ボール螺子熱変位補正装置
【課題】指令値に対する移動量の誤差を抑えることができるボール螺子熱変位補正装置を提供する。
【解決手段】装置は、軸長方向(矢印K方向)に沿って延びると共に中心軸心P1の回りで回転可能なボール螺子2と、中心軸心P1の回りでボール螺子2を回転可能に支持する支持部31,32と、軸長方向に沿って間隔を隔てて並設された複数個の被検知部を有する固定部4と、ボール螺子2を回転させる駆動部5と、ボール螺子2の回転に伴い軸長方向(矢印K方向)に沿って移動する可動部6と、可動部6に保持され原点からの被検知部81,82,83の距離を検知する検知センサ7と、ボール螺子2の軸長方向の熱膨張に起因する補正移動量を演算で求め、補正移動量に基づいて可動部6を移動させる制御部9とを有する。
【解決手段】装置は、軸長方向(矢印K方向)に沿って延びると共に中心軸心P1の回りで回転可能なボール螺子2と、中心軸心P1の回りでボール螺子2を回転可能に支持する支持部31,32と、軸長方向に沿って間隔を隔てて並設された複数個の被検知部を有する固定部4と、ボール螺子2を回転させる駆動部5と、ボール螺子2の回転に伴い軸長方向(矢印K方向)に沿って移動する可動部6と、可動部6に保持され原点からの被検知部81,82,83の距離を検知する検知センサ7と、ボール螺子2の軸長方向の熱膨張に起因する補正移動量を演算で求め、補正移動量に基づいて可動部6を移動させる制御部9とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボール螺子の軸長方向の熱膨張に対して補正するボール螺子熱変位補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械等においては、ボール螺子を有する装置が提供されている(特許文献1,2)。ボール螺子は、これの中心軸心の回りで螺旋状に形成された溝をもつ軸状体と、軸状体の溝に転動可能に保持された複数個の球状の転動体と、軸状体の回転により軸状体の軸長方向に沿って移動する可動部とを備えている。軸状体は中心軸心の回りで駆動モータにより回転される。可動部には処理工具が取り付けられている。軸状体がこれの中心軸心の回りで一方向に回転すると、可動部が前進し、処理工具が前進する。軸状体がこれの中心軸心の回りで逆方向に回転すると、可動部が後退し、処理工具が後退する。処理工具を有する可動部の前進量および後退量は、制御部が駆動モータの駆動回路に指令値を出力することにより実行される。
【特許文献1】特開平11−254272号公報
【特許文献2】特開平11−254273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ボール螺子がこれの中心軸心の回りで回転駆動するとき、転動体と軸状体の溝の壁面との間の摩擦熱などの影響で、ボール螺子が発熱して昇温することがある。この場合、ボール螺子が熱膨張によりこれの軸長方向に伸張する。ボール螺子はこれの軸長方向に沿っているため、この熱膨張量は、可動部の高い位置決め精度を実現させるためには、無視できない。このため、制御部の指令値に基づいて工具が移動するとき、指令値に対して工具を有する可動部の移動量の誤差が発生するおそれがある。
【0004】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、指令値に対する移動量の誤差を効果的に抑えることができるボール螺子熱変位補正装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るボール螺子熱変位補正装置は、軸長方向に沿って延びると共に中心軸心の回りで回転可能なボール螺子と、前記中心軸心の回りで前記ボール螺子を回転可能に支持する支持部と、前記軸長方向に沿って間隔を隔てて並設された複数個の被検知部を有する固定部と、前記ボール螺子に接続され前記ボール螺子を前記中心軸心の回りで回転させる駆動部と、前記ボール螺子に係合され前記ボール螺子の回転に伴い前記軸長方向に沿って移動する可動部と、前記可動部に保持され計測原点から前記複数個の被検知部までのそれぞれの距離を前記可動部の移動に伴い検知する検知センサと、前記ボール螺子の軸長方向における熱膨張に起因する補正移動量を演算で求め、前記補正移動量に基づいて前記可動部を移動させる制御部とを具備することを特徴とする。
【0006】
駆動部によりボール螺子が一方向に回転駆動されると、ボール螺子の軸長方向に沿って可動部が前進する。駆動部によりボール螺子が他方向に回転駆動されると、ボール螺子の軸長方向に沿って可動部が後退する。検知センサは可動部と共に移動する。このため検知センサは、計測原点から被検知部までの距離を、可動部の移動に伴い検知する。制御部は、ボール螺子の軸長方向の熱膨張に起因する補正値を演算で求める。制御部は、補正値に基づいて可動部の移動量を補正し、可動部を移動させる。
【0007】
本発明に係る装置は次の好適態様を採用できる。
【0008】
・可動部は、ワークに対して何らかの処理を行う処理工具を有することが好ましい。処理としては、機械加工処理、研磨処理、塗布処理、けがき処理などが挙げられる。従って、処理工具としては、ドリル、バイト等の切削処理工具、研磨処理工具、ワークに対してけがきするけがき処理工具、ワークに着色する着色処理工具等が挙げられる。ワークは、金属でもセラミックスでもその他の材料でも良い。
【0009】
・検知センサは、被検知部に接近または接触すると、被検知部を検知するものであり、渦電流に基づいて検知するセンサ、光式センサ、静電容量式センサ、磁気式センサ、差動コイル式センサ等が例示される。検知センサは、計測原点から各被検知部までの距離を計測する。なお、被検知部の材質および構造は検知センサの検知原理に応じて設定できる。
【0010】
・固定部は、ボール螺子の軸長方向に沿って間隔を隔てて並設された複数個の被検知部を有する。複数個並設されている被検知部の間隔ピッチについては、均等ピッチでも良い。あるいは、当該間隔ピッチについては、可動部の移動の下流側は、可動部の移動の上流側よりも狭く設定されていることもできる。この場合、可動部の移動の下流側が可動部の移動の上流側よりも熱膨張による変位が大きい場合に有効である。
【0011】
・好ましくは、被検知部は、可動部の前進方向の上流に設けられた上流被検知部と、可動部の前進方向の下流に設けられた下流被検知部と、上流被検知部と下流被検知部との間に位置する中間被検知部とで形成されている。
【0012】
ボール螺子の軸長方向における熱膨張の変位形態としては、一直線状に熱膨張する形態、必ずしも一直線状に熱膨張しない形態が挙げられる。ボール螺子の軸長方向における熱膨張の変位形態が一直線状である形態の場合には、上流被検知部および下流被検知部の使用で済むことが多い。これに対して、ボール螺子の軸長方向における熱膨張の変位形態が一直線状でない形態の場合には、上流被検知部および下流被検知部の他に、中間被検知部が設けられていれば、かかる形態に対処し易い。
【0013】
・好ましくは、固定部は、第1固定部と、第1固定部に保持され且つ被検知部を有する第2固定部とを備えている。第1固定部と第2固定部との接触面積が大きい場合には、第1固定部の熱膨張は、第2固定部の長さに影響を与え、第2固定部に設けられている被検知部の位置に影響を与えるおそれがある。このため、第1固定部と第2固定部との接触面積はできるだけ小さいことが好ましい。そこで、第2固定部は、第1固定部に対面して接触する接触面と、第1固定部に対面するものの第1固定部に非接触な非接触面とを有することが好ましい。ここで、第2固定部の非接触面の表面積は、第2固定部の接触面の表面積よりも大きいことが好ましい。この場合、第1固定部と第2固定部との相互接触度が低減される。故に、第1固定部の熱膨張が第2固定部の長さに影響を与えることが抑制され、ひいては、第2固定部に設けられている被検知部の位置に影響を与えることが抑制される。
【0014】
・好ましくは、可動部は、固定部に対して軸長方向に沿って可動する第1可動部と、第1可動部に保持され且つ検知センサを有する第2可動部とを備えている。第1可動部と第2可動部との接触面積が大きい場合には、第1可動部の熱膨張は、第2可動部の長さに影響を与え、第2可動部に設けられている検知センサの位置に影響を与えるおそれがある。この場合、検知センサによる距離検知精度を低下させるおそれがある。このため第1可動部と第2可動部との接触面積はできるだけ小さいことが好ましい。そこで、第2可動部は、第1可動部に対面して接触する接触面と、第1可動部に対面するものの第1可動部に非接触な非接触面とを有することが好ましい。この場合、第2可動部の非接触面の表面積は、第2可動部の接触面の表面積よりも大きいことが好ましい。この結果、第1可動部の熱膨張が第2可動部の長さに影響を与えることが抑制され、ひいては、第2可動部に設けられている検知センサの位置に影響を与えることが抑制される。
【0015】
・好ましくは、第2固定部および第2可動部のうちの少なくとも一方は、炭素鋼よりも熱膨張が小さな低熱膨張材料(例えばセラミックス等)で形成されている。第2固定部および第2可動部の双方の熱膨張を対応させるためには、第2固定部および第2可動部の双方は、同一材料または同系材料で形成されていることが好ましい。
【0016】
・好ましくは、第1固定部および第1可動部のうちの少なくとも一方は、炭素鋼よりも熱膨張が小さな低熱膨張材料(例えばセラミックス等)で形成されている。ただし、第1固定部および第1可動部のうちの双方は、炭素鋼、合金鋼、鋳鉄で形成されていても良い。
【0017】
・好ましくは、固定部について、後述する実施形態で述べるように、第1固定部のうち後退側の端面と第2固定部のうち後退側の端面との距離をLA1とし、可動部について、第1可動部のうち後退側の端面と第2可動部のうち後退側の端面との距離をLA2として示すとき、LA1/LA2=0.85〜1.15の範囲内に設定されている。この場合、固定部および可動部が熱膨張するとき、LA1の熱膨張量およびLA2の熱膨張量を対応させることができる。この結果、可動部の位置決めにあたり、熱膨張の影響が一層低減され、可動部の位置決め精度が一層高くなる。なお、第2可動部および第2固定部は、熱膨張係数が同一または近似した同一材料または同系材料であることが好ましい。更に第1可動部および第1固定部は、熱膨張係数が同一または近似した同一材料または同系材料であることが好ましい。熱膨張係数が近似するとは、双方の材料の熱膨張係数の比(高い熱膨張係数/低い熱膨張係数)が1.0超〜2.0の範囲内、1.0超〜1.5の範囲内、1.0超〜1.2の範囲内が例示される。
【0018】
・好ましくは、制御部は、ボール螺子の回転に伴い可動部を検知センサと共に軸長方向に沿って移動させることにより、複数個の被検知部の位置にそれぞれ対応する複数個のパルス信号を求め、計測原点から複数個のパルス信号のそれぞれまでの距離を計測し、更に、基準の計測(例えば前回の計測)と今回の計測との間における距離の変位を求め、距離の変位の傾きを求め、変位の傾きに基づいて補正移動量を求め、補正移動量に基づいて可動部を移動させて可動部の位置決めを行う。これにより可動部の位置決めが良好となる。
【0019】
・本発明によれば、被検知部はボール螺子の軸長方向において複数個並設されているものの、検知センサの数は単数とすることができ、高価なセンサのコストが極力低減される。ところで、単数の検知センサを用いる場合とは異なり、単数の被検知部を可動部に設け、複数個の検知センサをボール螺子の軸長方向に沿ってそれぞれ固定部に並設させる方式も考えられる。しかしこの場合には、可動部が単数の被検知部と共に前進すると、前進する単数の被検知部を複数個の検知センサが個別に検知する。この場合、単数の被検知部の移動に伴い、複数個の検知センサが単数の被検知部をそれぞれ検知するため、複数個の検知センサがそれぞれ有する計測誤差がそれぞれ累積されてしまうおそれがある。この結果、可動部の移動量を補正する補正量の精度が大きく低下してしまうおそれがある。この点について本発明によれば、可動部に設けられている単数の検知センサが複数個の被検知部をそれぞれ検知するため、複数個の検知センサがそれぞれ有する計測誤差がそれぞれ累積されることが抑えられる。結果として、可動部の移動量を補正する補正量の精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、指令値に対する移動量の誤差を抑えることができるボール螺子熱変位補正装置を提供することができる。
【0021】
更に本発明によれば、可動部に設けられている単数の検知センサが固定部の複数個の被検知部をそれぞれ検知するため、複数個の検知センサが有する計測誤差がそれぞれ累積されることが抑えられる。結果として、可動部の移動量を補正する補正量の精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1について図1〜図7を参照しつつ説明する。本実施形態に係るボール螺子熱変位補正装置(以下、装置という)は、加工対象物であるワーク15に対して機械加工を行う機械加工装置に適用されている。ワーク15は、金属を母材とする機械加工可能な材料で形成されている。金属は鋳鉄、鋳鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金等が挙げられる。ワーク15は基体1または固定部4に保持されている。矢印Y方向は上下方向を示す。装置は、設置面に設置されている基体1と、基体1に設けられ水平方向に沿って延設されている中心軸心P1の回りで回転可能なボール螺子2と、基体1に保持され中心軸心P1の回りでボール螺子2を回転可能に支持する支持部としての第1軸受31および第2軸受32と、基体1に固定された固定部4と、基体1のボール螺子固定部12に保持された駆動部としての駆動モータ5と、可動部6と、可動部6に保持された検知センサ7と、駆動モータ5を制御する制御部9とを有する。
【0023】
図1に示すように、ボール螺子2は水平方向に沿って配設されており、軸長方向としての矢印K方向(水平方向)に沿って延びている。ボール螺子2は、これの中心軸心P1の回りで螺旋状に形成された溝20をもつ軸状体21と、軸状体21の溝20に転動可能に保持された複数個の球状の転動体22とを備えている。ボール螺子2にはボール螺子ナット25を介してホルダ26が設けられている。ホルダ26は、ボール螺子ナット25に固定された第1ホルダ部261と、矢印K方向に沿って延設された第2ホルダ部262とを有する。
【0024】
固定部4は、矢印K方向に沿って間隔を隔てて並設された複数個の被検知部としての第1ドグ81(上流被検知部)、第2ドグ82(中間被検知部)および第3ドグ83(下流被検知部)を有する。各ドグ81〜83は、鉄等の金属を母材として形成されており、突起状をなす。可動部6は、ホルダ26およびボール螺子ナット25を介してボール螺子2に係合している。ボール螺子2の回転に伴い、可動部6は矢印K方向において矢印K1方向に前進したり、矢印K2方向に後退したりする。
【0025】
固定部4は、基体1に固定されている第1固定部41と、第1固定部41よりもサイズが小さく軽量な片持ち支持構造の第2固定部42とを備えている。第1固定部41は端面41a,41b,41cをもつ。第1固定部41の端面41bにはガイドレール43(案内部)が矢印K方向に沿って延設されている。第2固定部42は端面42a,42b,42c,42dをもつ。ここで、第2固定部42には第1ドグ81、第2ドグ82および第3ドグ83が間隔を隔てて矢印K方向に沿って並設されている。
【0026】
駆動モータ5は、ボール螺子2の基端部に連結部28を介して連結されており、ボール螺子2をこれの中心軸心P1の回りで回転させるサーボモータである。制御部9は信号線52cを介して駆動モータ5の駆動回路に指令値Scを指令し、これに基づいて駆動モータ5が回転し、ボール螺子2が回転し、ホルダ26と共に可動部6が矢印K方向に移動する。駆動モータ5の回転軸には回転数センサ51(例えばロータリエンコーダ)が設けられている。回転数センサ51が検知した信号Srは、信号線52aを介して制御部9に入力される。これにより駆動モータ5はフィードバツク制御される。
【0027】
図1に示すように、可動部6は、ホルダ26の第2ホルダ部262の先端部262cに保持された第1可動部61と、第1可動部61よりもサイズが小さく軽量な第2可動部62とを備えている。第1可動部61は、ワーク15を加工処理する処理工具68(処理部)を工具ホルダ66を介して有する。処理工具68は工具ホルダ66に対して矢印Y方向において昇降可能とされている。
【0028】
図2に示すように、第2可動部62は、第1可動部61の側面61sにボルト69(保持具)により着脱可能に片持ち支持構造で保持されており、端面62a,62cを有する。更に、前記した第2固定部42は、第1固定部41の側面41sにボルト44(保持具)により着脱可能に保持されている。
【0029】
可動部6は検知センサ7を有する。検知センサ7は非接触センサであり、各ドグ81,82,83に接近すると、各ドグ81,82,83の位置を検知するものであり、具体的には、各ドグに流れる渦電流に基づいて各ドグの位置を検知するセンサである。但し、センサの原理は渦電流式に限定されず、光式、静電容量式、磁気式等でも良い。
【0030】
図1に示すように、第1可動部61は、ガイドレール43に沿って案内されるスライダー64を有する。ここで、駆動モータ5が一方向に回転してボール螺子2が中心軸心P1の回りで一方向に回転すると、ホルダ26を介して可動部6が矢印K方向において矢印K1方向に前進する。また、駆動モータ5が逆方向に回転してボール螺子2が逆方向に回転すると、ホルダ26を介して可動部6が矢印K方向において矢印K2方向に後退進する。
【0031】
可動部6が矢印K方向において矢印K1方向に前進すると、第2可動部62に保持されている検知センサ7は、第2可動部62と共に同方向に移動し、結果として、固定側の第1ドグ81、第2ドグ82および第3ドグ83にそれぞれ対面する。このように検知センサ7が第1ドグ81、第2ドグ82および第3ドグ83に対面すると、検知センサ7は、第1ドグ81、第2ドグ82および第3ドグ83の位置をそれぞれ検知し、ひいては、計測原点KOから第1ドグ81までの距離S1、計測原点KOから第2ドグ82までの距離S2、計測原点KOから第3ドグ83までの距離S3をそれぞれ検知する。検知センサ7が検知した信号Smは信号線52fによりアンプ95に入力され、アンプ95で増幅され、信号線52hを介して制御部9に入力される。制御部9は、入力処理回路とCPUとメモリ(RAM,ROM)と出力処理回路とを有する。
【0032】
次に、装置の使用形態について説明する。まず、制御部9は、可動部6を矢印K2方向に後退させて待機位置に待機させる。この状態において、制御部9は、駆動モータ5を回転駆動させることによりボール螺子2を中心軸心P1の回りで回転させ、回転に伴い可動部6を矢印K1方向に沿って移動させる。これにより制御部9は、(i)複数個の第1ドグ81、第2ドグ82および第3ドグ83の位置にそれぞれ対応する複数個のパルス信号を求める第1処理と、(ii)待機位置である計測原点KOから複数個のパルス信号のそれぞれまでの距離を計測する第2処理と、(iii)基準の計測と今回の計測との間における第1ドグ81、第2ドグ82および第3ドグ83(被検知部)についての距離の変位を求める第3処理と、(iv)距離の変位の傾きを求める第4処理と、(v)変位の傾きに基づいて可動部6の補正ストローク(補正移動量)を求め、補正ストロークに基づいて可動部6ひいては処理工具68の位置決めを行う第5処理とを実行する。このようにして処理工具68が目標位置に設定されたら、処理工具68を重力方向の下方に移動させ、ワーク15に対して加工処理を実施する。更に説明を加える。
【0033】
(第1処理)まず、制御部9は、可動部6を検知センサ7および処理工具68と共に、矢印K2方向側の待機位置(計測原点KO)に待機させる。このように可動部6が待機している位置において、制御部9は駆動モータ5に指令値を出力し、駆動モータ5を一方向に回転させる。すると、ボール螺子2の回転に伴い、可動部6は処理工具68および検知センサ7と共に矢印K方向において矢印K1方向に向けて前進する。この場合、ガイドレール43に沿ってスライダー64が移動するため、移動は円滑である。第2可動部62に保持されている検知センサ7は、第2可動部62と共に同方向に移動し、第1ドグ81、第2ドグ82および第3ドグ83に順にそれぞれ対面する。このように検知センサ7が第1ドグ81、第2ドグ82および第3ドグ83にそれぞれ対面すると、検知センサ7は、第1ドグ81、第2ドグ82および第3ド83グの位置をそれぞれ順に検知する。その信号Smは信号線52fを介してアンプ95に入力され、アンプ95で増幅され、パルス信号P1,P2,P3となり(図3)、信号線52hを介して制御部9に入力される。
【0034】
(第2処理)次に、制御部9は、計測原点KOからパルス信号P1までの距離S1を求め、且つ、計測原点KOからパルス信号P2までの距離S2を求め、且つ、計測原点KOからパルス信号P3までの距離S3を求める。この場合、パルス信号P1,P2,P3の立ち上がりを基準とする。図4は、パルス信号P1,P2,P3の位置と、計測原点KOからの距離S1,S2,S3との関係を示す。図4において、特選線W1は、基準となる計測においてパルス信号P1,P2,P3を計測した場合の特性を示す。基準となる計測は、ボール螺子2の発熱が少なく、ボール螺子2の昇温が少ないときにおける計測を意味する。例えば、多数のワーク15を加工する加工日における初回の計測、あるいは、ボール螺子2が長時間にわたり停止した後における初回の計測が例示される。
【0035】
特選線W2は、今回にパルス信号P1,P2,P3を計測した場合の特性を示す。ボール螺子2の発熱による熱膨張の影響で、今回の計測における距離は、基準の計測における距離よりも長めとなる。
【0036】
(第3処理)制御部9は、基準の計測と今回の計測との間における距離S1の変位δ1(図4参照)を求める。更に、制御部9は、基準の計測と今回の計測との間における距離S2の変位δ2(図4参照)を求める。更に、制御部9は、基準の計測と今回の計測との間における距離S3の変位δ3(図4参照)を求める。ここで、δ1<δ2<δ3の関係となる。
【0037】
(第4処理)図4に示すように、制御部9は、第1パルス信号P1と第2パルス信号P2との間を第1領域LFとして取り扱う。第1領域LFのピッチをL1として示す。制御部9は、第2パルス信号P2と第3パルス信号P3との間を第2領域LSとして取り扱う。第2領域LSのピッチをL2として示す。制御部9は、第1領域LFに関して、差ΔδA=δ2−δ1の演算式により、差ΔδA(図5参照)を求める。更に制御部9は、第2領域LSに関して、差ΔδB=δ3−δ2の演算式により、差ΔδB(図5参照)を求める。次に、制御部9は、第1領域LFにおける変位の傾きθ1(θ1=ΔδA/L1)を求める。更に制御部9は、第2領域LSにおける変位の傾きθ2(θ2=ΔδB/L2)を求める。
【0038】
(第5処理)第1ドグ81の位置に相当するパルスP1の位置(立ち上がり位置)を可動部6の移動原点XO(図5参照)とし、移動原点XOを起点として可動部6を矢印K1方向に向けて前進させる指令ストロークをX(図5参照)とする。指令ストロークXに基づく検知センサ7の目標位置が第1領域LF内に存在するときには、制御部9は、Xα=(θ1*X)+δ1の演算式により、補正ストロークXαを求める。*は乗算を意味する。ここで、補正ストロークXαは、指令ストロークXの目標位置が第1領域LF内に存在するとき、ボール螺子2の熱膨張の熱変位などに起因する補正量を考慮し、指令ストロークXに対して補正量を加えた後の補正ストロークを意味する。従って、制御部9は、移動原点XOから補正ストロークXαぶん可動部6を矢印K1方向に前進させる指令を出力する。
【0039】
また、移動原点XOを起点として可動部6を矢印K1方向に向けて移動させる指令ストロークをXとする。指令ストロークXに基づく検知センサ7の目標位置が第2領域LS内に存在するときには、制御部9は、Xβ=[θ2*(X−L1)]+δ2の演算式により、補正ストロークXβを求める。ここで、補正ストロークXβは、移動原点XOから可動部6を移動させる指令ストロークXの目標位置が第2領域LS内に存在するとき、ボール螺子2の熱膨張などに起因する補正量を考慮し、指令ストロークXを補正した後の指令ストロークを意味する。従って、制御部9は、補正ストロークXβぶん可動部6を矢印K1方向に前進させる指令を出力する。これにより本実施形態によれば、ボール螺子2の温度変化の影響を抑制させつつ、可動部6を目標位置に移動させることができる。この結果、可動部6の位置決め精度を高めることができる。ひいては処理工具68による加工精度を高めることができる。
【0040】
(フローチャート)
図6は、制御部9のCPUが実行する制御形態を示すフローチャートの一例を示す。フローチャートはこれに限定されるものではない。制御部9は、可動部6および検知センサ7を待機位置から矢印K1方向に前進させる計測補正工程を実施した後、可動部6を再び待機位置に戻し、その後、可動部6を処理工具68と共に矢印K1方向に前進させて加工を行う加工工程とを順に実施する。
【0041】
まず、計測補正工程を行うべき、制御部9は、レジスタ、メモリの所定のエリアなどを初期設定した後(ステップS102)、駆動モータ5を駆動させてボール螺子2を回転させ、可動部6および検知センサ7を待機位置(計測原点)に待機させる(ステップS104)。次に、制御部9は、駆動モータ5を駆動させてボール螺子2を回転させ、可動部6および検知センサ7を矢印K1方向に前進させる(ステップS106)。これにより検知センサ7が第1ドグ81、第2ドグ82および第3ドグ83を順に通過するように、可動部が矢印K1方向に前進される。次に制御部9は、パルス信号P1,P2,P3の立ち上がり位置を演算で求め、メモリに記憶させる(ステップS108,ステップS110)。場合によっては、パルス信号P1,P2,P3の立ち上がり位置ではなく、立ち下がり位置を求めることにしても良い。更に制御部9は、上記した変位δ1,変位δ2,変位δ3を求め(ステップS112)、更に、上記した差ΔδA,差ΔδBを求める(ステップS114)。次に制御部9は、可動部6の指令ストロークをXとするとき、指令ストロークXに対して補正した補正ストロークXα,Xβを演算で求める(ステップS116)。ここで、制御部9は、前記した演算式(Xα=(θ1*X)+δ1)により、補正ストロークXαを求める。また、制御部9は、Xβ=[θ2*(X−L1)]+δ2の演算式により、補正ストロークXβを求める。
【0042】
次に、制御部9は補正ストロークXα,Xβをメモリに記憶させる(ステップS118)。これにより計測補正工程を終了する。次に、制御部9は、可動部6を待機位置に戻す(ステップS120)。次に加工工程に移行する。すなわち制御部9は、加工工程における可動部6の目標位置が第1領域LF内であるか否か判定する(ステップS122)。可動部6の目標位置が第1領域LFであれば(ステップS122のYES)、制御部9は補正ストロークXαを設定する(ステップS124)。加工工程における可動部6の目標位置が第2領域LSであれば(ステップS122のNO)、制御部9は補正ストロークXβを設定する(ステップS126)。
【0043】
制御部9は、補正ストロークXαまたは補正ストロークXβに基づいて、ボール螺子2を回転させ、可動部6および処理工具68を矢印K1方向に前進させる(ステップS128)。制御部9は、可動部6が目標位置に到達したか否か判定する(ステップS130)。このとき、制御部9は、回転数センサ51が検知するボール螺子2の回転数に基づいて判定する。可動部6が目標位置に到達していれば(ステップS130のYES)、制御部9はワーク15に対して可動部6の処理工具68で加工する指令を出力する(ステップS132)。具体的には、処理工具68(例えば切削ドリル)を下降させる指令を出力する。
【0044】
加工が終了したら(ステップS134のYES)、次の加工作業があるか判定する(ステップS136)、次の加工作業がなければ、メインルーチンにリターンする(ステップS144)。次の加工作業があれば(ステップS136のYES)、制御部9は、データをリセットするか否か判定する(ステップS138)。データをリセットする必要があれば(ステップS138のYES)、データをリセットし(ステップS140)、補正ストロークXα,Xβをメモリのエリアから消去し、ステップS104に戻る。このようにデータをリセットして消去すれば、制御部9は、ワーク15の加工毎に補正ストロークXα,Xβを演算で求めるため、ワーク15を加工する毎に、可動部6の位置決め精度、ワーク15に対する加工精度を高めることができる。
【0045】
これに対してデータをリセットする必要がなければ、ステップS120に戻る。この場合には、メモリに格納されている前回の補正ストロークXα,Xβが使用される。このため、計測および補正に必要される時間が短縮され、ワーク15の加工に対する生産性が向上する。ここで、複数個のワーク15に対して補正を1回実行することにすれば、補正回数が低減され、生産性が向上する。従って、ステップS138は、データ(前回の補正ストロークXα,Xβ等)をリセットするか否かを判定する判定要素として機能することができる。
【0046】
以上説明したように本実施形態によれば、ボール螺子2における熱変動の影響で、第1可動部61が矢印K方向において熱膨張するときであっても、可動部6の移動ストロークを補正して補正ストロークを設定するため、可動部6の位置決め精度を高めることができ、ひいては処理工具68の位置決め精度を高めることができる。
【0047】
ところで第1可動部61と第2可動部62との接触面積が大きい場合には、矢印K方向における第1可動部61の熱膨張は、第2可動部62の長さに影響を与え、ひいては第2可動部62に設けられている検知センサ7の位置に微小量ではあるが影響を与えるおそれがある。この場合、可動部6の位置決め精度が低下するおそれがある。そこで本実施形態によれば、図7(A)に示すように、第2可動部62は、第1可動部61に対面して接触する接触面62coと、第1可動部61に対面するものの隙間62rにより第1可動部61に非接触な非接触面62nとを有する。特に、第2可動部62において、第1可動部61に対面するものの第1可動部61に非接触な非接触面62nの表面積は、第2可動部62の接触面62coの表面積よりも大きく設定されている。従って、第1可動部61と第2可動部62との相互接触度が低下する。この結果、矢印K方向においてサイズが大きな第1可動部61の熱膨張が発生するときであっても、それが第2可動部62の長さの変動に影響を与えることが抑制される。ひいては、第2可動部62に設けられている検知センサ7の位置に影響を与えることが抑制される。従って検知センサ7のセンシング精度の低下が抑制される。従ってワーク15の加工精度が確保される。
【0048】
更に本実施形態によれば、ボール螺子2における熱変動の影響で、第1固定部41が矢印K方向に熱膨張するときがある。この場合、可動部6の位置決め精度に影響を与えるおそれがある。すなわち、第1固定部41と第2固定部42との接触面積が大きい場合には、矢印K方向におけるサイズが大きな第1固定部41の熱膨張は、第2固定部42の長さに影響を与え、第2固定部42に設けられている第1ドグ81、第2ドグおよび第3ドグのそれぞれの位置に影響を与えるおそれがある。そこで本実施形態によれば、図7(B)に示すように、第2固定部42は、第1固定部41に対面して接触する接触面42cと、第1固定部41に対面するものの隙間42rにより第1固定部41に非接触な非接触面42nとを有する。これにより第1固定部41の熱膨張が第2固定部42の長さに影響を与えることが抑制される。ひいては、可動部6を位置決めする位置決め精度に影響を与えることが抑制されている。従ってワーク15の加工精度が確保される。
【0049】
更に、第2固定部42の非接触面42nの表面積は、第2固定部42の接触面42cの表面積よりも大きく設定されている。従って、第1固定部41と第2固定部42との相互接触度が抑えられている。この結果、矢印K方向における第1固定部41の熱膨張が第2固定部42の長さに影響を与えることが抑制されている。ひいては、第2固定部42に設けられている第1ドグ81、第2ドグ82および第3ドグ83の位置に影響を与えることが抑制される。従って可動部6の位置決め精度が確保され、ワーク15の加工精度が確保される。
【0050】
加えて本実施形態によれば、第2固定部42および第2可動部62は、炭素鋼よりも熱膨張係数が小さな低熱膨張材料で形成されている。熱膨張係数は、室温〜100℃において10×10−6/℃以下、8×10−6/℃以下、6×10−6/℃以下、殊に5×10−6/℃以下、4×10−6/℃以下、2×10−6/℃以下が好ましい。低熱膨張材料としては低熱膨張金属、セラミックスが例示される。セラミックスとしてはアルミナ、シリカ、マグネシア、窒化硅素、ジルコニア、炭化硅素、快削性セラミックスなどが例示される。快削性セラミックスはマイカ系、窒化ホウ素系、チタン酸アルミ系が例示される。
【0051】
更に本実施形態によれば、第1固定部41および第1可動部61は、炭素鋼よりも熱膨張係数が小さな低熱膨張材料で形成されていることが好ましい。但しこれに限定されるものではない。このように第1固定部41および第1可動部61が低熱膨張材料で形成されている場合には、矢印K方向における第1固定部41の熱膨張が第2固定部42の長さに影響を与えることが抑制される。更に、矢印K方向における第1可動部61の熱膨張が第2可動部62の長さに影響を与えることが抑制され、ひいては可動部6を位置決めする位置決め精度が良好に確保される。
【0052】
更に、本実施形態によれば、図7(B)に示すように、矢印K方向において、固定部4について、第1固定部41のうち後退側の端面41aと第2固定部42のうち後退側の端面42aとの距離をLA1として示す。更に図7(A)に示すように、矢印K方向において、可動部6について、第1可動部61のうち後退側の端面61aと第2可動部62のうち後退側の端面62aとの距離をLA2として示す。ここで、端面61aの位置と端面41aの位置とは、矢印K方向において、同じ位置とされている。更に、LA1/LA2=0.85〜1.15の範囲内に設定されている。更に、0.9〜1.1の範囲内、あるいは、0.95〜1.05の範囲内に設定されていることが好ましい。殊に、LA1/LA2=1.0に設定されていることが好ましい。
【0053】
このような本実施形態によれば、矢印K方向における第1固定部41の熱膨張による変位、矢印K方向における第1可動部61の熱膨張による変位が発生したとしても、固定部4における変位量と可動部における変位量とを互いに接近させたり、同一とすることができる。従って、固定部4の熱膨張によるドグ81,82,83の変位量と、可動部6の熱膨張による検知センサ7の変位量とが高い精度で対応することになる。故に、可動部6を矢印K1方向に移動させて可動部6を位置決めさせるにあたり、位置決めの精度を高めるのに一層貢献できる。第1固定部41の熱膨張係数εcおよび第1可動部61の熱膨張係数εmは、近似していることが好ましい。εc/εmは0.8〜1.2の範囲内、0.9〜1.1の範囲内、0.95〜1.05の範囲内が好ましい。従って、第1固定部41および第1可動部61は、同一材料または同系材料で形成されていることが好ましい。
【0054】
ところで、単数の検知センサ7を用いる本実施形態とは異なり、単数のドグを可動部6に設け、複数個の検知センサ7を固定部4に矢印K方向にそれぞれ並設させる方式も考えられる。しかしこの方式が採用されている場合には、可動部6がドグと共に移動すると、固定されている複数個の検知センサ7は、移動する単数のドグをそれぞれ個別に検知する方式となる。この場合、複数個の検知センサ7は、矢印K1方向に移動する単数のドグをそれぞれ検知するため、検知センサ7のそれぞれの計測誤差が累積され、結果として、可動部6の位置決め精度が大きく低下してしまうおそれがある。この点について本実施形態によれば、単数の検知センサ7が複数個のドグをそれぞれ検知するため、複数個の検知センサ7の計測誤差がそれぞれ累積されることが抑えられる。結果として、可動部6の位置決め精度を高めることができる。
【0055】
(実施形態2)
図8は本発明の実施形態2を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図6(図2を除く)を準用する。以下、異なる部分を中心として説明する。図8(A)に示すように、第2可動部62は、第1可動部61に対面して接触する接触面62coと、第1可動部61に対面するものの隙間62rにより第1可動部61に非接触な非接触面62nとを有する。隙間62rは矢印K方向において複数個並設されている。特に、第2可動部62において、第1可動部61に対面するものの第1可動部61に非接触な非接触面62nの表面積は、第2可動部62の接触面62coの表面積よりも大きく設定されている。従って、第1可動部61と第2可動部62との相互接触度が低下する。
【0056】
図8(B)に示すように、第2固定部42は、第1固定部41に対面して接触する接触面42cと、第1固定部41に対面するものの隙間42rにより第1固定部41に非接触な非接触面42nとを有する。隙間42rは矢印K方向において複数個並設されている。これにより第1固定部41の熱膨張が第2固定部42の長さに影響を与えることが抑制される。ひいては、可動部6を位置決めする位置決め精度に影響を与えることが抑制されている。従ってワーク15の加工精度が確保される。
【0057】
更に、第2固定部42の非接触面42nの表面積は、第2固定部42の接触面42cの表面積よりも大きく設定されている。従って、第1固定部41と第2固定部42との相互接触度が抑えられている。
【0058】
(実施形態3)
図9は本発明の実施形態3を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。第2固定部42には、ドグ81,82,83が嵌合される凹状をなす複数個のドグ取付部42wが矢印K方向において間隔を隔てて並設されている。ドグ取付部42wの個数をN1とする。ドグ81,82,83の個数をN2とする。ここで、N1>N2とされている。従ってボール螺子2の熱膨張等の事情に応じて、ドグ81,82,83を任意のドグ取付部42wに取り付けることができる。この場合、ボール螺子2の熱膨張等の事情に対応し易い。図9に示すように、矢印K方向において複数個並設されている凹状をなす複数個のドグ取付部42wの間隔ピッチについて、可動部6の移動方向(矢印K1方向)の下流側は、可動部6の移動方向(矢印K1方向)の上流側よりも狭く設定されている。従って、ドグの間隔ピッチについても、可動部6の移動方向(矢印K1方向)の下流側は、可動部6の移動方向(矢印K1方向)の上流側よりも狭く設定することが可能となる。
【0059】
(実施形態4)
図10および図11は実施形態4を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1,図6を準用することができる。本実施形態に係るボール螺子2によれば、熱膨張による変位特性は一直線状ではなく、図10に示すように、第1領域LFにおける変位量よりも、第2領域LSにおける変位量が非線形的に増大する傾向がある。ボール螺子2の溝20のピッチの公差等の影響と推察される。変位量が非線形的に増大するようになる部位を転換基準点δw(図10参照)として取り扱う。ここで、第1領域LFは、パルス信号P1とパルス信号P2との間とされており、可動部6の移動方向(矢印K1方向)の上流側に相当する。第2領域LSは、パルス信号P2とパルス信号P3との間とされており、可動部6の移動方向(矢印K1方向)の下流側に相当する。
【0060】
本実施形態によれば、第2ドグ82(中間被検知部)は、矢印K方向において転換基準点δwの位置にセットされており、従って、第1ドグ81(上流被検知部)よりも第3ドグ83(下流被検知部)に近い位置に設けられている。この結果、矢印K方向において、第2ドグ82によるパルス信号P2は、第1ドグ81によるパルス信号P1よりも、第3ドグ83によるパルス信号P3に近い位置に検出される。従って、第2領域LSにおけるL2は、第1領域LFにおけるL1よりも小さくされている(L2<L1)。
【0061】
図11に示すように、移動原点XO(パルス信号P1の立ち上がり)から可動部6を矢印K1方向に移動させる指令ストロークをXとする。指令ストロークXにより可動部6を矢印K1方向に移動させる目標位置が第1領域LF内に存在するとき、前述同様に、制御部9は、Xα=(θ1*X)+δ1の演算式により、補正ストロークXαを求める。従って、制御部9は、補正ストロークXαぶん可動部6を矢印K1方向に前進させる指令を出力する。
【0062】
また指令ストロークXにより可動部6を矢印K1方向に移動させる目標位置が第2領域LS内に存在するときには、前述同様に、制御部9は、Xβ=[θ2*(X−L1)]+δ2の演算式により、補正ストロークXβを求める。従って、指令ストロークXにより可動部6を移動させる目標位置が第1領域LFに存在するときには、制御部9は、補正ストロークXβぶん可動部6を矢印K1方向に前進させる指令を出力する。
【0063】
このような本実施形態によれば、ボール螺子2の昇温の影響を抑制させつつ、可動部6を目標位置に高精度で移動させることができる。ひいては、可動部6に保持されている処理工具68を目標位置に高精度で移動させることができ、処理工具68による加工精度を高めることができる。更にドグ81,82,83も3個で済むため、制御部9による演算速度の短縮、ドグコストの低減を図り得る。
【0064】
本実施形態によれば、前述したように、ドグ取付部42wの個数をN1とし、ドグ81,82,83の個数をN2とするとき、N1>N2の関係に設定することができる。従ってボール螺子2の熱膨張等の事情に応じて、ドグ81,82,83を任意のドグ取付部42wに取り付けることができる。
【0065】
(その他)上記した実施形態によれば、被検知部であるドグの数は3個とされているが、4個でも、それ以上でも良い。ドグの数を増加したとしても、高価な検知センサ7の数は単数で済むため、コストアップが抑えられる。本発明は上記した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
[付記項1]軸長方向に沿って延びると共に中心軸心の回りで回転可能なボール螺子と、前記中心軸心の回りで前記ボール螺子を回転可能に支持する支持部と、前記軸長方向に沿って間隔を隔てて並設された複数個の被検知部を有する固定部と、前記ボール螺子を回転させる駆動部と、前記ボール螺子の回転に伴い軸長方向に沿って移動する可動部と、前記可動部に設けられ処理工具を保持するための工具ホルダと、前記可動部に保持され計測原点からの前記被検知部の距離を検知する検知センサと、前記ボール螺子の軸長方向の熱膨張に起因する補正値を演算で求め、前記補正値に基づいて前記可動部の移動量を補正して前記可動部を移動させる制御部とを具備することを特徴とする機械加工装置。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は例えばNC工作機械、高精度組立機等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施形態1に係り、装置を模式的に示す側面図である。
【図2】実施形態1に係り、第2固定部および第2可動部付近を模式的に示す概念図である。
【図3】実施形態1に係り、各ドグに対応するパルス信号を模式的に示す図である。
【図4】実施形態1に係り、各ドグに対応するパルス信号と距離との関係を示すグラフである。
【図5】実施形態1に係り、距離の変位量を示すグラフである。
【図6】実施形態1に係り、制御装置が実行するフローチャートである。
【図7】(A)は実施形態1に係り、第2可動部付近を模式的に示す平面図であり、(B)は実施形態1に係り、第2固定部付近を模式的に示す平面図である。
【図8】(A)は実施形態2に係り、第2可動部付近を模式的に示す平面図であり、(B)は実施形態2に係り、第2固定部付近を模式的に示す平面図である。
【図9】実施形態3に係り、第2固定部および第2可動部付近を模式的に示す概念図である。
【図10】実施形態4に係り、各ドグに対応するパルス信号と距離との関係を示すグラフである。
【図11】実施形態4に係り、距離の変位量を示すグラフである。
【符号の説明】
【0068】
1は基体、2はボール螺子、21は軸状体、31,32は軸受(支持部)、4は固定部、41は第1固定部、42は第2固定部、42cは第2固定部の接触面、42nは第2固定部の非接触面、5は駆動モータ(駆動部)、6は可動部、61は第1可動部、62は第2可動部、62coは第2可動部の接触面、62nは第2可動部の非接触面、68は処理工具、7は検知センサ、81は第1ドグ(被検知部,上流被検知部)、82は第2ドグ(被検知部,中間被検知部)、83は第3ドグ(被検知部,下流被検知部)、9は制御部を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明はボール螺子の軸長方向の熱膨張に対して補正するボール螺子熱変位補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械等においては、ボール螺子を有する装置が提供されている(特許文献1,2)。ボール螺子は、これの中心軸心の回りで螺旋状に形成された溝をもつ軸状体と、軸状体の溝に転動可能に保持された複数個の球状の転動体と、軸状体の回転により軸状体の軸長方向に沿って移動する可動部とを備えている。軸状体は中心軸心の回りで駆動モータにより回転される。可動部には処理工具が取り付けられている。軸状体がこれの中心軸心の回りで一方向に回転すると、可動部が前進し、処理工具が前進する。軸状体がこれの中心軸心の回りで逆方向に回転すると、可動部が後退し、処理工具が後退する。処理工具を有する可動部の前進量および後退量は、制御部が駆動モータの駆動回路に指令値を出力することにより実行される。
【特許文献1】特開平11−254272号公報
【特許文献2】特開平11−254273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ボール螺子がこれの中心軸心の回りで回転駆動するとき、転動体と軸状体の溝の壁面との間の摩擦熱などの影響で、ボール螺子が発熱して昇温することがある。この場合、ボール螺子が熱膨張によりこれの軸長方向に伸張する。ボール螺子はこれの軸長方向に沿っているため、この熱膨張量は、可動部の高い位置決め精度を実現させるためには、無視できない。このため、制御部の指令値に基づいて工具が移動するとき、指令値に対して工具を有する可動部の移動量の誤差が発生するおそれがある。
【0004】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、指令値に対する移動量の誤差を効果的に抑えることができるボール螺子熱変位補正装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るボール螺子熱変位補正装置は、軸長方向に沿って延びると共に中心軸心の回りで回転可能なボール螺子と、前記中心軸心の回りで前記ボール螺子を回転可能に支持する支持部と、前記軸長方向に沿って間隔を隔てて並設された複数個の被検知部を有する固定部と、前記ボール螺子に接続され前記ボール螺子を前記中心軸心の回りで回転させる駆動部と、前記ボール螺子に係合され前記ボール螺子の回転に伴い前記軸長方向に沿って移動する可動部と、前記可動部に保持され計測原点から前記複数個の被検知部までのそれぞれの距離を前記可動部の移動に伴い検知する検知センサと、前記ボール螺子の軸長方向における熱膨張に起因する補正移動量を演算で求め、前記補正移動量に基づいて前記可動部を移動させる制御部とを具備することを特徴とする。
【0006】
駆動部によりボール螺子が一方向に回転駆動されると、ボール螺子の軸長方向に沿って可動部が前進する。駆動部によりボール螺子が他方向に回転駆動されると、ボール螺子の軸長方向に沿って可動部が後退する。検知センサは可動部と共に移動する。このため検知センサは、計測原点から被検知部までの距離を、可動部の移動に伴い検知する。制御部は、ボール螺子の軸長方向の熱膨張に起因する補正値を演算で求める。制御部は、補正値に基づいて可動部の移動量を補正し、可動部を移動させる。
【0007】
本発明に係る装置は次の好適態様を採用できる。
【0008】
・可動部は、ワークに対して何らかの処理を行う処理工具を有することが好ましい。処理としては、機械加工処理、研磨処理、塗布処理、けがき処理などが挙げられる。従って、処理工具としては、ドリル、バイト等の切削処理工具、研磨処理工具、ワークに対してけがきするけがき処理工具、ワークに着色する着色処理工具等が挙げられる。ワークは、金属でもセラミックスでもその他の材料でも良い。
【0009】
・検知センサは、被検知部に接近または接触すると、被検知部を検知するものであり、渦電流に基づいて検知するセンサ、光式センサ、静電容量式センサ、磁気式センサ、差動コイル式センサ等が例示される。検知センサは、計測原点から各被検知部までの距離を計測する。なお、被検知部の材質および構造は検知センサの検知原理に応じて設定できる。
【0010】
・固定部は、ボール螺子の軸長方向に沿って間隔を隔てて並設された複数個の被検知部を有する。複数個並設されている被検知部の間隔ピッチについては、均等ピッチでも良い。あるいは、当該間隔ピッチについては、可動部の移動の下流側は、可動部の移動の上流側よりも狭く設定されていることもできる。この場合、可動部の移動の下流側が可動部の移動の上流側よりも熱膨張による変位が大きい場合に有効である。
【0011】
・好ましくは、被検知部は、可動部の前進方向の上流に設けられた上流被検知部と、可動部の前進方向の下流に設けられた下流被検知部と、上流被検知部と下流被検知部との間に位置する中間被検知部とで形成されている。
【0012】
ボール螺子の軸長方向における熱膨張の変位形態としては、一直線状に熱膨張する形態、必ずしも一直線状に熱膨張しない形態が挙げられる。ボール螺子の軸長方向における熱膨張の変位形態が一直線状である形態の場合には、上流被検知部および下流被検知部の使用で済むことが多い。これに対して、ボール螺子の軸長方向における熱膨張の変位形態が一直線状でない形態の場合には、上流被検知部および下流被検知部の他に、中間被検知部が設けられていれば、かかる形態に対処し易い。
【0013】
・好ましくは、固定部は、第1固定部と、第1固定部に保持され且つ被検知部を有する第2固定部とを備えている。第1固定部と第2固定部との接触面積が大きい場合には、第1固定部の熱膨張は、第2固定部の長さに影響を与え、第2固定部に設けられている被検知部の位置に影響を与えるおそれがある。このため、第1固定部と第2固定部との接触面積はできるだけ小さいことが好ましい。そこで、第2固定部は、第1固定部に対面して接触する接触面と、第1固定部に対面するものの第1固定部に非接触な非接触面とを有することが好ましい。ここで、第2固定部の非接触面の表面積は、第2固定部の接触面の表面積よりも大きいことが好ましい。この場合、第1固定部と第2固定部との相互接触度が低減される。故に、第1固定部の熱膨張が第2固定部の長さに影響を与えることが抑制され、ひいては、第2固定部に設けられている被検知部の位置に影響を与えることが抑制される。
【0014】
・好ましくは、可動部は、固定部に対して軸長方向に沿って可動する第1可動部と、第1可動部に保持され且つ検知センサを有する第2可動部とを備えている。第1可動部と第2可動部との接触面積が大きい場合には、第1可動部の熱膨張は、第2可動部の長さに影響を与え、第2可動部に設けられている検知センサの位置に影響を与えるおそれがある。この場合、検知センサによる距離検知精度を低下させるおそれがある。このため第1可動部と第2可動部との接触面積はできるだけ小さいことが好ましい。そこで、第2可動部は、第1可動部に対面して接触する接触面と、第1可動部に対面するものの第1可動部に非接触な非接触面とを有することが好ましい。この場合、第2可動部の非接触面の表面積は、第2可動部の接触面の表面積よりも大きいことが好ましい。この結果、第1可動部の熱膨張が第2可動部の長さに影響を与えることが抑制され、ひいては、第2可動部に設けられている検知センサの位置に影響を与えることが抑制される。
【0015】
・好ましくは、第2固定部および第2可動部のうちの少なくとも一方は、炭素鋼よりも熱膨張が小さな低熱膨張材料(例えばセラミックス等)で形成されている。第2固定部および第2可動部の双方の熱膨張を対応させるためには、第2固定部および第2可動部の双方は、同一材料または同系材料で形成されていることが好ましい。
【0016】
・好ましくは、第1固定部および第1可動部のうちの少なくとも一方は、炭素鋼よりも熱膨張が小さな低熱膨張材料(例えばセラミックス等)で形成されている。ただし、第1固定部および第1可動部のうちの双方は、炭素鋼、合金鋼、鋳鉄で形成されていても良い。
【0017】
・好ましくは、固定部について、後述する実施形態で述べるように、第1固定部のうち後退側の端面と第2固定部のうち後退側の端面との距離をLA1とし、可動部について、第1可動部のうち後退側の端面と第2可動部のうち後退側の端面との距離をLA2として示すとき、LA1/LA2=0.85〜1.15の範囲内に設定されている。この場合、固定部および可動部が熱膨張するとき、LA1の熱膨張量およびLA2の熱膨張量を対応させることができる。この結果、可動部の位置決めにあたり、熱膨張の影響が一層低減され、可動部の位置決め精度が一層高くなる。なお、第2可動部および第2固定部は、熱膨張係数が同一または近似した同一材料または同系材料であることが好ましい。更に第1可動部および第1固定部は、熱膨張係数が同一または近似した同一材料または同系材料であることが好ましい。熱膨張係数が近似するとは、双方の材料の熱膨張係数の比(高い熱膨張係数/低い熱膨張係数)が1.0超〜2.0の範囲内、1.0超〜1.5の範囲内、1.0超〜1.2の範囲内が例示される。
【0018】
・好ましくは、制御部は、ボール螺子の回転に伴い可動部を検知センサと共に軸長方向に沿って移動させることにより、複数個の被検知部の位置にそれぞれ対応する複数個のパルス信号を求め、計測原点から複数個のパルス信号のそれぞれまでの距離を計測し、更に、基準の計測(例えば前回の計測)と今回の計測との間における距離の変位を求め、距離の変位の傾きを求め、変位の傾きに基づいて補正移動量を求め、補正移動量に基づいて可動部を移動させて可動部の位置決めを行う。これにより可動部の位置決めが良好となる。
【0019】
・本発明によれば、被検知部はボール螺子の軸長方向において複数個並設されているものの、検知センサの数は単数とすることができ、高価なセンサのコストが極力低減される。ところで、単数の検知センサを用いる場合とは異なり、単数の被検知部を可動部に設け、複数個の検知センサをボール螺子の軸長方向に沿ってそれぞれ固定部に並設させる方式も考えられる。しかしこの場合には、可動部が単数の被検知部と共に前進すると、前進する単数の被検知部を複数個の検知センサが個別に検知する。この場合、単数の被検知部の移動に伴い、複数個の検知センサが単数の被検知部をそれぞれ検知するため、複数個の検知センサがそれぞれ有する計測誤差がそれぞれ累積されてしまうおそれがある。この結果、可動部の移動量を補正する補正量の精度が大きく低下してしまうおそれがある。この点について本発明によれば、可動部に設けられている単数の検知センサが複数個の被検知部をそれぞれ検知するため、複数個の検知センサがそれぞれ有する計測誤差がそれぞれ累積されることが抑えられる。結果として、可動部の移動量を補正する補正量の精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、指令値に対する移動量の誤差を抑えることができるボール螺子熱変位補正装置を提供することができる。
【0021】
更に本発明によれば、可動部に設けられている単数の検知センサが固定部の複数個の被検知部をそれぞれ検知するため、複数個の検知センサが有する計測誤差がそれぞれ累積されることが抑えられる。結果として、可動部の移動量を補正する補正量の精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1について図1〜図7を参照しつつ説明する。本実施形態に係るボール螺子熱変位補正装置(以下、装置という)は、加工対象物であるワーク15に対して機械加工を行う機械加工装置に適用されている。ワーク15は、金属を母材とする機械加工可能な材料で形成されている。金属は鋳鉄、鋳鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金等が挙げられる。ワーク15は基体1または固定部4に保持されている。矢印Y方向は上下方向を示す。装置は、設置面に設置されている基体1と、基体1に設けられ水平方向に沿って延設されている中心軸心P1の回りで回転可能なボール螺子2と、基体1に保持され中心軸心P1の回りでボール螺子2を回転可能に支持する支持部としての第1軸受31および第2軸受32と、基体1に固定された固定部4と、基体1のボール螺子固定部12に保持された駆動部としての駆動モータ5と、可動部6と、可動部6に保持された検知センサ7と、駆動モータ5を制御する制御部9とを有する。
【0023】
図1に示すように、ボール螺子2は水平方向に沿って配設されており、軸長方向としての矢印K方向(水平方向)に沿って延びている。ボール螺子2は、これの中心軸心P1の回りで螺旋状に形成された溝20をもつ軸状体21と、軸状体21の溝20に転動可能に保持された複数個の球状の転動体22とを備えている。ボール螺子2にはボール螺子ナット25を介してホルダ26が設けられている。ホルダ26は、ボール螺子ナット25に固定された第1ホルダ部261と、矢印K方向に沿って延設された第2ホルダ部262とを有する。
【0024】
固定部4は、矢印K方向に沿って間隔を隔てて並設された複数個の被検知部としての第1ドグ81(上流被検知部)、第2ドグ82(中間被検知部)および第3ドグ83(下流被検知部)を有する。各ドグ81〜83は、鉄等の金属を母材として形成されており、突起状をなす。可動部6は、ホルダ26およびボール螺子ナット25を介してボール螺子2に係合している。ボール螺子2の回転に伴い、可動部6は矢印K方向において矢印K1方向に前進したり、矢印K2方向に後退したりする。
【0025】
固定部4は、基体1に固定されている第1固定部41と、第1固定部41よりもサイズが小さく軽量な片持ち支持構造の第2固定部42とを備えている。第1固定部41は端面41a,41b,41cをもつ。第1固定部41の端面41bにはガイドレール43(案内部)が矢印K方向に沿って延設されている。第2固定部42は端面42a,42b,42c,42dをもつ。ここで、第2固定部42には第1ドグ81、第2ドグ82および第3ドグ83が間隔を隔てて矢印K方向に沿って並設されている。
【0026】
駆動モータ5は、ボール螺子2の基端部に連結部28を介して連結されており、ボール螺子2をこれの中心軸心P1の回りで回転させるサーボモータである。制御部9は信号線52cを介して駆動モータ5の駆動回路に指令値Scを指令し、これに基づいて駆動モータ5が回転し、ボール螺子2が回転し、ホルダ26と共に可動部6が矢印K方向に移動する。駆動モータ5の回転軸には回転数センサ51(例えばロータリエンコーダ)が設けられている。回転数センサ51が検知した信号Srは、信号線52aを介して制御部9に入力される。これにより駆動モータ5はフィードバツク制御される。
【0027】
図1に示すように、可動部6は、ホルダ26の第2ホルダ部262の先端部262cに保持された第1可動部61と、第1可動部61よりもサイズが小さく軽量な第2可動部62とを備えている。第1可動部61は、ワーク15を加工処理する処理工具68(処理部)を工具ホルダ66を介して有する。処理工具68は工具ホルダ66に対して矢印Y方向において昇降可能とされている。
【0028】
図2に示すように、第2可動部62は、第1可動部61の側面61sにボルト69(保持具)により着脱可能に片持ち支持構造で保持されており、端面62a,62cを有する。更に、前記した第2固定部42は、第1固定部41の側面41sにボルト44(保持具)により着脱可能に保持されている。
【0029】
可動部6は検知センサ7を有する。検知センサ7は非接触センサであり、各ドグ81,82,83に接近すると、各ドグ81,82,83の位置を検知するものであり、具体的には、各ドグに流れる渦電流に基づいて各ドグの位置を検知するセンサである。但し、センサの原理は渦電流式に限定されず、光式、静電容量式、磁気式等でも良い。
【0030】
図1に示すように、第1可動部61は、ガイドレール43に沿って案内されるスライダー64を有する。ここで、駆動モータ5が一方向に回転してボール螺子2が中心軸心P1の回りで一方向に回転すると、ホルダ26を介して可動部6が矢印K方向において矢印K1方向に前進する。また、駆動モータ5が逆方向に回転してボール螺子2が逆方向に回転すると、ホルダ26を介して可動部6が矢印K方向において矢印K2方向に後退進する。
【0031】
可動部6が矢印K方向において矢印K1方向に前進すると、第2可動部62に保持されている検知センサ7は、第2可動部62と共に同方向に移動し、結果として、固定側の第1ドグ81、第2ドグ82および第3ドグ83にそれぞれ対面する。このように検知センサ7が第1ドグ81、第2ドグ82および第3ドグ83に対面すると、検知センサ7は、第1ドグ81、第2ドグ82および第3ドグ83の位置をそれぞれ検知し、ひいては、計測原点KOから第1ドグ81までの距離S1、計測原点KOから第2ドグ82までの距離S2、計測原点KOから第3ドグ83までの距離S3をそれぞれ検知する。検知センサ7が検知した信号Smは信号線52fによりアンプ95に入力され、アンプ95で増幅され、信号線52hを介して制御部9に入力される。制御部9は、入力処理回路とCPUとメモリ(RAM,ROM)と出力処理回路とを有する。
【0032】
次に、装置の使用形態について説明する。まず、制御部9は、可動部6を矢印K2方向に後退させて待機位置に待機させる。この状態において、制御部9は、駆動モータ5を回転駆動させることによりボール螺子2を中心軸心P1の回りで回転させ、回転に伴い可動部6を矢印K1方向に沿って移動させる。これにより制御部9は、(i)複数個の第1ドグ81、第2ドグ82および第3ドグ83の位置にそれぞれ対応する複数個のパルス信号を求める第1処理と、(ii)待機位置である計測原点KOから複数個のパルス信号のそれぞれまでの距離を計測する第2処理と、(iii)基準の計測と今回の計測との間における第1ドグ81、第2ドグ82および第3ドグ83(被検知部)についての距離の変位を求める第3処理と、(iv)距離の変位の傾きを求める第4処理と、(v)変位の傾きに基づいて可動部6の補正ストローク(補正移動量)を求め、補正ストロークに基づいて可動部6ひいては処理工具68の位置決めを行う第5処理とを実行する。このようにして処理工具68が目標位置に設定されたら、処理工具68を重力方向の下方に移動させ、ワーク15に対して加工処理を実施する。更に説明を加える。
【0033】
(第1処理)まず、制御部9は、可動部6を検知センサ7および処理工具68と共に、矢印K2方向側の待機位置(計測原点KO)に待機させる。このように可動部6が待機している位置において、制御部9は駆動モータ5に指令値を出力し、駆動モータ5を一方向に回転させる。すると、ボール螺子2の回転に伴い、可動部6は処理工具68および検知センサ7と共に矢印K方向において矢印K1方向に向けて前進する。この場合、ガイドレール43に沿ってスライダー64が移動するため、移動は円滑である。第2可動部62に保持されている検知センサ7は、第2可動部62と共に同方向に移動し、第1ドグ81、第2ドグ82および第3ドグ83に順にそれぞれ対面する。このように検知センサ7が第1ドグ81、第2ドグ82および第3ドグ83にそれぞれ対面すると、検知センサ7は、第1ドグ81、第2ドグ82および第3ド83グの位置をそれぞれ順に検知する。その信号Smは信号線52fを介してアンプ95に入力され、アンプ95で増幅され、パルス信号P1,P2,P3となり(図3)、信号線52hを介して制御部9に入力される。
【0034】
(第2処理)次に、制御部9は、計測原点KOからパルス信号P1までの距離S1を求め、且つ、計測原点KOからパルス信号P2までの距離S2を求め、且つ、計測原点KOからパルス信号P3までの距離S3を求める。この場合、パルス信号P1,P2,P3の立ち上がりを基準とする。図4は、パルス信号P1,P2,P3の位置と、計測原点KOからの距離S1,S2,S3との関係を示す。図4において、特選線W1は、基準となる計測においてパルス信号P1,P2,P3を計測した場合の特性を示す。基準となる計測は、ボール螺子2の発熱が少なく、ボール螺子2の昇温が少ないときにおける計測を意味する。例えば、多数のワーク15を加工する加工日における初回の計測、あるいは、ボール螺子2が長時間にわたり停止した後における初回の計測が例示される。
【0035】
特選線W2は、今回にパルス信号P1,P2,P3を計測した場合の特性を示す。ボール螺子2の発熱による熱膨張の影響で、今回の計測における距離は、基準の計測における距離よりも長めとなる。
【0036】
(第3処理)制御部9は、基準の計測と今回の計測との間における距離S1の変位δ1(図4参照)を求める。更に、制御部9は、基準の計測と今回の計測との間における距離S2の変位δ2(図4参照)を求める。更に、制御部9は、基準の計測と今回の計測との間における距離S3の変位δ3(図4参照)を求める。ここで、δ1<δ2<δ3の関係となる。
【0037】
(第4処理)図4に示すように、制御部9は、第1パルス信号P1と第2パルス信号P2との間を第1領域LFとして取り扱う。第1領域LFのピッチをL1として示す。制御部9は、第2パルス信号P2と第3パルス信号P3との間を第2領域LSとして取り扱う。第2領域LSのピッチをL2として示す。制御部9は、第1領域LFに関して、差ΔδA=δ2−δ1の演算式により、差ΔδA(図5参照)を求める。更に制御部9は、第2領域LSに関して、差ΔδB=δ3−δ2の演算式により、差ΔδB(図5参照)を求める。次に、制御部9は、第1領域LFにおける変位の傾きθ1(θ1=ΔδA/L1)を求める。更に制御部9は、第2領域LSにおける変位の傾きθ2(θ2=ΔδB/L2)を求める。
【0038】
(第5処理)第1ドグ81の位置に相当するパルスP1の位置(立ち上がり位置)を可動部6の移動原点XO(図5参照)とし、移動原点XOを起点として可動部6を矢印K1方向に向けて前進させる指令ストロークをX(図5参照)とする。指令ストロークXに基づく検知センサ7の目標位置が第1領域LF内に存在するときには、制御部9は、Xα=(θ1*X)+δ1の演算式により、補正ストロークXαを求める。*は乗算を意味する。ここで、補正ストロークXαは、指令ストロークXの目標位置が第1領域LF内に存在するとき、ボール螺子2の熱膨張の熱変位などに起因する補正量を考慮し、指令ストロークXに対して補正量を加えた後の補正ストロークを意味する。従って、制御部9は、移動原点XOから補正ストロークXαぶん可動部6を矢印K1方向に前進させる指令を出力する。
【0039】
また、移動原点XOを起点として可動部6を矢印K1方向に向けて移動させる指令ストロークをXとする。指令ストロークXに基づく検知センサ7の目標位置が第2領域LS内に存在するときには、制御部9は、Xβ=[θ2*(X−L1)]+δ2の演算式により、補正ストロークXβを求める。ここで、補正ストロークXβは、移動原点XOから可動部6を移動させる指令ストロークXの目標位置が第2領域LS内に存在するとき、ボール螺子2の熱膨張などに起因する補正量を考慮し、指令ストロークXを補正した後の指令ストロークを意味する。従って、制御部9は、補正ストロークXβぶん可動部6を矢印K1方向に前進させる指令を出力する。これにより本実施形態によれば、ボール螺子2の温度変化の影響を抑制させつつ、可動部6を目標位置に移動させることができる。この結果、可動部6の位置決め精度を高めることができる。ひいては処理工具68による加工精度を高めることができる。
【0040】
(フローチャート)
図6は、制御部9のCPUが実行する制御形態を示すフローチャートの一例を示す。フローチャートはこれに限定されるものではない。制御部9は、可動部6および検知センサ7を待機位置から矢印K1方向に前進させる計測補正工程を実施した後、可動部6を再び待機位置に戻し、その後、可動部6を処理工具68と共に矢印K1方向に前進させて加工を行う加工工程とを順に実施する。
【0041】
まず、計測補正工程を行うべき、制御部9は、レジスタ、メモリの所定のエリアなどを初期設定した後(ステップS102)、駆動モータ5を駆動させてボール螺子2を回転させ、可動部6および検知センサ7を待機位置(計測原点)に待機させる(ステップS104)。次に、制御部9は、駆動モータ5を駆動させてボール螺子2を回転させ、可動部6および検知センサ7を矢印K1方向に前進させる(ステップS106)。これにより検知センサ7が第1ドグ81、第2ドグ82および第3ドグ83を順に通過するように、可動部が矢印K1方向に前進される。次に制御部9は、パルス信号P1,P2,P3の立ち上がり位置を演算で求め、メモリに記憶させる(ステップS108,ステップS110)。場合によっては、パルス信号P1,P2,P3の立ち上がり位置ではなく、立ち下がり位置を求めることにしても良い。更に制御部9は、上記した変位δ1,変位δ2,変位δ3を求め(ステップS112)、更に、上記した差ΔδA,差ΔδBを求める(ステップS114)。次に制御部9は、可動部6の指令ストロークをXとするとき、指令ストロークXに対して補正した補正ストロークXα,Xβを演算で求める(ステップS116)。ここで、制御部9は、前記した演算式(Xα=(θ1*X)+δ1)により、補正ストロークXαを求める。また、制御部9は、Xβ=[θ2*(X−L1)]+δ2の演算式により、補正ストロークXβを求める。
【0042】
次に、制御部9は補正ストロークXα,Xβをメモリに記憶させる(ステップS118)。これにより計測補正工程を終了する。次に、制御部9は、可動部6を待機位置に戻す(ステップS120)。次に加工工程に移行する。すなわち制御部9は、加工工程における可動部6の目標位置が第1領域LF内であるか否か判定する(ステップS122)。可動部6の目標位置が第1領域LFであれば(ステップS122のYES)、制御部9は補正ストロークXαを設定する(ステップS124)。加工工程における可動部6の目標位置が第2領域LSであれば(ステップS122のNO)、制御部9は補正ストロークXβを設定する(ステップS126)。
【0043】
制御部9は、補正ストロークXαまたは補正ストロークXβに基づいて、ボール螺子2を回転させ、可動部6および処理工具68を矢印K1方向に前進させる(ステップS128)。制御部9は、可動部6が目標位置に到達したか否か判定する(ステップS130)。このとき、制御部9は、回転数センサ51が検知するボール螺子2の回転数に基づいて判定する。可動部6が目標位置に到達していれば(ステップS130のYES)、制御部9はワーク15に対して可動部6の処理工具68で加工する指令を出力する(ステップS132)。具体的には、処理工具68(例えば切削ドリル)を下降させる指令を出力する。
【0044】
加工が終了したら(ステップS134のYES)、次の加工作業があるか判定する(ステップS136)、次の加工作業がなければ、メインルーチンにリターンする(ステップS144)。次の加工作業があれば(ステップS136のYES)、制御部9は、データをリセットするか否か判定する(ステップS138)。データをリセットする必要があれば(ステップS138のYES)、データをリセットし(ステップS140)、補正ストロークXα,Xβをメモリのエリアから消去し、ステップS104に戻る。このようにデータをリセットして消去すれば、制御部9は、ワーク15の加工毎に補正ストロークXα,Xβを演算で求めるため、ワーク15を加工する毎に、可動部6の位置決め精度、ワーク15に対する加工精度を高めることができる。
【0045】
これに対してデータをリセットする必要がなければ、ステップS120に戻る。この場合には、メモリに格納されている前回の補正ストロークXα,Xβが使用される。このため、計測および補正に必要される時間が短縮され、ワーク15の加工に対する生産性が向上する。ここで、複数個のワーク15に対して補正を1回実行することにすれば、補正回数が低減され、生産性が向上する。従って、ステップS138は、データ(前回の補正ストロークXα,Xβ等)をリセットするか否かを判定する判定要素として機能することができる。
【0046】
以上説明したように本実施形態によれば、ボール螺子2における熱変動の影響で、第1可動部61が矢印K方向において熱膨張するときであっても、可動部6の移動ストロークを補正して補正ストロークを設定するため、可動部6の位置決め精度を高めることができ、ひいては処理工具68の位置決め精度を高めることができる。
【0047】
ところで第1可動部61と第2可動部62との接触面積が大きい場合には、矢印K方向における第1可動部61の熱膨張は、第2可動部62の長さに影響を与え、ひいては第2可動部62に設けられている検知センサ7の位置に微小量ではあるが影響を与えるおそれがある。この場合、可動部6の位置決め精度が低下するおそれがある。そこで本実施形態によれば、図7(A)に示すように、第2可動部62は、第1可動部61に対面して接触する接触面62coと、第1可動部61に対面するものの隙間62rにより第1可動部61に非接触な非接触面62nとを有する。特に、第2可動部62において、第1可動部61に対面するものの第1可動部61に非接触な非接触面62nの表面積は、第2可動部62の接触面62coの表面積よりも大きく設定されている。従って、第1可動部61と第2可動部62との相互接触度が低下する。この結果、矢印K方向においてサイズが大きな第1可動部61の熱膨張が発生するときであっても、それが第2可動部62の長さの変動に影響を与えることが抑制される。ひいては、第2可動部62に設けられている検知センサ7の位置に影響を与えることが抑制される。従って検知センサ7のセンシング精度の低下が抑制される。従ってワーク15の加工精度が確保される。
【0048】
更に本実施形態によれば、ボール螺子2における熱変動の影響で、第1固定部41が矢印K方向に熱膨張するときがある。この場合、可動部6の位置決め精度に影響を与えるおそれがある。すなわち、第1固定部41と第2固定部42との接触面積が大きい場合には、矢印K方向におけるサイズが大きな第1固定部41の熱膨張は、第2固定部42の長さに影響を与え、第2固定部42に設けられている第1ドグ81、第2ドグおよび第3ドグのそれぞれの位置に影響を与えるおそれがある。そこで本実施形態によれば、図7(B)に示すように、第2固定部42は、第1固定部41に対面して接触する接触面42cと、第1固定部41に対面するものの隙間42rにより第1固定部41に非接触な非接触面42nとを有する。これにより第1固定部41の熱膨張が第2固定部42の長さに影響を与えることが抑制される。ひいては、可動部6を位置決めする位置決め精度に影響を与えることが抑制されている。従ってワーク15の加工精度が確保される。
【0049】
更に、第2固定部42の非接触面42nの表面積は、第2固定部42の接触面42cの表面積よりも大きく設定されている。従って、第1固定部41と第2固定部42との相互接触度が抑えられている。この結果、矢印K方向における第1固定部41の熱膨張が第2固定部42の長さに影響を与えることが抑制されている。ひいては、第2固定部42に設けられている第1ドグ81、第2ドグ82および第3ドグ83の位置に影響を与えることが抑制される。従って可動部6の位置決め精度が確保され、ワーク15の加工精度が確保される。
【0050】
加えて本実施形態によれば、第2固定部42および第2可動部62は、炭素鋼よりも熱膨張係数が小さな低熱膨張材料で形成されている。熱膨張係数は、室温〜100℃において10×10−6/℃以下、8×10−6/℃以下、6×10−6/℃以下、殊に5×10−6/℃以下、4×10−6/℃以下、2×10−6/℃以下が好ましい。低熱膨張材料としては低熱膨張金属、セラミックスが例示される。セラミックスとしてはアルミナ、シリカ、マグネシア、窒化硅素、ジルコニア、炭化硅素、快削性セラミックスなどが例示される。快削性セラミックスはマイカ系、窒化ホウ素系、チタン酸アルミ系が例示される。
【0051】
更に本実施形態によれば、第1固定部41および第1可動部61は、炭素鋼よりも熱膨張係数が小さな低熱膨張材料で形成されていることが好ましい。但しこれに限定されるものではない。このように第1固定部41および第1可動部61が低熱膨張材料で形成されている場合には、矢印K方向における第1固定部41の熱膨張が第2固定部42の長さに影響を与えることが抑制される。更に、矢印K方向における第1可動部61の熱膨張が第2可動部62の長さに影響を与えることが抑制され、ひいては可動部6を位置決めする位置決め精度が良好に確保される。
【0052】
更に、本実施形態によれば、図7(B)に示すように、矢印K方向において、固定部4について、第1固定部41のうち後退側の端面41aと第2固定部42のうち後退側の端面42aとの距離をLA1として示す。更に図7(A)に示すように、矢印K方向において、可動部6について、第1可動部61のうち後退側の端面61aと第2可動部62のうち後退側の端面62aとの距離をLA2として示す。ここで、端面61aの位置と端面41aの位置とは、矢印K方向において、同じ位置とされている。更に、LA1/LA2=0.85〜1.15の範囲内に設定されている。更に、0.9〜1.1の範囲内、あるいは、0.95〜1.05の範囲内に設定されていることが好ましい。殊に、LA1/LA2=1.0に設定されていることが好ましい。
【0053】
このような本実施形態によれば、矢印K方向における第1固定部41の熱膨張による変位、矢印K方向における第1可動部61の熱膨張による変位が発生したとしても、固定部4における変位量と可動部における変位量とを互いに接近させたり、同一とすることができる。従って、固定部4の熱膨張によるドグ81,82,83の変位量と、可動部6の熱膨張による検知センサ7の変位量とが高い精度で対応することになる。故に、可動部6を矢印K1方向に移動させて可動部6を位置決めさせるにあたり、位置決めの精度を高めるのに一層貢献できる。第1固定部41の熱膨張係数εcおよび第1可動部61の熱膨張係数εmは、近似していることが好ましい。εc/εmは0.8〜1.2の範囲内、0.9〜1.1の範囲内、0.95〜1.05の範囲内が好ましい。従って、第1固定部41および第1可動部61は、同一材料または同系材料で形成されていることが好ましい。
【0054】
ところで、単数の検知センサ7を用いる本実施形態とは異なり、単数のドグを可動部6に設け、複数個の検知センサ7を固定部4に矢印K方向にそれぞれ並設させる方式も考えられる。しかしこの方式が採用されている場合には、可動部6がドグと共に移動すると、固定されている複数個の検知センサ7は、移動する単数のドグをそれぞれ個別に検知する方式となる。この場合、複数個の検知センサ7は、矢印K1方向に移動する単数のドグをそれぞれ検知するため、検知センサ7のそれぞれの計測誤差が累積され、結果として、可動部6の位置決め精度が大きく低下してしまうおそれがある。この点について本実施形態によれば、単数の検知センサ7が複数個のドグをそれぞれ検知するため、複数個の検知センサ7の計測誤差がそれぞれ累積されることが抑えられる。結果として、可動部6の位置決め精度を高めることができる。
【0055】
(実施形態2)
図8は本発明の実施形態2を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図6(図2を除く)を準用する。以下、異なる部分を中心として説明する。図8(A)に示すように、第2可動部62は、第1可動部61に対面して接触する接触面62coと、第1可動部61に対面するものの隙間62rにより第1可動部61に非接触な非接触面62nとを有する。隙間62rは矢印K方向において複数個並設されている。特に、第2可動部62において、第1可動部61に対面するものの第1可動部61に非接触な非接触面62nの表面積は、第2可動部62の接触面62coの表面積よりも大きく設定されている。従って、第1可動部61と第2可動部62との相互接触度が低下する。
【0056】
図8(B)に示すように、第2固定部42は、第1固定部41に対面して接触する接触面42cと、第1固定部41に対面するものの隙間42rにより第1固定部41に非接触な非接触面42nとを有する。隙間42rは矢印K方向において複数個並設されている。これにより第1固定部41の熱膨張が第2固定部42の長さに影響を与えることが抑制される。ひいては、可動部6を位置決めする位置決め精度に影響を与えることが抑制されている。従ってワーク15の加工精度が確保される。
【0057】
更に、第2固定部42の非接触面42nの表面積は、第2固定部42の接触面42cの表面積よりも大きく設定されている。従って、第1固定部41と第2固定部42との相互接触度が抑えられている。
【0058】
(実施形態3)
図9は本発明の実施形態3を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。第2固定部42には、ドグ81,82,83が嵌合される凹状をなす複数個のドグ取付部42wが矢印K方向において間隔を隔てて並設されている。ドグ取付部42wの個数をN1とする。ドグ81,82,83の個数をN2とする。ここで、N1>N2とされている。従ってボール螺子2の熱膨張等の事情に応じて、ドグ81,82,83を任意のドグ取付部42wに取り付けることができる。この場合、ボール螺子2の熱膨張等の事情に対応し易い。図9に示すように、矢印K方向において複数個並設されている凹状をなす複数個のドグ取付部42wの間隔ピッチについて、可動部6の移動方向(矢印K1方向)の下流側は、可動部6の移動方向(矢印K1方向)の上流側よりも狭く設定されている。従って、ドグの間隔ピッチについても、可動部6の移動方向(矢印K1方向)の下流側は、可動部6の移動方向(矢印K1方向)の上流側よりも狭く設定することが可能となる。
【0059】
(実施形態4)
図10および図11は実施形態4を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1,図6を準用することができる。本実施形態に係るボール螺子2によれば、熱膨張による変位特性は一直線状ではなく、図10に示すように、第1領域LFにおける変位量よりも、第2領域LSにおける変位量が非線形的に増大する傾向がある。ボール螺子2の溝20のピッチの公差等の影響と推察される。変位量が非線形的に増大するようになる部位を転換基準点δw(図10参照)として取り扱う。ここで、第1領域LFは、パルス信号P1とパルス信号P2との間とされており、可動部6の移動方向(矢印K1方向)の上流側に相当する。第2領域LSは、パルス信号P2とパルス信号P3との間とされており、可動部6の移動方向(矢印K1方向)の下流側に相当する。
【0060】
本実施形態によれば、第2ドグ82(中間被検知部)は、矢印K方向において転換基準点δwの位置にセットされており、従って、第1ドグ81(上流被検知部)よりも第3ドグ83(下流被検知部)に近い位置に設けられている。この結果、矢印K方向において、第2ドグ82によるパルス信号P2は、第1ドグ81によるパルス信号P1よりも、第3ドグ83によるパルス信号P3に近い位置に検出される。従って、第2領域LSにおけるL2は、第1領域LFにおけるL1よりも小さくされている(L2<L1)。
【0061】
図11に示すように、移動原点XO(パルス信号P1の立ち上がり)から可動部6を矢印K1方向に移動させる指令ストロークをXとする。指令ストロークXにより可動部6を矢印K1方向に移動させる目標位置が第1領域LF内に存在するとき、前述同様に、制御部9は、Xα=(θ1*X)+δ1の演算式により、補正ストロークXαを求める。従って、制御部9は、補正ストロークXαぶん可動部6を矢印K1方向に前進させる指令を出力する。
【0062】
また指令ストロークXにより可動部6を矢印K1方向に移動させる目標位置が第2領域LS内に存在するときには、前述同様に、制御部9は、Xβ=[θ2*(X−L1)]+δ2の演算式により、補正ストロークXβを求める。従って、指令ストロークXにより可動部6を移動させる目標位置が第1領域LFに存在するときには、制御部9は、補正ストロークXβぶん可動部6を矢印K1方向に前進させる指令を出力する。
【0063】
このような本実施形態によれば、ボール螺子2の昇温の影響を抑制させつつ、可動部6を目標位置に高精度で移動させることができる。ひいては、可動部6に保持されている処理工具68を目標位置に高精度で移動させることができ、処理工具68による加工精度を高めることができる。更にドグ81,82,83も3個で済むため、制御部9による演算速度の短縮、ドグコストの低減を図り得る。
【0064】
本実施形態によれば、前述したように、ドグ取付部42wの個数をN1とし、ドグ81,82,83の個数をN2とするとき、N1>N2の関係に設定することができる。従ってボール螺子2の熱膨張等の事情に応じて、ドグ81,82,83を任意のドグ取付部42wに取り付けることができる。
【0065】
(その他)上記した実施形態によれば、被検知部であるドグの数は3個とされているが、4個でも、それ以上でも良い。ドグの数を増加したとしても、高価な検知センサ7の数は単数で済むため、コストアップが抑えられる。本発明は上記した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
[付記項1]軸長方向に沿って延びると共に中心軸心の回りで回転可能なボール螺子と、前記中心軸心の回りで前記ボール螺子を回転可能に支持する支持部と、前記軸長方向に沿って間隔を隔てて並設された複数個の被検知部を有する固定部と、前記ボール螺子を回転させる駆動部と、前記ボール螺子の回転に伴い軸長方向に沿って移動する可動部と、前記可動部に設けられ処理工具を保持するための工具ホルダと、前記可動部に保持され計測原点からの前記被検知部の距離を検知する検知センサと、前記ボール螺子の軸長方向の熱膨張に起因する補正値を演算で求め、前記補正値に基づいて前記可動部の移動量を補正して前記可動部を移動させる制御部とを具備することを特徴とする機械加工装置。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は例えばNC工作機械、高精度組立機等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施形態1に係り、装置を模式的に示す側面図である。
【図2】実施形態1に係り、第2固定部および第2可動部付近を模式的に示す概念図である。
【図3】実施形態1に係り、各ドグに対応するパルス信号を模式的に示す図である。
【図4】実施形態1に係り、各ドグに対応するパルス信号と距離との関係を示すグラフである。
【図5】実施形態1に係り、距離の変位量を示すグラフである。
【図6】実施形態1に係り、制御装置が実行するフローチャートである。
【図7】(A)は実施形態1に係り、第2可動部付近を模式的に示す平面図であり、(B)は実施形態1に係り、第2固定部付近を模式的に示す平面図である。
【図8】(A)は実施形態2に係り、第2可動部付近を模式的に示す平面図であり、(B)は実施形態2に係り、第2固定部付近を模式的に示す平面図である。
【図9】実施形態3に係り、第2固定部および第2可動部付近を模式的に示す概念図である。
【図10】実施形態4に係り、各ドグに対応するパルス信号と距離との関係を示すグラフである。
【図11】実施形態4に係り、距離の変位量を示すグラフである。
【符号の説明】
【0068】
1は基体、2はボール螺子、21は軸状体、31,32は軸受(支持部)、4は固定部、41は第1固定部、42は第2固定部、42cは第2固定部の接触面、42nは第2固定部の非接触面、5は駆動モータ(駆動部)、6は可動部、61は第1可動部、62は第2可動部、62coは第2可動部の接触面、62nは第2可動部の非接触面、68は処理工具、7は検知センサ、81は第1ドグ(被検知部,上流被検知部)、82は第2ドグ(被検知部,中間被検知部)、83は第3ドグ(被検知部,下流被検知部)、9は制御部を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸長方向に沿って延びると共に中心軸心の回りで回転可能なボール螺子と、
前記中心軸心の回りで前記ボール螺子を回転可能に支持する支持部と、
前記軸長方向に沿って間隔を隔てて並設された複数個の被検知部を有する固定部と、
前記ボール螺子に接続され前記ボール螺子を前記中心軸心の回りで回転させる駆動部と、
前記ボール螺子に係合され前記ボール螺子の回転に伴い軸長方向に沿って移動する可動部と、
前記可動部に保持され計測原点から前記複数個の被検知部までのそれぞれの距離を前記可動部の移動に伴い検知する検知センサと、
前記ボール螺子の軸長方向における熱膨張に起因する補正移動量を演算で求め、前記補正移動量に基づいて前記可動部を移動させる制御部とを具備することを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項2】
請求項1において、複数個並設されている前記被検知部の間隔ピッチについて、前記可動部の移動の下流側は、前記可動部の移動の上流側よりも狭く設定されていることを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記被検知部は、前記可動部の前進方向の上流に設けられた上流被検知部と、前記可動部の前進方向の下流に設けられた下流被検知部と、前記上流被検知部と前記下流被検知部との間に位置する中間被検知部とで形成されていることを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記固定部は、第1固定部と、前記第1固定部に保持され且つ前記被検知部を有する第2固定部とを備えており、
前記第2固定部は、前記第1固定部に対面して接触する接触面と、前記第1固定部に対面するものの前記第1固定部に非接触な非接触面とを有することを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの一項において、前記可動部は、前記固定部に対して前記軸長方向に沿って可動する第1可動部と、前記第1可動部に保持され且つ前記検知センサを有する第2可動部とを備えており、
前記第2可動部は、前記第1可動部に対面して接触する接触面と、前記第1可動部に対面するものの前記第1可動部に非接触な非接触面とを有することを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項6】
請求項4または5において、前記第2固定部および前記第2可動部のうちの少なくとも一方は、炭素鋼よりも熱膨張が小さな低熱膨張材料で形成されていることを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項7】
請求項4〜6のうちの一項において、前記第1固定部および前記第1可動部のうちの少なくとも一方は、炭素鋼よりも熱膨張が小さな低熱膨張材料で形成されていることを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項8】
請求項5〜7のうちの一項において、前記固定部について、前記第1固定部のうち後退側の端面と前記第2固定部のうち後退側の端面との距離をLA1とし、前記可動部について、前記第1可動部のうち後退側の端面と前記第2可動部のうち後退側の端面との距離をLA2として示すとき、LA1/LA2=0.85〜1.15の範囲内に設定されていることを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項9】
請求項1〜8のうちの一項において、前記制御部は、前記ボール螺子の回転に伴い前記可動部を前記検知センサと共に前記軸長方向に沿って移動させることにより、複数個の前記被検知部の位置にそれぞれ対応する複数個のパルス信号を求め、前記計測原点から複数個のパルス信号のそれぞれまでの距離を計測し、更に、基準の計測と今回の計測との間における前記距離の変位を求め、前記距離の変位の傾きを求め、前記変位の傾きに基づいて補正移動量を求め、前記補正移動量に基づいて前記可動部を移動させて前記可動部の位置決めを行うことを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項1】
軸長方向に沿って延びると共に中心軸心の回りで回転可能なボール螺子と、
前記中心軸心の回りで前記ボール螺子を回転可能に支持する支持部と、
前記軸長方向に沿って間隔を隔てて並設された複数個の被検知部を有する固定部と、
前記ボール螺子に接続され前記ボール螺子を前記中心軸心の回りで回転させる駆動部と、
前記ボール螺子に係合され前記ボール螺子の回転に伴い軸長方向に沿って移動する可動部と、
前記可動部に保持され計測原点から前記複数個の被検知部までのそれぞれの距離を前記可動部の移動に伴い検知する検知センサと、
前記ボール螺子の軸長方向における熱膨張に起因する補正移動量を演算で求め、前記補正移動量に基づいて前記可動部を移動させる制御部とを具備することを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項2】
請求項1において、複数個並設されている前記被検知部の間隔ピッチについて、前記可動部の移動の下流側は、前記可動部の移動の上流側よりも狭く設定されていることを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記被検知部は、前記可動部の前進方向の上流に設けられた上流被検知部と、前記可動部の前進方向の下流に設けられた下流被検知部と、前記上流被検知部と前記下流被検知部との間に位置する中間被検知部とで形成されていることを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記固定部は、第1固定部と、前記第1固定部に保持され且つ前記被検知部を有する第2固定部とを備えており、
前記第2固定部は、前記第1固定部に対面して接触する接触面と、前記第1固定部に対面するものの前記第1固定部に非接触な非接触面とを有することを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの一項において、前記可動部は、前記固定部に対して前記軸長方向に沿って可動する第1可動部と、前記第1可動部に保持され且つ前記検知センサを有する第2可動部とを備えており、
前記第2可動部は、前記第1可動部に対面して接触する接触面と、前記第1可動部に対面するものの前記第1可動部に非接触な非接触面とを有することを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項6】
請求項4または5において、前記第2固定部および前記第2可動部のうちの少なくとも一方は、炭素鋼よりも熱膨張が小さな低熱膨張材料で形成されていることを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項7】
請求項4〜6のうちの一項において、前記第1固定部および前記第1可動部のうちの少なくとも一方は、炭素鋼よりも熱膨張が小さな低熱膨張材料で形成されていることを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項8】
請求項5〜7のうちの一項において、前記固定部について、前記第1固定部のうち後退側の端面と前記第2固定部のうち後退側の端面との距離をLA1とし、前記可動部について、前記第1可動部のうち後退側の端面と前記第2可動部のうち後退側の端面との距離をLA2として示すとき、LA1/LA2=0.85〜1.15の範囲内に設定されていることを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【請求項9】
請求項1〜8のうちの一項において、前記制御部は、前記ボール螺子の回転に伴い前記可動部を前記検知センサと共に前記軸長方向に沿って移動させることにより、複数個の前記被検知部の位置にそれぞれ対応する複数個のパルス信号を求め、前記計測原点から複数個のパルス信号のそれぞれまでの距離を計測し、更に、基準の計測と今回の計測との間における前記距離の変位を求め、前記距離の変位の傾きを求め、前記変位の傾きに基づいて補正移動量を求め、前記補正移動量に基づいて前記可動部を移動させて前記可動部の位置決めを行うことを特徴とするボール螺子熱変位補正装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−5743(P2010−5743A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168574(P2008−168574)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【Fターム(参考)】
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