説明

ボールジョイントのベアリングシート及びボールジョイント

【課題】ボール部と摺動面との間に配置した潤滑剤をより確実に保持して耐久性を向上できるボールジョイントのボールシートを提供する。
【解決手段】摺動面52の主摺動部52bの副摺動部52aと隣接する部分に周方向に沿って環状の溝部61を形成する。摺動面52に圧入したボール部と摺動面52との間に配置した潤滑剤を溝部61に収容する。溝部61の副摺動部52a側に隣接してボール部に対して締め代を有する突起部62を突出して形成する。潤滑剤を摺動面52の主摺動部52bにより確実に保持して耐久性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車などの懸架装置、あるいは操舵装置などに用いられるボールジョイントのベアリングシート及びこれを備えたボールジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車などの車両の懸架装置、あるいは操舵装置などに用いられるこの種のボールジョイントは、内室及びこの内室に連通する開口部を有する有底円筒状のハウジングであるソケットを備えている。また、ソケットの内室には、ベアリングシートとしての円筒状のボールシートが嵌着されており、このボールシート内には、ボールスタッドのボール部が圧入されて、回動可能に保持されている。さらに、ボールスタッドのスタッド部は、ソケットの他端部からこのソケットの外部へと突出して車体側に接続されている。
【0003】
そして、ボールシート内の摺動面とボール部との間には、流体状の潤滑剤すなわちグリース(潤滑油)が保持され、摺動性を確保している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−173326号公報(第3−4頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そして、上記のような構成のボールジョイントのうち、特にソケット、ボールシート及びボールスタッドのボール部を上側とし、ボールスタッドのスタッド部を下側とする、いわゆる倒立圧縮タイプのボールジョイントにおいて、ボールシートとボール部との間にグリースをより確実に保持して耐久性を向上できる構成が望まれている。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、ボール部と摺動面との間に配置した潤滑剤をより確実に保持して耐久性を向上できるボールジョイントのベアリングシート及びこれを備えたボールジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のボールジョイントのベアリングシートは、筒状に形成され、ハウジングに収容され、潤滑剤を介してボールスタッドのボール部を回動可能に保持するボールジョイントのベアリングシートであって、一端側に位置する開口と、この開口に連通し前記ボール部の赤道位置に対応する部分に位置する筒状部及びこの筒状部に連続し他端側へと徐々に縮径される縮径部を有し、前記ボール部が圧入されこのボール部との間に潤滑剤が配置される摺動面と、この摺動面の前記縮径部の前記筒状部と隣接する部分に周方向に沿って環状に形成された溝部と、この溝部の前記筒状部側に隣接する部分に周方向に沿って環状に形成され、前記摺動面に圧入されたボール部に対して締め代を有するように前記摺動面から突出する突起部とを備えているものである。
【0008】
請求項2記載のボールジョイントのベアリングシートは、請求項1記載のボールジョイントのベアリングシートにおいて、開口の内縁部に突出して形成され、ハウジングに収容された状態で摺動面に圧入されたボール部に対して締め代を有するリップ部を備えているものである。
【0009】
請求項3記載のボールジョイントは、ハウジングと、このハウジングに収容された請求項1または2記載のベアリングシートと、このベアリングシートの摺動面に圧入されて回動可能に保持されるボール部を備えたボールスタッドとを具備したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のボールジョイントのベアリングシートによれば、摺動面の縮径部の筒状部と隣接する部分に周方向に沿って環状の溝部を形成することにより、摺動面に圧入されたボール部と摺動面との間に配置した潤滑剤を溝部に収容するとともに、この溝部の筒状部側に隣接してボール部に対して締め代を有する突起部を突出して形成することにより、潤滑剤を摺動面の縮径部により確実に保持して、耐久性を向上できる。
【0011】
請求項2記載のボールジョイントのベアリングシートによれば、請求項1記載のボールジョイントのベアリングシートの効果に加えて、開口の内縁部に、ハウジングに収容された状態で摺動面に圧入されたボール部に対して締め代を有するリップ部を突出して形成することにより、筒状部側に移動した潤滑剤をリップ部によって筒状部に確実に保持して、耐久性をより向上できる。
【0012】
請求項3記載のボールジョイントによれば、請求項1または2記載のベアリングシートを備えることにより、耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態のベアリングシートを示す縦断面図である。
【図2】同上ベアリングシートを備えたボールジョイントを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態の構成を図1及び図2を参照して説明する。
【0015】
図2において、11はボールジョイントを示し、このボールジョイント11は、例えば自動車などの車両の懸架装置、あるいは操舵装置などに用いられるものである。そして、ボールジョイント11は、ハウジングであるソケット16と、ボールスタッド17と、このボールスタッド17の一部を摺動(回動)可能に保持してソケット16に収容されるベアリングシートである略円筒状のボールシート18と、ソケット16の外周面からボールスタッド17の外周面に亘って配置されたダストカバー19とを備え、ソケット16を上側として配置される、いわゆる倒立圧縮タイプのものである。なお、以下、図1及び図2中の下側を一端側である下側、上側を他端側である上側として説明する。
【0016】
ソケット16は、例えば(冷間)鍛造、あるいは鋳造などにより形成された金属製であり、円筒状の本体部21と、この本体部21の上端側に連続する傾斜部22と、この傾斜部22の上端に連続する蓋部(底部)としての閉塞部23とを一体に有する、有蓋円筒状(有底円筒状)に形成されている。そして、このソケット16の内部には、本体部21と傾斜部22と閉塞部23とによって内室24が区画形成されており、ソケット16の下端部には、内室24をソケット16の外部と連通する開口部である円形状のソケット開口部25が形成されている。
【0017】
本体部21の下端側の外周には、ダストカバー19の上端部を取り付け固定するカバー取付部としてのカバー固定溝27が周方向に沿って円環溝状に形成されている。
【0018】
傾斜部22は、下端側(本体部21側)から上端側(閉塞部23側)へと徐々に縮径される円筒状に形成されている。
【0019】
閉塞部23は、ソケット16の軸方向に対して略直交する方向に沿って形成されており、傾斜部22の上端を閉塞している。
【0020】
また、内室24は、本体部21の内方に位置する内室本体部24aと、この内室本体部24aの上端側に連続し本体部21の内方から傾斜部22の内方に亘って位置する内室傾斜部24bと、この内室傾斜部24bの上端に連続する内室蓋部(内室底部)としての内室閉塞部24cとを備えている。
【0021】
内室傾斜部24bは、下端側(内室本体部24a側)から上端側(内室閉塞部24c側)へと徐々に縮径される円筒状に形成されている。
【0022】
内室閉塞部24cは、閉塞部23の内方である下方に位置している。
【0023】
また、ソケット開口部25には、内室24に収容されたボールシート18の抜け止め用の保持部材としての円環状のプラグ31が取り付けられている。このプラグ31は、ソケット開口部25の内縁部に沿って段差状に形成された保持部32に外周縁が保持された状態で、ソケット16の下端側を中心側へとかしめ変形させたかしめ固定部33により、ソケット16に固定されている。
【0024】
一方、ボールスタッド17は、例えば鋼鉄製などであり、球状のボール部41と、このボール部41に連結された軸状のスタッド部42とを一体に備えている。
【0025】
ボール部41は、外周面の一部がボールシート18に摺動(回動)可能に保持されている。すなわち、ボール部41は、ボールシート18とともにソケット16の内室24に収容されている。
【0026】
スタッド部42は、図示しない外部の被接続部材に接続されて荷重が加わる部分であり、ソケット16から外方(図2中の下方)へと突出している。なお、このスタッド部42は、ボール部41と一体に成形してもよいし、ボール部41と別体で成形した後、ボール部41に溶接などにより一体化してもよい。
【0027】
そして、ボールシート18は、図1及び図2に示すように、例えば耐摩耗性に優れ弾性率が高い合成樹脂製などにより円筒状に形成され、ソケット16の内室24に嵌着保持されて収容されている。このボールシート18は、円筒状のシート本体部45と、このシート本体部45の上端に連続するシート傾斜部46と、このシート傾斜部46の上端に連続するシート蓋部(シート底部)としてのシート端部47とを一体に備えている。さらに、このボールシート18には、開口51が下端部に位置して形成されているとともに、この開口51に連通しボール部41の外周面を保持する摺動面52が内部に形成されている。
【0028】
シート本体部45は、ボールシート18が内室24に嵌着された状態でソケット16の本体部21の内方に位置する部分である。また、このシート本体部45の下端部の外周は、外方へと突出したシート突出部54となっている。このシート突出部54は、ソケット16の内室24にボールシート18を嵌着した状態で、ソケット16の内室24に当接してこの内室24に沿って形状が規制されることにより摺動面52の下端側を円形状に湾曲させるものである。さらに、このシート本体部45の下端部は、ボールシート18をソケット16の内室24に収容した状態で、ソケット16に取り付けられたプラグ31に当接している。
【0029】
シート傾斜部46は、ボールシート18が内室24に嵌着された状態でソケット16の傾斜部22の内方に位置する部分であり、シート本体部45側から上端側(シート端部47側)へと徐々に縮径される円筒状に形成されている。また、このシート傾斜部46の外周には、ソケット16の内室24に嵌着されたボールシート18を、この内室24に対して周方向に回り止めするための複数の回り止め突起部55が互いに周方向に離間されて形成されている。
【0030】
シート端部47は、ボールシート18が内室24に嵌着された状態でソケット16の閉塞部23の内方に位置するとともに、この閉塞部23に対して離間されている部分である。また、このシート端部47は、ボール部41の外周面に対して離間されている。さらに、このシート端部47には、内室閉塞部24cに連通する孔部57が貫通して形成されており、摺動面52の上端の位置から孔部57を含むシート端部47と閉塞部23との間に亘る領域58が、ボール部41と摺動面52との間に配置される潤滑剤Gを溜めるための潤滑剤溜め部となっている。
【0031】
そして、開口51は、ボールシート18が内室24に嵌着された状態でソケット16のソケット開口部25に連通するものである。また、この開口51の内縁部には、リップ部59が突出して形成されている。このリップ部59は、周方向全体に亘って連続する円環状に形成されており、先端側が凸弧状に形成されている。また、このリップ部59は、ボールシート18単体状態、すなわちソケット16の内室24にボールシート18を収容していない状態では、ボール部41の外周形状(図1に示す想像線A)に対して外方に離間され(締め代を有さず)、ボールシート18を内室24に収容保持した状態でボールシート18の下端側が変形することによって、摺動面52に圧入されたボール部41の外周形状(図1に示す想像線A)に対して先端側が突出する。したがって、このリップ部59は、ソケット16の内室24にボールシート18が収容された状態で摺動面52に圧入されたボール部41に対して締め代を有しており、ボール部41の外周面に対して弾性的に圧縮して液密に密着するように構成されている。
【0032】
また、摺動面52は、シート本体部45の内方に位置する筒状部としての副摺動部52aと、この副摺動部52aの上端に連続しシート本体部45からシート傾斜部46の内方に亘って位置する縮径部としての主摺動部52bとを有し、シート本体部45の内方からシート傾斜部46の内方に亘って連続して形成されている。さらに、主摺動部52bの副摺動部52aと隣接する部分には、溝部61が環状に形成され、この溝部61の副摺動部52a側に隣接する部分には、環状の突起部62が突出して形成されている。
【0033】
副摺動部52aは、摺動面52に圧入されたボール部41の赤道位置Eに対応する部分を保持する部分であり、ボール部41を補助的に摺動(回動)可能に保持する部分である。この副摺動部52aは、ボールシート18単体状態では円筒面状に形成されているものの、ボールシート18がソケット16の内室24に収容されてシート突出部54が中心方向へと変形された状態では、開口51側である下端側がボール部41の外周面に沿う球面状となるように中心側へと湾曲するように構成されている。なお、ボール部41の赤道位置Eとは、ボール部41の軸方向に交差(直交)する方向に径寸法が最大になる位置の外周面をいう。
【0034】
主摺動部52bは、摺動面52に圧入されたボール部41の赤道位置Eよりも下端側(副摺動部52a側)から上端側へと徐々に縮径される球面状に形成されており、ボール部41を主として摺動(回動)可能に保持する部分である。
【0035】
溝部61は、突起部62の主摺動部52b側に隣接しており、周方向全体に亘って連続する円環状に形成されている。この溝部61は、摺動面52に対して凹状に窪んで形成されており、潤滑剤Gを内部に収容(貯留)可能となっている。
【0036】
また、突起部62は、周方向全体に亘って連続する円環状に形成され、先端側が凸弧状に形成されている。また、この突起部62は、摺動面52に圧入されたボール部41の外周形状(図1に示す想像線A)に対して、先端側が突出している。したがって、この突起部62は、摺動面52に圧入されたボール部41に対して締め代を有しており、ボール部41の外周面に対して弾性的に圧縮して液密に密着するように構成されている。さらに、この突起部62は、摺動面52に圧入されたボール部41の赤道位置Eよりも上側の位置にてボール部41の外周面に接触している。
【0037】
さらに、ダストカバー19は、ダストシール、あるいはブーツなどとも呼ばれ、ボールスタッド17の揺動に拘らずソケット16のソケット開口部25を覆い、ソケット16あるいはボールシート18の内部への水分及び塵埃などの侵入を阻止するものである。このダストカバー19は、例えば合成樹脂により略円筒状に形成され、下端側がボールスタッド17のスタッド部42の外周面に固定され、上端側がソケット16のカバー固定溝27に嵌着され、この上端側の外周面に取り付けられたリング状の固定部材65により締め付け固定されている。
【0038】
次に、上記一実施の形態のボールジョイント11の組み立て作業について説明する。
【0039】
まず、例えばボール部41の外周面、あるいはボールシート18の摺動面52に潤滑剤Gを塗布した状態で、ボール部41をボールシート18の開口51から摺動面52へと圧入し、ボール部41をボールシート18により回動可能に保持する。なお、潤滑剤Gは、後工程で外部からボール部41とボールシート18の摺動面52との間に注入してもよい。
【0040】
このとき、突起部62がボール部41の外周面に対して締め代を有することにより、この突起部62が圧縮されてボール部41の外周面に圧接される。また、リップ部59は、ボール部41の外周面に対して離間されている。さらに、ボールスタッド17のスタッド部42は、ボールシート18の開口51側に突出した状態となっている。
【0041】
次いで、ボールスタッド17のボール部41を保持したボールシート18を、ソケット16のソケット開口部25から内室24内に挿入して嵌着する。この状態で、ボールシート18は、シート突出部54がソケット16の内室24の内室本体部24aに当接することにより、下端側が中心側へと変形し、この変形した状態でボール部41の外周面に対して締め代を有するリップ部59が圧縮されてボール部41の外周面に圧接される。
【0042】
そして、プラグ31をボールスタッド17のスタッド部42に対して挿通してソケット16の保持部32に取り付け、ソケット16の下端側を中心側へとかしめ変形させることでかしめ固定部33を形成することにより、プラグ31をソケット16のソケット開口部25の内縁部に保持する。このとき、回り止め突起部55が圧縮されて内室傾斜部24bに圧接される。この結果、ボールシート18がボールスタッド17とともに、ソケット16の内室24に回り止めされた状態で固定される。
【0043】
この後、ダストカバー19をボールスタッド17のスタッド部42に対して挿通し、このダストカバー19の上端側を固定部材65によってカバー固定溝27に締め付け固定するとともに、ダストカバー19の下端側をボールスタッド17のスタッド部42の外周に固定することにより、ボールジョイント11を完成する。
【0044】
次に、上記一実施の形態のボールジョイント11の動作について説明する。
【0045】
車体側からの荷重がボールスタッド17に加わると、ボールスタッド17が左右方向に揺動する。
【0046】
このとき、ボール部41と摺動面52との間に配置された潤滑剤Gの作用により、ボール部41が摺動面52において、円滑に回動(摺動)する。
【0047】
流体状の潤滑剤Gは、ボール部41の回動に伴い摺動面52上、特に主摺動部52b上を移動し、その一部は溝部61に収容保持される。この溝部61に収容された潤滑剤Gは、溝部61の土手となる突起部62のシール作用によって、主摺動部52b側から副摺動部52a側へと移動することが抑制される。
【0048】
このように、主摺動部52b側の潤滑剤Gは、溝部61に収容され、または、主摺動部52bを移動し、主摺動部52bでのボール部41の回動(摺動)性が確保される。
【0049】
さらに、万一潤滑剤Gが主摺動部52bから副摺動部52a側へと逃げ出した場合でも、この逃げ出した潤滑剤Gはリップ部59のシール作用によって副摺動部52aに保持されることとなり、摺動面52から逃げ出すことはない。
【0050】
上述したように、上記一実施の形態によれば、摺動面52の主摺動部52bの副摺動部52aと隣接する部分に周方向に沿って環状の溝部61を形成することにより、摺動面52に圧入されたボール部41と摺動面52との間に配置した潤滑剤Gを溝部61に収容するとともに、この溝部61の副摺動部52a側に隣接してボール部41に対して締め代を有する突起部62を突出して形成することにより、溝部61に収容した潤滑剤Gの副摺動部52a側への漏れ出しを抑制でき、潤滑剤Gを特に摺動面52の主摺動部52bにより確実に保持して、耐久性を向上できる。
【0051】
また、開口51の内縁部に、ソケット16に収容された状態で摺動面52に圧入されたボール部41に対して締め代を有するリップ部59を突出して形成することにより、副摺動部52a側へと移動した潤滑剤Gをリップ部59によって副摺動部52aに確実に保持して、耐久性をより向上できる。
【0052】
しかも、溝部61は、ボール部41の回動などにより荷重が加わった突起部62の逃げとなるので、過剰な負荷が突起部62に加わることを防止できる。
【0053】
さらに、ボールジョイント11は、上記ボールシート18を備えることにより、耐久性を向上できる。特に、ソケット16を上側として配置される、いわゆる倒立圧縮タイプのボールジョイント11においては、主としてボールシート18の摺動面52の主摺動部52bにおいてボール部41を保持するので、溝部61と突起部62とによって主摺動部52b内に潤滑剤Gを確実に保持するとともに、仮に主摺動部52bから副摺動部52a側に逃げた潤滑剤Gもリップ部59によって副摺動部52aに保持できるので、潤滑剤Gを摺動面52に確実に保持して、耐久性を向上できる。
【0054】
なお、上記一実施の形態において、ボールスタッド17は、スタッド部42を有さないものでもよい。
【0055】
また、ボールジョイント11は、倒立圧縮タイプのものでなくてもよく、また、車両の操舵装置あるいは懸架装置に限らず、任意の接続箇所に用いることができる。
【符号の説明】
【0056】
11 ボールジョイント
16 ハウジングであるソケット
17 ボールスタッド
18 ベアリングシートであるボールシート
41 ボール部
51 開口
52 摺動面
52a 筒状部としての副摺動部
52b 縮径部としての主摺動部
59 リップ部
61 溝部
62 突起部
E 赤道位置
G 潤滑剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成され、ハウジングに収容され、潤滑剤を介してボールスタッドのボール部を回動可能に保持するボールジョイントのベアリングシートであって、
一端側に位置する開口と、
この開口に連通し前記ボール部の赤道位置に対応する部分に位置する筒状部及びこの筒状部に連続し他端側へと徐々に縮径される縮径部を有し、前記ボール部が圧入されこのボール部との間に潤滑剤が配置される摺動面と、
この摺動面の前記縮径部の前記筒状部と隣接する部分に周方向に沿って環状に形成された溝部と、
この溝部の前記筒状部側に隣接する部分に周方向に沿って環状に形成され、前記摺動面に圧入されたボール部に対して締め代を有するように前記摺動面から突出する突起部とを備えている
ことを特徴とするボールジョイントのベアリングシート。
【請求項2】
開口の内縁部に突出して形成され、ハウジングに収容された状態で摺動面に圧入されたボール部に対して締め代を有するリップ部を備えている
ことを特徴とする請求項1記載のボールジョイントのベアリングシート。
【請求項3】
ハウジングと、
このハウジングに収容された請求項1または2記載のベアリングシートと、
このベアリングシートの摺動面に圧入されて回動可能に保持されるボール部を備えたボールスタッドと
を具備したことを特徴とするボールジョイント。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−92865(P2012−92865A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238493(P2010−238493)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000198271)株式会社ソミック石川 (91)
【Fターム(参考)】