説明

ボールねじ用ナット及びその製造方法

【課題】ボール戻し経路をなす凹部を、ナット素材の内周面に塑性加工で直接形成すると同時に、ナット素材の外周面に突出部を形成する。
【解決手段】カムスライダ3Aに、S字状凹部15用のS字状凸部35だけでなくストッパー102用の凸部36を形成する。カムドライバ4の傾斜した側面41からカムスライダ3Aの斜面33に伝達された力で、両凸部35,36がナット素材1の内周面11を押して塑性変形させる。これに伴って、ナット素材1をなす材料のS字状凸部35に押された部分が上側に移動し、凸部36で径方向外側に押された部分が素材ホルダ2の凹み部21bに押し込まれる。その結果、ナット素材1の内周面11にS字状凹部15が形成され、凹み部21bにナット素材1の外周部が突出して、ナット素材1の外周面にストッパー102が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボールねじを構成するナット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじは、内周面に螺旋溝が形成されたナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道の間に配置されたボールと、前記ボールを軌道の終点から始点に戻すボール戻し経路とを備え、前記軌道内をボールが転動することで前記ナットがねじ軸に対して相対移動する装置である。
このようなボールねじは、一般的な産業用機械の位置決め装置等だけでなく、自動車、二輪車、船舶等の乗り物に搭載される電動アクチュエータにも使用されている。
【0003】
ボールねじのボール戻し経路には循環チューブ方式やコマ方式などがあり、コマ方式の場合は、ボール戻し経路をなす凹部が形成されたコマをナットの貫通穴に嵌めている。これに対して、特許文献1には、ボール戻し経路をなす凹部(循環溝)を、ナット素材の内周面に塑性加工で直接形成することが記載されている。その形成方法を図15を用いて説明する。
【0004】
先ず、循環溝の形状に対応するS字状の凸部37,38を有する円筒状の加工ヘッド30を備えた金型を用意する。そして、ナット素材1を、その軸方向を水平方向に向けて台200の上に置き、ナット素材1の内部に加工ヘッド30を入れて、凸部37,38を上に向け、基端部30aと先端部30bを固定する。次に、この状態で、金型の上部材20にプレス圧を掛けて下降させ、凸部37,38をナット素材1の内周面11に押し当てることで、ナット素材1の内周面11を塑性変形させる。
【0005】
このようなボールねじ用ナットの製造方法において、ナットの外周面に突出部(フランジや、回転または軸方向のストッパー、加工時または取付時の位置決め、動力伝達、トルク伝達等を目的とした突起など)を形成する場合には、切削加工を採用している。
また、特許文献2には、ボール戻し経路をなす凹部(戻り溝)と螺旋溝(内ねじ溝)と外周面の突出部(外径面を形成する部分)を有するナットを、焼結合金で一体に成形することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−281063号公報
【特許文献2】特開2000−297854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、切削加工によるナットの製造は、材料歩留まりが低く高コストであるという問題点を有する。また、焼結合金は密度が低いことに加えて気孔が存在するため、ナットとして十分な強度を有することが難しいという問題点を有する。
この発明の課題は、上記のような従来技術が有する問題点を解決し、材料歩留まりが高いことに加えて、安価で且つ高強度なボールねじ用ナットを製造可能な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明のボールねじ用ナットの製造方法は、内周面に螺旋溝が形成され外周面に突出部を有するナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道の間に配置されたボールと、前記ナットの内周面に凹部として形成された、前記ボールを軌道の終点から始点に戻すボール戻し経路とを備え、前記軌道内をボールが転動することで前記ナットがねじ軸に対して相対移動するボールねじの、前記ナットを製造する方法であって、前記ナットの内周面への前記凹部の形成と前記ナットの外周面への突出部の形成を、冷間鍛造で同時に行うことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明のボールねじ用ナットの製造方法は、内周面に螺旋溝が形成され外周面に突出部を有するナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道の間に配置されたボールと、前記ナットの内周面に凹部として形成された、前記ボールを軌道の終点から始点に戻すボール戻し経路とを備え、前記軌道内をボールが転動することで前記ナットがねじ軸に対して相対移動するボールねじの、前記ナットを製造する方法であって、円筒状のナット素材に内挿され、その軸方向に沿って移動するカムドライバと、前記ナット素材とカムドライバとの間に配置され、前記凹部に対応する凸部が形成され、前記カムドライバの移動により前記凸部が前記ナットの径方向に移動するカムスライダと、前記ナット素材の軸方向両端面と外周面を拘束し、前記外周面を受ける内周面に凹み部が形成された拘束部材と、を有するカム機構の金型を用いたプレス法(冷間鍛造)により、前記凸部で前記ナット素材の内周面を押すことで、前記ナット素材の内周面に前記凹部を形成し、前記拘束部材の凹み部に前記ナット素材の外周部を突出させることで、前記ナット素材の外周面に突出部を形成することを特徴とする。
【0010】
この方法は以下の問題点を解決する。すなわち、特許文献1では、ナットの軸方向寸法が長く内径が小さい場合、金型の加工ヘッドが細長くなるため、強度が不足して破損し易くなるという問題点がある。また、前記凹部の形成に伴う材料の流れが制御できず、前記ナット素材の軸方向に向かうことで、ナット素材の軸方向両端面が変形して凸状になる。ナット素材の軸方向端面は、次工程である螺旋溝加工で加工基準面となるため、凸状になるとそのままでは螺旋溝加工精度が低下するという問題点もある。
【0011】
この方法によれば、前記金型を用いたプレス法により、カム機構をなす斜面でカムドライバの前記軸方向への運動が前記径方向へ方向を変えてカムスライダに伝達され、カムスライダに形成された凸部がナット素材の内周面を押して塑性変形させることで、前記ナット素材の内周面に前記凹部が形成される。そして、軸方向寸法が長く内径が小さいナットを製造する場合でも、特許文献1の方法と比較して前記金型に破損が生じ難い。
【0012】
また、前記拘束部材により、前記ナット素材の軸方向両端面と外周面が拘束され、前記拘束部材の凹み部に前記ナット素材の外周部を突出させて前記突出部を形成するため、前記凹部の形成時に、前記ナット素材の軸方向両端面が変形しにくくなる。ナット素材の軸方向端面は、次工程である螺旋溝加工で加工基準面となるため、そのまま使用した場合の螺旋溝加工精度が向上する。
【0013】
また、この方法によれば、冷間鍛造で、前記凹部の形成と同時にナット素材の外周面に突出部が形成されるため、前記突出部を切削加工で形成した場合のように材料を無駄にすることがない。
請求項1または2記載のボールねじ用ナットの製造方法においては、前記突出部または前記突出部の内周面に形成された凹部またはテーパ面を、基準面または保持部として使用して次工程以降の加工を行うことができる。
【0014】
請求項1または2記載の方法で製造されたボールねじ用ナットとして、前記突出部が、軸力伝達部、トルク伝達部、位置決め部、または取付部であるボールねじ用ナットが挙げられる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の方法によれば、材料歩留まりが高いことに加えて、加工コストも低減でき、安価で且つ高強度なボールねじ用ナットを製造することができる。
請求項2の方法によれば、ボール戻し経路をなす凹部を、ナット素材の内周面に塑性加工で直接形成する方法として、軸方向寸法が長く内径が小さいナットを製造する場合でも、金型を破損することなく前記凹部を形成できるとともに、前記ナット素材の軸方向両端面の変形を抑制できる。また、前記凹部の形成と同時にナット素材の外周面に突出部が形成されるため、前記突出部を切削加工で形成した場合と比較して材料コストを低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態の方法を説明する図である。
【図2】第1実施形態の方法で使用するカムスライダを示す平面図(a)および斜視図(b)と、カムドライバを示す斜視図(c)である。
【図3】図1(b)の状態で金型から外したナット素材を示す斜視図である。
【図4】第2実施形態の方法を説明する図である。
【図5】第2実施形態の方法で使用するカムスライダを示す平面図(a)および斜視図(b)と、カムドライバを示す斜視図(c)である。
【図6】図4(b)の状態で金型から外したナット素材を示す斜視図である。
【図7】第3実施形態の方法を説明する図である。
【図8】第3実施形態の方法で使用するカムスライダを示す平面図(a)および斜視図(b)と、カムドライバを示す斜視図(c)である。
【図9】図7(b)の状態で金型から外したナット素材を示す斜視図である。
【図10】第4実施形態の方法を説明する図である。
【図11】図10(b)の状態で金型から外したナット素材を示す斜視図である。
【図12】第5実施形態の方法を説明する図である。
【図13】図12(b)の状態で金型から外したナット素材を示す斜視図である。
【図14】第6実施形態の金型を構成する素材ホルダを説明する図である。
【図15】特許文献1の方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
この実施形態では、図1に示す方法で、ナット素材1の内周面にS字状凹部(ボール戻し経路をなす凹部)15を形成すると同時に、ナット素材1の外周面に突出するストッパー101をS字状凹部15の径方向外側に形成する。
この実施形態で使用する金型は、図1に示すように、ナット素材1を保持する凹部21を有する素材ホルダ2と、ナット素材1の上端面を拘束する蓋部材22と、ナット素材1の内部に配置するカムスライダ3およびカムドライバ4と、を備えている。素材ホルダ2の凹部21の内周面に、ストッパー101に対応する形状の凹み部21aが形成されている。素材ホルダ2の凹部21と蓋部材22が、ナット素材1の軸方向両端面と外周面を拘束する拘束部材を構成する。
【0018】
カムスライダ3は、図2(a)および(b)に示すように、外周面31と軸方向に平行な平面32を有する略半円柱状部材であって、外周面31をなす円の径は、ナット素材1の内周面11をなす円11aの径より僅かに小さい。カムスライダ3の平面32には、径方向の中央部に、軸方向に延びる斜面33が形成されている。この斜面33は、軸方向一端(上端)の凹部34の底面ライン34aと、平面32の下端をなすライン32dを結ぶ平面に相当する。また、S字状凹部15に対応するS字状凸部35が、カムスライダ3の外周面31に形成されている。
【0019】
カムドライバ4は、図2(c)に示すように、長尺な板状部材であって、一方の側面41がカムスライダ3の斜面33と同じ傾斜の斜面になっている。他方の側面42は、ナット素材1の内周面11をなす円11aに沿った円周面となっている。カムドライバ4の軸方向寸法は、カムスライダ3の軸方向寸法より長い。また、カムドライバ4の厚さは、カムスライダ3の凹部34の開口幅(斜面33の両側面間の寸法)に相当する厚さより僅かに薄い。
【0020】
カムスライダ3の斜面31とカムドライバ4の傾斜した側面41が、金型のカム機構を構成する。
この金型を用い、先ず、素材ホルダ2の凹部21にナット素材1を配置し、ナット素材1の上端面に蓋部材22を載せて、ナット素材1の軸方向両端面と外周面を拘束する。次に、ナット素材1の内部に、カムスライダ3を、凹部34側を上にし、S字状凸部35をナット素材1の内周面11に向けて挿入する。その際に、カムスライダ3のS字状凸部35を素材ホルダ2の凹み部21aに合わせる。
【0021】
次に、カムスライダ3とナット素材1の間にカムドライバ4を挿入する。その際に、カムスライダ3の凹部34にカムドライバ4の側面41側の部分を嵌めて、カムスライダ3の斜面33とカムドライバ4の傾斜した側面41を接触させる。図1(a)はこの状態を示す。
次に、プレス圧を掛けてカムドライバ4を上から押すと、カムドライバ4の傾斜した側面41からカムスライダ3の斜面33に力が伝達される。これに伴い、カムドライバ4の下向きの力がカムスライダ3を径方向外側へ動かす力に変換されて、カムドライ3に形成されたS字状凸部35が、ナット素材1の内周面11を押して塑性変形させる。これに伴って、ナット素材1の外周部に存在する材料が、素材ホルダ2の凹み部21aに押し込まれる。図1(b)はこの状態を示す。
【0022】
これにより、ナット素材1の内周面11にS字状凹部15が形成され、凹み部21aにナット素材1の外周部が突出して、ナット素材1の外周面にストッパー101が形成される。このナット素材1を金型から外した状態を図3に示す。
よって、この実施形態の方法によれば、軸方向寸法が長く内径が小さいナットを製造する場合でも、カムドライバ4に破損を生じさせずにS字状凹部15を形成することができる。また、S字状凸部35により径方向外側に押されたナット素材1の材料が凹み部21aに向かうため、ナット素材1の軸方向両端面に変形が生じにくい。ナット素材1の軸方向端面は、次工程である螺旋溝加工で加工基準面となるため、そのまま使用して螺旋溝の加工を行った場合でも加工精度が良好となる。
【0023】
さらに、S字状凹部15の形成と同時にナット素材1の外周面にストッパー(突出部)101が形成されるため、ストッパー101を切削加工で形成した場合と比較して材料コストを低くすることができる。また、ナット素材1をなす材料が径方向に流れることでストッパー101が形成されるため、このストッパー101は軸力やトルクに対する強度が高いものとなる。
【0024】
[第2実施形態]
この実施形態では、図4に示す方法で、ナット素材1の内周面にS字状凹部(ボール戻し経路をなす凹部)15を形成すると同時に、ナット素材1の外周面に突出するストッパー102を軸方向一端に形成する。
この実施形態で使用する金型は、図4に示すように、ナット素材1を保持する凹部21を有する素材ホルダ2と、ナット素材1の上端面を拘束する蓋部材22と、ナット素材1の内部に配置するカムスライダ3Aおよびカムドライバ4と、を備えている。素材ホルダ2の凹部21の内周面の上端に、ストッパー102に対応する形状の凹み部21bが形成されている。素材ホルダ2の凹部21と蓋部材22が、ナット素材1の軸方向両端面と外周面を拘束する拘束部材を構成する。
【0025】
カムスライダ3Aは、図5(a)および(b)に示すように、外周面31と軸方向に平行な平面32を有する略半円柱状部材であって、外周面31をなす円の径は、ナット素材1の内周面11をなす円11aの径より僅かに小さい。カムスライダ3Aの平面32には、径方向の中央部に、軸方向に延びる斜面33が形成されている。この斜面33は、軸方向一端(上端)の凹部34の底面ライン34aと、平面32の下端をなすライン32dを結ぶ平面に相当する。
【0026】
カムスライダ3Aの外周面31に、S字状凹部15に対応するS字状凸部35が形成されている。カムスライダ3Aの外周面31には、さらに、凹み部21bに対応する位置にストッパー102形成用の凸部36が形成されている。
カムドライバ4は、図5(c)に示すように、長尺な板状部材であって、一方の側面41がカムスライダ3Aの斜面33と同じ傾斜の斜面になっている。他方の側面42は、ナット素材1の内周面11をなす円11aに沿った円周面となっている。カムドライバ4の軸方向寸法は、カムスライダ3Aの軸方向寸法より長い。また、カムドライバ4の厚さは、カムスライダ3Aの凹部34の開口幅(斜面33の両側面間の寸法)に相当する厚さより僅かに薄い。
【0027】
カムスライダ3Aの斜面31とカムドライバ4の傾斜した側面41が、金型のカム機構を構成する。
この金型を用い、先ず、素材ホルダ2の凹部21にナット素材1を配置し、ナット素材1の上端面に蓋部材22を載せて、ナット素材1の軸方向両端面と外周面を拘束する。次に、ナット素材1の内部に、カムスライダ3Aを、凹部34側を上にし、S字状凸部35および凸部36をナット素材1の内周面11に向けて挿入する。その際に、カムスライダ3Aの凸部36を素材ホルダ2の凹み部21bに合わせる。
【0028】
次に、カムスライダ3Aとナット素材1の間にカムドライバ4を挿入する。その際に、カムスライダ3Aの凹部34にカムドライバ4の側面41側の部分を嵌めて、カムスライダ3Aの斜面33とカムドライバ4の傾斜した側面41を接触させる。図4(a)はこの状態を示す。
次に、プレス圧を掛けてカムドライバ4を上から押すと、カムドライバ4の傾斜した側面41からカムスライダ3Aの斜面33に力が伝達される。これに伴い、カムドライバ4の下向きの力がカムスライダ3Aを径方向外側へ動かす力に変換されて、カムスライダ3Aに形成されたS字状凸部35と凸部36が、ナット素材1の内周面11を押して塑性変形させる。これに伴って、ナット素材1をなす材料のS字状凸部35に押された部分が上側に移動し、凸部36で径方向外側に押された部分(ナット素材1の外周部に存在する材料)が素材ホルダ2の凹み部21bに押し込まれる。図5(b)はこの状態を示す。
【0029】
これにより、ナット素材1の内周面11にS字状凹部15が形成され、凹み部21bにナット素材1の外周部が突出して、ナット素材1の外周面にストッパー102が形成される。また、ストッパー102の内側に、凸部36に対応する凹部16が形成される。このナット素材1を金型から外した状態を図6に示す。
よって、この実施形態の方法によれば、軸方向寸法が長く内径が小さいナットを製造する場合でも、カムドライバ4に破損を生じさせずにS字状凹部15を形成することができる。また、S字状凸部35と凸部36により押されたナット素材1をなす材料が凹み部21bに向かうため、ナット素材1の軸方向両端面に変形が生じにくい。ナット素材1の軸方向端面は、次工程である螺旋溝加工で加工基準面となるため、そのまま使用して螺旋溝の加工を行った場合でも加工精度が良好となる。
【0030】
さらに、S字状凹部15の形成と同時にナット素材1の外周面にストッパー(突出部)102が形成されるため、ストッパー102を切削加工で形成した場合と比較して材料コストを低くすることができる。また、ナット素材1をなす材料が径方向に流れることでストッパー102が形成されるため、このストッパー102は軸力やトルクに対する強度が高いものとなる。
【0031】
[第3実施形態]
この実施形態では、図7に示す方法で、ナット素材1の内周面の2カ所にS字状凹部(ボール戻し経路をなす凹部)15a,15bを形成すると同時に、ナット素材1の外周面に突出する一対のストッパー103を軸方向一端に形成する。
この実施形態で使用する金型は、図7に示すように、ナット素材1を保持する凹部21を有する素材ホルダ2と、ナット素材1の上端面を拘束する蓋部材22と、ナット素材1の内部に配置する1対のカムスライダ5A,5Bと、両カムスライダ5A,5Bの間に配置するカムドライバ6を備えている。素材ホルダ2の凹部21の内周面の上端に、一対のストッパー103に対応する形状の一対の凹み部21cが形成されている。素材ホルダ2の凹部21と蓋部材22が、ナット素材1の軸方向両端面と外周面を拘束する拘束部材を構成する。
【0032】
各カムスライダ5A,5Bは、図8(a)および(b)に示すように、ナット素材1の内径より僅かに小さい径の外周面51を有する略半円柱状部材であって、外周面51の反対面をなすライン52はナット素材1の内径より小さい。よって、図8(a)に示すように、両カムスライダ5A,5Bの外周面51を、ナット素材1の内周面11をなす円11aに合わせて配置すると、両カムスライダ5A,5Bのライン52間に隙間52aが生じる。
【0033】
両カムスライダ5A,5Bの対向面(ライン52に沿った面)52bには、ライン52の中央部に、軸方向に延びる斜面53が形成されている。斜面53は、軸方向一端(上端)の凹部54の底面ライン54aと、下端のライン52を結ぶ平面に相当する。また、2カ所の各S字状凹部15a,15bに対応させたS字状凸部55a,55bが、各カムスライダ5A,5Bの外周面51にそれぞれ形成されている。各カムスライダ5A,5Bの外周面51には、さらに、各凹み部21cに対応する位置に、ストッパー103形成用の凸部56が形成されている。
【0034】
カムドライバ6は、図8(c)に示すように、長尺な四角柱であって、両側面が斜面61a,61bになっている傾斜部61と、両側面が互いに平行な面になっている基端部62とからなる。カムドライバ6の斜面61a,61bは、カムスライダ5A,5Bの斜面53と同じである。カムドライバ6の斜面61a,61bの幅は、カムスライダ5A,5Bの斜面53の幅より少し小さい。よって、カムスライダ5A,5Bの凹部54にカムドライバ6の傾斜部61が入る。
【0035】
カムスライダ5A,5Bの斜面53とカムドライバ6の斜面61a,61bが、金型のカム機構を構成する。
この金型を用い、先ず、素材ホルダ2の凹部21にナット素材1を配置し、ナット素材1の上端面に蓋部材22を載せて、ナット素材1の軸方向両端面と外周面を拘束する。次に、ナット素材1の内部に、1対のカムスライダ5A,5Bを両斜面53が向かい合うように挿入する。その際に、カムスライダ5A,5Bの凸部56を素材ホルダ2の各凹み部21cに合わせる。
【0036】
次に、両カムスライダ5A,5Bの凹部54間にカムドライバ6を挿入して、両カムスライダ5A,5Bの斜面53とカムドライバ6の斜面61a,61bを接触させる。図7(a)はこの状態を示す。
次に、プレス圧を掛けてカムドライバ6を上から押すと、カムドライバ6の斜面61a,61bから両カムスライダ5A,5Bの斜面53に力が伝達される。これに伴い、カムドライバ6の下向きの力が各カムスライダ5A,5Bを径方向外側へ動かす力に変換されて、各カムスライダ5A,5Bに形成されたS字状凸部55a,55bと凸部56が、ナット素材1の内周面11を押して塑性変形させる。
【0037】
これに伴って、ナット素材1をなす材料のS字状凸部55a,55bに押された部分が上側に移動し、凸部56で径方向外側に押された部分(ナット素材1の外周部に存在する材料)が素材ホルダ2の凹み部21cに押し込まれる。図7(b)はこの状態を示す。
これにより、ナット素材1の内周面11の2カ所にS字状凹部15a,15bが形成され、凹み部21cにナット素材1の外周部が突出して、ナット素材1の外周面にストッパー103が形成される。また、ストッパー103の内側に、凸部56に対応する凹部17が形成される。このナット素材1を金型から外した状態を図9に示す。
【0038】
よって、この実施形態の方法によれば、軸方向寸法が長く内径が小さいナットを製造する場合でも、カムドライバ6に破損を生じさせずにS字状凹部15を形成することができる。また、S字状凸部55と凸部56により押されたナット素材1をなす材料が凹み部21cに向かうため、ナット素材1の軸方向両端面に変形が生じにくい。ナット素材1の軸方向端面は、次工程である螺旋溝加工で加工基準面となるため、そのまま使用して螺旋溝の加工を行った場合でも加工精度が良好となる。
【0039】
さらに、S字状凹部15の形成と同時にナット素材1の外周面にストッパー(突出部)103が形成されるため、ストッパー103を切削加工で形成した場合と比較して材料コストを低くすることができる。また、ナット素材1をなす材料が径方向に流れることでストッパー103が形成されるため、このストッパー103は軸力やトルクに対する強度が高いものとなる。このストッパー103にボルト挿入穴を設けることで、ナットの取付フランジとして使用できる。
【0040】
[第4実施形態]
この実施形態では、図10に示す方法で、ナット素材1の内周面の2カ所にS字状凹部(ボール戻し経路をなす凹部)15a,15bを形成すると同時に、ナット素材1の軸方向一端の外周部にフランジ104を、内周部にテーパ面18を形成する。
この実施形態で使用する金型は、図10に示すように、ナット素材1を保持する凹部21を有する素材ホルダ2と、ナット素材1の上端面を拘束する蓋部材22と、ナット素材1の内部に配置する1対のカムスライダ7A,7Bと、両カムスライダ7A,7Bの間に配置するカムドライバ8を備えている。素材ホルダ2の凹部21の内周面の上端に、フランジ104に対応する形状の周溝(凹み部)21dが形成されている。素材ホルダ2の凹部21と蓋部材22が、ナット素材1の軸方向両端面と外周面を拘束する拘束部材を構成する。
【0041】
カムスライダ7A,7Bは、第3実施形態のカムスライダ5A,5Bから、軸方向で凸部56が形成されている側の端部が凸部56を含めて切り取られた形状であり、カムスライダ5A,5Bの斜面53を同じ斜面73と、2カ所の各S字状凹部15a,15bに対応させたS字状突起75a,75bを有している。
カムドライバ8は、カムスライダ7A,7Bの斜面73と同じ斜面81a,81bを有する傾斜部81と、テーパ面18に対応するテーパ面82aが形成された基端部82からなる。カムスライダ7A,7Bの斜面73とカムドライバ8の斜面81a,81bが、金型のカム機構を構成する。
この金型を用い、先ず、素材ホルダ2の凹部21にナット素材1を配置し、ナット素材1の上端面に蓋部材22を載せて、ナット素材1の軸方向両端面と外周面を拘束する。次に、ナット素材1の内部に、1対のカムスライダ7A,7Bを両斜面73が向かい合うように挿入する。
【0042】
次に、両カムスライダ7A,7Bの斜面73が形成された凹部(カムスライダ5A,5Bの凹部54と同じ)間にカムドライバ8を挿入して、両カムスライダ7A,7Bの斜面73とカムドライバ8の斜面81a,81bを接触させる。図10(a)はこの状態を示す。
次に、プレス圧を掛けてカムドライバ8を上から押すと、カムドライバ8の斜面81a,81bから両カムスライダ7A,7Bの斜面73に力が伝達される。これに伴い、カムドライバ8の下向きの力が各カムスライダ7A,7Bを径方向外側へ動かす力に変換されて、各カムスライダ7A,7Bに形成されたS字状凸部75a,75bが、ナット素材1の内周面11を押して塑性変形させる。さらに、カムドライバ8のテーパ面82aが、ナット素材1の内周面11の上部を押して塑性変形させる。
【0043】
これに伴って、ナット素材1をなす材料のS字状凸部75a,75bに押された部分が上側に移動し、テーパ面82aで径方向外側に押された部分(ナット素材1の外周部に存在する材料)が素材ホルダ2の周溝21dに押し込まれる。図10(b)はこの状態を示す。
これにより、ナット素材1の内周面11の2カ所にS字状凹部15a,15bが形成され、周溝21dにナット素材1の外周部が突出して、ナット素材1の外周面にフランジ104が形成される。また、フランジ104の内側に、テーパ面82aに対応するテーパ面18が形成される。このナット素材1を金型から外した状態を図11に示す。
【0044】
よって、この実施形態の方法によれば、軸方向寸法が長く内径が小さいナットを製造する場合でも、カムドライバ8に破損を生じさせずにS字状凹部15a,15bを形成することができる。また、S字状凸部75a,75bとテーパ面18により押されたナット素材1をなす材料が周溝21dに向かうため、ナット素材1の軸方向両端面に変形が生じにくい。ナット素材1の軸方向端面は、次工程である螺旋溝加工で加工基準面となるため、そのまま使用して螺旋溝の加工を行った場合でも加工精度が良好となる。
さらに、S字状凹部15a,15bの形成と同時にナット素材1の外周面にフランジ(突出部)104が形成されるため、フランジ104を切削加工で形成した場合と比較して材料コストを低くすることができる。また、ナット素材1をなす材料が径方向に流れることでフランジ104が形成されるため、このフランジ104は軸力やトルクに対する強度が高いものとなる。
【0045】
このフランジ104は、ナットの外周に軸受などの部品を取り付けるツバとして使用できる。テーパ面18はナット素材1の外周面に研磨加工を行う場合のセンタ(円筒研磨の際の回転中心を出す面)として使用できる。また、このフランジ104にボルト挿入穴を設けることで、ナットの取付フランジとして使用できる。また、このフランジ104の外周部に歯切りを行って歯車を形成することもできる。
なお、ナット素材1の外周部に歯車を形成する方法として、素材ホルダ2の内周面に、単純な円筒状の凹み部である周溝21dではなく、歯車の歯に対応する凹凸形状の凹み部を形成することにより、塑性加工で歯車状の突出部を形成した後、切削等の除去加工で仕上げを行う方法を採用することもできる。
【0046】
[第5実施形態]
この実施形態では、図12に示す方法で、ナット素材1の内周面の2カ所にS字状凹部(ボール戻し経路をなす凹部)15a,15bを形成すると同時に、ナット素材1の軸方向一端の内周部にテーパ面18を形成し、軸方向中心の外周部にフランジ105を形成する。
この実施形態で使用する金型は、図12に示すように、ナット素材1を保持する素材ホルダ9と、ナット素材1の内部に配置する1対のカムスライダ7A,7Bと、両カムスライダ7A,7Bの間に配置するカムドライバ8を備えている。カムスライダ7A,7Bとカムドライバ8は、第4実施形態で使用しているものと同じものである。
素材ホルダ9は、ナット素材1の軸方向中心より上側に配置される上部材91と、下側に配置される下部材92とからなる。下部材92は、ナット素材1の軸方向下半分を保持する凹部92aを有し、凹部92aの内周面の上端に、フランジ105の厚さ方向半分に対応する形状の周溝92dが形成されている。
【0047】
上部材91は、ナット素材1の軸方向上半分の外周面を保持する内周面91aと、上端面を押える蓋部91bを有し、内周面91aの下端に、フランジ105の厚さ方向半分に対応する形状の周溝91dが形成されている。素材ホルダ9が、ナット素材1の軸方向両端面と外周面を拘束する拘束部材に相当する
この金型を用い、先ず、素材ホルダ9の下部材92の凹部92aにナット素材1の下部分を配置して、ナット素材1の上部分に上部材91を被せることで、ナット素材1の軸方向両端面と外周面を拘束する。この状態で、上部材91の周溝91dと下部材92の周溝92dにより、ナット素材1の外周面を突出させる周溝(凹み部)9dが形成される。次に、ナット素材1の内部に、1対のカムスライダ7A,7Bを両斜面73が向かい合うように挿入する。
【0048】
次に、両カムスライダ7A,7Bの斜面73が形成された凹部(カムスライダ5A,5Bの凹部54と同じ)間にカムドライバ8を挿入して、両カムスライダ7A,7Bの斜面73とカムドライバ8の斜面81a,81bを接触させる。図12(a)はこの状態を示す。
次に、プレス圧を掛けてカムドライバ8を上から押すと、カムドライバ8の斜面81a,81bから両カムスライダ7A,7Bの斜面73に力が伝達される。これに伴い、カムドライバ8の下向きの力が各カムスライダ7A,7Bを径方向外側へ動かす力に変換されて、各カムスライダ7A,7Bに形成されたS字状凸部75a,75bが、ナット素材1の内周面11を押して塑性変形させる。さらに、カムドライバ8のテーパ面82aが、ナット素材1の内周面11の上部を押して塑性変形させる。
【0049】
これに伴って、ナット素材1をなす材料のS字状凸部75a,75bに押された部分が上側に移動し、テーパ面82aで径方向外側に押された部分(ナット素材1の外周部に存在する材料)が素材ホルダ2の周溝9dに押し込まれる。図12(b)はこの状態を示す。
これにより、ナット素材1の内周面11の2カ所にS字状凹部15a,15bが形成され、周溝9dにナット素材1の外周部が突出して、ナット素材1の外周面にフランジ105が形成される。また、軸方向一端の内周面に、テーパ面82aに対応するテーパ面18が形成される。このナット素材1を金型から外した状態を図13に示す。
【0050】
よって、この実施形態の方法によれば、軸方向寸法が長く内径が小さいナットを製造する場合でも、カムドライバ8に破損を生じさせずにS字状凹部15a,15bを形成することができる。また、S字状凸部75a,75bとテーパ面18により押されたナット素材1をなす材料が周溝9dに向かうため、ナット素材1の軸方向両端面に変形が生じにくい。ナット素材1の軸方向端面は、次工程である螺旋溝加工で加工基準面となるため、そのまま使用して螺旋溝の加工を行った場合でも加工精度が良好となる。
【0051】
さらに、S字状凹部15a,15bの形成と同時にナット素材1の外周面にフランジ(突出部)105が形成されるため、フランジ105を切削加工で形成した場合と比較して材料コストを低くすることができる。また、ナット素材1をなす材料が径方向に流れることでフランジ105が形成されるため、このフランジ105は軸力やトルクに対する強度が高いものとなる。
【0052】
このフランジ105は、ナットの外周に軸受などの部品を取り付けるツバとして使用できる。テーパ面18はナット素材1の外周面に研磨加工を行う場合のセンタ(円筒研磨の際の回転中心を出す面)として使用できる。また、このフランジ105にボルト挿入穴を設けることで、ナットの取付フランジとして使用できる。また、このフランジ105の外周部に歯切りを行って歯車を形成することもできる。
【0053】
なお、ナット素材1の外周部に歯車を形成する方法として、素材ホルダ2の内周面に、単純な円筒状の凹み部である周溝9dではなく、歯車の歯に対応する凹凸形状の凹み部を形成することにより、塑性加工で歯車状の突出部を形成した後、切削等の除去加工で仕上げを行う方法を採用することもできる。
また、この実施形態では、ナット素材1の軸方向に垂直な面で、上部材91と下部材92に分割された素材ホルダ9を使用している。そして、上部材91および下部材92の分割面に、ナット素材1の外周面を突出させる周溝(凹み部)9dを構成する周溝91d,周溝92dを設けている。このように、ナット素材1の軸方向のフランジ105を形成する位置に分割面を設定することで、ナット素材1の軸方向の任意の位置にフランジ105を容易に形成することができる。
【0054】
[第6実施形態]
ナット素材1の外周面に、回転ストッパー等の平行精度が厳しい二面を有する突出部を形成する場合には、図14に示すように、ナット素材1の軸方向に対して平行な面で分割された素材ホルダ2Aを使用することが好ましい。図14(a)のA−A断面図(分割面が見える図)は、図4の素材ホルダ2の断面図と同じである。
図14(a)は、素材ホルダ2Aにナット素材1を配置した後であって、図4(a)に示されている蓋部材22、カムスライダ3A、およびカムドライバ4を挿入する前の状態を示す平面図である。図14(b)は、ナット素材1にS字状凹部15と凹部16とストッパー102を形成した後、図4(b)に示されている蓋部材22、カムスライダ3A、およびカムドライバ4を外した状態を示す平面図である。
【0055】
すなわち、この実施形態では、第2実施形態と同様に、ナット素材1の内周面にS字状凹部(ボール戻し経路をなす凹部)15を形成すると同時に、ナット素材1の外周面に突出するストッパー102を軸方向一端に形成する(ナット素材1を図6に示す状態にする)。
素材ホルダ2Aは、二つの分割体25,26からなる。各分割体25,26には、図4の凹部21が二分割された凹部21Aが形成されている。各分割体25,26の分割面25a,26aに、ストッパー102の幅方向半分に対応する形状の凹部25b,26bが形成されている。これらの凹部25b,26bの互いに平行な面251b,261bは、図14(a)に示すように、分割面25a,26aと平行に形成されている。二つの分割体25,26を分割面25a,26aで合わせると、これらの凹部25b,26bでストッパー102に対応する形状の凹み部21bが形成される。
【0056】
通常、素材ホルダの内面の分割面に対して平行な面には、抜き勾配(成形物を素材ホルダから外し易くするための傾斜)が形成されない。そのため、互いに平行な面を精度良く形成するためには、分割面に対して平行な面を使用することが好ましい。よって、この実施形態では、ストッパー102の互いに平行な二面102a,102b(図14(b)に表示)を形成する二面251b,261bを、分割面25a,26aに対して平行に形成している。
【0057】
この素材ホルダ2Aと、第2実施形態と同じ蓋部材22、カムスライダ3A、およびカムドライバ4を使用して、第2実施形態と同じ方法で、ナット素材1に、S字状凹部15と凹部16とストッパー102を形成する。その際、分割体25,26の凹部25b,26bの面251b,261bが分割面25a,26aと平行なため、これらの面251b,261bが転写されるストッパー102の互いに平行な二面102a,102bの平行精度が高くなる。
【0058】
また、第5実施形態のように、ナット素材1の軸方向に垂直な面で分割された素材ホルダ9では、分割面に垂直なナット素材1の軸方向に抜き勾配が形成される。よって、素材ホルダの分割面を、ナット素材の軸方向に対して垂直な面に形成した場合よりも平行な面に形成した方が、ナット素材の外周部に形成する突出部の軸方向での外径寸法を均一にするという点で好ましい。
なお、素材ホルダの凹み部の内面にローレットやセレーション用の凹凸を形成することにより、ナット素材にS字状凹部と同時にローレットやセレーションを形成することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1 ナット素材
11 ナット素材の内周面
11a ナット素材の内周面をなす円
15 S字状凹部(ボール戻し経路をなす凹部)
15a S字状凹部(ボール戻し経路をなす凹部)
15b S字状凹部(ボール戻し経路をなす凹部)
16 凹部
17 凹部
18 テーパ面
101 ストッパー(突出部)
102 ストッパー(突出部)
102a,102b ストッパー102の互いに平行な二面
103 ストッパー(突出部)
104 フランジ(突出部)
105 フランジ(突出部)
2 素材ホルダ
2A 素材ホルダ
21 凹部(拘束部材)
21a 凹み部
21b 凹み部
21c 凹み部
21d 周溝(凹み部)
22 蓋部材(拘束部材)
25,26 素材ホルダ2Aの分割体
25a,26a 分割面
25b,26b 凹部
251b,261b 凹部の面
3 カムスライダ
3A カムスライダ
33 カムスライダの斜面(カム機構)
35 S字状凸部
36 ストッパー形成用の凸部
4 カムドライバ
41 カムドライバの傾斜した側面(カム機構)
42 円周状の側面
5A カムスライダ
5B カムスライダ
53 カムスライダの斜面(カム機構)
55a S字状凸部
55b S字状凸部
56 ストッパー形成用の凸部
6 カムドライバ
61 傾斜部
61a カムドライバの斜面(カム機構)
61b カムドライバの斜面(カム機構)
62 基端部
7A,7B カムスライダ
73 カムスライダの斜面(カム機構)
75a S字状凸部
75b S字状凸部
8 カムドライバ
81 傾斜部
81a カムドライバの斜面(カム機構)
81b カムドライバの斜面(カム機構)
82 基端部
82a テーパ面
9 素材ホルダ(拘束部材)
9d 周溝(凹み部)
91 上部材
91a 上部材の内周面
91b 上部材の蓋部
91d 上部材の周溝
92 下部材
92a 下部材の凹部
92d 下部材の周溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に螺旋溝が形成され外周面に突出部を有するナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道の間に配置されたボールと、前記ナットの内周面に凹部として形成された、前記ボールを軌道の終点から始点に戻すボール戻し経路とを備え、前記軌道内をボールが転動することで前記ナットがねじ軸に対して相対移動するボールねじの、前記ナットを製造する方法であって、
前記ナットの内周面への前記凹部の形成と前記ナットの外周面への突出部の形成を、冷間鍛造で同時に行うことを特徴とするボールねじ用ナットの製造方法。
【請求項2】
内周面に螺旋溝が形成され外周面に突出部を有するナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道の間に配置されたボールと、前記ナットの内周面に凹部として形成された、前記ボールを軌道の終点から始点に戻すボール戻し経路とを備え、前記軌道内をボールが転動することで前記ナットがねじ軸に対して相対移動するボールねじの、前記ナットを製造する方法であって、
円筒状のナット素材に内挿され、その軸方向に沿って移動するカムドライバと、
前記ナット素材とカムドライバとの間に配置され、前記凹部に対応する凸部が形成され、前記カムドライバの移動により前記凸部が前記ナットの径方向に移動するカムスライダと、
前記ナット素材の軸方向両端面と外周面を拘束し、前記外周面を受ける内周面に凹み部が形成された拘束部材と、
を有するカム機構の金型を用いたプレス法により、前記凸部で前記ナット素材の内周面を押すことで、前記ナット素材の内周面に前記凹部を形成し、
前記拘束部材の凹み部に前記ナット素材の外周部を突出させることで、前記ナット素材の外周面に突出部を形成することを特徴とするボールねじ用ナットの製造方法。
【請求項3】
前記突出部または前記突出部の内周面に形成された凹部またはテーパ面を、基準面または保持部として使用して次工程以降の加工を行う請求項1または2記載のボールねじ用ナットの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2記載の方法で製造されたボールねじ用ナットであって、前記突出部は、軸力伝達部、トルク伝達部、位置決め部、または取付部であるボールねじ用ナット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−159191(P2012−159191A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−277316(P2011−277316)
【出願日】平成23年12月19日(2011.12.19)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】