説明

ボールの製造方法

【課題】耐久性および品質が向上したボールの製造方法を提供する。
【解決手段】下型70の凹状成形面72にキャビティ62の中心となる方向へ突出した支持ピン90に、電子識別媒体ICを収容した芯材30を取外し可能に取付ける。下型70の凹状成形面72および上型80の凹状成形面82にインモールドコート剤を塗布する。ウレタン原料を注入して下型70および上型80を型閉めした後、両型70,80の境界部に形成されたガス抜き部66がキャビティ62の最上部に位置するよう成形型を姿勢変位する。キャビティ62内で、ウレタン原料の発泡、硬化により発泡層40を成形すると共に、インモールドコート剤の硬化によりコーティング層50を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に電子識別媒体が埋め込まれると共に、外表面にコーティング層が形成されたボールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固有の識別符号が設定された電子識別媒体を内部に埋め込んだ電子識別ボール(以降単に「ボール」という)が、ゲーム装置等の遊技媒体として実施されている。例えば前記ゲーム装置は、複数の前記ボールを収容する攪拌容器と、前記各ボールを前記攪拌容器内で攪拌する攪拌手段(フロア、回転コンベア、攪拌バネ等)と、前記攪拌容器内で攪拌されている前記ボールの少なくとも1個を受取る受取り手段と、前記識別符号を識別する識別手段を備えたものである。従って前記ゲーム装置は、攪拌容器内で攪拌している各ボールのうちの少なくとも1個を受取り手段でランダムに受取り、受取ったボールの識別符号を前記識別手段で識別して所定のゲームを遂行する。このようなボールを使用したゲーム装置は、特許文献1に開示されている。
【0003】
次に、前記ボールを製造する従来の製造方法を、図9を引用して概略的に説明する。先ず、ポリウレタン(PU)のスラブ品を所要寸法に切り出したウレタンブロック10を準備して、該ウレタンブロック10から切削加工等によりボールB1の直径に合わせた球状部材12を製作する。そして、前記球状部材12を半割りして、2つの半球部材(第1半球部材14、第2半球部材16)に分割する。
【0004】
次に、第1半球部材14における平坦状の切断面14Aの中央部に切り込み18を形成して、別途準備した電子識別媒体(ICチップ等)ICを該切り込み18に挿入する。そして、電子識別媒体ICの埋め込みが完了したら、第1半球部材14と第2半球部材16とを、各々の切断面14A,16Aで接着剤により貼り合わせて、再び単一の球状部材12とする。
【0005】
次いで、水槽状の容器22内に貯留したコーティング剤(ウレタン系やアクリル系等)24内に、前記球状部材12を浸漬(ディッピング)させた後に取り出し、該球状部材12の外表面全体に付着した該コーティング剤24を、加熱架橋処理により硬化させてコーティング層20を形成する。更に、表面硬度を高める必要がある場合には、塩化ビニルのパウダースラッシュにより球状部材12の外表面全体を再コーティングすることで、前記ボールB1が製造される。
【特許文献1】特開平10−80515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来のボールの製造方法では、第1半球部材14と第2半球部材16との切断面14A,16Aでの接着が不充分であると、ゲーム装置内での使用中に切断面14A,16Aで剥離が起こり、内部に埋め込まれた電子識別媒体ICが剥離部分から外部へ飛び出す不都合が発生してしまう。すなわち、耐久性が高いボールB1を成形できない課題がある。また、ウレタンブロック10からの球状部材12の成形精度不良や、第1半球部材14と第2半球部材16との接着位置決め不良や、コーティング剤24の液垂れ現象等により、球状部材12の外表面に凹凸や段差が形成されたり、形状、サイズにバラツキが生じ易く、高品質のボールB1を安定的に製造できない問題もある。更に、球状部材12をコーティング剤24に浸漬して該球状部材12の外表面に該コーティング剤24を付着させるため、該コーティング剤24の付着厚さが不均一になり易く、よってコーティング層20が一定の厚さに形成されないから、特にコーティング層20の薄い部分では、摩耗が早くて球状部材12が外部へ露出する不都合がある。なお、第1半球部材14と第2半球部材16との切断面14A,16Aでの接着が不充分な場合には、コーティング剤24が両半球部材14,16間に染み込み、場合によっては該コーティング剤24が電子識別媒体ICまで到達して、該電子識別媒体ICが故障するおそれもある。
【0007】
従って本発明では、耐久性および品質が向上したボールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、
発泡層の内部に電子識別媒体が埋め込まれると共に、前記発泡層の外表面にコーティング層が形成されたボールを製造する方法であって、
型閉め時に前記ボールに合わせたキャビティを形成する第1成形型および第2成形型を型開きして、第1成形型の前記キャビティを形成する凹状成形面または第2成形型の前記キャビティを形成する凹状成形面の何れかに、該キャビティの中心となる方向へ突出した姿勢で取付けた支持体に、前記電子識別媒体を取外し可能に取付けると共に、
前記電子識別媒体の支持体への取付け前または取付け後に、前記第1成形型および第2成形型の各凹状成形面にインモールドコート剤を塗布し、
型閉めした前記第1成形型および第2成形型内の前記キャビティで、発泡原料の発泡、硬化により前記発泡層を成形すると共に、前記インモールドコート剤の硬化により前記コーティング層を成形し、
成形された前記ボールから前記支持体を取外すことを特徴とする。
【0009】
従って、請求項1に係る発明によれば、第1成形型および第2成形型により成形された発泡層が単体として成形されて接着面を有さないので、実施途中の衝突や圧縮変形等により発泡層の剥離が発生せず、耐久性が向上したボールを成形し得る。そして、内部に埋め込まれた電子識別媒体が外部へ飛び出すことを防止して、該電子識別媒体の故障や破損を防止し得るボールを成形し得る。また、外形形状がキャビティで規定されるので、成形されたボールに形状やサイズのバラツキが生じず、高品質のボールを安定的に製造し得る。更に、第1成形型および第2成形型の各凹状成形面に対してインモールドコート剤を予め塗布するので、コーティング層の薄い部分が形成され難くなり、耐久性を高めたボールBを製造し得る。また更に、発泡層が単体で接着面を有さないので、インモールドコート剤が発泡層内へ浸透せず、インモールドコート剤の接触による電子識別媒体の故障を防止し得る。
【0010】
請求項2に記載の発明は、
前記第1成形型または第2成形型の上方に開口する凹状成形面に前記発泡原料を注入し、
前記第1成形型と第2成形型とを上下方向で型閉めして、両成形型の境界部に形成されたガス排出部が前記キャビティの最上部に位置するよう該成形型を姿勢変位することを要旨とする。
従って、請求項2に係る発明によれば、キャビティ内で発泡層が上方へ膨張しながら成形される際に、該キャビティ内の空気およびガスを両成形型における境界部のガス抜き部から型外へ排出させ得るので、キャビティ内に空気やガスが閉じ込められることによる発泡層内での空隙の形成や発泡層の外面に凹みが形成されることを等を防止し得る。
【0011】
請求項3に記載の発明は、
前記電子識別媒体を収容可能な芯材を予め成形して、該電子識別媒体を前記芯材に収容し、
前記電子識別媒体の前記芯材への収容前または収容後に該芯材を前記支持体に支持させ、前記芯材を介して前記電子識別媒体を前記支持体に取付けることを要旨とする。
従って、請求項3に係る発明によれば、電子識別媒体を支持部に対して確実かつ安定的に取付けることができる。発泡原料が電子識別媒体に直接接触することを防止でき、発泡原料の接触によって該電子識別媒体の故障が発生することを防止し得る。また、凹状成形面が加熱されてキャビティ内の温度が上昇していても、芯材により断熱されて電子識別媒体が高温に晒されず、熱による該電子識別媒体の故障も防止し得る。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るボールの製造方法によれば、耐久性および品質が向上したボールを製造し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例の製造方法により製造されたボールの内部構造を、一部破断して示す説明図である。
【図2】実施例のボールの製造方法を示す説明図であって、型開きした第1成形型に支持ピンを取付けると共に、第1成形型および第2成形型の各凹状成形面にインモールドコート剤を塗布する状態を示している。
【図3】電子識別媒体を芯材に収容し、該芯材を第1成形型に取付けた支持ピンに取付ける状態を示す説明図である。
【図4】第1成形型にウレタン原料を注入する状態を示す説明図である。
【図5】第1成形型と第2成形型とを型閉めした後に回転させて、両成形型の当接面がキャビティの最上部に位置させることを示す説明図である。
【図6】キャビティ内で発泡層を発泡成形する状態を示す説明図であって、キャビティ内の空気やガスが型外へ排出されることを示している。
【図7】発泡層の成形完了後に成形型を元の状態に回転させることを示す説明図である。
【図8】第1成形型と第2成形型とを型開きして成形されたボールを脱型すると共に、該ボールから支持ピンを取外すことを示す説明図である。
【図9】従来のボールの製造方法を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係るボールの製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【0015】
図1は、実施例の製造方法により製造されたボール(電子識別媒体を埋め込んだボール)Bの内部構造を、一部破断して示した概略図である。実施例のボールBは、該ボールBの中心に位置して電子識別媒体ICが埋め込まれた芯材30と、芯材30の外側に形成された発泡層40と、発泡層40の外表面全体を被覆するコーティング層50とを備えている。発泡層40は適度の弾力性を有しており、ボールBは外力により変形が可能となっている。
【0016】
芯材30は、図示省略した成形型により、ポリスチレン(PS)から発泡成形された球状部材であり、適度の断熱性を有している。芯材30内には、該芯材30の外周面に開口した収容部32が形成されており、前記電子識別媒体ICを挿入して収容し得るようになっている。また、芯材30の外周面には、後述する支持ピン90が差し込まれて螺合可能となっている。なお芯材30は、適度の剛性を有しているので、収容部32内に収容した電子識別媒体ICを外力から保護し得る。
【0017】
発泡層40は、図2等に示す発泡成形型60により、2液混合タイプのウレタン原料(発泡原料)Uから発泡成形された半硬質ウレタンフォームであり、前記芯材30よりは軟らかくなっている。なお実施例では、ポリエーテルポリオール 70重量部、ポリマーポリオール 30重量部、エチレングリコール 5.0重量部、33LV(トリエチレンジアミン33%、ジプロピレングリコール溶液) 0.8重量部、水 0.1重量部、HFC−245fa 8.0重量部からなるA液と、ウレタン変性MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)からなるB液とを、100:35の割合で混合させたウレタン原料Uを使用して発泡層40を成形した。
【0018】
コーティング層50は、図2に示す発泡成形型60の凹状成形面72,82に塗布したインモールドコート剤MCから形成され、発泡層40の外表面全体を被覆した状態で硬化したものである。このインモールドコート剤MCとしては、アクリル樹脂系塗料、ウレタン樹脂系塗料、アクリル変性ウレタン塗料等が使用可能である。前記インモールドコート剤MCから形成されたコーティング層50は、光沢があると共に柔軟性を有しており、前記発泡層40の弾性変形に追従して変形する。またコーティング層50は、耐摩耗性にも優れている。
【0019】
(製造方法)
次に、前記ボールBを製造する方法を、図2〜図8に基づいて説明する。実施例の製造方法では、図2に示すように、互いに型閉め可能な下型(第1成形型)70および上型(第2成形型)80からなるオープン注入方式の発泡成形型60を使用する。下型70および上型80には、型閉め時に互いに対向する側に半球面状の凹状成形面72,82が夫々形成されており、両型70,80を型閉めすることで両凹状成形面72,82が整合して、型内に球状のキャビティ62が形成される。下型70の凹状成形面72には、ピン状の支持ピン(支持体)90が固定するための支持孔74が形成されている。そして、下型70と上型80とを型閉め時に当接した境界部64には、キャビティ62と型外とを連通するガス抜き部66が形成されている。
【0020】
前記支持ピン90は、図2に示すように、直径が1mm程度の部材であり、基端(一方の端部)92が前記支持孔74に差し込まれ、先端(他方の端部)94には、前記芯材30にねじ込むことができる雄ねじ96が形成されている。従って支持ピン90は、図3および図4に示すように、基端92を前記支持孔74に差し込むことでキャビティ62の中心に向けて立設すると共に、先端94を前記芯材30の外面にねじ込むことで、該前記芯材30をキャビティ62の中心に保持させ得る。
【0021】
前記発泡成形型60および支持ピン90を使用した実施例の製造方法では、先ず図2に示すように、発泡成形型60を型開きしたもとで、下型70の支持孔74に支持ピン90を差し込む。下型70に対して支持ピン90のセットが完了したら、該下型70の凹状成形面72、支持ピン90の外周、上型80の凹状成形面82に離型剤を夫々塗布する(図示省略)。そして、離型剤の乾燥後に、インモールドコート剤MCを、噴射ノズル(塗布装置)Nにより下型70および上型80の各凹状成形面72,82に吹付け塗布する。なお、吹付け厚さは0.01〜0.2mm程度である。
【0022】
次に、図3に示すように、予め球状に成形された芯材30の収容部32に前記電子識別媒体ICを挿入し、芯材30に電子識別媒体ICを収容する。そして、電子識別媒体ICを収容した芯材30を、下型70に立設した前記支持ピン90の先端94に取外し可能に装着する。これにより芯材30は、キャビティ62の中心となる位置に支持され、この芯材30を介して電子識別媒体ICが支持ピン90の先端94に取付けられる。
【0023】
支持ピン90を介して下型70に対して芯材30の装着が完了したら、図4に示すように、該下型70の凹状成形面72へ所定量の前記ウレタン原料Uを注入する。そして、ウレタン原料Uの注入が完了したら、下型70と上型80とを型閉めして型内にキャビティ62を画成する。なお、下型70および上型80の各凹状成形面72,82を、図示省略して加熱手段により50〜60℃に加熱しておく。
【0024】
型閉めが完了した発泡成形型60は、図5に示すように、約90度回転するよう姿勢変位させる。これにより、下型70と上型80との境界部64に設けたガス抜き部66が、キャビティ62の最上部に位置するようになる。従って、図6に示すように、ウレタン原料Uが発泡しながらキャビティ62内で上方へ膨張する際に、該キャビティ62内に残存している空気や、ウレタン原料Uの発泡反応によりキャビティ62内で発生したガスが、前記ガス抜き部66を介して型外に押し出される。これにより、キャビティ62内において成形される発泡層40内にボイド(空隙)が形成されたり、発泡層40の外面に凹部が形成されるのを防止し得ると共に、全体が均質の発泡層40が成形される。
【0025】
前記ウレタン原料Uのキュアタイムが経過したら、発泡成形型60を元の状態に回転させ(図7)、下型70と上型80とを型開きする(図8)。そして、成形されたボールBを、前記支持ピン90の軸周りに回転させて、支持ピン90と芯材30との係合を解除した後、該支持ピン90を発泡層40から引抜くことで、当該ボールBを発泡成形型60(下型70)から脱型する。これにより、電子識別媒体ICが埋め込まれたボールBの成形工程が完了する。
【0026】
なお、支持ピン90が細いため、該支持ピン90を抜いた後のボールBの外表面には、該支持ピン90が挿通していた孔が殆ど視認されない。また、インモールドコート剤MCが、下型70および上型80の境界部64に僅かに流れ込むことが原因で、ボールBの外表面にバリが形成された場合には、後工程において該バリを除去すればよい。
【0027】
前述したウレタン原料Uを使用して、実施例の製造方法により製造したボールBは、次のような物性を有することが確認された。
・見掛け全体密度(JIS K7222:2005) 350.0kg/m(300.0〜700.0kg/m)
・硬さ(JIS K7312:1996 タイプC) HsC41(HsC30〜70)
・引張強さ(JIS K6400−5:2004 ダンベル2号形) 1100.0kPa(700.0kPa以上)
・伸び(JIS K6400−5:2004 ダンベル2号形) 210%(150%以上)
・引裂強度(JIS K6400−5:2004 4号形) 48.0N/cm(33.0N/cm以上)
なお、各項目の( )内の数字は、成形条件(ウレタン原料Uの組成物の配合割合や注入量等)を変更することで、実施例の製造方法において成形可能なボールBの物性値である。
【0028】
実施例の電子識別媒体を埋め込んだボールの製造方法によれば、次のような作用効果を奏する。
(1) 下型70および上型80を型閉めして形成されたキャビティ62内で成形された発泡層40が単体として硬化して接着面を有さないので、実施途中の衝突や圧縮変形等により発泡層40の剥離が発生せず、耐久性が向上したボールBを成形し得る。
(2) 発泡層40が剥離しないので、該発泡層40の内部に埋め込まれた電子識別媒体ICが外部へ飛び出すことが防止され、該電子識別媒体ICの故障や破損を防止し得るボールBを成形し得る。
(3) 外形形状がキャビティ62で規定されるので、成形されたボールBの形状、サイズにバラツキが生じず、高品質のボールBを安定的に製造し得る。
(4) インモールドコート剤MCが下型70および上型80の各凹状成形面72,82に密着した状態で硬化するので、成形されたコーティング層50の外表面全体が光沢があって滑らかになり、高品質のボールBを製造し得る。
(5) 下型70および上型80の各凹状成形面72,82に対して、噴射ノズルNによりインモールドコート剤MCを予め一定の厚さで塗布するので、該インモールドコート剤MCの液垂れの発生が抑えられ、コーティング層50の薄い部分が形成され難くなって耐久性を高めたボールBを製造し得る。
(6) キャビティ62内で発泡層40を成形する際に、発泡成形型60を回転させて下型70と上型80との境界部64におけるガス抜き部66をキャビティ62の最上部に位置するようにしたので、該キャビティ62内に空気およびガスが境界部64から型外へ排出されてキャビティ62内に閉じ込められない。従って、ウレタン原料Uがキャビティ62全体に膨張可能となり、成形された発泡層40内に空隙が形成されたり、該発泡層40の外面に凹みができること等を防止し得ると共に、該発泡層40の全体が均一となったボールBを成形し得る。
(7) 電子識別媒体ICを収容した芯材30を、支持ピン90の先端94に固定するようにしたので、該電子識別媒体ICをキャビティ62の中心に確実かつ安定的に取付けることができる。
(8) 電子識別媒体ICを芯材30に収容した状態でウレタン原料Uを発泡させて発泡層40を成形するので、ウレタン原料Uが電子識別媒体ICと直接接触することを防止でき、ウレタン原料Uの接触による該電子識別媒体ICの故障を防止し得る。また、下型70および上型80の各凹状成形面72,82が加熱されてキャビティ62内の温度が上昇していても、芯材30により断熱されて電子識別媒体ICが高温に晒されず、熱による該電子識別媒体ICの故障も防止し得る。
(9) 発泡層40が単体として成形されて接着面を有さないので、インモールドコート剤MCが発泡層40内に浸透して該発泡層40内に埋め込まれた電子識別媒体ICまで到達せず、インモールドコート剤MCの接触による該電子識別媒体ICの故障を防止し得る。
【0029】
(変更例)
(1) 前記実施例では、支持ピン90を下型70の凹状成形面72に固定的に立設した形態を例示したが、支持ピン90は着脱可能に立設する形態であってもよい。そして、支持ピン90を着脱可能な形態とした場合には、該支持ピン90を下型70の凹状成形面72に立設させた後に、該支持ピン90の先端94に芯材30を螺合させて取付けたり、支持ピン90を先に芯材30に取付け、芯材30を取付けた支持ピン90を下型70の凹状成形面72に取付けるようにし得る。
(2) 上型80の凹状成形面82に支持孔74を設けて、支持ピン90を該上型80に取外し可能に取付けるようにしてもよい。
(3) 実施例では、芯材30に電子認識媒体ICを収容した後に、該芯材30に支持ピン90を取付けるようにしたが、芯材30に支持ピン90を取付けた後に、該芯材30に電子認識媒体ICを収容するようにしてもよい。
(4) 前記電子識別媒体ICに、前記支持ピン90の先端94が螺合可能な孔を形成可能な場合は、該支持ピン90を該電子識別媒体ICに直接係合してもよい。この場合には、前記芯材30を不要とすることが可能である。
(5) 支持ピン90の先端に柔軟性を有するジョイント部を接着剤等で固定して、該ジョイント部と電子識別媒体ICとを接着してもよい。この場合も、前記芯材30を不要とし得る。
(6) 支持ピン90の先端と電子識別媒体ICとを、柔軟性のある接着剤で接着するようにしてもよい。この場合も、芯材30を不要とし得る。
(7) 支持ピン90の先端を尖端形状として、該支持ピン90を芯材30に差し込むように構成してもよい。
(8) 発泡層40の成形後における発泡成形型60の型開きは、該発泡成形型60を元の状態に回転させずに行なってもよい。
(9) 実施例では、オープン注入方式の発泡成形型60を例示したが、本願のボールの製造方法は、クローズド注入方式の発泡成形型でも実施可能である。クローズド注入方式の発泡成形型の場合は、下型70と上型80とを型閉めした後に、注入口を介してキャビティ内にウレタン原料Uを注入する。
【符号の説明】
【0030】
30 芯材,40 発泡層,50 コーティング層,62 キャビティ,64 境界部
66 ガス抜き部,70 下型(第1成形型),72 凹状成形面,80 上型(第2成形型)
82 凹状成形面,90 支持ピン(支持体),B ボール,IC 電子識別媒体
MC インモールドコート剤,N 噴射ノズル(塗布装置),U ウレタン原料(発泡原料)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡層の内部に電子識別媒体が埋め込まれると共に、前記発泡層の外表面にコーティング層が形成されたボールを製造する方法であって、
型閉め時に前記ボールに合わせたキャビティを形成する第1成形型および第2成形型を型開きして、第1成形型の前記キャビティを形成する凹状成形面または第2成形型の前記キャビティを形成する凹状成形面の何れかに、該キャビティの中心となる方向へ突出した姿勢で取付けた支持体に、前記電子識別媒体を取外し可能に取付けると共に、
前記電子識別媒体の支持体への取付け前または取付け後に、前記第1成形型および第2成形型の各凹状成形面にインモールドコート剤を塗布し、
型閉めした前記第1成形型および第2成形型内の前記キャビティで、発泡原料の発泡、硬化により前記発泡層を成形すると共に、前記インモールドコート剤の硬化により前記コーティング層を成形し、
成形された前記ボールから前記支持体を取外す
ことを特徴とするボールの製造方法。
【請求項2】
前記第1成形型または第2成形型の上方に開口する凹状成形面に前記発泡原料を注入し、
前記第1成形型と第2成形型とを上下方向で型閉めして、両成形型の境界部に形成されたガス排出部が前記キャビティの最上部に位置するよう該成形型を姿勢変位する請求項1記載のボールの製造方法。
【請求項3】
前記電子識別媒体を収容可能な芯材を予め成形して、該電子識別媒体を前記芯材に収容し、
前記電子識別媒体の前記芯材への収容前または収容後に該芯材を前記支持体に支持させ、前記芯材を介して前記電子識別媒体を前記支持体に取付ける請求項1または2記載のボールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−20418(P2011−20418A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169436(P2009−169436)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】