説明

ポリアミック酸樹脂およびポリイミド樹脂の精製方法

【課題】ポリアミック酸樹脂およびポリイミド樹脂の精製方法が提供される。
【解決手段】ポリアミック酸樹脂およびポリイミド樹脂の精製方法は、金属イオン不純物を含むポリアミック酸樹脂またはポリイミド樹脂を提供するステップを含む。その後、陽イオン交換樹脂を利用してポリアミック酸樹脂またはポリイミド樹脂と反応させ、含まれている金属イオン不純物を除去して、ポリアミック酸樹脂またはポリイミド樹脂の含有水を除去することによりポリアミック酸樹脂またはポリイミド樹脂を精製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂溶液の精製方法に係り、特に、ポリアミック酸(PAA)樹脂およびポリイミド樹脂の精製方法に係る。
【背景技術】
【0002】
電子材料製品では最終用途における性能によりデバイスの品質および性能が決定されることが多く、電子材料は、一般的な用途の材料と比較すると、精製度および品質に関する閾値要件が厳しいことが多い。電子材料の合成においては、最終製品の要件を満たすべく、様々な種類の出発材料の合成または異なる材料を添加した調合が利用され、殆どの最初の出発材料の精製度を監視すると、電子材料の品質におけるばらつきが低減している。
【0003】
一例として、ポリイミド(PI)およびポリアミック酸(PAA)は、よく知られた電子材料である。PIは、液晶ディスプレイ(LCD)、集積回路(IC)、およびフレキシブル銅張積板(FCCL)等の電子製品に利用されている。異なる製品への用途においては、これらポリイミドおよびポリアミック酸に関して異なる要件が採用されている。しかし、異なる要件に加えて、ポリイミドおよびポリアミック酸の金属イオン含有量および水含有量については様々な異なる要件に共通した要件がある。これは、金属イオン含有量および水含有量という2つの要素が、最終製品の性能に直接影響する要素であることに起因している。
【0004】
例えば、ポリイミドおよびポリアミック酸を延伸フィルムに利用する場合には、金属イオン含有量が低いことが要求される。一方で、樹脂溶液の組成における、金属イオンにキレート力を働かせる主要機能基は、アミノ基、イミド基、アミド基、および/または、酸基である。加えて、さらに利用される溶媒(1‐メチル‐2‐ピロリドン、シクロブチロラクトン(cyclobutyrolactone)、ブチルカルビトール(BC)、エチルカーボネート(EC)、およびジメチルアセトアミド(DMAc))もキレート効果を持つ。従って、樹脂溶媒の利用後には、金属イオン不純物が過剰に含まれている場合が多く、さらなる精製処理が必要になる場合がある。さらに延伸フィルムの用途においては、ポリイミドまたはポリアミック酸の水含有量は、コーティング処理中のフィルム表面の平面化および均一化に対する効果を考慮に入れて、低いことが望まれる。従って、製造後または利用後に水含有量が増えた場合には、これを低減させる必要がある。
【0005】
ポリイミドまたはポリアミック酸に対する現在の精製処理としては、主に沈殿処理法が利用されている。この方法では、溶液中の小さな分子量のポリマーまたはモノマーを除去することにより、分子量の分布を低くする。プロセス中に、金属イオンを同時に洗浄して除去し、精製効果を得ている。
【0006】
しかしこの沈殿処理法は、プロセスが複雑であり、産業利用において大量の溶媒が消費されるので、汚染された溶液の処理問題が生じる。上述の課題に鑑みて、より簡単なプロセスによる、溶媒消費量がより少ない精製方法の提供が、実際的な用途の観点、環境保護面等から有益である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ポリアミック酸樹脂およびポリイミド樹脂の精製方法に係る。特に、本発明の精製方法によって、樹脂溶液における含有水および金属イオン不純物を、簡単なプロセスにより、少ない溶媒消費量で効果的に低減することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、金属イオン不純物を含むポリアミック酸樹脂を提供するステップと、金属イオン除去ステップと、含有水除去ステップとを含むポリアミック酸樹脂の精製方法を提供する。金属イオン除去ステップでは、陽イオン交換樹脂を利用してポリアミック酸樹脂と反応させ、ポリアミック酸樹脂の金属イオン不純物を除去し、含有水除去ステップでは、ポリアミック酸樹脂の含有水を除去することによりポリアミック酸樹脂を精製する。金属イオン除去ステップは、含有水除去ステップの前後に一連のステップとして行うことができる。
【0009】
本発明はさらに、金属イオン不純物を含むポリイミド樹脂を提供するステップと、金属イオン除去ステップと、含有水除去ステップとを含むポリイミド樹脂の精製方法を提供する。金属イオン除去ステップでは、陽イオン交換樹脂を利用してポリイミド樹脂と反応させ、ポリイミド樹脂の金属イオン不純物を除去し、含有水除去ステップでは、ポリイミド樹脂の含有水を除去することによりポリイミド樹脂を精製する。金属イオン除去ステップは、含有水除去ステップの前後に一連のステップとして行うことができる。
【0010】
本発明の実施形態においては、陽イオン交換樹脂の主鎖は、ポリスチレン、ポリジフェニルエチレン(polydiphenylethylene)、または、シリコーンの重合化または架橋により形成されたポリマーのなかから選択される。
【0011】
本発明の実施形態においては、陽イオン交換樹脂は、スルフォン基、アミン塩基(amino salt group)、酸基、ポリオール基、および尿素基からなる機能基のなかのいずれか1つを含む。
【0012】
本発明の実施形態においては、金属イオン除去ステップにおける反応流量は10および300L/hの間である。
【0013】
本発明の実施形態においては、金属イオン除去ステップにおける温度は摂氏0および75度の間である。
【0014】
本発明の実施形態においては、金属イオン除去ステップにおける圧力は0‐10kg/mである。
【0015】
本発明の実施形態においては、金属イオン除去ステップにおけるpH値は4および10の間である。
【0016】
本発明の実施形態においては、含有水除去ステップは、分子ふるい、セライト、または酸化アルミニウムを利用するステップを有する。
【0017】
本発明の実施形態においては、含有水除去ステップは、蒸発、凍結昇華(freeze sublimate)、分子ふるい吸収、セライト吸収、または酸化アルミニウム吸収を行うステップを有する。
【0018】
本発明の実施形態においては、含有水除去ステップは、薄膜蒸発を行うステップを有する。
【0019】
本発明の実施形態においては、含有水除去ステップにおける反応時間は、4および12時間の間である。
【0020】
本発明の実施形態においては、含有水除去ステップにおける温度は、摂氏−5および75度の間である。
【0021】
本発明の実施形態においては、含有水除去ステップにおける圧力は0.01および30torrの間である。
【0022】
上記のように、本発明は、物理的プロセスを利用して、新たに生成された、または利用後のポリアミック酸樹脂またはポリイミド樹脂溶液における含有水および金属イオン不純物を除去し、ポリアミック酸樹脂またはポリイミド樹脂を効果的に精製することができる。加えて、従来の精製方法と比較すると、本発明が提供する精製方法は簡単なプロセスを利用しており、溶液消費量が低下している。
【0023】
本発明の上述したものに加えて他の特徴および利点の理解を促すべく、添付図面を参照しながら以下に実施形態の一部を記載する。
【0024】
添付図面は、本発明の理解を深める目的から提供されており、本明細書の一部を形成する。図面は、本願の実施形態を記載しており、記載とともに本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるポリアミック酸樹脂の精製方法を示すフローチャートである。
【0026】
【図2】本発明の第2の実施形態におけるポリイミド(PI)樹脂の精製方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の第1の実施形態におけるポリアミック酸樹脂の精製方法を示すフローチャートである。ステップ100で、金属イオン不純物を含むポリアミック酸樹脂が提供される。ポリアミック酸樹脂は、新たに生成されたポリアミック酸樹脂であっても、利用後リサイクルされたポリアミック酸樹脂であってもよく、1‐メチル‐2‐ピロリドン、ブチルカルビトール(BC)が含まれていてよい。
【0028】
次に金属イオン除去ステップであるステップ110を行う。このステップでは、陽イオン交換樹脂を利用して、ポリアミック酸樹脂と反応させて、含まれている金属イオン不純物を除去する。例えば、先ず上述した陽イオン交換樹脂を、圧力をかけた濾過コンテナに導入して、圧力をかけたコンテナ内に、圧力0‐10kg/mで不活性ガスによりポリアミック酸樹脂を通過させて、濾液を得ることができる。濾液は、金属イオン不純物を除去した後のポリアミック酸樹脂である。金属イオン除去ステップでは、反応流量が、例えば10および300L/hの間であり、好適には30および120L/hの間であり、温度は、例えば摂氏0および75度の間であり、好適には摂氏5および25度の間であり、圧力は、例えば0および10kg/mの間であり、好適には2および4kg/mの間であり、pH値は、例えば4および10の間である。
【0029】
加えて、ステップ110で、ポリアミック酸樹脂および溶媒の環境の機能基の実際の特徴および数に従って、極性が高い溶媒に耐性を有する陽イオン交換樹脂を、主要なイオン除去用試薬として利用することができる。陰イオン交換樹脂は主に一次、二次、三次、または四次のアミン塩(amine salt)であり、高反応の機能基であり、ポリアミック酸樹脂のアミド基とも反応しうるので、本発明では利用されない。
【0030】
本発明では、任意の種類の陽イオン交換樹脂を利用して、ポリアミック酸樹脂の金属イオン不純物を除去することができる。これよりも適切な選択肢は、スルフォン基、アミン塩基(amino salt group)、酸基、ポリオール基、および尿素基からなる機能基のなかの少なくとも1つを有する陽イオン交換樹脂である。また、陽イオン交換樹脂の主鎖を、ポリスチレン、ポリジフェニルエチレン(polydiphenylethylene)、または、シリコーンの重合化または架橋により形成されたポリマーのなかから選択してもよい。DOW CHEMICAL、ROHM AND HAAS、およびSILICYCLE等が主要な製造業者であり、利用可能な陽イオン交換樹脂は、a)SILIABOND(登録商標)、b)DOWEX(登録商標)、c)AMBERLYST(登録商標)、d)CELITE(登録商標)、およびe)TONSIL等である。
【0031】
さらに、金属イオン不純物を除去するのに有効とされている、試薬を含むポリアミドリガンドの添加、および/または、沈殿および濾過の循環をステップ110に追加することもできる。
【0032】
次いで、含有水除去ステップであるステップ120を行う。このステップでは、上述したポリアミック酸樹脂の含有水を除去して、ポリアミック酸樹脂を精製する。第1の実施形態においては、含有水除去ステップにおいて、反応時間は4から12時間であり、温度は摂氏−5および75度の間であり、好適には摂氏10から65度の間であり、圧力は0.01および30torrの間である。
【0033】
さらにステップ120で、分子ふるい、セライト、または酸化アルミニウムを利用して含有水を除去することもできる。例えばステップ120で、蒸発、凍結昇華(freeze sublimate)、分子ふるい吸収、セライト吸収、または酸化アルミニウム吸収をポリアミック酸樹脂に行うことができる。加えて、樹脂で利用される有機溶媒は沸点が高く、ポリマー材料は高温で分解(decompose)することから、ステップ120を行うときには圧力を下げて、含有水の蒸留を促すことができる。従って、従来の蒸発法の他にステップ120で利用され得るさらに適切な方法の1つは、例えば連続薄膜蒸発器を利用することにより、ポリアミック樹脂上に薄膜蒸発法を行うことである。上述した薄膜蒸発プロセスにおいて、例えば反応流量は1および30L/hの間であり、温度は摂氏0および75度の間であり、蒸発時間は10および600秒の間であり、圧力は0.01および30torrの間とすることで、薄膜蒸発プロセス中の高温に起因するポリアミック酸樹脂の劣化を防ぐことができる。
【0034】
2つの主要なステップの順序に関する構成を変えることにより、ポリアミック酸樹脂の精製度を異ならせることもできる。ポリアミック酸樹脂の水含有量および金属イオン量をそれぞれ0.1%および1ppm未満に下げると最適であろう。さらに、当業者であれば、最終用途における異なる要件に応じて最適な精製システムを整備して、このシステムの基準に従って最適な精製条件を構築することができる。
【0035】
図2は、本発明の第2の実施形態におけるポリイミド(PI)樹脂の精製方法を示すフローチャートである。ステップ200で、金属イオン不純物を含むポリイミド樹脂を提供する。ポリイミド樹脂は、新たに生成されたポリイミド樹脂であっても、利用後リサイクルされたポリイミド樹脂であってもよく、1‐メチル‐2‐ピロリドン、ブチルカルビトール(BC)が含まれていてよい。
【0036】
そして、金属イオン除去ステップであるステップ210を行う。このステップでは、陽イオン交換樹脂を利用して、ポリイミド樹脂と反応させて、含まれている金属イオン不純物を除去する。この例における詳細は第1の実施形態で記載したとおりである。上述した金属イオン除去ステップでは、反応流量が、例えば30および120L/hの間であり、温度は、例えば摂氏0および75度の間であり、圧力は、例えば0および10kg/mの間であり、pH値は、例えば4および10の間である。ステップ210において、任意の種類の陽イオン交換樹脂を利用して、ポリイミド樹脂に含まれる金属イオン不純物を除去することができ、陽イオン交換樹脂のより適切な選択肢については第1の実施形態を参照されたい。さらに、金属イオン不純物を除去するのに有効とされている、試薬を含むポリアミドリガンドの添加、および/または、沈殿および濾過の循環をステップ210に追加することもできる。
【0037】
次いで、含有水除去ステップであるステップ220を行う。このステップでは、上述したポリイミド樹脂の含有水を除去して、ポリイミド樹脂を精製する。第2の実施形態においては、含有水除去ステップにおいて、反応時間は4から12時間であり、温度は摂氏−5および75度の間であり、圧力は0.01および30torrの間である。さらに、第1の実施形態で記載したステップ110の技術(例えば、連続薄膜蒸発器の利用等)をステップ220でさらに利用することもできる。
【0038】
上述したステップ210および220の構成を変えることにより、ポリイミド樹脂の精製度を異ならせることもできる。ポリイミド樹脂の水含有量および金属イオン量をそれぞれ0.1%および1ppm未満に下げると最適であろう。さらに、当業者であれば、最終用途における異なる要件に応じて最適な精製システムを整備して、このシステムの基準に従って最適な精製条件を構築することができる。
【0039】
以下に、本発明の効果を示す複数の実験を例示する。
<実験>
<実験実施形態1>
【0040】
金属イオン不純物を含むPI樹脂(またはPAA樹脂)を、イオン交換樹脂(DOWEX 50W SERIES(登録商標)、DOWEX MONOSPHERE SERIES(登録商標)、DOWEX MARATHON(登録商標)、AMBERJET(登録商標)、AMBERLITE SERIES(登録商標)、AMBERLYST SERIES(登録商標))と混合して、均一にかき混ぜ、ここでイオン交換樹脂のPI(またはPAA)に対する比率は、1および50重量パーセントの間であり、混合温度は摂氏15および20度の間とすることで、PI樹脂およびイオン交換樹脂を完全に混合させる。次いで、圧力2kg/mにおいて、不活性ガスを利用して上述の混合物を300メッシュフィルタボードに押して通し、イオン交換樹脂とPI樹脂とを分離させる。次いで、摂氏15および65度の間の温度、および、0.1および5torrの間の圧力において、PI樹脂を反応器に加えて真空蒸留を行う。水含有量の計測は、4時間毎に、水含有量が0.1%を下回るまで行う。
<実験実施形態2>
【0041】
金属イオン不純物を含むPI樹脂(またはPAA樹脂)を、イオン交換樹脂(DOWEX 50W SERIES(登録商標)、DOWEX MONOSPHERE SERIES(登録商標)、DOWEX MARATHON(登録商標)、AMBERJET(登録商標)、AMBERLITE SERIES(登録商標)、AMBERLYST SERIES(登録商標))と混合して、均一にかき混ぜ、ここでイオン交換樹脂のPI(またはPAA)に対する比率は、50および80重量パーセントの間であり、混合温度は摂氏20および25度の間とすることで、PI樹脂およびイオン交換樹脂を完全に混合させる。次いで、圧力2kg/mにおいて、不活性ガスを利用して上述の混合物を300メッシュフィルタボードに押して通し、イオン交換樹脂とPI樹脂とを分離させる。次いで、PI樹脂を薄膜蒸発器に加え、毎分回転速度150(rpm)、摂氏0および65度の間の温度、および、0.01および2torrの間の圧力で凝縮させる。水含有量の計測は、PI樹脂がデバイスを通過する毎に行い、基準が満たされない場合には、水含有量が0.1%を下回るまで、PI樹脂を薄膜蒸発器に繰り返し加える。
<実験実施形態3>
【0042】
イオン交換樹脂(DOWEX 50W SERIES(登録商標)、DOWEX MONOSPHERE SERIES(登録商標)、DOWEX MARATHON(登録商標)、AMBERJET(登録商標)、AMBERLITE SERIES(登録商標)、AMBERLYST SERIES(登録商標))を、摂氏20および25度の間の温度で混合して、300メッシュフィルタボードで支持される耐圧性のコンテナの底部に注ぎ、フィリングタワーを形成する。金属イオン不純物を含むPI樹脂(またはPAA樹脂)を、2および4kg/mの間の圧力で窒素を用いてフィリングタワーを通過させて、イオン交換樹脂と30および120L/hの間の流量で完全に混合させる。次いで、摂氏15および65度の間の温度、および、0.1および5torrの間の圧力において、PI樹脂を反応器に加え真空蒸留を行う。水含有量の計測は、水含有量が0.1%を下回るまで4時間毎に行う。
<実験実施形態4>
【0043】
イオン交換樹脂(DOWEX 50W SERIES(登録商標)、DOWEX MONOSPHERE SERIES(登録商標)、DOWEX MARATHON(登録商標)、AMBERJET(登録商標)、AMBERLITE SERIES(登録商標)、AMBERLYST SERIES(登録商標))を、摂氏20および25度の間の温度で混合して、300メッシュフィルタボードで支持される耐圧性のコンテナの底部に注ぎ、フィリングタワーを形成する。金属イオン不純物を含むPI樹脂を、2および4kg/mの間の圧力で窒素を用いてフィリングタワーを通過させて、イオン交換樹脂と30および120L/hの間の流量で完全に混合させる。次いで、150rpmの速度、摂氏0および65度の間の温度、および、0.01および2torrの間の圧力において、PI樹脂(またはPAA樹脂)を薄膜蒸発器に加える。水含有量の計測は、PI樹脂がデバイスを通過する毎に行い、基準が満たされない場合には、水含有量が0.1%を下回るまで、PI樹脂を薄膜蒸発器に繰り返し加える。
<比較実施形態>
【0044】
濾過されていないPI樹脂(またはPAA樹脂)溶液を、水を含まないエタノールに5および10重量%の間の比率で追加して沈殿させ、300メッシュフィルタボードを通過させて、固体と液体とを分離させ、0.001および0.01torrの間の圧力で固体を真空乾燥させ、50および55重量%の間の1‐メチル‐2‐ピロリドンおよびBCを含む混合溶媒に再度溶解させる。
<テスト>
【0045】
上述した実験実施形態1から4および比較実施形態において、光電子工学特性および樹脂特性を計測し、オプトエレクトロニクス計測機器および樹脂計測機器の詳細を以下の表1に示す。
【表1】

【0046】
精製処理の前後のPI樹脂(またはPAA樹脂)の特性の分析および比較結果を以下の表2に示す。表2では、本発明の精製処理の前後におけるPI樹脂の粘度変化が明らかである。特に、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−Ms)で計測した、精製処理後のPI樹脂(またはPAA樹脂)における金属イオン量が、比較実施形態のものよりもかなり低くなっている。
【表2】

【0047】
精製処理後のPI樹脂(またはPAA樹脂)の利用評価結果を以下の表3に示す。表3から分かるように、本発明の実験実施形態1から4から得られたPI樹脂のRDC値は、比較実施形態におけるRDC値よりも明らかに低い。
【表3】

【0048】
以上をまとめると、本発明では物理的プロセスを利用して、ポリアミック酸樹脂またはポリイミド樹脂に含まれる金属イオン不純物および水を除去し、効果的に精製することができる。さらに本発明の精製方法によって、大量な溶媒消費および多数のプロセスが必要であった従来の方法の欠点が解決される。
【0049】
本願を上述した実施形態を参照して説明したが、当業者であれば、本願の精神から逸脱することなく、説明された実施形態の変形例が明らかである。従って、本発明の範囲の定義は、前述の詳細な記載ではなくて添付請求項によるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミック酸樹脂の精製方法であって、
金属イオン不純物を含むポリアミック酸樹脂を提供するステップと、
陽イオン交換樹脂を利用して前記ポリアミック酸樹脂と反応させ、前記ポリアミック酸樹脂の前記金属イオン不純物を除去する金属イオン除去ステップと、
前記ポリアミック酸樹脂の含有水を除去することにより前記ポリアミック酸樹脂を精製する含有水除去ステップと
を備え、
前記金属イオン除去ステップは、前記含有水除去ステップの前後に一連のステップとして行われるポリアミック酸樹脂の精製方法。
【請求項2】
前記陽イオン交換樹脂の主鎖は、ポリスチレン、ポリジフェニルエチレン(polydiphenylethylene)、または、シリコーンの重合化または架橋により形成されたポリマーのなかから選択される請求項1に記載のポリアミック酸樹脂の精製方法。
【請求項3】
前記陽イオン交換樹脂は、スルフォン基、アミン塩基(amino salt group)、酸基、ポリオール基、および尿素基からなる機能基のなかのいずれか1つを含む請求項1に記載のポリアミック酸樹脂の精製方法。
【請求項4】
前記金属イオン除去ステップにおける反応流量は10および300L/hの間である請求項1に記載のポリアミック酸樹脂の精製方法。
【請求項5】
前記金属イオン除去ステップにおける温度は摂氏0および75度の間である請求項1に記載のポリアミック酸樹脂の精製方法。
【請求項6】
前記金属イオン除去ステップにおける圧力は0および10kg/mの間である請求項1に記載のポリアミック酸樹脂の精製方法。
【請求項7】
前記金属イオン除去ステップにおけるpH値は4および10の間である請求項1に記載のポリアミック酸樹脂の精製方法。
【請求項8】
前記含有水除去ステップは、分子ふるい、セライト、または酸化アルミニウムを利用して前記ポリアミック酸樹脂の前記含有水を除去するステップを有する請求項1に記載のポリアミック酸樹脂の精製方法。
【請求項9】
前記含有水除去ステップは、蒸発、凍結昇華(freeze sublimate)、分子ふるい吸収、セライト吸収、または酸化アルミニウム吸収を前記ポリアミック酸樹脂に行うステップを有する請求項1に記載のポリアミック酸樹脂の精製方法。
【請求項10】
前記含有水除去ステップは、前記ポリアミック酸樹脂に薄膜蒸発を行うステップを有する請求項1に記載のポリアミック酸樹脂の精製方法。
【請求項11】
前記含有水除去ステップにおける反応時間は、4および12時間の間である請求項1に記載のポリアミック酸樹脂の精製方法。
【請求項12】
前記含有水除去ステップにおける温度は、摂氏−5および75度の間である請求項1に記載のポリアミック酸樹脂の精製方法。
【請求項13】
前記含有水除去ステップにおける圧力は0.01および30torrの間である請求項1に記載のポリアミック酸樹脂の精製方法。
【請求項14】
ポリイミド樹脂の精製法であって、
金属イオン不純物を含むポリイミド樹脂を提供するステップと、
陽イオン交換樹脂を利用して前記ポリイミド樹脂と反応させ、前記ポリイミド樹脂の前記金属イオン不純物を除去する金属イオン除去ステップと、
前記ポリイミド樹脂の含有水を除去することにより前記ポリイミド樹脂を精製する含有水除去ステップと
を備え、
前記金属イオン除去ステップは、前記含有水除去ステップの前後に一連のステップとして行われるポリイミド樹脂の精製方法。
【請求項15】
前記陽イオン交換樹脂の主鎖は、ポリスチレン、ポリジフェニルエチレン(polydiphenylethylene)、または、シリコーンの重合化または架橋により形成されたポリマーのなかから選択される請求項14に記載のポリイミド樹脂の精製方法。
【請求項16】
前記陽イオン交換樹脂は、スルフォン基、アミン塩基(amino salt group)、酸基、ポリオール基、および尿素基からなる機能基のなかのいずれか1つを含む請求項14に記載のポリイミド樹脂の精製方法。
【請求項17】
前記金属イオン除去ステップにおける反応流量は10および300L/hの間である請求項14に記載のポリイミド樹脂の精製方法。
【請求項18】
前記金属イオン除去ステップにおける温度は摂氏0および75度の間である請求項14に記載のポリイミド樹脂の精製方法。
【請求項19】
前記金属イオン除去ステップにおけるpH値は4および10の間である請求項14に記載のポリイミド樹脂の精製方法。
【請求項20】
前記含有水除去ステップは、分子ふるい、セライト、または酸化アルミニウムを利用して前記ポリイミド樹脂の前記含有水を除去するステップを有する請求項14に記載のポリイミド樹脂の精製方法。
【請求項21】
前記含有水除去ステップは、蒸発、凍結昇華(freeze sublimate)、分子ふるい吸収、セライト吸収、または酸化アルミニウム吸収を前記ポリイミド樹脂に行うステップを有する請求項14に記載のポリイミド樹脂の精製方法。
【請求項22】
前記含有水除去ステップは、前記ポリイミド樹脂に薄膜蒸発を行うステップを有する請求項14に記載のポリイミド樹脂の精製方法。
【請求項23】
前記含有水除去ステップにおける反応時間は、4および12時間の間である請求項14に記載のポリイミド樹脂の精製方法。
【請求項24】
前記含有水除去ステップにおける温度は、摂氏−5および75度の間である請求項14に記載のポリイミド樹脂の精製方法。
【請求項25】
前記含有水除去ステップにおける圧力は0.01および30torrの間である請求項14に記載のポリイミド樹脂の精製方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−149023(P2011−149023A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−291068(P2010−291068)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(508054404)達興材料股▲ふん▼有限公司 (8)
【Fターム(参考)】