説明

ポラプレジンク含有口腔内崩壊錠

【課題】本発明は、湿度条件下においても良好な錠剤硬度が維持されるポラプレジンク含有口腔内崩壊錠を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明者らは、ポラプレジンクと有機酸を含む組成物を練合造粒することにより、湿度条件下で一定期間放置した後でも良好な錠剤硬度が維持されるポラプレジンク含有口腔内崩壊錠が得られること、さらに、この方法によれば、打錠障害などのトラブルが発生することなく、円滑に口腔内崩壊錠を製造しうることを見いだした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿度条件下でも良好な錠剤硬度が維持され、かつ製造時の打錠障害が抑制されたポラプレジンク含有口腔内崩壊錠に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛錯体化合物であるポラプレジンクは、現在日本国内において、胃潰瘍治療剤として顆粒剤と口腔内崩壊錠が市販されている。高齢者や嚥下が困難な患者も服用しやすいことから、口腔内崩壊錠の需要は近年高まっているが、市販されているポラプレジンク含有口腔内崩壊錠は、自動分包機による調剤が不可能なため、錠剤強度の改良が求められている。また、医療現場での使用実態を考慮すると、無包装状態かつ湿度条件下においても錠剤硬度が低下しない安定な口腔内崩壊錠が望ましい。
一般に、錠剤の強度を向上させるために、打錠圧力を増加する方法などが知られているものの、そうすると錠剤の崩壊が遅くなりがちであり、口腔内崩壊錠の場合は、口腔内での崩壊性を担保する必要があるため、その解決は容易でない。
【0003】
さらに、胃潰瘍治療剤として治療上必要とされるポラプレジンクの成人の1回投与量は75mgと比較的多量だが、服薬の利便性などを考慮すると口腔内崩壊錠中の有効成分含量を高く設定せざるを得ない。実際、市販されている口腔内崩壊錠も錠剤重量の50%以上が有効成分である。しかしながら、ポラプレジンクのような金属錯体化合物を大量に含む錠剤の製造は、工業生産する上で打錠障害の発生など深刻なトラブルが予想される。
【0004】
ポラプレジンクなどの亜鉛化合物を含む錠剤に関する技術としては以下のようなものが知られている。
【0005】
特許文献1には、亜鉛塩やポラプレジンク及び他の亜鉛錯体を含有する栄養補給物が開示されているが、口腔内崩壊錠に関する記載がなく、錠剤硬度や崩壊性については何ら検討されていない。また、各製剤の詳細な製造方法や、製造工程中に起こりうるトラブルに関する記載もない。
【0006】
特許文献2には、亜鉛化合物の味改善のために、アミノ酸とアスコルビン酸化合物を含有するトローチが開示されている。また、特許文献3には、同様の目的で、高甘味度甘味料、糖アルコール、有機酸を含有する亜鉛製剤が開示されている。しかしながら、いずれの文献も亜鉛化合物の味に焦点を絞っており、さらに1製剤当たりに含まれる亜鉛化合物の量は少量である。また、口腔内で長時間にわたり残留する製剤に関する技術であるため、口腔内における速やかな崩壊性は担保出来ていない。
【0007】
以上の通り、ポラプレジンクの口腔内崩壊錠の製造においては、硬度などの製剤物性、不快な味など、種々の問題を解決する必要があり、そのような口腔内崩壊錠は従来知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】再公表WO01/091762公報
【特許文献2】特開2000−86522号公報
【特許文献3】特開2007−31292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、湿度条件下においても良好な錠剤硬度が維持されるポラプレジンク含有口腔内崩壊錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ポラプレジンクと有機酸を含む組成物を練合造粒することにより、湿度条件下で一定期間放置した後でも良好な錠剤硬度が維持される口腔内崩壊錠が得られること、さらに、打錠障害などのトラブルが発生することなく、円滑に口腔内崩壊錠を製造しうることを見いだした。
【0011】
すなわち、本発明の特徴は以下の通りである。
〔1〕練合造粒法により得られる造粒物を含むポラプレジンク含有口腔内崩壊錠であって、該造粒物がポラプレジンクと有機酸を含むことを特徴とする口腔内崩壊錠。
〔2〕有機酸がクエン酸、酒石酸、リンゴ酸から選択される〔1〕記載の口腔内崩壊錠。
〔3〕ポラプレジンク含有口腔内崩壊錠を製造する方法であって、ポラプレジンクと有機酸を含む組成物を練合造粒する工程を含むことを特徴とする方法。
〔4〕ポラプレジンク含有口腔内崩壊錠を製造する方法であって、ポラプレジンクと有機酸を含む組成物を練合造粒し、得られた該造粒物を含む組成物をさらに練合造粒する工程を含むことを特徴とする方法。
〔5〕有機酸がクエン酸、酒石酸、リンゴ酸から選択される〔3〕乃至〔4〕記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、十分な錠剤硬度を有するポラプレジンク含有口腔内崩壊錠が得られる。この口腔内崩壊錠は、湿度条件下にて一定期間放置した後でもほとんど硬度が低下しないため、自動分包機を使用することが出来る。また、亜鉛錯体化合物であるポラプレジンクを高含量で含んでいても、スティッキングなどの打錠障害が抑制される。本発明の口腔内崩壊錠の製造工程では、特殊な機器を必要とせず、通常用いられる装置で製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(口腔内崩壊錠の構成成分)
本発明の口腔内崩壊錠を構成する成分について、以下詳細に説明する。
【0014】
本発明に用いる薬剤はポラプレジンクである。本発明の口腔内崩壊錠中におけるポラプレジンクの含有量は、錠剤全量の30〜80重量%、より好ましくは40〜70重量%で調製するのが良い。なお、本発明の錠剤を胃潰瘍治療剤として用いる場合、成人の1回投与量にして75mgが必要であることから、本発明の口腔内崩壊錠中におけるポラプレジンクの含有量は、1錠当たり75mgとなるように調製するのが望ましい。
【0015】
本発明に用いる有機酸は、医薬上許容される非毒性のもので、例えばアジピン酸、アスコルビン酸、アミノ酸、イソクエン酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、リンゴ酸、糖酸などが挙げられるが、このうちクエン酸、酒石酸、リンゴ酸が好適である。この有機酸の配合量は、ポラプレジンク75重量部に対して、5重量部より少なく、好ましくは0.1〜3重量部、より好ましくは1〜2重量部とするのが良い。
【0016】
有機酸以外の添加剤の種類は特に限定されず、賦形剤、崩壊剤、結合剤、甘味剤、矯味剤、その他必要な添加剤を適宜組み合わせて使用することが出来るが、口当たりなどを考慮すると水溶性もしくは水親和性のものを含むのが好ましい。
【0017】
賦形剤としては、乳糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、シクロデキストリン、トウモロコシデンプン、蔗糖、結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウムなどを適宜組み合わせて使用することができる。
【0018】
崩壊剤としては、結晶セルロース、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、各種デンプンなどを含むが、このうちクロスポビドンが好適である。
【0019】
結合剤は、糖類や水溶性高分子が選択され得るが、このうちポリビニルピロリドン、又は、ポリビニルアルコールが望ましい。
【0020】
甘味剤としては、例えば、マンニトール、デンプン糖、還元麦芽糖水あめ、ソルビット、砂糖、果糖、乳糖、蜂蜜、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、サッカリン、甘草およびその抽出物、グリチルリチン酸、甘茶、アスパルテーム、ステビア、ソーマチン、アセスルファムK、スクラロースなどが挙げられるが、特にスクラロースを用いると、口中に入れた後、甘みの立ち上がりが早く、ポラプレジンク特有の収斂味や渋みが軽減されるため、好適である。
【0021】
(口腔内崩壊錠の製造方法)
本発明の口腔内崩壊錠は、以下の工程に従って製造することが可能である。
【0022】
〔工程1〕
ポラプレジンクを有機酸と共に練合造粒し、造粒物を得る。その際、崩壊剤と共に混練するのが望ましい。この際用いる造粒液の溶媒としては、水、エタノール、その混合溶媒などが挙げられるが、可能ならば有機酸を溶媒に溶解して用いるのが望ましい。得られた造粒物は常法により乾燥、整粒する。
【0023】
〔工程2〕
工程1で得られた造粒物に、賦形剤、崩壊剤、結合剤、甘味剤、矯味剤、その他必要な添加剤を適宜組み合わせて加え、さらに練合造粒し、造粒物を得る。この際用いる造粒液の溶媒としては、水、エタノール、その混合溶媒などが挙げられるが、水/エタノール混液を用いると、崩壊性が改善されるため好ましい。得られた造粒物は常法により乾燥、整粒する。
【0024】
〔工程3〕
最後に、工程2で得られた造粒物に、香料、滑沢剤、その他必要な添加剤を適宜組み合わせて加え、混合した後打錠する。
【0025】
上記の他、本発明の口腔内崩壊錠の製造は、上記の工程1及び工程2を併せて、ポラプレジンク、有機酸、崩壊剤、賦形剤、結合剤、甘味剤、矯味剤、その他必要な添加剤を一度に練合造粒し、得られた造粒物を常法により乾燥、整粒する工程に置換することも可能である。その場合、練合造粒で用いる造粒液の溶媒としては、水、エタノール、その混合溶媒などが挙げられるが、水/エタノール混液を用いると、崩壊性が改善されるため好ましい。
【0026】
上記方法の各工程に使用する装置は全て、医薬品の製造に使用しうるものであれば特に制限はなく、慣用される装置により作業が可能である。例えば、本発明における造粒は、練合造粒法で行うが、用いる撹拌造粒装置としては、ハイスピードミキサー(深江パウテック)、バーチカルグラニュレーター(パウレック)、品川ミキサー(品川工業所)等が挙げられる。打錠装置としては、単発打錠機、ロータリー打錠機(株式会社菊水製作所)等が挙げられる。乾燥装置、整粒装置、混合装置、その他必要となる装置についても、慣用される装置を適宜選択し、使用することが出来る。
【実施例】
【0027】
以下に試験例、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、硬度は、シュロイニゲル硬度計(Dr.Schleuniger Pharmatron AG)を用いて測定した。崩壊時間は、試験液として精製水を用い、第十五改正日本薬局方崩壊試験法に準ずる方法で測定した。
【0028】
(試験例1)
湿度条件下において錠剤の硬度低下を生じず、口溶けも良好なポラプレジンク口腔内崩壊錠を得る方法を探索するため、練合造粒法、直打法、流動層造粒法を以下の手順で比較した。
【0029】
・サンプル−1(練合造粒法)
ポラプレジンク75.0重量部、D−マンニトール9.9重量部、パーフィラー101(登録商標、フロイント産業)28.0重量部、クロスポビドン10.0重量部、アスパルテーム1.0重量部を、ポリビニルピロリドン4.0重量部の水溶液により、乳鉢で練合造粒し、ミニジェットオーブン(富山産業)にて60℃で乾燥した後、篩(22号)で整粒した。
整粒した造粒物に、l−メントール0.1重量部、ステアリン酸マグネシウム2.0重量部をビニール袋にて混合したものを、単発打錠機にて打錠圧力約500kgで打錠し、重量130mgの口腔内崩壊錠を製した。
【0030】
・サンプル−2(練合造粒法)
サンプル−1の手順の内、ポリビニルピロリドン4.0重量部の水溶液をポリビニルピロリドン4.0重量部の水/エタノール=1/1(w/w)溶液とする他は同じ手順で錠剤を製した。
【0031】
・サンプル−3(直打法)
ポラプレジンク75.0重量部、D−マンニトール9.9重量部、パーフィラー101(登録商標、フロイント産業)28.0重量部、クロスポビドン10.0重量部、アスパルテーム1.0重量部、ポリビニルピロリドン4.0重量部、l−メントール0.1重量部、ステアリン酸マグネシウム2.0重量部をビニール袋にて混合したものを、単発打錠機にて打錠圧力約500kgで打錠し、重量130mgの口腔内崩壊錠を製した。
【0032】
・サンプル−4(流動層造粒法)
ポラプレジンク75.0重量部、D−マンニトール9.9重量部、パーフィラー101(登録商標、フロイント産業)28.0重量部、クロスポビドン10.0重量部、アスパルテーム1.0重量部を、ポリビニルピロリドン4.0重量部の水溶液により、流動層造粒機(FLO−mini、フロイント産業)で流動層造粒し、ミニジェットオーブン(富山産業)にて60℃で乾燥した後、篩(22号)で整粒した。
整粒した造粒物に、l−メントール0.1重量部、ステアリン酸マグネシウム2.0重量部をビニール袋にて混合したものを、単発打錠機にて打錠圧力約500kgで打錠し、重量130mgの口腔内崩壊錠を製した。
【0033】
サンプル−1乃至サンプル−4の処方はいずれも表1の通りである。
【表1】

【0034】
各錠剤のイニシャルの錠剤硬度、崩壊時間、口腔内崩壊時間、湿度条件下(25℃、75%RH)で1週間放置した後の錠剤硬度を測定した結果を表2に示す。
【表2】

【0035】
結果、練合造粒法により製した錠剤であるサンプル−1及びサンプル−2において、湿度条件下における錠剤硬度の低下が抑制されていた。このうち、サンプル−2のほうが、崩壊性が良好であった。この結果から、打錠末中の造粒物は、水/エタノール混液を練合溶媒として用いて練合造粒法で製することにした。
【0036】
この試験結果から、練合造粒法により錠剤硬度の低下が抑制されたポラプレジンク含有口腔内崩壊錠を得られることが判明したものの、いずれのサンプル錠剤でも打錠時に深刻なスティッキングが発生した。これは、ポラプレジンクの強い付着性に起因するものと考えられたため、ポラプレジンク原薬の表面を改質することとし、その処理工程で使用する添加剤(主薬処理用添加剤)を次の試験例2にて探索した。
【0037】
(試験例2)
ポラプレジンク原薬を種々の添加剤と練合する工程を加えて、複数の錠剤を作成し、スティッキングの抑制に有効な添加剤(主薬処理用添加剤)を探索した。主薬処理用添加剤は、経口錠剤に繁用されるものを候補として選択した。
各サンプル、対照の調製は以下の手順に従った。
【0038】
・各サンプル
〔工程1〕
ポラプレジンク75.0重量部、クロスポビドン5.0重量部、種々の主薬処理用添加剤5.0重量部を精製水により(主薬処理用添加剤が水溶性である場合はその水溶液により)、乳鉢で練合造粒し造粒物を得た。得られた造粒物はミニジェットオーブン(富山産業)にて60℃で乾燥した後、篩(22号)で整粒した。
〔工程2〕
工程1で整粒した造粒物85.0重量部、D−マンニトール31.9重量部、クロスポビドン5.0重量部、アスパルテーム1.0重量部を、精製水により乳鉢で練合造粒し造粒物を得た。得られた造粒物はミニジェットオーブン(富山産業)にて60℃で乾燥した後、篩(22号)で整粒した。
〔工程3〕
工程2で整粒した造粒物、l−メントール0.1重量部、ステアリン酸マグネシウム2.0重量部をビニール袋にて混合したものを、単発打錠機にて打錠圧力約600kgで打錠し、重量130mgの口腔内崩壊錠を製した。
【0039】
・対照
上記の各サンプルの調製手順のうち、工程1において主薬処理用添加剤は加えず精製水で練合する点、工程2においてD−マンニトールを36.9重量部とする点以外は、同じ手順で錠剤を製した。
【0040】
各サンプル、対照の処方は表3の通りである。
【表3】

【0041】
各錠剤の打錠時のスティッキングの程度を表4に示す。
なお、以降のスティッキングの程度は、5回打錠後の杵表面を目視観察し、次のように評価した。
− :杵へほとんど付着しない
± :杵中央が白く曇る
+ :杵全面が白く曇る
++:杵全面が白く曇り、粉末が固着
【表4】

【0042】
種々の主薬処理用添加剤を試した結果、ケイ酸類を用いたサンプルでは打錠障害が悪化し、それ以外の添加剤を用いたサンプルでスティッキングが改善した。
しかし、有機酸塩であるクエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウムを用いた錠剤は、口腔内崩壊時間が1分以上であった上、湿度条件下(25℃、75%RH)で1週間放置すると著しく錠剤硬度が低下した(クエン酸ナトリウムは3.5kgから1.9kg、酒石酸ナトリウムは4.7kgから2.1kg)。
また、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEを用いた錠剤は、口中に入れた後プラスチックのような臭みが感じられ、口腔内崩壊錠には不向きであった。
一方、有機酸を用いたサンプルでは、上記のような現象が生じることなく、打錠時のスティッキングが改善された。
以上から、ポラプレジンク含有口腔内崩壊錠の打錠時のスティッキングを抑制するためには、ポラプレジンク原薬を有機酸と練合する処理を施すことが有効であることが示された。
【0043】
(試験例3)
有機酸を使用したポラプレジンク含有口腔内崩壊錠の製造方法を、以下の手順により、検討した。
【0044】
〔工程1〕(主薬処理物の製造)
ポラプレジンク75.0重量部、クロスポビドン5.0重量部を、クエン酸2.0重量部の水溶液により、撹拌練合造粒装置(バーチカルグラニュレーター)を用いて練合造粒し造粒物を得た。得られた造粒物は棚式乾燥機にて60℃で乾燥した後、パワーミル(富士パウダル社、スクリーン1.5mm)で整粒した(主薬処理物)。
この主薬処理物は、実施例1、比較例1及び2で使用した。
【0045】
・実施例1
〔工程2〕
工程1で得られた主薬処理物82重量部、D−マンニトール30.25重量部、結晶セルロース6.5重量部、クロスポビドン7.0重量部、スクラロース0.5重量部を加え、ポリビニルピロリドン1.0重量部の水/エタノール=1/1(w/w)溶液により、撹拌練合造粒装置(ハイスピードミキサー)で練合造粒し造粒物を得た。得られた造粒物は棚式乾燥機にて55℃で乾燥した後、パワーミル(富士パウダル社、スクリーン1.5mm)で整粒した。
〔工程3〕
工程2で整粒した造粒物、軽質無水ケイ酸0.65重量部、l−メントール0.1重量部、ステアリン酸マグネシウム2.0重量部をV型混合機にて混合したものを、単発打錠機にて打錠圧力約600kgで打錠し、重量130mgの口腔内崩壊錠を製した。
【0046】
・比較例1
工程1で得られた主薬処理物82重量部、D−マンニトール30.25重量部、結晶セルロース6.5重量部、クロスポビドン7.0重量部、スクラロース0.5重量部、ポリビニルピロリドン1.0重量部、軽質無水ケイ酸0.65重量部、l−メントール0.1重量部、ステアリン酸マグネシウム2.0重量部をV型混合機にて混合したものを、単発打錠機にて打錠圧力約600kgで打錠し、重量130mgの口腔内崩壊錠を製した。
【0047】
・比較例2
工程1で得られた主薬処理物とは別途、D−マンニトール30.25重量部、結晶セルロース6.5重量部、クロスポビドン7.0重量部、スクラロース0.5重量部を、ポリビニルピロリドン1.0重量部の水/エタノール=1/1(w/w)溶液により、撹拌練合造粒装置(ハイスピードミキサー)で練合造粒し造粒物を得た。得られた造粒物は棚式乾燥機にて55℃で乾燥した後、パワーミル(富士パウダル社、スクリーン1.5mm)で整粒した。
整粒した造粒物、主薬処理物82重量部、軽質無水ケイ酸0.65重量部、l−メントール0.1重量部、ステアリン酸マグネシウム2.0重量部をV型混合機にて混合したものを、単発打錠機にて打錠圧力約600kgで打錠し、重量130mgの口腔内崩壊錠を製した。
【0048】
各錠剤の処方はいずれも表5の通りである。
【表5】

【0049】
各錠剤の打錠時のスティッキングの程度、イニシャルの錠剤硬度、崩壊時間、口腔内崩壊時間、湿度条件下(25℃、75%RH)で1週間放置した後の錠剤硬度を表6に示す。
【表6】

【0050】
結果、本発明による実施例1は、スティッキングが解消され、イニシャル硬度、湿度条件下で1週間放置した後の硬度、崩壊性、いずれも良好であった。
主薬処理物と各種添加剤の粉末混合物を打錠した比較例1では、湿度条件下で1週間放置した後の硬度が著しく低下した。
比較例2のように主薬処理物と各種添加剤の練合造粒物を別々に製し、それらを混合する方法では、打錠障害が悪化することが判明した。
【0051】
(実施例2、実施例3)
〔工程1〕
ポラプレジンク75.0重量部、クロスポビドン5.0重量部を、クエン酸1.0重量部(実施例2)又は2.0重量部(実施例3)の水溶液により、撹拌練合造粒装置(品川ミキサー)で練合造粒し造粒物を得た。得られた造粒物は棚式乾燥機にて55℃で乾燥した後、パワーミル(富士パウダル社、スクリーン1.5mm)で整粒した。
〔工程2〕
工程1で整粒した造粒物81.0重量部(実施例2)又は82.0重量部(実施例3)、D−マンニトール31.25重量部(実施例2)又は30.25重量部(実施例3)、結晶セルロース6.5重量部、クロスポビドン7.0重量部、スクラロース0.5重量部を、ポリビニルピロリドン1.0重量部の水/エタノール=1/1(w/w)溶液により、撹拌練合造粒装置(品川ミキサー)で練合造粒し造粒物を得た。得られた造粒物は棚式乾燥機にて55℃で乾燥した後、パワーミル(富士パウダル社、スクリーン1.5mm)で整粒した。
〔工程3〕
工程2で整粒した造粒物、軽質無水ケイ酸0.65重量部、l−メントール0.1重量部、ステアリン酸マグネシウム2.0重量部をV型混合機にて混合したものを、ロータリー打錠機にて打錠圧力約600kgで打錠し、重量130mgの口腔内崩壊錠を製した。
【0052】
実施例2及び実施例3の打錠時のスティッキングの程度、イニシャルの錠剤硬度、崩壊時間、口腔内崩壊時間、湿度条件下(25℃、75%RH)で1週間放置した後の錠剤硬度を表7に示す。
【表7】

【0053】
結果、いずれの錠剤もスティッキングが改善された。また、崩壊性を損ねることなく、十分な錠剤硬度が得られ、湿度条件下で1週間放置した後も硬度は低下しなかった。
【0054】
(実施例4)
〔工程1〕
ポラプレジンク75.0重量部、クロスポビドン5.0重量部を、酒石酸2.0重量部の水溶液により、乳鉢で練合造粒し造粒物を得た。得られた造粒物はミニジェットオーブン(富山産業)にて55℃で乾燥した後、篩(22号)で整粒した。
〔工程2〕
工程1で整粒した造粒物82.0重量部、D−マンニトール30.25重量部、結晶セルロース6.5重量部、クロスポビドン7.0重量部、スクラロース0.5重量部を、ポリビニルピロリドン1.0重量部の水/エタノール=1/1(w/w)溶液により、乳鉢で練合造粒し造粒物を得た。得られた造粒物はミニジェットオーブン(富山産業)にて55℃で乾燥した後、篩(22号)で整粒した。
〔工程3〕
工程2で整粒した造粒物、軽質無水ケイ酸0.65重量部、l−メントール0.1重量部、ステアリン酸マグネシウム2.0重量部をビニール袋にて混合したものを、単発打錠機にて打錠圧力約600kgで打錠し、重量130mgの口腔内崩壊錠を製した。
【0055】
打錠時のスティッキングの程度、イニシャルの錠剤硬度、崩壊時間、口腔内崩壊時間、湿度条件下(25℃、75%RH)で1週間放置した後の錠剤硬度を表8に示す。
【表8】

【0056】
結果、有機酸として酒石酸を用いた錠剤もスティッキングが改善された。また、崩壊性を損ねることなく、十分な錠剤硬度が得られ、湿度条件下で1週間放置した後も良好な硬度が維持されていた。
【0057】
(実施例5)
ポラプレジンク75.0重量部、クロスポビドン12.0重量部、クエン酸2.0重量部、D−マンニトール30.25重量部、結晶セルロース6.5重量部、スクラロース0.5重量部を、ポリビニルピロリドン1.0重量部の水/エタノール=1/1(w/w)溶液により、撹拌練合造粒装置(ハイスピードミキサー)で練合造粒し造粒物を得た。得られた造粒物は棚式乾燥機にて55℃で乾燥した後、パワーミル(富士パウダル社、スクリーン1.5mm)で整粒した。
整粒した造粒物、軽質無水ケイ酸0.65重量部、l−メントール0.1重量部、ステアリン酸マグネシウム2.0重量部をV型混合機にて混合したものを、単発打錠機にて打錠圧力約600kgで打錠し、重量130mgの口腔内崩壊錠を製した。
【0058】
その結果、打錠時のスティッキングはほとんど認められなかった。また、得られた錠剤のイニシャルの錠剤硬度は4.5kg、湿度条件下(25℃、75%RH)で1週間放置した後の錠剤硬度は4.7kgであり、良好な錠剤硬度が維持されることが判明した。
【0059】
(比較例3)
〔工程1〕
ポラプレジンク75.0重量部、クロスポビドン5.0重量部を、リン酸2.0重量部の水溶液により、乳鉢で練合造粒し造粒物を得た。得られた造粒物はミニジェットオーブン(富山産業)にて55℃で乾燥した後、篩(22号)で整粒した。
〔工程2〕
工程1で整粒した造粒物82.0重量部、D−マンニトール30.25重量部、結晶セルロース6.5重量部、クロスポビドン7.0重量部、スクラロース0.5重量部を、ポリビニルピロリドン1.0重量部の水/エタノール=1/1(w/w)溶液により、乳鉢で練合造粒し造粒物を得た。得られた造粒物はミニジェットオーブン(富山産業)にて55℃で乾燥した後、篩(22号)で整粒した。
〔工程3〕
工程2で整粒した造粒物、軽質無水ケイ酸0.65重量部、l−メントール0.1重量部、ステアリン酸マグネシウム2.0重量部をビニール袋にて混合したものを、単発打錠機にて打錠圧力約600kgで打錠し、重量130mgの口腔内崩壊錠を製した。
【0060】
打錠時のスティッキングの程度、イニシャルの錠剤硬度、崩壊時間、口腔内崩壊時間、湿度条件下(25℃、75%RH)で1週間放置した後の錠剤硬度を表9に示す。
【表9】

【0061】
結果、ポラプレジンクを無機酸であるリン酸と練合すると、打錠時のスティッキングはある程度改善されたものの、口腔内崩壊時間が55秒と長く、崩壊性が悪化することが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明で得られるポラプレジンク含有口腔内崩壊錠は、湿度条件下で放置しても良好な硬度が維持されるため、運搬や保管、調剤時において取扱いやすい。さらに、打錠障害が抑制されているため、大量生産しても品質がばらつくことがなく、安定して製剤を供給出来る。また、特殊な機器を必要とせず、通常用いられる装置で製造することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
練合造粒法により得られる造粒物を含むポラプレジンク含有口腔内崩壊錠であって、該造粒物がポラプレジンクと有機酸を含むことを特徴とする口腔内崩壊錠。
【請求項2】
有機酸がクエン酸、酒石酸、リンゴ酸から選択される請求項1記載の口腔内崩壊錠。
【請求項3】
ポラプレジンク含有口腔内崩壊錠を製造する方法であって、ポラプレジンクと有機酸を含む組成物を練合造粒する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
ポラプレジンク含有口腔内崩壊錠を製造する方法であって、ポラプレジンクと有機酸を含む組成物を練合造粒し、得られた該造粒物を含む組成物をさらに練合造粒する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
有機酸がクエン酸、酒石酸、リンゴ酸から選択される請求項3乃至4記載の方法。

【公開番号】特開2011−1324(P2011−1324A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147200(P2009−147200)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000209049)沢井製薬株式会社 (24)
【Fターム(参考)】