説明

ボーリング加工方法及びボーリング加工装置

【課題】ボーリング加工後のワークの穴の内径のばらつきを低減でき、ボーリング加工後のワークの穴の真円度を向上させることが可能なボーリング加工方法及びボーリング加工装置を提供する。
【解決手段】ワーク1の穴2の軸を加工軸11の軸に対して傾けない状態で、ワーク1の穴2をボーリング加工する第一工程と、第一工程でボーリング加工されたワーク1の穴2の形状を測定する第二工程と、前記第二工程の測定結果に基づいて、加工軸11の軸に対するワーク1の穴2の軸の傾斜角度を算出する第三工程と、新たなワーク1aの穴2aをボーリング加工する第四工程と、を備え、前記第四工程のボーリング加工は、ワーク1aの穴2aの軸を加工軸11の軸に対して、前記傾斜角度だけ傾けた状態で行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに形成された穴をボーリング加工するボーリング加工方法及びボーリング加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークに形成された穴をボーリング加工する技術は公知となっている(例えば、特許文献1)。
特許文献1に記載のボーリング加工装置は、刃の位置ズレ、傾斜を所定の寸法内に抑える案内盤を有している。
【0003】
特許文献1に記載のボーリング加工装置は、前記案内盤により刃の位置ズレを抑制するので、刃の切削抵抗により加工工具の刃先位置が変化することが抑制され、ボーリング加工後のワークの穴の真円度の低下を抑制することがきる。
【0004】
一般的に、ワークにおける剛性の低い部分は、剛性の高い部分よりも刃の切削抵抗により弾性変形してワーク位置が変化しやすい。
従って、上記ボーリング加工装置のように、ワークの穴の軸が加工軸の軸に対して傾かない状態でワークのボーリング加工を行う場合、すなわちワークの穴の軸方向から見た刃の回転軌跡が円形状になるようにボーリング加工を行う場合、ボーリング加工時にワークにおける剛性の低い部分が刃の切削抵抗により弾性変形して、ボーリング加工後にスプリングバックすることにより、ボーリング加工後のワークの穴の形状が刃の回転軌跡に沿った円形状にならない(図5参照)。その結果、ボーリング加工後のワークの穴の内径のばらつきが大きくなり、ボーリング加工後のワークの穴の真円度が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−59196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ボーリング加工後のワークの穴の内径のばらつきを低減でき、ボーリング加工後のワークの穴の真円度を向上させることが可能なボーリング加工方法及びボーリング加工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のボーリング加工方法は、
加工軸、及び前記加工軸の先端に設けられた刃を有する加工工具を用いて、ワークに形成された穴をボーリング加工するボーリング加工方法であって、
前記ワークの穴の軸を前記加工軸の軸に対して傾けない状態で、前記加工軸を軸周りに回転させながら、前記加工軸をその先端から前記ワークの穴に挿入することによって、前記刃で前記ワークの穴をボーリング加工する第一工程と、
前記第一工程でボーリング加工されたワークの穴の形状を測定する第二工程と、
前記第二工程の測定結果に基づいて、前記加工軸の軸に対する前記ワークの穴の軸の傾斜角度を算出する第三工程と、
新たなワークの穴をボーリング加工する第四工程と、
を備え、
前記第四工程のボーリング加工は、
前記新たなワークの穴の軸を前記加工軸の軸に対して、前記傾斜角度だけ傾けた状態で、前記加工軸を軸周りに回転させながら、前記加工軸の先端が前記ワークの穴の軸を通るように、前記加工軸をその先端から前記ワークの穴に挿入することによって行われる。
【0008】
請求項2に記載のボーリング加工装置は、
加工軸と、
前記加工軸の先端に設けられた刃と、
前記加工軸を軸周りに回転させる第一アクチュエータと、
前記加工軸を移動させる第二アクチュエータと、
前記加工軸の軸に対する前記ワークの穴の軸の傾斜角度を変更する角度変更部と、
前記角度変更部により前記ワークの穴の軸を前記加工軸の軸に対して傾けない状態で、前記第一アクチュエータにより前記加工軸を軸周りに回転させながら、前記第二アクチュエータにより前記加工軸をその先端から前記ワークの穴に挿入することによって、前記刃で前記ワークの穴をボーリング加工する第一制御部と、
前記第一制御部によるボーリング加工後の前記ワークの穴の形状を測定する測定部と、
前記測定部の測定結果に基づいて、前記加工軸の軸に対する前記ワークの穴の軸の傾斜角度を算出する演算部と、
前記ワークの穴の軸を前記加工軸の軸に対して、前記演算部により算出された傾斜角度だけ、前記角度変更部により傾けた状態で、前記第一アクチュエータにより前記加工軸を軸周りに回転させながら、前記第二アクチュエータにより前記加工軸の先端が前記ワークの穴の軸を通るように、前記加工軸をその先端から前記ワークの穴に挿入することによって、前記刃で前記ワークの穴をボーリング加工する第二制御部と、
を備える。
【0009】
請求項3に記載のボーリング加工方法は、
加工軸、及び前記加工軸の先端に設けられた刃を有する加工工具を用いて、ワークに形成された穴をボーリング加工するボーリング加工方法であって、
前記ワークの穴の軸を前記加工軸の軸に対して傾けない状態で、前記加工軸を軸周りに回転させながら、前記加工軸をその先端から前記ワークの穴の開口部に挿入することによって、前記刃で前記ワークの穴の開口部をボーリング加工する第一工程と、
前記第一工程でボーリング加工されたワークの穴の開口部の形状を測定する第二工程と、
前記第二工程の測定結果に基づいて、前記加工軸の軸に対する前記ワークの穴の軸の傾斜角度を算出する第三工程と、
前記第一工程でボーリング加工された前記ワークの穴を再びボーリング加工する第四工程と、
を備え、
前記第四工程のボーリング加工は、
前記第一工程でボーリング加工されたワークの穴の軸を前記加工軸の軸に対して、前記傾斜角度だけ傾けた状態で、前記加工軸を軸周りに回転させながら、前記加工軸の先端が前記ワークの穴の軸を通るように、前記加工軸をその先端から前記ワークの穴に挿入することによって行われる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ボーリング加工後のワークの穴の内径のばらつきを低減でき、ボーリング加工後のワークの穴の真円度を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)本発明に係るボーリング加工装置の第一実施形態であるボーリング加工装置の概略構成図、(b)ボーリング加工後のワークの穴の形状を示す図。
【図2】ボーリング加工装置がワークを傾けてボーリング加工している状態を示す図。
【図3】図2の一部拡大図。
【図4】(a)本発明に係るボーリング加工装置の第二実施形態であるボーリング加工装置の概略構成図、(b)ボーリング加工装置がワークを傾けてボーリング加工している状態を示す図。
【図5】従来のボーリング加工後のワークの穴の形状を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、ボーリング加工装置10について図面を参照して説明する。
【0013】
ボーリング加工装置10は、ワーク1に形成された穴2をボーリング加工(仕上げ加工)するための装置であり、穴2をボーリング加工することによって穴2の真円度を向上させることができる。ワーク1は、例えばダイカスト法等によって成形されたシリンダブロックである。
【0014】
ボーリング加工装置10は、加工軸11の動作を制御するCAM機能及びNC制御機能を有する装置である。図1(a)に示すように、ボーリング加工装置10は、加工軸11と、刃12と、第一アクチュエータ(不図示)と、X軸支持部13と、Y軸支持部(不図示)と、Z軸支持部14と、第二アクチュエータ(不図示)と、角度変更部と、測定部(不図示)と、演算部(不図示)と、制御部(不図示)と、を備えている。
【0015】
加工軸11は、上下方向に延在する棒状の部材である。加工軸11の先端(下端)には、刃12が設けられている。
【0016】
刃12は、加工軸11の径方向外側に突出しており、加工軸11が軸周りに回転されることによって、加工軸11の軸を中心とした円の回転軌跡を描きながら、加工軸11と共に回転する。また、刃12は、加工軸11の径方向に前進・後退可能に構成されており、加工軸11の径方向に前進・後退されることで、刃12と加工軸11の軸との間の距離が変更され、径寸法の異なる穴2に対応可能となる。
なお、本実施形態では、加工軸11の軸から刃12の先端までの距離を(1/2)aとし、すなわち刃12の回転軌跡が形成する円の径がaになることとする(図3参照)。
【0017】
加工軸11は、前記第一アクチュエータに接続されている。前記第一アクチュエータは、加工軸11を軸周りに回転させるためのアクチュエータである。
加工軸11の基端(上端)は、X軸支持部13、前記Y軸支持部、及びZ軸支持部14に接続されている。X軸支持部13は、加工軸11をX軸方向(左右方向)に移動可能に支持している。前記Y軸支持部は、加工軸11をY軸方向(前後方向)に移動可能に支持している。Z軸支持部14は、加工軸11をZ軸方向(上下方向)に移動可能に支持している。
また、加工軸11は、前記第二アクチュエータに接続されている。前記第二アクチュエータは、加工軸11を移動させるためのアクチュエータである。前記第二アクチュエータは、加工軸11を、X軸支持部13を介してX軸方向に移動させるX軸アクチュエータと、加工軸11を、前記Y軸支持部を介してY軸方向に移動させるY軸アクチュエータと、加工軸11を、Z軸支持部14を介してZ軸方向に移動させるZ軸アクチュエータと、を有している。
【0018】
前記角度変更部は、加工軸11の軸に対するワーク1の穴2の軸の傾斜角度を変更するための装置である。前記角度変更部は、ワーク1を載置可能なテーブル15及びテーブル15に接続され、テーブル15を回転させる回転アクチュエータ(不図示)を有している。テーブル15は、加工軸11の下方に配置されている。テーブル15上にワーク1が載置された状態で、テーブル15が前記回転アクチュエータにより回転されることによって、加工軸11の軸に対するワーク1の穴2の軸の傾斜角度が変更される。
【0019】
前記測定部は、ボーリング加工後の穴2の形状を測定するための装置である。前記測定部は、例えば真円度測定機である。
前記演算部は、加工軸11の軸に対するワーク1の穴2の軸の傾斜角度を算出するための装置である。前記演算部は、例えばPCであり、前記測定部に接続されている。
前記制御部(第一制御部及び第二制御部)は、加工軸11の動作及びテーブル15の回転角度を制御するための装置である。前記制御部は、例えばPCであり、前記回転アクチュエータ、第一アクチュエータ、第二アクチュエータ、及び前記演算部に接続されている。前記制御部は、所定の制御プログラムに基づいて前記各アクチュエータを操作することにより、加工軸11の動作及びテーブル15の回転角度(加工軸11の軸に対するワーク1の穴2の軸の傾斜角度)を制御する。
【0020】
以下では、ボーリング加工装置10がワーク1・1aの穴2・2aのボーリング加工を行うときの手順について説明する。
【0021】
まず、ボーリング加工装置10によりワーク1の穴2のボーリング加工が行われる(第一工程)。
ボーリング加工装置10の制御部(第一制御部)は、加工軸11の下方にワーク1の穴2が存在するようにテーブル15にワーク1が載置された状態で、テーブル15のワーク載置面が水平になるように、前記第三アクチュエータによりテーブル15を回転させる。これにより、ワーク1の穴2の軸が上下方向に向いた状態となる。すなわち、前記制御部は、前記角度変更部によりワーク1の穴2の軸が加工軸11の軸に対して傾かない状態にする。
この状態において、前記制御部は、前記第一アクチュエータにより加工軸11を軸周りに回転させながら、前記第二アクチュエータ(Z軸アクチュエータ)により加工軸11を軸方向に移動させて(下降させて)、加工軸11をその先端からワーク1の穴2に挿入する。これにより、ワーク1の穴2の内周面が加工軸11の先端に設けられた刃12で切削されて、ワーク1の穴2のボーリング加工が行われる。
このとき、ワーク1の穴2の軸方向から見た刃12の回転軌跡は円形状となる。
なお、本実施形態では、ワーク1は、相対的にX軸方向に剛性が高く、Y軸方向に剛性が低く構成されており、ワーク1の穴2の軸方向から見たボーリング加工後の穴2の形状が、X軸方向に寸法aの長軸Aを有すると共に、Y軸方向に寸法bの短軸を有する楕円形状になるものとする(図1(b)参照)。
【0022】
次に、ボーリング加工装置10によるボーリング加工の終了後、前記測定部によりボーリング加工後のワーク1の穴2の形状測定が行われる(第二工程)。
【0023】
次に、前記演算部により、前記測定部の測定結果に基づいて、加工軸11の軸に対するワーク1の穴2の軸の傾斜角度θ°が算出される(第三工程)。
前記演算部は、前記測定部の測定結果から、ボーリング加工後のワーク1の穴2の内径を複数の方向について算出し、算出した複数の内径のうちで、互いに直交する方向に延在すると共に互いの寸法差が最大になる内径R1及び内径R2を抽出して、抽出した内径R1及び内径R2に基づいて、加工軸11の軸に対するワーク1の穴2の軸の傾斜角度θ°=cos−1(r2/r1)°を算出する。
なお、内径R1の寸法をr1とし、内径R2の寸法をr2とし、r1>r2とする。また、内径R1の延在する方向を長軸方向とする。すなわち、前記長軸方向は、ワーク1の穴2の軸が加工軸11の軸に対して傾いていない状態でボーリング加工が行われた場合における、ボーリング加工後のワーク1の穴2の内径のうちで、互いに直交する方向に延在すると共に互いの寸法差が最大になる内径R1及び内径R2に関し、寸法が大きい方の内径R1の延在する方向である。
本実施形態では、上記したように、ボーリング加工後の穴2の形状が、X軸方向の長軸A、及びY軸方向の短軸Bを有する楕円形状になる。従って、内径R1は長軸Aとなり、内径R2は短軸Bとなり、寸法r1は寸法aとなり、寸法r2は寸法bとなる。加工軸11の軸に対するワーク1の穴2の軸の傾斜角度θ°はcos−1(b/a)°となる。前記長軸方向は、X軸方向となる。
【0024】
次に、ボーリング加工装置10により新たな(未加工の)ワーク1aの穴2aのボーリング加工が行われる(第四工程)。
図2及び図3に示すように、ボーリング加工装置10の制御部(第二制御部)は、テーブル15上にワーク1aが載置された状態で、前記回転アクチュエータによりテーブル15を前記長軸方向(X軸方向)に傾斜角度θ°=cos−1(b/a)°だけ傾けて、すなわち、ワーク1aの穴2aの軸を加工軸11の軸に対して、前記長軸方向に傾斜角度θ°だけ、前記角度変更部により傾けて、前記第一アクチュエータにより加工軸11を軸周りに回転させながら、前記第二アクチュエータにより加工軸11の先端がワーク1aの穴2aの軸を通るように、加工軸11をその先端からワーク1aの穴2aに挿入する。これにより、ワーク1aの穴2aの内周面が加工軸11の先端に設けられた刃12で切削されて、ワーク1aの穴2aのボーリング加工が行われる。
このとき、ワーク1aの穴2aの軸方向から見た刃12の回転軌跡はワーク1aの傾斜方向(前記長軸方向)に短円の楕円形状となる。
従って、ボーリング加工後のワーク1aの穴2aの形状は、真円度の高い円形状となる。
【0025】
以上のように、ボーリング加工装置10は、ワーク1aの穴2aの軸を加工軸11の軸に対して、前記長軸方向に傾斜角度θ°だけ、前記角度変更部により傾けて、前記第一アクチュエータにより加工軸11を軸周りに回転させながら、前記第二アクチュエータにより加工軸11の先端がワーク1aの穴2aの軸を通るように、加工軸11をその先端からワーク1aの穴2aに挿入することによって、ワーク1aの穴2aのボーリング加工を行う。
これにより、ボーリング加工後のワーク1aの穴2aの内径のばらつきを低減でき、ボーリング加工後のワーク1aの穴2aの真円度を向上させることが可能である。
【0026】
以下では、ボーリング加工装置10の変形例である、ボーリング加工装置20について説明する。
なお、ボーリング加工装置20について、ボーリング加工装置10と同様の部材に対しては同一符号を付し、詳細な説明およびそれに付随する効果等の記載は省略する。
【0027】
ボーリング加工装置20は、加工軸11と、刃12と、前記第一アクチュエータと、X軸支持部13と、前記Y軸支持部と、Z軸支持部14と、前記第二アクチュエータと、前記角度変更部と、前記測定部と、前記演算部と、制御部(不図示)と、を備えている。
【0028】
以下では、ボーリング加工装置20がワーク1の穴2のボーリング加工を行うときの手順について説明する。
【0029】
まず、ボーリング加工装置20によりワーク1の穴2のボーリング加工が行われる(第一工程)。
図4(a)に示すように、ボーリング加工装置20の制御部は、加工軸11の下方にワーク1の穴2が存在するようにテーブル15にワーク1が載置された状態で、テーブル15のワーク載置面が水平になるように、前記第三アクチュエータによりテーブル15を回転させる。これにより、ワーク1の穴2の軸が上下方向に向いた状態となる。すなわち、前記制御部は、前記角度変更部によりワーク1の穴2の軸が加工軸11の軸に対して傾かない状態にする。
この状態において、前記制御部は、前記第一アクチュエータにより加工軸11を軸周りに回転させながら、前記第二アクチュエータ(Z軸アクチュエータ)により加工軸11を軸方向に移動させて(下降させて)、加工軸11をその先端からワーク1の穴2の開口部に挿入する。これにより、ワーク1の穴2の開口部の内周面が加工軸11の先端に設けられた刃12で切削されて、ワーク1の穴2の開口部のボーリング加工が行われる。
このとき、ワーク1の穴2の軸方向から見た刃12の回転軌跡は円形状となる。
また、ワーク1の穴2の軸方向から見たボーリング加工後の穴2の形状が、X軸方向に寸法aの長軸Aを有すると共に、Y軸方向に寸法bの短軸を有する楕円形状になる(図1(b)参照)。
【0030】
次に、ボーリング加工装置20によるボーリング加工の終了後、前記測定部によりボーリング加工後のワーク1の穴2の開口部の形状測定が行われる(第二工程)。
【0031】
次に、前記演算部により前記測定部の測定結果に基づいて、加工軸11の軸に対するワーク1の穴2の軸の傾斜角度θ°=cos−1(b/a)°が算出される(第三工程)。
ボーリング加工装置20の演算部は、ボーリング加工装置10の演算部と同様の手順で傾斜角度θ°を算出する。
【0032】
次に、ボーリング加工装置20によりワーク1の穴2のボーリング加工が再度行われる(第四工程)。
図4(b)に示すように、ボーリング加工装置20の制御部は、テーブル15上にワーク1が載置された状態で、前記回転アクチュエータによりテーブル15を前記長軸方向(X軸方向)に傾斜角度θ°=cos−1(b/a)°だけ傾けて、すなわち、ワーク1の穴2の軸を加工軸11の軸に対して、前記長軸方向に傾斜角度θ°だけ、前記角度変更部により傾けて、前記第一アクチュエータにより加工軸11を軸周りに回転させながら、前記第二アクチュエータにより加工軸11の先端がワーク1の穴2の軸を通るように、加工軸11をその先端からワーク1の穴2に挿入する。このとき、ボーリング加工装置20の制御部は、加工軸11の先端を穴2の開口部よりも深い位置まで挿入する。これにより、ワーク1の穴2の内周面が加工軸11の先端に設けられた刃12で切削されて、ワーク1の穴2のボーリング加工が行われる。
このとき、ワーク1の穴2の軸方向から見た刃12の回転軌跡はワーク1の傾斜方向(前記長軸方向)に短円の楕円形状となる。
以上のように構成することで、ボーリング加工後のワーク1の穴2の内径のばらつきを低減でき、ボーリング加工後のワーク1の穴2の真円度を向上させることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1・1a ワーク
2・2a 穴
10・20 ボーリング加工装置
11 加工軸
12 刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工軸、及び前記加工軸の先端に設けられた刃を有する加工工具を用いて、ワークに形成された穴をボーリング加工するボーリング加工方法であって、
前記ワークの穴の軸を前記加工軸の軸に対して傾けない状態で、前記加工軸を軸周りに回転させながら、前記加工軸をその先端から前記ワークの穴に挿入することによって、前記刃で前記ワークの穴をボーリング加工する第一工程と、
前記第一工程でボーリング加工されたワークの穴の形状を測定する第二工程と、
前記第二工程の測定結果に基づいて、前記加工軸の軸に対する前記ワークの穴の軸の傾斜角度を算出する第三工程と、
新たなワークの穴をボーリング加工する第四工程と、
を備え、
前記第四工程のボーリング加工は、
前記新たなワークの穴の軸を前記加工軸の軸に対して、前記傾斜角度だけ傾けた状態で、前記加工軸を軸周りに回転させながら、前記加工軸の先端が前記ワークの穴の軸を通るように、前記加工軸をその先端から前記ワークの穴に挿入することによって行われる、
ボーリング加工方法。
【請求項2】
加工軸と、
前記加工軸の先端に設けられた刃と、
前記加工軸を軸周りに回転させる第一アクチュエータと、
前記加工軸を移動させる第二アクチュエータと、
前記加工軸の軸に対する前記ワークの穴の軸の傾斜角度を変更する角度変更部と、
前記角度変更部により前記ワークの穴の軸を前記加工軸の軸に対して傾けない状態で、前記第一アクチュエータにより前記加工軸を軸周りに回転させながら、前記第二アクチュエータにより前記加工軸をその先端から前記ワークの穴に挿入することによって、前記刃で前記ワークの穴をボーリング加工する第一制御部と、
前記第一制御部によるボーリング加工後の前記ワークの穴の形状を測定する測定部と、
前記測定部の測定結果に基づいて、前記加工軸の軸に対する前記ワークの穴の軸の傾斜角度を算出する演算部と、
前記ワークの穴の軸を前記加工軸の軸に対して、前記演算部により算出された傾斜角度だけ、前記角度変更部により傾けた状態で、前記第一アクチュエータにより前記加工軸を軸周りに回転させながら、前記第二アクチュエータにより前記加工軸の先端が前記ワークの穴の軸を通るように、前記加工軸をその先端から前記ワークの穴に挿入することによって、前記刃で前記ワークの穴をボーリング加工する第二制御部と、
を備えるボーリング加工装置。
【請求項3】
加工軸、及び前記加工軸の先端に設けられた刃を有する加工工具を用いて、ワークに形成された穴をボーリング加工するボーリング加工方法であって、
前記ワークの穴の軸を前記加工軸の軸に対して傾けない状態で、前記加工軸を軸周りに回転させながら、前記加工軸をその先端から前記ワークの穴の開口部に挿入することによって、前記刃で前記ワークの穴の開口部をボーリング加工する第一工程と、
前記第一工程でボーリング加工されたワークの穴の開口部の形状を測定する第二工程と、
前記第二工程の測定結果に基づいて、前記加工軸の軸に対する前記ワークの穴の軸の傾斜角度を算出する第三工程と、
前記第一工程でボーリング加工された前記ワークの穴を再びボーリング加工する第四工程と、
を備え、
前記第四工程のボーリング加工は、
前記第一工程でボーリング加工されたワークの穴の軸を前記加工軸の軸に対して、前記傾斜角度だけ傾けた状態で、前記加工軸を軸周りに回転させながら、前記加工軸の先端が前記ワークの穴の軸を通るように、前記加工軸をその先端から前記ワークの穴に挿入することによって行われる、
ボーリング加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−107177(P2013−107177A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255585(P2011−255585)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】