説明

ボールペンレフィル及びそれを用いたボールペン

【課題】 熱変色性筆跡を形成できるボールペンレフィルであることを筆記することなく視覚的に識別することができる利便性に富むボールペンレフィルとそれを用いたボールペンを提供する。
【解決手段】 熱変色性インキ組成物を収容したボールペンレフィルの後端に操作体5を連結してなり、軸筒内に取り外し可能且つ挿入可能であり、挿入した状態で前記操作体5を操作することにより軸筒の先端開口部から筆記先端部を出没させる操作体付ボールペンレフィル1であって、前記操作体5の視認箇所51が二色以上の色相で構成される。前記ボールペンレフィル1を単数本又は複数本と、非変色性インキ組成物を収容したボールペンレフィルを単数本又は複数本収容したボールペン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボールペンレフィル及びそれを用いたボールペンに関する。更に詳細には、可逆熱変色性インキ組成物を収容したボールペンレフィル及びそれを用いたボールペンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボールを抱持したボールペンチップが前端に固着され、且つ、内部にインキ組成物が収容されたインキ収容管と、インキ色に着色された操作体をインキ収容管の後端に連結し、使用時に軸筒内に収容して操作体を軸筒の側壁より突出させ、操作体をスライド操作することにより軸筒先端開口部から筆記先端部を出没させる操作体付ボールペンレフィルが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記ボールペンレフィルは、異なるインキ色に着色された操作体を有するレフィルを複数本軸筒内に収容することにより、様々な色の筆跡を形成可能な利便性に優れた複合式ボールペンを得ることができる。
しかしながら、インキ収容管内に熱変色性インキ組成物を収容したボールペンレフィルの場合、該ボールペンレフィルにより形成される筆跡が熱変色性筆跡であるかを識別する機能に乏しく、一旦筆記してその筆跡が変色するか確認する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−45139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記インキ収容管内に熱変色性インキ組成物を収容したボールペンレフィルの不具合、即ち、ボールペンレフィルにより形成される筆跡が熱変色性筆跡であるかを識別する際、一旦筆記して筆跡を確認するといった手間を要することなく、熱変色性筆跡を形成できるボールペンレフィルを識別することができるボールペンレフィルとそれを用いたボールペンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、熱変色性インキ組成物を収容したボールペンレフィルの後端に操作体を連結してなり、軸筒内に取り外し可能且つ挿入可能であり、挿入した状態で前記操作体を操作することにより軸筒の先端開口部から筆記先端部を出没させる操作体付ボールペンレフィルであって、前記操作体の視認箇所が二色以上の色相で構成されるボールペンレフィルを要件とする。
更に、前記操作体がグラデーションを呈すること、前記操作体が二色成形により形成されること、前記操作体が基材表面に異なる色相の着色層が設けられることを要件とする。
更に、操作体のいずれかの色がインキ収容管内の熱変色性インキ組成物の色と同色であることを要件とする。
更には、前記いずれかに記載のボールペンレフィルを単数本又は複数本収容したボールペンを要件とし、前記いずれかに記載のボールペンレフィルを単数本又は複数本と、非変色性インキ組成物を収容したボールペンレフィルを単数本又は複数本収容したボールペンを要件とする。
更には、摩擦部材を備えてなることを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、熱変色性筆跡を形成できるボールペンレフィルであることを筆記することなく識別することができる利便性に富むボールペンレフィル及びそれを用いたボールペンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】熱変色性材料の変色挙動を示す説明図である。
【図2】本発明のボールペンレフィルの実施の形態の一例を示す外観図である。
【図3】図2のボールペンレフィルを収容したボールペンの一例を示す断面図である。
【図4】本発明のボールペンレフィルの他の実施の形態の一例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のボールペンレフィルは、インキ収容管内に熱変色性インキ組成物を収容し、インキ収容管の先端部に直接又は接続部材を介して筆記先端部(ボールペンチップ)を連通して設けてなり、インキ収容管の後端部には操作体を連結したものである。
前記ボールペンチップは汎用の構造が用いられ、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部にボールを抱持する構造、金属材料のドリル等による切削加工により、チップ部を形成して、ボール抱持部にボールを抱持する構造、バネ体によりボールを前方に付勢させた構造、或いは、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けた構造を例示できる。
前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等の0.1〜1.5mm径程度のものが適用できるが、好ましくは0.3〜1.0mm、より好ましくは0.3〜0.7mmのものが用いられる。
前記インキ組成物を収容するインキ収容管は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる成形体、ステンレス等の金属からなる管体が用いられる。
尚、可逆熱変色性インキ組成物を収容する場合、光遮蔽性を有するインキ収容管を用いてインキ組成物の耐光劣化を防止することが好ましく、金属製、或いは、着色剤を含む熱可塑性樹脂からなる成形体が用いられる。また、透明性を有するインキ収容管を用いる場合は、レフィルを収容する軸筒が光遮蔽性であることが好ましい。
また、インキ収容管に収容したインキ組成物の端面にはインキ逆流防止体組成物(液栓)を密接配置することが好ましい。更に、前記液栓とともに、固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
【0009】
前記操作体は、インキ収容管の後端に連結されてなり、軸筒内に収容した状態では操作体が軸筒の側壁より突出する。
前記突出した操作体をスライド操作することにより軸筒先端の開口部から筆記先端部(ボールペンチップ)が出没する。
前記操作体は、視認箇所(筆記具外装に収容した際に視覚される表面部分)が二色以上の色相で構成されるものであれば限定されるものではなく、例えば、二色成形により形成されたものや、基材表面に異なる色相の着色層(インキを用いた印刷や塗装、フィルム転写等)を設けたもの等が挙げられる。特に、色相の境界部分をグラデーションとすることで、収容する熱変色性インキの変色効果を視覚的に表現でき、デザイン性も高いものとなる。また、マーブル調とすることでデザイン性や装飾性を高めることができる。
尚、前記着色層はベタ状のものに限らず、文字、数字、記号、図柄等の像であってもよい。
【0010】
前記ボールペンレフィル内に収容される熱変色性インキには、可逆熱変色性、不可逆熱変色性のいずれのタイプも用いることができるが、ユーザーが所望時に消去、変色させた筆跡を元の筆跡に戻すことが可能であることから可逆熱変色性インキが好ましい。前記可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態または消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、または、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独または併用して構成することができる。
【0011】
また、前記可逆熱変色性インキに含有される着色剤(可逆熱変色性材料)は、従来から公知の(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体、の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた可逆熱変色性顔料が好適に用いられる。
具体的には、図1に示すように、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t)以下の低温域での発色状態、または完全消色温度(t)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t〜tの間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で記憶保持できる色彩記憶保持型熱変色性インキ(ゲルインキ)が適用される。図1において、ΔHは、ヒステリシスの程度を示す温度幅(即ちヒステリシス幅)を示す。ΔHの値が小さいと、変色前後の両状態のうち一方の状態しか存在しえない。ΔHの値が大きいと、変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0012】
特に、摩擦体の摩擦熱による変色を可能とするために、前記熱変色性インキの変色温度は、25℃〜95℃(好ましくは36℃〜95℃)に設定されることが好ましい。即ち、前記高温側変色点〔完全消色温度(t)〕を、25℃〜95℃(好ましくは、36℃〜90℃)の範囲に設定し、前記低温側変色点〔完全発色温度(t)〕を、−30℃〜+20℃(好ましくは、−30℃〜+10℃)の範囲に設定することが有効である。それにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持を有効に機能させることができるとともに、可逆熱変色性インキによる筆跡を摩擦体による摩擦熱で容易に変色(消色)させることができる。
【0013】
尚、前記可逆熱変色性インキに用いられる媒体としては、有機溶剤であってもよいが、好ましくは水と必要により水溶性有機溶剤を用いた水性インキが好適である。
その場合、水性インキ中に剪断減粘性付与剤を添加した剪断減粘性インキがより好適である。
前記剪断減粘性付与剤を添加することにより、熱変色性材料(熱変色性マイクロカプセル顔料)の凝集、沈降を抑制することができると共に、筆跡の滲みを抑制することができるため、良好な筆跡を形成できる。更に、不使用時のボールとボール抱持部の間隙からのインキ漏れを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止することができる。
【0014】
前記ボールペンレフィルは、軸筒(筆記具外装)内に収納され、出没機構の作動によってレフィルの筆記先端部が軸筒先端開口部から出没する筆記具(ボールペン)を構成できる。尚、前記軸筒としては樹脂製、金属製、セラミック製等、汎用の筆記具外装として適用可能なものが挙げられる。
前記出没機構として、例えばスライド式機構が適用できる。前記スライド式は、軸筒側面にスライド操作部を有し、該スライド操作部を操作することによりレフィルの筆記先端部を軸筒先端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部を操作部としてスライドさせることにより、レフィルの筆記先端部を軸筒先端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記筆記具に適用されるレフィルのうち、熱変色性インキ組成物を収容したレフィルは、軸筒内に1本又は2本以上で収容される。
【0015】
前記ボールペンにより筆記して得られる熱変色性の筆跡は、指による摩擦や加熱具又は冷熱具の適用により変色させることができる。
前記加熱具としては、抵抗発熱体を装備した通電加熱変色具、温水等を充填した加熱変色具、ヘアドライヤーの適用が挙げられるが、好ましくは、簡便な方法により変色可能な摩擦部材や摩擦体が用いられる。
前記摩擦部材や摩擦体としては、弾性感に富み、摩擦時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好適であるが、プラスチック成形体、石材、木材、金属、布帛であってもよい。
なお、消しゴムを使用して筆跡を摩擦することもできるが、摩擦時に消しカスが発生するため、前述の摩擦部材が好適に用いられる。
前記摩擦部材の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体)、SBS樹脂、ポリエステル系樹脂等が用いられる。
前記摩擦部材は筆記具と別体の任意形状の部材(摩擦体)とを組み合わせて筆記具セットを得ることもできるが、筆記具に摩擦部材を備えることにより、携帯性に優れる。
摩擦部材を設ける箇所は特に限定されるものではないが、例えば、軸筒自体を摩擦部材により形成したり、クリップを設ける場合はクリップ自体を摩擦部材により形成したり、軸筒先端開口部近傍、軸筒後端部(筆記先端部を設けていない部分)に摩擦部材を設けることができる。
冷熱具としては、ペルチエ素子を利用した冷熱変色具、冷水、氷片等の冷媒を充填した冷熱変色具、冷蔵庫や冷凍庫の適用が挙げられる。
【0016】
前記ボールペンには、インキ収容管内に非変色性インキ組成物を収容し、インキ収容管の先端部には直接又は接続部材を介してボールペンチップを連通して設けてなり、インキ収容管の後端部にはインキ色と同色の着色された操作体を連結したボールペンレフィルを併用することもできる。
その他、シャープペンシルユニット、消しゴムユニット、タッチペンユニット、摩擦体ユニット等、各レフィルの後端に操作体が接続されたユニットを併用することもできる。
【0017】
前記非変色性インキ組成物を収容したボールペンレフィルや前述の各ユニットは、適用される軸筒の収容本数に応じて1本又は2本以上で収容されることで、多機能筆記具として構成される。
【実施例】
【0018】
以下に実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、インキ組成の数値(部)は重量部を示し、粒子径の測定はレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置〔(株)堀場製作所製;LA−300〕を用いて測定してその数値を基に平均粒子径(メジアン径)を算出した値である。
【0019】
実施例1
可逆熱変色性インキ組成物Aの調製
(イ)成分として2−(ブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチルスピロ〔5H−〔1〕ベンゾピラノ〔2,3−g〕ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン〕−3−オン2.0部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、4,4′−(2−メチルプロピリデン)ビスフェノール3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−16℃、T:−8℃、T:48℃、T:58℃、ΔH:65℃、平均粒子径:2.3μm、ピンク色から無色に色変化する)20.0部、キサンタンガム(剪断減粘性付与剤)0.3部、ヘクトライト(剪断減粘性付与剤)0.15部、防黴剤0.2部、潤滑剤1.0部、トリエタノールアミン1.0部、水77.35部からなる可逆熱変色性インキAを調製した。
【0020】
可逆熱変色性インキ組成物Bの調製
(イ)成分として2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン4.5部、(ロ)成分として4,4′−(2−メチルプロピリデン)ビスフェノール4.5部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン7.5部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−20℃、T:−9℃、T:40℃、T:57℃、ΔH:63℃、平均粒子径:2.5μm、黒色から無色に色変化する)20.0部、キサンタンガム(剪断減粘性付与剤)0.3部、ヘクトライト(剪断減粘性付与剤)0.15部、防黴剤0.2部、潤滑剤1.0部、トリエタノールアミン1.0部、水77.35部からなる可逆熱変色性インキBを調製した。
【0021】
可逆熱変色性インキ組成物Cの調製
(イ)成分として3−(4−ジエチルアミノ−2−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド2.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−メチルプロピリデン)ビスフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−14℃、T:−6℃、T:48℃、T:60℃、ΔH:64℃、平均粒子径:2.5μm、青色から無色に色変化する)20.0部、キサンタンガム(剪断減粘性付与剤)0.3部、ヘクトライト(剪断減粘性付与剤)0.15部、防黴剤0.2部、潤滑剤1.0部、トリエタノールアミン1.0部、水77.35部からなる可逆熱変色性インキCを調製した。
【0022】
可逆熱変色性ボールペンレフィルAの作製(図2参照)
金属パイプの先端近傍を押圧変形させて形成したボール抱持部にボールを抱持したボールペンチップ2が接続部材3を介して固着されたインキ収容管4に、前記可逆熱変色性インキAを充填し、次いで、ポリブテンを主成分とするインキ追従体を充填し、インキ収容管の後端部に操作体5を装着してボールペンレフィル1Aを得た。
尚、前記操作体5は、白色不透明の樹脂成形体の表面側(操作部6を有する面)に、透明ピンク色の樹脂で界面が軸方向傾斜状となるように操作部6を二色成形することで、操作部6からレフィル1に向かって透明ピンク色から白色のグラデーションとなっている。そのため、操作体5の表面(操作部6側)を視認することで、収容する熱変色性インキAの変色効果を視覚的に表現できるとともに、デザイン性の高いものとなっている。
【0023】
可逆熱変色性ボールペンレフィルB,Cの作製(図2参照)
前記可逆熱変色性ボールペンレフィルAと同様のレフィル外装に、先に作製した可逆熱変色性インキB,Cを充填することでボールペンレフィル1(B,C)を得た。尚、ボールペンレフィル1Bの操作体5は、白色不透明の樹脂成形体の表面側(操作部6を有する面)に、透明黒色の樹脂で操作部6が二色成形され、ボールペンレフィル1Cの操作体5は、白色不透明の樹脂成形体の表面側に透明青色の樹脂で操作部6が二色成形されることで、いずれも操作部6からレフィル1に向かって透明黒色(青色)から白色のグラデーションとなっている。そのため、操作体5の表面(操作部6側)を視認することで、収容する熱変色性インキB,Cの変色効果を視覚的に表現できるとともに、デザイン性の高いものとなっている。
【0024】
非変色性黒色インキ組成物の調製
黒色染料5.0部、キサンタンガム(剪断減粘性付与剤)0.5部、N-ビニル−2−ピロリドンオリゴマー10.0部、防黴剤0.3部、潤滑剤0.5部、トリエタノールアミン1.0部、水82.7部からなる非変色性黒色インキを調製した。
【0025】
非変色性ボールペンレフィルの作製
金属パイプの先端近傍を押圧変形させて形成したボール抱持部にボールを抱持したボールペンチップ2が接続部材3を介して固着されたインキ収容管4に、前記非変色性黒色インキを充填し、次いで、ポリブテンを主成分とするインキ追従体を充填し、インキ収容管の後端部に黒色不透明の樹脂成形体からなる操作体5′を装着してボールペンレフィル1′を得た。
【0026】
ボールペンの作製(図3参照)
前記4本の各レフィルを光遮蔽性の樹脂製軸筒8内に収容し、軸筒側壁に設けた窓孔から突出させた操作体5のスライド操作により各レフィルの筆記先端部を選択的に出没させる複合式ボールペン7を得た。
尚、前記複合式ボールペンは、軸筒後端部にSEBS樹脂製の摩擦部材9を設けてなる。
前記複合式筆記具7は一本の筆記具でピンク色、黒色、青色の熱変色性筆跡と、黒色の非変色性筆跡を形成することができ、熱変色性筆跡は摩擦部材で摩擦することにより簡単に消去できる。
前記複合式筆記具では、筆記する際、熱変色性筆跡を形成できる状態と非変色性筆跡を形成できる状態を判断する際、一旦筆記して筆跡を確認するといった手間を要することなく、レフィルの操作体5を確認することにより容易に見分けることができた。
【0027】
実施例2
可逆熱変色性ボールペンレフィルAの作製(図4参照)
金属パイプの先端近傍を押圧変形させて形成したボール抱持部にボールを抱持したボールペンチップ2が接続部材3を介して固着されたインキ収容管4に、実施例1で作製した可逆熱変色性インキAを充填し、次いで、ポリブテンを主成分とするインキ追従体を充填し、インキ収容管の後端部に操作体5を装着してボールペンレフィル1Aを得た。
尚、前記操作体5は、白色不透明の樹脂成形体の表面側(操作部6を有する面)に、ピンク色と白色のグラデーション印刷が施された転写シート51が転写されており、操作部6下方からレフィル1に向かってピンク色から白色のグラデーションとなっている。そのため、操作体5の表面(操作部6側)を視認することで、収容する熱変色性インキAの変色効果を視覚的に表現できるとともに、デザイン性の高いものとなっている。
【0028】
可逆熱変色性ボールペンレフィルBの作製(図4参照)
前記可逆熱変色性ボールペンレフィルAと同様のレフィル外装に、実施例1で作製した可逆熱変色性インキBを充填することでボールペンレフィル1Bを得た。尚、ボールペンレフィル1Bの操作体5は、白色不透明の樹脂成形体の表面側(操作部6を有する面)に、黒色と白色のマーブル調印刷が施された転写シート51が転写されている。そのため、操作体5の表面(操作部6側)を視認することで、収容する熱変色性インキBの変色効果を視覚的に表現できるとともに、デザイン性の高いものとなっている。
【0029】
可逆熱変色性ボールペンレフィルCの作製
前記可逆熱変色性ボールペンレフィルAと同様のレフィル外装に、実施例1で作製した可逆熱変色性インキCを充填することでボールペンレフィル1Cを得た。尚、ボールペンレフィル1Cの操作体5は、青色不透明の樹脂成形体の表面側(操作部6を有する面)に、複数の白色ドットがパッド印刷されている。そのため、操作体5の表面(操作部6側)を視認することで、収容する熱変色性インキCの変色効果を視覚的に表現できるとともに、デザイン性の高いものとなっている。
【0030】
非変色性ボールペンレフィルの作製
青色染料5.0部、キサンタンガム(剪断減粘性付与剤)0.5部、N-ビニル−2−ピロリドンオリゴマー10.0部、防黴剤0.3部、潤滑剤0.5部、トリエタノールアミン1.0部、水82.7部からなる非変色性青色インキを調製した後、金属パイプの先端近傍を押圧変形させて形成したボール抱持部にボールを抱持したボールペンチップが接続部材を介して固着されたインキ収容管に、前記非変色性青色インキを充填し、次いで、ポリブテンを主成分とするインキ追従体を充填し、インキ収容管の後端部に青色不透明の樹脂成形体からなる操作体を装着してボールペンレフィルを得た。
【0031】
ボールペンの作製
前記4本の各レフィルと、実施例1で作製した非変色性ボールペンレフィル1′を光遮蔽性の樹脂製軸筒8内に収容し、軸筒側壁に設けた窓孔から突出させた操作体5のスライド操作により各レフィルの筆記先端部を選択的に出没させる複合式ボールペン7を得た。
尚、前記複合式ボールペンは、軸筒後端部にSEBS樹脂製の摩擦部材9を設けてなる。
前記複合式筆記具7は一本の筆記具でピンク色、黒色、青色の熱変色性筆跡と、黒色、青色の非変色性筆跡を形成することができ、熱変色性筆跡は摩擦部材で摩擦することにより簡単に消去できる。
前記複合式筆記具では、筆記する際、熱変色性筆跡を形成できる状態と非変色性筆跡を形成できる状態を判断する際、一旦筆記して筆跡を確認するといった手間を要することなく、レフィルの操作体5を確認することにより容易に見分けることができた。
【符号の説明】
【0032】
完全発色温度
発色開始温度
消色開始温度
完全消色温度
ΔH ヒステリシス幅
1,1′ ボールペンレフィル
2 ボールペンチップ
3 接続部材
4 インキ収容管
5 操作体
51 転写シート
6 操作部
7 ボールペン
8 軸筒
9 摩擦部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱変色性インキ組成物を収容したボールペンレフィルの後端に操作体を連結してなり、軸筒内に取り外し可能且つ挿入可能であり、挿入した状態で前記操作体を操作することにより軸筒の先端開口部から筆記先端部を出没させる操作体付ボールペンレフィルであって、前記操作体の視認箇所が二色以上の色相で構成されるボールペンレフィル。
【請求項2】
前記操作体がグラデーションを呈する請求項1記載のボールペンレフィル。
【請求項3】
前記操作体が二色成形により形成される請求項1又は2に記載のボールペンレフィル。
【請求項4】
前記操作体が基材表面に異なる色相の着色層が設けられる請求項1又は2に記載のボールペンレフィル。
【請求項5】
操作体のいずれかの色がインキ収容管内の熱変色性インキ組成物の色と同色である請求項1乃至3のいずれかに記載のボールペンレフィル。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載のボールペンレフィルを単数本又は複数本収容したボールペン。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれかに記載のボールペンレフィルを単数本又は複数本と、非変色性インキ組成物を収容したボールペンレフィルを単数本又は複数本収容したボールペン。
【請求項8】
摩擦部材を備えてなる請求項6又は7に記載のボールペン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−35236(P2013−35236A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174619(P2011−174619)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】