説明

ボールペン用水性インキ組成物

【課題】 3−(2−ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸塩及びポリエチレンイミンを含有させることにより、ボールの回転によるボール抱持部の摩擦を抑えることができ、インキ吐出性が良く、筆跡のカスレや線切れがない、滑らかな筆記感と良好な筆跡が得られる水性ボールペンに適したボールペン用水性インキ組成物を提供する。
【解決手段】 染料や顔料等の着色剤と、水と、水溶性有機溶剤と、3−(2−ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸塩と、ポリエチレンイミンを含んでなるボールペン用水性インキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボールペン用水性インキ組成物に関する。更には、潤滑性能に優れたボールペン用水性インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボールを抱持したボールペンチップを筆記先端部に設けた水性ボールペンは、筆記によるボールの回転によりボール抱持部が摩耗してインキ漏れ出しを生じ易く、しかも、摩擦により滑らかな筆跡が得られ難くなる欠点を有していた。
そこで、ボールペン用水性インキ組成物に潤滑剤としてオレイン酸カリウムを添加することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特公平6−74395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記オレイン酸カリウムは、チップの摩耗が激しい水性ボールペンに安定した潤滑性を付与できるものの、少量の添加では充分な潤滑性能が得られ難く、よって、多量の添加が必要となり、その結果、筆跡に悪影響を及ぼす虞れがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、少なくとも着色剤と、水と、水溶性有機溶剤と、3−(2−ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸塩と、ポリエチレンイミンを含んでなるボールペン用水性インキ組成物を要件とする。更には、前記3−(2−ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸塩をインキ組成物全量中0.1〜5質量%含有してなること、前記ポリエチレンイミンをインキ組成物全量中0.1〜3質量%含有してなること等を要件とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、水性インキ組成物中に3−(2−ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸塩とポリエチレンイミンを併用して添加することによって長期間安定して優れた潤滑性能を付与できるので、ボールの回転によるボール抱持部の摩擦を抑えることができ、インキ吐出性が良く、筆跡のカスレや線切れがない、滑らかな筆記感と良好な筆跡が得られるボールペン用水性インキ組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
前記3−(2−ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸塩は、下記式(1)で示される化合物である。
【化1】

式中、Mはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、アミン、或いは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンを示す。
前記3−(2−ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸塩は、インキ組成中0.1〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%添加することができる。
0.1質量%以下では所期の効果を得ることは困難であり、又、5質量%程度以下であれば所期の効果が十分に得られるので、これ以上の添加を要しない。
前記ポリエチレンイミンは、1級、2級、3級アミンを含む分岐構造を有するポリマーであり、インキ組成中0.1〜3質量%、好ましくは0.1〜2質量%添加することができる。
0.1質量%以下では所期の効果を得ることは困難であり、又、3質量%程度以下であれば所期の効果が十分に得られるので、これ以上の添加を要しない。
【0007】
前記着色剤は、水性媒体に溶解もしくは分散可能な染料及び顔料が全て使用可能であり、その具体例を以下に例示する。
酸性染料としては、
ニューコクシン(C.I.16255)、
タートラジン(C.I.19140)、
アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、
ギニアグリーン(C.I.42085)、
ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、
アシッドバイオレット6BN(C.I.43525)、
ソルブルブルー(C.I.42755)、
ナフタレングリーン(C.I.44025)、
エオシン(C.I.45380)、
フロキシン(C.I.45410)、
エリスロシン(C.I.45430)、
ニグロシン(C.I.50420)、
アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
【0008】
塩基性染料としては、
クリソイジン(C.I.11270)、
メチルバイオレットFN(C.I.42535)、
クリスタルバイオレット(C.I.42555)、
マラカイトグリーン(C.I.42000)、
ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、
ローダミンB(C.I.45170)、
アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、
メチレンブルーB(C.I.52015)等が用いられる。
【0009】
直接染料としては、
コンゴーレッド(C.I.22120)、
ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)、
バイオレットBB(C.I.27905)、
ダイレクトディープブラックEX(C.I.30235)、
カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、
ダイレクトファストブラックG(C.I.35255)、
フタロシアニンブルー(C.I.74180)等が用いられる。
【0010】
前記顔料としては、カーボンブラック、群青などの無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料の他、予め界面活性剤や樹脂を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等が用いられ、例えば、C.I.Pigment Blue 15:3B〔品名:Sandye Super Blue GLL、顔料分24%、山陽色素株式会社製〕、
C.I. Pigment Red 146〔品名:Sandye Super Pink FBL、顔料分21.5%、山陽色素株式会社製〕、
C.I.Pigment Yellow 81〔品名:TC Yellow FG、顔料分約30%、大日精化工業株式会社製〕、
C.I.Pigment Red 220/166〔品名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業株式会社製〕等を挙げることができる。
また、水溶性樹脂を用いた水分散顔料としては、
C.I.Pigment Black 7〔商品名:WA color Black A25 、顔料分15%、大日精化工業(株)製〕、
C.I.Pigment Green 7〔商品名:WA−S color Green、顔料分8%、大日精化工業(株)製〕、
C.I.Pigment Violet 23〔商品名:マイクロピグモ WMVT−5、顔料分20%、オリエント化学工業(株)製〕、
C.I.Pigment Yellow 83〔商品名:エマコールNSイエロー4618、顔料分30%、山陽色素(株)製〕が挙げられる。
【0011】
蛍光顔料としては、各種蛍光染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。その他、金属光沢顔料、蓄光性顔料、二酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム等の白色顔料、可逆熱変色性組成物を内包したカプセル顔料、香料や香料を内包したカプセル顔料等を例示できる。
前記金属光沢顔料としては、アルミニウムや真鍮等の金属粉、芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ、透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆したパール顔料、金属蒸着膜の片面又は両面に透明又は着色透明フィルムを設けた金属光沢フィルム片を細かく裁断したもの、透明性樹脂層を複数積層した虹彩性フィルムを細かく裁断したものを例示できる。
なお、前記アルミニウムや真鍮等の金属粉を用いる場合、前記金属粉の表面を透明性樹脂や着色透明性樹脂で被覆したものが好適に用いられ、インキ組成物中での安定性に優れる。
【0012】
また、着色剤として顔料を用いた場合、必要に応じて顔料分散剤を添加できる。
前記顔料分散剤としてはアニオン、ノニオン等の界面活性剤、ポリアクリル酸、スチレンアクリル酸等のアニオン性高分子、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の非イオン性高分子等が用いられる。
【0013】
前記水溶性有機溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオプレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
前記水溶性有機溶剤は1種又は2種以上を併用することもできる。
【0014】
前記成分以外に、耐乾燥性を妨げない範疇でアルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルローズ誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン、λ−カラギーナン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキメチルセルロースのアルカリ金属塩等の水溶性高分子を1種又は2種以上添加することができる。
その他、必要に応じてpH調整剤、防錆剤、防腐剤或いは防黴剤、潤滑剤、湿潤剤を添加することができる。
前記pH調整剤としては、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、トリエタノールアミンやジエタノールアミン等の水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等が挙げられる。
前記防錆剤としては、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸塩、サポニン、ジアルキルチオ尿素等が挙げられる。
前記防腐剤或いは防黴剤としては、石炭酸、1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等が挙げられる。
前記潤滑剤としては、金属石鹸、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、リン酸エステル系活性剤、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩等が挙げられる。
前記湿潤剤としては、尿素、ノニオン系界面活性剤、ソルビット、マンニット、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、ピロリン酸ナトリウム等が挙げられる。
その他、溶剤の浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン、アニオン、カチオン系界面活性剤、ジメチルポリシロキサン等の消泡剤を添加することもできる。
【0015】
前記インキ組成物をインキ収容管又は軸筒内に直接内蔵し、且つ、インキ組成物後端面にインキ逆流防止体を配設するタイプのボールペンに用いる場合、インキ中に気体が混入していると、経時により気体が集まって気泡が発生し、筆記時のインキ出に悪影響を与えると共に、筆記先端部に気泡が存在すると筆記不能になる虞れがあるため、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、エリソルビン酸、エルソルビン酸誘導体、α−トコフェロール、カテキン、カテキン誘導体、合成ポリフェノール、コウジ酸、アルキルヒドロキシルアミン、オキシム誘導体、α−グルコシルルチン、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、亜硫酸塩、スルホキシル酸塩、亜ジチオン酸塩、チオ硫酸塩、二酸化チオ尿素、ホルムアミジンスルフィン酸、グルタチオン等を添加して化学的に気泡を除去することが好ましい。
【0016】
本発明のボールペン用水性インキ組成物には、所望により公知の剪断減粘性付与剤、例えば、水に可溶乃至分散性の、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する増粘多糖類、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アミド等のHLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸の塩類等を例示でき、単独或いは混合して使用することができる。
更に、N−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤の混合物、ポリビニルアルコールとアクリル系樹脂の混合物を用いることもできる。
インキの剪断減粘性とは静止状態あるいは応力の低い時は高粘度で流動し難い性質を有し、応力が増大すると低粘度化して良流動性を示すレオロジー特性を言うものであり、チクソトロピー性あるいは擬似可塑性とも呼ばれる液性を意味している。よって、インキ組成物は筆記時の高剪断応力下においては三次元構造が一時的に破壊されインキの粘度が低下し、筆記先端部のインキは筆記に適した低粘度インキとなり、紙面に転移される。非筆記時にはインキの粘度が高くなり、インキの漏出を防止したり、インキの分離、逆流を防ぐことができる。又、インキ物性を経時的に安定に保つことができる。
【0017】
本発明のボールペン用水性インキ組成物を充填するボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、従来より汎用のものが適用でき、例えば、ボールペンチップを備えたインキ収容管内にインキ組成物を内蔵し、さらにインキの端面にインキ逆流防止体が密接しているボールペンレフィルを軸筒内に収容したボールペン、ボールペンチップを備えた軸筒内にインキ組成物を内蔵し、さらにインキの端面に逆流防止用のインキ逆流防止体を配接しているボールペンを例示できる。なお、前記ボールペンはキャップを備えた構成である。
また、ボールペンチップを備えたインキ収容管内にインキ組成物を内蔵し、さらにインキの端面にインキ逆流防止体を配接したボールペンレフィルを軸筒内に収容してなり、ノック式、回転式、スライド式等の出没機構を備えた、前記軸筒の先端孔からボールペンチップを出没可能に構成した出没式ボールペンであってもよい。
【0018】
前記ボールペンチップは、従来より汎用のチップ機構、例えば、金属を切削加工して内部にボール受け座とインキ導出部を形成したもの、金属製パイプの先端近傍の内面に複数の内方突出部を外面からの押圧変形により設け、前記内方突出部の相互間に、中心部から径方向外方に放射状に延びるインキ流出間隙を形成したもの等を適用でき、特に押圧変形によるチップは、ボール後端との接触面積が比較的小であり、低筆記圧でのスムーズな筆記感を与えることができる。
前記ボールペンチップに抱持されるボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック等の外径0.1〜2.0mm、好ましくは0.3〜1.5mm、より好ましくは0.4〜1.0mmのボールが有効である。
なお、前記ボールペンチップには、チップ内にボールの後端を前方に弾発する弾発部材を配して、非筆記時にはチップ先端の内縁にボールを押圧させて密接状態とし、筆記時には筆圧によりボールを後退させてインキを流出可能に構成することが好ましく、不使用時のインキ漏れを抑制できる。
前記弾発部材は、金属細線のスプリング、前記スプリングの一端にストレート部(ロッド部)を備えたもの、線状プラスチック加工体等を例示でき、10〜40gの弾発力により、押圧可能に構成して適用される。
【0019】
前記ボールペンチップと直接、或いは、接続部材を介して連結されるインキ収容管は、汎用の筒状成形部材、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂による成形部材がインキの低蒸発性、生産性の面で好適に用いられる。
又、前記インキ収容管は、2.5〜10mmの内径を有するものが好適に用いられる。
更に、前記インキ収容管として透明、着色透明、或いは半透明の成形体を用いることにより、インキ色やインキ残量等を確認できる。
【0020】
前記インキ収容管に収容したインキの後端にはインキ逆流防止体が充填される。
前記インキ逆流防止体は不揮発性液体及び/又は難揮発性液体(基油)からなる。
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α−オレフィン、α−オレフィンオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
【0021】
前記不揮発性液体及び/又は難揮発性液体には、ゲル化剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましく、表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物を例示できる。
前記インキ逆流防止体の基油としては、ポリブテン又はシリコーン油が好適に用いられ、増粘剤としては脂肪酸アマイド又はシリカが好適に用いられる。
なお、インキ逆流防止体には、樹脂製の固体栓を併用することもできる。
【実施例】
【0022】
以下の表に実施例及び比較例のボールペン用水性インキの組成を示す。
なお,表中の組成の数値は質量部を示す。
【0023】
【表1】

【0024】
表中の原料の内容について注番号に沿って説明する。
(1)アイゼン保土谷(株)製、アシッドレッド92
(2)オリエント化学工業(株)製、ダイレクトブラック19
(3)日本触媒(株)製、商品名:エポミンSP−003
(4)第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフA−212E、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル
【0025】
実施例1及び2、比較例1及び2の配合物を混合して加温しながら攪拌した後、冷却して濾過することによりボールペン用水性インキが得られる。
実施例3及び比較例3の配合物を混合、分散した後、遠心分離機で粗大粒子を除去してボールペン用水性インキが得られる。
【0026】
前記実施例及び比較例のインキを、金属を切削加工して内部にボール受け座とインキ導出部を形成し、直径0.5mmの超硬合金製ボールを抱持したボールペンチップを筆記先端部に設け、前記筆記先端部の後端に櫛溝状のインキ流量調節部材(インキ保留部材)を備えるボールペンに直接充填してボールペンを得た。
【0027】
前記のようにして得られたボールペンを用いて紙面上に筆記し、筆記感と、荷重100g、筆記速度4m/分、筆記角度70°の条件で筆記試験機にて500m筆記を行なった時のボール受け座の摩耗を測定した。その結果を以下に示す。
【0028】
【表2】

【0029】
なお、テスト結果の評価の記号の内容は以下のとおり。
筆記感
○:滑らかに筆記でき、筆跡にかすれや線切れは見られない。
×:筆記感が重く、筆跡にかすれや線切れが見られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着色剤と、水と、水溶性有機溶剤と、3−(2−ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸塩と、ポリエチレンイミンを含んでなるボールペン用水性インキ組成物。
【請求項2】
前記3−(2−ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸塩をインキ組成物全量中0.1〜5質量%含有してなる請求項1記載のボールペン用水性インキ組成物。
【請求項3】
前記ポリエチレンイミンをインキ組成物全量中0.1〜3質量%含有してなる請求項1又は2記載のボールペン用水性インキ組成物。

【公開番号】特開2009−74063(P2009−74063A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212606(P2008−212606)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】