説明

ポリアミド樹脂組成物、及びポリアミド樹脂成形品

【課題】汎用的なポリアミド樹脂の諸物性を向上させる天然由来の有機充填材が配合されたポリアミド樹脂組成物及びポリアミド樹脂成形品を提供する。
【解決手段】ポリアミド樹脂(a)と、オリゴエステル化した天然由来の有機充填材(b)とを加熱混練することを特徴とし、この天然由来の有機充填材(b)をオリゴエステル化させる方法は、天然由来の有機充填材(b)と、二塩基酸又はその誘導体(c)と、エポキシド(d)又は多価アルコール(e)と、を化学反応させることによることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂に天然由来の有機充填材を配合したポリアミド樹脂組成物及びこのポリアミド樹脂組成物を成形してなるポリアミド樹脂成形品に関し、環境特性、強度等の物性を向上させるとともに、成形品の外観を良好にする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境、及びリサイクルの観点から熱可塑性樹脂に天然繊維を補強材として配合した樹脂材料が従来から使用されている。具体的には、古紙から解繊した植物繊維を熱可塑性樹脂(特にポリオレフィン)に配合して成形した自動車部品が公知である(例えば、特許文献1,2参照)。また、熱可塑性樹脂に古紙を混練する技術が公知になっている(例えば、特許文献3参照)。そして、植物繊維と熱可塑性樹脂を配合して複合素材を得る技術が公知になっている(例えば、特許文献4参照)。
【0003】
ところで、前記した公知技術に適用されている熱可塑性樹脂は、いずれもポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンである。
このポリオレフィンに比べて、強度や剛性が高く、耐熱性や耐油性に優れているポリアミド樹脂に関し、前記したような天然繊維を実際に配合し、実用に耐えるポリアミド樹脂組成物を得たという報告例はない。例えば、前記した特許文献3では、熱可塑性樹脂の一例としてポリアミド樹脂であるナイロン6を適用することが示唆されているが、実施例等の具体的な記載はない。
その理由は、ナイロン6やナイロン66のような汎用的に用いられるポリアミド樹脂は、前記したようなポリオレフィンに比べて融点が高いうえに、天然繊維を微細に均一に配合しようとすると加熱混練する温度をさらに高くする必要がある。すると、この天然繊維が分解してガスが発生し、得られるポリアミド樹脂成形品に気泡が含まれてその品質の低下が避けられない問題が発生するからである。
【0004】
このような問題を回避するために、可塑剤を大量に添加してナイロン6の融点を低下させ、低温で植物繊維と加熱混練する技術が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
また一方で、3種の原料からなる共重合ポリアミド樹脂で低温で溶融粘度の低いものと天然由来の有機充填材とを加熱混練する技術が開示されている(例えば、特許文献6参照)。
【特許文献1】特開平11−228848号公報
【特許文献2】特開平11−221418号公報
【特許文献3】特開平11−226956号公報
【特許文献4】特開2001−181513号公報
【特許文献5】特開2004−204104号公報
【特許文献6】特開2004−339505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記した特許文献5に開示されている技術では、大量の可塑剤を添加したことによるポリアミド樹脂の諸物性の低下が避けられない問題がある。また前記した特許文献6に開示されている技術は、特殊なポリアミド樹脂に適用される技術であって、汎用的なポリアミド樹脂に適用できないという問題がある。
本発明は、このような問題を解決することを課題として種々数多くの混練実験を行い、工業的に使われているポリアミド樹脂を含め天然由来の有機充填剤を分解することなく混練複合化しうる条件を探索、創案されたものであり、配合される天然由来の有機充填材が微細でかつ均一に分散し、これにより諸物性が向上するポリアミド樹脂組成物及びポリアミド樹脂成形品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために本発明は、ポリアミド樹脂組成物の製造方法において、融点が200℃以下のポリアミド樹脂(a)と、天然由来の有機充填材(b)あるいはそれらのオリゴエステル化物と、を加熱混練することを特徴とする。
その際加熱混練条件を混練速度を高めるなど適正化することにより、融点が200℃に近接したポリアミドでも用いうることを知り、ポリアミド樹脂(a)と、天然由来の有機充填材(b)のみでの混練複合化物で、天然由来の有機充填材(b)が、その加熱混練時に、溶融するポリアミド樹脂(a)のマトリックス中に微細にかつ均一に分散し、優れた物性の発現を得た。
また本発明は、予め天然由来の有機充填材(b)をオリゴエステル化して可塑化する第1工程と、その後ポリアミド樹脂(a)とともに加熱混練する第2工程とを経る「二段法」によりポリアミド樹脂組成物が製造される。そして、この第1工程において可塑化した天然由来の有機充填材(b)は、第2工程の加熱混練時に、溶融するポリアミド樹脂(a)のマトリックス中に微細にかつ均一に分散することとなる。
【0007】
また本発明は、ポリアミド樹脂組成物の製造方法において、少なくともポリアミド樹脂(a)と、天然由来の有機充填材(b)と、二塩基酸又はその誘導体(c)とを配合し、適宜、エポキシド(d)又は多価アルコール(e)と、ラジカル発生剤(f)とを配合して加熱混練することを特徴とする。
このように発明が構成されることにより、「一段法」によりポリアミド樹脂組成物が製造されることとなる。そして、二塩基酸又はその誘導体(c)は、エポキシド(d)又は多価アルコール(e)共存下での加熱混練により、天然由来の有機充填材(b)をオリゴエステル化して可塑化するとともに、ポリアミド樹脂(a)も変性し、両者の界面における親和性を向上させる。これにより、天然由来の有機充填材(b)は、可塑性を高め、ポリアミド樹脂(a)のマトリックス中に微細にかつ均一に分散することとなる。
【0008】
また本発明は、予め二塩基酸又はその誘導体(c)を付加し、変性されたポリアミド樹脂を得る第1工程と、その後ポリアミド樹脂(a)及び天然由来の有機充填材あるいはそれらのオリゴエステル化物(b)とともに加熱混練する第2工程とを経る「二段法」によりポリアミド樹脂組成物が製造される。そして、この第1工程において二塩基酸又はその誘導体(c)が付加され、変性されたポリアミド樹脂は、第2工程の加熱混練時に、少量溶融するポリアミド樹脂(a)のマトリックス中あって、天然由来の有機充填材(b)、あるいはそのオリゴエステル化物の表面上の水酸基と酸無水物基によりエステル結合し、ポリアミドのグラフト化を生じせしめ、マトリクス樹脂と充填剤界面の接着性を高めると共に、該充填剤を微細にかつ均一に分散させることとなる。
【0009】
このように発明が構成されることにより、加熱混練の温度を低く設定することができ、植物由来の有機充填材(b)を分解させることなくして、ポリアミド樹脂との加熱混練を実施することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、木粉の植物繊維等のバイオマス資源を素材として有効利用し、環境特性の優れたポリアミド樹脂組成物を提供することができる。また、配合された植物由来の有機充填材が補強材として機能するので強度、剛性が高く、さらに外観に優れるポリアミド樹脂成形品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明に適用することができるポリアミド樹脂(a)について説明を行う。
このポリアミド樹脂(a)は、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするものである。
この原料としてのアミノ酸の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。
またラクタムの代表例としては、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等が挙げられる。
そしてジアミンの代表例としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン等の脂肪族、脂環族、芳香族のものが挙げられる。
またジカルボン酸の代表例としては、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂肪族、脂環族、芳香族のものが挙げられる。
【0012】
ポリアミド樹脂(a)は、これらの原料から誘導されるホモポリマー又はコポリマーが各々単独又は混合物の形をとるものである。
具体的には、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12等のホモポリマー、ナイロン6/66、ナイロン6/66/610、ナイロン6/12、ナイロン66/61/6、ナイロン6/66/610/12等のコポリマーの共重合体、又はこれらをベースとしたポリアミド系エラストマー等が挙げられる。なお本発明で適用されるポリアミド樹脂(a)は、融点が200℃以下であることが好ましい条件であること以外に、ポリアミド及び関連樹脂の重合度は特に限定がない。
【0013】
例示されたポリアミド樹脂(a)のうち、植物由来で低融点であるという特徴があり、本発明で用いるポリアミドとして最も好適で、興味を引くナイロン11についてここで、まず説明をする。このナイロン11は、ヒマシ油由来の11−アミノウンデカン酸の縮重合によって得られる脂肪族ポリアミド(融点185℃)であって、いわゆるエンジニアリングプラスチックに分類されるものである。このナイロン11は、比較的長いメチレン鎖を有するため、ポリアミドの特長(耐熱性や耐薬品性)とポリエチレンの特長(加工性等)を兼ね備えている。
【0014】
このナイロン11には生分解性はないが、ポリ乳酸と同様に植物を原料としたポリマーであることから、カーボンニュートラルの点で石油由来のポリマーと比較して環境負荷が少ない樹脂である。
またナイロン11は、ポリオレフィン等の汎用樹脂やナイロン12(化石原料由来)と比較して、低温衝撃性、耐熱性、耐熱老化性、ガス及び燃料バリア性、耐屈曲疲労性、耐磨耗特性、耐化学薬品性、低比重といった点で優れた特長を有している。
さらにナイロン11は、押出成形、射出成形等ほとんど全ての加工が可能で、自動車、一般産業、スポーツ分野等の数多くの製品に使用されているが、特に自動車用途としては、燃料チューブ、トラックのエアブレーキチューブ、クイックコネクター等に使用されている。このようにナイロン11は商業的に安定入手が可能な植物由来のエンジニアリングプラスチックである。
【0015】
次に、ポリアミド樹脂(a)として例示されたもののうち、ナイロン12について説明をする。このナイロン12は石油由来のラウリルラクタムあるいはアミノ酸である12-アミノドデカン酸から重合されるポリアミド樹脂(a)である。ナイロン12の融点は、176〜180℃とポリアミドとしては低温であるため、天然由来の有機充填材と混練する際に、その分解が抑制される点で好適である。またナイロン12は、ナイロン11の前記した基本的特長を備えつつ、(i)吸湿性が少なく、寸法変化が小さい、(ii)低温に対する特性がよい、(iii)耐衝撃性がよい、(iv)耐候性が優れている、(v)金属との接着性がよいといった特長も併せ持つ材料である。
【0016】
本発明に適用することができる天然由来の有機充填材(b)について説明を行う。
この天然由来の有機充填材(b)は、天然物から採取されたものであればよく、その形態はチップ状、繊維状、粉体等が挙げられるが特に限定されない。
そのような天然由来の有機充填材(b)としては、籾殻、木材、おから、古紙粉砕材、衣料粉砕材等のチップ状のもの、綿繊維、麻繊維、竹繊維、ケナフ繊維、木材繊維、等の植物繊維、これらの植物繊維から加工されたパルプやセルロース繊維、絹、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、ラクダ等の動物繊維、木粉、セルロース粉末等が挙げられる。
またこれらの天然由来の有機充填材(b)は、天然物から直接採取したものを用いても良いが、地球環境の保護や資源保全の観点から、古紙や古衣等の廃材を利用することも可能である。
【0017】
例示された天然由来の有機充填材(b)のうち木材の具体的な例としては、松、杉、檜等の針葉樹材、ブナ、シイ、ユーカリ等の広葉樹材等がありその種類は問わない。またこれらのチップ状、粉砕物、繊維、粉体等で、形状についても特に限定されるものではない。また古紙とは、新聞紙、雑誌、その他の再生パルプ、又はボール紙、紙管等であり、植物繊維を原料として加工されたものであれば、その種類は問わない。
【0018】
本発明のポリアミド樹脂組成物に占める天然由来の有機充填材(b)の含有量は、ポリアミド樹脂(a)と天然由来の有機充填材(b)の合計を100重量部として、20〜90重量部であることが好ましく、より好ましくは40〜65重量部である。
天然由来の有機充填材(b)の含有量が20重量部未満では、ポリアミド樹脂組成物の機械的性質に対する補強効果が十分でない可能性があり、また廃棄物を素材として有効利用する観点からも天然由来の有機充填材(b)の含有量が少ないことは好ましくない。
【0019】
そのような廃棄物の有効利用の観点からすると、天然由来の有機充填材(b)の含有量は多い方が好ましい。しかし、有機充填材(b)の含有量が90重量部を越える場合では、ポリアミド樹脂(a)に天然由来の有機充填材(b)を均一に分散させる事が困難になり、成形品の強度や外観が低下する可能性があり好ましくない。
【0020】
次に、本発明に適用される二塩基酸又はその誘導体(c)について説明を行う。
この二塩基酸又はその誘導体(c)は、ポリアミド樹脂(a)及び天然由来の有機充填材(b)にエステル化により化学修飾基を導入させる薬剤である。
具体的な二塩基酸又はその誘導体(c)としては、無水コハク酸、コハク酸、無水フタル酸、フタル酸、無水アジピン酸等の飽和カルボン酸、及びこれら飽和カルボン酸の金属塩、アミド、イミド、エステル等の飽和カルボン酸の誘導体が挙げられる。または無水マレイン酸、マレイン酸、無水ナジック酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸、ソルビン酸、アクリル酸等の不飽和カルボン酸、及びこれら不飽和カルボン酸の金属塩、アミド、イミド、エステル等の不飽和カルボン酸の誘導体が挙げられる。
このようにエステル化して化学修飾基を導入させる薬剤としては、無水マレイン酸や無水コハク酸が好ましく適用されるが、前記した薬剤のうち二種以上を混合して使用することも可能である。
【0021】
次に、本発明に適用されるエポキシド(d)及び多価アルコール(e)について説明を行う。このエポキシド(d)及び多価アルコール(e)は、天然由来の有機充填材(b)に、前記した二塩基酸又はその誘導体(c)と共に化学反応してオリゴエステル化する薬剤である。
エポキシド(d)としては、分子中に1個のエポキシ基を含むモノエポキシ化合物であればよく、例えば、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、オクチレンオキサイド、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、エピクロルヒドリン等が挙げられる。これらのモノエポキシ化合物の中でも、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルが好ましい。
【0022】
多価アルコール(e)としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ピナコール、シクロペンタン1,2−ジオール、シクロヘキサン1,2−ジオール、シクロヘキサン1,4−ジオール等の二価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の三価アルコール、ソルビトール、蔗糖等の糖アルコール及びポリエチレングリコール(例、ポリエチレングリコール400)、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレングリコール、ポリカプロラクトン(プラクセル303)等の重合体が挙げられる。
【0023】
次に、本発明に適用されるラジカル発生剤(f)について説明を行う。
このラジカル発生剤(f)は、前記した二塩基酸又はその誘導体(c)によるポリアミド樹脂(a)の変性を促進させる薬剤である。
そのようなラジカル発生剤(f)としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クメンパーオキサイド、α’,α’−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン,ジt−ブチルパーオキサイド、2,5−ジ(t−プチルパーオキシ)ヘキサン、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、11−t−プチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシピパレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーポネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等の過酸化物、及びアゾビスイソプチロニトリル等のアゾヒ化合物等が挙げられる。
【0024】
本発明に適用するラジカル発生剤(f)として、これらの中では、ジクミルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。この様なラジカル発生剤(f)は一種単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
【0025】
さらに、本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で他の常用の各種添加成分、例えば各種エラストマー類等の衝撃性改良材、結晶核剤、着色防止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、エチレンビスステアリルアミドや高級脂肪酸エステル等の離型剤、ハロゲン化銅に代表される銅化合物等の耐熱剤、エポキシド、滑剤、耐候剤、着色剤等の添加剤、又は無機系、有機系の補強剤をさらに添加することができる。
【0026】
本発明に係るポリアミド樹脂組成物は、次に示す「一段法」又は「二段法」により製造される。まず「二段法」によるポリアミド樹脂組成物の製造方法について説明する。この二段法には大きく分けて二種あり、便宜上「二段法A」及び「二段法B」と分けて説明する。
「二段法A」は、天然由来の有機充填材(b)を、二塩基酸又はその誘導体(c)と、エポキシド(d)又は多価アルコール(e)と、で化学反応させる工程を有する。このように、予め天然由来の有機充填材(b)をオリゴエステル化させる第1工程を経てから、ポリアミド樹脂(a)と加熱混練する第2工程を経ることを「二段法A」は特徴としている。
さらに、この第2工程において、さらに二塩基酸又はその誘導体(c)と、ラジカル発生剤(f)とを配合して混練することにより、ポリアミド樹脂(a)をエステル化反応させる場合もある。
「二段法B」は、予め二塩基酸又はその誘導体(c)を付加し、変性されたポリアミド樹脂を得る第1工程と、その後ポリアミド樹脂(a)及び天然由来の有機充填材(b)あるいはそれらのオリゴエステル化物とともに加熱混練する第2工程とを含み、それらを経てポリアミド樹脂組成物が製造されるというものである。
【0027】
次に、ポリアミド樹脂組成物の製造方法に係る前記「二段法A」における前記第1工程について説明を行う。
まず、天然由来の有機充填材(b)(木粉等の植物繊維)に、少量(例えば木粉等の植物繊維100重量部に対し10重量部)の二塩基酸又はその誘導体(c)(無水マレイン酸や無水コハク酸等)と、同じく少量のエポキシド(d)又は多価アルコール(e)とを加える。そして、フラスコ実験の場合は80〜140℃で20〜60分の攪拌を行う。また、二軸エックストルーダーを用いる混練反応の場合には、例えば、L/D=40程度の装置を用い、同様の条件下で混練を行う。
なお、この第1工程において配合される二塩基酸又はその誘導体(c)は、天然由来の有機充填材(b)100重量部に対して0.2〜10重量部であることが望ましい。またエポキシド(d)又は多価アルコール(e)については、二塩基酸又はその誘導体(c)とほぼ同じ分量が配合されることが望ましい。
【0028】
その際、天然由来の有機充填材(b)(木粉等の植物繊維)は先ず、二塩基酸又はその誘導体(c)によりエステル化される。次いでエポキシド(d)又は多価アルコール(e)が付加又は縮合することにより、天然由来の有機充填材(b)には、オリゴエステル鎖が導入されて可塑化が進むことになる。このようにして、オリゴエステル化した天然由来の有機充填材(b)を得ることができる。
【0029】
次に、ポリアミド樹脂組成物の製造方法に係る前記「二段法A」における前記第2工程について説明を行う。
この「二段法A」における第2工程において適用される加熱混練法としては、従来公知の方法、例えば、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー等の混合機や、複数のロールを備えたロールミル、ニーダー、各種押し出機(エクストルダー)等の装置が適用される。
これら装置に、配合される天然由来の有機充填材(b)が前記した所定の含有量となるように、ポリアミド樹脂(a)及びオリゴエステル化した天然由来の有機充填材(b)を投入する。
そしてこれら装置の設定温度を、ポリアミド樹脂(a)の融点以上の温度好ましくは120〜220℃、より好ましくは140〜200℃にして、5〜60分間、好ましくは10〜40分間加熱混練を行なう。なお、この設定温度の上限は、天然由来の有機充填材(b)成分が分解しない程度の温度とする。また、ニーダー等の回転数は、通常、20〜200rpm、好ましくは30〜150rpmである。
このように加熱混練されて、オリゴエステル化により可塑化した天然由来の有機充填材(b)は、ポリアミド樹脂(a)のマトリックス中に微細に分散していくこととなる。
【0030】
なお、この「二段法A」における第2工程における加熱混練時に、さらに二塩基酸又はその誘導体(c)とラジカル発生剤(f)とを配合することによりポリアミド樹脂(a)に(c)を付加させる場合について説明を行う。
この場合、ポリアミド樹脂(a)が100重量部に対し、二塩基酸又はその誘導体(c)0.2〜30重量部、ラジカル発生剤(f)0.01〜2重量部となるように配合されることが望ましい。
このように配合されて、二塩基酸又はその誘導体(c)及びラジカル発生剤(f)と共にポリアミド樹脂(a)が混練されることにより、ポリアミド樹脂(a)に二塩基酸無水物が付加して、少なくともその一部が変性されることになる。このように変性したポリアミド樹脂(a)は、共存する植物由来の有機充填剤(b)とマトリックスとなるポリアミド樹脂(a)との相互作用を高める相溶化剤として作用する。
このようにポリアミド樹脂(a)の少なくとも一部が変性されることにより、加熱混練の際に、ポリアミド樹脂(a)と植物由来の有機充填剤(b)(特に木粉等の植物繊維)との界面におけるグラフト化反応が促進され、この界面における接着性が強化され、ポリアミド樹脂組成物の物性が向上することになる。
【0031】
「二段法B」について追加的説明を行なう。すなわち、その第1工程において二塩基酸又はその誘導体(c)が0.1〜20重量%付加され、変性されたポリアミド樹脂は、第2工程の加熱混練時に、0.1〜25重量%量添加され、溶融するポリアミド樹脂(a)のマトリックス中において、天然由来の有機充填材(b)、あるいはそのオリゴエステル化物の表面上の水酸基と酸無水物基によりエステル結合し、ポリアミドのグラフト化を生じせしめ、マトリクス樹脂と充填剤界面の接着性を高めると共に、該充填剤を微細にかつ均一に分散させることとなる。
【0032】
次に前記した「一段法」によるポリアミド樹脂組成物の製造方法について説明する。
「一段法」とは、少なくともポリアミド樹脂(a)と、植物由来の有機充填剤(b)と、二塩基酸又はその誘導体(c)と、を一括して加熱混練して反応させる方法である。さらに、適宜、エポキシド(d)又は多価アルコール(e)を配合させたり、ラジカル発生剤(f)を配合させたりして加熱混練して反応させる方法である。
この「一段法」による場合は、ポリアミド樹脂(a)の変性と植物由来の有機充填剤(b)のエステル化、さらにはオリゴエステル化とが同時に進行することになる。そして適宜、エポキシド(d)又は多価アルコール(e)や、ラジカル発生剤(f)が配合されることにより、これらの進行がさらに促進されることとなる。
【0033】
このポリアミド樹脂組成物を「一段法」で製造する方法において配合される二塩基酸又はその誘導体(c)の量は、ポリアミド樹脂(a)と植物由来の有機充填剤(b)の合計量100重量部に対して0.2〜30重量部である。この際、二塩基酸又はその誘導体(c)が0.2重量部より少ないと、ポリアミド樹脂(a)の付加反応や、植物由来の有機充填剤(b)の化学修飾が不十分となり両物質の界面における結合力が低下して、得られるポリアミド樹脂成形品の強度が期待以下になったり、また加熱混練時の熱流動性が低下して植物由来の有機充填剤(b)のポリアミド樹脂(a)マトリックス中への分散が不十分となったりする。また、二塩基酸又はその誘導体(c)が30重量部を越える場合、得られるポリアミド樹脂組成物は脆くなり機械的強度が低下する。
他方、二塩基酸又はその誘導体(c)の量については、天然由来の有機充填材(b)100重量部に対して0.1〜25重量部であることが望ましい。またエポキシド(d)又は多価アルコール(e)については、二塩基酸又はその誘導体(c)とほぼ同じ分量が配合されることが望ましい。またラジカル発生剤(f)の量については、ポリアミド樹脂(a)100重量部に対して0.01〜2重量部であることが望ましい。
【0034】
なお、「一段法」において適用される加熱混練法としては、すでに「二段法」の説明において紹介した方法と同じであるので説明を省略する。また加熱混練に際しては前記した(a)〜(f)成分を加える順序は、特に制限されない。一般には、予め全ての成分(少なくとも(a)〜(c)成分、適宜(d)(e)(f)成分)をブレンダー等でよく混合したのち一斉に投入するか、又は、ポリアミド樹脂(a)を加熱して予め溶融させた後、その他の成分(少なくとも(b)(c)成分、適宜(d)(e)(f)成分)を投入してもよい。
また、この加熱混練に際しては、系外から水分や酸素(空気)が入らないように、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、不活性ガスで置換しながら、又は、不活性ガスでバブリングしながら行ってもよい。
【0035】
次に、本発明のポリアミド樹脂組成物は、公知の方法で成形してポリアミド樹脂成形品にすることができる。このポリアミド樹脂成形品とは、例えば繊維、フィルム、バルク等の成形品とすることができ、また接着剤、塗料等とすることもできる。
ポリアミド樹脂成形品の成形方法としては、具体的には射出成形、押出成形、ブロー成形等公知の成形方法が挙げられる。得られたポリアミド樹脂成形品は、軽量で、剛性が高く、表面外観に優れ、更に防震性、遮音性にも優れるので、例えば、スイッチ類、超小型スライドスイッチ、DIPスイッチ、スイッチのハウジング、ランプソケット、結束バンド、コネクタ、コネクタのハウジング、コネクタのシェル、ICソケット類、コイルボビン、ボビンカバー、リレー、リレーボックス、コンデンサーケース、モーターの内部部品、小型モーターケース、ギヤ・カム、ダンシングプーリー、スペーサー、インシュレーター、ファスナー、バックル、ワイヤークリップ、自転車ホイール、キャスター、ヘルメット、端子台、電動工具のハウジング、スターターの絶縁部分、スポイラー、キャニスター、ラジエタータンク、チャンバータンク、リザーバータンク、ヒューズボックス、エアークリーナーケース、エアコンファン、ターミナルのハウジング、ホイールカバー、吸排気パイプ、ベアリングリテーナー、シリンダーヘッドカバー、インテークマニホ−ルド、ウオーターパイプインペラ、クラッチレリーズ、スピーカー振動板、耐熱容器、電子レンジ部品、炊飯器部品、プリンタリボンガイド等に代表される電気・電子関連部品、自動車・車両関連部品、家電・事務電気製品部品、コンピューター関連部品、ファクシミリ・複写機関連部品、機械関連部品、シャワーヘッド、すのこ、鍋敷き、ヘアブラシ、ブックエンド等の日用雑貨品、その他各種用途に有用である。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
ポリアミド樹脂(a)としてナイロン11(Rilsan PA11)50重量部と天然由来の有機充填材(b)として微細木粉(独・レッテンマイヤー株式会社製 Ligonocel 750AB:750メッシュ)50重量部、をそれぞれ計量計にて計量し、を混合したものを200℃に設定したラボプラストミル(東洋精機(株))に供給して合計30分溶融混練し、樹脂組成物を得た。なお、この実施例1に係るポリアミド樹脂の組成物は「一段法」に該当する。得られた樹脂組成物をホットプレスを用いて200℃、15 MPaの熱圧のもとで0.4 mm 厚のフィルム状に成形し、100×5×0.4 mm 寸法の短冊形試片に切り出し、オートグラフで引張特性を評価した。その結果、引張強度 44.1 MPa、ヤング率 2265.8 MPa の値が得られた。また、メルトフローインデクサー(井元製作所製)を用い、負荷2.16kg、200℃の条件で、このポリアミド樹脂組成物の加熱混練時のメルトフローレートを評価し、4.15/10minという結果を得た。また、ナイロン11のみを試料とする場合はこの条件では流動流出は認められず、メルトフローレートは得られなかった。
【0037】
(実施例2)
ポリアミド樹脂(a)としてナイロン11(Rilsan PA11)50重量部、天然由来の有機充填材(b)として微細木粉(独・レッテンマイヤー(株)製 Ligonocel 750AB:750メッシュ)50重量部、二塩基酸又はその誘導体(c)として無水マレイン酸5重量部、ラジカル発生剤(f)としてジクミルパーオキサイド0.75重量部の配合比で、それぞれを混合したものを200℃に設定したラボプラストミル(東洋精機)に供給して合計30分加熱混練する条件で、ポリアミド樹脂組成物を得た。なお、この実施例2に係るポリアミド樹脂組成物の製造方法は「一段法」に該当する。
【0038】
得られたポリアミド樹脂組成物をホットプレスを用いて200℃、15MPaの熱圧のもとで0.4mm厚のフイルム状に成形し、100×5×0.4mm寸法の短冊形試片を切り出した。そして、オートグラフAGS-5kMG(島津製作所製)を測定機として、ASTM D638に準じて引張特性を評価した。その結果、引張強度35.2MPa、ヤング率2356.8MPaの値を得た。
【0039】
次に、比較例としてナイロン11のみを用いて、前記した同じ条件で短冊形試片を作成し、ポリアミド樹脂(a)単体の引張特性の評価を行った。その結果、引張強度33.5MPa、ヤング率515.4MPaの値を得た。
この結果より、本発明に基づき、天然由来の有機充填材(b)と複合化することにより、ポリアミド樹脂(a)は、ヤング率が4倍以上向上することが明らかになった。
【0040】
次に、メルトフローインデクサー(井元製作所製)を用い、負荷2.16kg、200℃の条件で、ポリアミド樹脂組成物の加熱混練時のメルトフローレートを評価した。そうしたところ、前記した条件でポリアミド樹脂(a)、天然由来の有機充填材(b)、二塩基酸又はその誘導体(c)及びラジカル発生剤(f)から構成されるポリアミド樹脂組成物の場合29.12g/10minという結果が得られた。
また、前出のようにナイロン11のみを試料とする場合はこの条件では流動流出は認められず、メルトフローレートは得られなかった。
【0041】
これらの結果より、木粉といった天然由来の有機充填材(b)をナイロン11に添加することにより樹脂の流動性が向上し(実施例1)、さらに微量の相溶化剤を添加して混練して得た複合材料は、その流動性が格段に向上することが知られる(実施例2)。また、この混練による複合化試料はそれらの物性に大きな充填剤効果を示し、大きい剛性率をもつ硬い樹脂となったといえる。このことより、ナイロン11と木材の混練により、ナイロン11中に木粉が同重量が好的に混合され、木粉表面サイトとナイロン11との水素結合による相互作用が十分に生じ、ナイロン11同士の相互作用を弱め、190℃でもメルトフローインデクサーで熱流動するようになったといえる。特に、相溶化剤を添加して混練を行った場合においては、混合がより好的に進むと共に、木材の可塑化も付与されることも重なって、さらに流動性の高い樹脂が調製できるという結果となった。
【0042】
他方、ナイロン11は木粉との単純混練複合化により弾性率も引張強度も値が大きくなり、前者は4倍強、後者は最大で2倍近くの大きな値をとることが知られる(実施例1)。これはナイロンのアミド基と木粉の水酸基間での水素結合が大きく寄与し、特に相溶化剤を加えないでも、加えた木粉がナイロン・マトリックス樹脂と数多くの結合点を形成し得、固体状態で多点架橋剤として働くことが出来るためと解釈できよう。このことに対して、この単純混練物中で木粉の混合状態が均一であるという観察も裏付けの一つとなっている。ただし、ナイロンのアミド基と木粉の水酸基間での一つ一つの水素結合はナイロンのアミド基同士のそれより低度ということが、直前で述べたメルトフローレートの測定結果から知られる。すなわち、ナイロン11ではメルトフロー値が測定できないのに対し、天然由来の有機充填材(b)を加えると値が得られるようになる。一方、強度値に関しては、無水マレイン酸と過酸化物(実施例2)や無水コハク酸(実施例3)を加えると、対応する無添加物に比べ値が8〜20%低くなっている。
【0043】
(実施例3)
次に、ポリアミド樹脂組成物に配合する薬剤として、無水マレイン酸及びジクミルパーオキサイドに代わり、二塩基酸又はその誘導体(c)に該当する無水コハク酸を5重量部とし、その他混練温度が190℃に設定される以外は、前記した実施例1に準じた方法で短冊形試片を得た。
そして、前記したのと同様の方法で引張特性を評価したところ、引張強度49.1MPa、ヤング率2318.8MPaの値を得た。これらの値は、前記したポリアミド樹脂(a)単体の結果(引張強度33.5MPa、ヤング率515.4MPa)よりも優れているといえる。
またメルトフローレートを評価したところ9.61g/10minという結果が得られた。この結果は、前記した比較例の値(4.15g/10min)よりも2倍以上優れた値であるといえ、流動性が向上し加熱混練が容易になる効果が得られる。これより、ポリアミド樹脂(a)、天然由来の有機充填材(b)、二塩基酸又はその誘導体(c)のみを一括して溶融混練する「一段法」により得られるポリアミド樹脂組成物も優れた性質を示すことが示唆される。
【0044】
(実施例4)
次に、天然由来の有機充填材(b)をオリゴエステル化してからポリアミド樹脂(a)と加熱混練を行う前記「二段法A」において、天然由来の有機充填材(b)を二塩基酸又はその誘導体(c)によりオリゴエステル化させる「第1工程」の実施例を示す。
まず、製造装置としてミックスラボ(森山製作所製)を用い、木粉(b):無水マレイン酸(c)を96:1.6の重量比で混合し、120℃、30rpmの運転条件で30分間混練反応を行なった。その後アリルグリシジルエーテル(d)を2.4重量部加え、さらに30分間同条件で混練反応を行なった。
木粉(b)として気乾木粉(含水率8.53%)と絶乾木粉(含水率0.61%)の2種を用い、それぞれオリゴエステル鎖付加率1.71と0.1の可塑化したオリゴエステル化木粉が得られた。このように可塑化したオリゴエステル化木粉を用いて「二段法A」による加熱混練を行えば、木粉の繊維がポリアミド樹脂(a)のマトリックス中に微細化して均一に分散するため、得られるポリアミド樹脂組成物も優れた性質を示すことが示唆される。
【0045】
(実施例5)
次に、予め二塩基酸又はその誘導体(c)を付加し、変性されたポリアミド樹脂を得る第1工程と、その後ポリアミド樹脂(a)及び天然由来の有機充填材あるいはそれらのオリゴエステル化物(b)とともに加熱混練する第2工程とを含むポリアミド樹脂組成物の製造(「二段法B」)に関する実施例を示す。
まず、ナイロン11を300 重量部に対し無水マレイン酸 30 重量部及び、ジクミルパーオキシド 4.5 重量部を秤取り、よく混合した上で、ML-500 ミックスラボ(森山製作所製)に投入し190℃で、20分混練反応させ、変性されたポリアミド樹脂を得た。得られた生成物を汎用家電製品であるミキサーを用いて粉砕し、粉末状の無水マレイン酸変性ナイロン11を得た。この相溶化剤を用いて木粉とナイロン11の混練複合化ペレットを調製した。すなわち、絶乾木粉 50重量部とナイロン11 50重量部とに5重量部の無水マレイン酸変性ナイロン11をはかり取り、Haake社製二軸エクストルーダーを用い、50 rpm の回転速度で混練複合化を行なった。フィード量を出来るだけ多くして、二軸エクストルーダー中での滞留時間を出来るだけ短くするようにした。
【0046】
得られた樹脂組成物をホットプレスを用いて200℃、15 MPaの熱圧のもとで0.4 mm 厚のフィルム状に成形し、100×5×0.4 mm 寸法の短冊形試片に切り出し、オートグラフで引張特性を評価した。その結果、引張強度 57.9 MPa、ヤング率 3591 MPa の値が得られた。また、メルトフローインデクサー(井元製作所製)を用い、負荷2.16kg、200℃の条件で、このポリアミド樹脂組成物の加熱混練時のメルトフローレートを評価し、22.5/10minという結果を得た。優れた強度物性と熱流動性を持つ複合材料が得られたことが知られる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物は、成形性良好で耐熱性に優れた成形体を作製する用途に利用することができるものである。この成形体は、各種方法により各種形状に成形することができ、フィルム、シート、射出成形体、ブロー成形体、押出成形体、真空圧成形体、積層構造体、容器、発泡体、繊維、織物、不織布として、自動車分野、電気・電子分野、包装分野、農業分野、漁業分野、医療分野、その他一般雑貨等各種分野に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(a)と、天然由来の有機充填材(b)と、を配合して加熱混練することを特徴とするポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
さらに二塩基酸又はその誘導体(c)を配合して前記加熱混練することを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
さらにエポキシド(d)又は多価アルコール(e)を配合して前記加熱混練することを特徴とする請求項2に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
さらにラジカル発生剤(f)を配合して前記加熱混練することを特徴とする請求項2に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
配合される前記ポリアミド樹脂(a)は、その全部又は一部が、前記二塩基酸又はその誘導体(c)と化学反応して、予め変性したものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
さらにラジカル発生剤(f)が化学反応することにより、前記ポリアミド樹脂(a)の前記変性が促進されていること特徴とする請求項5に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
配合される前記天然由来の有機充填材(b)は、その全部又は一部が、前記二塩基酸又はその誘導体(c)と化学反応して、予めエステル化されたものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
さらにエポキシド(d)又は多価アルコール(e)が化学反応することにより、前記天然由来の有機充填材(b)がオリゴエステル化されていること特徴とする請求項7に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記ポリアミド樹脂(a)及び前記天然由来の有機充填材(b)の合計100重量部に対し、この天然由来の有機充填材(b)の含有量が20〜90重量部であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記ポリアミド樹脂(a)は、融点が200℃以下のものであることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法により製造されたポリアミド樹脂組成物。
【請求項12】
請求項11に記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなるポリアミド樹脂成形品。

【公開番号】特開2007−302744(P2007−302744A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130532(P2006−130532)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(504004647)アグリフューチャー・じょうえつ株式会社 (24)
【出願人】(591063154)
【Fターム(参考)】