説明

ポリアクリロニトリル多孔質膜にリン酸基含有不飽和単量体(組成物)を含浸させ、(共)重合してなる固体高分子電解質複合膜及びその用途

【課題】 リン酸基含有(共)重合体及びこれとの接着性に優れた多孔質膜を含み、比較的低コストで製造でき、幅広い温度範囲及び湿度範囲で高いプロトン伝導性を有する固体高分子電解質複合膜及びその用途を提供する。
【解決手段】 (a) 分子内に1個以上のリン酸基と1個以上のエチレン性不飽和結合とを有するリン酸基含有不飽和単量体、又は(b) 前記リン酸基含有不飽和単量体及びこれと共重合できる他の不飽和単量体を、ポリアクリロニトリル多孔質膜に含浸させ、(共)重合してなる固体高分子電解質複合膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次電池、二次電池、燃料電池等の電解質膜、表示素子、各種センサー、信号伝達媒体、固体コンデンサー、イオン交換膜等に好適な固体高分子電解質複合膜及びその用途に関し、特に広い温度範囲及び湿度範囲にわたり高いプロトン伝導性を示す固体高分子電解質複合膜及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子電解質材料として、いわゆる陽イオン交換樹脂に属するポリマー、例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、パーフルオロスルホン酸ポリマー、パーフルオロカルボン酸ポリマー[Polymer Preprints, Japan Vol. 42, No. 7, pp. 2490〜2492 (1993), Polymer Preprints, Japan Vol. 43, No. 3, pp. 735〜736 (1994), Polymer Preprints, Japan Vol. 42, No. 3, p. 730 (1993)]等が報告されている。
【0003】
特に側鎖にスルホン酸基を有する固体高分子材料は、特定のイオンと強固に結合したり、陽イオン又は陰イオンを選択的に透過したりする性質を有しているので、粒子状、繊維状又は膜状に成形され、電気透析膜、拡散透析膜、電池隔膜等の各種の用途に利用されている。中でもNafion(デュポン(株)製)の商標で知られるパーフルオロ骨格の側鎖にスルホン酸基を有するフッ素系高分子電解質膜は耐熱性及び耐薬品性に優れ、苛酷な条件下での使用に耐える電解質膜として実用化されている。しかし上記のようなフッ素系電解質膜は非常に高価であるという問題を抱えている。
【0004】
これに対し、特開2003-86021号(特許文献1)は分子内に1個以上のリン酸基及び1個以上のエチレン性不飽和結合を有するリン酸基含有不飽和単量体と、分子内に1個以上のスルホン酸基及び1個以上のエチレン性不飽和結合を有するスルホン酸基含有不飽和単量体との共重合体からなる固体高分子電解質膜を提案している。特許文献1の固体高分子電解質膜は比較的安価に製造することができるだけでなく、導電性が著しく高く、導電性の温度依存性が低く、耐熱性及び耐溶剤性に優れている点で従来の固体高分子材料と一線を画すものであった。
【0005】
特許文献1は、リン酸基含有重合体と補強シートとからなる固体高分子電解質複合膜も記載している。補強シートを用いた固体高分子電解質複合膜は、強度、耐熱性、耐薬品性及び寸法安定性に優れているという利点を有する。
【0006】
【特許文献1】特開2003-86021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は補強シートとして、微多孔性樹脂フィルム、及び無機質繊維又は有機質繊維からなるシート(織布、不織布及び紙)を記載している。しかし従来複合膜に使用されているポリエチレン等からなる多孔質膜はリン酸基含有重合体との接着性が不十分であるという問題があった。
【0008】
従って、本発明の目的は、リン酸基含有(共)重合体及びこれとの接着性に優れた多孔質膜を含み、比較的低コストで製造でき、幅広い温度範囲及び湿度範囲で高いプロトン伝導性を有する固体高分子電解質複合膜及びその用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、(1) ポリアクリロニトリル多孔質膜はリン酸基を含有する(共)重合体との接着性に優れていること、及び(2) リン酸基含有(共)重合体及びポリアクリロニトリル多孔質膜を含む固体高分子電解質複合膜は比較的低コストで製造でき、幅広い温度範囲及び湿度範囲で高いプロトン伝導性を有することを見出し、本発明に想到した。
【0010】
すなわち、本発明の固体高分子電解質複合膜は、(a) 分子内に1個以上のリン酸基と1個以上のエチレン性不飽和結合とを有するリン酸基含有不飽和単量体、又は(b) 前記リン酸基含有不飽和単量体及びこれと共重合できる他の不飽和単量体を、ポリアクリロニトリル多孔質膜に含浸させ、(共)重合してなることを特徴とする。
【0011】
前記リン酸基含有不飽和単量体は、下記一般式(1):
【化1】

(但しR1は水素基又はアルキル基であり、R2は水素基又は置換もしくは無置換のアルキル基であり、nは1〜6の整数である。)により表されるものを含むのが好ましい。R1はH又はCH3であり、R2はH、CH3又はCH2Clであるのが好ましい。
【0012】
前記他の不飽和単量体は、(c) 分子内に1個以上のエチレン性不飽和結合と1個以上の官能基とを有する不飽和単量体及び/又は(d) 分子内に1個以上のエチレン性不飽和結合を有するが官能基を有しない不飽和単量体であるのが好ましい。前記(c) 官能基を有する不飽和単量体はスルホン酸基、カルボン酸基、アルコール性水酸基及びアミノ基からなる群から選ばれた少なくとも一種の官能基を有するのが好ましい。前記(d) 官能基を有しない不飽和単量体は(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル類、置換又は無置換のスチレン類、ビニル類、及び分子内に1個以上のフッ素基と1個以上のエチレン性不飽和結合とを有するフッ素基含有不飽和単量体からなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。
【0013】
前記リン酸基含有不飽和単量体は下記一般式(2):
【化2】

(但しR3及びR6はそれぞれ独立に水素基又はアルキル基であり、R4及びR5はそれぞれ独立に水素基又は置換もしくは無置換のアルキル基であり、k及びpはそれぞれ独立に1〜6の整数である。)により表されるリン酸基含有ジエステル系不飽和単量体を含んでもよい。R3及びR6はそれぞれ独立にH又はCH3であり、R4及びR5はそれぞれ独立にH、CH3又はCH2Clであるのが好ましい。
【0014】
本発明の固体高分子電解質複合膜はリン酸変性エポキシ樹脂を含んでもよい。前記リン酸変性エポキシ樹脂は、下記一般式(3):
【化3】

(但しR7及びR9はそれぞれ置換又は無置換のアルキレン基を表し、R8は水素、ハロゲン原子或いは置換又は無置換のアルキル基を表し、mは重合度を表す。一般式(3)により表される化合物は2種以上の構成単位を含む共重合体又は2種以上の構成単位からなる混合物であってもよい。)により表されるノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ環に少なくとも部分的にリン酸基を導入することにより変性し、一分子中にリン酸基と水酸基を共存させたもの、及び/又は下記一般式(4):
【化4】

(但しR10はビスフェノール類から導かれる残基、或いは炭素数1〜4の置換又は無置換のアルキレン基を表し、m'は重合度を表す。一般式(4)により表される化合物は2種以上の構成単位を含む共縮合体又は2種以上の構成単位からなる混合物であってもよい。)により表されるビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環に少なくとも部分的にリン酸基を導入することにより変性し、一分子中にリン酸基と水酸基を共存させたものであるのが好ましい。
【0015】
前記ポリアクリロニトリル多孔質膜は、ポリアクリロニトリル樹脂から湿式法により製膜された微多孔フィルム、並びにポリアクリロニトリル繊維からなる紙、織布及び不織布からなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。前記微多孔フィルムからなるポリアクリロニトリル多孔質膜の透水量は1〜500 m3/m2・day・atmであるのが好ましい。前記紙又は不織布からなるポリアクリロニトリル多孔質膜は湿式法により連続的に抄紙されたものであるのが好ましい。前記紙又は不織布からなるポリアクリロニトリル多孔質膜は、紡糸により得られたポリアクリロニトリル長繊維を切断した短繊維と、前記短繊維を叩解することにより得られたフィブリル化繊維とを複合してなるのが好ましい。
【0016】
前記ポリアクリロニトリル多孔質膜は、(e) アクリロニトリルホモポリマー並びに/又は(f) アクリロニトリル及びこれと共重合可能なモノマーのコポリマーからなるのが好ましい。前記アクリロニトリルと共重合可能なモノマーは、炭素数が4以下のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル;(メタ)アクリル酸ブロモエチル;メタクリロニトリル;イタコン酸;(メタ)アクリル酸アミド;脂肪酸ビニル;ビニルピロリドン;メチルビニルケトン;ハロゲン化ビニル;ハロゲン化ビニリデン;スチレン;ブタジエン;ビニルピリジン;メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、p-スチレンスルホン酸及びこれらの塩;オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。
【0017】
本発明の固体高分子電解質複合膜は燃料電池用途に有用である。
【発明の効果】
【0018】
ポリアクリロニトリル(PAN)多孔質膜はリン酸基含有(共)重合体との親和性が良く、PAN多孔質膜にリン酸基含有(共)重合体からなる固体高分子電解質を担持した本発明の複合膜は、固体高分子電解質と多孔質膜との接着性に優れている。PAN多孔質膜はまた、耐熱性及び強度に優れている。このため本発明の複合膜は電池用電解質膜として使用した場合に、優れた耐久性を示すことが期待される。本発明の固体高分子電解質複合膜はまた、90%の相対湿度及び30〜80℃の温度条件下において導電率が10-3〜10-2 S・cm-1のオーダーにあり、優れたプロトン伝導性を有し、かつプロトン伝導性の温度依存性が小さい。
【0019】
このような特性を有する本発明の固体高分子電解質複合膜は、一次電池用電解質膜、二次電池用電解質膜、燃料電池用電解質膜、表示素子膜、各種センサー膜、信号伝達媒体膜、固体コンデンサー膜、イオン交換膜などに好適に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[1] リン酸基含有(共)重合体
リン酸基含有(共)重合体は、以下に述べるリン酸基含有不飽和単量体の重合体、並びに/又はリン酸基含有不飽和単量体及びこれと共重合できる他の不飽和単量体の共重合体を主成分として含むものである。
(1) リン酸基含有不飽和単量体
リン酸基含有不飽和単量体は下記一般式(1):
【化5】

(但しR1は水素又はアルキル基であり、R2は水素又は置換もしくは無置換のアルキル基であり、nは1〜6の整数である。)により表すことができる。R1はH又はCH3であり、R2はH、CH3又はCH2Clであるのが好ましい。
【0021】
一般式(1)により表されるリン酸基含有不飽和単量体(リン酸基含有不飽和単量体(I))のうち代表的なものの構造式及び物性をそれぞれ表1及び表2に示す。これらの単量体はユニケミカル(株)から商品名Phosmer(登録商標)として販売されている。ただし本発明に使用できるリン酸基含有不飽和単量体はこれらに限定されるものではない。リン酸基含有不飽和単量体(I)は単独で用いることができるが、2種以上を併用しても良い。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
リン酸基は解離していてもよいし、錯塩を形成していても良い。錯塩を形成する場合、電荷を中和させるため、例えば第1級、第2級、第3級又は第4級のアルキル基、アリル基、アラルキル基等を含有するアンモニウムイオンやモノ、ジ又はトリアルカノールアミン残基と錯塩を形成するのが好ましく、特にN+R114−f(OH)f(但しR11は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜12の芳香族基及び炭素数6〜12の脂環族基からなる群から選ばれた少なくとも一種を表し、fは1〜3の正の整数を表す。)が好ましい。
【0025】
リン酸基含有不飽和単量体としては、下記一般式(2):
【化6】

(但しR3及びR6はそれぞれ独立に水素基又はアルキル基であり、R4及びR5はそれぞれ独立に水素基又は置換もしくは無置換のアルキル基であり、k及びpはそれぞれ独立に1〜6の整数である。)により表されるリン酸基含有ジエステル系不飽和単量体(リン酸基含有不飽和単量体(II))、下記一般式(5):
【化7】

(但しR12及びR15はそれぞれ独立に水素基又はアルキル基であり、R13及びR14はそれぞれ独立に水素基又は置換もしくは無置換のアルキル基であり、r及びsはそれぞれ独立に1〜6の整数である。)により表されるピロリン酸基含有不飽和単量体(リン酸基含有不飽和単量体(III))、及び下記一般式(6):
【化8】

(但しR16、R19及びR21はそれぞれ独立に水素基又はアルキル基であり、R17、R18及びR20はそれぞれ独立に水素基又は置換もしくは無置換のアルキル基であり、x、y及びzはそれぞれ独立に1〜6の整数である。)により表されるリン酸基含有不飽和単量体(IV)も使用可能である。
【0026】
リン酸基含有不飽和単量体(II)としては、ジ(メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート及びジ(アクリロイルオキシエチル)ホスフェートが好ましい。リン酸基含有不飽和単量体(III)としては、ジ(メタクリロイルオキシエチル)アシッド・ピロホスフェート及びジ(アクリロイルオキシエチル)アシッド・ピロホスフェートが好ましい。
【0027】
リン酸基含有不飽和単量体(I)はプロトン伝導性に優れており、リン酸基含有不飽和単量体(II)〜(IV)は架橋作用を有し製膜性に優れているので、リン酸基含有不飽和単量体(I)と、リン酸基含有不飽和単量体(II)〜(IV)からなる群から選ばれた少なくとも一種とを併用してもよい。このような併用により複合膜のプロトン伝導性と耐溶剤性と膜強度のバランスが向上する。中でもリン酸基含有不飽和単量体(I)及び(II)を併用するのが好ましい。リン酸基含有不飽和単量体(I)と、リン酸基含有不飽和単量体(II)〜(IV)からなる群から選ばれた少なくとも一種とを併用する場合、式[リン酸基含有不飽和単量体(I)]/[リン酸基含有不飽和単量体(II)〜(IV)の合計]により表される配合モル比は1/0.05〜1/2であるのが好ましい。
【0028】
リン酸基含有(共)重合体が上述のようなリン酸基含有不飽和単量体成分を含むことにより、固体高分子電解質に高い水保持能力を付与でき、高導電性を有する複合膜が得られる。
【0029】
(2) 共重合できる他の不飽和単量体
上記リン酸基含有不飽和単量体と共重合できる他の不飽和単量体は次の2群(a) 官能基を含有するもの及び(b) 官能基を含有しないものに大別できる。
(a) 官能基を含有する不飽和単量体
官能基を含有する不飽和単量体は、分子内に少なくとも1つの官能基と、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合とを有する化合物である。官能基としては、酸性基、アミノ基(アミド基も有するものも含む)等を挙げることができる。酸性基としてスルホン酸基、カルボン酸基及びアルコール性水酸基からなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。エチレン性不飽和結合を有する骨格としては、(メタ)アクリレート骨格、(メタ)アリルエステル骨格等を挙げることができる。
【0030】
(i) スルホン酸基含有不飽和単量体
スルホン酸基を含有する不飽和単量体の例示化合物としては、下記一般式(7):
【化9】

(但しR22は水素基又はメチル基である。)により表される化合物、下記一般式(8):
【化10】

(但しR23は水素基又はメチル基であり、Y1は置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキレン基又は炭素数6〜12のアリーレン基である。)により表される化合物、及び下記一般式(9):
【化11】

(但しR24は水素基又はメチル基であり、X1は−O−基又は−NH−基であり、Y2は置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキレン基又は炭素数6〜12のアリーレン基である。)により表される化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。
【0031】
上記一般式(7)〜(9)のいずれかにより表されるスルホン酸基含有不飽和単量体としては、アリルスルホン酸(allyl sulfonic acid)、メタアリルスルホン酸(methallyl sulfonic acid)、ビニルスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸ブチル-4-スルホン酸、(メタ)アクリロオキシベンゼンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(ターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸)等が挙げられる。好ましくはビニルスルホン酸、p-スチレンスルホン酸及びターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸である。ただしアリルスルホン酸(allyl sulfonic acid)、メタアリルスルホン酸(methallyl sulfonic acid)は、そのアリル(allyl)基が、退化的連鎖移動(degradative chain transfer)を起こすので、使用量を僅少にするのが好ましい。具体的には、リン酸基含有不飽和単量体及び他の不飽和単量体の合計を100質量%として、多くても10質量%程度の使用量にする。
【0032】
スルホン酸基は解離していてもよいし、錯塩を形成していても良い。錯塩を形成する場合、リン系酸残基含有不飽和単量体について上述したようなアンモニウムイオンもしくはアミン残基又はアルカリ金属と錯塩を形成するのが好ましい。
【0033】
(ii) カルボン酸基を含有する不飽和単量体
カルボン酸基を含有する不飽和単量体の例示化合物としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸無水物等が挙げられる。これらは単独で用いることができるが、2種以上を併用しても良い。
【0034】
(iii) アルコール性水酸基を含有する不飽和単量体
アルコール性水酸基を含有する不飽和単量体としては、グリセロールジメタクリレート[例えば商品名「ブレンマーGMR」、「ブレンマーGMR-R」(以上日本油脂(株)製)等]、グリセロールメタクリレートアクリレート[例えば商品名「ブレンマーGAM」、「ブレンマーGAM-R」(以上日本油脂(株)製)等]、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアクリレート[例えば商品名「NK オリゴ EA-5521」(新中村化学工業(株)製)等]、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルアクリレート[例えば商品名「NK オリゴ EA-5520」(新中村化学工業(株)製)等]、ビスフェノールA型エポキシアクリレート[例えば商品名「NK オリゴ EA-1020」(新中村化学工業(株)製)等]、及び2-ヒドロキシ(メタ)アクリレート類(例えば2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等)が挙げられる。
【0035】
中でもグリセロールジメタクリレート、グリセロールメタクリレートアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアクリレート、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルアクリレート及びビスフェノールA型エポキシアクリレートは、エチレン性不飽和基を分子内に2個有する観点から好ましい。
【0036】
これらアルコール性水酸基含有不飽和単量体は、これらの水酸基をリン酸モノエステル化することにより、複合膜の導電性や強度が一層向上する。特にエチレン性不飽和基を分子中に2個有するアルコール性水酸基含有不飽和単量体のリン酸モノエステル化単量体は、重合時の架橋効率が良い。
【0037】
(iv) アミノ基含有不飽和単量体
アミノ基含有不飽和単量体としては、分子内に置換又は無置換のアミノ基及びエチレン性不飽和結合を各々1個以上有するものである限り特に制限はない。アミノ基含有不飽和単量体として、例えば(iv-1) 下記一般式(10):
【化12】

(但しR25は水素基又はメチル基であり、R26及びR27はそれぞれ独立に水素基、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、X2は−O−基又は−NH−基であり、Y3は置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキレン基又は置換もしくは無置換の炭素数6〜16のアリーレン基である。)により表される化合物、(iv-2) 下記一般式(11):
【化13】

(但しR28は水素基又はメチル基であり、R29及びR30はそれぞれ独立に水素基、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)により表される化合物、(iv-3) 下記一般式(12):
【化14】

(但しR31は水素基又はメチル基であり、R32及びR33はそれぞれ独立に水素基、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、Y4は置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキレン基又は置換もしくは無置換の炭素数6〜16のアリーレン基である。)により表される化合物、(iv-4) 下記一般式(13):
【化15】

(但しR34は水素基又はメチル基であり、R35及びR36はそれぞれ独立に水素基、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基である。)により表される化合物、(iv-5) 下記一般式(14):
【化16】

(但しR37及びR38はそれぞれ独立に水素基又はメチル基であり、R39は水素基、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、Y5及びY6はそれぞれ独立に置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキレン基又は置換もしくは無置換の炭素数6〜16のアリーレン基である。)により表される化合物、及び(iv-6) 1個以上のビニル基を有するヘテロ環状アミン化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種が挙げられる。
【0038】
上記式(10)により表されるアミノ基含有不飽和単量体として、例えばN,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジプロピルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジプロピルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0039】
上記式(11)により表されるアミノ基含有不飽和単量体として、例えばビニルアミン、N-ビニルジメチルアミン、N-ビニルジエチルアミン、N-ビニルジフェニルアミン等が挙げられる。
【0040】
上記式(12)により表されるアミノ基含有不飽和単量体として、例えばアリルアミン、N,N-ジメチル-p-アミノスチレン 、N,N-ジエチル-p-アミノスチレン 、ジメチル(p-ビニルベンジル)アミン、ジエチル(p-ビニルベンジル)アミン、ジメチル(p-ビニルフェネチル)アミン、ジエチル(p-ビニルフェネチル)アミン、ジメチル(p-ビニルベンジルオキシメチル)アミン、ジメチル[2-(p-ビニルベンジルオキシ)エチル]アミン、ジエチル(p-ビニルベンジルオキシメチル)アミン、ジエチル[2-(p-ビニルベンジルオキシ)エチル]アミン、ジメチル(p-ビニルフェネチルオキシメチル)アミン、ジメチル[2-(p-ビニルフェネチルオキシ)エチル]アミン、ジエチル(p-ビニルフェネチルオキシメチル)アミン、ジエチル[2-(p-ビニルフェネチルオキシ)エチル]アミン等が挙げられる。
【0041】
上記式(13)により表されるアミノ基含有不飽和単量体として、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0042】
上記式(14)により表されるアミノ基含有不飽和単量体として、例えばジアリルメチルアミン等が挙げられる。
【0043】
1個以上のビニル基を有するヘテロ環状アミン化合物として、例えば2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、1-ビニルイミダゾール、2-ビニルイミダゾール、4-ビニルイミダゾール、5-ビニルイミダゾール、1-ビニルピラゾール、3-ビニルピラゾール、4-ビニルピラゾール、1-ビニルトリアゾール、2-ビニルピリミジン、4-ビニルピリミジン、5-ビニルピリミジン、2-ビニルピラジン、3-ビニルピリダジン、4-ビニルピリダジン、2-ビニルトリアジン、N-ビニルピロール、N-ビニルインドール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、N-ビニルスクシンイミド、N-ビニルグルタルイミド、N-ビニルフタルイミド等が挙げられる。
【0044】
中でもアミノ基含有不飽和単量体としては、固体高分子電解質複合膜の耐溶剤性を良好にする観点から、上記式(10)、(12)及び(14)により表されるものが好ましく、上記式(10)により表されるものがより好ましい。
【0045】
(b) 官能基を含有しない不飽和単量体
官能基を含有しない不飽和単量体としては、(a)に記載した以外の、常温で気体でない、分子内に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する不飽和単量体がすべて対象になるが、中でも(メタ)アクリロニトリル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;置換又は無置換のスチレン類;塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル類が好適に使用される。1分子内に複数個のエチレン性不飽和結合を含有するエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートやジビニルベンゼンなども共重合体の耐溶剤性を改良する目的をもって使用される。
【0046】
またフッ素基含有不飽和単量体を共重合成分として含むことにより、固体高分子電解質複合膜の耐熱性及び耐水性が向上する。フッ素基含有不飽和単量体は、(イ)少なくとも1個のフッ素基を有するフッ素基含有(メタ)アクリル酸エステル類、(ロ)少なくとも1個のフッ素基を有するフッ素基含有(メタ)アクリル酸類、(ハ)少なくとも1個のフッ素基を有するフッ素基含有アルキル基及び/又は少なくとも1個のフッ素基と1個のエチレン性不飽和結合とを有するフッ素基含有オレフィン系不飽和単量体、並びに(ニ)少なくとも1個のフッ素基を含有するフッ素基含有アルキレン基と2個のエチレン性不飽和結合とを有するフッ素基含有ジエン系不飽和単量体からなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。
【0047】
フッ素基含有(メタ)アクリル酸エステル類としては、下記一般式(15):
【化17】

(但しX3は水素基、フッ素基、少なくとも1個のフッ素基を有するフッ素基含有メチル基又はメチル基であり、R40は少なくとも1個のフッ素基を含有するフッ素基含有アルキル基又はアルキル基である。)により表されるものが好ましい。
【0048】
上記一般式(15)において、R40の炭素数は1〜10であるのが好ましく、1〜5であるのがより好ましい。R40がフッ素基を含有するフッ素基含有アルキル基であり、かつその炭素数が2以上である場合、末端メチル基の水素基が全てフッ素基で置換されているのが好ましい。R40は直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。R40はフッ素以外の他のハロゲン原子を有していてもよい。R40はヘテロ原子を有していてもよい。ヘテロ原子としては、R40中の炭素−炭素結合間に含まれるエーテル性酸素原子、チオエーテル性硫黄原子等が挙げられる。
【0049】
上記一般式(15)により表されるフッ素基含有(メタ)アクリル酸エステル類としては、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリート、ターシャリーブチル-α-(トリフルオロメチル)アクリレート、トリフルオロエチル-α-(トリフルオロメチル)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でもフッ素基含有(メタ)アクリル酸エステル類としては、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリート及びターシャリーブチル-α-(トリフルオロメチル)アクリレートが好ましい。
【0050】
フッ素基含有(メタ)アクリル酸類としては、下記一般式(16):
【化18】

(但しX4は少なくとも1個のフッ素基を有するフッ素基含有メチル基又はフッ素基である。)により表されるものが好ましい。上記一般式(16)においてX4はパーフルオロメチル基又はフッ素基であるのがより好ましい。フッ素基含有(メタ)アクリル酸類としては、α−(トリフルオロメチル)アクリル酸が特に好ましい。
【0051】
フッ素基含有オレフィン系不飽和単量体としては下記一般式(17):
【化19】

(但しRf1は少なくとも1個のフッ素基を含有するフッ素基含有アルキル基であり、X5、X6及びX7はそれぞれ独立に水素基又はフッ素基である。)又は下記一般式(18):
【化20】

(但しX8、X9及びX10はそれぞれ独立に少なくとも1個のフッ素基を有するフッ素基含有メチル基又はフッ素基であり、X11はフッ素基、その他のハロゲン、少なくとも1個のフッ素基を有するフッ素基含有メチル基、アルコキシ基、フッ素基含有アルコキシ基、アルキル基又は水素基である。)により表されるものが好ましい。
【0052】
上記一般式(17)中のフッ素基を含有するフッ素基含有アルキル基Rf1はパーフルオロアルキル基であるのが好ましい。Rf1の炭素数は1〜20であるのが好ましく、1〜10であるのがより好ましい。Rf1は直鎖構造であっても分岐構造であってもよいが、直鎖構造であるのが好ましい。Rf1はフッ素以外の他のハロゲン原子を有していてもよい。Rf1はヘテロ原子を有していてもよい。ヘテロ原子としては、Rf1中の炭素−炭素結合間に含まれるエーテル性酸素原子、チオエーテル性硫黄原子等が挙げられる。
【0053】
上記一般式(17)により表されるフッ素基含有オレフィン系不飽和単量体としては、下記一般式(19):
【化21】

(但しRf1は上記式(17)と同じである。)により表されるものがより好ましい。
【0054】
上記一般式(19)により表されるフッ素基含有オレフィン系不飽和単量体としては、(パーフルオロブチル)エチレン、(パーフルオロヘキシル)エチレン、(パーフルオロオクチル)エチレン、(パーフルオロデシル)エチレン等が挙げられる。中でもフッ素基含有オレフィン系不飽和単量体としては、(パーフルオロブチル)エチレン、(パーフルオロヘキシル)エチレン及び(パーフルオロオクチル)エチレンが好ましい。
【0055】
上記一般式(18)中のX8、X9及びX10としては、パーフルオロメチル基又はフッ素基が好ましい。上記一般式(18)中のX11がアルキル基、アルコキシ基又はフッ素基含有アルコキシ基である場合、それらの炭素数は1〜10であるのが好ましい。上記一般式(18)により表されるフッ素基含有オレフィン系不飽和単量体としては、ヘキサフルオロプロペン、クロロトリフルオロエチレン、1-メトキシ−(パーフルオロ-2-メチル-1-プロペン)等が挙げられる。
【0056】
フッ素基含有ジエン系不飽和単量体としては、下記一般式(20):
【化22】

(但しRf2は少なくとも1個のフッ素基を含有するフッ素基含有アルキレン基であり、X12、X13、X14、X15、X16及びX17はそれぞれ独立に水素基又はフッ素基である。)により表されるものが好ましい。
【0057】
上記一般式(20)中の少なくとも1個のフッ素基を含有するフッ素基含有アルキレン基Rf2はパーフルオロアルキレン基であるのが好ましい。Rf2の炭素数は1〜20であるのが好ましく、1〜10であるのがより好ましい。Rf2は直鎖構造であっても分岐構造であってもよいが、直鎖構造であるのが好ましい。Rf2はフッ素以外の他のハロゲン原子を有していてもよい。Rf2はヘテロ原子及び/又はヘテロ原子団を有していてもよい。ヘテロ原子としては、Rf2中の炭素−炭素結合間に含まれるエーテル性酸素原子、チオエーテル性硫黄原子等が挙げられる。ヘテロ原子団としてはエステル結合等が挙げられる。
【0058】
上記一般式(20)により表されるフッ素基含有オレフィン系不飽和単量体としては、下記一般式(21):
【化23】

(但しRf2は上記式(20)と同じである。)により表されるものが、より好ましい。
【0059】
上記一般式(21)により表されるフッ素基含有ジエン系不飽和単量体としては、1,4-ジビニル(パーフルオロブチレン)(別名:1,4-ジビニルオクタフルオロブタン)、1,6-ジビニル(パーフルオロヘキシレン)(別名:1,6-ジビニルドデカフルオロヘキサン)及び1,8-ジビニル(パーフルオロオクチレン)(別名:1,8-ジビニルヘキサデカフルオロオクタン)が好ましい。
【0060】
上記4種の各フッ素基含有不飽和単量体は、単独で用いることができるが、2種以上を併用しても良い。2種以上を併用する場合、例えばフッ素基含有オレフィン系不飽和単量体及び/又はフッ素基含有ジエン系不飽和単量体と、フッ素基含有(メタ)アクリル酸エステル類及び/又はフッ素基含有(メタ)アクリル酸類とを混合した組成等を挙げることができる。
【0061】
(3) 各不飽和単量体の使用割合
リン酸基含有不飽和単量体(1)と、他の不飽和単量体(2)との質量比(1)/(2)は、100/0〜20/80の範囲であるのが好ましく、(1)/(2) = 90/10〜40/60であるのがより好ましい。また他の不飽和単量体(2)の中で、官能基を含有する不飽和単量体(a) とそれ以外の不飽和単量体(b) の質量比は、プロトン伝導性にプラス効果をもたらす不飽和単量体(a)が支配的になるように、不飽和単量体(a)/不飽和単量体(b)=100/0〜50/50の範囲とするのが好ましい。従って、特に酸基を含有する不飽和単量体(a)としてスルホン酸基含有不飽和単量体を使用する場合、リン酸基含有不飽和単量体/スルホン酸基含有不飽和単量体の質量比は100/0〜20/80、好ましくは90/10〜40/60であり、スルホン酸基含有不飽和単量体/官能基非含有不飽和単量体の質量比は100/0〜50/50である。
【0062】
(4) リン酸変性エポキシ樹脂
リン酸基含有(共)重合体はリン酸変性エポキシ樹脂を含んでもよく、これによりリン酸基含有(共)重合体とポリアクリロニトリル(PAN)多孔質膜との接着性が向上する。本明細書において、用語「リン酸変性エポキシ樹脂」とは、エポキシ樹脂のエポキシ環に少なくとも部分的にリン酸基を導入することにより変性したものを意味する。リン酸変性エポキシ樹脂の母体であるエポキシ樹脂に特に制限はなく、例えばフェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等のノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型、ビスフェノールF型等のビスフェノール型エポキシ樹脂等を用いることができる。エポキシ樹脂のエポキシ環に少なくとも部分的にリン酸基を導入するには、例えば特開2001-151854号、特開2002-327040号等に記載の方法を採用することができ、リン酸変性エポキシ樹脂としてもこれら公知文献に記載のものが挙げられる。
【0063】
リン酸変性エポキシ樹脂としては、下記一般式(3):
【化24】

(但しR7及びR9はそれぞれ置換又は無置換のアルキレン基を表し、R8は水素、ハロゲン原子或いは置換又は無置換のアルキル基を表し、mは重合度を表す。一般式(3)により表される化合物は2種以上の構成単位を含む共重合体又は2種以上の構成単位からなる混合物であってもよい。)により表されるノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ環に少なくとも部分的にリン酸基を導入することにより変性し、一分子中にリン酸基と水酸基を共存させたもの(以下「CEP」とよぶ)が好ましく、その推定構造は、下記一般式(22):
【化25】

[但し一般式(22)において、X18及びY7は各構成単位ごとにそれぞれ独立に−OH基、−OP(O)(OH)2基 又は−OP(O)(OH)−OP(O)(OH)2 基を表し、R7、R8及びR9は上記一般式(3)と同じ置換基を表し、mは重合度を表す。但し(−OP(O)(OH)2基の合計数)/(置換基X18及びY7の合計数)=0.3〜0.75である(但し−OP(O)(OH)−OP(O)(OH)2基は−OP(O)(OH)2基二個分に換算する)。]により表すことができる。
【0064】
別の好ましいリン酸変性エポキシ樹脂としては、下記一般式(4):
【化26】

(但しR10はビスフェノール類から導かれる残基、或いは炭素数1〜4の置換又は無置換のアルキレン基を表し、m'は重合度を表す。一般式(4)により表される化合物は2種以上の構成単位を含む共縮合体又は2種以上の構成単位からなる混合物であってもよい。)により表されるビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環に少なくとも部分的にリン酸基を導入することにより変性し、一分子中にリン酸基と水酸基を共存させたもの(BEP)が挙げられ、その推定構造は、下記一般式(23):
【化27】

[但し一般式(23)において、V、W、X18、Y7及びZはそれぞれ独立に−OH基、−OP(O)(OH)2 基又は−OP(O)(OH)−OP(O)(OH)2 基を表し、R10は上記一般式(4)と同じ置換基を表し、m'は重合度を表す。但し(−OP(O)(OH)2基の合計数)/(置換基V、W、X18、Y7及びZの合計数)=1.2/(n+4)〜3/(n+4)である(但し−OP(O)(OH)−OP(O)(OH)2基は−OP(O)(OH)2基二個分に換算する)。]により表すことができる。
【0065】
リン酸変性エポキシ樹脂は120℃以上に加熱すると自己縮合硬化する。硬化に際して加熱時間は5〜60分間が好ましい。リン酸変性エポキシ樹脂はまた、リン酸基間の会合によりリン酸基含有(共)重合体と架橋する。リン酸基含有(共)重合体中のリン酸変性エポキシ樹脂の配合割合に特に制限はなく、リン酸基含有(共)重合体に求める接着性に応じて適宜設定すればよい。通常は式[(リン酸基含有不飽和単量体+その他の不飽和単量体)/(リン酸変性エポキシ樹脂)]により表される質量比が100/0〜70/30の範囲であるのが好ましく、100/0〜80/20の範囲であるのがより好ましい。
【0066】
(5) 共重合できる不飽和オリゴマー
リン酸基含有(共)重合体は、上記リン酸基含有不飽和単量体と共重合できる不飽和オリゴマーを共重合成分として含んでもよい。そのような不飽和オリゴマーとして共役ジエン系液状オリゴマーが挙げられる。共役ジエン系液状オリゴマーとして、各々分子内に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有するブタジエンオリゴマー、イソプレンオリゴマー及びこれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。共役ジエン系液状オリゴマーとしては、下記一般式(24):
【化28】

(但しR41及びR42はそれぞれ独立にエチレン性不飽和結合を1個以上有し、かつ他の原子団を有してもよい炭化水素基であり、R43及びR44はそれぞれ独立に水素基又はメチル基であり、かつR43及びR44の少なくとも一方は水素基であり、tは重合度を表す。)により表されるものがより好ましい。ただし共役ジエン系液状オリゴマーは、式(24)に示すような重合体鎖中の共役ジエン単位が1, 2−結合であるものに限定する趣旨ではなく、共役ジエン単位が1, 4-結合であるものであってもよい。
【0067】
R41及びR42はエチレン性不飽和結合を1個以上有し、他の原子団を有してもよい炭化水素基である限り特に制限はない。R41及びR42が有してもよい他の原子団としては、ウレタン結合、エステル結合、エーテル結合、イソシアネート基、水酸基、カルボキシル基及びアルコキシ基からなる群から選ばれた少なくとも一種が挙げられる。R41及びR42の具体例として(メタ)アクリル基が挙げられる。
【0068】
[2] ポリアクリロニトリル多孔質膜
本発明の固体高分子電解質複合膜は、支持体としてポリアクリロニトリル(PAN)多孔質膜を有する。PAN多孔質膜としては、PAN樹脂から湿式法により製膜されたPAN微多孔フィルム、あるいはPAN繊維からなる紙、織布又は不織布が挙げられる。
【0069】
(1) ポリアクリロニトリル樹脂
PAN多孔質膜を構成するPAN樹脂は、ホモポリマーに限られず、アクリロニトリルと共重合可能なモノマーを含むコポリマーであってもよい。そのようなモノマーとして例えば炭素数が4以下のアルキル(メタ)アクリレート(例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等);(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル;(メタ)アクリル酸ブロモエチル;メタクリロニトリル;イタコン酸;(メタ)アクリル酸アミド;脂肪酸ビニル(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等);ビニルピロリドン;メチルビニルケトン;ハロゲン化ビニル(例えば塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル等);ハロゲン化ビニリデン(例えば塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等);スチレン;ブタジエン;ビニルピリジン;メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、p-スチレンスルホン酸及びこれらの塩;オレフィン(例えばエチレン、プロピレン等)等が挙げられる。PAN樹脂がコポリマーからなる場合、アクリロニトリルと共重合させる他のモノマーの含有量はコポリマー全体を100質量%として30質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0070】
PAN樹脂は単一樹脂成分からなるものに限定されず、複数の樹脂成分からなるものでもよい。樹脂成分の組合せとしては、ホモポリマーとコポリマーの混合物、共重合組成の異なるコポリマーの混合物等の他に、一種又は二種以上のPAN樹脂に、その特性を損なわない範囲で他の樹脂を添加したものが挙げられる。そのような他の樹脂としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルスルホン、ポリイミド、セルロースアセテート、他のセルロース誘導体、塩化ビニル、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン等が好ましい。他の樹脂を含有する場合、その割合はPAN多孔質膜全体を100質量%として、50質量%以下が好ましい。従って特に断りがない限り、本明細書において使用する用語「PAN樹脂」は、PANの単体のみならず、PAN+他の樹脂からなる組成物を含むものと理解すべきである。
【0071】
PANのホモポリマー又はコポリマーは、例えば溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の公知の重合方法により調製できる。例えば特開昭62-106906号は、ラジカル懸濁重合によりPAN樹脂を調製する方法を記載している。
【0072】
(2) PAN多孔質膜及びその作製手順
以下PAN微多孔フィルム、PAN紙/不織布、PAN織布及びこれらを作製する手順についてそれぞれ説明する。
(a) PAN微多孔フィルム
PAN微多孔フィルムの透水量は1〜500 m3/m2・day・atmであるのが好ましく、10〜50 m3/m2・day・atmであるのがより好ましい。ここで透水量は、25℃の限外濾過水をPAN微多孔フィルムの円形サンプル(直径:50 mm)に透過させて、単位時間、単位膜面積、単位圧力(単位膜間差圧)当たりの透水速度を算出し、m3/m2・day・atmの単位で表したものである。PAN微多孔フィルムの厚さは5〜100μmであるのが好ましく、10〜70μmの範囲であるのがより好ましい。
【0073】
以下PAN微多孔フィルムの作製手順について説明する。まずPAN樹脂を適当な溶剤に溶解させ、PAN樹脂溶液を調製する。PAN樹脂溶液を調製する際、必要に応じて加熱してもよい。限定的ではないが、PAN微多孔フィルムに用いるPAN樹脂の極限粘度は0.4以上〜2未満が好ましい。極限粘度が0.4未満では膜の強度が弱い。一方2以上では溶剤に対する溶解性が悪く、しかも溶液粘度が高く、成膜性が悪い。PAN樹脂溶液には必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、界面活性剤、顔料、染料、潤滑剤、無機充填材等の各種添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加できる。例えば孔形成剤として微粉珪酸を添加することができる。
【0074】
溶剤としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、エチレンカーボネート、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、ヘキサメチレンホスホアミド等の有機溶剤や、塩化亜鉛、硝酸又はチオシアン酸ナトリウムの濃厚水溶液等が挙げられる。
【0075】
溶解方法は特に限定されないが、攪拌機、ヘンシルミキサー等の混合機を用いればよく、押出機中で均一に混練してもよい。PAN樹脂溶液中のPAN樹脂と溶剤との配合割合に特に制限はないが、両者の合計を100質量%として、PAN樹脂が5〜35質量%であるのが好ましく、10〜30質量%であるのがより好ましい。
【0076】
ダイから押し出した溶液を凝固浴に浸漬することにより、PAN樹脂と溶剤を相分離させた膜状成形物を形成する。凝固浴に使用する溶媒としては、一般的にPAN樹脂溶液に使用した溶剤の水希釈液を使用する。凝固浴の温度は、−10〜90℃が好ましく、0〜70℃がより好ましい。以上のようにして得られる膜状成形物は凝固時に形成される多数の微孔を含有する多孔質体である。
【0077】
上記のようにして形成した膜状成形物を延伸する。膜状成形物を延伸することにより、微孔が拡大する。限定的ではないが、延伸は80〜100℃の温度範囲に調節した熱水中で実施するのが好ましく、これにより多孔質膜構造を安定化できる。延伸は膜状成形物を加熱後、通常のテンター法、ロール法、インフレーション法、圧延法又はこれらの方法の組合せにより行う。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、二軸延伸が好ましい。二軸延伸は、同時二軸延伸、逐次延伸又は多段延伸(例えば同時二軸延伸及び逐次延伸の組合せ)のいずれでもよい。延伸倍率は形成する多孔質膜の開孔率や膜厚に応じて適宜設定すればよいが、通常総面積延伸倍率で2〜30倍とするのが好ましい。延伸により得られたPAN微多孔フィルムはメタノール及び/又は水で洗浄して残存溶剤を除去し、乾燥させるのが好ましい。
【0078】
必要に応じて、PAN微多孔フィルムを熱処理してもよい。熱処理によってPAN微多孔フィルムの結晶が安定化する。熱処理方法としては、熱固定処理及び熱収縮処理のいずれの方法を用いてもよい。特に熱収縮処理を行うと、低収縮率で高強度の多孔質膜が得られるため好ましい。熱固定処理及び熱収縮処理のいずれも公知の方法が使用できる。これらの熱処理は、PAN微多孔フィルムの融点以下の温度範囲内で行う。
【0079】
(b) PAN紙/不織布
PAN紙/不織布の透気度は0.1〜5秒/100 mlであるのが好ましく、0.2〜1秒/100 mlであるのがより好ましい。ここで透気度はJIS P8117により測定したものである。PAN紙/不織布の厚さはPAN微多孔フィルムと同じでよい。PAN紙/不織布の坪量は5〜50 g/m2であるのが好ましく、7〜20 g/m2であるのがより好ましい。
【0080】
PAN紙/不織布はPAN短繊維及びフィブリル化PAN繊維を複合してなるのが好ましい。このような複合化PAN紙/不織布は強度及び緻密性に優れている。フィブリル化PAN繊維の配合割合は特に制限されないが、PAN短繊維及びフィブリル化PAN繊維の合計を100質量%として5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。この配合割合を5質量%未満とすると、PAN紙/不織布の強度が弱くなり、また緻密性も低下する。一方50質量%超とすると、寸法安定性が悪くなる。
【0081】
PAN短繊維及びフィブリル化PAN繊維に用いるPAN樹脂は上記のようにコポリマーからなってもよいが、耐熱性、耐薬品性、耐酸化性、寸法安定性等の観点からホモポリマーからなるのが好ましい。PAN短繊維及びフィブリル化PAN繊維に用いるPAN樹脂としては重量平均分子量(Mw)が15万以上のものを用いるのが好ましく、これによりPAN紙/不織布の耐熱性、耐薬品性、耐久性等が一層向上する。ここでMwは、
式:[η]=3.35×10-4 Mw-0.72(但し[η]は、ジメチルホルムアミドを溶剤とした場合の30℃における極限粘度である。)により求めたものである。
【0082】
PAN紙/不織布は必要に応じてバインダー繊維を含んでもよい。バインダー繊維として、例えばポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維等の合成繊維が挙げられる。バインダー繊維の含有量は、PAN紙/不織布全体を100質量%として70質量%以下が好ましい。
【0083】
以下PAN紙/不織布の作製手順について説明する。まずPAN長繊維を作製する。PAN長繊維の作製には湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法等公知の紡糸技術が適用できる。湿式紡糸法により作製する場合、使用する溶媒及び原液濃度は微多孔フィルムを作製する場合と同じでよい。PAN長繊維の繊度は0.1〜10デニールとするのが好ましい。PAN短繊維は、PAN長繊維を所定の長さに切断することにより得られる。PAN短繊維の長さは、限定する趣旨ではないが、1〜25 mmが好ましく、3〜15 mmがより好ましい。フィブリル化PAN繊維は、PAN短繊維をビーターやレファイナー等を用いて叩解することにより得られる。叩解によりフィブリル化し易いPAN繊維として、例えば(i) 相分離を起こしやすい2種以上のPAN樹脂を含む原液を用いて紡糸したもの、(ii) 紡糸により得られたPAN長繊維を高度に延伸して分子配向性を高めたもの等が挙げられる。
【0084】
PAN紙/不織布は、例えば(i) PAN短繊維(+フィブリル化PAN繊維)を水等の溶媒に分散した後、網上で抄きあげる方法(湿式法)、(ii) 空気中にPAN短繊維(+フィブリル化PAN繊維)を分散させ、降り積もらせる方法、(iii) PAN短繊維(+フィブリル化PAN繊維)をカード又はランダムウェッバーにかけて得られたウェッブをニードルパンチ法、化学接着法、熱接着法等により接着又は絡合させる方法等により作製できる。生産性及び紙/不織布の均一性の観点から湿式法が好ましい。湿式法の場合、例えば円網式、長網式又は短網式の抄紙機を用いて連続的に抄紙する方法(連続抄紙法)により作製できる。連続抄紙法に作製した場合、PAN紙/不織布の引張強度(JIS P8113)は長手方向(MD)が0.1〜4kg/15 mmであるのが好ましく、幅方向(TD)が0.05〜1.3 kg/15 mmであるのが好ましい。なおPAN短繊維及びフィブリル化PAN繊維を複合化したPAN紙/不織布を作製する場合、上記のいずれかの方法により各々の繊維で別個にシート状物を形成し、それらを積層してもよい。
【0085】
湿式法により得られたPAN紙/不織布は、必要に応じて熱カレンダー処理してもよい。熱カレンダー処理方法として熱カレンダーローラーに通す方法が挙げられる。熱カレンダー処理の条件は特に限定されないが、例えば温度を60〜210℃とし、線圧を2kg/cm以上とする。
【0086】
(c) PAN織布
PAN織布の透気度、坪量及び厚さはPAN紙/不織布と同じでよい。PAN織布を構成するPAN長繊維の組成及びMwもPAN紙/不織布と同じでよい。PAN織布はPAN長繊維を用いて平織、綾織、繻子織等の公知の製織方法により作製できる。
【0087】
[3] 固体高分子電解質複合膜の製造方法
以下本発明の固体高分子電解質複合膜の製造方法について説明する。まず(a) 上記リン酸基含有不飽和単量体、(b) 光増感剤並びに(c) 各々必要に応じて添加する上記他の不飽和単量体、上記リン酸変性エポキシ樹脂、及び上記不飽和オリゴマーからなる群から選ばれた少なくとも一種を含有する組成物(以下「不飽和単量体組成物」とよぶ)を調製する。上記リン酸変性エポキシ樹脂及び上記不飽和オリゴマーのいずれかを含有する不飽和単量体組成物を調製する場合、添加する上記リン酸変性エポキシ樹脂及び/又は上記不飽和オリゴマー並びに上記リン酸基含有不飽和単量体の全てが溶解する共通溶媒を添加するのが好ましく、これにより均一な不飽和単量体組成物を調製できる。
【0088】
光増感剤としては、
(i) R-(CO)w -R’(R,R’=水素基又は炭化水素基、w = 2〜3)で表される隣接ポリケトン化合物類(例えば、ジアセチル、ジベンジル等)、
(ii) R-CO-CHOH-R’(R,R’=水素基又は炭化水素基)で表されるα-カルボニルアルコール類(例えば、ベンゾイン等)、
(iii) R-CH(OR”)-CO-R’(R,R’,R”=炭化水素基)で表されるアシロイン・エーテル類(例えば、ベンゾインメチルエーテル等)、
(iv) Ar-CR(OH)-CO-Ar(Ar=アリール基、R=炭化水素基)で表されるα-置換アシロイン類(例えば、α-アルキルベンゾイン等)、及び
(v) 多核キノン類(例えば、9,10-アンスラキノン等)がある。
これらの光増感剤は、それぞれ単独で使用できるが、複数のものを併用してもよい。
【0089】
光増感剤の使用量は不飽和化合物(上記リン酸基含有不飽和単量体並びに必要に応じて添加する上記他の不飽和単量体及び/又は上記不飽和オリゴマー)の合計質量に対して、0.01〜3質量%の範囲、好ましくは0.01〜1.5質量%の範囲である。この使用量を0.01質量%未満とすると、所定の紫外線照射時間内に重合が完結せず、未反応単量体が残留するので好ましくないし、3質量%超とすると、得られる重合体の重合度が低くなる上、重合体が着色する傾向にあるので好ましくない。
【0090】
調製した不飽和単量体組成物を上記PAN多孔質膜に含浸させるか塗布する。PAN多孔質膜の微孔に不飽和単量体組成物を十分浸透させて、PAN多孔質膜に対する固体高分子電解質の接着性を向上させることを目的として、(a) 不飽和単量体組成物が付着したPAN多孔質膜を不活性ガス雰囲気で加圧したり、(b) PAN多孔質膜の裏表面に対して、紫外線照射による活性化処理を施したり、(c) PAN多孔質膜の片面を吸引しながら不飽和単量体組成物を含浸させたりするのが好ましい。加圧する場合、通常は窒素雰囲気下、0.5〜10 kg/cm2の圧力で5〜24時間、室温で行う。紫外線を照射する場合、照射時間は多孔質の裏表面に対してそれぞれ10〜120秒間とする。吸引する場合、例えばヌッチェの上にPAN多孔質膜を載置して吸引しながら不飽和単量体組成物を塗布する方法や、PAN多孔質膜を吸引ロールに接触させながら不飽和単量体組成物を塗布するか、不飽和単量体組成物に浸漬させる方法が挙げられる。上記のような加圧及び吸引は、いずれか一方のみを施してもよいし、両方を組合せてもよい。
【0091】
またPAN多孔質膜に対する固体高分子電解質の接着性を向上させることを目的として、不飽和単量体組成物を上記PAN多孔質膜に付着させる前に、上記リン酸変性エポキシ樹脂をPAN多孔質膜に浸透させてもよい。
【0092】
上記のようにして不飽和単量体組成物を付着させたPAN多孔質膜を紫外線透過性の支持基板に挟み、紫外線を照射して不飽和化合物(上記リン酸基含有不飽和単量体並びに必要に応じて添加する上記他の不飽和単量体及び/又は上記不飽和オリゴマー)を光重合させることにより、固体高分子電解質複合膜が得られる。
【0093】
不飽和単量体組成物を紫外線照射重合するに当たって使用する紫外線透過性板及び支持基板は紫外線透過率が高いことのみならず、紫外線照射による重合時の昇温に耐える耐熱性を有すること、及び不飽和単量体組成物及びこれを重合して得られる固体高分子電解質と接着せず、剥離性が良好なことが必要である。
【0094】
支持基板として通常使用するガラス平板は紫外線透過率と耐熱性については非常に良いが、本発明に使用する不飽和化合物の(共)重合により得られる固体高分子電解質と密着するので、予めガラス平板の表面にシリコーン系又はフッ素系の剥離剤を塗布しておくか、フッ素樹脂系の薄い透明フィルムを貼りつけた上で使用するのが好ましい。
【0095】
支持基板としては、ガラス平板以外に、ポリパーフルオロビニルエーテル樹脂(PFA)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)等のフッ素系樹脂の他、ポリ3-メチルペンテン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の紫外線透過率の良い100℃以上の耐熱性を有する樹脂平板を使用することができる。
【0096】
不飽和単量体組成物を含浸させるか塗布したPAN多孔質膜を2枚の支持基板の間に挟んで紫外線照射を行うに当たって、空気及び余分な不飽和単量体組成物を系外に絞り出す必要がある。例えば図1に示すように、PAN多孔質膜12に不飽和単量体組成物11を付着させた複合膜1を2枚の支持基板2,2の間に挟み、均等に圧力をかけて、クリップ又はクランプ3で止めた状態で、水平に保ちながら紫外線照射を行うのが好ましい。照射は、少なくとも片面に対して1〜15分間行う。照射を表裏交互に行う場合は、片面に対して1〜15分間行う。光重合時の紫外線照射強度は5〜100μW/cm2、好ましくは10〜80μW/cm2とする。紫外線照射距離は、上記照射時間の範囲で十分硬化するように適宜設定する。光重合法により得られた膜に対して、機械的強度及び耐溶剤性の向上を目的として、100〜140℃で1〜15分程度加熱処理するのが好ましい。特に不飽和単量体組成物が上記リン酸変性エポキシ樹脂を含む場合、120〜140℃で5〜15分程度加熱処理するのが好ましい。
【0097】
光重合法により得られた複合膜は、単量体等の未反応成分等の不純物も含んでいるので、不純物を抽出するのが好ましい。抽出は複合膜を貧溶媒に浸漬した後、取り出すことにより行う。貧溶媒としては水、メタノール等が好ましい。貧溶媒として水やメタノールを使用する場合は、各々を単独で用いてもよいし、両者を組合せて用いてもよい。1回の抽出操作に使用する貧溶媒の量は、複合膜の10倍容積〜100倍容積とする。浸漬温度は通常室温でよく、必要に応じて複合膜が劣化しない程度に加熱しても構わない。浸漬時間に関して、例えば貧溶媒として水又はメタノールを用いて室温で抽出する場合、約24時間浸漬すれば、1回の抽出操作でほぼ不純物を抽出できる。必要に応じて、貧溶媒による抽出を繰り返してもよい。貧溶媒による抽出を繰り返す場合、各抽出操作の間に加熱減圧乾燥操作を入れてもよい。貧溶媒に浸漬した後は、100〜140℃で1〜90分程度加熱処理することにより乾燥させる。
【0098】
PAN多孔質膜と不飽和単量体組成物の使用割合は、PAN多孔質膜/不飽和単量体組成物=1/20〜1/2(質量比)の範囲であるのが好ましい。
【0099】
不飽和単量体組成物の粘度を下げ、PAN多孔質膜への含浸を容易にし、PAN多孔質膜への付着量を減少せしめて複合膜の厚さを薄くするなどの目的で、希釈剤として低沸点溶剤を加えることもできる。
【0100】
[4] 固体高分子電解質複合膜の特性
PAN多孔質膜はリン酸基含有(共)重合体との親和性が良く、このためPAN多孔質膜にリン酸基含有(共)重合体からなる固体高分子電解質を担持した本発明の複合膜は、固体高分子電解質と多孔質膜との接着性に優れている。PAN多孔質膜はまた、耐熱性及び強度に優れている。このため本発明の複合膜は電池用電解質膜として使用した場合に、優れた耐久性を示すことが期待される。
【0101】
本発明の固体高分子電解質複合膜は、90%の相対湿度及び30〜80℃の温度条件下において導電率が10-3〜10-2 S・cm-1のオーダーにあり、優れたプロトン伝導性を有し、かかるプロトン伝導性の温度依存性が小さい。ここで導電率とは、複素インピーダンス法により測定したデータを平面複素インピーダンス解析し、さらにcole-cole プロット図形処理をして得られた抵抗値から求めたものである。
【0102】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【実施例】
【0103】
実施例1〜9
(1) 不飽和単量体及びリン酸変性エポキシ樹脂
(i) Phosmer M:メタクリロイルオキシエチルホスフェート(分子量:210)、ユニケミカル(株)製。
(ii) アクリロニトリル:分子量53
(iii) Phosmer 2M:メタクリロイルオキシエチルホスフェート(分子量:210)とジ(メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート(分子量:322)とを理論モル比約1:1で含有する組成物、ユニケミカル(株)製。
(iv) Phosmer 2A:アクリロイルオキシエチルホスフェート(分子量:196)とジ(アクリロイルオキシエチル)ホスフェート(分子量:294)を理論モル比約1:1で含む組成物、ユニケミカル(株)製。
(v) リン酸変性エポキシ樹脂(CEP):特開2001-151584号の実施例1に従って調製したもの[リン酸酸価:549.5 mg KOH/g、リン酸当量:203.8 g/eq.(両者とも実測値)]。
【0104】
(2) PAN微多孔フィルム(PAN微多孔膜)の作製
17質量部のアクリロニトリル(90質量%)−アクリル酸メチル(10質量%)共重合体を、83質量部の70質量%硝酸水溶液に溶解させてPAN樹脂溶液を調製した。得られたPAN樹脂溶液を20℃に保持しながらTダイから押し出し、18℃に温調した31質量%硝酸水溶液に浸漬して、厚さ0.12 mmの膜状成形物を形成した。得られた膜状成形物を、95℃に温調した熱水浴中で2.5倍×2.5倍になるように二軸延伸した。延伸後のPAN微多孔膜をメタノールに一夜浸漬した後、室温で時間をかけて乾燥した。得られたPAN微多孔膜の厚さは40μmであり、透水量は35 m3/m2・day・atmであった。
【0105】
(3) 固体高分子電解質複合膜の作製
用いた不飽和単量体及びリン酸変性エポキシ樹脂の配合割合を表3に示す。まず表3に記載の不飽和単量体及びリン酸変性エポキシ樹脂に、光増感剤として[イルガキュア651(2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン) +イルガキュア500(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン) = 1 wt% + 0.5 wt%](対全単量体)を溶解させて各不飽和単量体組成物を調製した。得られた各不飽和単量体組成物を用いて以下の手順に従い、固体高分子電解質複合膜を作製した。まずPAN微多孔膜に対する固体高分子電解質の接着性を向上させることを目的として、以下の(a)〜(c)の処理を施した。
【0106】
(a) 実施例1、3、5〜8:PAN微多孔膜に不飽和単量体組成物を浸漬した後、表3に示す条件下で窒素加圧処理した。但し実施例7では、不飽和単量体を浸漬させる前に、CEPをPAN微多孔膜に2時間かけて浸透させた。
(b) 実施例2、4、9:PAN微多孔膜の両面に対して、紫外線を表3に示す時間照射し、活性化処理した。
(c) 上記(a)又は(b)の処理を施したPAN微多孔膜をヌッチェの上に載置し、吸引しながら各不飽和単量体組成物を通過させ、PAN微多孔膜の微孔に不飽和単量体組成物を充填した。
【0107】
次いで図1及び図2に示すように、PAN微多孔膜12に不飽和単量体組成物11を付着させた複合膜1を、フッ素系樹脂フィルムを付着した2枚のガラス平板2,2間に挟んだ状態とし、表3に示す条件で光重合させることにより各固体高分子電解質複合膜を作製した。得られた各複合膜に対して130℃で5分間の熱処理を施した。さらに実施例5〜8ではメタノールに室温で24時間浸漬する抽出処理を施し、実施例9ではメタノール及び水の混合溶剤[メタノール/水=5/95(質量比)]に室温で24時間浸漬する抽出処理を施した。作製した各固体高分子電解質複合膜のPAN微多孔膜と重合体との質量比、厚さ等を表3に示す。実施例1〜9の各複合膜はいずれも透明な外観を有し、固体高分子電解質とPAN微多孔膜との接着性が良好であるといえる。
【0108】
比較例1
支持体としてポリエチレン微多孔膜を使用した以外は実施例1と同様にして、固体高分子電解質複合膜を作製した。しかし得られた複合膜は白濁しており、固体高分子電解質が十分に付着していなかった。またこの複合膜は、メタノールに浸漬すると、固体高分子電解質がポリエチレン微多孔膜から容易に剥離した。
【0109】
【表3】

表3(続き)

表3(続き)

【0110】
注:(1) メタクリロイルオキシエチルホスフェート(分子量:210)。
(2) アクリロニトリル(分子量:53)。
(3) メタクリロイルオキシエチルホスフェート(分子量:210)とジ(メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート(分子量:322)とを理論モル比約1:1で含有する組成物。
(4) アクリロイルオキシエチルホスフェート(分子量:196)とジ(アクリロイルオキシエチル)ホスフェート(分子量:294)を理論モル比約1:1で含む組成物。
(5) リン酸変性エポキシ樹脂(ノボラック型)
(6) 25℃の限外濾過水をPAN微多孔フィルムの円形サンプル(直径:50 mm)に透過させて、単位時間、単位膜面積、単位圧力(単位膜間差圧)当たりの透水速度を算出した。
(7) 窒素雰囲気下、室温で一夜加圧。
(8) クリーン・クテノロジー(株)製UV照射器(800 W)を使用し、PAN微多孔膜を紫外線で活性化処理した(波長:253 nm)。
(9) PAN微多孔膜をヌッチェの上に載置して、20 gの不飽和単量体組成物を2回通過させ、さらに20 gの不飽和単量体組成物をPAN微多孔膜に塗布後に吸引して不飽和単量体組成物を浸透させた。
(10) 高圧水銀灯[セン特殊光源(株)製キュアラブHLR-1000F-22(1kw)]を使用し、光重合した(紫外線波長:365 nm、照射強度15〜30μW/cm2、照射距離:25 cm)。
(11) 不飽和単量体を浸漬させる前に、CEPをPAN微多孔膜に2時間かけて浸透させた。
(12) メタノール/水=5/95(質量比)。
【0111】
実施例10〜12
(1) PAN紙の作製
(i) PAN短繊維の調製
ホモPAN樹脂(Mw:15万)をチオシアン酸ナトリウム水溶液に溶解し、湿式紡糸法によりPAN長繊維を調製し、これを5mmの長さにカットしてPAN短繊維を調製した。
【0112】
(ii) フィブリル化PAN繊維の調製
上記(i)と同様にして作製したPAN短繊維をビーターで叩解することによりフィブリル化PAN繊維を調製した。
【0113】
(iii) PAN紙の調製
69.7質量部の上記(i)のPAN短繊維、及び30.3質量部の上記(ii)のフィブリル化PAN繊維を水中に均一分散させ(固形分:0.5質量%)、円網抄紙機を用いて湿式抄紙した後、ヤンキードライヤーにより104℃で乾燥し、110℃の温度及び100 kg/cmの線圧で熱カレンダー処理し、PAN紙を調製した。得られたPAN紙をメタノールに2時間浸漬した後、室温で濾紙上に一夜放置し、105℃で5分間乾燥した。得られたPAN紙の坪量及び厚さを表4に示す。
【0114】
(2) 固体高分子電解質複合膜の作製
不飽和単量体として、実施例1〜9と同様のPhosmer M、同2M、同2A及びアクリロニトリルを表4に示す配合割合で用い、光増感剤として[イルガキュア651+イルガキュア500=2wt%+1wt%](対全単量体)を溶解させて各不飽和単量体組成物を調製した。得られた各不飽和単量体組成物を、PAN紙に付着させ、表4に示す条件で光重合させることにより各固体高分子電解質複合膜を作製した。
【0115】
【表4】

【0116】
注:(1)〜(4) 表3と同じ。
(5) 高圧水銀灯[セン特殊光源(株)製キュアラブHLR-1000F-22(1kw)]を使用し、光重合した(紫外線波長:365 nm、照射強度15〜30μW/cm2、照射距離:25 cm)。
(6) 複合膜を、大過剰のメタノールに室温で24時間浸漬し、105℃で1時間乾燥した後の質量減少を測定した。
(7) 複合膜を、大過剰の水に室温で24時間浸漬し、105℃で1時間乾燥した後の質量減少を測定した。
【0117】
<プロトン伝導性の評価>
プロトン伝導性は複素インピーダンス法を用いて測定した。上述の方法により作製した実施例1〜12の複合膜から切り出した3cm×1cmの矩形状サンプルを、開放系インピーダンスセルに設置した。このセルを恒温恒湿器内に設置し、相対湿度:90%、測定温度範囲:30〜80℃でのインピーダンス測定、及び相対湿度範囲:60〜90%、測定温度:60℃でのインピーダンス測定(実施例1及び2)を行った。得られたデータを平面複素インピーダンス解析し、その結果をcole-cole プロット図形処理をして得られたサンプルの抵抗値から導電率を求めた。結果を図3〜6に示す。
【0118】
図3、4、6に示す結果から、本発明の固体高分子電解質複合膜の導電率は、90%の相対湿度及び30〜80℃の温度範囲において、10-3〜10-2 S・cm-1のオーダーにあり、リン酸基を官能基とする高分子電解質としては良好な水準であり、かつ導電率の温度依存性が小さいことが分かる。特に実施例1〜9のPAN微多孔フィルムを用いた複合膜は、導電率に優れているとともに、導電率の温度依存性が小さく、中でも固体高分子電解質がリン酸変性エポキシ樹脂を含む複合膜(実施例8及び9)は高い導電性を示した。また実施例3及び8の比較、並びに実施例4及び9の比較により、抽出処理の有無に関わらず導電性はほぼ同等であった。また図5に示す結果から、本発明の固体高分子電解質複合膜の導電率は、60℃の温度及び60〜90%の相対湿度範囲において、10-3〜10-2 S・cm-1のオーダーにあり、リン酸基を官能基とする高分子電解質としては良好な水準であった。
【0119】
<メタノール抽出試験>
実施例10〜12のメタノール抽出した複合膜を、大過剰のメタノールにさらに室温で24時間浸漬し、105℃で1時間乾燥した後の質量減少を測定した。表4から、いずれの膜でもメタノール抽出残率が90%を超えており、優れたメタノール抽出性を示した。
【0120】
<水抽出試験>
実施例10〜12の水抽出した複合膜を、大過剰の水に室温でさらに24時間浸漬し、105℃で1時間乾燥した後の質量減少を測定した。表4から、いずれの膜でも水に対する抽出率が10質量%以下であり、優れた水抽出性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】ガラス平板2枚の間に固体高分子電解質複合膜を挟んだ状態を示す側面図である。
【図2】ガラス平板2枚の間に固体高分子電解質複合膜を挟んだ状態を示す平面図である。
【図3】実施例1〜4の固体高分子電解質複合膜について、温度T(℃)と導電率log(σ/S・cm−1) との関係をcole-cole プロットにより示すグラフである。
【図4】実施例5〜9の固体高分子電解質複合膜について、温度T(℃)と導電率log(σ/S・cm−1) との関係をcole-cole プロットにより示すグラフである。
【図5】実施例1、2の固体高分子電解質複合膜について、相対湿度(%)と導電率log(σ/S・cm−1) との関係をcole-cole プロットにより示すグラフである。
【図6】実施例10〜12の固体高分子電解質複合膜について、温度T(℃)と導電率log(σ/S・cm−1) との関係をcole-cole プロットにより示すグラフである。
【符号の説明】
【0122】
1・・・固体高分子電解質複合膜
11・・・固体高分子電解質
12・・・PAN多孔質膜
2・・・ガラス平板
3・・・クリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 分子内に1個以上のリン酸基と1個以上のエチレン性不飽和結合とを有するリン酸基含有不飽和単量体、又は(b) 前記リン酸基含有不飽和単量体及びこれと共重合できる他の不飽和単量体を、ポリアクリロニトリル多孔質膜に含浸させ、(共)重合してなることを特徴とする固体高分子電解質複合膜。
【請求項2】
請求項1に記載の固体高分子電解質複合膜において、前記リン酸基含有不飽和単量体は、下記一般式(1):
【化1】

(但しR1は水素基又はアルキル基であり、R2は水素基又は置換もしくは無置換のアルキル基であり、nは1〜6の整数である。)により表されるものを含むことを特徴とする固体高分子電解質複合膜。
【請求項3】
請求項2に記載の固体高分子電解質複合膜において、R1はH又はCH3であり、R2はH、CH3又はCH2Clであることを特徴とする固体高分子電解質複合膜。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の固体高分子電解質複合膜において、前記他の不飽和単量体は、(c) 分子内に1個以上のエチレン性不飽和結合と1個以上の官能基とを有する不飽和単量体及び/又は(d) 分子内に1個以上のエチレン性不飽和結合を有するが官能基を有しない不飽和単量体であり、前記(c) 官能基を有する不飽和単量体はスルホン酸基、カルボン酸基、アルコール性水酸基及びアミノ基からなる群から選ばれた少なくとも一種の官能基を有し、前記(d) 官能基を有しない不飽和単量体は(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル類、置換又は無置換のスチレン類、ビニル類、及び分子内に1個以上のフッ素基と1個以上のエチレン性不飽和結合とを有するフッ素基含有不飽和単量体からなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする固体高分子電解質複合膜。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の固体高分子電解質複合膜において、前記リン酸基含有不飽和単量体は下記一般式(2):
【化2】

(但しR3及びR6はそれぞれ独立に水素基又はアルキル基であり、R4及びR5はそれぞれ独立に水素基又は置換もしくは無置換のアルキル基であり、k及びpはそれぞれ独立に1〜6の整数である。)により表されるリン酸基含有ジエステル系不飽和単量体を含むことを特徴とする固体高分子電解質複合膜。
【請求項6】
請求項5に記載の固体高分子電解質複合膜において、R3及びR6はそれぞれ独立にH又はCH3であり、R4及びR5はそれぞれ独立にH、CH3又はCH2Clであることを特徴とする固体高分子電解質複合膜。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の固体高分子電解質複合膜において、さらにリン酸変性エポキシ樹脂を含むことを特徴とする固体高分子電解質複合膜。
【請求項8】
請求項7に記載の固体高分子電解質複合膜において、前記リン酸変性エポキシ樹脂は、下記一般式(3):
【化3】

(但しR7及びR9はそれぞれ置換又は無置換のアルキレン基を表し、R8は水素、ハロゲン原子或いは置換又は無置換のアルキル基を表し、mは重合度を表す。一般式(3)により表される化合物は2種以上の構成単位を含む共重合体又は2種以上の構成単位からなる混合物であってもよい。)により表されるノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ環に少なくとも部分的にリン酸基を導入することにより変性し、一分子中にリン酸基と水酸基を共存させたもの、及び/又は下記一般式(4):
【化4】

(但しR10はビスフェノール類から導かれる残基、或いは炭素数1〜4の置換又は無置換のアルキレン基を表し、m'は重合度を表す。一般式(4)により表される化合物は2種以上の構成単位を含む共縮合体又は2種以上の構成単位からなる混合物であってもよい。)により表されるビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環に少なくとも部分的にリン酸基を導入することにより変性し、一分子中にリン酸基と水酸基を共存させたものであることを特徴とする固体高分子電解質複合膜。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の固体高分子電解質複合膜において、前記ポリアクリロニトリル多孔質膜は、ポリアクリロニトリル樹脂から湿式法により製膜された微多孔フィルム、並びにポリアクリロニトリル繊維からなる紙、織布及び不織布からなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする固体高分子電解質複合膜。
【請求項10】
請求項9に記載の固体高分子電解質複合膜において、前記微多孔フィルムからなるポリアクリロニトリル多孔質膜の透水量は1〜500 m3/m2・day・atmであることを特徴とする固体高分子電解質複合膜。
【請求項11】
請求項9に記載の固体高分子電解質複合膜において、前記紙又は不織布からなるポリアクリロニトリル多孔質膜は、紡糸により得られたポリアクリロニトリル長繊維を切断した短繊維と、前記短繊維を叩解することにより得られたフィブリル化繊維とを複合してなることを特徴とする固体高分子電解質複合膜。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の固体高分子電解質複合膜において、前記ポリアクリロニトリル多孔質膜は、(e) アクリロニトリルホモポリマー並びに/又は(f) アクリロニトリル及びこれと共重合可能なモノマーのコポリマーからなることを特徴とする固体高分子電解質複合膜。
【請求項13】
請求項12に記載の固体高分子電解質複合膜において、前記アクリロニトリルと共重合可能なモノマーは、炭素数が4以下のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル;(メタ)アクリル酸ブロモエチル;メタクリロニトリル;イタコン酸;(メタ)アクリル酸アミド;脂肪酸ビニル;ビニルピロリドン;メチルビニルケトン;ハロゲン化ビニル;ハロゲン化ビニリデン;スチレン;ブタジエン;ビニルピリジン;メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、p-スチレンスルホン酸及びこれらの塩;並びにオレフィンからなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする固体高分子電解質複合膜。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の固体高分子電解質複合膜を用いた燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−73495(P2006−73495A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325557(P2004−325557)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000004053)日本エクスラン工業株式会社 (58)
【出願人】(592187833)ユニケミカル株式会社 (23)
【Fターム(参考)】