説明

ポリアレーンアゾールマイクロファイバーを含む不織ウェブ及びその製造方法

ポリマー繊維が約20g/dlより大きい固有粘度を有するポリアレーンアゾールポリマーを含み、繊維ウェブが平方メートル当たり約0.1〜200グラムの坪量を有する、約20〜5000nmの平均繊維径を有するポリマー繊維を含む繊維ウェブが提供される。かかるウェブを含む物品およびかかるウェブの製造方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアレーンアゾールマイクロファイバーを含む不織ウェブおよびかかるウェブの製造方法に関する。
【0002】
本発明は、ポリアレーンアゾールマイクロフィラメントおよびかかるフィラメントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ある種の低デニール繊維は、濾過媒体、細胞および組織培養、薬物送達システム、ならびに特殊織物などの様々な最終用途に有用であることが示されてきた。
【0004】
米国特許第4,263,245号明細書は、直径が20〜200ミクロンである、ある種の低デニール、高強度ポリビベンゾイミダゾールフィラメントを記載している。
【0005】
サブミクロンおよびサブミクロンより大きい繊維の混合物を含有する濾過媒体、微細粒子ワイプ媒体および吸収性媒体は、米国特許第6,315,806号明細書に開示されている。好ましい繊維は、ポリプロピレンポリマーから製造されると言われている。米国特許出願公開第2005/0026526号明細書は、粗い繊維と1μm未満の直径の微細繊維との混合物を有するフィルター媒体を開示している。
【0006】
PCT特許出願国際公開第03/080905号パンフレットは、電気ブローン紡糸法によるナノファイバーウェブの製造を開示している。PCT特許出願国際公開第05/026398号パンフレットは、反応性電界紡糸によるナノファイバーの製造を記載している。
【0007】
ウェブ化フィブリル材料の製造方法が米国特許出願公開第2005/0048274号明細書に開示されている。この方法は、電場を通って帯電した対象物の方へポリマーを注入する。
【0008】
先行技術に示されるように、得られるナノファイバーウェブの強度および耐久性は、追加の強度および強化のためにより大きい直径繊維の支持スクリムの使用を必要とする。得られるナノファイバーウェブの強度および耐久性を向上させるための高強度ポリマーのナノファイバーの製造方法を提示することが本発明の意図するところである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
幾つかの実施形態では、約20〜5000nmの平均繊維径を有するポリマー繊維を含む繊維ウェブであって、ポリマー繊維が約20g/dlより大きい固有粘度を有するポリアレーンアゾールポリマーを含み、繊維ウェブが平方メートル当たり約0.1〜200グラムの坪量を有する繊維ウェブが提供される。
【0010】
幾つかのウェブ坪量は、平方メートル当たり約0.1〜100グラムの範囲にある。他のウェブは、平方メートル当たり約0.3〜80グラムの範囲の坪量を有する。
【0011】
幾つかのポリアレーンアゾールポリマーは、約25g/dlより大きい固有粘度を有する。他のポリアレーンアゾールポリマーは、約28g/dlより大きい固有粘度を有する。有用な一ポリアレーンアゾールポリマー繊維はポリピリダゾールポリマー繊維である。特に有用なポリピリダゾールポリマー繊維は、ポリ[2,6−ジイミド[4,5−b:4,5−e]−ピリジニレン−1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン)ポリマー繊維である。
【0012】
幾つかの実施形態では、繊維ウェブはさらにスクリムを含む。
【0013】
本発明はまた、本明細書に記載される繊維ウェブを含む物品に関する。
【0014】
別の態様では、本発明は、
−ポリアレーンアゾールポリマーを含む溶液を、第1印加電圧を有する紡糸口金を通して押し出す工程と、
−押し出されたポリアレーンアゾールポリマーを、極性が第1印加電圧と反対である第2印加電圧を場合により有する収集面上に集める工程と
を含むポリアレーンアゾール繊維のウェブの製造方法に関する。
【0015】
幾つかの実施形態では、ポリアレーンアゾールポリマーは、溶媒としてポリリン酸を含む。幾つかの方法では、第1印加電圧は1kV〜300kVの範囲にある。ある種の方法では、第2印加電圧は0〜−10kVの範囲にある。幾つかの方法では印加電圧の極性は、第1印加電圧が−1kV〜−300kVの範囲にあり、そして第2印加電圧が0〜+10kVの範囲にあるように逆にされてもよい。
【0016】
幾つかの実施形態では、本方法は、押し出されたポリアレーンアゾールポリマー溶液を空隙に通す工程をさらに含む。押し出されたポリマーは、紡糸口金と収集面との間の方向に沿って空気流を提供することによって空隙中で加速させることができる。ある種の実施形態では、第2印加電圧はゼロである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
幾つかの実施形態では、約20〜5000nmの平均繊維径を有するポリマー繊維を含む繊維ウェブであって、ポリマー繊維が約20g/dlより大きい固有粘度を有するポリアレーンアゾールポリマーを含み、繊維ウェブが平方メートル当たり約0.1〜200グラムの坪量を有する繊維ウェブが提供される。本発明はまた、かかるウェブを含む物品、およびかかるウェブの製造方法に関する。
【0018】
本発明の不織ウェブはポリアレーンアゾールマイクロファイバーを利用する。ポリアレーンアゾールポリマーは、乾燥原料の混合物をポリリン酸(PPA)溶液と反応させることによって製造されてもよい。乾燥原料は、アゾール形成モノマーおよび金属粉末を含んでもよい。これらの乾燥原料の正確に秤量されたバッチは、本発明の好ましい実施形態の少なくとも幾つかの利用によって得ることができる。
【0019】
例示的なアゾール形成モノマーには、2,5−ジメルカプト−p−フェニレンジアミン、テレフタル酸、ビス−(4−安息香酸)、オキシ−ビス−(4−安息香酸)、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、イソフタル酸、2,5−ピリドジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−キノリンジカルボン酸、2,6−ビス(4−カルボキシフェニル)ピリドビスイミダゾール、2,3,5,6−テトラアミノピリジン、4,6−ジアミノレゾルシノール、2,5−ジアミノヒドロキノン、1,4−ジアミノ−2,5−ジチオベンゼン、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。好ましくは、アゾール形成モノマーには、2,3,5,6−テトラアミノピリジンおよび2,5−ジヒドロキシテレフタル酸が含まれる。ある種の実施形態では、アゾール形成モノマーはリン酸化されていることが好ましい。好ましくは、リン酸化アゾール形成モノマーは、ポリリン酸および金属触媒の存在下に重合させられる。
【0020】
最終ポリマーの分子量を構築するのを助けるために金属粉末を用いることができる。金属粉末には、典型的には鉄粉、スズ粉末、バナジウム粉末、クロム粉末、およびそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0021】
アゾール形成モノマーおよび金属粉末は混合され、次に混合物はポリリン酸と反応してポリアレーンアゾールポリマー溶液を形成する。追加のポリリン酸を必要に応じてポリマー溶液に加えることができる。
【0022】
ポリベンゾオキサゾール(PBO)およびポリベンゾチアゾール(PBZ)は2つの好適なポリマーである。これらのポリマーは、PCT出願国際公開第93/20400号パンフレットに記載されている。ポリベンゾオキサゾールおよびポリベンゾチアゾールは好ましくは、以下の構造の繰り返し単位で構成される:
【化1】

【0023】
ポリビベンゾイミダゾールポリマーは、米国特許第2,895,948号明細書および米国再発行特許第26,065号明細書に記載されており、米国特許第3,441,640号明細書および米国特許第4,263,245号明細書に開示されているものなどの公知の方法によって製造することができる。
【0024】
幾つかの実施形態では、ポリベンゾイミダゾール(PBI)繊維はポリビベンゾイミダゾールポリマーを含む。有用な一ポリビベンゾイミダゾールポリマーはポリ(2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ビベンゾイミダゾール)ポリマーである。市販の一PBIポリマーはテトラ−アミノビフェニルとジフェニルイソフタレートとから製造される。
【0025】
窒素原子に結合して示される芳香族基が複素環であってもよいが、それらは好ましくは炭素環であり、そしてそれらは縮合または非縮合多環系であってもよいが、それらは好ましくは単6員環である。ビス−アゾールの主鎖に示される基は好ましいパラ−フェニレン基であるが、当該基は、ポリマーの製造を妨げない任意の二価有機基で置き換えられても、または全く基を含まなくてもよい。例えば、当該基は、12個以下の炭素原子の脂肪族、トリレン、ビフェニレン、ビス−フェニレンエーテルなどであってもよい。
【0026】
本発明の繊維を製造するために使用されるポリベンゾオキサゾールおよびポリベンゾチアゾールは、少なくとも25、好ましくは少なくとも100の繰り返し単位を有するべきである。ポリマーの製造およびそれらのポリマーの紡糸は、上述のPCT出願国際公開第93/20400号パンフレットに開示されている。
【0027】
ポリピリドビスイミダゾール繊維は特に本発明での使用に好適である。これらの繊維は、高強度のものである剛性ロッドポリマーから製造される。ポリピリドビスイミダゾール繊維は、少なくとも20dl/gまたは少なくとも25dl/gまたは少なくとも28dl/gの固有粘度を有する。かかる繊維には、PIPD繊維(M5(登録商標)繊維としても知られる)およびポリ[2,6−ジイミダゾ[4,5−b:4,5−e]−ピリジニレン−1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン)から製造された繊維が含まれる。PIPD繊維は構造をベースとする:
【化2】

【0028】
ポリピリドビスイミダゾール繊維は、ポリベンゾイミダゾール繊維がポリビベンゾイミダゾールであるという点において周知の商業的に入手可能なPBI繊維またはポリベンゾイミダゾール繊維とは区別することができる。ポリビベンゾイミダゾール繊維は剛性ロッドポリマーではなく、ポリピリドビスイミダゾールと比較されるときに低い繊維強度および低い引張弾性率を有する。
【0029】
PIPD繊維は、約310GPa(2100グラム/デニール)の平均弾性率および5.8GPa(39.6グラム/デニール)以下の平均靱性を有すると報告されてきた。これらの繊維は、Brewら、Composites Science and Technology 59(1999)、1109ページ;Van der Jagt、Beukers、Polymer 40(1999)、1035ページ;Sikkema、Polymer 39(1998)、5981ページ;Klop、Lammers、Polymer 39(1998)、5987ページ;Hagemanら、Polymer 40(1999)、1313ページに記載されてきた。
【0030】
剛性ロッドポリピリドイミダゾールポリマーの一製造方法は、Sikkemaらに付与された米国特許第5,674,969号明細書に詳細に開示されている。ポリピリドイミダゾールポリマーは、乾燥原料の混合物をポリリン酸(PPA)溶液と反応させることによって製造されてもよい。乾燥原料は、ピリドビスイミダゾール形成モノマーおよび金属粉末を含んでもよい。本発明の布に使用される剛性ロッド繊維を製造するために使用されるポリピリドビスイミダゾールポリマーは、少なくとも25、好ましくは100の繰り返し単位を有するべきである。
【0031】
本発明の目的のためには、ポリピリドイミダゾールポリマーの相対的な分子量は好適には、ポリマー製品を、メタンスルホン酸などの好適な溶媒で0.05g/dlのポリマー濃度に希釈し、30℃で1つ以上の希薄溶液粘度値を測定することによって特徴付けられる。本発明のポリピリドイミダゾールポリマーの分子量成長は好適には、1つ以上の希薄溶液粘度測定によって監視され、それと関連付けられる。従って、相対粘度(「V相対」または「η相対」または「n相対」)および固有粘度(「V固有」または「η固有」または「n固有」)の希薄溶液測定が典型的にはポリマー分子量を監視するために用いられる。希薄ポリマー溶液の相対および固有粘度は、式
固有=ln(V相対)/C
(ここで、lnは自然対数関数であり、Cはポリマー溶液の濃度である)
に従って関係付けられる。V相対は、ポリマー溶液粘度対ポリマーを含まない溶媒の粘度の単位なしの比であり、従ってV固有は逆濃度の単位で、典型的にはグラム当たりのデシリットル(「dl/g」)として表される。従って、本発明のある種の態様では、メタンスルホン酸中の0.05g/dlのポリマー濃度で、30℃で少なくとも約20dl/gの固有粘度を有するポリマー溶液を提供するとして特徴付けられるポリピリドイミダゾールポリマーが製造される。本明細書に開示される本発明に由来するより高い分子量のポリマーは粘稠なポリマー溶液を生み出すので、メタンスルホン酸中の約0.05g/dlポリマーの濃度は適量の時間で固有粘度を測定するために有用である。
【0032】
超微細繊維はフラッシュ紡糸、静電紡糸、およびメルトブローン紡糸によって製造できることは当該技術分野で周知である。不織ウェブは、電気ブローン紡糸法を利用する方法によって製造することができる。かかる方法では、ポリマー溶液は、高電圧がかけられた紡糸ノズルを通って排出される。そのノズルから紡糸された繊維は、接地された吸引コレクター上で集められる。典型的には、圧縮空気が紡糸ノズルの下方端で注入される。ナノファイバーおよびかかる繊維を含有するウェブのかかる製造方法は、その開示が全体を本明細書に援用される、PCT特許出願国際公開第03/080905号パンフレットに見いだすことができる。
【0033】
本明細書で用いるところでは、用語「繊維」は、長さ対その長さに垂直のその断面積を横切る幅の高い比を有する、比較的可撓性の、巨視的に均一の物体と定義される。繊維断面はいかなる形状でもあり得るが、典型的には円形である。本明細書では、用語「フィラメント」または「連続フィラメント」は用語「繊維」と同じ意味で用いられる。
【0034】
本明細書で用いるところでは、「坪量」は、参照により本明細書に援用される、ASTM(米国材料試験協会)D−3776によって測定することができ、g/m2単位で報告される。
【0035】
本明細書で用いるところでは、「繊維径」は次の通り測定することができる。5,000×倍率での10の走査電子顕微鏡(SEM)画像が各ナノファイバー層サンプルについて撮られた。11の明らかに区別できるナノファイバーの直径が各SEM画像から測定され、記録された。欠陥(すなわち、ナノファイバーの塊、ポリマー滴、ナノファイバーの交差点)は含まれなかった。各サンプルについての平均繊維径が計算された。
【0036】
本発明は、本開示の一部を形成する例示的な、好ましい実施形態についての以下の詳細な説明を参照することによってより容易に理解されるかもしれない。特許請求の範囲は本明細書に記載されるおよび/または示される特有のデバイス、方法、条件またはパラメータに限定されないこと、ならびに本明細書に用いられる専門用語はほんの一例として特定の実施形態を記載するためのものであり、かつ、特許請求される本発明を限定することを意図されないことが理解されるべきである。同様に、添付の特許請求の範囲を含めて本明細書に用いられるところでは、単数形(「a」、「an」、および「the」)は複数形を含み、ある特定の数値の言及は、文脈上矛盾する明らかな記載がない限り、少なくとも当該特定値を含む。値の範囲が表されるとき、別の実施形態は、1つの特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。同様に、値が、先行する「約」を用いて近似値として表されるとき、その特定の値は別の実施形態を形成することが理解されるであろう。全ての範囲は包含的であり、組み合わせ可能である。
【実施例】
【0037】
本発明は以下の実施例によって例示されるが、それらによって限定されることを意図されない。
【0038】
実施例1
ポリマープロセス
120℃の11,580グラムのポリリン酸(PPA)(84.7%P25)を秤量タンクから1気圧の窒素雰囲気を有する10CV DITヘリコン(Helicone)ミキサーへ供給する(添加口を覆い隠さないようにミキサー刃を停止する)。PPAをミキサーに入れた後、ミキサー刃を40rpmで運転し、ジャケット冷却水をスタートさせてPPAを70℃に冷却する。PPAを冷却したとき、水流を停止し、添加口を覆い隠さないようにミキサー刃を停止する。
【0039】
3400グラムのP25を、乾燥窒素(N2)下の秤量チャンバー中で移動容器へ量り入れる。ミキサー中の1気圧(絶対)窒素圧を、N2雰囲気の秤量チャンバー中の1気圧と等しくする。P25を10CVミキサーに移し、次に切替弁を閉じる。ミキサー刃をスタートさせ、それらの速度を40rpmに上げる。水冷を再開し、減圧をゆっくりかけてP25をPPA中へブレンドしながら混合物を脱ガスする。水冷を調整してミキサーの内容物を75(±5)℃に維持する。ミキサー中の圧力を50mmHgに下げ、混合をさらに10分間続行する。水流を次に停止し、添加口を覆い隠さないようにミキサー刃を停止する。N2を入れて圧力を1気圧(絶対)にする。
【0040】
10174グラムのモノマー複合体を乾燥N2秤量チャンバー中で移動容器へ量り入れる。加えて、51グラムのスズ粉末(約325メッシュ)および25グラムの安息香酸を、同じ秤量チャンバー中で別のN2雰囲気の移動容器へ量り入れる。
【0041】
ミキサー中の1気圧(絶対)圧力を、N2雰囲気の秤量チャンバー中の1気圧と等しくする。モノマー複合体、スズ、および安息香酸を10CVミキサーに移し、次に切替弁を閉じる。ミキサー刃をスタートさせ、それらの速度を40rpmに上げる。攪拌機をスタートさせるときに水冷を再開し、ミキサー刃が40rpm速度に達した後モノマー複合体、スズ、および安息香酸を10分間PPA混合物中へブレンドする。次に減圧をゆっくりかけてブレンディングを続行しながら混合物を脱ガスする。水冷を調整してミキサーの内容物を75(±5)℃に維持する。ミキサー中の圧力を50mmHg圧力に下げ、混合を10分間続行する。次にミキサー刃速度を12rpmに下げ、水冷却を抑えてミキサー中の内容物の温度を85(±5)℃に上げさせる。ミキサー刃を次に停止し、N2を入れて圧力を1気圧にし、そしてミキサーの内容物を次に、2つの攪拌機を有する供給タンク(DIT 10SCミキサー)に移す。
【0042】
供給タンク中の反応体混合物を110℃の温度および50mmHg絶対の圧力に維持する。両方の攪拌機を40rpmで運転する。反応体混合物を、混合物の温度を137℃に上げるための熱交換器を通して10,050グラム/時の平均速度でタンクから、オリゴマー形成のための3時間の滞留時間を可能にする、一連の3つの静的ミキサー反応器へ圧送する。静的ミキサー反応器を出て、スーパーリン酸(SPA)(76%P25)を1079グラム/時の平均速度でオリゴマー混合物へ注入する。
【0043】
SPAとのオリゴマー混合物を次に静的ミキサーによって十分にブレンドし、いかなる揮発分も真空によって除去する撹拌付きサージタンクに移す。撹拌付きサージタンクは、温度が137℃に維持される、DIT 5SCミキサーである。サージタンクでの平均滞留時間は1.25時間である。
【0044】
混合物の重合
オリゴマー混合物を次に、180℃の温度で所望の分子量までさらに重合させる。オリゴマー混合物を先ず、混合物の温度を180℃に上げるための熱交換器を通して、次に静的ミキサーの反応器システムと重合液に5秒-1剪断速度を与える回転クエット(Couette)型剪断反応器とを通して圧送する。反応器システムを180℃(±5℃)に維持し、反応器システムでの滞留時間は4時間である。25dl/gの固有粘度を有するポリマーを含有する溶液が得られる。
【0045】
紡糸プロセス
繊維形成および急冷
電気ブローイング
PPA(81.5パーセントP25の当量濃度を有する)中の25IVポリマーの20重量パーセント溶液を、帯電した紡糸ノズルを有する紡糸口金パックに送る。紡糸ノズルは約0.25mmの直径、約10のL/d比、300mmのDCD、約6kg/cm2の紡糸圧力、および約50kVの印加電圧を有する。紡糸口金パック中の紡糸ノズルの数は51である。
【0046】
電気ブローイング法のための高圧空気を提供する空気ノズルが紡糸ノズルを取り囲んでいる。空気速度は約3000メートル/分であり、空気温度は約100℃である。
【0047】
紡糸フィラメントを吸引によって移動ベルト上に集めてウェブを形成する。紡糸口金ノズルと吸引収集ベルトとの間の距離は30cmである。
【0048】
加水分解、洗浄、および乾燥
ウェブに水を40℃で20秒間スプレーする。ウェブを次に60秒の滞留時間、300℃の温度で運転するオーブンに通す。ウェブを次に水スプレーで洗浄する。水温度は40℃である。ウェブを次に、40秒の滞留時間、150℃で運転するオーブンに通すことによって乾燥させる。
【0049】
実施例2
空気速度が0メートル/分であることを除いて実施例1の方法を繰り返す。
【0050】
実施例3
電圧を紡糸ノズルに全くかけないことを除いて実施例1の方法を繰り返す。
【0051】
実施例4
本実施例は、以前の実施例で行われたウェブの任意の熱処理を例示する。乾燥後に、織物仕上げ剤の代わりに揮発性帯電防止仕上げ剤をウェブに塗布し、そしてウェブをボビン上に巻き取る代わりにオーブンに直ちに搬送することを除いて先行実施例の方法を繰り返す。
【0052】
熱処理
乾燥ウェブを、ウェブの温度を400℃に上げる電気加熱ベルトに搬送する。ウェブを次に、糸の温度を500℃に上げるN2雰囲気のチューブオーブンへ搬送する。N2雰囲気を出る前に、ウェブを室温N2雰囲気中で2秒間冷却し、仕上げ剤を塗布する。ウェブを次に集める。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約20〜5000nmの平均繊維径を有するポリマー繊維を含む繊維ウェブであって、
前記ポリマー繊維が約20g/dlより大きい固有粘度を有するポリアレーンアゾールポリマーを含み、
前記繊維ウェブが平方メートル当たり約0.1〜200グラムの坪量を有する繊維ウェブ。
【請求項2】
前記坪量が平方メートル当たり約0.1〜100グラムの範囲にある請求項1に記載の繊維ウェブ。
【請求項3】
前記坪量が平方メートル当たり約0.3〜80グラムの範囲にある請求項2に記載の繊維ウェブ。
【請求項4】
前記ポリアレーンアゾールポリマーが約25g/dlより大きい固有粘度を有する請求項1に記載の繊維ウェブ。
【請求項5】
前記ポリアレーンアゾールポリマーが約28g/dlより大きい固有粘度を有する請求項1に記載の繊維ウェブ。
【請求項6】
前記ポリアレーンアゾールポリマー繊維がポリピリダゾールポリマー繊維である請求項1に記載の繊維ウェブ。
【請求項7】
前記ポリピリダゾールポリマー繊維がポリ[2,6−ジイミダゾ[4,5−b:4,5−e]−ピリジニレン−1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン)である請求項6に記載の繊維ウェブ。
【請求項8】
前記坪量が平方メートル当たり約0.1〜100グラムの範囲にある請求項6に記載の繊維ウェブ。
【請求項9】
スクリムをさらに含む請求項1に記載の繊維ウェブ。
【請求項10】
請求項1に記載の繊維ウェブを含む物品。
【請求項11】
ポリアレーンアゾールポリマーを含む溶液を、第1印加電圧を有する紡糸口金を通して押し出す工程と、
押し出されたポリアレーンアゾールポリマーを、極性が第1印加電圧と反対である第2印加電圧を場合により有する収集面上に集める工程と
を含むポリアレーンアゾール繊維のウェブの製造方法。
【請求項12】
ポリアレーンアゾールポリマーを含む前記溶液が溶媒としてポリリン酸を含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1印加電圧が±1kV〜±300kVの範囲にある請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第2印加電圧が0〜±10kVの範囲にある請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリアレーンアゾールポリマーが約28g/dlより大きい固有粘度を有する請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリアレーンアゾールポリマーがポリピリダゾールである請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリピリダゾールポリマーがポリ[2,6−ジイミダゾ[4,5−b:4,5−e]−ピリジニレン−1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン)である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記押し出されたポリアレーンアゾールポリマー溶液を空隙に通す工程をさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記押し出されたポリマー溶液を、紡糸口金と収集面との間の方向に沿って空気流を提供することによって空隙中で加速させる工程をさらに含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2印加電圧がゼロである請求項19に記載の方法。

【公表番号】特表2009−545683(P2009−545683A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522958(P2009−522958)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/074461
【国際公開番号】WO2008/016824
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】