説明

ボールジョイント及びボールジョイント装置

【課題】ボールシートの摩耗量を比例的に検出可能なボールジョイントを提供する。
【解決手段】導電性を有するボールシート4の摺動面部45に電極55を電気的に接続する。導電性のボールスタッド2と電極55とを、通電状態に基づきボールシート4の摩耗量を検出する摩耗検出部6にボールシート4の外側部を介して電気的に接続可能とする。摩耗検出部6の検出器72で検出した電流値がボールシート4の摩耗量に対応するため、検出した電流値に基づいてボールシート4の摩耗量を摩耗検出部6により比例的に検出可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソケットの内室に収容されボールスタッドのボール部を摺動可能に収容するベアリングシートを有するボールジョイント及びこれを備えたボールジョイント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車の懸架装置、あるいは操舵装置などに用いられるボールジョイントは、内部に内室を有する略有底円筒状の金属製のソケットと、このソケットの内室に収容された略筒状のベアリングシートとしてのボールシートと、このボールシート内に摺動可能に収容されるボール部を備えた金属製のボールスタッドとを有している。
【0003】
このようなボールジョイントでは、一般にボールシートが合成樹脂により形成されており、ボールスタッドの揺動に伴うボール部の摺動により、このボール部とボールシートの摺動面との間で摩擦が生じ、この摩擦に伴い、摺動面が経時的に摩耗する。そして、このようにボールシートが摩耗してしまうと、所望のボールジョイント特性が得られなくなる。
【0004】
そこで、例えばボールシートを絶縁性の部材とし、ソケットとボールスタッドとの間に電源と検出器としてのランプとを電気的に接続したボールジョイント(例えば、特許文献1参照。)、あるいは、絶縁性のボールシートの摺動面から所定の深さ位置に導電部材を配設し、この導電部材とボールスタッドとの間に、電源とランプとを電気的に接続したボールジョイント(例えば、特許文献2及び特許文献3参照。)などが知られている。そして、これらボールジョイントでは、ボールシートが所定量摩耗すると、ボール部がソケット、あるいは摺動面へと露出した導電部材に電気的に接続されることで、回路が閉成されてランプが通電されて点灯することにより、ボールシートの摩耗を検出可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−525404号公報(第5−7頁、図1)
【特許文献2】特表2005−500492号公報(第10−11頁、図1)
【特許文献3】特開昭56−6911号公報(第1−2頁、図面)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のボールジョイントでは、ボールシートの摩耗量が所定量以上になったことを検出できるに過ぎず、ボールシートの摩耗量を比例的に検出できないという問題点を有している。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、ベアリングシートの摩耗量を比例的に検出可能なボールジョイント及びこれを備えたボールジョイント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のボールジョイントは、内室及びこの内室に連通するソケット挿通部を備えたソケットと、厚み寸法に比例する電気抵抗を有する導電性の摺動面部を内部に備え、前記ソケットの前記内室に収容されたベアリングシートと、このベアリングシートの前記摺動面部に摺動可能に保持されるボール部を備えた導電性のボールスタッドと、前記ベアリングシートに対して電気的に接続され前記ソケット挿通部に挿通されて前記ソケットの外部に導出された接続部材とを具備し、前記摺動面部と前記ボールスタッドとは、これらの間での通電状態に基づいて前記ベアリングシートの摩耗量を検出する摩耗検出部に前記接続部材を介して電気的に接続可能であるものである。
【0009】
そして、ベアリングシートの厚み寸法に比例する電気抵抗を有する導電性の摺動面部と導電性のボールスタッドとを、これらの間の通電状態に基づきベアリングシートの摩耗量を検出可能な摩耗検出部にベアリングシートに対して電気的に接続されソケットのソケット挿通部に挿通されたソケットの外部に導出された接続部材を介して電気的に接続可能とすることで、この通電状態を介してベアリングシートの摩耗量が摩耗検出部により比例的に検出可能になる。
【0010】
請求項2記載のボールジョイントは、請求項1記載のボールジョイントにおいて、ベアリングシートは、導電性を有し、ソケットの内室と前記ベアリングシートの外側面の少なくとも一部との間に介在され、ソケット挿通部に連通する挿通部を備えた絶縁性部材と、この絶縁性部材と前記ベアリングシートの外側部との間に配設され、このベアリングシートの外側部及び接続部材に電気的に接続された電極とを具備し、前記接続部材は、前記挿通部及び前記ソケット挿通部に挿通されて前記ソケットの外部に導出されて摩耗検出部に電気的に接続されるものである。
【0011】
そして、導電性を有するベアリングシートと絶縁性部材との間に配設されベアリングシートの外側部に電気的に接続した電極に対して、ソケット挿通部及び絶縁性部材に設けた挿通部を介して接続部材を摩耗検出部と電気的に接続することで、電極及び接続部材を介して摺動面部の摩耗量が摩耗検出部により確実に検出される。
【0012】
請求項3記載のボールジョイントは、請求項1記載のボールジョイントにおいて、ベアリングシートは、ソケットの内室に配設された絶縁性シートと、この絶縁性シートの内部に配設され、摺動面部を内部に有するとともに厚み寸法に比例する電気抵抗を有する導電性シートとを備え、ソケット挿通部は、前記導電性シートに臨み、前記絶縁性シートと前記導電性シートとの間に配設されて前記ソケット挿通部に臨み、前記導電性シート及び接続部材に電気的に接続された電極を具備したものである。
【0013】
そして、絶縁性シートと導電性シートとの間に配設された電極に対して、ソケット挿通部を介して接続部材により摩耗検出部を電気的に接続することで、電極と摩耗検出部とが容易に電気的に接続されるとともに、電極及び接続部材を介して摺動面部の摩耗量が摩耗検出部により確実に検出される。
【0014】
請求項4記載のボールジョイントは、導電性を有し、内室を備えたソケットと、厚み寸法に比例する電気抵抗を有する導電性の摺動面部を内部に備え、導電性を有し、前記ソケットの前記内室に収容されて外側部がこの内室と電気的に接続されたベアリングシートと、このベアリングシートの前記摺動面部に摺動可能に保持されるボール部を備えた導電性のボールスタッドとを具備し、前記摺動面部と前記ボールスタッドとは、これらの間での通電状態に基づいて前記ベアリングシートの摩耗量を検出する摩耗検出部に前記ソケットの外側部を介して電気的に接続可能であるものである。
【0015】
そして、導電性を有し厚み寸法に比例する電気抵抗を有する導電性の摺動面部を備えたベアリングシートを、導電性を有するソケットの内室に電気的に接続するとともに、このベアリングシートと導電性のボールスタッドとを、これらの間の通電状態に基づきベアリングシートの摩耗量を検出可能な摩耗検出部にソケットの外側部を介して電気的に接続可能とすることで、ソケットを介して摩耗検出部がベアリングシートに容易に電気的に接続され、この通電状態を介してベアリングシートの摩耗量が摩耗検出部により比例的に検出可能になる。
【0016】
請求項5記載のボールジョイント装置は、請求項1ないし4いずれか一記載のボールジョイントと、このボールジョイントのボールスタッドと摺動面部とに電気的に接続され、これらボールスタッドと摺動面部との間での通電状態に基づいてベアリングシートの摩耗量を検出する摩耗検出部とを具備したものである。
【0017】
そして、請求項1ないし4いずれか一記載のボールジョイントのボールスタッドと摺動面部との間での通電状態に基づいて摩耗検出部によりベアリングシートの摩耗量を検出することで、ベアリングシートの摩耗量を比例的に検出できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ベアリングシートの摩耗量を比例的に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態のボールジョイント装置を示す縦断面図である。
【図2】同上ボールジョイント装置の要部を拡大して示す縦断面図である。
【図3】同上ボールジョイント装置のベアリングシートを示す平面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態のボールジョイント装置を示す縦断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態のボールジョイント装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1の実施の形態のボールジョイント装置の構成を図1ないし図3を参照して説明する。
【0021】
図1において、1はボールジョイントで、このボールジョイント1は、例えば、自動車の懸架装置、あるいは操舵装置などに用いられるものである。そして、このボールジョイント1は、導電性を有する例えば鋼鉄製などのボールスタッド2、金属製などの略有底円筒状のソケット3、ベアリングシートとしての合成樹脂製などのボールシート4、及び、ゴムあるいは軟質合成樹脂などにて略円筒状に形成されたダストカバー5を備え、ボールシート4の摩耗量を検出する摩耗検出部6に電気的に接続されたボールジョイント装置7を構成している。
【0022】
なお、以下、便宜的に図1に示す上下方向を上下方向として説明する。
【0023】
ボールスタッド2は、ボールシート4に回動可能に保持されたボール部15と、このボール部15から軸状に突設されたスタッド部16とを有している。
【0024】
ボール部15は、ボールシート4に保持された状態でソケット3内に収容されている。また、スタッド部16は、ソケット3から軸状に突出している。
【0025】
ソケット3は、例えばアルミニウムなどの部材を鋳造、あるいは鍛造して成形後、切削成形されたものであり、ボールシート4が嵌着される内室21を内部に備え、軸方向の一端部である上端部に内室21に連通する上部開口部22が開口形成され、軸方向の他端側が傾斜状に縮径されて底部23を形成し、この底部23に、ソケット挿通部としての底部開口部24が穿設されている。また、このソケット3の外周面には、上端部側にダストカバー5が取り付けられる嵌合凹部25が周方向に沿って設けられている。
【0026】
内室21は、上部開口部22から底部23側へと、内周面部31、傾斜面部32及び底面部33が順次連続的に同心状に形成されている。
【0027】
内周面部31は、円筒内周面状に形成されている。
【0028】
傾斜面部32は、内周面部31側から底面部33側へと縮径されている。
【0029】
底面部33は、円形平面状に形成され、底部開口部24が中央部に穿設されている。
【0030】
上部開口部22は、ボールスタッド2のスタッド部16が挿通されて外部に突出している。また、この上部開口部22には、ボールシート4を内室21から抜け止めするリング状の抜け止め部材35が取り付けられている。この抜け止め部材35は、上部開口部22の内周縁部に設けられた段差部36に載置された状態で上部開口部22の周縁部のかしめ部37をソケット3の中心軸方向へとかしめ変形することによりソケット3に固定されている。
【0031】
ボールシート4は、例えば導電性部材としての導電性フィラーを含んだ樹脂材により成形されて導電性を有し、軸方向の一端側すなわち上側から軸方向の他端側すなわち下側へと、円筒部41と傾斜円筒部42とが順次形成されて内室21の形状に沿った外形形状に形成されている。また、このボールシート4には、ボール部15の外周面を回動可能に保持する摺動面部45が内部に設けられ、軸方向の一端側すなわち上側に摺動面部45に連通する開口46が開口形成されているとともに、軸方向の他端側すなわち下側に摺動面部45に連通する底部開口47が開口形成されている。
【0032】
円筒部41は、外周側が内周面部31に保持される略円筒状の部分であり、ボール部15の赤道Eを含む位置に設けられ、外周側に内周面部31が位置し、上端部が抜け止め部材35の下面に当接している。
【0033】
傾斜円筒部42は、外周側が略筒状の絶縁性部材51を介して傾斜面部32に保持される略円筒状の部分であり、円筒部41側から反対側へと傾斜状に縮径されている。
【0034】
ここで、絶縁性部材51は、図2に示すように、傾斜面部32の形状に沿って下側が縮径された略円筒状に形成され、内周面全体が傾斜円筒部42の外周面に当接しているとともに、外周面全体が傾斜面部32に当接している。また、絶縁性部材51の下端部には、ボールシート4の底部開口47及びソケット3の底部開口部24に連通する開口部53が開口形成されている。さらに、絶縁性部材51の内周面には、リング状の電極55が配設されている。
【0035】
この電極55は、絶縁性部材51の内周面に埋め込まれ、この絶縁性部材51の内周面と略面一となっている。したがって、この電極55は、絶縁性部材51によりソケット3に対して電気的に絶縁されている。また、この電極55は、ボールシート4の傾斜円筒部42の厚み寸法が最も薄い部分、すなわち摺動面部45との距離が最短となる位置、本実施の形態では傾斜円筒部42の上下方向の略中間部にて、この傾斜円筒部42の外周面に沿って配設されている。さらに、この電極55の一部には、接続部材としてのリード線56が電気的に接続されている。したがって、摩耗検出部6は、電極55及びボールシート4自身を介して摺動面部45に電気的に接続されている。
【0036】
また、リード線56は、図2及び図3に示すように、絶縁性部材51の外周面に開口部53及び電極55間を連通して径方向に沿って設けられた挿通部57及びソケット3の底部開口部24に挿通されてソケット3の外部に導出され、図1に示すように、摩耗検出部6に電気的に接続されている。
【0037】
なお、このリード線56が挿通された底部開口部24は、ソケット3の内部に異物が入り込むことを防止するシール部材58により閉塞されている。
【0038】
摺動面部45は、ボールスタッド2のボール部15の外周面に沿った略球面状に形成され、ボール部15の外周面を保持している。また、この摺動面部45は、ボールシート4が導電性フィラーを含んだ樹脂材により成形されていることにより、厚み寸法に比例した電気抵抗を有する導電性の部分となっている。
【0039】
開口46は、ソケット3の上部開口部22に連通し、ボールスタッド2のスタッド部16が挿通される部分である。
【0040】
底部開口47は、傾斜円筒部42の下端部に位置し、ソケット3の底面部33に対向するととともに、底部開口部24に連通している。
【0041】
ダストカバー5は、ブーツとも呼ばれ、ソケット3の内室21内への塵埃などの侵入を防止するものである。そして、このダストカバー5は、弾性変形可能な、例えばゴム、あるいは軟質の合成樹脂などにて形成された略円筒状のカバー本体61を備え、このカバー本体61の軸方向の一端に、ボールスタッド2のスタッド部16の外周面に当接する当接部62が設けられ、また、カバー本体61の軸方向の他端に、ソケット3の嵌合凹部25に嵌合するソケット当接部63が設けられている。このソケット当接部63の外周部には、このソケット当接部63を嵌合凹部25に保持する円環状の押さえリング64が取り付けられている。
【0042】
そして、摩耗検出部6は、電池などの電源部71と、ボール部15の摺動による傾斜円筒部42の摩耗量を検出する検出器72とを備えている。
【0043】
電源部71は、例えば定電圧を供給するものであり、一端が接続部材としてのリード線74を介してボールスタッド2のスタッド部16に電気的に接続されている。
【0044】
検出器72は、例えば電流計であり、電源部71の他端とソケット3から導出されたリード線56との間に電気的に接続され、電源部71の電圧に対するボールスタッド2及びボールシート4間の電気抵抗を間接的に測定可能となっている。
【0045】
次に、上記第1の実施の形態の動作を説明する。
【0046】
ボールジョイント装置7を使用する際には、電源部71から定電圧が供給され、ボールスタッド2及びボールシート4間に電流が流れ、この電流値を検出器72が検出する。
【0047】
このとき、ボールスタッド2及びボールシート4は、ボールスタッド2において抵抗値の変化が殆どないため、検出器72で検出する電流値の変化は、ボールシート4の抵抗値の変化、すなわちボールシート4の摺動面部45の摩耗量のみに対応する。
【0048】
この結果、検出器72が、ボールシート4の摺動面部45の抵抗値をモニタリングすることにより、摺動面部45の摩耗量を比例的(リニア)に検出できる。
【0049】
すなわち、厚み寸法に比例した電気抵抗を有する導電性の摺動面部45と導電性のボールスタッド2との間に、通電状態に基づきボールシート4の摩耗量を検出する摩耗検出部6を接続することにより、この通電状態を介してボールシート4の摩耗量を比例的に検出できる。
【0050】
そして、ボールシート4の摩耗量を比例的に検出できることで、ボールシート4の交換時期などを確実に設定及び検出できる。
【0051】
また、導電性を有するボールシート4と絶縁性部材51との間に配設されボールシート4の外周面に電気的に接続した電極55に対して、ソケット3に設けた底部開口部24及び絶縁性部材51に設けた挿通部57を介してリード線56により摩耗検出部6を電気的に接続することで、電極55及びリード線56を介して摺動面部45の摩耗量を確実に検出できる。
【0052】
しかも、電極55は、摺動面部45に対して距離が最短となる位置にてボールシート4の外周部に電気的に接続することにより、摺動面部45の摩耗量を摩耗検出部6にて、より精度よく検出できる。
【0053】
さらに、電極55をボールシート4の外周部に取り付けることにより、例えばボールシートを絶縁性部材で形成して摩耗検出用の電極となる導電部材を摺動面から所定の深さ位置に配設する従来の場合と比較して、ボールシート4の製造が容易になるとともに、ボールシート4が摩耗した際にボールスタッド2のボール部15の表面が導電部材に接触して傷付くことなども防止できる。
【0054】
そして、電極55をボールシート4の傾斜円筒部42の外周面に沿う円環状とすることにより、ボールシート4の摩耗量を、電極55によりボールシート4の全周で検出することが可能になる。
【0055】
次に、第2の実施の形態を図4を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0056】
この第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態において、絶縁性部材51を設けないものである。
【0057】
すなわち、ボールシート4は、傾斜円筒部42の外周面がソケット3の内室21の傾斜面部32により直接保持されている。したがって、ボールシート4の外周面は、ソケット3の内室21と電気的に接続されている。
【0058】
また、リード線56は、ソケット3の底部23に電気的に接続されている。このため、ソケット3には、上記第1の実施の形態に示す底部開口部24が開口されていない。
【0059】
そして、上記第2の実施の形態では、電源部71から定電圧が供給され、ボールスタッド2、ボールシート4及びソケット3間、すなわちボールスタッド2ないしソケット3間に電流が流れ、この電流値を検出器72が検出する。
【0060】
このとき、ボールスタッド2ないしソケット3は、ボールスタッド2及びソケット3において抵抗値の変化が殆どないため、検出器72で検出する電流値の変化は、ボールシート4の摩耗量のみに対応するので、ボールスタッド2ないしソケット3の通電状態、すなわち検出器72で検出する電流値に基づき、ボールシート4の摩耗量を摩耗検出部6で検出でき、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0061】
また、導電性を有するボールシート4を、導電性を有するソケット3の内室21に電気的に接続するとともに、摩耗検出部6をソケット3の外周部に電気的に接続することにより、ボールシート4と摩耗検出部6とを電気的に接続するリード線などを挿通するための孔部、及び、この孔部を閉塞するシール部材などをソケット3に設けることなく、ソケット3を介して摩耗検出部6をボールシート4に容易に電気的に接続できる。
【0062】
次に、第3の実施の形態を図5を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0063】
この第3の実施の形態は、ボールシート4が、絶縁性シート81と、この絶縁性シート81の内部に取り付けられた導電性シート82とで構成され、かつ、電極55がこれら絶縁性シート81と導電性シート82との間に配設されているものである。
【0064】
絶縁性シート81は、上側から下側へと、円筒部83と傾斜円筒部84とが順次形成されて内室21の形状に沿った外形形状に形成されている。また、この絶縁性シート81には、上側に開口85が開口形成されているとともに、軸方向の他端側すなわち下側に底部開口86が開口形成されている。
【0065】
円筒部83は、外周側が内周面部31に保持される略円筒状の部分であり、外周側に内周面部31が位置し、上端部が抜け止め部材35の下面に当接している。
【0066】
傾斜円筒部84は、外周面が傾斜面部32に保持され下端部が底面部33に対向する略円筒状の部分であり、円筒部83側から反対側へと傾斜状に縮径されている。
【0067】
導電性シート82は、例えば導電性部材としての導電性フィラーを含んだポリウレタンなどの樹脂材により成形されて導電性を有するとともに、ボールスタッド2のボール部15に予備負荷すなわちプレロードを付与してボールスタッド2の作動トルクを安定させるクッションシートであり、外周側が絶縁性シート81の傾斜円筒部84に保持される略円筒状に形成され、上側から下側へと傾斜状に縮径されている。また、この導電性シート82には、ボール部15の外周面を回動可能に保持する摺動面部91が内部に設けられ、上側に摺動面部91に連通するシート開口92が開口形成されているとともに、下側に摺動面部91に連通するシート底部開口93が開口形成されている。
【0068】
また、電極55は、導電性シート82の厚みが最も薄い部分、すなわち摺動面部91との距離が最短となる位置から導電性シート82の中心軸側へとこの導電性シート82の外周面に沿って電気的及び機械的に接続された電極片部94と、この電極片部94に一体に設けられ絶縁性シート81の底部開口86を介して底部開口部24に臨む接続部95とを備えている。
【0069】
電極片部94は、絶縁性シート81の内周面に埋め込まれ、この絶縁性シート81の傾斜円筒部84の内周面と略面一となっている。
【0070】
接続部95は、電極片部94の下端部にこの接続部95には、リード線56の一端が電気的に接続され、このリード線56の他端は、底部開口86及び底部開口部24を介してソケット3の外部に導出されて摩耗検出部6の検出器72に電気的に接続されている。
【0071】
そして、上記第3の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様に、電源部71から定電圧が供給され、ボールスタッド2及びボールシート4間に電流が流れ、この電流値を検出器72が検出し、この検出した電流値に基づき、ボールシート4の摩耗量を摩耗検出部6で検出できるため、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0072】
また、絶縁性シート81と導電性シート82との間に配設された電極55に対して、摩耗検出部6を、ソケット3の底部開口部24から臨む接続部95にてリード線56を介して電気的に接続することで、例えばリード線56を絶縁性シート81と導電性シート82との間に伸ばして接続する場合と比較して、ボールシート4と摩耗検出部6とを容易に電気的に接続できるとともに、電極55及びリード線56を介して摺動面部91の摩耗量を確実に検出できる。
【0073】
さらに、ボールシート4を、絶縁性シート81と導電性シート82とで構成することにより、これら絶縁性シート81と導電性シート82とにそれぞれ異なる機能を付与できるので、様々なボールジョイント装置7にも対応できる。
【0074】
なお、上記各実施の形態において、摩耗検出部6としては、検出器72に電流計を用いたが、ボールスタッド2及びボールシート4間、あるいはボールスタッド2ないしソケット3間の抵抗値を直接測定するものなど、ボールスタッド2及びボールシート4、あるいはボールスタッド2ないしソケット3の通電状態に基づき摩耗量を検出できるものであれば、他の様々な計器を用いることが可能である。
【0075】
さらに、ボールシート4と摩耗検出部6とを直接的、あるいは間接的に電気的に接続できる構成であれば、上記構成に限定されるものではない。
【0076】
そして、摩耗検出部6を常時接続せずに、ボールジョイント1単体で使用し、例えば車両のメンテナンス時などに摺動面部45とボールスタッド2とを、通電状態により摩耗量を検出可能な摩耗検出部としての所定の外部装置に電気的に接続して、この外部装置により摩耗量を検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 ボールジョイント
2 ボールスタッド
3 ソケット
4 ベアリングシートとしてのボールシート
6 摩耗検出部
7 ボールジョイント装置
15 ボール部
21 内室
24 ソケット挿通部としての底部開口部
45,91 摺動面部
51 絶縁性部材
55 電極
56 接続部材としてのリード線
57 挿通部
81 絶縁性シート
82 導電性シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内室及びこの内室に連通するソケット挿通部を備えたソケットと、
厚み寸法に比例する電気抵抗を有する導電性の摺動面部を内部に備え、前記ソケットの前記内室に収容されたベアリングシートと、
このベアリングシートの前記摺動面部に摺動可能に保持されるボール部を備えた導電性のボールスタッドと、
前記ベアリングシートに対して電気的に接続され前記ソケット挿通部に挿通されて前記ソケットの外部に導出された接続部材とを具備し、
前記摺動面部と前記ボールスタッドとは、これらの間での通電状態に基づいて前記ベアリングシートの摩耗量を検出する摩耗検出部に前記接続部材を介して電気的に接続可能である
ことを特徴としたボールジョイント。
【請求項2】
ベアリングシートは、導電性を有し、
ソケットの内室と前記ベアリングシートの外側面の少なくとも一部との間に介在され、ソケット挿通部に連通する挿通部を備えた絶縁性部材と、
この絶縁性部材と前記ベアリングシートの外側部との間に配設され、このベアリングシートの外側部及び接続部材に電気的に接続された電極とを具備し、
前記接続部材は、前記挿通部及び前記ソケット挿通部に挿通されて前記ソケットの外部に導出されて摩耗検出部に電気的に接続される
ことを特徴とした請求項1記載のボールジョイント。
【請求項3】
ベアリングシートは、
ソケットの内室に配設された絶縁性シートと、
この絶縁性シートの内部に配設され、摺動面部を内部に有するとともに厚み寸法に比例する電気抵抗を有する導電性シートとを備え、
ソケット挿通部は、前記導電性シートに臨み、
前記絶縁性シートと前記導電性シートとの間に配設されて前記ソケット挿通部に臨み、前記導電性シート及び接続部材に電気的に接続された電極を具備した
ことを特徴とした請求項1記載のボールジョイント。
【請求項4】
導電性を有し、内室を備えたソケットと、
厚み寸法に比例する電気抵抗を有する導電性の摺動面部を内部に備え、導電性を有し、前記ソケットの前記内室に収容されて外側部がこの内室と電気的に接続されたベアリングシートと、
このベアリングシートの前記摺動面部に摺動可能に保持されるボール部を備えた導電性のボールスタッドとを具備し、
前記摺動面部と前記ボールスタッドとは、これらの間での通電状態に基づいて前記ベアリングシートの摩耗量を検出する摩耗検出部に前記ソケットの外側部を介して電気的に接続可能である
ことを特徴としたボールジョイント。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか一記載のボールジョイントと、
このボールジョイントのボールスタッドと摺動面部とに電気的に接続され、これらボールスタッドと摺動面部との間での通電状態に基づいてベアリングシートの摩耗量を検出する摩耗検出部と
を具備したことを特徴としたボールジョイント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−54051(P2010−54051A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268848(P2009−268848)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【分割の表示】特願2005−298930(P2005−298930)の分割
【原出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000198271)株式会社ソミック石川 (91)
【Fターム(参考)】