説明

ボールタップ装置

【課題】ボールタップ装置において、簡易な構成で、ボールタップの異常を検出する。
【解決手段】ボールタップ装置は、ボールタップ14のフロート20の表面に間隔をあけて設けられた2つの電極28,30と、水槽12内の水を介した2つの電極28,30の導通状態によりボールタップ14の異常を検出する異常検出部32とを有する。電極30が、ボールタップ14の通常動作時に水槽12内の水に接触しない非接触領域に設けられている。この構成により、フロート20の非接触領域が水没した場合、2つの電極28,30が導通状態となり、ボールタップ14の異常を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロートの上下によって自動的に弁を開閉するボールタップを有するボールタップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールタップは、水槽に給水を行なう給水栓であり、水槽の水面上方に配置される。ボールタップは、一般的に、水槽内の水位の変化に連動して上下動するフロートと、給水配管に接続されたバルブと、フロートとバルブとを連結するアームと有する。このように構成されるボールタップは、フロートの下降によりバルブを開いて水槽に給水を行い、水槽内の水位が、予め設定された満水位となったとき、フロートの上昇によりバルブを閉じ、給水を停止させる。
【0003】
下記特許文献1には、ボールタップと、ボールタップのアームに伝達管を介して接続され、ボールタップのフロートの上動作に基づいて満水信号を出力するスイッチとを有する満減水警報装置が記載されている。この満減水警報装置においては、水面が満水位にくると、それに伴って上昇するアームが伝達管を押し上げて、伝達管に押圧されたスイッチが作動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4−62484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ボールタップに異常が発生すると、ボールタップは正常に動作しなくなる。例えば、フロート内に水が浸入すると、フロートの浮力がなくなるので、フロートが、水位の変動に連動して正常に上下動しなくなる。または、アームとバルブとの間に設けられ、フロートの上下動に基づくアームの動きを増幅させるリンク機構が引っ掛かりなどにより固定されると、フロートが水位に連動して正常に上下動しなくなる。または、バルブの弁体と弁座の間に異物が挟まると、バルブが正常に閉弁しなくなる。
【0006】
そして、上述のようにボールタップが正常に動作しなくなると、バルブの開状態が維持され、水槽内の水位が満水位になっても、給水が行なわれてしまう。その結果、水槽から水が溢れ出し、水槽の周囲が浸水してしまうという問題がある。また、水槽に供給される水が上水である場合、不必要な水道料金がかかってしまうという問題がある。また、水槽に供給される水が上水である場合、吐水口空間がなくなり、上水を汚染してしまう可能性がある。
【0007】
そこで、電極棒またはスロートスイッチを水槽内に複数配置し、これらの電気信号により水槽の異常水位、例えば満水位より上昇した水位を検知し、警報情報を出力する水位警報装置を設置する例がある。この水位警報装置によれば、満水位より上昇した水位の検知を、ボールタップの異常とみなし検出することができる。しかしながら、水槽の容量が小さく、その内部の設置スペースに余裕がないと、水位警報装置を設置することができない。また、水槽関連の部品が増えるので、組立て工数が増加してしまうという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、別途、水位警報装置を設けることなく、簡易な構成で、ボールタップの異常を検出することができるボールタップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、水槽内の水位の変化に連動して上下動するフロートと、水槽に水を供給する配管に接続されたバルブと、フロートとバルブとを連結するアームとを含み、フロートの上下動によって自動的にバルブを開閉するボールタップを有するボールタップ装置において、フロートの表面に間隔をあけて設けられた2つの電極と、水槽内の水を介した前記2つの電極の導通状態によりボールタップの異常を検出する異常検出部と、を有し、前記2つの電極の少なくとも1つが、ボールタップの通常動作時に水槽内の水に接触しない非接触領域に設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、別の発明は、水槽内の水位の変化に連動して上下動するフロートと、水槽に水を供給する配管に接続されたバルブと、フロートとバルブとを連結するアームとを含み、フロートの上下動によって自動的にバルブを開閉するボールタップを有するボールタップ装置において、水槽内に間隔をあけて設けられた2つの電極と、水槽内の水を介した前記2つの電極の導通状態によりボールタップの異常を検出する異常検出部と、を有し、前記2つの電極の一方が、フロートの表面の領域であって、ボールタップの通常動作時に水槽内の水に接触しない非接触領域に設けられ、前記2つの電極の他方が、前記通常動作時に水槽内の水に接触するように水槽内に設けられることを特徴とする。
【0011】
また、前記配管に取り付けられる電磁弁と、電磁弁を制御する電磁弁制御部と、を有し、電磁弁制御部は、異常検出部により異常が検出された場合、電磁弁を閉じるよう制御することができる。
【0012】
また、異常検出部により異常が検出された時点から時間をカウントするタイマ部を有し、電磁弁制御部は、タイマ部によりカウントされた時間が所定時間経過した場合、電磁弁を閉じるよう制御することができる。
【0013】
また、外部に警報情報を出力する警報情報出力部を有し、警報情報出力部は、異常検出部の異常検出に基づいて警報情報を出力することができる。
【0014】
また、異常検出部により異常が検出された時点から時間をカウントするタイマ部を有し、警報情報出力部は、タイマ部によりカウントされた時間が所定時間経過した場合、警報情報を出力することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のボールタップ装置によれば、別途、水位警報装置を設けることなく、簡易な構成で、ボールタップの異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係るボールタップ装置の構成を示す図である。
【図2】別の実施形態に係るボールタップ装置の構成を示す図である。
【図3】別の実施形態に係るボールタップ装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るボールタップ装置の実施形態について、図を用いて説明する。一例として、上水を溜める受水槽を挙げ、この受水槽に設置されるボールタップ装置について説明する。なお、本発明は、受水槽に限らず、水を溜める水槽であれば、例えば便器の洗浄タンク、冷却塔の水槽に設置されるボールタップ装置にも適用することができる。
【0018】
ボールタップ装置10は、水槽12の水面上方に配置されるボールタップ14を有する。水槽12には、水源から水を供給するための給水配管16と、水槽12内の水位が、予め設定された満水位以上になった場合、余分な水を水槽12から排水するオーバーブロー管18とが接続される。満水位は、吐水口空間の確保のため、給水配管16の開放端部に対して、鉛直方向下側に所定の間隔をあけて設定される。そして、水槽12内のオーバーブロー管18の開口は、給水配管16の開放端部と満水位との間に設けられ、水位の上昇で吐水口空間がなくなって、上水が汚染されてしまうことを防止する。なお、本実施形態においては、水槽12にオーバーブロー管18が接続される場合について説明したが、この構成に限定されず、オーバーブロー管18を無くすこともできる。
【0019】
ボールタップ14は、水槽12に給水を行なう給水栓である。本実施形態のボールタップ14は、どの形式のボールタップでもよく、単式、複式、または副弁式定水位弁とすることができる。
【0020】
ボールタップ14は、水槽12内の水位の変化に連動して上下動するフロート20と、給水配管16に接続されたバルブ22と、フロート20とバルブ22とを連結するアーム24とを有する。バルブ22は、給水配管16の端部に接続される。よって、図1に示されるように、バルブ22は、上述した給水配管16の開放端部に対応する。
【0021】
このように構成されるボールタップ14は、水槽12内の水位が下降すると、フロート20の下降によりアーム24が図1の破線へ向かい回動しバルブ22を開いて水槽12に給水を行なう。一方、給水により水槽12内の水が上昇すると、フロート20の上昇によりアーム24が回動しバルブ22の開度を小さくさせる。そして、図1に示されるような満水位になったとき、バルブ22が完全に閉じ、給水を停止させる。このように、ボールタップ14は、フロート20の上下によって自動的にバルブ22を開閉し、水槽12内の水位を満水位に保とうとする。
【0022】
また、ボールタップ装置10は、この装置の制御を行なう制御回路26を有する。制御回路26は、水槽12に設けられるが、この構成に限定されず、水槽12から離れて設けられてもよい。
【0023】
本実施形態のボールタップ装置10は、フロート20の表面に間隔をあけて設けられた2つの電極28,30と、水槽12内の水を介した電極28,30の導通状態によりボールタップ14の異常を検出する異常検出部32とを有する。2つの電極28,30の少なくとも1つが、ボールタップ14の通常動作時に水槽12内の水に接触しない非接触領域に設けられている。異常検出部32は、制御回路26に設けられる。
【0024】
フロート20は、鉛直方向を含む平面上に回動可能なアーム24に接続されている。このため、フロート20は所定の軌道で上下動するので、通常動作時におけるフロート20と水槽12内の水とが接触するフロート20の表面の領域は限定される。本実施形態においては、その領域に、電極28が設けられ、その領域以外の領域、すなわち非接触領域に、電極30が設けられている。そして、これらの電極28,30と異常検出部32との間には、電流が流れる配線がそれぞれ接続されている。配線は、フロート20とアーム24上に布設される。
【0025】
この構成によれば、ボールタップ14に異常が発生し、ボールタップ14が正常に動作しなくなった場合であっても、フロート20の非接触領域が水没することで、2つの電極28,30が導通状態になり、異常検出部32はボールタップ14の異常を検出することができる。
【0026】
また、ボールタップ装置10は、給水配管16に取り付けられる電磁弁34と、電磁弁34を制御する電磁弁制御部36を有する。電磁弁制御部36は、制御回路26に設けられ、異常検出部32により異常が検出された場合、電磁弁34を閉じるよう制御する。
【0027】
このような制御により、ボールタップ14の異常でバルブ22の開状態が維持されてしまう場合であっても、電磁弁34が閉弁し、水槽12内への給水を停止させることができる。その結果、オーバーブロー管18からの排水を防止することができ、余計な水道料金の請求が防止される。また、オーバーブロー管18が接続されてない水槽においては、吐水口空間がなくなることによる上水の汚染を防止することができ、水槽外部の浸水も防止することができる。
【0028】
また、ボールタップ装置10は、異常検出部32により異常が検出された時点から時間をカウントするタイマ部38と、タイマ部38によりカウントされた時間が所定時間(例えば30秒間)経過した場合、外部に警報情報を出力する警報情報出力部40とを有する。
【0029】
タイマ部38は、異常検出部32の誤検出を防止する。例えば、ボールタップ14が正常状態であっても、水槽12内の水飛沫を介して電極28,30が導通状態になってしまう場合がある。この場合、その導通状態は、一時的であり上記所定時間維持されない。タイマ部38は、このような状態に基づく異常検出部32の誤検出を排除する。
【0030】
このようなタイマ部38の機能を、上述した電磁弁制御部36に付加することが好適である。すなわち、電磁弁制御部36は、タイマ部38によりカウントされた時間が所定時間経過した場合、電磁弁34を閉じるよう制御する。これにより、上述のような一時的な導通状態の間だけ、電磁弁34が閉動作するという電磁弁34のハンチング動作を防止することができる。
【0031】
警報情報出力部40は、例えば水槽12が設置される建物の管理室に、通信回線を介して接続されており、警報情報を管理室に出力する。これにより、管理室にいる管理者がボールタップ14の異常を把握することができ、その対応を迅速にとることができる。なお、警報情報出力部40は、遠方の監視センタ、または水槽12を管理する管理者の携帯端末に警報情報を出力することもできる。
【0032】
本実施形態によれば、従来のように電極棒またはスロートスイッチを水槽内に複数配置する水位警報装置を用いることなく、フロート20に電極28,30を設置するという簡易な構成で、ボールタップ14の異常を検出することができる。このボールタップ装置10は、水槽12の容量が小さく、その内部の設置スペースに余裕がなくても設置可能であり、しかも、別体に水位警報装置を設ける場合に比べ、組立て工数を低減することができる。
【0033】
本実施形態においては、電極28がフロート20の接触領域に設けられ、電極30がフロート20の非接触領域に設けられる場合について説明したが、本発明は、この構成に限定されない。図2に示されるように、2つの電極28,30を非接触領域に設けることもできる。このような構成であっても、ボールタップ14の異常によりフロート20の非接触領域が水没することで、2つの電極28,30の導通状態が達成される。
【0034】
また、本実施形態においては、電極28,30がフロート20にそれぞれ設けられる場合について説明したが、本発明は、この構成に限定されない。例えば、図3に示されるように、電極28を水槽12内に、電極30をフロート20の非接触領域に設置することもできる。電極28の設置箇所は、ボールタップ14の通常動作時における水槽12内の水に接触するように水槽12内、例えば水槽12の内壁である。このような構成であっても、ボールタップ14の異常によりフロート20の非接触領域が水没することで、2つの電極28,30の導通状態が達成される。また、別体に水位警報装置を設ける場合に比べ、省スペースである。
【符号の説明】
【0035】
10 ボールタップ装置、12 水槽、14 ボールタップ、16 給水配管、18 オーバーブロー管、20 フロート、22 バルブ、24 アーム、26 制御回路、28,30 電極、32 異常検出部、34 電磁弁、36 電磁弁制御部、38 タイマ部、40 警報情報出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽内の水位の変化に連動して上下動するフロートと、水槽に水を供給する配管に接続されたバルブと、フロートとバルブとを連結するアームとを含み、フロートの上下動によって自動的にバルブを開閉するボールタップを有するボールタップ装置において、
フロートの表面に間隔をあけて設けられた2つの電極と、
水槽内の水を介した前記2つの電極の導通状態によりボールタップの異常を検出する異常検出部と、
を有し、
前記2つの電極の少なくとも1つが、ボールタップの通常動作時に水槽内の水に接触しない非接触領域に設けられている、
ことを特徴とするボールタップ装置。
【請求項2】
水槽内の水位の変化に連動して上下動するフロートと、水槽に水を供給する配管に接続されたバルブと、フロートとバルブとを連結するアームとを含み、フロートの上下動によって自動的にバルブを開閉するボールタップを有するボールタップ装置において、
水槽内に間隔をあけて設けられた2つの電極と、
水槽内の水を介した前記2つの電極の導通状態によりボールタップの異常を検出する異常検出部と、
を有し、
前記2つの電極の一方が、フロートの表面の領域であって、ボールタップの通常動作時に水槽内の水に接触しない非接触領域に設けられ、前記2つの電極の他方が、前記通常動作時に水槽内の水に接触するように水槽内に設けられる、
ことを特徴とするボールタップ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のボールタップ装置において、
前記配管に取り付けられる電磁弁と、
電磁弁を制御する電磁弁制御部と、
を有し、
電磁弁制御部は、異常検出部により異常が検出された場合、電磁弁を閉じるよう制御する、
ことを特徴とするボールタップ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のボールタップ装置において、
異常検出部により異常が検出された時点から時間をカウントするタイマ部を有し、
電磁弁制御部は、タイマ部によりカウントされた時間が所定時間経過した場合、電磁弁を閉じるよう制御する、
ことを特徴とするボールタップ装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1つに記載のボールタップ装置において、
外部に警報情報を出力する警報情報出力部を有し、
警報情報出力部は、異常検出部の異常検出に基づいて警報情報を出力する、
ことを特徴とするボールタップ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のボールタップ装置において、
異常検出部により異常が検出された時点から時間をカウントするタイマ部を有し、
警報情報出力部は、タイマ部によりカウントされた時間が所定時間経過した場合、警報情報を出力する、
ことを特徴とするボールタップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−231912(P2011−231912A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105278(P2010−105278)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】