説明

ボルト締め付け判定装置

【課題】指定されたボルト穴にボルトが締め付けられたことを簡易な構成で精度よく判定できるようにする。
【解決手段】指定されたボルト穴Aの略真上の位置にレーザセンサ30が移動されるようX軸方向移動機構40およびY軸方向移動機構50を制御し、トルクレンチ60に取り付けられたトルクセンサ68からのトルク到達信号に基づいてボルトBの締め付けがなされたと判定したとき、レーザセンサ30からの受光信号が入力されているときには指定されたボルト穴AにボルトBが正常に締め付けられたと判定し、受光信号が入力されていないときには指定されたボルト穴AにはボルトBが締め付けられなかったと判定するから、指定されたボルト穴AにボルトBが締め付けられたことを簡易な構成で精度よく判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト締め付け判定装置に関し、詳しくは、ワークに形成された複数のボルト穴のうち指定されたボルト穴に作業者が締め付け工具を用いてボルトを締め付けたか否かを判定するボルト締め付け判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のボルト締め付け判定装置としては、ボルトを締め付けるトルクレンチに取り付けられた超音波発信器からの超音波パルスを受信する3つの受信アンテナと、トルクレンチに取り付けられたデータ処理装置からの締め付けトルクデータを受信する受信機と、予め各ボルト穴の座標位置が記憶されたメモリと、受信された超音波パルスの伝播時間に基づいて三角測距の原理で締め付け中のボルト穴の座標位置を演算する演算処理部と、演算された座標位置と記憶された座標位置とを比較してどの位置(番号)のボルトが締め付けられているかを判別するボルト番号判別部と、判別されたボルト番号と受信された締め付けトルクデータとに基づいてどの位置のボルトの締め付けが完了したかを判定する締め付け判定部とを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−121132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のボルト締め付け判定装置では、超音波パルスの伝播時間に基づく座標位置の演算において多少の誤差が生じうるので、ボルト穴同士の間隔が狭いときには締め付け中のボルト穴を誤判定してしまう場合がある。また、三角測距の原理で座標位置を演算するので3つの受信アンテナを設置しなければならず装置の構成が複雑なものとなっていた。
【0004】
本発明のボルト締め付け判定装置は、指定されたボルト穴にボルトが締め付けられたことを簡易な構成で精度よく判定できるようにすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のボルト締め付け判定装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明のボルト締め付け判定装置は、
ワークに形成された複数のボルト穴のうち指定されたボルト穴に作業者が締め付け工具を用いてボルトを締め付けたか否かを判定するボルト締め付け判定装置であって、
移動対象物を水平方向に移動させる移動手段と、
前記締め付け工具または前記移動対象物として前記移動手段に取り付けられる発光部と前記締め付け工具または前記移動対象物として前記移動手段に取り付けられる受光部とからなり、前記締め付け工具が前記移動対象物の下方の所定範囲内に位置するときに前記受光部が前記発光部からの光を受光可能となるよう該発光部と該受光部とが取り付けられた光学センサと、
前記締め付け工具に取り付けられ、該締め付け工具の作動状態を検知する作動状態検知手段と、
前記指定されたボルト穴に対応する上方の所定位置に前記移動対象物が移動されるよう前記移動手段を制御する制御手段と、
前記検知された締め付け工具の作動状態に基づいてボルトの締め付けがなされたか否かを判定し、該締め付けがなされたと判定したとき、前記受光部が前記発光部からの光を受光しているときには前記指定されたボルト穴にボルトが正常に締め付けられたと判定し、前記受光部が前記発光部からの光を受光していないときには前記指定されたボルト穴にはボルトが締め付けられなかったと判定する判定手段と
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明のボルト締め付け判定装置では、指定されたボルト穴に対応する上方の所定位置に移動対象物が移動されるよう移動手段を制御し、締め付け工具に取り付けられる作動状態検知手段により検知された締め付け工具の作動状態に基づいてボルトの締め付けがなされたか否かを判定し、締め付けがなされたと判定したとき、締め付け工具または移動対象物として移動手段に取り付けられる受光部が締め付け工具または移動対象物として移動手段に取り付けられる発光部からの発光を受光しているときには指定されたボルト穴にボルトが正常に締め付けられたと判定し、受光部が発光部からの発光を受光していないときには指定されたボルト穴にはボルトが締め付けられなかったと判定する。これにより、指定されたボルト穴にボルトが締め付けられたことを簡易な構成で精度よく判定することができる。
【0008】
こうした本発明のボルト締め付け判定装置において、前記発光部と前記受光部は、前記移動対象物として前記移動手段に取り付けられ、前記締め付け工具には、前記発光部からの光を前記受光部に向けて反射させる反射板が取り付けられてなるものとすることもできる。こうすれば、発光部や受光部を締め付け工具に取り付ける必要がなく、光学センサの配線などにより締め付け作業の作業性が悪化することがない。この態様の本発明のボルト締め付け判定装置において、前記発光部は、振動の方向が縦方向または横方向の光のみを通過させる第1の偏光フィルタを介して発光し、前記受光部は、前記第1の偏光フィルタとは異なる振動の方向の光のみを通過させる第2の偏光フィルタを介して受光し、前記反射板は、少なくとも反射前の振動の方向とは異なる振動の方向の光を反射するものとすることもできる。こうすれば、ワーク表面などの反射板以外で反射された光を受光部が受光することがなくなり、締め付け工具が指定されたボルト穴上にあることを確実に判定することができる。また、この態様の本発明のボルト締め付け判定装置において、前記反射板は、前記締め付け工具が前記発光部の略真下に位置するときにのみ前記発光部からの光を反射可能となるよう筒状に形成され光の入出射角度を限定する入出射角度限定フィルタが取り付けられてなるものとすることもできる。こうすれば、締め付け工具が発光部の略真下からずれた位置にあるときに反射された光を受光部が受光することがなくなり、締め付け工具が指定されたボルト穴上にあることをより確実に判定することができる。
【0009】
また、本発明のボルト締め付け判定装置において、前記発光部は、前記移動対象物として前記移動手段に取り付けられ、可視光線を発光するものとすることもできる。こうすれば、複数のボルト穴のうち、どのボルト穴が指定されたものであるのかを作業者が容易に確認することができる。
【0010】
さらに、本発明のボルト締め付け判定装置において、前記制御手段は、予め定められたボルトの締め付け順に従って前記移動対象物が移動されるよう前記移動手段を制御する手段であるものとすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例としてのボルト締め付け判定装置を用いてボルト締め付け作業を行う様子を示す説明図であり、図2は、ボルト締め付け作業が行われる作業テーブル24の上面図であり、図3は、ボルト締め付け判定装置を構成するレーザセンサ30をX軸方向(図中前後方向)およびY軸方向(図中左右方向)に移動させるX軸方向移動機構40およびY軸方向移動機構50の斜視図であり、図4は、作業者がボルト締め付け作業に用いるトルクレンチ60の構成の概略を示す構成図である。実施例のボルト締め付け作業は、図1に示すように、ワークW(例えば、ケースにカバーを被せたもの)に形成された複数のボルト穴Aに作業者がトルクレンチ60でボルトBを締め付ける作業であり、作業床から垂直に立設された門型の本体フレーム22に取り付けられた作業テーブル24と、レーザ光を受発光するレーザセンサ30と、レーザセンサ30をX軸方向およびY軸方向に移動させるX軸方向移動機構40およびY軸方向移動機構50と、電源をオンオフする電源スイッチ82や各種操作スイッチ84などからなる操作パネル80と、作業者に作業指示や警告などを表示するディスプレイ90と、装置全体のコントロールを司るコントローラ100とを使って行われる。
【0013】
作業テーブル24は、図2(a)に示すように、長方形状のテーブルとして構成されており、図中下側の面を基準面としてワークWのY軸方向の位置を決める複数の位置決めストッパ26と、図中右側の面を基準面としてワークWのX軸方向の位置を決める複数の位置決めストッパ28とを有している。この位置決めストッパ26,28のそれぞれの基準面に沿った直線の交点を基準点(XY座標の原点)とする。そして、図2(b)に示すように、ワークWの図中上側の側面が位置決めストッパ26に押し当てられると共に図中左側の側面が位置決めストッパ28に押し当てられるよう作業者によりセットされると、ワークWに複数形成されているボルト穴Aの位置が、基準点を基準として予め定められコントローラ100のROM104に記憶されているボルト穴Aの位置座標と一致することになる。例えば、図中のボルト穴A1は、基準点からX軸方向に距離X1,Y軸方向に距離Y1の位置にあり、ROM104に記憶されているボルト穴A1の位置座標は、座標(X1,Y1)となっている。
【0014】
レーザセンサ30は、図3に示すように、Y軸方向移動機構50に取り付けられる筐体30aと、筐体30a内に配置され可視光線としてのレーザ光(例えば、波長650nmの可視半導体レーザ)を発光する発光部32と、筐体30a内に発光部32に隣接して配置され発光部32から発光されて反射されたレーザ光を受光する受光部34とを有する反射型センサとして構成されている。レーザセンサ30は、受光部34がレーザ光を受光しているときに、受光していることを示す受光信号Lをコントローラ100に送信する。また、発光部32には、振動の方向が横方向(Y軸方向)のレーザ光のみを通過させる偏光フィルタ32aが発光面に取り付けられ、受光部34には、振動の方向が縦方向(X軸方向)のレーザ光のみを通過させる偏光フィルタ34aが受光面に取り付けられているが、これらについての説明は後述する。
【0015】
X軸方向移動機構40およびY軸方向移動機構50は、同一の構成であり、説明の便宜上Y軸方向移動機構50について説明し、X軸方向移動機構40については説明を省略する。Y軸方向移動機構50は、図1および図3に示すように、内部にガイドレール52が敷設されたハウジング51と、Y軸移動テーブル53が取り付けられガイドレール52上をスライド可能なスライドブロック54と、スライドブロック54内のナットに螺合されハウジング51にベアリング55a,55bを介して回転自在に支持されたボールねじ56と、このボールねじ56にカップリング57を介して接続されたサーボモータ58とを備え、サーボモータ58を駆動することによりY軸移動テーブル53をY軸方向に往復動させる。このY軸方向移動機構50は、本体フレーム22の上部に搭載されたX軸方向移動機構40のX軸移動テーブル43に搭載され、また、Y軸方向移動機構50のY軸移動テーブル53にレーザセンサ30の筐体30aが取り付けられている。このため、X軸方向移動機構40およびY軸方向移動機構50の駆動により、レーザセンサ30をX軸方向およびY軸方向に移動させることができる。なお、電源投入時などの初期状態でレーザセンサ30は、図2(b)に図示した基準点の真上の位置で待機するものとする。
【0016】
トルクレンチ60は、図4に図示するように、トルクレンチ本体62と、トルクレンチ本体62の上部に取り付けられレーザセンサ30の発光部32から発光されたレーザ光を反射する反射板64と、反射板64の上部に取り付けられレーザ光の入出射角度を限定する筒状部材66と、ボルト締め付け作業中の締め付けトルクTを検出し検出した締め付けトルクTが予め設定された規定トルクTref以上となったことを示すトルク到達信号TDをコントローラ100に送信するトルクセンサ68とを備えている。反射板64は、レーザ光を反射する際にその振動の方向を変えることができるよう構成されている。図5は、レーザセンサ30の発光部32から発光されたレーザ光が反射板64により振動の方向を変えて反射され受光部34に受光される様子を示す説明図である。前述したように、発光部32には振動の方向が横方向のレーザ光のみを通過させる偏光フィルタ32aが取り付けられているので、図示するように、振動の方向が横方向のレーザ光が発光される。ここで、反射板64は、その表面に直角二等辺三角形からなる3つの反射面を有する微小な三角錐64aが隙間なく配列されており、図中拡大図に示すように、発光されたレーザ光は、この三角錐64aの3つの反射面を順に反射してから最終的な反射光として反射される。この3つの反射面を反射する際に光の振動の方向が横方向から縦方向に変化するため、振動の方向が縦方向のレーザ光が受光部34に向かって反射されることになる。これにより、反射板64で反射されたレーザ光は、振動の方向が縦方向のレーザ光のみを通過させる偏光フィルタ34aを通過することができ、受光部34に受光されることができる。このように、受光部34で受光されるためには反射板64での反射が必要であり、例えば、単にワークWに反射されただけの反射光では、振動の方向が横方向のまま変化せず受光部34により受光されることがないため、トルクレンチ60がレーザセンサ30の下方の所定位置にあるか否かを確実に判定することができる。なお、発光部32や受光部34はY軸方向移動機構50に取り付けられトルクレンチ60には反射板64のみが取り付けられるので、レーザセンサ30の配線などにより作業性が大幅に悪化することはない。また、反射板64は、筒状部材66が取り付けられることにより、作業者が誤って指定されたボルト穴Aとは異なるボルト穴AにボルトBを締めているときに、トルクレンチ60が指定されたボルト穴A上にあると誤判定するのを防ぐことができる。図6は、作業者が誤って、指定されたボルト穴A1とは異なるボルト穴A2にボルトBを締めているときの様子を示す説明図である。筒状部材66が取り付けられていないトルクレンチ600を用いるときには、図6(a)に示すように、トルクレンチ600が傾けられ反射板64が発光部32の略真下の位置になるとレーザ光が反射され受光部34で受光される場合がある。一方、本実施例では、図6(b)に示すように、傾いた状態では筒状部材66にレーザ光が当たり反射板64に到達しないので受光部34で受光されることがない。これにより、指定されたボルト穴A1とは異なるボルト穴A2にボルトBを締めているときに、トルクレンチ60が指定されたボルト穴A1上にあると誤判定するのを防ぐことができる。
【0017】
コントローラ100は、CPU102を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、各種処理プログラムなどを記憶したROM104と、一時的に各種データを記憶するRAM106と、操作パネル80との通信を可能とする内部通信インタフェース108とを備え、これらは互いに信号のやり取りが可能なように接続されている。コントローラ100は、操作パネル80の操作に応じて発生する操作信号やレーザセンサ30からの受光信号L、トルクセンサ68からのトルク到達信号TDなどを入力し、レーザセンサ30の発光部32へ発光信号やX軸方向移動機構40のサーボモータ48やY軸方向移動機構50のサーボモータ58へ駆動信号を出力したりする。
【0018】
ここで、実施例のボルト締め付け判定装置のハード構成としては、レーザセンサ30とX軸方向移動機構40,Y軸方向移動機構50,反射板64,筒状部材66,トルクセンサ68が該当する。
【0019】
次に、実施例のボルト締め付け判定装置を用いて予め定められた締め付け順に従って作業者によりボルトBが締め付けられる通常の締め付け作業について説明する。図7は、コントローラ100により実行される通常作業時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、作業者によりワークWが作業テーブル24上にセットされ、操作パネル80の各種操作ボタン82の操作によりスタートボタンが押下されたときに実行される。
【0020】
通常作業時制御ルーチンが実行されると、コントローラ100のCPU102は、まず、レーザセンサ30からレーザ光が発光されるよう発光部32へ発光信号を出力し(ステップS100)、ROM104に記憶された予め定められたボルト締め付け順に基づいて指定されたボルト穴Aに対応する上方の所定位置としてボルト穴Aの略真上の位置にレーザセンサ30を移動させる(ステップS110)。ここでは、ボルト締め付け順に基づいて指定されたボルト穴Aが図2(b)に示すボルト穴A1である場合について説明する。この場合、X軸方向に移動量X1だけ移動するようX軸方向移動機構40のサーボモータ48に駆動信号を出力すると共にY軸方向に移動量Y1だけ移動するようY軸方向移動機構50のサーボモータ58に駆動信号を出力する。なお、前述したように、発光部32から発光されるレーザ光は可視光線なので、作業者は容易にボルト穴A1を確認することができる。
【0021】
こうして、レーザセンサ30を移動させると、トルクセンサ68からのトルク到達信号TDを受信するのを待つ(ステップS120)。そして、トルク到達信号TDを受信すると、レーザセンサ30から受光信号Lが入力されているか否かを判定する(ステップS130)。受光信号Lが入力されているときには、トルクレンチ60がボルト穴A1の位置にあり且つ締め付けトルクTが規定トルクTrefに到達しているため、指定されたボルト穴A1に正常にボルトBが締め付けられたと判断し、ボルトBの締め付けが全数完了したか否かを判定し(ステップS140)、完了していなければステップS110に戻って処理を繰り返し、完了していれば本ルーチンを終了する。これにより、トルクセンサ68からのトルク到達信号TDとレーザセンサ30からの受光信号Lとに基づいて、指定されたボルト穴A1にボルトBが正常に締め付けられたことを判定することができる。
【0022】
ステップS130で、受光信号Lが入力されていないときには、トルクレンチ60が指定されたボルト穴A1以外の位置にあり且つ締め付けトルクTが規定トルクTrefに到達しているため、指定されたボルト穴A1にはボルトBが締め付けられなかったと判断し、指定されたボルト穴A1を締め付け不良としてRAM106に登録し(ステップS150)、作業者に指示通りの作業がなされていない旨やボルト穴Aの確認を行った上で作業を再開する旨の警告を行って(ステップS160)、本ルーチンを終了する。これにより、トルクセンサ68からのトルク到達信号TDとレーザセンサ30からの受光信号Lとに基づいて、指定されたボルト穴A1にボルトBが締め付けられなかったことを判定することができる。
【0023】
以上説明した実施例のボルト締め付け判定装置を用いた締め付け作業によれば、指定されたボルト穴A1の略真上の位置にレーザセンサ30が移動されるようX軸方向移動機構40およびY軸方向移動機構50を制御し、トルクセンサ68からのトルク到達信号TDに基づいてボルトBの締め付けがなされたと判定したとき、レーザセンサ30からの受光信号Lが入力されているときには指定されたボルト穴A1にボルトBが正常に締め付けられたと判定し、受光信号Lが入力されていないときには指定されたボルト穴A1にはボルトBが締め付けられなかったと判定するから、指定されたボルト穴A1にボルトBが締め付けられたことを簡易な構成で精度よく判定することができる。
【0024】
実施例のボルト締め付け作業では、手作業で全てのボルトBを締め付ける作業について説明したが、これに限られるものではなく、例えば、図示しない自動ボルト締め付け機での締め付け不良(例えば、規定トルクに達しなかったなど)により作業者によってボルトBの再度の締め付けが必要なときにボルト締め付けの手直し作業を行うものとしてもよい。図8は、コントローラ100により実行される手直し作業時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、作業者により手直しの必要なワークWが作業テーブル24上にセットされ、操作パネル80の各種操作ボタン82の操作により手直し作業が選択されスタートボタンが押下されたときに実行される。手直し作業時制御ルーチンが実行されると、コントローラ100のCPU102は、まず、締め付け不良により手直しの必要なボルト位置情報を読み出す(ステップS10)。ここで、手直しの必要なボルト位置情報は、自動ボルト締め付け機を制御する図示しない自動機用コントローラから予め通信により送信され、RAM106に記憶されているものとした。このボルト位置情報を読み出すと、レーザセンサ30からレーザ光が発光されるよう発光部32へ発光信号を出力し(ステップS100)、読み出したボルト位置情報に基づいて指定されたボルト穴Aの略真上の位置にレーザセンサ30を移動させる(ステップS110a)。レーザセンサ30を移動させると、図7に示した通常作業時制御ルーチンのステップS120〜S160と同じ処理を行って、本ルーチンを終了する。上述した本実施例と同様に、トルクセンサ68からのトルク到達信号TDとレーザセンサ30からの受光信号Lとに基づいて、手直しが必要なボルト穴Aで確実に手直し作業がなされたか否かを精度よく判定することができる。
【0025】
実施例のボルト締め付け判定装置では、レーザセンサ30の発光部32が可視光線を発光するものとしたが、可視光線でなくてもよく、紫外線領域や赤外線領域のレーザ光を発光するものとしてもよい。
【0026】
実施例のボルト締め付け判定装置では、発光部32の偏光フィルタ32aが振動の方向が横方向のレーザ光を通過させ受光部34の偏光フィルタ34aが振動の方向が縦方向のレーザ光を通過させるものとしたが、これに限られず、偏光フィルタ32aが振動の方向が縦方向のレーザ光を通過させ偏光フィルタ34aが振動の方向が横方向のレーザ光を通過させるものとしてもよい。また、反射板64が反射前とは異なる振動の方向のレーザ光のみを反射するものとしたが、反射前とは振動の方向が略90度異なるレーザ光を反射すればどのような振動の方向のレーザ光が含まれていてもよく、例えば、反射前と同じ振動の方向のレーザ光が含まれているものとしたり、縦方向や横方向に限られず様々な振動の方向のレーザ光が含まれているものとしてもよい。
【0027】
実施例のボルト締め付け判定装置では、発光部32と受光部34とに偏光フィルタ32a,34aが取り付けられるものとしたが、このような偏光フィルタが取り付けられないものとしてもよい。この場合、反射板64は、振動の方向を変えることなく単に反射するものを用いるものとしてもよい。また、反射板64に筒状部材68を取り付けるものとしたが、取り付けないものとしてもよい。なお、トルクレンチ60がレーザセンサ30の下方の所定範囲にあることを確実に検出するためには、本実施例のように、偏光フィルタ32a,34aや筒状部材68が取り付けられていることが好ましい。
【0028】
実施例のボルト締め付け判定装置では、発光部32と受光部34とがY軸方向移動機構50に取り付けられ反射板64がトルクレンチ60に取り付けられるものとしたが、これに限られるものではなく、発光部32と受光部34とがトルクレンチ60に取り付けられ反射板64がY軸方向移動機構50に取り付けられるものとしてもよい。また、発光部32と受光部34とが筐体30a内に一体として配置された反射型センサとしたが、発光部32と受光部34とがそれぞれ対向する位置に配置されるいわゆる透過型センサとしてもよく、その場合、発光部32がY軸方向移動機構50に取り付けられ受光部34がトルクレンチ60に取り付けられるものとしてもよいし、発光部32がトルクレンチ60に取り付けられ受光部34がY軸方向移動機構50に取り付けられるものとしてもよい。なお、トルクレンチ60に発光部32や受光部34を取り付ける場合、コントローラ100との間で信号の送受信を行うための配線や送信機などが別途必要となり作業性の悪化に繋がるおそれがあるので、本実施例のように、発光部32と受光部34とがY軸方向移動機構50に取り付けられ反射板64がトルクレンチ60に取り付けられる構成とすることが好ましい。
【0029】
実施例のボルト締め付け判定装置では、トルクセンサ68により検出された締め付けトルクTが規定トルクTrefに達したときにトルク到達信号TDを送信するものとしたが、これに限られず、検出された締め付けトルクTを送信しコントローラ100で規定トルクTrefに到達したか否かを判定するものとしてもよい。また、トルクレンチ60に限られず、インパクトレンチなどの他の締め付け工具を用いて締め付け作業を行うものとしてもよい。
【0030】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。本実施形態のX軸方向移動機構40およびY軸方向移動機構50が本発明の「移動手段」に相当し、発光部32と受光部34とを有するレーザセンサ30が「光学センサ」に相当し、予め定められたボルト締め付け順に基づいて指定されたボルト穴Aの略真上の位置にレーザセンサ30が移動されるようX軸方向移動機構40のサーボモータ48およびY軸方向移動機構50のサーボモータ58へ駆動信号を出力する図7の通常作業時制御ルーチンのステップS110の処理を実行するコントローラ100が「制御手段」に相当し、トルクレンチ60に取り付けられ締め付けトルクTを検出すると共に締め付けトルクTが規定トルクTrefに達したときにトルク到達信号TDを送信するトルクセンサ68が「作動状態検出手段」に相当し、トルクセンサ68からのトルク到達信号TDに基づいてボルトBの締め付けがなされたと判定したとき、レーザセンサ30からの受光信号Lが入力されているときには指定されたボルト穴A1にボルトBが正常に締め付けられたと判定し、受光信号Lが入力されていないときには指定されたボルト穴A1にはボルトBが締め付けられなかったと判定する図7の通常作業時制御ルーチンのステップS120〜S160の処理を実行するコントローラ100が「制御手段」に相当する。また、反射板64の上部に取り付けられレーザ光の入出射角度を限定する筒状部材66が「入出射角度限定フィルタ」に相当する。なお、本実施例では、ボルト締め付け作業について説明することにより、本発明のボルト締め付け判定装置の一例も明らかにしている。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0031】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、手作業でボルトを締め付けて部品の組み付けを行う製造業や自動車産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施例としてのボルト締め付け判定装置を用いてボルト締め付け作業を行う様子を示す説明図である。
【図2】ボルト締め付け作業が行われる作業テーブル24の上面図である。
【図3】X軸方向移動機構40およびY軸方向移動機構50の斜視図である。
【図4】作業者がボルト締め付け作業に用いるトルクレンチ60の構成の概略を示す構成図である。
【図5】レーザセンサ30の発光部32から発光されたレーザ光が反射板64により振動の方向を変えて反射され受光部34に受光される様子を示す説明図である。
【図6】作業者が誤って指定されたボルト穴A1とは異なるボルト穴A2にボルトBを締めているときの様子を示す説明図である。
【図7】コントローラ100により実行される通常作業時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図8】コントローラ100により実行される手直し作業時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0034】
22 本体フレーム、24 作業テーブル、26,28 位置決めストッパ、30 レーザセンサ、30a 筐体、32 発光部、32a,34a 偏光フィルタ、34 受光部、40 X軸方向移動機構、41 ハウジング、43 移動テーブル、44 スライドブロック、48 サーボモータ、50 Y軸方向移動機構、51 ハウジング、52 ガイドレール、53 移動テーブル、54 スライドブロック、55a,55b ベアリング、56 ボールねじ、57 カップリング、58 サーボモータ、60,600 トルクレンチ、62 トルクレンチ本体、64 反射板、64a 三角錐、66 筒状部材、68 トルクセンサ、80 操作パネル、82 電源スイッチ、84 各種操作ボタン、90 ディスプレイ、100 コントローラ、102 CPU、104 ROM、106 RAM、108 インタフェース、A,A1,A2 ボルト穴、B ボルト、W ワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに形成された複数のボルト穴のうち指定されたボルト穴に作業者が締め付け工具を用いてボルトを締め付けたか否かを判定するボルト締め付け判定装置であって、
移動対象物を水平方向に移動させる移動手段と、
前記締め付け工具または前記移動対象物として前記移動手段に取り付けられる発光部と前記締め付け工具または前記移動対象物として前記移動手段に取り付けられる受光部とからなり、前記締め付け工具が前記移動対象物の下方の所定範囲内に位置するときに前記受光部が前記発光部からの光を受光可能となるよう該発光部と該受光部とが取り付けられた光学センサと、
前記締め付け工具に取り付けられ、該締め付け工具の作動状態を検知する作動状態検知手段と、
前記指定されたボルト穴に対応する上方の所定位置に前記移動対象物が移動されるよう前記移動手段を制御する制御手段と、
前記検知された締め付け工具の作動状態に基づいてボルトの締め付けがなされたか否かを判定し、該締め付けがなされたと判定したとき、前記受光部が前記発光部からの光を受光しているときには前記指定されたボルト穴にボルトが正常に締め付けられたと判定し、前記受光部が前記発光部からの光を受光していないときには前記指定されたボルト穴にはボルトが締め付けられなかったと判定する判定手段と
を備えるボルト締め付け判定装置。
【請求項2】
請求項1記載のボルト締め付け判定装置であって、
前記発光部と前記受光部は、前記移動対象物として前記移動手段に取り付けられ、
前記締め付け工具には、前記発光部からの光を前記受光部に向けて反射させる反射板が取り付けられてなる
ボルト締め付け判定装置。
【請求項3】
請求項2記載のボルト締め付け判定装置であって、
前記発光部は、振動の方向が縦方向または横方向の光のみを通過させる第1の偏光フィルタを介して発光し、
前記受光部は、前記第1の偏光フィルタとは異なる振動の方向の光のみを通過させる第2の偏光フィルタを介して受光し、
前記反射板は、少なくとも反射前の振動の方向とは異なる振動の方向の光を反射する
ボルト締め付け判定装置。
【請求項4】
前記反射板は、前記締め付け工具が前記発光部の略真下に位置するときにのみ前記発光部からの光を反射可能となるよう筒状に形成され光の入出射角度を限定する入出射角度限定フィルタが取り付けられてなる請求項2または3記載のボルト締め付け判定装置。
【請求項5】
前記発光部は、前記移動対象物として前記移動手段に取り付けられ、可視光線を発光する請求項1ないし4いずれか1項に記載のボルト締め付け判定装置。
【請求項6】
前記制御手段は、予め定められたボルトの締め付け順に従って前記移動対象物が移動されるよう前記移動手段を制御する手段である請求項1ないし5いずれか1項に記載のボルト締め付け判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−573(P2010−573A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161479(P2008−161479)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】