説明

ボラノホスフェートモノマー

【課題】ボラノホスフェートオリゴマーの効率的な製造に有用なボラノホスフェートモノマーを提供する。
【解決手段】下記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマー[式中、B1は、ピリミジン塩基、プリン塩基、又は、それらの誘導体を表し、R1は、ジメトキシトリチル基、又は、モノメトキシトリチル基であり、R2は、水素原子、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、又は、トリアルキルシリルオキシ基を表す。]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボラノホスフェートモノマー及びそれの製造方法並びにボラノホスフェートモノマーを用いたオリゴヌクレオチド誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在遺伝子治療の分野で注目されている手法の一つにアンチセンス法がある。アンチセンス法とは、mRNAに相補的な塩基配列を持つアンチセンス分子を用いてDNAから転写されたmRNAと選択的に二重鎖を形成させ、標的とするタンパク質合成のみを制御する方法である。
【0003】
ここで、アンチセンス分子が有効に機能するための必要条件として、第一に高い細胞膜透過性を有していること、第二に細胞内でヌクレアーゼによる加水分解を受けにくいこと、第三に特定のmRNAとのみ選択的に安定な二重鎖を形成できることなどが挙げられる。
【0004】
しかし、天然型のアンチセンス分子は、生体内に導入されると、ヌクレアーゼにより速やかに加水分解される上、細胞膜透過性が低いという問題点がある。そこで、より有用なアンチセンス分子の設計及びその効率的な製造方法の開発が求められていた。
【0005】
これまで多くのアンチセンス分子が設計され、合成されてきたが、その中で現在、実用化に向けて研究されているホスホロチオエートDNAには、細胞毒性がある、選択性が低いといった問題点があった。
【0006】
近年、新しい骨格のアンチセンス分子であるボラノホスフェートオリゴマーが開発されている。この分子は、例えば、
(1)リン原子がボランに配位しているため、天然型のものと比較して脂溶性が高く、高い細胞膜透過性が期待できる、
(2)ヌクレアーゼに対する耐性が高い、
(3)標的mRNAに対する選択性が高い、
(4)ボラノホスフェートDNAとRNAが形成する二重鎖がRNaseHの基質となり、標的mRNAが効果的に分解される、
(5)ホウ素中性子補捉療法(BNCT)への応用が期待できる、
といった有利な特徴を持つことで知られており、実用的なアンチセンス分子として注目されてきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、従来開発されたボラノホスフェートオリゴマーに見られた問題点、即ち、
(i) 鎖を延長するたびにボラノ化を繰り返し行わなければならない、
(ii)ボラノ化試薬による核酸塩基部位への副反応
といった問題点を排除した手法、即ち、下記式で示される、予めボラノ化したモノマーを用いてオリゴヌクレオチドを合成する手法を報告してきた(日本化学会第78回年会予稿集746頁(2000年)、日本化学会第79回年会予稿集942頁(2001年)、日本化学会第81回年会予稿集937頁(2002年)、アンチセンスDNA/RNA研究会予稿集48頁(2002年)、日本化学会第83回年会予稿集944頁(2003年)、Tetrahedron Lett.43(2002)4237)。
【化1】

[式中、DMTrは、ジメトキシトリチル基を示す。]
【0008】
しかしながら、この手法によれば、上記問題点(i)及び(ii)は解決されるものの、リン原子上の保護基を除去する際に、オリゴヌクレオチドが分解してしまうという致命的な問題が生ずることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、上記問題点(i)及び(ii)を解決しつつ、かつ実用に耐えうるボラノホスフェートオリゴマーを提供する手法が望まれていた。
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、リン原子上の保護基としてシアノエチル基を用いることで、オリゴヌクレオチドを分解させずに保護基を除去することができることを見出し、更に、このような嵩高い保護基を用いることによってオリゴマーの縮合が阻害されることを見出し、この点については、塩基と、特殊な縮合剤との存在下で縮合反応をさせることにより解決できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の第1態様では、下記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマーが提供される。
【0011】
【化2】

[式中、B1は、ピリミジン塩基、プリン塩基、又は、それらの誘導体を表し、R1は、ジメトキシトリチル基、又は、モノメトキシトリチル基であり、R2は、水素原子、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、又は、トリアルキルシリルオキシ基を表す。]
【0012】
本発明の第2態様では、本発明の第1態様にかかるボラノホスフェートモノマーを製造する方法の一態様が提供される。即ち、本発明の第2態様では、下記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマーの製造方法であって、
【化3】

[式中、B1は、ピリミジン塩基、プリン塩基、又は、それらの誘導体を表し、R1は、ジメトキシトリチル基、又は、モノメトキシトリチル基であり、R2は、水素原子、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、又は、トリアルキルシリルオキシ基を表す。]
シアノエチル基をβ脱離させない強塩基、及び、下記式(4a)又は、下記式(4b)で示される縮合剤存在下、
【化4】

[式中、A1、A2、A3、A4、A5及びA6は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基であり、ただし、A1、A2、A3、A4、A5及びA6のいずれか組み合わせが、互いに架橋して飽和環又は不飽和環を形成してもよく、かつ、置換基を有していてもよく、A7-は、求核性のないアニオン種であり、Q環基は、置換基を有していてもよい炭化水素芳香環若しくは置換基を有していてもよい窒素含有芳香環と縮合した1,2,4−トリアゾール−1−イルオキシ基、又は、置換基を有していてもよい、窒素原子を2以上含む5員環基である。]
【化5】

[式中、A11、A12、A13及びA14は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基であり、ただし、A11、A12、A13及びA14のいずれか組み合わせが、互いに架橋して飽和環又は不飽和環を形成してもよく、かつ、置換基を有していてもよく、A15-は、求核性のないアニオン種であり、S環基は、置換基を有していてもよい炭化水素芳香環若しくは置換基を有していてもよい窒素含有芳香環と縮合した1,2,4−トリアゾール−1−イルオキシ基、又は、置換基を有していてもよい、窒素原子を2以上含む5員環基である。]
下記式(2)で示されるボラノホスホリル化剤と、
【化6】

下記式(3)で示されるヌクレオシド誘導体と
【化7】

[式中、B1、R1及びR2は、上記の意味を有する。]
を反応させ反応生成物を得る工程と、前記反応生成物とトリエチルアミンとを反応させる工程とを含むことを特徴とする、ボラノホスフェートモノマーの製造方法が提供される。
【0013】
本発明の第2態様において、前記ボラノホスホリル化剤が、トリス−2−シアノエチルホスファイトをボラノ化して下記式で示されるトリス−2−シアノエチルボラノホスフェートを得、
【化8】

得られたトリス−2−シアノエチルボラノホスフェートとトリエチルアミンを反応させることにより得られることが好ましい。
【0014】
本発明の第3態様では、本発明の第1態様にかかるボラノホスフェートモノマーを用いた二量体の製造方法の一態様が提供される。即ち、本発明の第3態様では、下記一般式(1)で示されるボラノホスフェートモノマーと
【化9】

[式中、B1は、ピリミジン塩基、プリン塩基、又は、それらの誘導体を表し、R1は、ジメトキシトリチル基、又は、モノメトキシトリチル基であり、R2は、水素原子、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、又は、トリアルキルシリルオキシ基を表す。]
上記式(1)中のシアノエチル基をβ脱離させない強塩基、及び、下記式(4a)又は、下記式(4b)で示される縮合剤存在下、
【化10】

[式中、A1、A2、A3、A4、A5及びA6は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基であり、ただし、A1、A2、A3、A4、A5及びA6のいずれか組み合わせが、互いに架橋して飽和環又は不飽和環を形成してもよく、かつ、置換基を有していてもよく、A7-は、求核性のないアニオン種であり、Q環基は、置換基を有していてもよい炭化水素芳香環若しくは置換基を有していてもよい窒素含有芳香環と縮合した1,2,4−トリアゾール−1−イルオキシ基、又は、置換基を有していてもよい、窒素原子を2以上含む5員環基である。]
【化11】

[式中、A11、A12、A13及びA14は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基であり、ただし、A11、A12、A13及びA14のいずれか組み合わせが、互いに架橋して飽和環又は不飽和環を形成してもよく、かつ、置換基を有していてもよく、A15-は、求核性のないアニオン種であり、S環基は、置換基を有していてもよい炭化水素芳香環若しくは置換基を有していてもよい窒素含有芳香環と縮合した1,2,4−トリアゾール−1−イルオキシ基、又は、置換基を有していてもよい、窒素原子を2以上含む5員環基である。]
下記一般式(5)で示されるヌクレオシド誘導体と
【化12】

[式中、B2は、ピリミジン塩基、プリン塩基、又は、それらの誘導体を表し、R3は、保護基を表し、R4は、水素原子、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、又は、トリアルキルシリルオキシ基を表す。]
を反応させ、下記一般式(6)で示される二量体を製造する方法が提供される。
【化13】

[式中、B1、B2、R1、R2、R3及びR4は、前記と同義を表す。]
【0015】
本発明の第3態様では、前記強塩基が、下記式(7a)で示されるナフタレン誘導体であってもよい。
【化14】

[式中、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、C1〜C10アルキル基であり、X5、X6、X7、X8、X9及びX10は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、電子供与基である。]
【0016】
この場合、前記式(7a)中、X1、X2、X3及びX4が、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、メチル基、又は、エチル基であり、X5、X6、X7、X8、X9及びX10が、水素原子、C1〜C10アルキル基、又はC1〜C10アルコキシ基であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の第3態様では、前記縮合剤が前記式(4a)で示される化合物であってもよく、この場合は、前記式(4a)中のQ環基が、置換基を有していてもよいイミダゾリル基、置換基を有していてもよいトリアゾリル基、置換基を有していてもよいテトラゾリル基、又は、置換基を有しても良いベンゼン環若しくは置換基を有しても良いピリジン環と縮合したトリアゾリルオキシ基であり、A7-が、PF6-、BF4-、ClO4-、CF3SO2-、又は、(CF3SO22-であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の第3態様では、前記縮合剤が前記式(4b)で示される化合物であり、前記強塩基が下記式(7b)で示されるピリジン誘導体であってもよい。
【化15】

[式中、Y1は、水素原子、C1〜C10アルキル基、又は、C1〜C10アルコキシ基であり、Y2及びY3は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、C1〜C10アルキル基である。]
【0019】
この場合、前記式(4b)中のS環基が、置換基を有していてもよいイミダゾリル基、置換基を有していてもよいトリアゾリル基、置換基を有していてもよいテトラゾリル基、又は、置換基を有しても良いベンゼン環若しくは置換基を有しても良いピリジン環と縮合したトリアゾリルオキシ基であり、A15-が、PF6-、BF4-、ClO4-、CF3SO2-、又は、(CF3SO22-であることが好ましく、また、前記式(7b)中、Y1が水素原子、又は、メチル基であり、Y2及びY3が、メチル基であることが好ましい。
【0020】
本発明の第4態様では、本発明の第1態様にかかるボラノホスフェートモノマーを用いたオリゴヌクレオチド誘導体の製造方法の一態様が提供される。即ち、下記式(8)で示されるオリゴヌクレオチド誘導体と、
【化16】

[式中、B1及びB2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、ピリミジン塩基、プリン塩基、又は、それらの誘導体を表し、R1は、ジメトキシトリチル基、又は、モノメトキシトリチル基であり、R2及びR4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、又は、トリアルキルシリルオキシ基であり、R3は、保護基であり、nは1以上の整数を示す。]
脱保護試薬とを反応させて、R1を脱離させた後、上記式(8)中のシアノエチル基をβ脱離させない強塩基、及び、下記式(4a)、又は、下記式(4b)で示される縮合剤存在下、
【化17】

[式中、A1、A2、A3、A4、A5及びA6は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基であり、ただし、A1、A2、A3、A4、A5及びA6のいずれか組み合わせが、互いに架橋して飽和環又は不飽和環を形成してもよく、かつ、置換基を有していてもよく、A7-は、求核性のないアニオン種であり、Q環基は、置換基を有していてもよい炭化水素芳香環若しくは置換基を有していてもよい窒素含有芳香環と縮合した1,2,4−トリアゾール−1−イルオキシ基、又は、置換基を有していてもよい、窒素原子を2以上含む5員環基である。]
【化18】

[式中、A11、A12、A13及びA14は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基であり、ただし、A11、A12、A13及びA14のいずれか組み合わせが、互いに架橋して飽和環又は不飽和環を形成してもよく、かつ、置換基を有していてもよく、A15-は、求核性のないアニオン種であり、S環基は、置換基を有していてもよい炭化水素芳香環若しくは置換基を有していてもよい窒素含有芳香環と縮合した1,2,4−トリアゾール−1−イルオキシ基、又は、置換基を有していてもよい、窒素原子を2以上含む5員環基である。]
下記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマーと
【化19】

[式中、B1、R1及びR2は、上記と同義である。]
を反応させることを特徴とする、下記式(9)で示されるオリゴヌクレオチド誘導体の製造方法が提供される。
【化20】

[式中、B1、B2、R1、R2、R3、R4及びnは、前記と同義を表す。]
【0021】
本発明の第4態様において、反応が固相で行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、従来開発されたボラノホスフェートオリゴマーに見られた問題点を解決しつつ、かつ実用に耐えうるボラノホスフェートオリゴマーを提供することが可能となる。本発明により得られるボラノホスフェートオリゴマーはアンチセンス分子として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1態様では、下記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマーが提供される。
【化21】

[式中、B1、R1及びR2は、上記の意味を有する。]
【0024】
上記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマーは、リン原子上の保護基がシアノエチル基であるため、アンモニア等を用いて保護基を除去する場合、シアノエチル基はβ脱離によって除去される。このため、当該ボラノホスフェートモノマーを用いてオリゴマーを得た後にこの保護基を除去しても、オリゴマーを分解させることはない。したがって、本発明により、実用に耐えうるボラノホスフェートオリゴマーを提供することが可能となる。
【0025】
上記式中、B1は、チミン、シトシン、ウラシル等のピリミジン塩基;アデニン、グアニン等のプリン塩基;または5−メチルシトシン、5−フルオロウラシル、5−ヒドロキシメチルシトシン等のそれらの誘導体を表す。
【0026】
溶媒への溶解度を向上させるために、塩基部位に、ジメトキシトリチル基(DMTr)、アセチル(Ac)、ベンゾイル(Bz)、イソブチリル(iBu)、フェノキシアセチル(PAC)、4−(t−ブチル)フェノキシアセチル(BPA)、アリルオキシカルボニル(AOC)、2−[(t−ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル]ベンゾイル(SiOMB)、2−(アセチルメチル)ベンゾイル(AMB)、2−アジドベンゾイル(AZMB)、ジフェニルカルバモイル(DPC)、フェニルアセチル(PA)等の保護基を導入してもよい。
【0027】
本発明の第1態様において、B1は、シトシン、チミン、アデニン、グアニンまたはそれらの誘導体、あるいはそれらに保護基が導入されたものであることが好ましい。
上記式中、R1は、ジメトキシトリチル基(DMTr)、又は、モノメトキシトリチル基である。
【0028】
本発明の第1態様において、R1は、ジメトキシトリチル基であることが好ましい。
【0029】
上記式中、R2は、水素原子、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、又は、トリアルキルシリルオキシ基を表す。
【0030】
本明細書において、「アルコキシ基」としては、制限するわけではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ等を挙げることができる。
【0031】
本明細書において、「アルケニルオキシ基」としては、制限するわけではないが、ビニルオキシ、アリルオキシ、1−プロペニルオキシ、イソプロペニルオキシ、2−メチル−1−プロペニルオキシ、2−メチルアリルオキシ、2−ブテニルオキシ等を挙げることができる。
【0032】
本明細書において、「アシルオキシ基」としては、制限するわけではないが、C1-6アルキル−カルボニルオキシ(たとえばメチルカルボニルオキシ、エチルカルボニルオキシ等)、C6-10アリール−カルボニルオキシ(たとえばベンゾイルオキシ)などが挙げられる。
【0033】
本明細書において、「トリアルキルシリルオキシ基」としては、制限するわけではないが、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基などを挙げることができる。
【0034】
本発明の第1態様において、R2は、水素原子、アルコキシ基、トリアルキルシリルオキシ基であることが好ましい。
【0035】
本発明の第1態様にかかるボラノホスフェートモノマーをRNA誘導体合成のために使用する場合には、R2はトリアルキルシリルオキシ基であることが好ましく、t−ブチルジメチルシリル基であることがより好ましい。
【0036】
本発明の第2態様では、本発明の第1態様にかかるボラノホスフェートモノマーを製造する方法の一態様が提供される。即ち、本発明の第2態様では、シアノエチル基をβ脱離させない強塩基、及び、所定の縮合剤存在下、下記式(2)で示されるボラノホスホリル化剤と、下記式(3)で示されるヌクレオシド誘導体とを反応させ反応生成物を得る工程と、前記反応生成物とトリエチルアミンとを反応させる工程とを含むことを特徴とする、下記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマーの製造方法が提供される。
【0037】
【化22】

[式中、B1、R1及びR2は、上記の意味を有する。]
【0038】
本発明の第2態様において、上記式中のB1、R1及びR2についての説明は、本発明の第1態様〜第2態様においてしたのと同様である。
【0039】
本発明の第2態様では、下記式(2)で示されるボラノホスホリル化剤が用いられる。
【化23】

【0040】
また、本発明の第2態様では、下記一般式(3)で示されるヌクレオシド誘導体が用いられる。
【化24】

[式中、B1、R1及びR2は、上記の意味を有する。]
【0041】
本発明の第2態様において、使用される上記式(2)で示されるボラノホスホリル化剤の量は、ボラノホスホリル化反応を定量的に進行させるために、上記式(3)で示されるヌクレオシド誘導体1モルに対して1モル〜3モル用いることが好ましく、1.2モル〜1.5モル用いることが更に好ましい。
【0042】
また、本発明の第2態様では、上記式(2)で示されるボラノホスホリル化剤と、上記式(3)で示されるヌクレオシド誘導体とを反応させる際に、シアノエチル基をβ脱離させない強塩基が用いられる。
【0043】
本明細書において、「シアノエチル基をβ脱離させない強塩基」としては、例えば、解離したプロトンのみを捕捉し、かつ捕捉する側に平衡が偏っている塩基を挙げることができる。
【0044】
このような強塩基の一態様として、例えば、下記式(7a)で示されるナフタレン誘導体を挙げることができる。
【化25】

上記式(7a)中、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、C1〜C10アルキル基である。
【0045】
本明細書において、「C1〜C10アルキル基」としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル等を挙げることができる。
【0046】
本発明において、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、メチル基、又は、エチル基であることが好ましい。
【0047】
上記式(7a)中、X5、X6、X7、X8、X9及びX10は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、電子供与基である。
【0048】
本明細書において、「電子供与基」としては、制限するわけではないが、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキル基、アリール基などを挙げることができる。
【0049】
本明細書において、「アリール基」としては、制限するわけではないが、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
【0050】
本発明の第2態様において、X5、X6、X7、X8、X9及びX10は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、C1〜C10アルキル基、又はC1〜C10アルコキシ基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、ジメチルアミノ基であることがより好ましい。
【0051】
また、本明細書において、「シアノエチル基をβ脱離させない強塩基」の他の態様としては、例えば、下記式(7b)で示されるピリジン誘導体を挙げることができる。
【化26】

上記式(7b)中、Y1は、水素原子、C1〜C10アルキル基、又は、C1〜C10アルコキシ基である。また、Y2及びY3は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、C1〜C10アルキル基である。
【0052】
ピリジンはその窒素原子求核性ゆえボランを脱離させてしまうが、2,6−位にアルキル基を導入することで、求核性のない化合物とすることができる。
【0053】
本発明の第2態様において、Y1は、水素原子又はC1〜C10アルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
本発明の第2態様において、Y2及びY3は、メチル基であることが好ましい。
【0054】
本発明の第2態様において、反応を完結させるために、シアノエチル基をβ脱離させない強塩基は、上記式(2)で示されるボラノホスホリル化剤に対して過剰量用いることが好ましい。例えば、上記式(2)で示されるボラノホスホリル化剤1モルに対して5モル以上用いることが好ましく、7モル〜20モル用いることが更に好ましい。
【0055】
また、本発明の第2態様では、上記式(2)で示されるボラノホスホリル化剤と、上記式(3)で示されるヌクレオシド誘導体とを反応させる際に、縮合剤が用いられる。
【0056】
本発明で用いられる縮合剤は、リン原子上の保護基がシアノエチル基のように嵩高い基であっても縮合反応が進行するものである必要がある。このような縮合剤の一態様として、下記式(4a)で示される縮合剤を挙げることができる。
【0057】
【化27】

上記式(4a)中、A1、A2、A3、A4、A5及びA6は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基(例えば、メチル基、エチル基であることが好ましい)であり、A1、A2、A3、A4、A5及びA6のいずれか組み合わせが、互いに架橋して飽和環又は不飽和環を形成してもよく、かつ、置換基を有していてもよい。
【0058】
本明細書において、「飽和環又は不飽和環」としては、4員環〜10員環の飽和環又は不飽和環であることが好ましく、4員環〜7員環の飽和環又は不飽和環であることが更に好ましく、5員環の飽和環又は不飽和環であることが特に好ましい。
【0059】
例えば、下記式で表されるように、A1及びA2、A3及びA4、並びに、A5及びA6が、それぞれ互いに架橋して5員飽和環を形成する場合、A2及びA3、並びに、A5及びA6が架橋して5員飽和環を形成し、A1及びA4がメチル基である場合などを好ましく挙げることができる。
【0060】
【化28】

[式中、A7-及びQ環基は、上記の意味を有する。]
【0061】
上記式(4a)中、A7-は、求核性のないアニオン種である。
本明細書において、「求核性のないアニオン種」としては、例えば、PF6-、BF4-、ClO4-、CF3SO2-、又は、(CF3SO22-を挙げることができる。
本発明の第2態様において、A7-は、PF6-又はBF4-であることが好ましい。
【0062】
上記式(4a)中、Q環基は、置換基を有していてもよい炭化水素芳香環若しくは置換基を有していてもよい窒素含有芳香環と縮合した1,2,4−トリアゾール−1−イルオキシ基、又は、置換基を有していてもよい、窒素原子を2以上含む5員環基である。
【0063】
本明細書において、「炭化水素芳香環」としては、例えば、ベンゼンのような単環式炭化水素芳香環;ビフェニル、トリフェニル、ナフタレン、インデン、アントラセン、フェナントレンのような多環式炭化水素芳香環を挙げることができる。
【0064】
本明細書において、「窒素含有芳香環」としては、例えば、ピロール、イミダゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンのような単環式窒素含有芳香環;インドール、キノリン、イソキノリン、プリン、シンノリン、キノキサリン、キナゾリジン、フタラジン、カルバゾール、アクリジン、フェナジン、フェナントリジンのような多環式窒素含有芳香環を挙げることができる。
【0065】
本明細書において、窒素原子を2以上含む5員環基としては、例えば、ピロリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基を挙げることができる。
【0066】
本発明の第2態様において、Q環基で示される「炭化水素芳香環」、「窒素含有芳香環」、「窒素原子を2以上含む5員環基」には、置換基が導入されていてもよい。この置換基としては、例えば、C1〜C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ナフチル、インデニル、トリル、キシリル、ベンジル等)、C1〜C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C6〜C10アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、水酸基、又はハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)などを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上導入されていてもよく、好ましくは1個〜4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0067】
本発明の第2態様において、Q環基は、置換基を有していてもよいイミダゾリル基、置換基を有していてもよいトリアゾリル基、置換基を有していてもよいテトラゾリル基、又は、置換基を有しても良いベンゼン環若しくは置換基を有しても良いピリジン環と縮合したトリアゾリルオキシ基であることが好ましく、ニトロ基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはトリフルオロメチル基等の電子吸引型の置換基を有するイミダゾリル基、トリアゾリル基若しくはテトラゾリル基、又は、ピリジン環と縮合したトリアゾリルオキシ基であることがより好ましい。
【0068】
また、本発明の第2態様で用いられる縮合剤の他の態様として、下記式(4b)で示される縮合剤を挙げることができる。
【化29】

上記式(4b)中、A11、A12、A13及びA14は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基(例えば、メチル基、エチル基であることが好ましい)であり、A11、A12、A13及びA14のいずれか組み合わせが、互いに架橋して飽和環又は不飽和環を形成してもよく、かつ、置換基を有していてもよい。
【0069】
例えば、下記式で表されるように、A12及びA13が、互いに架橋して5員飽和環を形成し、A11及びA14がメチル基である場合などを好ましく挙げることができる。
【化30】

[式中、A15-及びS環基は、上記の意味を有する。]
【0070】
上記式(4b)中、A15-は、求核性のないアニオン種である。
本発明の第2態様において、A15-は、PF6-又はBF4-であることが好ましい。
【0071】
上記式(4b)中、S環基は、置換基を有していてもよい炭化水素芳香環若しくは置換基を有していてもよい窒素含有芳香環と縮合した1,2,4−トリアゾール−1−イルオキシ基、又は、置換基を有していてもよい、窒素原子を2以上含む5員環基である。
【0072】
本発明の第2態様において、S環基で示される「炭化水素芳香環」、「窒素含有芳香環」、「窒素原子を2以上含む5員環基」には、置換基が導入されていてもよい。この置換基としては、例えば、C1〜C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ナフチル、インデニル、トリル、キシリル、ベンジル等)、C1〜C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C6〜C10アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、水酸基、又はハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)などを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上導入されていてもよく、好ましくは1個〜4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0073】
本発明の第2態様において、S環基は、置換基を有していてもよいイミダゾリル基、置換基を有していてもよいトリアゾリル基、置換基を有していてもよいテトラゾリル基、又は、置換基を有しても良いベンゼン環若しくは置換基を有しても良いピリジン環と縮合したトリアゾリルオキシ基であることが好ましく、ニトロ基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはトリフルオロメチル基等の電子吸引型の置換基を有するイミダゾリル基、トリアゾリル基若しくはテトラゾリル基、又は、ピリジン環と縮合したトリアゾリルオキシ基であることがより好ましい。
【0074】
本発明の第2態様において、使用される縮合剤の量は、縮合反応を定量的に進行させるために、上記式(2)で示されるボラノホスホリル化剤1モルに対して、1モル〜20モル用いることが好ましく、1.5モル〜10モル用いることが更に好ましく、2モル〜3モル用いることが更になお好ましい。
【0075】
本発明の第2態様において、縮合剤が前記式(4a)で示される化合物である場合には、強塩基としては、より塩基性の強い上記式(7a)で示されるナフタレン誘導体を用いることが好ましい。
【0076】
また、本発明の第2態様において、縮合剤が前記式(4b)で示される化合物である場合には、強塩基としては、より塩基性の強い上記式(7a)で示されるナフタレン誘導体を用いてもよいし、やや塩基性が弱い上記式(7b)で示されるピリジン誘導体を用いてもよい。アニオン化したヌクレオシド誘導体と縮合剤との反応を避ける観点からは、やや塩基性が弱い上記式(7b)で示されるピリジン誘導体を用いることが好ましい。
【0077】
また、本発明の第2態様では、続いて、ボラノホスホリル化剤とヌクレオシド誘導体とを反応させ得られた反応生成物を単離精製した後に、トリエチルアミンとを反応させる。これにより、リン原子上のシアノエチル基が一つ除去され、上記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマーを得ることができる。
【0078】
本発明の第2態様において、反応を完結させるために、トリエチルアミンは、上記式(2)で示されるボラノホスホリル化剤に対して過剰量用いることが好ましい。例えば、上記式(2)で示されるボラノホスホリル化剤1モルに対して5モル以上用いることが好ましく、7モル〜20モル用いることが更に好ましい。
【0079】
本発明の第2態様において、典型的には、上記式(2)で示されるボラノホスホリル化剤と上記式(3)で示されるヌクレオシド誘導体の溶液に、縮合剤と強塩基を加えて攪拌し、得られた生成物を単離精製した後に、トリエチルアミンを反応させることで、上記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマーを得る。具体的には、下記のスキームに従って進むと考えられる。
【0080】
【化31】

[式中、B1、R1及びR2は、上記の意味を有する。]
【0081】
本発明の第2態様において、溶媒としては上記式(2)で示されるボラノホスホリル化剤と上記式(3)で示されるヌクレオシド誘導体および縮合剤が溶解できるものが好ましい。たとえば、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド等を挙げることができ、アセトニトリル、又はN,N−ジメチルホルムアミドであることが好ましい。
【0082】
本発明の第2態様において、反応温度としては、−30℃〜50℃が好ましく、0℃〜40℃がさらに好ましく、15℃〜30℃が更になお好ましい。所望により、光を遮断して反応を進行させてもよい。
【0083】
本発明の第2態様において、圧力は、大気圧であることが好ましい。雰囲気は、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
【0084】
本発明の第2態様で用いられる上記式(2)で示されるボラノホスホリル化剤は、例えば、トリス−2−シアノエチルホスファイトをBH3・THF錯体、BH3・SMe2錯体等でボラノ化してトリス−2−シアノエチルボラノホスフェートを得て、得られたトリス−2−シアノエチルボラノホスフェートとトリエチルアミンを反応させることにより得ることができる。
【0085】
【化32】

【0086】
ボラノホスホリル化剤の製造方法において、使用されるBH3・THF錯体、BH3・SMe2錯体等のボラノ化剤の量は、ボラノ化反応を定量的に進行させるために、トリス−2−シアノエチルホスファイト1モルに対して1モル〜2モルであることが好ましく、1.2モル〜1.5モルであることが更に好ましい。
【0087】
ボラノホスホリル化剤の製造方法において、反応を完結させるために、トリエチルアミンは、得られたトリス−2−シアノエチルボラノホスフェートに対して過剰量用いることが好ましい。例えば、トリス−2−シアノエチルボラノホスフェート1モルに対して、5モル以上用いることが好ましく、7モル〜20モル用いることが更に好ましい。
【0088】
ボラノホスホリル化剤の製造方法において、典型的には、トリス−2−シアノエチルホスファイトの溶液にBH3・THF錯体を加えて攪拌し、得られた反応生成物を単離精製した後に、トリエチルアミンと反応させることで、上記式(2)で示されるボラノホスホリル化剤を得る。
【0089】
ボラノホスホリル化剤の製造方法において、溶媒としてはトリス−2−シアノエチルホスファイトが溶解できるものが好ましい。たとえば、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミドを挙げることができ、アセトニトリル、又はN,N−ジメチルホルムアミドであることが好ましい。
【0090】
ボラノホスホリル化剤の製造方法において、反応温度としては、−30℃〜50℃が好ましく、0℃〜40℃がさらに好ましく、15℃〜30℃が更になお好ましい。所望により、光を遮断して反応を進行させてもよい。
【0091】
ボラノホスホリル化剤の製造方法において、圧力は、大気圧であることが好ましい。また、雰囲気は、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
【0092】
本発明の第3態様では、本発明の第1態様にかかるボラノホスフェートモノマーを用いた二量体の製造方法の一態様が提供される。即ち、本発明の第3態様では、下記一般式(1)で示されるボラノホスフェートモノマーと、上記式(1)中のシアノエチル基をβ脱離させない強塩基、及び、所定の縮合剤存在下、下記一般式(5)で示されるヌクレオシド誘導体とを反応させ、下記一般式(6)で示される二量体を製造する方法が提供される。
【0093】
【化33】

[式中、B1、R1、R2は、上記の意味を有する。]
【0094】
上記式中、B1、R1及びR2についての説明は、本発明の第1態様〜第2態様においてしたのと同様である。
【0095】
本発明の第3態様では、下記式(5)で示されるヌクレオシド誘導体を用いる。
【化34】

上記式(5)中、B2は、チミン、シトシン、ウラシル等のピリミジン塩基;アデニン、グアニン等のプリン塩基;または5−メチルシトシン、5−フルオロウラシル、5−ヒドロキシメチルシトシン等のそれらの誘導体を表す。
【0096】
溶媒への溶解度を向上させるために、塩基部位に、ジメトキシトリチル基(DMTr)、ベンゾイル(Bz)、イソブチリル(iBu)、フェノキシアセチル(PAC)、4−(t−ブチル)フェノキシアセチル(BPA)、アリルオキシカルボニル(AOC)、2−[(t−ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル]ベンゾイル(SiOMB)、2−(アセチルメチル)ベンゾイル(AMB)、2−アジドベンゾイル(AZMB)、ジフェニルカルバモイル、フェニルアセチル等の保護基を導入してもよい。
【0097】
本発明の第3態様において、B2は、シトシン、チミン、アデニン、グアニンまたはそれらの誘導体、あるいはそれらに保護基が導入されたものであることが好ましい。
【0098】
上記式(5)中、R3は、保護基を表す。
本明細書において、保護基としては、二量体の製造方法が固相反応である場合には固相反応用の保護基(担体)を、液相反応の場合は液相反応用の各種保護基を挙げることができる。
【0099】
本明細書において、液相反応用の保護基としては、アルキル基、アルケニル基、アシル基、置換基を有していてもよいシリル基、アルコキシアシル基、アリールオキシアシル基等を挙げることができる。
【0100】
本明細書において、「アルケニル基」としては、制限するわけではないが、ビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチルアリル、2−ブテニル等を挙げることができる。
【0101】
本明細書において、「アシル基」としては、制限するわけではないが、C1-6アルキル−カルボニル(たとえばメチルカルボニル、エチルカルボニル等)、C6-10アリール−カルボニル(たとえばベンゾイル)などが挙げられる。
【0102】
本明細書において、「置換基を有していてもよいシリル基」としては、制限するわけではないが、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基などを挙げることができる。
【0103】
本明細書において、「アルコキシアシル基」としては、制限するわけではないが、C1-6アルコキシ−C1-6アルキル−カルボニル(たとえばメトキシメチルカルボニル、エトキシエチルカルボニル等)、C1-6アルコキシ−C6-10アリール−カルボニル(たとえばメトキシベンゾイル)などが挙げられる。
【0104】
本明細書において、「アリールオキシアシル基」としては、制限するわけではないが、C6-10アリールオキシ−C1-6アルキル−カルボニル(たとえばフェノキシアセチル、フェノキシエチルカルボニル等)、C6-10アリールオキシ−C6-10アリール−カルボニル(たとえばフェノキシベンゾイル)などが挙げられる。
【0105】
本明細書において、固相反応用の担体としては、たとえば、アミノアルキル化された孔径が制御された多孔性ガラス(controlled pore glass:CPG)、アミノアルキル化された高架橋性ポリスチレン(HCP)といった固相法に用いられる公知の高分子担体であって、できるだけ膨潤性がなく、過剰に用いた試薬を洗浄によって簡単に除去できるものを特に制限なく挙げることができる。
【0106】
担体とヌクレオシドの水酸基はコハク酸エステル、シュウ酸エステル、フタル酸エステル等のリンカーを介して結合していてもよい。
【0107】
本発明の第3態様において、R3は、二量体の製造方法が固相反応である場合には、CPG又はHCP、あるいはリンカーを有する担体であることが好ましく、二量体の製造方法が液相反応である場合には、ベンゾイル基、フェノキシアセチル基であることが好ましい。
【0108】
上記式(5)中、R4は、水素原子、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、又は、トリアルキルシリルオキシ基を表す。
【0109】
本発明の第3態様において、R4は、水素原子、メトキシ基、又はアシルオキシ基であることが好ましい。
【0110】
本発明の第3態様において、反応が固相反応の場合には、上記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマーは、上記式(5)で示されるヌクレオシド誘導体に対して過剰量用いることが好ましい。例えば、上記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマーは、上記式(5)で示されるヌクレオシド誘導体1モルに対して1モル〜50モル用いることが好ましく、10モル〜40モル用いることが更に好ましく、20モル〜30モル用いることが更になお好ましい。
【0111】
本発明の第3態様において、反応が液相反応の場合には、上記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマーは、縮合反応を定量的に進行させるために、上記式(5)で示されるヌクレオシド誘導体1モルに対して1モル〜3モル用いることが好ましく、1.2モル〜1.5モル用いることが更に好ましい。
【0112】
また、本発明の第3態様では、上記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマーと、上記式(5)で示されるヌクレオシド誘導体とを反応させるに際して、シアノエチル基をβ脱離させない強塩基が用いられる。
【0113】
本発明の第3態様において、強塩基の説明は、本発明の第2態様においてしたのと同様である。
【0114】
本発明の第3態様において、反応が液相、固相のいずれの場合であっても、反応を完結させるために、シアノエチル基をβ脱離させない強塩基は、上記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマーに対して過剰量用いることが好ましい。例えば、上記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマー1モルに対して5モル以上用いることが好ましく、7モル〜20モル用いることが更に好ましい。
【0115】
また、本発明の第3態様では、上記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマーと、上記式(5)で示されるヌクレオシド誘導体とを反応させるに際して、所定の縮合剤が用いられる。
【0116】
本発明の第3態様において、当該所定の縮合剤の説明は、本発明の第2態様においてしたのと同様である。
【0117】
本発明の第3態様において、使用される縮合剤は、反応が液相、固相のいずれの場合であっても、縮合反応を定量的に進行させるために、上記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマー1モルに対して、1モル〜20モル用いることが好ましく、1.5モル〜10モル用いることが更に好ましく、2モル〜3モル用いることが更になお好ましい。
本発明の第3態様においても、本発明の第2態様と同様に、縮合剤が前記式(4a)で示される化合物である場合には、強塩基としては、より塩基性の強い上記式(7a)で示されるナフタレン誘導体を用いることが好ましい。
【0118】
また、本発明の第3態様において、縮合剤が前記式(4b)で示される化合物である場合には、強塩基としては、より塩基性の強い上記式(7a)で示されるナフタレン誘導体を用いてもよいし、やや塩基性が弱い上記式(7b)で示されるピリジン誘導体を用いてもよい。アニオン化したヌクレオシド誘導体と縮合剤との反応を避ける観点からは、やや塩基性が弱い上記式(7b)で示されるピリジン誘導体を用いることが好ましい。
【0119】
本発明の第3態様において、典型的には、上記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマーと上記式(5)で示されるヌクレオシド誘導体の溶液に、縮合剤と強塩基を加えて攪拌することで、上記式(6)で示される二量体を得る。
【0120】
本発明の第3態様において、溶媒としては上記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマーと上記式(5)で示されるヌクレオシド誘導体および縮合剤が溶解できるものが好ましい。たとえば、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミドを挙げることができ、アセトニトリル、又はN,N−ジメチルホルムアミドであることが好ましい。
【0121】
本発明の第3態様において、反応温度としては、−30℃〜50℃が好ましく、0℃〜40℃がさらに好ましく、15℃〜30℃が更になお好ましい。所望により、光を遮断して反応を進行させてもよい。
【0122】
本発明の第3態様において、圧力は、大気圧であることが好ましい。雰囲気は、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
【0123】
本発明の第4態様では、本発明の第1態様にかかるボラノホスフェートモノマーを用いたオリゴヌクレオチド誘導体の製造方法の一態様が提供される。即ち、下記式(8)で示されるオリゴヌクレオチド誘導体と、脱保護試薬とを反応させて、R1を脱離させた後、上記式(8)中のシアノエチル基をβ脱離させない強塩基、及び、所定の縮合剤存在下、下記式(5)で示されるボラノホスフェートモノマーとを反応させることを特徴とする、下記式(9)で示されるオリヌクレオチド誘導体の製造方法が提供される。
【0124】
【化35】

[式中、B1、B2、R1、R2、R3及びR4は、上記の意味を有する。]
【0125】
本発明の第4態様にしたがって脱保護反応及び縮合反応を繰り返すことで、任意の鎖長までオリゴヌクレオチド鎖を延長することができる。また、任意の核酸塩基を有するボラノホスフェートモノマー(1)を用いることで任意の塩基配列を有するオリゴマーを合成することができる。
【0126】
本発明の第4態様において、上記式中、B1、B2、R1、R2、R3及びR4についての説明は、本発明の第1態様〜第3態様においてしたのと同様である。
【0127】
本発明の第4態様において、まず、上記式(8)で示されるオリゴヌクレオチド誘導体と脱保護試薬とを反応させて、R1を脱離させる。
【0128】
ここで、上記式(8)中、nは、1以上の整数を示し、1〜100であることが好ましく、10〜70であることがより好ましく、10〜30であることが更に好ましい。
本発明の第4態様において、脱保護試薬は、たとえば、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸を好ましく挙げることができる。
【0129】
本発明の第4態様において、脱保護試薬は、反応を完結させるために、上記式(8)で示されるオリゴヌクレオチド誘導体1モルに対して、2モル〜100モル用いることが好ましく、5モル〜50モル用いることが更に好ましく、10モル〜20モル用いることが更になお好ましい。
【0130】
本発明の第4態様において、脱保護反応によって生成するトリチルカチオンがボラノホスフェートに作用して分解反応を引き起こす恐れがあるため、脱保護反応は、トリチルカチオンを還元する試薬(トリチルカチオンスカベンジャー)存在下で行うことが好ましい。このような試薬としては、トリエチルシラン、BH3・ピリジン錯体を挙げることができる。
【0131】
本発明の第4態様において、トリチルカチオンを還元する試薬は、上記式(8)で示されるオリゴヌクレオチド誘導体に対して、大過剰用いることが好ましい。例えば、上記式(8)で示されるオリゴヌクレオチド誘導体1モルに対して、2モル〜100モル用いることが好ましく、5モル〜50モル用いることが更に好ましく、10モル〜20モル用いることが更になお好ましい。
【0132】
本発明の第4態様において、上記式(8)で示されるオリゴヌクレオチド誘導体と脱保護試薬とを反応させてR1を脱離させた後、本発明の第3態様にかかる縮合反応と同様の縮合反応を行い、上記式(9)で示されるオリゴヌクレオチド誘導体を製造する。
【0133】
本発明の第4態様において、オリゴヌクレオチド誘導体の製造方法が固相反応である場合には、使用される上記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマーの量は、縮合反応を定量的に進行させるために、上記式(8)で示されるオリゴヌクレオチド誘導体1モルに対して1モル〜50モル用いることが好ましく、10モル〜40モル用いることが更に好ましく、20モル〜30モル用いることが更になお好ましい。
【0134】
本発明の第4態様において、オリゴヌクレオチド誘導体の製造方法が液相反応である場合には、使用される上記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマーの量は、縮合反応を定量的に進行させるために、上記式(8)で示されるオリゴヌクレオチド誘導体1モルに対して1モル〜3モル用いることが好ましく、1.2モル〜1.5モル用いることが更に好ましい。
【0135】
本発明の第4態様で用いられる強塩基は、本発明の第2態様で説明したのと同様である。
本発明の第4態様において、強塩基は、反応が液相、固相のいずれの場合であっても、反応を定量的に進行させるために、上記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマーに対して過剰量用いることが好ましい。例えば、上記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマー1モルに対して5モル以上用いることが好ましく、7モル〜20モル用いることが更に好ましい。
【0136】
本発明の第4態様で用いられる縮合剤は、本発明の第3態様で説明したのと同様である。
本発明の第4態様において、縮合剤は、反応が液相、固相のいずれの場合であっても、反応を定量的に進行させるために、上記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマー1モルに対して、1モル〜20モル用いることが好ましく、1.5モル〜10モル用いることが更に好ましく、2モル〜3モル用いることが更になお好ましい。
【0137】
本発明の第4態様において、典型的には、上記式(8)で示されるオリゴヌクレオチド誘導体の溶液に、脱保護試薬を加え、反応生成物を得る。次いで、反応生成物の溶液に、上記式(5)で示されるヌクレオシド誘導体を加え、強塩基及び縮合剤を添加し、攪拌してオリゴヌクレオチド誘導体(9)を得る。
【0138】
本発明の第4態様において、溶媒としては上記式(8)で示されるオリゴヌクレオチド誘導体および縮合剤が溶解できるものが好ましい。たとえば、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミドを挙げることができ、アセトニトリル、又はN,N−ジメチルホルムアミドであることが好ましい。
【0139】
本発明の第4態様において、反応温度としては、−30℃〜50℃が好ましく、0℃〜40℃がさらに好ましく、15℃〜30℃が更になお好ましい。所望により、光を遮断して反応を進行させてもよい。
【0140】
本発明の第4態様において、圧力は、大気圧であることが好ましい。雰囲気は、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
【0141】
本発明の第4態様によって任意の鎖長を有するオリゴヌクレオチド誘導体が得られた場合には、まず、5'−末端のR1を本発明の第4態様において説明した脱保護反応によって除去する。
【0142】
次いで、得られた5'−位に遊離の水酸基を有するオリゴマーから、リン原子上の保護基である2−シアノエチル基をDBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデカ−7−エン)等で除去する。次いで、アンモニアで処理することにより、核塩基の保護基およびR4で示される担体が除去され、ボラノホスフェートオリゴマーが得られる。
【実施例】
【0143】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。
反応に用いた溶媒は、市販のものを蒸留した後ナトリウムまたはモレキュラーシーブ4Aで乾燥したものを用いた。その他の試薬は市販のものをそのまま用いた。
【0144】
各種分析機器は、以下に示した機種を用いた。
1H−核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR):バリアン Mercury 300(300MHz)
31P−核磁気共鳴スペクトル(31P−NMR):バリアン Mercury 300(121.5MHz)
カラムクロマトグラフィーに充填するシリカゲルには、KANTO CHEMICALのSilica Gel 60Nを用いた。
【0145】
参考例1
トリス−2−シアノエチル ボラノホスフェートの調製
【化36】

【0146】
トリス−2−シアノエチルホスファイト(24.7g,102.4mmol)の無水THF溶液(103mL)に、アルゴン雰囲気下で、BH3・THF/THF(121.5mL,113mmol)の0.93M溶液を0℃で滴下にて加えた。反応混合物を1時間室温にて攪拌し、反応混合物を減圧下で乾燥させた。残渣をシリカゲルカラムで精製した(150g)。カラムクロマトグラフィーは、酢酸エチルを用いて行った。トリス−2−シアノエチルボラノホスフェートを含む部分を集めて減圧下で乾燥させ、表題化合物を無色油状物質として得た(22.9g,88%)。
1H NMR(CDCl3)δ4.31(6H,m),2.79(6H,t,J=5.7Hz),1−0(3H,bq,BH3);31P NMR(CDCl3)δ119.8−116.9(m).
【0147】
参考例2
トリエチルアンモニウム ビス−2−シアノエチルボラノホスフェートの調製
【化37】

【0148】
参考例1で得たトリス−2−シアノエチルボラノホスフェート(22.8g,89.4mmol)の無水CH2Cl2溶液(89.4mL)に、アルゴン雰囲気下で、Et3N(124mL,894mmol)を室温で滴下にて加え、昇温させ、還流した。1時間攪拌した後、反応混合物を室温まで冷却した。残渣を減圧下で乾燥させ、無水トルエン及びCHCl3で共沸を繰り返し、表題化合物を無色油状物質として得た(27.1g,定量的)。
【0149】
1H NMR(CDCl3)δ12.58(1H,bs),4.14−4.04(4H,m),3.07(6H,q,J=7.3Hz),2.74−2.66(4H,m)1.34(9H,t,J=7.2Hz),1−0(3H,bq,BH3);31P NMR(CDCl3)δ96.64(q,JPB=127.37Hz)
【0150】
参考例1〜参考例2の反応スキームを下記に示す。
【化38】

[式中、「CE」はシアノエチル基を表す。]
【0151】
参考例3
ビス−2−シアノエチル 5'−O−ジメトキシトリチル−N6−ベンゾイル−2'−デオキシアデノシン−3'−イル ボラノホスフェート
【化39】

5'−O−ジメトキシトリチル−N6ベンゾイル−2'−デオキシアデノシン(1.31g,2.00mmol)及び参考例2で得られたトリエチルアンモニウム ビス−2−シアノエチルボラノホスフェート(0.730g,2.40mmol)を、無水ピリジンによる共沸、次いで無水トルエンによる共沸を繰り返すことで乾燥させた後、無水アセトニトリル(20.0mL)に溶解させた。溶液に、引き続いて、2,6−ルチジン(2.30mL,20.0mmol)、PyNTP(トリス(ピロリジン−1−イル)3−ニトロ−1,2,4−トリアゾール−1−イル ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート)(2.40g,4.80mmol)を加えた。室温で1時間攪拌した後、反応混合物をCHCl3(50mL)で希釈した。反応混合物を飽和NaHCO3(3x50mL)で洗浄し、水層をCHCl3(2x50mL)で逆抽出した。有機層及び洗浄液を集めて、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で乾燥させた。残渣を無水トルエンで共沸を繰り返し、シリカゲルカラムで精製した(100g)。カラムクロマトグラフィーは、酢酸エチルを用いて行った。ビス−2−シアノエチル 5'−O−ジメトキシトリチル−N6−ベンゾイル−2'−デオキシアデノシン−3'−イル ボラノホスフェートを含む部分を集めて、減圧下で乾燥させ、表題化合物を無色泡状物として得た(1.29g,77%)。
【0152】
1H NMR(CDCl3)δ9.03(1H,bs),8.72(1H,s),8.17(1H,s),8.07−7.18(14H,m),6.81(4H,d,J=8.1Hz),6.52(1H,t,J=7.1Hz),5.25(1H,m),4.38(1H,m),4.29−4.17(4H,m),3.78(6H,s),3.44(2H,m),2.82−2.57(6H,m),1−0(3H,bq,BH3);31P NMR(CDCl3)δ120.0−116.8(m).
【0153】
参考例4
ビス−2−シアノエチル 5'−O−ジメトキシトリチル−N4−ベンゾイル−2'−デオキシシチジン−3'−イル ボラノホスフェート
【化40】

【0154】
参考例3と同様の手順を行った。但し、5'−O−ジメトキシトリチル−N6ベンゾイル−2"−デオキシアデノシンの代わりに、5'−O−ジメトキシトリチル−N4−ベンゾイル−2'−デオキシシチジンを用いた。表題化合物を無色泡状物として得た(粗生成物)。
【0155】
1H NMR(CDCl3)δ8.66(1H,s),8.19(1H,d,J=7.5Hz),7.94−7.18(15H,m),6.86(4H,d,J=4.2Hz),6.34(1H,t,J=6.5Hz),5.16−5.06(1H,m),4.35−4.29(1H,m),4.25−4.13(2H,m),3.78(6H,s),3.51−3.47(2H,m),2.94−2.37(4H,m),1−0(3H,bq,BH3);31P NMR(CDCl3)δ119.8−116.4(m).
参考例5
ビス−2−シアノエチル 5'−O−ジメトキシトリチル−O6−ジフェニルカルバモイル−N2−フェニルアセチル−2'−デオキシグアノシン−3'−イル ボラノホスフェート
【化41】

【0156】
参考例3と同様の手順を行った。但し、5'−O−ジメトキシトリチル−N6ベンゾイル−2'−デオキシアデノシンの代わりに、5'−O−ジメトキシトリチル−O6ジフェニルカルバモイル−N2フェニルアセチル−2'−デオキシグアノシンを用いた。表題化合物を淡黄色泡状物として得た(収率90%)。
【0157】
1H NMR(CDCl3)δ8.10(1H,s),7.91(1H,s),7.46−7.14(24H,m),6.78(4H,d,J=9.0Hz),6.41(1H,t,J=7.5Hz),5.21(1H,m),4.32(1H,m),4.22−4.08(4H,m),3.98(2H,s,CH2 of Pa),3.74(6H,s),3.46−3.31(2H,m),2.99−2.50(6H,m),1−0(3H,bq,BH3);31P NMR(CDCl3)δ119.02−115.61(m).
【0158】
参考例6
ビス−2−シアノエチル 5'−O−ジメトキシトリチル−N3−ベンゾイルチミジン−3'−イルボラノホスフェート
【化42】

【0159】
参考例3と同様の手順を行った。但し、5'−O−ジメトキシトリチル−N6ベンゾイル−2'−デオキシアデノシンの代わりに、5'−O−ジメトキシトリチル−N3ベンゾイルチミジンを用いた。表題化合物を無色泡状物として得た(収率98%)。
【0160】
1H NMR(CDCl3)δ7.95,7.93(2H,m),7.72(1H,s),7.68−7.21(12H,m),6.87(4H,d,J=9.0Hz),6.45,6.42(1H,dd,J1',2'/J1',2"=5.7Hz and 8.7Hz),5.21(1H,t,J=7.5Hz),4.29−4.11(5H,m),3.80(6H,s),3.48−3.44(2H,m,5'−H and 5"−H),2.82−2.46(6H,m),1.46(3H,s,5−CH3),1−0(3H,bq,BH3);31P NMR(CDCl3)δ118.79−115.48(m).
【0161】
実施例1
トリエチルアンモニウム 2−シアノエチル 5'−O−ジメトキシトリチル−N6−ベンゾイル−2'−デオキシアデノシン−3'−イル ボラノホスフェート
【化43】

【0162】
参考例3で得たビス−2−シアノエチル 5'−O−ジメトキシトリチル−N6−ベンゾイル−2'−デオキシアデノシン−3'−イル ボラノホスフェート(1.29g,1.53mmol)の無水CH2Cl2溶液(2mL)に、アルゴン雰囲気下で、Et3N(2.8mL,20mmol)を室温にて滴下により加えた。反応混合物を1時間、室温にて攪拌し、反応混合物を減圧下で乾燥させた。残渣をシリカゲルカラム(40)で精製した。カラムクロマトグラフィーの溶出は、0.5%Et3Nを含むCH2Cl2によって行い、メタノール(0−4%)により勾配を与えた。トリエチルアンモニウム 2−シアノエチル 5'−O−ジメトキシトリチル−N6−ベンゾイル−2'−デオキシアデノシン−3'−イル ボラノホスフェートを含む部分を集めて乾燥させた。過剰なEt3Nは、無水トルエンによって数回共沸させることにより除去し、表題化合物を無色泡状物質として得た(698.6mg,51%)。
【0163】
1H NMR(CDCl3)δ9.18(1H,bs),8.71(1H,s,8−H),8.20(1H,s),8.02,8.05(2H,2m),7.65−7.15(12H,m),6.79(4H,d,J=9.0Hz),6.58(1H,m),5.14(1H,m),4.43(1H,m),4.08−3.91(2H,m),3.77(6H,s),3.41(2H,m),3.04(6H,q,J=7.2Hz),2.96−2.46(4H,m),1.31(9H,t,J=7.35Hz),1−0(3H,bq,BH3);31P NMR(CDCl3)δ98.55−93.80(m).
【0164】
実施例2
トリエチルアンモニウム 2−シアノエチル 5'−O−ジメトキシトリチル−N6−ベンゾイル−2'−デオキシシチジン−3'−イル ボラノホスフェート
【化44】

【0165】
実施例1と同様の手順で行った。但し、参考例3で得たビス−2−シアノエチル 5'−O−ジメトキシトリチル−N6−ベンゾイル−2'−デオキシアデノシン−3'−イル ボラノホスフェートの代わりに、参考例4で得たビス−2−シアノエチル 5'−O−ジメトキシトリチル−N4−ベンゾイル−2'−デオキシシチジン−3'−イル ボラノホスフェートを用いた。表題化合物を無色泡状物として得た(収率56%,2段階)。
【0166】
1H NMR(CDCl3)δ12.50(1H,bs),8.70(1H,bs),8.24(1H,q,J=7.0Hz),7.90,7.87(2H,2m),7.65−7.11(13H,m),6.94−6.79(4H,m),6.36−6.26(1H,m),5.04(1H,m),4.41−4.31(1H,m),4.00−3.88(2H,m),3.79(6H,s),3.52−3.44(2H,m),3.04(6H,q,J=7.0Hz),2.90−2.78(1H,m),2.72−2.47(2H,m),2.39−2.24(1H,m),1.31(9H,t,J=7.5Hz,CH3 of Et3NH+),1−0(3H,bq,BH3);31P NMR(CDCl3)δ98.93−93.67(m).
【0167】
実施例3
トリエチルアンモニウム 2−シアノエチル 5'−O−ジメトキシトリチル−O6−ジフェニルカルバモイル−N2−フェニルアセチル−2'−デオキシグアノシン−3'−イル ボラノホスフェート
【化45】

【0168】
実施例1と同様の手順で行った。但し、参考例3で得たビス−2−シアノエチル 5'−O−ジメトキシトリチル−N6−ベンゾイル−2'−デオキシアデノシン−3'−イル ボラノホスフェートの代わりに、参考例5で得たビス−2−シアノエチル 5'−O−ジメトキシトリチル−O6−ジフェニルカルバモイル−N2−フェニルアセチル−2'−デオキシグアノシン−3'−イル ボラノホスフェートを用いた。表題化合物を無色泡状物として得た(収率90%)。
【0169】
1H NMR(CDCl3)δ12.52(1H,bs),8.08(1H,bs),8.02(1H,d,J=9.0Hz),7.51−7.09(24H,m),6.75(4H,d,J=9.0Hz),6.45,6.41(1H,dd,J1',2'/J1',2"=6.3Hz and 12.9Hz),5.10(1H,m),4.37(1H,d,J=15.0Hz),4.07−3.86(4H,m),3.69(6H,s),3.38−3.28(2H,m),2.98(6H,q,J=7.3Hz),2.87−2.44(4H,m),1.26(9H,t,J=7.4Hz),1−0(3H,bq,BH3);31P NMR(CDCl3)δ99.09−93.23(m).
【0170】
実施例4
トリエチルアンモニウム 2−シアノエチル 5'−O−ジメトキシトリチル−N3−ベンゾイルチミジン−3'−イル ボラノホスフェート
【化46】

【0171】
実施例1と同様の手順で行った。但し、参考例3で得たビス−2−シアノエチル 5'−O−ジメトキシトリチル−N6−ベンゾイル−2'−デオキシアデノシン−3'−イル ボラノホスフェートの代わりに、参考例6で得たビス−2−シアノエチル 5'−O−ジメトキシトリチル−N3−ベンゾイルチミジン−3'−イル ボラノホスフェートを用いた。表題化合物を無色泡状物として得た(収率74%)。
【0172】
1H NMR(CDCl3)δ12.42(1H,bs),7.97−7.20(16H,m),6.84(4H,d,J=9.0Hz),6.46,6.43(1H,dd,J1',2'/J1',2"=5.7Hz and 8.1Hz),5.21−5.10(1H,m,3'−H),4.29(1H,d,J=12.0Hz,4'−H),4.03−3.86(2H,m),3.79(6H,s),3.45−3.42(2H,m),2.96(6H,q,J=7.2Hz),2.68−2.39(4H,m),1.39,1.35(3H,2s),1.25(9H,t,J=7.2Hz),1−0(3H,bq,BH3);31P NMR(CDCl3)δ98.31−93.59(m).
【0173】
実施例5
2−シアノエチル 5'−O−ジメトキシトリチル−N4−ベンゾイル−2'−デオキシシチジン−3'−イル 3'−ベンゾイル−N3−ベンゾイルチミジン−5'−イル ボラノホスフェート
【化47】

【0174】
3'−O−ベンゾイル−N3−ベンゾイルチミジン(45.0mg,0.100mmol)及び実施例2で得られたトリエチルアンモニウム 2−シアノエチル 5'−O−ジメトキシトリチル−N6−ベンゾイル−2'−デオキシシチジン−3'−イル ボラノホスフェート(103.9mg,0.120mol)を、無水ピリジンによる共沸、次いで無水トルエンによる共沸を繰り返すことで乾燥させた後、無水CH3CN(1.00mL)に溶解させた。溶液に、引き続いて、2,6−ルチジン(116μL,1.00mmol)、PyNTP(120mg,0.240mmol)を加えた。室温で1時間攪拌した後、反応混合物をCHCl3(10mL)で希釈した。反応混合物を飽和NaHCO3(3x10mL)で洗浄し、水層をCHCl3(2x10mL)で逆抽出した。有機層及び洗浄液を集めて、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で乾燥させた。残渣をシリカゲルカラムで精製した(10g)。カラムクロマトグラフィーの溶出は、CH2Cl2を用いて行い、メタノール(0−1.5%)により勾配を与えた。
【0175】
2−シアノエチル 5'−O−ジメトキシトリチル−N4−ベンゾイル−2'−デオキシシチジン−3'−イル 3'−O−ベンゾイル−N3−ベンゾイルチミジン−5'−イル ボラノホスフェートを含む部分を集めて、減圧下で乾燥させ、表題化合物を無色泡状物として得た(113.4mg,95%)。
【0176】
1H NMR(CDCl3)δ8.20−8.13(1H,m),8.06−7.16(26H,m),6.91−6.82(4H,m),6.54−6.46(1H,m),6.34(1H,t,J=6.0Hz),5.55−5.40(1H,m),5.23−5.14(1H,m),4.54−4.09(6H,m),3.93−3.64(6H,m),3.56−3.46(2H,m),3.06−2.35(6H,m),2.01,1.99(3H,2s),1−0(3H,bq,BH3);31P NMR(CDCl3)δ121.21−117.55(m).
【0177】
参考例3〜実施例5の反応スキームを下記に示す。
【化48】

[式中、「CE」はシアノエチル基を表す。]
【0178】
実施例6
4−ベンゾイル−2'−デオキシシチジン−3'−イル 3'−ベンゾイル−N3−ベンゾイルチミジン−5'−イル ボラノホスフェート
【化49】

【0179】
5'−O−ジメトキシトリチル−N3−ベンゾイルチミジンの3'−水酸基にサクシニルリンカーを介してCPGに担持させた固相担体(29.2mg、0.5μmol)をCH2Cl2−Et3SiH(1:1,v/v)の3%DCA(ジクロロ酢酸)溶液で各5秒間・3回洗い、次いで無水CH2Cl2溶液、無水CH3CN溶液で各0.5ml×3回洗い、減圧乾燥した。10分後、MNTP(1,3−ジメチル−2−ピロリジン−1−イル−2−(3−ニトロ−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1,3,2−ジアザホスホリジニウム ヘキサフルオロホスフェート)(8.7mg、10μmol)、実施例2で得られたトリエチルアンモニウム 2−シアノエチル 5'−O−ジメトキシトリチル−N6−ベンゾイル−2'−デオキシシチジン−3'−イル ボラノホスフェート(8.9mg、20μmol)を加え、再び減圧乾燥した。0.5M2,6−ルチジン/CH3CN溶液を100μl加え、3分間攪拌した(二量体の合成)。
【0180】
その後無水CH3CN溶液、無水CH2Cl2溶液で洗浄し、CH2Cl2−Et3SiH(1:1,v/v)の3%DCA溶液で各5秒間・3回洗浄した(ジメトキシトリチル基の除去)。
次に無水CH2Cl2溶液、無水THF溶液で洗浄し、N−メチルイミダゾール/無水酢酸/THF溶液(2:1:7、v/v/v)溶液を加え、30秒攪拌した。その後無水THF溶液、無水CH3CN溶液で洗浄し、0.2M DBU/CH3CN溶液を加え、5分間攪拌した(2−シアノエチル基の除去)。
【0181】
その後無水CH3CN溶液で洗浄し、減圧乾燥後、アンモニア・メタノール溶液0.5mlを加え、密栓をする。室温で12時間攪拌した後、吸引濾過を行ないCPGと濾別し減圧乾燥後、水(3mL)で希釈した(担体の除去)。
反応混合物をジエチルエーテル(5x3mL)で洗浄し、エーテル層を水(1x3mL)で逆抽出した。水層及び洗浄液を集めて、減圧下で乾燥させた(生成物の精製)。
残渣を逆相HPLCで分析した。(0−15%アセトニトリルの0.1M酢酸アンモニウムバッファー(pH7.0)による線形勾配、45分、50℃、流速1ml/分)HPLCのピークの積分値より算出した収率は95%。
【0182】
実施例7
ボラノホスフェート4量体及び12量体の合成
(1)4量体の合成
5'−O−ジメトキシトリチル−N3−ベンゾイルチミジンの3'−水酸基にサクシニルリンカーを介してCPGに担持させた固相担体(0.5μmol)に対し、下記表1に示した合成サイクルにより、ボラノホスフェート4量体d(CPBPBPBT)を合成した。
【0183】
【表1】

【0184】
表1−ステップ10で脱保護した粗精製の4量体に対し、吸引濾過を行いCPGと濾別し減圧乾燥後、水(3mL)で希釈した。反応混合物をジエチルエーテル(5×3mL)で洗浄し、エーテル層を水(1×3mL)で逆抽出した。水層及び洗浄液を集めて、減圧下で乾燥させた。陰イオン交換HPLCにより分離精製後、C18逆相カラムカートリッジで脱塩を行ったところ、単離収率30%で、目的とするボラノホスフェート4量体;d(CPBPBPBT)を得ることができた。
【0185】
(2)12量体の合成
5'−O−ジメトキシトリチル−N3−ベンゾイルチミジンの3'−水酸基にサクシニルリンカーを介してCPGに担持させた固相担体(0.5μmol)に対し、表1に示した合成サイクルにより、ボラノホスフェート12量体d(CPBPBPBT)3を合成した。
上記表1−ステップ10で脱保護した粗精製の12量体に対し、吸引濾過を行ないCPGと濾別し減圧乾燥後、水(3mL)で希釈した。反応混合物をジエチルエーテル(5×3mL)で洗浄し、エーテル層を水(1×3mL)で逆抽出した。水層及び洗浄液を集めて、減圧下で乾燥させた。15%PAGE/7M Urea(1mm厚、40×20cm)により精製を行なったところ、単離収率16%で、目的とするボラノホスフェート12量体;d(CPBPBPBT)3を得ることができた。
【0186】
実施例7における合成スキームを以下に示す。
【化50】

【0187】
上記表1及び合成スキーム中、「モノマー」「MNTP」「DMAN」の構造式は下記の通りである。
【化51】

【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明により、ボラノホスフェートオリゴマーが提供される。本発明により得られるボラノホスフェートオリゴマーはアンチセンス分子として有用であり、試薬又は医薬品として利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるボラノホスフェートモノマー。
【化1】

[式中、B1は、ピリミジン塩基、プリン塩基、又は、それらの誘導体を表し、
1は、ジメトキシトリチル基、又は、モノメトキシトリチル基であり、
2は、水素原子、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、
又は、トリアルキルシリルオキシ基を表す。]

【公開番号】特開2011−225598(P2011−225598A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156385(P2011−156385)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【分割の表示】特願2006−510627(P2006−510627)の分割
【原出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(508337972)株式会社キラルジェン (4)
【Fターム(参考)】