説明

ポリアミック酸の組成物及びその製造方法、並びにポリイミド樹脂、半導電性部材及び画像形成装置

【課題】ポリアミック酸とポリアニリン粒子とを含有し、製造後の特性変動が少ないポリアミック酸の組成物及びその製造方法、並びに、抵抗ばらつきが小さく機械的特性及び表面性に優れたポリイミド樹脂、半導電性部材及び該半導電性部材であるベルトを備える画像形成装置を提供することである。
【解決手段】ポリアミック酸と、アスペクト比が1より大きく100以下である繊維状の部分を有するポリアニリン粒子と、ドーパントと、溶媒と、を含むポリアミック酸の組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミック酸の組成物及びその製造方法、並びにポリイミド樹脂、半導電性部材及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置は、感光体上に電荷を形成し、変調した画像信号をレーザー光などで静電潜像を形成した後、帯電したトナーにより静電潜像を現像してトナー像とする。次いでこのトナー像を直接または中間転写体を介して紙などの記録媒体に転写することにより画像を得る装置である。
【0003】
ここで、感光体上のトナー像を中間転写体に一次転写し、次いで、中間転写体上のトナー像を紙などの記録媒体へ二次転写する方法、いわゆる、中間転写方式を採用した画像形成装置に用いられる中間転写体は、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等とポリカーボネートとのブレンドなどの熱可塑性樹脂に、カーボンブラック等の導電剤を分散させたベルトが提案されている。
【0004】
一方、導電材料としてカーボンブラックをポリイミド樹脂に分散させた中間転写体が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、ポリイミド樹脂の成形品に導電性(体積抵抗率で10〜1013Ωcm程度、以下においてもこれに準ずる)を付与する方法として、導電材料としてポリアニリンなどの導電性高分子を使用する方法が知られている(例えば、特許文献3〜5参照)。ポリアニリンの如く導電性高分子は、ポリイミドワニスに溶解又は分散しやすいため、成形品を所定の抵抗値に調整することが容易となり、かつ、ばらつきのない抵抗値が得られるという長所がある。
【特許文献1】特許第2560727号明細書
【特許文献2】特開平5−77252号公報
【特許文献3】特開平8−259709号公報
【特許文献4】特開平9−176329号公報
【特許文献5】特開2003−226765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ポリアミック酸とポリアニリン粒子とを含有し、製造後の特性変動が少ないポリアミック酸の組成物及びその製造方法を提供することである。また、本発明の目的は、抵抗ばらつきが小さく機械的特性及び表面性に優れたポリイミド樹脂、該ポリイミド樹脂を含む半導電性部材及び該半導電性部材であるベルトを備える画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者等は、以下の本発明により当該課題を解決できることを見出した。
すなわち請求項1に係る発明は、ポリアミック酸と、アスペクト比が1より大きく100以下である繊維状の部分を有するポリアニリン粒子と、ドーパントと、溶媒と、を含むポリアミック酸の組成物である。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のアスペクト比が、3〜50の範囲であるポリアミック酸の組成物である。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載のポリアニリン粒子の最大長が、0.5〜50μmの範囲であるポリアミック酸の組成物である。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載のポリアニリン粒子の含有量が、1〜15質量%の範囲であるポリアミック酸の組成物である。
【0010】
請求項5に係る発明は、アスペクト比が1よりも大きく100以下である繊維状の部分を有するポリアニリン粒子と、該ポリアニリンを導電化させるドーパントと、を含むポリイミド樹脂である。
【0011】
請求項6に係る発明は、10℃、15%RHの環境下における表面抵抗率Rの常用対数値と、28℃、85%RHの環境下における表面抵抗率Rの常用対数値との差(logR−logR)が0.01〜1.0(logΩ/□)の範囲である請求項5に記載のポリイミド樹脂である。
【0012】
請求項7に係る発明は、アスペクト比が1よりも大きく100以下である繊維状の部分を有するポリアニリン粒子を含むポリイミド樹脂を含有する半導電性部材である。
【0013】
請求項8に係る発明は、ベルト形状である請求項7に記載の半導電性部材である。
【0014】
請求項9に係る発明は、請求項8に記載のベルト形状である半導電性部材を備える画像形成装置である。
【0015】
請求項10に係る発明は、アスペクト比が1よりも大きく100以下である繊維状の部分を有し導電化されたポリアニリン粒子(A)を、ポリアミック酸が含まれる液中に分散した第1分散液を調製する第1分散液調製工程と、
導電化されていないポリアニリン粒子(B)及びドーパントを、ポリアミック酸が含まれる液中に分散した第2分散液を調製する第2分散液調製工程と、
前記第1分散液及び前記第2分散液を混合する混合工程と、を有するポリアミック酸の組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、製造後の特性変動が少ないポリアミック酸の組成物を得ることができる。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、製造後の特性変動がより少ないポリアミック酸の組成物を得ることができる。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、さらに成形後のポリイミド樹脂の表面性を向上させることができる。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、さらに成形後のポリアミド樹脂の膜厚バラツキを小さくすることができる。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、抵抗ばらつきが小さく機械的特性及び表面性に優れたポリイミド樹脂を得ることができる。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、環境変化に基づく問題の発生を効果的に回避することができる。
請求項7に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、抵抗ばらつきが小さく機械的特性及び表面性に優れた半導電性部材を得ることができる。
請求項8に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、抵抗ばらつきが小さく機械的特性及び表面性に優れた半導電性部材を各種用途に有効に活用することができる。
請求項9に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、高品質の画像を得ることが可能な画像形成装置を得ることができる。
請求項10に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、繊維状の部分を有しアスペクト比が1より大きく100以下であるポリアニリン粒子を用いた場合にも、粒子の分散性や液安定性に優れたポリアミック酸の組成物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
<ポリアミック酸の組成物>
本発明のポリアミック酸の組成物は、ポリアミック酸と、アスペクト比が1より大きく100以下である繊維状の部分を有するポリアニリン粒子と、ドーパントと、溶媒と、を含むことを特徴とする。
【0018】
ポリイミド樹脂に対する導電材料としてポリアニリンを使用する際、ポリイミド樹脂の原料であるポリアミック酸溶液中に、ポリアニリンを導電化するためのドーパントとして酸性化合物を多量に添加しなければならず、その酸性化合物の存在により、ポリアミック酸の加水分解を促進してしまい、ポリアミック酸の組成物の粘度を低下させてしまうことや、また、イミド化反応を促進してポリアミック酸の組成物が増粘したり、更には、ポリイミド樹脂が析出してしまう場合がある。
【0019】
本発明においては、繊維状の部分を有する特定の形状のポリアニリン粒子が粒状のポリアニリン粒子より低抵抗であり、この特定形状のポリアニリン粒子をポリアミック酸溶液中に分散させることにより、ポリアニリン粒子の含有量を低減でき、ポリアミック酸の組成物の特性の変動を抑えることができることが見出された。また、理由は定かではないが、上記ポリアニリン粒子を含有させることで、得られるポリイミド成形品の表面性が向上し抵抗ばらつきも改善されることがわかった。
以下、まず本発明のポリアミック組成物の各構成について説明する。
【0020】
(ポリアニリン粒子)
本発明におけるポリアニリン粒子は、導電材料として用いられるもので、ポリアニリンの合成・構造については、特開平3−28229号公報に詳しく述べられている。
本発明におけるポリアニリン粒子は、例えばアニリンまたはアニリン誘導体から酸化重合法にて容易に製造できる。ポリアニリン粒子はその酸化の状態によってロイコエメラルジン(又はロイコエマラルジン)(leucoemeraldine)、エメラルジン(またはエマラルジン)(emeraldine)及びパーニグルアニリン(pernigraniline)の構造をとることが知られている。この中でも、エメラルジン構造を持つポリアニリン粒子が導電化(ドーピング)した時に一番高い電気伝導度を持ち、空気の中で安定なので一番有用である。ポリアニリンは酸化されやすいため、導電性向上、安定化のためにはパーニグルアニリン構造がより少ないことが好ましく、より還元状態からドーピング処理することが望ましい。
【0021】
なお、上記還元状態とするための還元剤としては、フェニルヒドラジン、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン等のヒドラジン化合物、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素リチウム等の還元性水素化金属化合物等が好適に用いられる。
【0022】
ポリアニリンの合成は、例えば、プロトン酸の存在下に溶剤中にて5℃以下、望ましくは0℃以下の温度を保持しつつ、アニリンに酸化剤を作用させて酸化重合を行い、後述する特定の化合物を用いて導電化(ドーピング)されたアニリンの酸化重合体を生成させる。次いで、この導電化(ドーピング)されたポリアニリンを塩基性物質によって脱導電化(ドーピング)することによって得ることができる。
【0023】
ポリアニリン粒子の粒子形状は電解重合時の電解質によって著しく異なり、アニリンを酸性水溶液中で電解酸化することにより電極表面に緑色の膜として極めて簡単に得ることができるが、酸の種類によって、繊維状(過塩素酸やテトラフルオロホウ酸水溶液から重合)、粒状(硝酸や塩酸水溶液から重合)、珊瑚状(硫酸水溶液から重合)の微細構造が得られる。
【0024】
本発明におけるポリアニリン粒子は、アスペクト比(長径/短径)が1より大きく100以下である繊維状の部分を有する。以下、このポリアニリン粒子を「特定形状のポリアニリン粒子」という場合がある。
ここで繊維状の部分とは、いわゆる糸状の部分のみでなく、これらが絡み合った凝集体でもよく、また単に細長い棒状や突起状の部分等も含むものである。そして本発明におけるポリアニリン粒子は、上記繊維状の部分のみから構成されてもよいし、繊維状の部分に粒状や角状等の部分が結合したものであってもよい。
【0025】
この場合、前記繊維状の部分とは、ポリアニリン粒子の全体における糸状の部分が連続する部分のみをいい、例えば繊維状の部分の端部に粒状の部分が結合した形状の場合には該粒状の部分を除く部分であり、繊維状の部分の途中に粒状の部分が結合している場合には糸状の部分からはみ出した粒状の部分を除く部分である。
【0026】
上記繊維状の部分のアスペクト比が1の場合は、粒子全体として通常の球状に近いものとなるため、低抵抗化を図ることができない。アスペクト比が100を超える場合は、粒子が細長くなりすぎ組成物中の分散が悪くなるだけでなく後述するポリイミド成形物での表面性が悪くなる。
【0027】
前記アスペクト比は3〜50の範囲であることが望ましく、10〜30の範囲であることがより望ましい。アスペクト比は、水溶液のpHを制御することで調節することができる。
また、特定形状のポリアニリン粒子における繊維状の部分の長さは0.1〜10μmの範囲であることが、低抵抗な粒子とする観点から望ましい。同様の観点から、繊維上の部分の太さは0.002〜3.3μmの範囲であることが好ましい。
【0028】
特定形状のポリアニリン粒子は、上述のように、過塩素酸やテトラフルオロホウ酸を含有する水溶液を用いて製造することができる。こうして製造されるポリアニリン粒子として、例えば、最大径が50μm以下である頭部分と、アスペクト比が1より大きく100以下である尾部分(繊維状の部分)とから構成される形状を有するものが得られるが、この場合は、例えば直線状の尾部分の断面における最大幅が最大径の1/10(μm)以下である場所から見て幅が最大径の1/10(μm)以上である場所を含む方を頭部分とし、断面における幅が最大径の1/10(μm)以下である場所から見て幅が最大径の1/10(μm)以下である場所を含む方を尾部分とする。
頭部分の最大径は、ポリアニリンの重合時間を制御することで調節することができ、重合時間を長くするほど最大径を大きくすることができる。また、尾部分のアスペクト比は、水溶液のpHを制御することで調節することができる。
【0029】
本発明における特定形状のポリアニリン粒子の最大長は0.5〜50μmの範囲であることが望ましく、0.5〜10μmの範囲であることがより望ましい。
最大長が0.5μmに満たないと、組成物中で粒子の凝集が始まり液特性が変動してしまう場合がある。50μmを超えると、分散安定性が悪くなるだけでなく樹脂成形品の表面性が悪化する場合がある。
【0030】
ポリアミック酸の組成物中における特定形状のポリアニリン粒子の形状や粒子径は、ポリアミック酸の組成物を硬化させてポリイミド樹脂とし、該ポリイミド樹脂中に分散する粒子を観察することにより確認することができる。その確認方法については後述する。
【0031】
なお、本発明のポリアミック酸の組成物中には、前記アスペクト比が1より大きく100以下の繊維状の部分を有するポリアニリン粒子だけでなく、後述するように粒状、珊瑚状等のポリアニリン粒子が含まれてもよい。
その場合、該ポリアニリン粒子の最大径は0.5〜10μmのものを用いることが望ましい。上記粒状等のポリアニリン粒子が含まれる場合のポリアミック酸の組成物中の含有量については後述する。
【0032】
本発明のポリアミック酸の組成物における特定形状のポリアニリン粒子の含有量は1〜15質量%の範囲とすることが望ましく、3〜10質量%の範囲とすることがより望ましい。
含有量が1質量%に満たないと、導電材料としてのポリアニリン粒子が不足し所望の抵抗値を有する樹脂成形品を得ることができない場合がある。15質量%を超えると、樹脂成形品の抵抗値が低くなりすぎるだけでなく、表面性も悪化する場合がある。
【0033】
(ポリアミック酸)
本発明におけるポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを等モル量有機極性溶媒中で重合反応させて得られるものである。
以下、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物について説明する。
【0034】
−テトラカルボン酸二無水物−
ポリアミック酸の生成に用いられ得るテトラカルボン酸二無水物としては、特に制限はなく、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も使用できる。
芳香族系テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げることができる。
【0035】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物;等を挙げることができる。
【0036】
本発明に使用されるテトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物が望ましく、更に、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、がより好適に使用される。
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0037】
−ジアミン化合物−
ポリアミック酸の生成に用いられ得るジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されない。
具体的には、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン;等を挙げることができる。
【0038】
本発明に使用されるジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、が望ましい。
これらのジアミン化合物は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
本発明におけるポリアミック酸としては、成型体の強度の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族系ジアミンとから構成されるものが望ましい。さらには、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とオキシジアニリンから構成されるものが望ましい。
【0040】
このポリアミック酸の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系或いはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更には、キシレン、トルエンなどの芳香族炭化水素も使用可能である。
【0041】
ポリアミック酸重合時の反応溶液中の固形分濃度は、特に規定されるものではないが、5〜50質量%の範囲が望ましく、特に、10〜30質量%の範囲が好適である。固形分濃度が5質量%未満であるとポリアミック酸の重合度が低く、最終的に得られる成型体の強度が低下する場合がある。また、重合時の固形分濃度が、50質量%より高いと原料モノマーの不溶部が生じ反応が進行しない場合がある。
【0042】
ポリアミック酸重合時の反応温度としては、0℃〜80℃の範囲で行われる。反応温度が0℃以下であると、溶液の粘度が高くなり、反応系の攪拌を効率的に行うことができなくなるためである。また、反応温度が80℃より高くなると、ポリアミック酸の重合と平行して、一部イミド化反応が起こるため、反応制御の点で問題がある。
【0043】
(ドーパント)
ポリアニリンは特定の化合物を用いることで導電化させることができる。本発明においては、「ドーパント」とはポリアニリンを導電化させる化合物を意味する。ドーパントとしては、プロトン酸などの酸性化合物を好適に用いることができる。また、プロトン酸としては、ポリイミド成型時の熱処理によって、揮発・分解しない化合物が望ましく、例えば、スルホン酸化合物、有機カルボン酸化合物が好適に用いられる。
【0044】
スルホン酸化合物としては、例えば、アミノナフトールスルホン酸、メタニル酸、スルファニル酸、アリルスルホン酸、フェノールスルホン酸、キシレンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸、ジエチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、ジブチルベンゼンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、エチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、ヘプチルナフタレンスルホン酸、オクチルナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸、デシルナフタレンスルホン酸、ウンデシルナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、ペンタデシルナフタレンスルホン酸、オクタデシルナフタレンスルホン酸、ジメチルナフタレンスルホン酸、ジエチルナフタレンスルホン酸、ジプロピルナフタレンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、ジペンチルナフタレンスルホン酸、ジヘキシルナフタレンスルホン酸、ジヘプチルナフタレンスルホン酸、ジオクチルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、トリメチルナフタレンスルホン酸、トリエチルナフタレンスルホン酸、トリプロピルナフタレンスルホン酸、トリブチルナフタレンスルホン酸、カンフアースルホン酸、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも、フェノールスルホン酸が好適に用いられる。
【0045】
また、有機カルボン酸化合物の具体例として、安息香酸、m−ブロモ安息香酸、p−クロロ安息香酸、m−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、2,4−ジニトロ安息香酸、3,5−ジニトロ安息香酸、ピクリン酸、o−クロロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、トリメチル安息香酸、p−シアノ安息香酸、m−シアノ安息香酸、チモールブルー、サリチル酸、5−アミノサリチル酸、o−メトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、等を挙げることができる。
【0046】
更に、本発明において、ドーパントとして用いられるプロトン酸は、ポリマー酸であってもよい。該ポリマー酸としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアリルスルホン酸、ポリメタリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、等を挙げることができる。
これらのドーパントの内、特に、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ベンゼンスルホン酸が好ましい。
【0047】
これらのドーパントは、ポリアニリンの構成単位ユニットに対して、0.1〜5当量の範囲で添加されることが望ましく、より望ましくは、1〜3当量の範囲である。
【0048】
(溶媒)
本発明における溶媒としては、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されないが、具体的には、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒;フェノール、o−、m−またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;ブチルセロソルブ等のセロソルブ系;或いはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更には、キシレン、トルエンなどの芳香族炭化水素も使用可能である。
【0049】
これらの溶媒は、後述するポリアミック酸溶液を調製する際に用いられてもよい。また、これらの溶媒は、上述のポリアミック酸重合時から使用しても、ポリアミック酸重合後に所定の溶媒に置換してもよい。溶媒の置換には、ポリアミック酸重合後の溶液に、所定量の溶剤を添加して希釈する方法、ポリイミドポリマーを再沈殿した後に、所定の溶媒中に再溶解させる方法、溶剤を徐々に除去しながら所定の溶媒を添加して組成を調整する方法のいずれでもよい。
ポリアミック酸溶液中のポリアミック酸の濃度は、10〜50質量%の範囲で調製されることが望ましい。
【0050】
また、前記溶媒はポリアニリン粒子の分散液を調製する際に用いられてもよい。その場合、ポリアニリン粒子の分散液中のポリアニリンの含有量は、0.1〜30質量%の範囲で調製されることが好ましい。
なお、本発明においてはポリアニリン粒子が溶媒、ポリアミック酸溶液に混合された場合を「分散」としているが、粒子径が小さく混合されたときに溶液状となっているものも「分散液」に含まれるものとする。
【0051】
(その他の添加剤)
また、本発明のポリアミック酸の組成物に添加することができるその他の成分(添加剤)としては、カーボンブラック等が挙げられる。該カーボンブラックは、例えば、本発明のポリアミック酸の組成物を用いて得られるポリイミド樹脂の抵抗値を調整する目的で用いられる。
例えば、本発明のポリアミック酸の組成物を用いて、電子写真方式の画像形成装置に適用されるポリイミド樹脂製無端ベルトを得る場合、カーボンブラックの添加量は、ポリアミック酸の組成物中のポリアミック酸100質量部に対して、0〜20質量部の範囲とすることが望ましく、5〜10質量部の範囲とすることがより望ましい。カーボンブラックの添加量が20質量部を超えると所望の抵抗値が得られ難くなる場合がある。更に、カーボンブラックとして表面処理されたカーボンブラックを5〜10質量部含有させることにより、その効果を最大限発揮させることができ、表面抵抗率の面内ムラや電界依存性を顕著に向上させることができる。
【0052】
本発明のポリアミック酸の組成物の製造は、前記各成分を含むようになされれば、特に製造方法は制限されず、各成分を混合して分散機にて分散すること等により行うことができるが、ポリアニリン粒子の分散性や液特性の安定性を高める観点からは、後述する本発明のポリアミック酸の組成物の製造方法を用いることが望ましい。
【0053】
<ポリアミック酸の組成物の製造方法>
本発明のポリアミック酸の組成物の製造方法は、アスペクト比が1よりも大きく100以下である繊維状の部分を有し導電化されたポリアニリン粒子(A)を、ポリアミック酸が含まれる液中に分散した第1分散液を調製する第1分散液調製工程と、導電化されていないポリアニリン粒子(B)及びドーパントを、ポリアミック酸が含まれる液中に分散した第2分散液を調製する第2分散液調製工程と、前記第1分散液及び前記第2分散液を混合する混合工程と、を有することを特徴とする。
【0054】
ポリアミック酸の組成物を製造するにあたっては、導電化(ドーピング)されていない特定形状のポリアニリン粒子及びドーパントをポリアミック酸溶液に添加して溶液中で導電化を行うことが考えられるが、この場合、ドーパントがポリアミック酸を攻撃して分解させてしまう場合がある。したがって、特定形状のポリアニリン粒子は予め導電化された状態でポリアミック酸溶液に添加されることが望ましい。
【0055】
そこで、本発明では、予め導電化した特定形状のポリアニリン粒子(A)を、ポリアミック酸を含む液中に分散した第1分散液と、これとは別に、導電化されていないポリアニリン粒子(B)及びドーパントを、ポリアミック酸を含む液中に分散した第2分散液とを各々調製し(第1分散液調製工程、第2分散液調製工程)、第1分散液と第2分散液とを混合することで(混合工程)、粒子の分散性や液安定性に優れたポリアミック酸の組成物を得ることができることを見出した。
【0056】
第1分散液に用いられるポリアニリン粒子(A)は、前記特定形状のポリアニリン粒子を導電化(ドーピング)したものである。ドーピングは、前記のドーパントを用いて前記の方法により行われる。
【0057】
第1分散液の調製にあたっては、ポリアニリン粒子(A)を分散してなるポリアニリン粒子(A)分散液と、ポリアミック酸を溶解してなるポリアミック酸溶液とをそれぞれ調製し、これらを混合・攪拌して調製してもよいし、前記ポリアミック酸溶液に直接ポリアニリン粒子(A)を添加し攪拌して調製してもよい。
第1分散液中のポリアニリン粒子(A)の含有量は1〜15質量%の範囲、ポリアミック酸の含有量は5〜30質量%の範囲とすることが望ましい。
【0058】
第2分散液に用いるポリアニリン粒子(B)は、前記導電化されていないものであればよく、粒径や粒子形状は特に制限されないため、例えば導電化されていない前記特定形状のポリアニリン粒子であってもよい。
しかし、前記のように最終的なポリアミック酸の組成物において良好なポリアニリン粒子の分散性を得るためには、第2分散液に用いるポリアニリン粒子(B)としては、ポリアニリン粒子(A)に比べて小粒径(最大径が小さい)ことが望ましく、また前記繊維状の部分を有していないことが望ましい。具体的にはポリアニリン粒子(B)としては、最大径が0.001〜0.1μmの粒状のポリアニリン粒子を用いることが望ましい。
【0059】
第2分散液の調製法としては、以下の(a)、(b)の2法が好適に用いられる。
(a)ポリアニリン粒子(B)を溶解してなるポリアニリン粒子(B)溶解液と、ポリアミック酸を溶解してなるポリアミック酸溶液とをそれぞれ調製する。次いで、調製されたポリアニリン粒子(B)溶解液にドーパントを添加してポリアニリン粒子を導電化して分散した後、この分散液に、ポリアミック酸溶液を徐々に添加して、攪拌・混合することで、第2分散液を得る。
(b)ポリアニリン粒子(B)を溶解してなるポリアニリン粒子(B)溶解液と、ポリアミック酸を溶解してなるポリアミック酸溶液とをそれぞれ調製する。次いで、調製されたポリアミック酸溶液にドーパントを添加して得られた溶液に、ポリアニリン粒子(B)溶解液を徐々に添加して、攪拌・混合することで、第2分散液を得る。
なお、第2分散液中のポリアニリン粒子(B)の含有量は1〜15質量%の範囲、ポリアミック酸の含有量は5〜30質量%の範囲とすることが望ましい。
【0060】
上記のようにして得られた第1分散液、第2分散液を混合することによって、本発明のポリアミック酸の組成物を得ることができる。
混合工程では、ポリアミック酸の組成物中の第1分散液及び第2分散液の量比と、ポリアニリン粒子(A)及びポリアニリン粒子(B)の含有量の量比とを、以下の(i)、(ii)の条件を満たすように混合することにより、ポリアミック酸の分解がなく、粘度低下の小さい抵抗に優れたポリアミック酸の組成物が得られる。
(i)第1分散液の混合質量P、第2分散液の混合質量Qの比P/Qが3/7〜7/3の範囲であること。
(ii)ポリアニリン粒子(A)の含有質量R、ポリアニリン粒子(B)の含有質量S、ポリアミック酸の含有質量Tが下記式(1)を満たすこと。
(R+S)/(R+S+T)≦0.3 ・・・ 式(1)
【0061】
上記(i)のP/Q において、第1分散液の混合質量Pの比が3/7より少なくなると、ポリアミック酸が分解して粘度低下を引き起こす場合があり、Pの比が7/3より多くなると、ポリアニリン粒子が凝集しやすくなり、成形品に異物による障害が発生する場合がある。
P/Qは4/6〜6/4の範囲であることがより望ましい。
【0062】
また前記(ii)において、(R+S)/(R+S+T)が0.3を超えると、後述するポリアミック酸の組成物を用いたポリイミド樹脂の成形品のしなやかさが失われてしまい、例えば、無端ベルトとして成形する場合、ベルトとしての機能を有しなくなってしまう場合がある。
(R+S)/(R+S+T)は0.2以下であることがより望ましい。
【0063】
このようにして得られたポリアミック酸の組成物は、調整直後の粘度V0と、室温環境下(20〜25℃、以下についてもこれに準ずる)、2日間経過後の粘度V2との粘度比V2/V0が、0.8以上1.2以下であることが望ましく、0.9以上1.15以下であることがより望ましい。V2/V0が0.8未満であると、粘度低下によって塗工の際にタレなどを生じ、結果、樹脂成形品の不良箇所となる場合があり、一方、1.2を超えるとポリアニリンのゲルが生じ、抵抗のばらつきや画質欠陥の原因となる場合がある
ここで、ポリアミック酸の組成物の粘度は、液温25℃での粘度であり、HAKKE(株)社製定速粘度計PK100を用いて測定した値である。
【0064】
以上、本発明のポリアミック酸の組成物について説明したが、本発明はこれらの実施の態様に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で,当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
【0065】
<ポリイミド樹脂>
次に、上述の本発明のポリアミック酸の組成物を用いて得られるポリイミド樹脂について説明する。
本発明のポリイミド樹脂は、前記本発明のポリアミック酸の組成物を成型して硬化させたものであるため、当然にこのポリイミド樹脂にも前記特定形状のポリアニリン粒子が含まれる。
【0066】
ここで、前記ポリアミック酸の組成物中でのポリアニリン粒子の形状、粒子径確認法と併せて、ポリイミド樹脂中でのポリアニリン粒子の形状、粒子径の測定法について説明する。
本発明におけるアスペクト比(長径/短径)が1より大きく100以下である繊維状の部分を有するポリアニリン粒子の形状は、ポリアミック酸の組成物についてはその溶媒を除去してフィルム状とした樹脂成形品の断面方向の切片について、またポリイミド樹脂についてはポリイミド樹脂から切り出した断面方向の切片に対して、電子線染色を施し、透過型電子顕微鏡(以下、「TEM」と称する場合がある)でポリアニリン粒子の画像を取り込み、更に画像処理を行ない、ポリアニリン外縁(染色によりコントラストのついた部分とついていない部分との境界線)の長さを測定することで求めることができる。
【0067】
本発明における特定形状のポリアニリン粒子の繊維状の部分の長径及び短径、並びに最大長の測定方法について、以下に詳細に説明する。
まず、試料として、前記樹脂成形品(フィルムもしくはベルト状)を1mm×8mm程度の短冊形(観察したい側、もしくは成型時の成形方向を短辺とする)に切り出す。試料片の表裏区別のため試料の一方の面に金属蒸着を施した後、エポキシ樹脂で包埋する。硬化後、ダイヤモンドナイフを取り付けたミクロトームにて、膜厚0.1μm程度の切片を作製する。ミクロトームは、例えば、Reichert社製ウルトラカットNを使用することができる。得られた切片においてポリアニリン粒子の存在が確認できない場合は電子線染色を施し、ポリアニリン粒子を可視化する。染色剤としては四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、リンタングステン酸、ヨウ素などの中から、染色条件等を考慮して選択する。
上記切片を、透過型電子顕微鏡(FEI社製、TecnaiG2)を用いて、加速電圧100kV、倍率12,000倍で、1切片につき、6視野の画像(厚み方向3×幅方向2=6)を取得する。
【0068】
次に、取得した12,000倍のTEM画像について、米国 Media Cybernetics社の画像解析装置、Image Pro Plusを用いて粒子解析を行う。TEM画像を計測に適した明るさとコントラストに調整し、画像に色調勾配がある場合はシェーディング補正を行う。特定形状のポリアニリン粒子の他に充填材等が含まれている場合には、予め濃淡を利用した画像処理によって取り除いておく。ポリアニリン外縁について、前記説明した繊維状の部分について、長径(長手方向の長さ)と短径(最大幅)とを計測する。
また、粒子の最大長については、粒子が繊維状の部分のみから構成される場合は前記長径が最大長となり、粒子が繊維状の部分に他の形状部分を付加して構成される場合は粒子全体として見て最も長い部分を最大長とする。
【0069】
この計測を6視野分の画像で繰返し計測し、6視野の画像の中の平均値を、その試料が持つ特定形状のポリアニリン粒子の繊維状の部分の長径及び短径、並びに最大長とする(ここで、画像中で互いに重なっているか接しているポリアニリン粒子は、測定対象から除外する。)。
なお、測定に用いる切片は、1つの樹脂成形品上で、幅方向3点×周方向3点の計9点から上述のようにして採取した短冊から作成した。計9点について上記の測定を行い、その平均値をそのポリイミド樹脂中の特定形状のポリアニリン粒子の繊維状の部分の長径及び短径、並びに最大長とする。
【0070】
本発明のポリイミド樹脂は、前記本発明のポリアミック酸の組成物を金型などにより成型し、次いで加熱することにより得ることができる。加熱温度は、通常はまず50〜200℃の範囲として乾燥行い、さらに150〜300℃程度としてイミド転化反応を進行させる。イミド化が不十分であると、機械的特性及び電気的特性に劣るものとなる場合がある。
【0071】
本発明のポリイミド樹脂の形状は特に制限がなく、フィルム状であっても、ロール状であっても、ベルト状であってもよい。フィルムとしては、例えば静電防止シート、電磁波シールド用フィルムなどに好適に用いることができる。また、ロールとしては導電性ロール、耐熱性ロールなどに好適に用いることができる。
【0072】
本発明のポリイミド樹脂の電気的特性としては、10℃、15%RHの環境下における表面抵抗率Rの常用対数値と、28℃、85%RHの環境下における表面抵抗率Rの常用対数値との差(logR−logR)が0.01〜1.0(logΩ/□)の範囲であることが望ましい。
【0073】
及びRのそれぞれの常用対数値の差を上記範囲とすることにより、ポリイミド樹脂を各種部材等に用いた場合に発生する、環境変化に基づく問題の発生等を効果的に回避することができる。
及びRのそれぞれの常用対数値の差は、0.01〜0.7(logΩ/□)の範囲であることがより望ましく、0.01〜0.5(logΩ/□)の範囲が特に好適である。
【0074】
<半導電性部材>
次に、上述の本発明のポリイミド樹脂を用いて得られる半導電性部材について説明する。
本発明の半導電性部材は、その全部又は一部に、前記本発明のポリイミド樹脂が含まれるものである。従って、当然にこの半導電性部材にも前記特定形状のポリアニリン粒子が含まれる。
ポリイミド樹脂中でのポリアニリン粒子の形状、粒子径の測定法については前述と同様のため説明を省略する。また、半導電性部材が前述のポリイミド樹脂のみからなる場合、その半導電性部材の特性は前述のポリイミド樹脂の場合、及び後述するベルト形状である半導電性部材の場合と同様となる。
【0075】
以下、本発明の半導電性部材として、前記優れた各特性を有効に活用できるという点で特に好適なベルト形状である半導電性部材(以下、「ポリイミド樹脂ベルト」と称する)を例に挙げて説明する。
上記ポリイミド樹脂ベルトは、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ、これらの複合装置などの電子写真装置に用いられることが望ましい。より詳しくは、このポリイミド樹脂ベルトは、転写ベルト、搬送ベルト、更には、中間転写方式の電子写真装置における中間転写ベルトなどに適用されることが望ましい。
【0076】
本発明の半導電性部材であるポリイミド樹脂ベルトにおいては、最大厚みと最小厚みの差が大きすぎるとシワ寄りの原因となる。ベルトのシワ寄りは、電子写真装置に用いられた場合、転写や定着を行った際に画質の低下を誘起するため、可能な限り低減する必要がある。この点から、ポリイミド樹脂ベルトの最大厚みと最小厚みの差は、ポリイミド樹脂ベルトの平均厚みの20%以下であることが望ましい。なお、上記「ベルトの厚み」とは、ベルトと5mm以上の面積で接触した平板間の距離を測定する厚み計で測定できる厚みのことであり、ベルト表面に特異的に存在する幅25μm以下の突起物の高さを無視したものである。
【0077】
また、ポリイミド樹脂ベルトの厚さは、厚すぎると熱伝導度や抵抗値等の観点から望ましくなく、薄すぎてもその靭性が小さすぎるため望ましくない。従って、ベルトの用途を考慮すると、ベルトの厚みは10μm以上1000μm以下が望ましく、30μm以上150μm以下であることがより望ましい。
【0078】
また、前記ポリイミド樹脂ベルトの電気的特性、特に、体積抵抗率は、その用途に合わせて調整されればよい。例えば、ポリイミド樹脂ベルトを中間転写ベルトに適用する場合、22℃、55%RHの環境下における100Vの電荷を印加した時の表面抵抗率の常用対数値で規定されるが、該表面抵抗率の常用対数値は9〜14(logΩ/□)であることが望ましく、より好適には10〜13(logΩ/□)であり、さらに好適には11〜13(logΩ/□)である。
【0079】
表面抵抗率の常用対数値が9(logΩ/□)未満であると、像保持体から中間転写ベルトに転写された未定着トナー像の電荷を保持する静電的な力が働きにくくなるため、トナー同士の静電的反発力や画像エッジのフリンジ電界の力によって、画像の周囲にトナーが飛散してしまい(ブラー)、ノイズの大きい画像が形成されることがある。一方、表面抵抗率の常用対数値が14(logΩ/□)より高いと、電荷の保持力が大きいために、1次転写での転写電界で中間転写体表面が帯電するために除電機構が必要となることがある。従って、前記表面抵抗率を上記範囲とすることで、トナーの飛散や、除電機構を必要とする問題を解消することができる。
【0080】
また、表面抵抗率の面内ばらつきは、常用対数値で1.2(logΩ/□)以下であることが望ましく、0.8(logΩ/□)以下であることがより望ましい。上記面内ばらつきが1.2(logΩ/□)以下であると、中間転写ベルトに適用した場合、転写電圧をばらつきなく印加することができるので、優れた転写画質が得られる。また、局部的に表面抵抗率が低下する問題が起こりにくくなる。ここで、表面抵抗率の面内ばらつきとは、ポリイミド樹脂ベルト面内の表面抵抗率の最大値と最小値との常用対数値の差をいう。
【0081】
なお、前記半導電性部材において説明した温湿度環境の条件を異ならせた場合における表面抵抗率の常用対数値の差についても、前記好適な範囲に準じた範囲とすることにより、ベルトとしての前記各種の問題発生を効果的に抑えることができる。
【0082】
更に、前記ポリイミド樹脂ベルトは、ベルト表面の、JIS B 0601(2001)に規定される表面粗さRaが、0.1μm以上0.5μm以下であることが望ましい。ベルト表面の表面粗さRaが0.5μmを超えるものであると、電界の集中が起きやすくなり、抵抗低下の発生要因となる。また、より抵抗の維持性が向上する観点から、Raは0.1μm以下であることがより望ましく、0.05μm以下であることが特に好適である。なお、特に制限されるわけではないが、ベルトの金型と接触する面の表面粗さ(すなわち、金型の表面粗さ)が小さすぎると、ベルトと金型との密着性が強まりすぎ、脱型しにくくなるという観点から、下限は0.01μm以上であることが一般的である。
【0083】
なお、上記表面粗さRaは、表面粗さ形状測定器(東京精密社製、サーフコム1400Aシリーズ)を用い、JIS B 0601(2001)に準じて測定した。詳しくは、測定長さ2.5mm、カットオフ波長0.8mm、測定速度0.60mm/sの条件で、ベルト1本につき24箇所(幅方向3箇所×周方向8箇所)を測定し、その平均値をベルトの表面粗さRaとした。
【0084】
上記ポリイミド樹脂ベルトは、前述の本発明のポリアミック酸の組成物を円筒状基材上に塗布する工程と、前記円筒状基材上に塗布された前記ポリアミック酸の組成物を加熱する加熱処理工程と、を経ることで製造されることが好ましい。
このようにして得られたポリイミド樹脂ベルトは、ポリイミド樹脂を主体とするものである。
【0085】
以下に、ポリイミド樹脂ベルトの製造方法の一例を具体的に説明する。
まず、上述の本発明のポリアミック酸の組成物を円筒状基材である金型の内面若しくは外面に塗布する。なお、金型の代わりに、樹脂製、ガラス製、セラミック製など、従来既知の様々な素材の円筒状成形型を用いることもできる。また、円筒状金型や円筒状成形型の表面にガラスコートやセラミックコートなどを設けること、また、シリコーン系やフッ素系の剥離剤を使用することも選択されうる。
また、円筒状金型に対するクリアランス調整がなされた膜厚制御用の金型を、円筒状金型に通し平行移動させることで、余分な溶液を排除し円筒状金型上の溶液の厚みのばらつきを低減する方法を適用してもよい。円筒状金型上への溶液塗布の段階で、溶液の厚みばらつき低減の制御がなされていれば、特に膜厚制御用の金型を用いなくてもよい。
【0086】
次に、ポリアミック酸の組成物が塗布された円筒状金型を加熱環境に置き、含有溶媒の30質量%以上、望ましくは50質量%以上を揮発させるための乾燥を行う。この際、乾燥温度は50〜200℃の範囲であることが好ましい。
更に、この円筒状金型を温度150℃〜300℃で加熱してイミド転化反応を進行させる。イミド転化反応の温度は、原料のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類、によってそれぞれ異なるが、イミド化が不充分であると、機械的特性及び電気的特性に劣るものとなるため、イミド転化が完結する温度に設定しなければならない。
その後、円筒状金型からポリイミド樹脂を取り外し、ポリイミド樹脂ベルトを得ることができる。
【0087】
以上、本発明における半導電性部材について、ポリイミド樹脂ベルトを中心に説明したが、本発明はこれらの実施の態様に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
【0088】
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、上述した本発明の半導電性部材であるベルトを具備するものであれば、如何なる構成であってもよい。具体的には、例えば、装置内に単色(通常は黒色)のみを有するモノカラー電子写真装置や、感光体上に保持されたトナー像を中間転写ベルトに順次一次転写を繰り返すカラー電子写真装置や、各色毎の現像器を備えた複数の潜像保持体を中間転写ベルト上に直列に配列した、タンデム型カラー電子写真装置のいずれであってもよい。また、中間転写ベルトを用いた中間転写方式であり、さらにベルトを直接的若しくは間接的に加熱する機構の画像形成装置であってもよい。
【0089】
これらの画像形成装置において、前記ポリイミド樹脂ベルトは、中間転写用ベルトとして用いられるのみならず、搬送ベルト、定着用ベルトとして用いることが可能である。なお、前記中間転写及び定着用ベルトとは、同一ベルト上において中間転写過程と定着過程を行うベルトである。
上述のように、本発明のポリイミド樹脂の成形品であるポリイミド樹脂ベルトは、抵抗にばらつきがなく、機械的特性及び表面性に優れていることから、これを画像形成装置に適用することで、高品質の転写画像を安定して得ることができる。
【0090】
以下、本発明の半導電性部材であるポリイミド樹脂ベルトを中間転写体として具備する本発明の画像形成装置の構成例について、図面を参照して詳細に説明する。
図1に、既述のポリイミド樹脂ベルトを中間転写ベルトとして用いた本発明の画像形成装置の一例であるカラー電子写真複写機100の概略構成図を示す。
【0091】
図1において、101BK、101Y、101M、101Cは感光体ドラム(像保持体)であり、矢線A方向への回転に伴いその表面には周知の電子写真プロセス(図示せず)によって画情報に応じた静電潜像が形成される。
【0092】
また、この感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cの周囲には、それぞれ、ブラック(BK)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色に対応した現像器105〜108が配設されており、感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cに形成された静電潜像を、それぞれの現像器105〜108で現像してトナー像を形成するようになっている。従って、例えば、感光体ドラム101Yに書き込まれた静電潜像はイエローの画像情報に対応したものであり、この静電潜像はイエロー(Y)のトナーを内包する現像器106で現像され、感光体ドラム101Y上にはイエローのトナー像が形成される。
【0093】
102は感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cの表面に圧接されるように配置された中間転写ベルトであり、複数のベルト支持ロール117〜119、及び加熱転写ロール120に張架されて矢線B方向に搬送される。
【0094】
上記感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cに形成された未定着トナー像は、感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cと上記中間転写体102とが接するそれぞれの1次転写位置で、順次感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cから中間転写ベルト102の表面に各色が重ね合わされて転写される。
【0095】
この1次転写位置において、中間転写ベルト102の裏面側には隔壁121〜124により圧接手前部への帯電を防止したコロナ放電器109〜112が配設されており、このコロナ放電器109〜112にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加することで、感光体ドラム101BK、101Y、101M、101C上の未定着トナー像は中間転写ベルト102に静電吸引される。この1次転写手段は、静電力を利用したものであれば、コロナ放電器に限らず電圧が印加された導電性ロールや導電性ブラシなどでも良い。上記静電力を利用する理由は、熱や圧力によるトナーの粘着力を1次転写に利用すると、感光体を損傷させやすいからである。
【0096】
このようにして中間転写ベルト102に1次転写された未定着トナー像は、中間転写ベルト102の搬送に伴って記録媒体103の搬送経路に面した2次転写位置へと搬送される。2次転写位置では、セラミックヒーターやハロゲンランプなどの加熱源を内蔵した加熱転写ロール120が中間転写ベルト102の裏面側に接している。また、2次転写位置において上記加熱転写ロール120に対向して加圧ロール125が配設されている。加圧ロール125は、その表面にフッ素樹脂をコーティングしたものが好ましく、また、加熱転写ロール120のように加熱源を内蔵してもよい。
【0097】
給紙ロール126によって所定のタイミングで補給部113から搬出された記録媒体103は、この加圧ロール125及び中間転写ベルト102間に挿通される。この時、上記加熱転写ロール120及び加圧ロール125間に電圧を印加しても良い。中間転写ベルト102に保持された未定着トナー像は、上記2次転写位置において記録媒体103に熱溶融転写される。
【0098】
そして、未定着トナー像が転写された記録媒体103は剥離爪114によって中間転写ベルト102から剥がされ、搬送ベルト115によって定着器(図示せず)に送り込まれて未定着トナー像の定着処理がなされる。このとき、前記2次転写装置(加熱転写ロール120及び加圧ロール125)により定着を兼ねてもよいが、十分なカラー定着性を得るためには、上記のように定着工程を独立させることが好ましい。
【0099】
なお、上記加圧ロール125、剥離爪114及びクリーニング装置116は中間転写ベルト102と接離自在に配設されており、2次転写されるまで、これら部材は中間転写ベルト102から離間している。
【実施例】
【0100】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらの実施例は例示であり、この記述によって本発明の適用範囲が制限されるものではない。なお、下記において特に断りのない限り、「部」「%」は「質量部」「質量%」を各々表す。
【0101】
<ポリアミック酸の組成物の作製>
(ポリアミック酸の組成物C−1)
−ポリアミック酸溶液の調製−
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコ中に、五酸化リンによって乾燥した窒素ガスを通じ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物29.42部とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)117.68部とを注入した。十分攪拌・溶解した後、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル20.02部をN−メチル−2−ピロリドン80.08部に溶解させた溶液を10℃に保持したフラスコ内に徐々に滴下した。ジアミン溶液滴下後10〜15℃にて攪拌・重合を行った。反応溶液を大量のメタノール中に注ぎ、再沈殿精製を行った。析出した白色ポリマーを、濾別・乾燥した後、N−メチル−2−ピロリドンに再溶解させて濃度20%のポリアミック酸溶液を得た。
【0102】
−ポリアニリン粒子分散液(1)(ポリアニリン粒子(A)含有分散液)の調製−
直径1mmのジルコニウムビーズ3000部、ポリアミック酸溶液1100部、及び特定形状のポリアニリン粒子1(繊維状の部分長さ:5μm、アスペクト比:3、最大長:6μm)31部と、トーパントとしてフェノールスルホン酸30部とをサンドミル分散機に仕込み、2000rpmで1時間処理し、導電化処理された特定形状のポリアニリン粒子(A)を含むポリアニリン粒子分散液(1)を得た。
【0103】
−ポリアニリン粒子分散液(2)(ポリアニリン粒子(B)含有分散液)の調製−
N−メチルピロリドン(NMP)を溶剤とするポリアミック酸溶液1100部にポリアニリン粒子2:30部を溶解させた後、ドデシルベンゼンスルホン酸25部を添加し、ポリアニリン粒子(B)を含むポリアニリン粒子分散液(2)を得た。このとき微粒子として析出したポリアニリン粒子2は球状であり、その最大粒径は0.01μmであった。
【0104】
−ポリアニリン分散液の混合−
上記の方法で得られたポリアニリン粒子分散液(1)、(2)を、質量比5/5で混合し、ポリアミック酸の組成物C−1を得た。
【0105】
(ポリアミック酸の組成物C−2〜C−4)
ポリアミック酸の組成物C−1の作製において、ポリアニリン粒子分散液(1)、(2)の混合比を、表1に示すように変更した以外はポリアミック酸の組成物C−1の作製に準じて、ポリアミック酸の組成物C−2〜C−4を作製した。
【0106】
(ポリアミック酸の組成物C−5)
ポリアミック酸の組成物C−1の作製のポリアニリン粒子分散液(1)の調製において、繊維状の部分のアスペクト比が3のポリアニリン粒子1の代わりに、繊維状の部分のアスペクト比が2.5の特定形状のポリアニリン粒子3(繊維状の部分長さ:1.25μm、最大長:1.5μm)31部を用いた以外は、ポリアミック酸の組成物C−1の作製に準じてポリアミック酸の組成物C−5を作製した。
【0107】
(ポリアミック酸の組成物C−6)
ポリアミック酸の組成物C−1の作製のポリアニリン粒子分散液(1)の調製において、繊維状の部分のアスペクト比が3のポリアニリン粒子1の代わりに、繊維状の部分のアスペクト比が70の特定形状のポリアニリン粒子4(繊維状の部分長さ:35μm、最大長:40μm)を用いた以外は、ポリアミック酸の組成物C−1の作製に準じてポリアミック酸の組成物C−6を作製した。
【0108】
(ポリアミック酸の組成物CR−1)
ポリアミック酸の組成物C−1の作製で用いたポリアニリン粒子分散液(2)のみを単独で用いて、これをポリアミック酸の組成物CR−1とした。
【0109】
(ポリアミック酸の組成物CR−2)
ポリアミック酸の組成物C−1の作製で用いたポリアニリン粒子分散液(2)の調製において、ポリアニリン粒子2の代わりにポリアニリン粒子5(球状形状、最大径:0.0008μm)を用いた以外はポリアニリン粒子分散液(2)の調製に準じてポリアニリン粒子分散液を作製し、これを単独で用いてポリアミック酸の組成物CR−2とした。
【0110】
(ポリアミック酸の組成物CR−3)
ポリアミック酸の組成物C−1の作製で用いたポリアニリン粒子分散液(2)の調製において、ポリアニリン粒子2の代わりにポリアニリン粒子6(球状形状、最大径:0.5μm)を用いた以外はポリアニリン粒子分散液(2)の調製に準じてポリアニリン粒子分散液を作製し、これを単独で用いてポリアミック酸の組成物CR−3とした。
【0111】
<ポリアミック酸の組成物の特性>
得られた各ポリアミック酸の組成物に対して、目視による分散性及び粘度について、作製直後の試料と2日経過(室温保管)の試料とについて粘度(各々V0、V2)を測定し、粘度変化率(V2/V0)を求めた。
なお、粘度の測定はポリアミック酸の組成物の液温25℃に調整し、それをHAKKE社製定速粘度計PK100を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0112】
【表1】

【0113】
<実施例1>
(ポリイミド樹脂ベルトの製造)
ポリアミック酸の組成物C−1を、内径90mm、長さ450mmのSUS製の円筒状金型表面に塗布した。なお、この円筒状金型には、表面にフッ素系の離型剤を予め塗布することで、ベルト成型後の剥離性を向上させている。その後、円筒状金型を回転させながら、120℃の条件で、30分間乾燥処理を行った。乾燥処理後、円筒状金型をオーブンに入れ、280℃、30分間焼成を行い、イミド転化反応を進行させた。続いて、円筒状金型を室温で放冷し、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド樹脂ベルト(半導電性部材)を得た。
得られたポリイミド樹脂ベルトは、厚さ80μm、周長283mm、幅400mmであった。
【0114】
(ポリイミド樹脂ベルトの特性評価)
得られたポリイミド樹脂ベルトの膜厚ばらつきに加え、電気特性(表面抵抗率及びそのばらつき、環境変動に対するばらつき)、表面性について、以下のように評価した。
【0115】
−膜厚ばらつき−
得られたポリイミド樹脂ベルトから、20mm×200mmの試験片をランダムに10箇所切りだし、定圧厚さ測定装置(TECLOCK社製、PG−02型)を用いて各々の膜厚を測定した。
測定された膜厚の最大値と最小値との差を膜厚ばらつきとした。
【0116】
−表面抵抗率の測定−
得られたポリイミド樹脂ベルトの表面抵抗率の測定には、R8340A デジタル超高抵抗/微小電流計(株式会社アドバンテスト社製)、接続部をR8340A用に改造した二重リング電極構造のURプローブMCP−HTP12、及びレジテーブルUFL MCP−ST03(何れも、株式会社ダイアインスツルメンツ社製)を用いた。
なお、測定の際の試験片は、前記製造したポリイミド樹脂ベルトから切り出した5cm×5cmのベルト片を用いた。
【0117】
まずレジテーブルUFL MCP−ST03(フッ素樹脂面を使用)上に、測定面を上にして試験片を置き、測定面に接するようにURプローブMCP−HTP12の二重電極を当てた。なお、URプローブMCP−HTP12の上部には19.6N±1Nの錘を取り付け、試験片全体に荷重がかかるようにした。
【0118】
R8340A デジタル超高抵抗/微小電流計の測定条件は、チャージタイムを30sec、ディスチャージタイムを1sec、印加電圧を100Vとした。
この時、試験片の表面抵抗率をρs、R8340Aデジタル超高抵抗/微小電流計の読み値をR、URプローブMCP−HTP12の表面抵抗率補正係数をRCF(S)とすると、三菱化学「抵抗率計シリーズ」カタログによればRCF(S)=10.00なので、下記式(2)から表面抵抗率ρsが求められる。
ρs[Ω/□]=R×RCF(S)=R×10 ・・・ 式(2)
【0119】
表面抵抗率のばらつき(Δρs)は、作製したポリイミド樹脂ベルトを長さ方向(周方向)に8分割、幅方向に3分割し、ベルト面内24点について表面抵抗率を計測し、表面抵抗率の常用対数値をとり、その最大値と最小値の差として算出した。
また、表面抵抗率の環境変動ばらつきは、10℃、15%RHの環境下及び28℃、85%RHの環境下に各々前記ベルト片を8時間放置し、その後上記測定法により各環境下において測定を行い、その差を環境ばらつきとした。
【0120】
−表面性−
得られたポリイミド樹脂ベルトについて、ランダムに25cm×20cm(500cm)の範囲を3つ選択し、その範囲内の表面に特異的に存在する幅25μm以上の突起物の数を測定し、各範囲ごとの突起物の数の平均を表面性の指標とした。
以上の結果をまとめて表2に示した。
【0121】
(実機特性の評価)
得られたポリイミド樹脂ベルトを、電子写真装置DocuCentreColor400CP(富士ゼロックス社製)に中間転写ベルトとして組み込み、初期の転写画像の画質の評価を行った。転写画像の画質の評価項目としては、印字濃度むらの有無、白点の有無を評価した。
【0122】
−印字濃度むら−
印字濃度むらの有無は、A3用紙に低濃度(濃度:40%)のマゼンタ単色となる画像を印画し、画像中での濃度むらの有無により以下の基準で判定した。
○:全くむらがないレベル
△:わずかにむらがあるが、品質上問題ないレベル
×:品質上問題となるむらのレベル
【0123】
−白点抜け−
ベルトの外面を三次元粗さ計にて観察し、A3用紙に低濃度(濃度:40%)のマゼンタ単色となる画像を印画し、画像中での白点抜けの有無により以下の基準で判定した。
○:画質上問題がないレベル。
△:10〜20μmの突起はあるが、画質上問題がないレベル。
×:20μm以上の突起が多数あり、画質上問題があるレベル。
以上の結果をまとめて表2に示す。
【0124】
<実施例2〜6、比較例1〜3>
実施例1において、ポリアミック酸の組成物C−1の代わりに、各々表1に示すポリアミック酸の組成物を用いた以外は、実施例1に準じて評価を行った。
結果をまとめて表2に示す。
【0125】
【表2】

【0126】
以上の結果より明らかなように、実施例のポリアミック酸の組成物を用いて得られたポリイミド樹脂ベルトは、ベルト外観や表面性が良好で、また、ベルト厚みにばらつきがないことが分かる。また、機械的強度及び電気的特性に優れることから、中間転写ベルトとして好適な特性を示していた。
一方、比較例のポリアミック酸の組成物を用いて得られたポリイミド樹脂ベルトは、ポリアミック酸の組成物の粘度が安定せず、塗工を均一に行なうことができず、その結果、得られたベルトの厚さや表面抵抗のばらつきが大きく、電子写真装置に搭載した際の画質が極めて不良となった。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0128】
100 カラー電子写真複写機(画像形成装置)
101BK〜Y 感光体ドラム
102 中間転写ベルト(ポリイミド樹脂の成形品)
103 記録媒体
105〜108 現像器
109〜112 コロナ放電器
113 補給部
114 剥離爪
115 搬送ベルト
116 クリーニング装置
117〜119 ベルト支持ロール
120 加熱転写ロール
121〜124 隔壁
125 加圧ロール
126 給紙ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミック酸と、アスペクト比が1より大きく100以下である繊維状の部分を有するポリアニリン粒子と、ドーパントと、溶媒と、を含むことを特徴とするポリアミック酸の組成物。
【請求項2】
前記アスペクト比が、3〜50の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミック酸の組成物。
【請求項3】
前記ポリアニリン粒子の最大長が、0.5〜50μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミック酸の組成物。
【請求項4】
前記ポリアニリン粒子の含有量が、1〜15質量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミック酸の組成物。
【請求項5】
アスペクト比が1よりも大きく100以下である繊維状の部分を有するポリアニリン粒子含むことを特徴とするポリイミド樹脂。
【請求項6】
10℃、15%RHの環境下における表面抵抗率Rの常用対数値と、28℃、85%RHの環境下における表面抵抗率Rの常用対数値との差(logR−logR)が0.01〜1.0(logΩ/□)の範囲であることを特徴とする請求項5に記載のポリイミド樹脂。
【請求項7】
アスペクト比が1よりも大きく100以下である繊維状の部分を有するポリアニリン粒子を含むポリイミド樹脂を含有することを特徴とする半導電性部材。
【請求項8】
ベルト形状であることを特徴とする請求項7に記載の半導電性部材。
【請求項9】
請求項8に記載のベルト形状である半導電性部材を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
アスペクト比が1よりも大きく100以下である繊維状の部分を有し導電化されたポリアニリン粒子(A)を、ポリアミック酸が含まれる液中に分散した第1分散液を調製する第1分散液調製工程と、
導電化されていないポリアニリン粒子(B)及びドーパントを、ポリアミック酸が含まれる液中に分散した第2分散液を調製する第2分散液調製工程と、
前記第1分散液及び前記第2分散液を混合する混合工程と、を有することを特徴とするポリアミック酸の組成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−111094(P2008−111094A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164900(P2007−164900)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】