説明

ポリアミック酸微粒子の製造方法およびポリイミド微粒子の製造方法

【課題】容易に粒子形状、粒子径、粒子径分布等を制御でき、また、単分散性に優れたポリマー微粒子の製造方法を提供すること。
【解決手段】(A)無水テトラカルボン酸類、(B)ジアミン類を溶媒中で反応させてポリアミック酸微粒子を製造する方法において、(C)シード微粒子の存在下で、無水テトラカルボン酸類とジアミン類を、無水カルボン酸溶液、ジアミン溶液としてからマイクロミキサーを用いてあらかじめ混合してから溶媒中で反応させて、(C)シード微粒子より大きな粒子径のポリマー微粒子を製造することを特徴とするポリアミック酸微粒子の製造方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミック酸微粒子の製造方法およびポリイミド微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重付加系ポリマーとしては、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミック酸などがあり、これらは、その優れた特徴に応じて広く用いられている。通常これらのポリマーは、重付加系モノマーを混合し、必要に応じ触媒を添加し、反応させることにより製造されている。これらの重付加系ポリマーを均一な微粒子として製造することができれば、電機・電子材料等として非常に有用である。
【0003】
ところで、例えば、粒子形状、粒子径分布等を制御できるポリアミック酸微粒子の製造方法として、無水テトラカルボン酸類溶液と、ジアミン類溶液を混合し、混合溶液からポリアミック酸を析出させる方法が提案されている。(特許文献1)当該文献には、微粒子を析出させるために、攪拌しながら無水テトラカルボン酸とジアミン化合物とを反応させる方法が開示されている。しかし、当該方法は、0.01〜0.7μm程度の粒径の小さな微粒子を製造する場合には有効であるものの、光学フィルム用途や塗料への添加剤、電子基材の実装など広く使用されている用途に適する1.0〜100μm程度の粒径の微粒子を得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−140181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、容易に粒子形状、粒子径、粒度分布等を制御でき、かつ単分散性に優れたポリアミック酸微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決すべく、鋭意検討を行った結果、微粒子の製造時に特定のシード微粒子を用いることにより、前記課題を解決しうることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、(A)無水テトラカルボン酸類、(B)ジアミン類を溶媒中で反応させてポリアミック酸微粒子を製造する方法において、(C)シード微粒子の存在下で(A)、無水テトラカルボン酸類と(B)ジアミン類を、無水カルボン酸溶液、ジアミン溶液としてからマイクロミキサーを用いてあらかじめ混合してから溶媒中で反応させて、(C)シード微粒子より大きな粒子径のポリマー微粒子を製造することを特徴とするポリアミック酸微粒子の製造方法;当該ポリアミック酸微粒子の製造方法で得られたポリアミック酸微粒子をさらに閉環させることを特徴とするポリイミド微粒子の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、容易に粒子形状、粒子径、粒子径分布等を制御でき、また、単分散性に優れたポリアミック酸微粒子の製造方法を提供することができる。また、特に各種用途に適する1.0〜100μm程度の粒子径のポリアミック酸微粒子を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、ポリマー微粒子製造装置の概念図である。
【図2】図2は、実施例1で得られたポリマー微粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】図3は、実施例2で得られたポリマー微粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】図4は、実施例3で得られたポリマー微粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】図5は、実施例4で得られたポリマー微粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】図6は、実施例5で得られたポリマー微粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】図7は、比較例1で得られたポリマー微粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリアミック酸微粒子の製造方法は、(A)無水テトラカルボン酸類(以下、(A)成分という。)と(B)ジアミン類(以下、(B)成分という。)を、マイクロミキサーを用いてあらかじめ混合してから溶媒中で反応させることにより重付加系ポリマー微粒子を製造する方法において、(C)シード微粒子(以下、(C)成分という。)の存在下で、(A)成分と(B)成分を溶媒中で反応させ、(C)成分上に選択的にポリアミック酸層を形成させることにより、(C)成分をコアとしたポリアミック酸微粒子を製造することを特徴とする。
【0011】
(A)成分としては、特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3´,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,3−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、2,3,3´,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2´,3,3´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2´,3,3´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2´,6,6´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、アントラセン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物;ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物;シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物等の脂環族テトラカルボン酸二無水物;チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸無水物等の複素環族テトラカルボン酸二無水物等を用いることができる。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、特にBTDA、ピロメリット酸二無水物等が好ましい。また、本発明では、無水テトラカルボン酸の一部を酸クロライドで置換したものを使用することができる。
【0012】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、トリメリット酸無水物、ブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸などのトリカルボン酸類、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ビメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸類の酸無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルメタン−4,4´−ジカルボン酸など芳香族ジカルボン酸類の酸無水物を併用することができる。但し、テトラカルボン酸類に対するこれらの割合が多すぎると、得られるポリマーの耐熱性が悪化する傾向があるため、通常、その使用量はテトラカルボン酸類に対し、30モル%以下であることが好ましい。
【0013】
(B)成分としては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、4,4´−ジアミノジフェニルメタン(DDM)、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル(DPE)、4,4´−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、1,4´−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)、1,3´−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル、4,4´−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3´−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4´−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、3,3´−ジメチル−4,4´−ジアミノビフェニル、4,4´−ジアミノジフェニルスルフィド、2,6´−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、1,2−ジアミノアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、3,3´−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノベンゾフェノン、4,4´−ジアミノベンゾフェノン、4,4´−ジアミノビベンジル、R(+)−2,2´−ジアミノ−1,1´−ビナフタレン、S(+)−2,2´−ジアミノ−1,1´−ビナフタレン等の芳香族ジアミン;1,2−ジアミノメタン、1,4−ジアミノブタン、テトラメチレンジアミン、1,10−ジアミノドデカン等の脂肪族ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、4,4´−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂環族ジアミンのほか、3,4−ジアミノピリジン、1,4−ジアミノ−2−ブタノン等を使用することができる。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。また、本発明では、本発明の効果を損なわない範囲で、他のアミン類(モノアミン、トリアミン等)も用いることができ、これらを用いることにより、得られるポリウレア微粒子の特性を変えることができる。これらの中では、特にDPE、TRE−R等を用いることが好ましい。
【0014】
(A)成分および(B)成分は、副反応の進行を抑制する点から、(A)成分、(B)成分をあらかじめ溶媒に溶解して溶液として使用する。なお、(A)成分溶液、(B)成分溶液を調製する際に用いる溶媒としては、(A)成分、(B)成分と反応せず、(A)成分、(B)成分を溶解し、かつ、生成するポリアミック酸が溶解しないものまたは難溶解性のものであれば特に制限されず用いることができる。
【0015】
ポリアミック酸微粒子を製造する際に用いる溶媒は、無水テトラカルボン酸類、ジアミン類が溶解し、かつ、生成するポリアミック酸が溶解しないものであれば特に制限されない。例えば、ケトン系溶媒、塩素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒、芳香族系溶媒等が挙げられ、これらの一種または数種を併用することができる。ケトン系溶媒としては、例えば、2−プロパノン、3−ペンタノン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。塩素系溶媒としては、ジクロロメタン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル等が挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル等が挙げられる。ニトリル系溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等が挙げられる。アミド系溶媒としては、例えば、アセトアニリド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、芳香族系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらの中では、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒、エーテル系溶媒を用いることが好ましく、特にケトン系、エーテル系溶媒が好ましい。また、例えばDMF、DMAc、NMP等の非プロトン極性溶媒のようなポリアミック酸が溶解する溶媒であっても、アセトン、酢酸エチル、MEK、トルエン、キシレン等のポリアミック酸の貧溶媒と混合してポリアミック酸微粒子が生成するように調整すれば、これらも使用できる。
【0016】
(A)成分溶液の濃度は、用いる(A)成分の種類、(B)成分溶液の濃度、溶液とした場合の粘度等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は0.001〜1モル/リットル程度、好ましくは0.01〜0.1モル/リットルとする。
【0017】
(B)成分溶液の濃度は、用いる(B)成分の種類、(A)成分溶液の濃度、溶液とした場合の粘度等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は0.001〜1モル/リットル程度、好ましくは0.01〜0.1モル/リットルとする。
【0018】
本発明に用いられる(C)成分は、製造するポリアミック酸微粒子の芯材となるものであり、粒径、材質等は特に限定されず、比重や使用する溶媒系への溶解性、分散安定性、ポリアミック酸成分との密着性および得られるポリアミック酸微粒子の物性等を勘案して選定すればよい。当該(C)成分の粒子径としては、0.01〜100μm程度のものを使用することができ、所望とするポリアミック酸微粒子の粒子径よりも小さなものを用いればよい。特に、粒子形状、粒子径の揃ったものを用いることにより、均質なポリアミック酸微粒子を得やすいため特に好ましい。当該(C)成分の材質は、特に限定されず公知のものを用いることができ、例えば、無機微粒子、有機ポリマー微粒子などが挙げられる。無機微粒子としては、例えば、活性炭微粒子、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、ジルコニア微粒子、ニッケルなどの金属微粒子等が挙げられる。有機ポリマー微粒子としては、特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミック酸、ポリイミドなどの微粒子が挙げられる。通常、(C)成分としては、所望する重付加系ポリマー微粒子と同種のポリマー微粒子を用いることが好ましい。例えば、ポリアミック酸微粒子を製造する場合には、(C)成分は、ポリアミック酸微粒子またはポリイミド微粒子を用いることが好ましい。(C)成分は、公知の方法、例えば、特開平11−140181号公報に記載の方法などにより製造することができる。なお、(C)成分を重合溶媒中に安定して分散させる目的で、分散安定剤を必要に応じて使用することもできる。
【0019】
本発明のポリアミック酸微粒子の製造方法では、溶媒中、(A)成分と(B)成分を(C)成分の存在下で混合、重合させて、生成するポリマーを(C)成分表面上にポリアミック酸層を形成させることを特徴とするが、(A)〜(C)成分と溶媒を一括で仕込み、混合、重合させる方法、(C)成分の存在下において、あらかじめ(A)成分溶液と(B)成分溶液を混合した混合溶液を供給しながら、重合させる方法や(C)成分の存在下において、(A)成分溶液と(B)成分溶液を個別に供給しながら混合、重合させる方法などから選択することができる。特に、重合、粒子成長の制御が容易な点から、(C)成分の存在下において、あらかじめ(A)成分溶液と(B)成分溶液を混合した混合溶液を供給しながら、重合させる方法が好ましく、(A)成分溶液と(B)成分溶液を混合する方法としては、混合効率が高く、温度制御が容易であり、反応制御が容易なためマイクロミキサーを用いて混合する方法が好ましい。なお、本発明において、マイクロミキサーとは、2以上の流入路および1以上の流出路並びに該2以上の流入路が合流する空間を有するものであって、合流空間につながる流入路の口径が、0.01〜100μm程度であるものをいう。なお、あらかじめ(A)成分溶液と(B)成分溶液を混合した混合液を供給する場合、(C)成分表面上でポリアミック酸層を形成させるため、(A)成分溶液と(B)成分溶液を混合して混合液を調製する段階においては、ポリアミック酸の析出が起こらないように反応条件を設定する必要がある。生成したポリアミック酸の(C)成分表面以外でのポリアミック酸の形成が生じた場合、(C)成分をシードとした粒子の成長と新粒子の形成および生成した新粒子をシードとした粒子の成長が同時に起こるため、粒子径分布が広がってしまい粒子径を制御することが難しくなる。
【0020】
重合の条件としては、特に限定されず公知の条件で行えばよいが、通常は、−10℃〜50℃程度で行うことが、粒子径の制御が容易にできるため好ましい。特に、マイクロミキサーを用いて、あらかじめ(A)成分溶液と(B)成分溶液を混合、供給する場合、(A)成分溶液および(B)成分溶液の供給速度は、特に限定されず、(A)成分と(B)成分との反応性により適宜選択すればよいが、通常、(A)成分/(B)成分の比(モル)が、0.9〜1.1程度となるようにそれぞれの供給速度を設定する事が収率等の面から好ましい。例えば、0.04モル/リットルの濃度の溶液を供給する場合には0.5〜100ミリリットル/分程度とすればよい。供給速度が遅い場合、製造時間が長時間となり現実的ではなく、供給速度が速すぎた場合には、(C)成分表面以外でのポリアミック酸の形成が起こりやすくなる場合がある。なお、(C)成分の存在下において、(A)成分溶液と(B)成分溶液を個別に供給しながら混合、重合させる場合においても、同様の溶液供給条件を設定すればよい。
【0021】
得られるポリアミック酸微粒子の粒子径は、(C)成分の粒子径、((A)成分+(B)成分)/(C)成分の比率を調整することにより制御することができる。例えば、((A)成分+(B)成分)/(C)成分の比率を一定にして、より大きな微粒子を製造する場合には、(C)成分の粒子径を大きくすれば良い。また、同じ粒子径の(C)成分を用いて、より大きな微粒子を製造するためには、((A)成分+(B)成分)/(C)成分の比率を高くすれば良い。
【0022】
なお、芯粒子となる(C)成分の粒子径分布が、得られるポリアミック酸微粒子の粒子径分布に反映されるため、既知の方法により製造される粒子径の揃った芯粒子を使用することにより、従来方法では困難であった粒子径の揃った粒子径の大きな微粒子を容易に製造することができる。また、(C)成分を選択することにより、比重や熱膨張係数など得られる粒子の諸物性を制御できる。
【0023】
このような方法により、使用した(C)成分の粒子径よりも大型化したポリアミック酸微粒子を得ることができる。具体的には、例えば、粒子径が0.01〜100μmの(C)成分を用いた場合には、0.01μmより大きく、500μm以下のポリマー微粒子が得られる。なお、得られたポリアミック酸微粒子に、さらに閉環反応をさせることにより、ポリイミド微粒子が得られる。ポリアミック酸の閉環反応は、加熱や触媒を添加する等の公知の方法で行えばよい。また、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物と反応させることによりアルコキシシリル基を有するポリアミック酸微粒子が得られ、また、アルコキシシリル基を有するポリアミック酸微粒子を同様に閉環反応させることによりシリカ複合ポリイミド微粒子を製造することができる。
【実施例】
【0024】
以下に、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
また、平均粒子径等は下記方法により決定した。
平均粒子径:微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、任意の100個の微粒子を選び、これらの微粒子の粒子径を測定し、平均値を算出して決定した。
変動係数:前記方法により算出された平均粒子径の値から、数式:
C=[{1/(n−1)×Σ(M−X)}1/2 / X ]×100
C:変動係数、X:平均粒子径、M:粒子径実測値、n:サンプル数を表す。
により、変動係数を決定した。変動係数が大きいほどばらつきが大きいことを示す。
【0025】
製造例1(シード微粒子の製造)
3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)のアセトン溶液(0.06モル/l)150mlと、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル(DPE)アセトン溶液(0.06モル/l)150mlを混合した後、38kHzの超音波((株)カイジョー製超音波洗浄機SONO
CLEANER 100Zを使用)を照射しながら、25℃、30分間反応させ、ポリアミック酸微粒子のアセトン分散液300mlを得た。この分散液中に含まれる微粒子は3.5gで、平均粒子径0.48μm、変動係数10.2%であった。
【0026】
製造例2
製造例1において3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物 (BTDA)をピロメリット酸二無水物(PMDA)に変更した他は同様にして、ポリアミック酸微粒子のアセトン分散液300mlを得た。この分散液中に含まれる微粒子は3.0gで、平均粒子径0.26μm、変動係数16.1%であった。
【0027】
製造例3
製造例1において、BTDA溶液の使用量を30ml、DPE溶液の使用量を30mlとした他は製造例1と同様にして、ポリアミック酸微粒子のアセトン分散液60mlを得た。この分散液中に含まれる微粒子は0.7gで平均粒子径0.37μm、変動係数12.3%であった。
【0028】
実施例1
3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)のアセトン溶液(0.06モル/l)、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル(DPE)のアセトン溶液(0.06モル/l)を調製した。マイクロミキサー(YM−1型、(株)山武製)を用い、図1に示すような反応装置を組み立て、ポリアミック酸微粒子の合成を実施した。攪拌装置がついた容量5000mlの微粒子調製槽に、製造例1で得られたシード微粒子分散液300mlを加え、攪拌しながら(A)成分溶液、(B)成分溶液をそれぞれ30ml/分の流速でマイクロミキサーを通じて混合し、供給した。なお、各溶液、ライン3、ライン4、マイクロミキサー5、ライン6および微粒子調製槽7は10℃に保った。(A)成分溶液と(B)成分溶液との混合液を合計で4000ml流出させ、得られた微粒子をろ過し、アセトンで洗浄、次いで乾燥させることによって、平均粒子径1.25μm、変動係数6.2%のポリアミック酸微粒子57.2g(収率82.1%)を得た。SEM写真を図2に示す。
【0029】
実施例2
使用するテトラカルボン酸二無水物をBTDAからピロメリット酸二無水物(PMDA)に変更し、シード微粒子分散液を製造例2で得られたものに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、平均粒子径0.64μm、変動係数10.2%のポリアミック酸微粒子48.0g(収率88.0%)を得た。SEM写真を図3に示す。
【0030】
実施例3
(A)成分溶液および(B)成分溶液の送液速度を15ml/分に変更し、シード微粒子分散液として製造例3で調製したものを60ml使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、平均粒子径1.94μm、変動係数6.7%のポリアミック酸微粒子59.6g(収率90.7%)を得た。SEM写真を図4に示す。
【0031】
実施例4
シード微粒子分散液を、実施例1で製造したポリアミック酸微粒子20.5gをアセトンに再分散させたアセトン分散液800mlとした以外は実施例3と同様の操作を行い、平均粒子径2.34μm、変動係数6.2%のポリアミック酸微粒子67.7g(収率79.1%)を得た。SEM写真を図5に示す。
【0032】
実施例5
実施例3で得られたポリアミック酸微粒子を、電気炉を用いて200℃で2時間、次いで300℃で1時間、さらに400℃で2時間加熱し、平均粒子径1.80μm、変動係数7.1%のポリマー微粒子を得た。SEM写真を図6に示す。また、得られた粒子のIR測定行い、1550cm−1のアミド基吸収帯が消失していること、1720cm−1、1380cm−1、及び720cm−1のイミド基特有の吸収帯の出現からイミド化が進行していることを確認した。
【0033】
比較例1
実施例1と同様の(A)成分溶液10mlを(B)成分溶液10mlに加え、溶液を20℃に保ったまま静置した。10分後にろ過し、アセトンで洗浄、乾燥することによりポリアミック酸を得た。SEM写真を図7に示す。均一な形状の粒子は得られず、粒子径もばらばらであることを確認した。
【符号の説明】
【0034】
1 無水テトラカルボン酸(A)溶液供給手段
2 ジアミン類(B)溶液供給手段
3 無水テトラカルボン酸(A)溶液供給ライン
4 ジアミン類(B)溶液供給ライン
5 マイクロミキサー
6 混合物排出ライン
7 微粒子調製槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)無水テトラカルボン酸類、(B)ジアミン類を溶媒中で反応させてポリアミック酸微粒子を製造する方法において、(C)シード微粒子の存在下で、(A)無水テトラカルボン酸類と(B)ジアミン類を、無水カルボン酸溶液、ジアミン溶液としてからマイクロミキサーを用いてあらかじめ混合してから溶媒中で反応させて、(C)シード微粒子より大きな粒子径のポリマー微粒子を製造することを特徴とするポリアミック酸微粒子の製造方法。
【請求項2】
−10℃〜50℃で混合、反応することを特徴とする請求項1に記載のポリマーポリアミック酸微粒子の製造方法。
【請求項3】
マイクロミキサー内の温度を−10℃〜50℃に調節する請求項1または2に記載のポリアミック酸微粒子の製造方法。
【請求項4】
(C)シード微粒子の粒径が、0.01〜100μmである請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミック酸微粒子の製造方法。
【請求項5】
(C)シード微粒子が、ポリアミック酸微粒子および/またはポリイミド微粒子である請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミック酸微粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミック酸微粒子の製造方法で得られたポリアミック酸微粒子をさらに閉環させることを特徴とするポリイミド微粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−31424(P2012−31424A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223931(P2011−223931)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【分割の表示】特願2006−37705(P2006−37705)の分割
【原出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】