前後に動く可動棒(2)によって支点(3)を中心に回動してカールを行わない非使用時には胴部材(18)に接触することなくカールを行う使用時には胴部材底部(19)のエッジが接触して内側にカールするようになっている。可動爪(1)の回転位置はバネ(4)によって可動棒(2)の押し込み位置に対応する角度と非使用時の戻り位置の間を往復する。
【0058】
図13には本発明のカールイン金型の可動爪の非使用時の状態をより詳細に示した。図の白矢印(5)で示したのはバネ(4)の引張方向である。図13の状態からカーリングに使用するときに可動爪(1)が回動した時の状態の差を示したのが図14である。
図14では非使用時の可動爪(1)の回動位置を点線で示し、可動棒(2)の押し込み方向を矢印(6)で、可動爪(1)の回動方向を矢印(7)でしめした。
【0059】
この段階での胴部材下端部のカール状態を示す環状脚部の断面を図4(A)に示した。図4(A)は紙カップの底部貼り合わせ部断面説明図、(B)は(A)を熱圧着した状態の断面説明図である。
図4(A)に示したように、ボトル二重巻き込み紙カップの底部は胴部形成用ブランク(10)で作成された筒状の胴部材(18)の下部内面に、底部形成用ブランクの周縁部を下方に折り曲げた底部材(20)の周縁部(21)を差込み、胴部材の下端部(23)を内側に折り返しさらに上部を内側に二重に折り返すことによって、胴部材の下端部(23)が上部折り返し部(24)と底部材(20)の下方折り曲げ部との間に位置した状態とする。
【0060】
さらに、胴部材の下端部(23)と上部折り返し部(24)と底部材の下方折り曲げ部を密着させて、加熱部(72)からホットエアー等を施しながら環状脚部内側からローレットまたはエキスパンダ等によって周内面を外側に押し付けて成形された環状脚部の熱接着を完成する(図4(B))。
これにより、胴部材の下端部(23)は底部材の周縁部(21)の内面と胴部材(18)の上部折り返し部(24)近辺の胴部材により封止された状態となり、この部分からの水分等の浸入が阻止される。
【0061】
図3には比較のために通常の紙カップ(A)とボトム二重巻き紙カップ(B)との環状脚部の断面を示した。
通常の紙カップでは胴部材(18)の下端部(23)のエッジが露出しているのに対してボトム二重巻き紙カップでは上部折り返し部(24)を介してさらに内部に折り込まれた胴部材下端部(23)のエッジは胴部材下端縁部と底部材(20)の周縁部(21)で構成された閉空間内に封止されている。
【0062】
底部成形後、さらに、トップカール成形部(65)で紙カップの開口部周縁に潤滑油を塗布した後、第一カールを施し、さらに第二カールが施された後、巻き込みカール(フィニッシュカール)されて紙カップが排出される。そして、紙カップの開口部にカールが施され、さらに紙基材の端面が端縁保護熱可塑性樹脂層で覆われた紙カップが作製される。
【0063】
このようにして,本発明のインカール金型を用いた装置によれば、胴部材の両側端縁の紙端面の内面側と外面側をフィルムで覆い、また胴部材の底部を二重に折り返すことにより、紙カップの内外面すべてのエッジプロテクトを行った紙カップを作成することが出来る。
【0064】
胴部材接合部のエッジプロテクトの方法はフィルムを折り返す方法とフィルムを折り返さない簡易的な方法とがあり、内面側および外面側についてそれぞれ必要に応じていずれかの方法が採用できる。フィルムを折り返す方法ではフィルムの端面についても内容物が
接触しないので樹脂フィルムの層構成中に金属層等の露出すると不都合な層がある場合にも適しているが、胴部材の不要部を除去するだけでフィルムを折り返さない方法でも基材の紙のエッジは保護することが出来る。
【0065】
本発明の紙カップにおける胴部材の底部のエッジプロテクトは成形機で底部加熱後の底部内方カールで端面が内側に入るまでカーリングし、そして底部をシールすることで底部においても紙基材端面が露出することなくエッジプロテクトを行うことが出来、材料加工工程は現行と同様で可能である。
【実施例】
【0066】
以下に本発明のカールイン金型を用いた紙カップの製造装置による紙カップの製造の実施例を挙げる。
<実施例1>
紙基材(坪量260g/m2)からなるシートに打ち抜きにより長窓を形成した。
次に、前記シートの紙基材の表面に低密度ポリエチレン層(30μm)、紙基材の裏面に低密度ポリエチレン層(30μm)/アルミニウム箔(9μm)/ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/低密度ポリエチレン層(70μm)を設け、前記長窓の位置で、前記低密度ポリエチレン層の内面を接合、一体化した。
【0067】
そして、紙基材の片側の側端縁上部に、幅が9mm、高さが5mmの三角形の切欠き部、他方の側端部上部に、幅が8mm、高さが6mmの三角形の切欠き部を有する扇形形状(上辺の長さ225mm、下辺の長さ162mm)に打ち抜き、胴部ブランクを形成した。
【0068】
なお、両方の側端縁に設けた樹脂部は、5mm幅で設け、5mm延出する端縁延設片樹脂部を有する胴部ブランクを形成した。
前記端縁延設片樹脂部を有する前記ブランクの側端縁を重ね合わせの長さLが5mmになるように重ねて接合一体化し、胴部貼り合わせ部を設けて胴部を形成した。
【0069】
次に、カップ成形機を用い、前記胴部の下部内面に、円形状で、下向きに起立させた周縁部を有する底部材の周縁部の外面を接合させた。
そして、前記胴部材の下部内面に、底部材の周縁部の外面を接合させ、さらに周縁部を覆うように、可動爪によって前記胴部材をカールさせながら内方に折り曲げ、下端縁部が胴部材の上部折り返し部と底部形成用ブランクの周縁部の下方折り曲げ部との間に位置した状態で、加熱しながらエキスパンダによって密着させて、底部材の周縁部内面に接合させ直径が52mmの環状脚部を形成した。
【0070】
また、トップカールユニットにより、胴部材の上部開口部を1周以上巻き込み、下側半分が一重巻き、上側半分が二重巻きとなる、幅が3mmのフランジ部を有する、開口の直径が69mmの紙カップを成形した。
【0071】
前記紙カップは、胴部貼り合わせ部およびフランジ部の上面の、胴部貼り合わせ部に位置する部分に段差がなく成形され、胴部および底部の貼り合わせ部の強度と耐水性も十分であり水に漬けて冷却しても紙基材の膨潤等の異常は見られなかった。
<実施例2>
【0072】
表側から、紙基材(坪量260g/m2)低密度ポリエチレン(30μm)/アルミニウム箔(9μm)/ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)からなるシートに長窓を形成した。
【0073】
次に、前記積層シートの紙基材表面に、低密度ポリエチレン層(30μm)、ポリエチレンテレフタレートフィルム面にポリエチレン層(70μm)を設け、前記長窓で、前記低密度ポリエチレン層の内面を接合、一体化した。
【0074】
そして、紙基材の片側の側端縁上部に、幅が9mm、高さが5mmの三角形の切欠き部、他方の側端部上部に、幅が8mm、高さが6mmの三角形の切欠き部を有する扇形形状(上辺の長さ225mm、下辺の長さ162mm)に打ち抜き、胴部ブランクを形成した。なお両方の側端縁に設けた端縁延設片となる樹脂部は、5mm幅で設けて折り返さずに圧着した。
前記ブランクの端縁延設片を有する側端縁を5mm重ね合わせて端縁延設片を基材表面に圧着して接合一体化し胴部貼り合わせ部を設けて胴部を形成した。
【0075】
次に、前記胴部の下部内面に、円形状で、下向きに起立させた周縁部(21)を有する底部材の周縁部(21)の外面を接合させた。
そして、カップ成形機を用い、前記胴部材(18)の下部内面に、底部材(20)の周縁部(21)の外面を接合させ、さらに周縁部(21)を覆うように、前記胴部材(18)をカールさせながら内方に折り曲げ、下端縁部が胴部材(18)の上部折り返し部(24)と底部形成用ブランクの周縁部の下方折り曲げ部(21)との間に位置した状態で、底部材の周縁部(21)内面に接合させて、直径が52mmの環状脚部(22)を形成した。
【0076】
また、トップカールユニットにより、上部開口部を1周以上巻き込み、下側半分が一重巻き、上側半分が二重巻きとなる、幅が3mmのフランジ部を有する、開口の直径が69mmの紙カップを成形した。
【0077】
前記紙カップは、胴部貼り合わせ部およびフランジ部の上面の、胴部貼り合わせ部に位置する部分に段差がなく成形され、胴部および底部の貼り合わせ部の強度と耐水性も十分であり水に漬けて冷却しても紙基材の膨潤等の異常は見られなかった。
<実施例3>
【0078】
表側から、低密度ポリエチレン層(30μm)/紙基材(坪量260g/m2)からなるシートに長窓を形成した。
次に、前記紙基材の裏面に低密度ポリエチレン(30μm)/アルミニウム箔(9μm)/ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/低密度ポリエチレン層(15μm)をシート紙基材表面の長窓部分を覆うように設けた。
【0079】
そして、片側の紙基材の側端縁上部に、幅が9mm、高さが5mmの三角形の切欠き部、他方の側端部上部に、幅が8mm、高さが6mmの三角形の切欠き部を有する扇形形状(上辺の長さ225mm、下辺の長さ162mm)に打ち抜き、胴部ブランクを形成した。 なお、両方の側端縁に設けた端縁延設片となる樹脂部は、5mm幅で設けた。
前記ブランクの端縁延設片を有する側端縁を5mm重ね合わせて端縁延設片を基材表面に圧着して接合一体化し胴部貼り合わせ部を設けて胴部を形成した。
次に、前記胴部の下部内面に、円形状で、下向きに起立させた周縁部(21)を有する底部材の周縁部(21)の外面を接合させた。
【0080】
そして、カップ成形機を用い、前記胴部材(18)の下部内面に、底部材(20)の周縁部(21)の外面を接合させ、さらに周縁部(21)を覆うように、前記胴部材(18)をカールさせながら内方に折り曲げ、下端縁部が胴部材(18)の上部折り返し部(24)と底部形成用ブランクの周縁部の下方折り曲げ部(21)との間に位置した状態で、底部材の周縁部(21)内面に接合させて、直径が52mmの環状脚部(22)を形成した。
また、トップカールユニットにより、上部開口部を1周以上巻き込み、下側半分が一重巻き、上側半分が二重巻きとなる、幅が3mmのフランジ部を有する、開口の直径が69mmの紙カップを成形した。
【0081】
前記紙カップは、フランジ部の上面の、胴部貼り合わせ部に位置する部分に段差がなく成形され、胴部および底部の貼り合わせ部の強度も十分であり水に漬けて冷却しても紙基材の膨潤等の異常は見られなかった。
【符号の説明】
【0082】
1…可動爪
2…可動棒
3…支点
4…バネ
4a…端縁延設片
4c…端縁延設片
5…バネの引張方向
6…可動棒の押込方向
7…可動爪の回動方向
10…胴部材ブランク
11…樹脂部を有する側端縁
12…樹脂部を有する側端縁
13…長窓
14…長窓
15…胴部貼り合わせ部
16…フランジ部
18…胴部材(サイド材)
19…胴部下端部
20…底部材(ボトム材)
21…周縁部(起立部)
22…環状脚部
23…胴部材の下端部エッジ
24…上部折り返し部
31…切欠き部
32…切欠き部
C1…円錐台状(マンドレル)金型
C2…ボトムインカール金型
C3…ローレット
C4…エキスパンダ
100…胴部材
101…紙基材
102…熱可塑性樹脂
54…胴部材(ブランク)
60…巻き取り部
61…ダイカッティング部
62…カップ成形部
63…底部材供給部
64…底部成形部
65…トップカール成形部
66…咥え爪
67…ターンテーブル
68…マンドレル金型
69…紙端面折り返し装置
71…底部材
72…加熱部
73…ターンバー
74…インカール金型
82…底部材用巻き取り紙
83…抜きカス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部形成用ブランクと底部形成用ブランクを用いて紙カップを形成する紙カップ成形機の環状脚部の胴部材ブランク下部端面を内面にカールさせて底部形成用ブランクの端部周縁の露出を防止する構造を形成するインカール金型であって、
胴部形成用ブランクを巻き付けたマンドレル金型の対向する位置に配置されて巻き付けられた胴部形成用ブランクの底部方向に移動することによって胴部形成用ブランクの下部端面をカップ内側にカールさせると同時に、カール端面をさらに内側に押し込む形状を持つ可動爪と
可動爪を支点を中心に回転させてカール端面を二重にカールさせて底部形成用ブランクの周縁折り返し部との隙間に押し込む可動棒とを備えていることを特徴とするインカール金型。
【請求項2】
2個以上の可動爪が円周方向に等間隔で設置されていることを特徴とする請求項1に記載のインカール金型。
【請求項3】
胴部形成用ブランクに接する部分の可動爪の幅は5mm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のインカール金型。
【請求項4】
少なくとも胴部形成用ブランクの円周方向端面の重ね合わされた位置に可動爪が配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインカール金型。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のインカール金型を用いたことを特徴とする紙カップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図10】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−45719(P2012−45719A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186996(P2010−186996)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】