説明

ボールペン用可逆熱変色性油性インキ組成物及びそれを内蔵したボールペン

【課題】 ボールペンに適用される油性インキ組成物に、可逆熱変色性組成物を内包するマイクロカプセル顔料を着色剤として用いた場合であっても、長期経時によるインキ分離や顔料の沈降を生じることがなく、キャップを外した状態であってもペン先が乾燥し難い、経時安定性及び耐ドライアップ性に優れたボールペン用可逆熱変色性油性インキ組成物とそれを内蔵したボールペンを提供する。
【解決手段】 (イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、ポリブテン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、エチレン−α−オレフィンオリゴマー、α−オレフィン油、精製鉱油から選ばれる液状媒体と、脂肪酸アマイドとからなるボールペン用可逆熱変色性油性インキ組成物。前記インキ組成物を内蔵してなるボールペン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボールペン用可逆熱変色性油性インキ組成物とそれを内蔵したボールペンに関する。更には、着色剤として可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を用いたボールペン用可逆熱変色性油性インキ組成物とそれを内蔵したボールペンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可逆熱変色性組成物を内包するマイクロカプセル顔料を着色剤として用い、20℃の蒸気圧が5〜50mmHg程度の揮発性の高い有機溶剤を主溶剤とした油性インキ組成物が開示されている(特許文献1参照)。
前記マイクロカプセル顔料を油性インキに適用する場合、一定の筆跡濃度を確保するために汎用の着色剤と比べてインキ中の固形分の割合が高くなる傾向がある。
そのため、ボールペンに適用した際、長期の経時によってインキが分離してしまい、マイクロカプセル顔料の沈降やそれに伴う筆跡濃度の低下を生じることがあった。また、キャップを外した状態で放置すると有機溶剤が気化しペン先が乾燥してしまい、着色剤等の固形分が乾燥硬化するために筆記不良を生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−320485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記問題を解消するものであって、ボールペンに適用される油性インキ組成物に、可逆熱変色性組成物を内包するマイクロカプセル顔料を着色剤として用いた場合であっても、長期の経時によってインキ分離やそれに伴うマイクロカプセル顔料の沈降を生じることがなく、キャップを外した状態であってもペン先が乾燥し難い、経時安定性及び耐ドライアップ性に優れたボールペン用可逆熱変色性油性インキ組成物とそれを内蔵したボールペンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、ポリブテン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、エチレン−α−オレフィンオリゴマー、α−オレフィン油、精製鉱油から選ばれる一種以上の液状媒体と、脂肪酸アマイドとからなるボールペン用可逆熱変色性油性インキ組成物を要件とする。
更に、前記脂肪酸アマイドがインキ組成物全量中に0.1〜3重量%の範囲で含まれることを要件とする。
更には、前記いずれかのボールペン用可逆熱変色性油性インキ組成物を内蔵してなるボールペンを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、可逆熱変色性組成物を内包するマイクロカプセル顔料を油性インキ用着色剤として用いた場合にも、長期経時によるインキ分離やそれに伴うマイクロカプセル顔料の沈降を抑制すると共に、キャップを外した状態でのペン先の耐乾燥性を付与できるため、長期間安定した筆記性能を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に用いられる可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は可逆熱変色性組成物を内包するマイクロカプセル顔料を用いた油性インキに関するものであり、主溶剤となる液状媒体としてポリブテン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、エチレン−α−オレフィンオリゴマー、α−オレフィン油、精製鉱油のいずれか一種以上を適用すると共に、脂肪酸アマイドを併用することで、インキの経時安定性と耐ドライアップ性を得るものである。
【0009】
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、(イ)、(ロ)、(ハ)の三成分から少なくともなる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた顔料である。
前記可逆熱変色性組成物のうち、加熱により消色する組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する組成物を例示できる。
また、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報、特開2005−1369号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔH=8〜70℃)を示し、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、低温域での発色状態、又は、高温域での消色状態が、特定温度域で記憶保持できる可逆熱変色性組成物を用いることもできる。
【0010】
前記組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性について詳しく説明する。
図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する最低温度T(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは完全発色状態を保持できる最高温度T(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは完全消色状態を保持できる最低温度T(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する最高温度T(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
変色温度域は前記TとT間の温度域であり、第1色相と第2色相の両相が共存でき、色濃度の差の大きい領域であるTとTの間の温度域が実質変色温度域(二相保持温度域)である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が小さいと変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。また、前記ΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0011】
前記した組成物のうち、色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を用いることにより、有色から無色に色彩を簡易に変色させることができ、常態と異なる色彩を互変的に視覚させることができる。
具体的には、完全発色温度Tを冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−30〜10℃、好ましくは−30〜0℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度Tを摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち30〜80℃、好ましくは50〜80℃、より好ましくは60〜80℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜60℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
【0012】
(イ)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物としては、従来公知のジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類、更には、蛍光性の黄色〜赤色の発色を発現させるのに有効な、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等が挙げられる。
【0013】
(ロ)成分の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等が挙げられる。また、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
【0014】
前記(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類が挙げられる。
前記(ハ)成分として好ましくは、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が用いられる。
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
更に、前記(ハ)成分としてより好適には、特開2006−137886号公報に記載される化合物や、特開2006−188660号公報に記載される化合物が用いられる。
【0015】
前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分の配合割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の変色特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜50、好ましくは0.5〜20、(ハ)成分1〜800、好ましくは5〜200の範囲である(前記割合はいずれも重量部である)。
ここで、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料中、或いは、インキ中に非熱変色性の染料、顔料等の着色剤を配合して、有色(1)から有色(2)への互変的色変化を呈することもできる。
【0016】
また、前記加熱消色タイプ以外に、電子受容性化合物として炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物(特開平11−129623号公報)、特定のヒドロキシ安息香酸エステル(特開2001−105732号公報)、没食子酸エステル(特開2003−253149号公報)等を用いた加熱発色型のマイクロカプセル顔料を適用することもできる。
【0017】
本発明に適用されるマイクロカプセル顔料の形態は円形断面の形態のものの適用を拒まないが、非円形断面の形態が効果的である。
筆記により形成される可逆熱変色性筆跡は、前記マイクロカプセル顔料が被筆記面に対して長径側(最大外径側)を密接させて濃密に配向、固着されており、高濃度の発色性を示すと共に、前記筆跡をゴム等の摩擦体による擦過等による外力に対して、前記マイクロカプセル顔料は外力を緩和する形状に微妙に弾性変形し、マイクロカプセルの壁膜の破壊が抑制され、熱変色機能を損なうことなく有効に発現させることができる。
ここで、前記非円形断面形状のマイクロカプセル顔料は、最大外径の平均値が0.5〜5.0μmの範囲にあり、且つ、可逆熱変色性組成物/壁膜=7/1〜1/1(重量比)の範囲を満たしていることが好ましい。
前記マイクロカプセル顔料(円形断面形状のものを含む)は、最大外径の平均値が、5.0μmを越える系では、毛細間隙からの流出性の低下を来し、一方、最大外径の平均値が、0.5μm以下の系では高濃度の発色性を示し難く、好ましくは、最大外径の平均値が、1〜4μmの範囲、当該マイクロカプセルの平均粒子径〔(最大外径+中央部の最小外径)/2〕が1〜3μmの範囲が好適である。
可逆熱変色性組成物の壁膜に対する比率が前記範囲より大になると、壁膜の厚みが肉薄となり過ぎ、圧力や熱に対する耐性の低下を起こし、逆に、壁膜の可逆熱変色性組成物に対する比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を免れず、好適には、可逆熱変色性組成物/壁膜=6/1〜1/1(重量比)である。
【0018】
前記可逆熱変色性組成物のマイクロカプセル化は、界面重合法、界面重縮合法、in Situ重合法、コアセルベート法等の公知の手段が適用できるが、本発明の前記した要件を満たす粒子径範囲の、非円形断面形状のマイクロカプセル顔料を得るためには、凝集、合一化が生じ難い界面重合法又は界面重縮合法の適用が効果的である。
【0019】
前記マイクロカプセル顔料は、インキ組成物全量に対し、2〜50重量%(好ましくは3〜40重量%、更に好ましくは、4〜30重量%)配合することができる。2重量%未満では発色濃度が不充分であり、50重量%を越えるとインキ流出性が低下し、筆記性が阻害される虞がある。
【0020】
前記マイクロカプセル顔料と共に適用することができる着色剤としては、従来から油性インキに適用される汎用の染料、顔料が適宜用いられる。
前記染料としては、例えば、カラーインデックスにおいてソルベント染料として分類される有機溶剤可溶性染料が挙げられる。
前記ソルベント染料の具体例としては、バリファストブラック3806(C.I.ソルベントブラック29)、同3807(C.I.ソルベントブラック29の染料のトリメチルベンジルアンモニウム塩)、スピリットブラックSB(C.I.ソルベントブラック5)、スピロンブラックGMH(C.I.ソルベントブラック43)、バリファストレッド1308(C.I.ベーシックレッド1の染料とC.I.アシッドイエロー23の染料の造塩体)、バリファストイエローAUM(C.I.ベーシックイエロー2の染料とC.I.アシッドイエロー42の染料の造塩体)、スピロンイエローC2GH(C.I.ベーシックイエロー2の染料の有機酸塩)、スピロンバイオレットCRH(C.I.ソルベントバイオレット8−1)、バリファストバイオレット1701(C.I.ベーシックバイオレット1とC.I.アシッドイエロー42の染料の造塩体)、スピロンレッドCGH(C.I.ベーシックレッド1の染料の有機酸塩)、スピロンピンクBH(C.I.ソルベントレッド82)、ニグロシンベースEX(C.I.ソルベントブラック7)、オイルブルー613(C.I.ソルベントブルー5)、ネオザポンブルー808(C.I.ソルベントブルー70)等が挙げられる。
前記顔料としては、カーボンブラック、群青、二酸化チタン顔料等の無機顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、スレン顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、スレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料等の有機顔料、アルミニウム粉やアルミニウム粉表面を着色樹脂で処理した金属顔料、透明又は着色透明フィルムにアルミニウム等の金属蒸着膜を形成した金属光沢顔料、フィルム等の基材に形成したアルミニウム等の金属蒸着膜を剥離して得られる厚みが0.01〜0.1μmの金属顔料、金、銀、白金、銅から選ばれる平均粒子径が5〜30nmのコロイド粒子、蛍光顔料、蓄光性顔料、熱変色性顔料、芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ、透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆したパール顔料等が挙げられる。
【0021】
主溶剤となる液状媒体としては、ポリブテン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、エチレン−α−オレフィンオリゴマー、α−オレフィン油、精製鉱油のうちいずれか一種以上が適用される。
前記流動イソパラフィンは水添ポリイソブテンとも呼ばれる炭化水素系化合物であり、動粘度が比較的低いものが適用できる。
尚、前記液状媒体は平均分子量1000以下のものが好適である。
【0022】
また、前記主溶剤と共に、汎用の有機溶剤を用いて筆跡の乾燥時間を調整することもできる。
前記有機溶剤としては、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン、キシレン等の炭化水素系溶剤が好適である。
前記液状媒体単独または、一種以上の有機溶剤と混合して用いられる溶媒は、インキ組成中40〜90重量%の範囲で使用される。
【0023】
前記脂肪酸アマイドは、インキ粘度を調整してマイクロカプセル顔料の安定性を高めるために添加されるものである。具体的には、ラウリン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、リシノール酸アマイド、12−ヒドロキシステアリン酸アマイド、N−イソブチルラウリン酸アマイド、N−イソブチルステアリン酸アマイド、N−オレイルオレイン酸アマイド、N−ステアリルステアリン酸アマイド、N−ステアリルオレイン酸アマイド、N−オレイルパルミチン酸アマイド、N−ステアリルエルカ酸アマイド、N−シクロヘキシルメチルラウリン酸アマイド、N−シクロヘキシルメチルカプロン酸アマイド、N,N′−エチレンビスラウリン酸アマイド、N,N′−エチレンビスステアリン酸アマイド、N,N′−エチレンビスオレイン酸アマイド、N,N′−エチレンビスベヘン酸アマイド、N,N′−エチレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アマイド、N,N′−ブチレンビスステアリン酸アマイド、N,N′−ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、N,N′−ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド等を挙げることができる。
尚、前記脂肪酸アマイドは、ペースト状に調製した後にインキに適用することが好ましい。
【0024】
前記脂肪酸アマイドは、インキ組成物全量中0.1〜3重量%、好ましくは0.5〜3重量%の範囲で用いられる。
0.1重量%未満では所望の効果を発現し難く、3重量%を超えて添加することも可能であるが、3重量%以下で所望の効果は充分に得られるためこれ以上の添加は要しない。
【0025】
紙面への固着性や粘性付与のために汎用の樹脂を用いることができる。
前記樹脂として、ケトン樹脂、ケトン−ホルムアルデヒド樹脂、アミド樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルピロリドン、α−及びβ−ピネン・フェノール重縮合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルローズ誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等が挙げられる。
【0026】
更に、必要に応じて上記成分以外に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防錆剤、潤滑剤、粘度調整剤、剥離剤、顔料分散剤、消泡剤、剪断減粘性付与剤、界面活性剤等の各種添加剤を使用できる。
前記添加剤はいわゆる慣用的添加剤と呼ばれるもので、公知の化合物から適宜必要に応じて使用することができる。
【0027】
防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン等が使用できる。
酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ノルジヒドロキシトルエン、フラボノイド、ブチルヒドロキシアニソール、アスコルビン酸誘導体、α−トコフェロール、カテキン類等が使用できる。
紫外線吸収剤としては、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル5′−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、p−安息香酸−2−ヒドロキシベンゾフェノン等が使用できる。
消泡剤としては、ジメチルポリシロキサン等が使用できる。
【0028】
潤滑剤としては、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル等が使用できる。特に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等を用いるとボール受け座の摩耗防止効果に優れる。
【0029】
剪断減粘性付与剤としては、従来公知の化合物を用いることが可能であり、例えば、架橋型アクリル樹脂、架橋型アクリル樹脂のエマルションタイプ、架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体、非架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体非架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体の水溶液、水添ヒマシ油、脂肪酸アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス等のワックス類、ステアリン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、オクチル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム等の脂肪酸金属塩、ジベンジリデンソルビトール、デキストリン脂肪酸エステル、N−アシルアミノ酸系化合物、スメクタイト系無機化合物、モンモリロナイト系無機化合物、ベントナイト系無機化合物、ヘクトライト系無機化合物、シリカ等が例示できる。
【0030】
前記インキ組成物は、ボールペンチップを筆記先端部に装着したボールペンに充填して実用に供される。ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させる構造、インキ組成物を充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したチップに連通しており、更にインキの端面には逆流防止用に液栓や固体栓等のインキ追従体が密接しているボールペンレフィルを軸筒内に収容した構造等を例示できる。
【0031】
また、前記ボールペンは、キャップ式、出没式のいずれの形態であっても適用できる。出没式ボールペンとしては、ボールペンレフィルに設けられた筆記先端部が外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、出没機構の作動によって軸筒開口部から筆記先端部が突出する構造であれば全て用いることができる。
出没機構の操作方法としては、例えば、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
前記ノック式は、軸筒後端部や軸筒側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、ボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部を押圧することにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記回転式は、軸筒に回転部(後軸等)を有し、該回転部を回すことによりボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記スライド式は、軸筒側面にスライド部を有し、該スライドを操作することによりボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部をスライドさせることにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
尚、前記出没式ボールペンは、軸筒内に一本のボールペンレフィルを収容したもの以外に、複数のボールペンレフィルを収容してなる複合タイプの出没式ボールペンであってもよい。
【0032】
前記ボールペンチップについて詳しく説明すると、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けたチップ、或いは、前記チップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を適用できる。
また、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等の0.2〜3.0mm、好ましくは0.3〜1.5mm、より好ましくは0.4〜1.2mm径程度のものが適用できる。
【実施例】
【0033】
実施例及び比較例のインキ組成を以下の表に示す。
尚、表中の組成の数値は重量部を示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表中の原料の内容について注番号に沿って説明する。
(1)(イ)成分として3−(4−ジエチルアミノ−2−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド2.0部、(ロ)成分としてビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド8.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−14℃、T:−6℃、T:48℃、T:60℃、ΔH:64℃、平均粒子径:2.5μm、可逆熱変色性組成物/壁膜=2.6/1.0、青色から無色に色変化する)
(2)(イ)成分として2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン4.5部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン4.5部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン7.5部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−20℃、T:−9℃、T:40℃、T:57℃、ΔH:63℃、平均粒子径:2.5μm、可逆熱変色性組成物/壁膜=2.6/1.0、黒色から無色に色変化する)
(3)エチルアルコール15部、キシロール65部、N−ステアリルエルカ酸アマイド20部を105℃で均一攪拌した後、室温で放冷することで得られる脂肪酸アマイドペースト
(4)ミネラルスピリット90部、N−イソブチルラウリン酸アマイド10部を120℃で均一攪拌した後、室温で放冷することで得られる脂肪酸アマイドペースト
(5)テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル(株)製、商品名:YSポリスターT145
(6)第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフA208B
(7)日油(株)製、商品名:ニューグライドM
(8)日油(株)製、商品名:パールリーム4
(9)カネダ(株)製、ハイコールK−140N
【0036】
インキの調製
前記実施例と比較例の組成物において、各成分を混合して、25℃でディスパーにて3時間攪拌することで各インキを調製した。
【0037】
インキ逆流防止体の調製
ポリブテン47部、鉱油47部、脂肪酸デキストリン6部を三本ロールミルにて混練してインキ逆流防止体を得た。
【0038】
ボールペンの作製
前記実施例及び比較例のインキ組成物を、直径0.7mmの超硬ボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたボールペンレフィルに充填し、その後端に前記インキ逆流防止体を配設した後、前記ボールペンレフィルを外軸(キャップ式)に組み込み、試料ボールペンを作製した。尚、前記外軸後端部には摩擦部材としてSEBS樹脂を装着してなる。
【0039】
得られたボールペンを用いて以下の試験を行った。
耐乾燥性試験
各ボールペンのキャップを外して横置きにした状態で保持し、温度25℃で10日間放置した後、旧JIS P3201筆記用紙Aに手書きで螺旋状の丸を連続筆記した際の筆跡の状態を目視により観察した。
インキ安定性試験
各ボールペンをペン先上向き状態で保持し、40℃の恒温槽に30日間放置した後、室温で放冷した際のインキの状況と、旧JIS P3201筆記用紙Aに手書きで螺旋状の丸を連続筆記した際の筆跡(着色状態)の状況を目視により観察し、初期のインキ及び筆跡と比較した。
【0040】
試験結果を以下の表に示す。
【表2】

【0041】
尚、表中の記号に関する評価は以下の通りである。
耐乾燥性試験
○:カスレのない筆跡が得られる。
×:筆跡にカスレを生じる、或いは、筆記不能。
インキ安定性試験
○:インキ分離を生じておらず初期と同等濃度の筆跡が得られる。
×:インキが分離してしまい筆跡が淡色化している。
【符号の説明】
【0042】
完全発色温度
発色開始温度
消色開始温度
完全消色温度
ΔH ヒステリシス幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、ポリブテン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、エチレン−α−オレフィンオリゴマー、α−オレフィン油、精製鉱油から選ばれる一種以上の液状媒体と、脂肪酸アマイドとからなるボールペン用可逆熱変色性油性インキ組成物。
【請求項2】
前記脂肪酸アマイドがインキ組成物全量中に0.1〜3重量%の範囲で含まれる請求項1記載のボールペン用可逆熱変色性油性インキ組成物。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載のボールペン用可逆熱変色性油性インキ組成物を内蔵してなるボールペン。

【図1】
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【公開番号】特開2011−80025(P2011−80025A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235804(P2009−235804)
【出願日】平成21年10月10日(2009.10.10)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】