説明

ポリ−アルファ−オレフィン添加剤を含む改善されたモノビニリデン芳香族ポリマー組成物

(A)ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー(例えばHIPS)、および(B)40℃で動的粘度値約40〜約500センチポイズ(cP)を有する特定のポリ−アルファ−オレフィン(PAO)(例えばヘキセン、オクテン、デセン、ドデセンおよび/またはテトラデセンのオリゴマー)を含む組成物は、環境ストレスクラック耐性、耐衝撃性および耐熱性の、このようなPAOを有さない組成物との比較での改善された組合せを示す。該組成物は、物品(例えば冷蔵庫の内張りおよび食品パッケージであって種々の食物が含有する油と接触するもの)の製造において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照の記載
本件は、米国仮出願第61/098,356号(2008年9月19日出願)の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーを含む組成物に関する。一側面において、本発明は、比較的低粘度のポリ−アルファ−オレフィン(PAO)と混合されたゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーを含む組成物に関し、一方、別の側面において、本発明は、低粘度PAOと混合されたゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーを製造する方法に関する。更に別の側面において、本発明は、少量のPAOをポリマーと混合することによって、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーを含む組成物の環境ストレスクラック耐性(ESCR)を増大させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
高耐衝撃性(すなわち、ゴム変性された)ポリスチレン(HIPS)は、多くの用途(例えば冷蔵庫の内張りならびに食品および飲料のパッケージ容器等)において使用される一般的なゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーである。冷蔵庫の内張りおよび食品パッケージの両者で、食物が含有する油および油脂に対する耐性は持続性能を確保するために重大である。油および油脂(例えばコーン油、パーム油等)に対するこの耐性は、一般的には環境ストレスクラック耐性(ESCR)試験によって試験する。このとき物品試験体は、選択した油または油脂の中に緊張下におき、そして試験体の引張特性を所定時間間隔で測定する。典型的には耐衝撃性によって測定される強靭性と、耐熱性との良好な特性の組合せもまた、これらおよび他の用途における良好な性能のために重要である。
【0004】
明らかな理由のために、ESCR性能ならびにHIPSおよび同様の物質の全体的な特性の組合せの更新に対する継続する関心が存在する。現在の方法としては、ポリマーの、ゴム量、ゴム形態(すなわち、より大きいゴム粒子サイズ、ゴム相体積等)、マトリクス分子量、および/またはマトリクス分子量分布の領域におけるポリマー改質が挙げられる。しかしこれらの選択は、ポリマーを製造および成形する方法における自由度を顕著に低下させ、そしてポリマー自体の品質を低下させる可能性がある。
【0005】
同一出願人による未公開PCT特許出願第US08/069969号(米国を指定する)において、モノビニリデン芳香族ポリマーにおける改善されたESCRが、エチレン量と動的粘度との間の特定の数学的な関係を特徴とするエチレンアルファ−オレフィンコポリマーによって与えられることが教示されている。
【0006】
HIPSポリマーのESCRを改善するための別の方法において、第US2004/0001962号は、ポリイソブチレン、少なくとも10炭素原子の特定の重合アルファ−オレフィン、アタクチックポリプロピレン、またはポリオレフィンコポリマーの使用(ミネラルオイルの任意の使用を伴う)を教示する。PAO添加剤(この文献では合成炭化水素という)の使用に関し、比較的高粘度のPAOを教示していると思われる。1つの点で、この文献は、99℃での粘度範囲200〜1000センチストークス(cSt)を教示し、別の点では、99℃で異なる粘度範囲100〜500センチポイズ(cP)(ASTM D−3236)を教示し、および更に別の点では、例示のPAOであって、製造元の製品情報によれば粘度が99℃で54cP(これは99℃での63cStと変換される)を有するものを使用すると考えられ、教示される両者の範囲の範囲外である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要約
本発明は、PAOがESCRおよびモノビニリデン芳香族ポリマーの全体的な物理特性のバランスを増大させ、そして典型的な重合方法において有用である能力が、PAOの動的粘度を基にする、という発見に基づく。ここで、本発明は、改善された物理特性の組合せを与えるPAO添加剤を有するモノビニリデン芳香族ポリマーを含む組成物、およびモノビニリデン芳香族ポリマーを含む組成物の物理特性の組合せを改善するための方法の両者を記載する。本発明の組成物は、改善された特性(例えばESCR、強靭性および耐熱性)の組合せを示し、そして典型的な市販品製造プロセスに対して、要求される動的粘度を特徴とするPAOを有さないモノビニリデン芳香族ポリマーを含む組成物と比べてより容易に適合する。
【0008】
よって、本発明の一態様は、(A)ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー、および(B)40℃で動的粘度(ASTM D−3236)約40〜約500センチポイズ(cP)を有する有効量のポリ−アルファ−オレフィン(PAO)、を含む組成物である。他の態様において、PAOは、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーおよびPAOの組合せ質量基準で少なくとも約0.1〜約10質量%、好ましくは少なくとも約1〜約7質量%の量で存在する。PAOの動的粘度は、40℃で好ましくは少なくとも約50cPであり、そして40℃で好ましくは約400cP以下である。一態様において、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーは、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)またはブタジエンゴム変性ポリ(スチレン−アクリロニトリル)(ABS)である。本発明の更なる態様において、PAOは、ヘキセン、オクテン、デセン、ドデセン、およびテトラデセンを含む群から選択される1種以上のアルファオレフィンモノマーを基にするオリゴマーであることができ;または、オリゴマーは、アルファオレフィンモノマーであるオクテン、デセン、およびドデセンの混合物を基にすることができ;またはこれは、デセンを含むアルファオレフィンモノマーの混合物を基にすることができ;またはこれは、ドデセンを含むアルファオレフィンモノマーの混合物を基にすることができる。
【0009】
本発明の一態様において、ISO 180/1Aに従って試験したときの組成物のノッチ付アイゾッド耐衝撃性は、PAOを含有しない基準サンプルと比べて少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%改善する。更なる態様において、本発明に係る、ISO 527−2の手順に従って試験したときの組成物は、ISO−4599の手順に従った1%緊張での7日間のコーン油への曝露後に、その元の伸長の30%超、好ましくは40%超、より好ましくは50%超を保持している。別の態様において、本発明に係る組成物から作製した試験体は、ASTM D−1525(120℃/時)の手順に従って試験したときに、ビカット耐熱温度102℃超を示す。
【0010】
別の態様において、本発明は、改善されたゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーを製造する方法であって、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーと、40℃にて動的粘度約40〜約500センチポイズ(cP)を有する有効量のPAOとを混合するステップを含む方法であり、ここで好ましくは、ポリマーをその構成モノマーの重合によって製造する前またはこれと同時に重合プロセスに添加することによって、PAOをゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーと混合する。別の態様において、本発明は、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーのESCRを改善する方法であって、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーと有効量のPAOとを混合するステップを含む方法であり、ここで好ましくは、ポリマーをその構成モノマーの重合によって製造する前またはこれと同時に重合プロセスに添加することによって、PAOをゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーと混合する。更なる態様において、本発明は、上記の1種以上の組成物を含む物品である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
好ましい態様の説明
始めに、本開示における数値範囲は、下側値および上側値によりそしてこれらを含む全ての値を、任意の下側値と任意の上側値との間が少なくとも2単位離れていることを条件に1単位の増分で包含するものとする。例として、組成の、物理的な、または他の特性(例えば分子量、粘度、メルトインデックス等)が100〜1,000である場合、全ての個別の値(例えば100、101、102等)および下位範囲(例えば100〜144、155〜170、197〜200等)が明白に列挙されていることが意図される。1未満の値を含有するか、または1よりも大きい端数を含有する範囲(例えば1.1、1.5等)について、1単位は、必要に応じて0.0001、0.001、0.01または0.1と考えられる。10よりも小さい1桁の数を含有する範囲(例えば1〜5)について、1単位は典型的には0.1と考えられる。これらは何を具体的に意図するかの例に過ぎず、そして下限値と上限値との間の数値の全ての可能な組合せは、本開示に明白に記載されると考えられる。数値範囲は本開示の中で、とりわけ、分子量、動的粘度、PAO(コ)モノマー中の炭素原子数、組成物中のPAOの量、および本発明のPAOおよび組成物の種々の特性、について与えられる。
【0012】
「ポリマー」は、同種または異種のいずれかのモノマーの重合によって得られる高分子化合物を意味する。総称のポリマーは、従って、用語ホモポリマー(通常、1種のみのモノマーから得られるポリマーを意味するために用いる)、および以下に定義する用語コポリマーおよびインターポリマーを網羅する。
【0013】
「コポリマー」、「インターポリマー」および類似の用語は少なくとも2つの異種のモノマーの重合によって得られるポリマーを意味する。これらの総称は、従来のコポリマーの定義,すなわち2つの異種のモノマーから得られるポリマー、およびコポリマーのより包括的な定義,すなわち2つよりも多い異種のモノマーから得られるポリマー,例えばターポリマー、テトラポリマー等の定義を包含する。
【0014】
「ブレンド」「ポリマーブレンド」および類似の用語は、2種以上の化合物、典型的には2種以上のポリマーの組成物を意味する。このようなブレンド物は、混和可能であってもそうでなくてもよい。このようなブレンド物は、相分離してもしなくてもよい。このようなブレンド物は1つ以上のドメイン構造(透過型電子顕微鏡、光散乱、X線散乱、または当該分野で公知の任意の他の方法により評価されるような)を含有してもしなくてもよい。本発明の文脈において、ブレンドは、モノビニリデン芳香族ポリマー(PAOを有するもの)の化学的および/または物理的なカップリングであって、例えば後者が前者にグラフトされるか、またはそうでなければ前者の中に組み入れられるものを包含する。
【0015】
「組成物」および類似の用語は、2種以上の成分の混合物またはブレンド物を意味する。本発明の1つの組成物は、モノマー、重合開始剤および任意の他の成分であってモノビニリデン芳香族ポリマーを形成するために必要または望ましいもの、の混合物であり、一方本発明の別の組成物は、モノビニリデン芳香族ポリマー、PAOおよび任意の他の成分(例えば添加剤)であって組成物の最終的な使用に必要または望ましいもの、を含む混合物である。
【0016】
「物品」および類似の用語は、本発明の組成物から形成される物体を意味する。物品としては、限定されないが、フィルム、繊維、シート構造、成形品(例えば電化製品および自動車の部品、ホース、冷蔵庫および他の内張り、衣類および履物の構成材、ガスケット等)であって任意の形成および/または成形のプロセス(例えば押出し成形、キャスト成形、射出成形、ブロー成形、熱形成等)によって形成されるものが挙げられる。
【0017】
「ESCR」は、国際基準ISO−4599に適合させて測定する。試験体は、ISO−527に適合させて引張試験用に成形する。試験手順は、1種または複数種の対象レジン(これらを測定する緊張下でコーン油中に浸漬する前および後)の試験体(棒)の引張特性(破断伸び)を測定することを必要とする。試験中の温度は23±2℃であり、そして対象レジンの試験棒サンプルを枠内にクランプ固定(これは1.0%緊張を適用する(0.5%緊張を適用する場合もある))する。試験棒は、枠内に緊張下で保持され、コーン油中に7日間浸かったままにする。規定時間後、棒をコーン油から取り出し、枠から取り外し、洗浄し、そして破断伸び(「Elong」)パーセントを測定する。前後の伸長試験結果から、保持パーセント(浸かった棒についての試験値に対しての)を算出し、そのサンプルについてのESCR性能の特性化に用いる。この特性保持値は、「環境ストレスクラック耐性」といい、そして以下に「ESCR1%緊張」と示す。一般的に成功または十分なESCR性能の尺度は、1%緊張で7日間浸漬曝露した試験体が、曝露していない試験体で測定される試験の引張特性の少なくとも10%、および好ましくは少なくとも約20%を保持することである。
【0018】
本発明の実施において用いるPAOは、少なくとも6炭素から約14炭素以下を有するアルファオレフィンから形成される低分子量ポリマー(「オリゴマー」ともいう)であり、ホモポリマーまたはこれらのモノマー単位の2種以上のコポリマーであることができるが、ポリマー組成物が以下に規定するPAO仕様に合致することを条件とする。本発明に従って用いるために好適な典型的なPAOは、少なくとも6個、好ましくは少なくとも8個、より好ましくは少なくとも10個の炭素原子、および最大20個、好ましくは18個、より好ましくは16個、および最も好ましくは最大14個の炭素原子を有するモノマー単位(すなわちモノマー)を含む。このようなPAOとしては、これらに限定するものではないが、モノマーのヘキセン、オクテン、デセン、ドデセンおよびテトラデセンの1種以上のオリゴマーが挙げられ、特に「コオリゴマー」(これらのモノマーの2種以上の混合物から得られるもの)が挙げられる。これらのモノマー混合物はしばしばモノマー製造プロセスにおいて製造される。これらのPAO製品は市販で入手可能であり、そして以下で更に議論するように一般的に当業者に公知である。好適なPAOとしては、デセンまたはデセンに富む流れ(「オリゴ−デセン」)を基にするオリゴマー、およびドデセンまたはドデセンに富む流れ(「オリゴ−ドデセン」)を基にするPAOが挙げられる。以下でより詳細に議論するように、2種以上のPAOのブレンド物もまた使用できるが、ブレンド組成物が以下に規定するPAO仕様に合致することを条件とする。
【0019】
本発明において使用するために好適なPAOの鍵となる特徴において、規定範囲の動的粘度を有するPAOが、産業的なモノビニリデン芳香族ポリマー重合プロセスにおける加工性ならびに得られるポリマーの物理特性および性能の最適化された組合せを与えることを我々は見出した。「加工性」は、PAOが室温で液体として重合プロセス中に取り扱われそして組み入れられることを意味する。
【0020】
ESCRにおける必要な改善を与えるために、好ましいPAOは、ASTM D−3236によって評価したときの40℃での動的粘度少なくとも40センチポイズ(cP)、好ましくは少なくとも42センチポイズ(cP)、より好ましくは少なくとも45センチポイズ(cP)、より好ましくは少なくとも48センチポイズ(cP)を有する。ESCRの改善を維持し、そしてモノビニリデン芳香族ポリマー製造において容易に加工可能にするために、好ましいPAOは40℃でASTM D−3236によって評価したときの動的粘度500cP未満、好ましくは450cP未満、より好ましくは400cP未満、およびより好ましくは375cP未満を有する。粘度は種々の温度で測定できるが、40℃で測定することが、本発明で用いるPAOについてのより良好な区別および分類を与えることを見出した。
【0021】
この技術分野の当業者に公知であるように、動的粘度は以下の手順に従って、Brookfield Laboratories DVII+ Viscometerおよび使い捨てアルミニウムサンプルチャンバーを用いて評価する(そしてこの理由で、ブルックフィールド粘度ということがある)。Spindle 18は、これらの粘度を測定するために最も良く用いられ;測定される粘度が、スピンドル仕様の範囲内であればSpindle SC−31もまた使用できる。サンプルをチャンバーに注ぎ入れ、次にこれをBrookfield Thermoselに挿入して所定位置に固定する。サンプルチャンバーは底部にノッチを有し、これは、スピンドルを挿入して回転させた際にチャンバーが転がらないようにBrookfield Thermoselの底部を固定する。サンプルチャンバーの頂部下で溶融したサンプルが約1インチ(約8グラムのレジン)になるまで、必要な温度までサンプルを加熱する。粘度計装置を下げてスピンドルをサンプルチャンバー内に浸ける。粘度計上のブラケットがThermosel上に並ぶまで降下を続ける。粘度計を入れて、トルク読みが30〜60%の範囲となる剪断速度で操作するように設定する。読み取りは、毎分で約15分間行うか、または値が安定するまで行い、この点で最終的な読み値を記録する。
【0022】
既定温度での動的粘度(Dynamic viscosity)値(cP単位)および動粘性率(Kinematic viscosity)値(cSt単位)は、該温度での物質の密度を用いて、以下の関係によって他方に変換できる:
動粘性率×密度=動的粘度
【0023】
本発明の目的および先行技術で示される粘度測定の比較のために、99℃で評価される粘度値は、本質的に同じであり、100℃で評価される値と正比例して比較可能であることが注目される。これは、38℃および40℃での測定についても言える。
【0024】
本発明に従って使用するのに好適であるPAOは、典型的には密度約0.83超〜約0.86グラム毎立方センチメートル(g/cm3)未満、好ましくは約0.84〜0.85g/cm3を15.6℃(60°F)にて有する。密度は、American Society for Testing and Materials(ASTM)法ASTM D−7042に従って評価される。
【0025】
本発明のPAOは、典型的には、ASTM D−97で評価される流動点−20℃未満、好ましくは−25℃未満、より好ましくは−30℃未満を有する。
【0026】
一般的に、本発明に従って使用するのに好適なPAOは公知であり、そして市販で入手可能である。これらは典型的には多段法を用いて製造される。これは構成ブロックとしてのエチレンで開始して、アルファオレフィン、またはより典型的にはアルファオレフィンモノマーの混合物、好ましくは主として該モノマーのうち1種を含有するもの、が得られる。このようなプロセスを典型的に設計して、モノマー(例えばオクテン、デセン、ドデセン、またはテトラデセン)のうち1種に「富む」流れを生成するが、より多くまたはより少なくエチレン単位を有する幾らかかの量のモノマーも生成し、混合物をもたらす。次いで、アルファオレフィン混合物を、従来のオレフィン重合法(例えばフリーラジカル、カチオン、メタロセン、ポストメタロセンまたは束縛構造触媒)を用いてオリゴマー化してポリ−アルファ−オレフィンを生成し、そして典型的には混合物中のモノマーのダイマー、トリマー、テトラマーおよびより高級のオリゴマーの混合物を与える。最も高い濃度を有するアルファオレフィンモノマー(すなわちモノマー混合物中で「リッチ」であるもの)は、本明細書で、PAOについて主要なモノマーまたはベースモノマーという。例えば、アルファオレフィンモノマー混合物がデセンに富む場合、PAOは、これが幾らかかの共オリゴマー化量の他のモノマー(例えばオクテン、ドデセンおよびテトラデセン)を含有するとしても、デセンオリゴマーまたはデセンPAOという。
【0027】
次いで、オリゴマーのこの混合物を蒸留してオリゴマーの分布の調整および特定製品切断品(これらの動的粘度によって指定されるもの)の製造が可能である。加えて、これらの高度に分岐したオリゴマーは、任意に水素化およびろ過できる。水素化を任意に用いて、化学的不活性が向上し酸化安定性が付加された最終製品を得ることができる。広範囲のPAO粘度が得られ、そして市販で入手可能であり、そして選択またはブレンドして所望粘度範囲内のPAOを得ることができる。
【0028】
本発明のPAOは、単独または1種以上の他のPAOとの組合せ(粘度、組成、不飽和度、調製の触媒方法等が互いに異なるPAOのブレンド物の形で)で使用できる。PAOが異なる粘度、流動点および/または密度の2種以上のPAOのブレンド物である場合、ブレンド物が上記で教示した1つまたは複数の範囲内の粘度値、流動点および/または密度を有する必要がある。
【0029】
PAOの組合せまたはブレンド物を用いる場合、これらは任意の反応器前、反応器内または反応器後のプロセスで共にブレンドできる。
【0030】
PAO成分は、本発明のモノビニリデン芳香族ポリマー中に、所望の物理特性(すなわち、ESCRについて10%、ノッチ付アイゾッド耐衝撃性について2%、降伏強さについて1%、およびビカット耐熱性について0.5%の改善)の少なくとも1つ、好ましくは2つの顕著な改善を与える「有効量」で組入れる。典型的には、この量は、モノビニリデン芳香族ポリマーおよびPAOの組合せ質量基準で、少なくとも約0.1質量%(wt%)、好ましくは少なくとも約0.3質量%、より好ましくは少なくとも約0.5質量%、より好ましくは少なくとも約1質量%、より好ましくは少なくとも約1.5質量%、およびより好ましくは少なくとも約2質量%(モノビニリデン芳香族ポリマーおよびPAOの組合せ質量基準)である。組成物中のPAOの最大量は広範囲に変化でき、そして更には経済性に働き他のいずれよりも利益を減少させるが、実施上の問題として、最大量は、モノビニリデン芳香族ポリマーおよびPAOの組合せ質量基準で典型的には約10質量%以下、より典型的には約7質量%以下、そして更により典型的には約5質量%以下である。
【0031】
モノビニリデン芳香族ポリマー
モノビニリデン芳香族ホモポリマーおよびコポリマー(個別におよび包括的に「ポリマー」または「コポリマー」という)は、モノビニリデン芳香族ポリマー(例えば米国特許第4,666,987号、第4,572,819号および第4,585,825号に記載されるもの)の重合により得られる。本発明の実施において用いるポリマーおよびコポリマーを製造するために好適なモノビニリデン芳香族モノマーは、好ましくは下記式:
【0032】
【化1】

【0033】
(式中、R’は水素またはメチルであり、Arは1〜3の芳香環を有する、アルキル、ハロまたはハロアルキルの置換を伴うまたは伴わない芳香環構造であり、任意のアルキル基は1〜6個の炭素原子を含有し、そしてハロアルキルはハロ置換されたアルキル基を意味する。)
のものである。好ましくは、Arはフェニルまたはアルキルフェニル(ここでフェニル環のアルキル基は1〜10個、好ましくは1〜8個およびより好ましくは1〜4個の炭素原子を含有する)であり、フェニルが最も好ましい。使用できる典型的なモノビニリデン芳香族モノマーとしては:スチレン、アルファ−メチルスチレン、ビニルトルエンの全異性体、特にパラビニルトルエン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等の全異性体、ならびにこれらの混合物が挙げられ、スチレンが最も好ましい。
【0034】
モノビニリデン芳香族モノマーは、1種以上のある範囲の他の共重合性モノマーと共重合できる。好ましいコモノマーとしては、ニトリルモノマー,例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびフマロニトリル;(メタ)アクリレートモノマー,例えばメチルメタクリレートまたはn−ブチルアクリレート;無水マレイン酸および/またはN−アリールマレイミド,例えばN−フェニルマレイミド、および共役ジエンおよび非共役ジエンが挙げられる。代表的なコポリマーとしては、スチレン−アクリロニトリル(SAN)コポリマーが挙げられる。コポリマーは、典型的には少なくとも約1質量%、好ましくは少なくとも約2質量%、およびより好ましくは少なくとも約5質量%(コポリマーの質量基準)の、コモノマーに由来する単位を含有する。典型的には、コモノマーに由来する単位の最大量は約40質量%、好ましくは約35質量%、およびより好ましくは約30質量%(コポリマーの質量基準)である。これらのホモポリマーまたはコポリマーは、1種以上の弾性ポリマーとブレンドまたはグラフトされて高耐衝撃性(すなわちゴム変性された)ポリスチレン(HIPS)およびブタジエンゴム変性ポリ(スチレン−アクリロニトリル)(ABS)レジンを生成する。
【0035】
本発明の実施において用いるモノビニリデン芳香族ポリマーの重量平均分子量(Mw)は広範囲に変化できる。機械強度の理由で、とりわけ、典型的には、Mwは少なくとも約100,000g/mol、好ましくは少なくとも約120,000g/mol、より好ましくは少なくとも約130,000g/mol、および最も好ましくは少なくとも約140,000g/molである、加工性の理由で、とりわけ、典型的には、Mwは約400,000またはそれ未満、好ましくは約350,000またはそれ未満、より好ましくは約300,000またはそれ未満、および最も好ましくは約250,000またはそれ未満である。
【0036】
Mwと同様、本発明の実施において用いるモノビニリデン芳香族ポリマーの数平均分子量(Mn)もまた広範囲に変化できる。繰り返すが機械強度の理由で、とりわけ、典型的には、Mnは少なくとも約30,000g/mol、好ましくは少なくとも約40,000g/mol、より好ましくは少なくとも約50,000g/mol、および最も好ましくは少なくとも約60,000g/molである。また、加工性の理由で、とりわけ、典型的には、Mnは約130,000g/molまたはそれ未満、好ましくは約120,000g/molまたはそれ未満、より好ましくは約110,000g/molまたはそれ未満、および最も好ましくは約100,000g/molまたはそれ未満である。
【0037】
MwおよびMnの値とともに、Mw/Mnの比(多分散性または分子量分布としても公知)は広範囲に変化できる。典型的には、この比は、少なくとも約2であり、そして好ましくは約2.3またはそれを超える。比は典型的には約4またはそれ未満、および好ましくは約3またはそれ未満である。MwおよびMnは、典型的にはゲル浸透クロマトグラフィによって較正用にポリスチレン標準を用いて評価する。
【0038】
本発明において使用するために好適なゴムは、ASTM D−756−52Tによって評価したときのガラス転移温度(Tg)約0℃以下、好ましくは約−20℃以下を有する任意の不飽和ゴムポリマーであることができる。Tgはポリマー物質が物理特性、例えば機械強度等、の急激な変化を示す温度または温度範囲である。Tgは示差走査熱量計(DSC)によって評価できる。
【0039】
好適なゴムとしては、これらに限定するものではないが、ジエンゴム、ジエンブロックゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)ゴム、エチレンコポリマーゴム、アクリレートゴム、ポリイソプレンゴム、ハロゲン含有ゴム、シリコーンゴムおよびこれらのゴムの2種以上の混合物が挙げられる。ゴム形成性モノマーと他の共重合性モノマーとのインターポリマーも好適である。好適なジエンゴムとしては、これらに限定するものではないが、共役1,3−ジエン、例えばブタジエン、イソプレン、ピペリレン、クロロプレン、またはこれらのジエンの2種以上の混合物が挙げられる。好適なゴムとしてはまた、共役1,3−ジエンのホモポリマーおよび共役1,3−ジエンと1種以上の共重合性モノエチレン性不飽和モノマーとのインターポリマー,例えばイソブチレンとイソプレンとのコポリマーが挙げられる。
【0040】
好ましいゴムは、ジエンゴム,例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリピペリレン、ポリクロロプレン等またはジエンゴム(すなわち1種以上の共役1,3−ジエンの任意のゴム状ポリマー)の混合物であり、1,3−ブタジエンが特に好ましい。このようなゴムとしては、ホモポリマーおよび1,3−ブタジエンと1種以上の共重合性モノマー,例えば上記のモノビニリデン芳香族モノマーとのコポリマーが挙げられ、スチレンが好ましい。好ましい1,3−ブタジエンのコポリマーは、少なくとも約30質量%、より好ましくは少なくとも約50質量%、更により好ましくは少なくとも約70質量%、および更により好ましくは少なくとも約90質量%の1,3−ブタジエンゴム、ならびに好ましくは約70質量%以下、より好ましくは約50質量%以下、更により好ましくは約30質量%以下、および更により好ましくは約10質量%以下のモノビニリデン芳香族モノマー、のブロックゴムまたはテーパードブロックゴムである。全て質量は1,3−ブタジエンコポリマーの質量基準である。
【0041】
本発明の使用のために好適なゴムは、好ましくは溶液粘度約5〜約300cP(スチレン中5質量%、20℃にて)の範囲およびムーニー粘度約5〜約100(ML1+4、100℃)のものである。
【0042】
本発明のゴム変性ポリマー中のゴムは、低減されたコストおよび良好な物理特性の組合せを維持する目的で、典型的には、ゴム変性ポリマーの質量基準で約40質量%またはそれ未満、好ましくは約25質量%またはそれ未満、より好ましくは約20質量%またはそれ未満、更により好ましくは約15質量%またはそれ未満、および最も好ましくは約10質量%またはそれ未満(ゴム変性ポリマーの質量基準)の量で存在する。本発明のゴム変性ポリマー中のゴムは、典型的には、既定の用途のために十分な強靭性および引張強度を与えるのに必要な量で存在する。十分な引張強度のための初期の尺度は、ISO 527−2に従って測定したときに少なくとも約10%、および少なくとも約20%の破断伸びパーセント値を示している。一般的に、ゴムは、ゴム変性ポリマーの質量基準で少なくとも約1質量%、好ましくは少なくとも約2質量%、より好ましくは少なくとも約3質量%、更により好ましくは少なくとも約4質量%、および最も好ましくは少なくとも約5質量%の量で存在する。典型的には、HIPS生成物はABS生成物よりも少ないゴムを含有する。
【0043】
本発明に係る組成物におけるゴム粒子は、十分な初期の強靭性および十分なESCRを与えるために、典型的には、体積平均径少なくとも約0.05マイクロメートル(μm)、好ましくは少なくとも約0.1μm、より好ましくは少なくとも約1μm、より好ましくは2μm超、および最も好ましくは少なくとも約3μm、および典型的には約10μmまたはそれ未満、好ましくは約7μmまたはそれ未満、および最も好ましくは約5μmまたはそれ未満を有する。本明細書で用いる体積平均ゴム粒子サイズまたは体積平均ゴム粒子径は、ゴム粒子内のモノビニリデン芳香族ポリマーの全ての閉塞を包含するゴム粒子の径を意味する。これらの範囲の粒子サイズは、典型的には、電気化学センシングゾーン法(例えばMultisizerTMブランドの装置,Beckman Coulter,Incにより提供)を用いて、または光散乱(Malvern Mastersizer,Beckman Coulter LS 230)を基にする測定法を用いて、測定できる。必要であれば、透過型電子顕微鏡分析を、ゴム粒子のサイズおよび形態の分析のために用いることができる。当業者は、異なるサイズ群のゴム粒子が、精度を最適化するために、ゴム粒子測定方法の何らかの選択または改変を必要とする場合があることを理解する。
【0044】
ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーを形成するための任意の一般的に周知なプロセスを用いることができるが、好ましいプロセスは、1種または複数種のモノビニリデン芳香族モノマー(およびいずれの任意のコモノマーも)の重合を基にして、複数の反応器および/または反応ゾーン(直列に接続されている)を用いてゴムの存在下でポリマーを形成する。当業者に公知であるように、これらの反応器/ゾーンは、同じまたは異なる開始剤/反応物質を使用でき、および/または異なる条件(例えば、異なる反応物質濃度、温度、圧力等)で操作して、モノビニリデン芳香族ポリマーにおけるある範囲の特徴および多様性を与えることができる。このプロセスは、ゴム粒子の分散体(好ましくは、モノビニリデン芳香族ポリマーマトリクス中でモノビニリデン芳香族ポリマーとグラフトされている)を含む望ましいゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー組成物を与える。
【0045】
PAOは、モノビニリデン芳香族ポリマー中に、任意の反応器前、反応器内、または反応器後の混合またはブレンドのプロセスによって組合せまたはブレンドできる。PAOをゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーと混合する反応器前または反応器内のブレンドプロセス(ポリマーをその構成モノマーの重合によって調製する前またはこれと同時に重合プロセス中に添加することによる)は、反応器後のブレンドプロセスよりも好ましい。本発明の一態様において、上記の1種または複数種のPAO成分は、液体としてモノビニリデン芳香族ポリマー重合プロセス中に、好ましくはモノマー溶液中に、溶解したゴム供給物溶液に、または他には重合反応の開始の間もしくは好ましくは前に、添加する。
【0046】
代替として、PAO成分は、モノビニリデン芳香族ポリマーレジン中に、他の添加剤のために用いるような任意の一般的に周知の混合法によって、供給できる。
【0047】
フィラーおよび添加剤
本発明の組成物は、1種以上のフィラーおよび/または添加剤を、これらが、そうでなければ得られる所望の特性の組合せに負に作用しない限りにおいて更に含むことができ、好ましくは、これらは特性の1つ以上を改善する。例えば、ミネラルオイルは、HIPSのESCRを改善できるような、HIPSのための添加剤の1つである。これらの物質は既知量で従来の装置および方法を用いて添加する。他の代表的なフィラーとしては、タルク、炭酸カルシウム、有機クレイ、ガラス繊維、大理石末、セメント末、長石、シリカまたはガラス、ヒュームドシリカ、シリケート、アルミナ、種々のリン化合物、臭化アンモニウム、三酸化アンチモン、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、硫酸バリウム、シリコーン、アルミニウムシリケート、カルシウムシリケート、酸化チタン、ガラスマイクロスフィア、チョーク、マイカ、クレイ、珪灰石、アンモニウムオクタモリブデート、膨張化合物、膨張性黒鉛、およびこれらの物質の2種以上の混合物が挙げられる。フィラーは、種々の表面コーティングまたは表面処理(例えばシラン、脂肪酸等)を保持しまたは含有することができる。
【0048】
更に他の添加剤としては、難燃剤,例えばハロゲン化有機化合物が挙げられる。組成物はまた、添加剤,例えば酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール,例えばIRGANOXTM1076,Ciba Specialty Chemicalsの登録商標)、型離型剤、ミネラルオイル以外の加工助剤,例えば他の油、有機酸(例えばステアリン酸、有機酸の金属塩)、着色剤または顔料を、これらが本発明の組成物の所望の物理的または機械的な特性に干渉しない範囲で含有できる。
【0049】
他のポリマー
本発明の組成物は、モノビニリデン芳香族ポリマーおよび低分子量PAO以外のポリマーを含むことができる。代表的な他のポリマーとしては、これらに限定するものではないが、エチレンポリマー(例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、均一に分岐した直鎖状エチレンポリマー、実質的に直鎖状のエチレンポリマー、グラフト変性エチレンポリマー、エチレン酢酸ビニルインターポリマー、エチレンアクリル酸インターポリマー、エチレン酢酸エチルインターポリマー、エチレンメタクリル酸インターポリマー、エチレンメタクリル酸アイオノマー等)、従来のポリプロピレン(例えば、ホモポリマーポリプロピレン、ポリプロピレンコポリマー、ランダムブロックポリプロピレンインターポリマー等)、ポリエーテルブロックコポリマー(例えばPEBAX)、ポリフェニレンエーテル、コポリエステルポリマー、ポリエステル/ポリエーテルブロックポリマー(例えばHYTEL)、エチレン一酸化炭素インターポリマー(例えば、エチレン/一酸化炭素(ECO)コポリマー、エチレン/アクリル酸/一酸化炭素(EAACO)ターポリマー、エチレン/メタクリル酸/一酸化炭素(EMAACO)ターポリマー、エチレン/酢酸ビニル/一酸化炭素(EVACO)ターポリマーおよびスチレン/一酸化炭素(SCO))、ポリエチレンテレフタレート(PET)、塩素化ポリエチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)インターポリマー、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)インターポリマー等、ならびにこれらの他のポリマーの2種以上の混合物が挙げられる。1種以上の他のポリマーを含むことができるポリオレフィンとしては、高分子量および低分子量のポリオレフィン、ならびに飽和および不飽和のポリオレフィンの両者が挙げられる。組成物が1種以上の他のポリマーを含む場合、他のポリマーは典型的には、組成物の総質量の約20質量%以下、好ましくは組成物の総質量の約15質量%以下、より好ましくは約10質量%以下、より好ましくは約5質量%以下、および最も好ましくは約2質量%以下を含む。
【0050】
本発明の組成物は、冷蔵庫および他の内張りならびに食品および他のパッケージ構造物において、公知の組成物と同じ様式で用いる。これらの製造に加えて、本発明の組成物はこれらに限定するものではないが、シート物質、ガスケット、アパレル、履物、ホースおよびチューブ、消費者家電用および電化製品用の部品等のような物品の製造において用いることができる。これらの組成物はモノビニリデン芳香族ポリマーおよびミネラルオイルの公知の組成物と同じ様式で用いて、公知の方法で典型的には成形または型成形(例えば押出し、成形、熱形成等)される製造物品を製造する。
【0051】
以下の実験は本発明の種々の態様を例示する。全ての部およびパーセントは特記がない限り質量基準である。
【0052】
以下の実験で用いるPAOは、下記表1に示し、そして特記がない限り、示されるような、以下の試験方法に従って測定される物理特性を有する:
動的粘度(”Dyn Visc”) ASTM D−3236
動粘性率(”Kin Visc”) ASTM D−445
流動点 ASTM D−97
密度 ASTM D−4052
【0053】
動的粘度値は出願人によってスピンドル18を用いて示される温度で評価した。以下の全ての他の特性データは文献または他の情報(PAO供給元により提供されるもの)から得た。例えば分子量(”MW calc GC”という)は、ガスクロマトグラフィ測定法を参照する。PAOについて以下に示す「モノマー」情報は、これらのCAS番号(これは一般的にPAO中に存在するオリゴマー種を示していた)から推定したことに留意する。また、Vybar 825 ブランドのPAO(先行技術文献第US2004/0001962号で用いたもの)は、本件のいずれの実験でも用いなかったことに留意すべきである。得られる情報は、比較の目的のみで以下に与える。
【0054】
【表1】

【0055】
下記表4および6に示す2つのブレンドPAO組成物は、混合により予め用意した、2種の示される成分の1:1質量比ブレンド物であった。
【0056】
サンプルのモノビニリデン芳香族ポリマーレジン組成物は、連続プロセスにおいて、直列で運転される3つの撹拌された反応器を用いて調製する。1種または複数種のPAOおよび低粘度白色ミネラルオイル(”WMO”,DrakeolTM 35 Penreco)(用いる場合)、を供給物溶液(ゴム、エチルベンゼン(EB)、スチレンおよび残りの添加剤(すなわち、過酸化物開始剤および連鎖移動剤も含有する)中に混合した。この供給物溶液を第1の反応器に供給した。
【0057】
酸化防止剤を反応器内に後から添加する。供給物組成物を表2に報告する(スチレンは供給物の残部を構成する)。過酸化物開始剤はTrigonoxTM 22(Akzo−Nobelから入手可能)であり、そして連鎖移動剤はn−ドデシルメルカプタン(nDM)である。用いたポリブタジエンは溶液粘度165cPを25℃で(トルエン中の5.43質量%溶液として)有していた。
【0058】
【表2】

【0059】
約75〜80%固形分に到達するまで重合を継続する。残留するスチレンおよびエチルベンゼンの希釈剤を洗い流し、そしてゴムを液化押出ステップにおいて架橋する。サンプルをダイ経由で押出してペレットに切断する。供給物組成、転化および液化を基にして、最終ポリマー組成物は約3.5質量%のPAOまたはWMO成分、約7.5〜
8質量%のゴム、および残部のポリスチレンを含有していたと考えられる。
【0060】
サンプルを特性化するために用いた試験方法を表3に示す。
【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
表4は、特定粘度範囲内のPAOをモノビニリデン芳香族ポリマーに添加することの有利な結果を示す。全ての組成物は、十分な引張強度についての初期スクリーニング基準に合格し、破断伸びパーセント値(”Elong”)少なくとも約10%(および好ましくは少なくとも約20%)(ISO 527−2に従って測定したときに)を示した。しかし、コーン油曝露およびESCR試験の後、実験組成物5〜10は改善されたESCRを示し(これらの破断伸び値の改善された保持によって見積もられるように)(”ESCR 1%緊張”)、そして概略的にはノッチ付アイゾッド耐衝撃性値、降伏時の引張強度およびビカットが維持または改善された。ESCRに関し、7日間浸漬後、実験5〜10の引張棒は、破断伸びの少なくとも20%の保持を示し、幾つかは少なくとも30%を有するが、本発明を表さない実験1〜4および11は、これらの元の伸びの13%以下を保持する。
【0064】
更なる組の実験において、本発明に係る組成物の物理特性を示す。ポリブタジエンゴムはDiene 55(Firestoneより)である。表5に示すブレンドされたPAO組成物は、混合によって予め用意した表2に示す通りの2種の示される成分の1:1質量比ブレンド物である。レジンの形成方法は例1と同様であるが、nDMの総添加量を変えたことを除く。この例において、nDM添加を小さく変化させて、同様の若干小さいゴム粒子サイズおよび同等のメルトフローレートを有する最終生成物を得た。最終ポリマー組成物は、約3.5質量%のPAO、約8.5〜9.0質量%のゴム、および残部のポリスチレン(供給物組成および重合中の転化に基づいて算出)を含有していた。
【0065】
得られる生成物を、表6に示す方法に従って試験した。結果を表7に示す。
【0066】
【表5】

【0067】
【表6】

【0068】
【表7】

【0069】
本発明をかなり詳細に説明してきたが、この詳細は例示の目的であって、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲の限定としては解釈されない。上記で特定した全ての文献、および米国の特許実施の目的のため、特に全ての米国特許、許可された特許出願、および公開された特許出願であって上記で特定したものは、参照により本明細書に組入れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー、および(B)40℃で動的粘度約40〜約500センチポイズ(cP)を有する有効量のポリ−アルファ−オレフィン(PAO)、を含む、組成物。
【請求項2】
PAOが、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーおよびPAOの組合せ質量基準で少なくとも約0.1〜約10質量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
PAOの動的粘度が、40℃で少なくとも約50cPである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
PAOの動的粘度が、40℃で約400cPまたはそれ未満である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーが、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)またはブタジエンゴム変性ポリ(スチレン−アクリロニトリル)(ABS)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
PAOが、ヘキセン、オクテン、デセン、ドデセン、およびテトラデセンを含む群から選択される1種以上のアルファオレフィンモノマーを基にするオリゴマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
PAOが、アルファオレフィンモノマーであるオクテン、デセン、およびドデセンの混合物を基にするオリゴマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
PAOが、デセンを含むアルファオレフィンモノマーの混合物を基にするオリゴマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
PAOが、ドデセンを含むアルファオレフィンモノマーの混合物を基にするオリゴマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
PAOが、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーおよびPAOの組合せ質量基準で少なくとも約1〜約7質量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
ISO 180/1Aに従って試験したときのノッチ付アイゾッド耐衝撃性が、PAOを含有しない基準サンプルと比べて少なくとも10%改善する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
ノッチ付アイゾッド耐衝撃性が少なくとも20%改善する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ノッチ付アイゾッド耐衝撃性が少なくとも30%改善する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
ISO 527−2の手順に従って試験したときの組成物から作製した試験体が、ISO−4599の手順に従った1%緊張での7日間のコーン油への曝露後に、その元の伸長の30%超を保持している、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
試験体が、その元の伸長の40%超を保持している、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
試験体が、その元の伸長の50%超を保持している、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
ASTM D−1525(120℃/時)の手順に従って試験したときの組成物から作製した試験体が、ビカット耐熱温度102℃超を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
改善されたゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーを製造する方法であって、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーと、40℃にて動的粘度約40〜約500センチポイズ(cP)を有する有効量のPAOとを混合するステップを含む、方法。
【請求項19】
ポリマーをその構成モノマーの重合によって製造する前またはこれと同時に重合プロセスに添加することによって、PAOをゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーと混合する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の組成物を含む、物品。

【公表番号】特表2012−503073(P2012−503073A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527898(P2011−527898)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/056941
【国際公開番号】WO2010/033489
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(510288530)スティロン ヨーロッパ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (18)
【Fターム(参考)】