説明

ポリイミドの前駆体およびその使用

【課題】本発明はポリイミドの前駆体を提供する。前駆体は、式(1)


(式中、R、Rx、G、P、およびmは、明細書で定義した通りである)
の構造を有する。本発明は前駆体から調製されるポリイミドも提供する。
【解決手段】このポリイミドは優れた操作性および物性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドの新規前駆体に関する。本発明は、ポリイミド(PI)の調製における新規前駆体の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、優れた熱安定性ならびに良好な機械的、電気的、および化学的特性を有するので、高性能ポリマーとして使用されてきた。さらに、従来の無機材料の使用が、多くの用途において問題となり制限されてきているので、半導体の要求基準が引き上げられている。ポリイミドの特性は、いくつかの態様において従来の材料の欠点を補うことができる。それゆえに、E.I.Du Pont Companyが、芳香族ポリイミド技術を開発して以来、ポリイミドはすっかり一般的に使用されており、種々の用途が開発されている。
【0003】
半導体産業では、ポリイミドは、パッシベーションコーティング、ストレスバッファーコーティング、α-粒子遮蔽、ドライエッチマスク、マイクロマシーンおよび層間絶縁膜で広く使用されている。今もなお、その他の使用について開発され続けている。ポリイミド材料は、集積回路の素子に実施される信頼性試験に合格することができるので、ポリイミドは、主に集積回路の素子を保護するためのコーティングとして使用される。しかしなお、ポリイミドは集積回路産業だけでなく、電子部品実装、エナメル線、プリント回路板、センサー素子、分離膜、および構造材料でも使用されている。
【0004】
ポリイミドは、通常、2段階の重合および縮合反応によって合成される。普通は、第1段階で、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、またはジメチルスルホキシド(DMSO)などの極性非プロトン性溶媒に、ジアミンモノマーを溶解する。次いで、当量の二無水物モノマーを加える。その後、縮合反応を低温または室温で実施し、ポリイミドの前駆体、すなわちポリ(アミド酸)(PAA)を形成する。
【0005】
第2段階では、ポリ(アミド酸)がポリイミドに変換するように縮合、脱水、および環化反応を達成するために、熱イミド化または化学的イミド化を実施する。
【0006】
現在、ポリイミドを調製するための反応スキームは、下記:
【0007】
【化1】

【0008】
のように簡潔に記載することができる。
【0009】
上記の調製方法では、第1段階で得られるポリ(アミド酸)の分子量が、一定基準に達しない場合(すなわち、それが過度に低い)、イミド化後に良好な物性を有するポリイミド膜を得ることはできない。しかし、第1段階で得られるポリ(アミド酸)が、過度に高い分子量である場合、その粘度が高すぎることになり、操作性が不十分になるであろう。加えて、コーティングステップにおいて、レベリングが不十分になりやすい。例えば、スピンコーティングの間、中央部が凸状になり端部が厚くなる不十分なレベリング現象が生じやすい。さらに、ポリ(アミド酸)が過度に高い分子量である場合、分子間の相互作用および第2段階のイミド化における分子鎖の短縮に起因して、極めて強い内部応力が引き起こされる。強い内部応力は、コーティングされた基板を曲げて変形させる。これらの問題に対処するために、多くの文献において、第2段階のイミド化における加熱曲線の勾配制御と内部応力との間の関係について種々の論考が提出されていて、内部応力を減少させるための種々の手法も開発されている。それでもなお、レベリングの問題および内部応力が、第1段階で得られるポリ(アミド酸)の過度に高い分子量によって引き起こされる。言い換えれば、ポリ(アミド酸)の分子量を適切に制御することができれば、優れた物性を有するポリイミド膜を得ることができる。
【0010】
その上、ポリ(アミド酸)は吸湿性が高く、ゆえにポリ(アミド酸)は、水分子と迅速に反応し、その後分解することになる。結果として、ポリ(アミド酸)の貯蔵は容易ではない。
【0011】
有用なポリイミドが、この分野において大いに望まれているにもかかわらず、材料特性と操作性との間に衝突が存在する。したがって、この発明は、上述の問題点を解決することを目的とする。特に、望ましい物性および操作性を有するポリイミド膜を、ある種の合成によって提供し、工業的ニーズを満たす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的の一つは、ポリイミドの新規前駆体を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、上述の前駆体を含む組成物を提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、ポリイミドを調製するための方法を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明によるポリイミドの前駆体は、下記の式(1):
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、
Rは、炭素原子1〜14個を有する直鎖もしくは分枝のアルキル、炭素原子6〜14個を有するアリールもしくはアラルキル、またはエチレン性不飽和基を表し、
Rxは、各々独立に、Hまたは光重合性基を表し、
Gは、各々独立に、四価の有機基を表し、
Pは、各々独立に、二価の有機基を表し、
mは0〜100の整数である)
の構造を有するアミド酸エステルオリゴマーである。
【0018】
本発明のある実施形態によれば、上記の式(1)において、Rは炭素原子1〜14個を有する直鎖または分枝のアルキルを表す。例えば、炭素原子1〜14個を有する直鎖または分枝のアルキルは、
【0019】
【化3】

【0020】
であってもよい。
【0021】
上記式中、nは0〜10の整数である。炭素原子1〜14個を有する直鎖または分枝のアルキルの例としては、それだけに限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、アミル、ヘキシル、ヘプチル、およびオクチルが挙げられる。
【0022】
炭素原子6〜14個を有するアリールまたはアラルキルは、好ましくは下記の基:
【0023】
【化4】

【0024】
からなる群から選択される。
【0025】
エチレン性不飽和基は特に限定されず、その例としては、それだけに限定されないが、ビニル、プロペニル、メチルプロペニル、n-ブテニル、イソブテニル、ビニルフェニル、プロペニルフェニル、プロペニルオキシメチル、プロペニルオキシエチル、プロペニルオキシプロピル、プロペニルオキシブチル、プロペニルオキシアミル、プロペニルオキシヘキシル、メチルプロペニルオキシメチル、メチルプロペニルオキシエチル、メチルプロペニルオキシプロピル、メチルプロペニルオキシブチル、メチルプロペニルオキシアミル、およびメチルプロペニルオキシヘキシル、ならびに下記の式(2):
【0026】
【化5】

【0027】
(式中、R1は、フェニレン、直鎖もしくは分枝のC1〜C8アルキレン、直鎖もしくは分枝のC2〜C8アルケニレン、C3〜C8シクロアルキレン、または直鎖もしくは分枝のC1〜C8ヒドロキシアルキレンであり、R2はHまたはC1〜C4アルキルである)
の基が挙げられる。式(2)の好ましい基は、
【0028】
【化6】

【0029】
である。
【0030】
本発明の式(1)における各Rxは、各々独立に、Hまたは任意の光重合性基を表す。好ましくは、光重合性基は、上に定義したエチレン性不飽和基を有する基である。本発明によれば、各Rxは、各々独立に、H、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート基、エチルメタクリレート基、エチルアクリレート基、プロペニル、メチルプロペニル、n-ブテニル、またはイソブテニルを表す。より好ましくは、各Rxは、各々独立に、Hまたは2-ヒドロキシプロピルメタクリレート基:
【0031】
【化7】

【0032】
を表す。
【0033】
本発明の式(1)におけるアミド酸エステルオリゴマーの四価の有機基Gは、特に限定されない。例えば、それが四価の芳香族基または四価の脂肪族基であってもよい。芳香族基は、単環式または多環式基であってもよく、好ましくは以下:
【0034】
【化8】

【0035】
からなる群から選択される。
【0036】
式中、各Yは、各々独立に、H、ハロ基、C1〜C4ペルフルオロアルキル、またはC1〜C4アルキルを表し、Bは-CH2-、-O-、-S-、-CO-、-SO2-、-C(CH3)2-、または-C(CF3)2-を表す。より好ましくは、芳香族基は、以下:
【0037】
【化9】

【0038】
からなる群から選択される。
【0039】
さらに、四価の脂肪族基は、以下:
【0040】
【化10】

【0041】
からなる群から選択可能である。
【0042】
本発明の式(1)におけるアミド酸エステルオリゴマーの二価の有機基Pは、特に限定されない。通常、二価の有機基Pは芳香族基であり、好ましくは各々独立に、以下:
【0043】
【化11】

【0044】
を表す。
【0045】
上記式中、各Xは、各々独立に、H、ハロ基、C1〜C4アルキル、またはC1〜C4ペルフルオロアルキルを表し、Aは-O-、-S-、-CO-、-CH2-、-OC(O)-、または-CONH-を表す。より好ましくは、各二価の有機基Pは、各々独立に、以下:
【0046】
【化12】

【0047】
を表す。
【0048】
一実施形態では、二価の有機基Pは、
【0049】
【化13】

【0050】
である。
【0051】
二価の有機基Pは同様に、
【0052】
【化14】

【0053】
(式中、Xは上で定義した意味を有し、wおよびzの各々は、各々独立に、1〜3の整数を表す)
などの非芳香族基であってもよい。
【0054】
好ましくは、二価の有機基Pは、
【0055】
【化15】

【0056】
である。
【0057】
本発明の発明者は、ポリイミドを調製するための従来のポリ(アミド酸)前駆体と違って、本発明による式(1)のアミド酸エステルオリゴマーには酸性基が少なく、そのため吸湿性がより低いことを発見した。たとえ式(1)のアミド酸エステルオリゴマーが含水することがあるとしても、それらはより安定であり、より低い温度(例えば、-20℃)で貯蔵する必要がなく、室温で貯蔵可能である。
【0058】
本発明のアミド酸エステルオリゴマーは、下記の手順、
(a) 式(3)の二無水物とヒドロキシル基(R-OH)を有する化合物とを反応させて式(4)の化合物を形成するステップ:
【0059】
【化16】

【0060】
および
(b) 式H2N-P-NH2のジアミン化合物をステップ(a)から得られる生成物に加えて、式(5)のアミド酸エステルオリゴマーを形成するステップ:
【0061】
【化17】

【0062】
(c) 式(6):
【0063】
【化18】

【0064】
(式中、R、GおよびPは、上に定義した通りであり、a、bおよびfは、各々0〜100の整数であり、a+b≦100である)
のアミド酸エステルオリゴマーを形成する反応を実施するために、光重合性基(R*)、例えば、エポキシアクリレート、を持つモノマーを場合により添加するステップ、
を含む方法などの当業者に既知である従来の重合方法のいずれか一つにより生成可能である。
【0065】
式(1)のアミド酸エステルオリゴマーを調製するための上記方法では、ステップ(a)で使用される二無水物は、脂肪族または芳香族であってもよく、好ましくは芳香族である。芳香族二無水物の例としては、それだけに限定されないが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)、4,4'-ビフタル酸二無水物(BPDA)、4,4'-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物(6FDA)、1-(トリフルオロメチル)-2,3,5,6-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(P3FDA)、ベンゾフェノン-テトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3',4,4'-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、1,4-ビス(トリフルオロメチル)-2,3,5,6-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(P6FDA)、1-(3',4'-ジカルボキシフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン-5,6-ジカルボン酸二無水物、1-(3',4'-ジカルボキシフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン-6,7-ジカルボン酸二無水物、1-(3',4'-ジカルボキシフェニル)-3-メチルインダン-5,6-ジカルボン酸二無水物、1-(3',4'-ジカルボキシフェニル)-3-メチルインダン-6,7-ジカルボン酸二無水物、2,3,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-2,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,8,9,10-テトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4'-イソプロピリデンジフタル酸無水物、3,3'-イソプロピリデンジフタル酸無水物、4,4'-オキシジフタル酸無水物、4,4'-スルホニルジフタル酸無水物、3,3'-オキシジフタル酸無水物、4,4'-メチレンジフタル酸無水物、4,4'-チオジフタル酸無水物、4,4'-エチリデンジフタル酸無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ベンゼン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピリジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0066】
好ましくは、ステップ(a)で使用される芳香族二無水物は、ピロメリト酸二無水物(PMDA)、4,4'-ビフタル酸無水物(BPDA)、4,4'-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物(6FDA)、1-(トリフルオロメチル)-2,3,5,6-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(P3FDA)、1,4-ビス(トリフルオロメチル)-2,3,5,6-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(P6FDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3',4,4'-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、およびこれらの混合物からなる群から選択される。一実施形態では、ピロメリト酸二無水物(PMDA)が使用される。
【0067】
式(1)のアミド酸エステルオリゴマーを調製するために本発明の方法で使用されるヒドロキシル基を有する化合物は、モノオール、ジオール、またはポリオールなどのアルコールであってもよく、好ましくはモノオールである。本発明において有用なモノオールは、特に限定されないが、アルカノール、アラルカノール(aralkanol)、またはアリールオール(arylol)であってもよい。モノオールは、(それだけに限定されないが)下記の構造:
【0068】
【化19】

【0069】
(式中、nは0〜10の整数である)
の一つである直鎖または分枝のアルカノールなどの、炭素原子1〜14個を有する直鎖または分枝のアルカノールであってもよい。この場合、炭素原子1〜14個を有する直鎖または分枝のアルカノールの例としては、それだけに限定されないが、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、1-メチルプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、ネオブタノール、1-メチルブタノール、2-メチルブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、およびオクタノールが挙げられる。本発明において有用なモノオールは同様に、下記の構造:
【0070】
【化20】

【0071】
の一つであるアラルカノールまたはアリールオールなどの、炭素原子6〜14個を有するアラルカノールまたはアリールオールであってもよい。
【0072】
本発明の方法で使用されるヒドロキシル基を有する化合物は、エチレン性不飽和基などの光重合性基を持つこともできる。好ましくは、この化合物は、下記の式(7):
【0073】
【化21】

【0074】
(式中、R1は、フェニレン、C3〜C8シクロアルキレン、直鎖もしくは分枝C1〜C8アルキレン、直鎖もしくは分枝C1〜C8アルケニレン、または直鎖もしくは分枝C1〜C8ヒドロキシアルキレンであり、R2はHまたはC1〜C4アルキルである)
を有する。好ましくは、式(7)の化合物は、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、グリシジルメタクリレート(GMA)、グリシジルアクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0075】
式(1)のアミド酸エステルオリゴマーを調製するための上記の方法では、ステップ(b)で使用されるジアミンは特に限定されず、芳香族ジアミンであってもよい。本発明の方法で有用な芳香族ジアミンは、当業者に公知である。例えば、芳香族ジアミンは、それだけに限定されないが、以下の群: 4,4'-オキシ-ジアニリン(ODA)、パラ-フェニレンジアミン(pPDA)、2,2-ジメチル-4,4-ジアミノ-ビフェニル(DMDB)、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、o-トリジン(oTLD)、4,4'-オクタフルオロベンジジン(OFB)、テトラフルオロフェニレンジアミン(TFPD)、2,2',5,5'-テトラクロロベンジジン(TCB)、3,3'-ジクロロベンジジン(DCB)、2,2'-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2'-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4'-オキソ-ビス(3-トリフルオロメチル)アニリン、3,5-ジアミノベンゾトリフルオリド、テトラフルオロフェニレンジアミン、テトラフルオロ-m-フェニレンジアミン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ-2-tert-ブチルベンゼン(BATB)、2,2'-ジメチル-4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(DBAPB)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(BAPPH)、2,2'-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ノルボラン(BAPN)、5-アミノ-1-(4'-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、6-アミノ-1-(4'-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、4,4'-メチレンビス(o-クロロアニリン)、3,3'-ジクロロベンジジン(DCB)、3,3'-スルホニルジアニリン、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、1,5-ジアミノナフタレン、ビス(4-アミノフェニル)ジエチルシラン、ビス(4-アミノフェニル)ジフェニルシラン、ビス(4-アミノフェニル)エチルホスフィンオキシド、N-(ビス(4-アミノフェニル)-N-メチルアミン、N-(ビス(4-アミノフェニル))-N-フェニルアミン、4,4'-メチレンビス(2-メチルアニリン)、4,4'-メチレンビス(2-メトキシアニリン)、5,5'-メチレンビス(2-アミノフェノール)、4,4'-メチレンビス(2-メチルアニリン)、4,4'-オキシビス(2-メトキシアニリン)、4,4'-オキシビス(2-クロロアニリン)、2,2'-ビス(4-アミノフェノール)、5,5'-オキシビス(2-アミノフェノール)、4,4'-チオビス(2-メチルアニリン)、4,4'-チオビス(2-メトキシアニリン)、4,4'-チオビス(2-クロロアニリン)、4,4'-スルホニルビス(2-メチルアニリン)、4,4'-スルホニルビス(2-エトキシアニリン)、4,4'-スルホニルビス(2-クロロアニリン)、5,5'-スルホニルビス(2-アミノフェノール)、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノベンゾフェノン、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ジアミノベンゾフェノン、3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノビフェニル、m-フェニレンジアミン、4,4'-メチレンジアニリン(MDA)、4,4'-チオジアニリン、4,4'-スルホニルジアニリン、4,4'-イソプロピリデンジアニリン、3,3'-ジメトキシベンジジン、3,3'-ジカルボキシベンジジン、2,4-トリル-ジアミン、2,5-トリル-ジアミン、2,6-トリル-ジアミン、m-キシリルジアミン、2,4-ジアミノ-5-クロロ-トルエン、2,4-ジアミノ-6-クロロ-トルエン、およびこれらの混合物から選択可能である。好ましくは、ジアミンは4,4'-オキシ-ジアニリン(ODA)、パラ-フェニレンジアミン(pPDA)、2,2-ジメチル-4,4-ジアミノ-ビフェニル(DMDB)、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、o-トリジン(oTLD)、4,4'-メチレンジアニリン(MDA)、またはこれらの混合物である。
【0076】
好ましくは、ステップ(b)で使用されるジアミンは、
【0077】
【化22】

【0078】
からなる群から選択される。
【0079】
上述のように、光重合性基を持つモノマーを、ステップ(c)に場合により加えて、アミド酸エステルオリゴマーに光重合性基を与えることができる。
【0080】
具体的に、光重合性基を有するモノマーを加えない場合、式(1)のアミド酸エステルオリゴマーのRxはHを表す。光重合性基を有するモノマーを加える場合、式(1)のアミド酸エステルオリゴマーのRxは、光重合性基を表すことになる。Rxが光重合性基を表すとき、アミド酸エステルオリゴマーの分子は、ポリイミドを合成するための次の工程の間に、互いに化学結合して、架橋を形成することになる。
【0081】
さらに本発明は、上述した式(1)のアミド酸エステルオリゴマーおよび溶媒を含むポリイミドを調製するための前駆体組成物を提供する。
【0082】
本発明の組成物で使用される溶媒は、好ましくは極性非プロトン性溶媒である。例えば、極性非プロトン性溶媒は、それだけに限定されないが、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トルエン、キシレン、およびこれらの混合物からなる群から選択可能である。
【0083】
本発明の組成物では、組成物の総重量に対して、アミド酸エステルオリゴマーの量は、15%〜70%、好ましくは30%〜60%の範囲にわたり、溶媒の量は、20%〜80%、好ましくは45%〜75%の範囲にわたる。
【0084】
本発明の組成物は、光開始剤、シランカップリング剤、レベリング剤、安定剤、触媒、および/または消泡剤などの、当業者に既知の添加剤を場合により含むことができる。
【0085】
上述した式(1)のアミド酸エステルオリゴマーが光重合性基を持つ場合、光開始剤を場合により加えることができる。本発明に適した光開始剤は、特に限定されないが、ベンゾフェノン、ベンゾイン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、N-フェニルグリシン、9-フェニルアクリジン、ベンジルジメチルケタール、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ジフェニルケトン、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、およびこれらの混合物からなる群から選択可能であり、その中でベンゾフェノンが好ましい。具体的に、本発明の前駆体組成物の総重量に対して、光開始剤の量は、0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲にわたる。
【0086】
一般的なシランカップリング剤は、(それだけに限定されないが)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0087】
本発明は、式(1)のアミド酸エステルオリゴマーの重合によって調製されるポリイミドも提供する。例えば、本発明によるポリイミドは、下記のスキーム:
【0088】
【化23A】

【化23B】

【0089】
で示す重合方法によって生成可能である。
【0090】
ポリイミドを合成するための従来の方法では、前駆体としてより高い分子量を有するポリ(アミド酸)を最初に合成することが必要であった。しかし、分子量が過度に高く、結果として過度に高い粘度をもたらすので、前駆体の操作性が悪化し、コーティングの間に不十分なレベリング性を招く。さらに、ポリ(アミド酸)の過度に高い分子量は、分子間の相互作用および前駆体のイミド化の間における分子鎖の短縮に起因する極度の内部応力の原因となる。極度の内部応力は、コーティングされる基板のゆがみおよび変形の原因となる。また、ポリイミドを合成するための従来の方法では、重合によって形成されるポリ(アミド酸)の固体含有量は、約10%〜約30%であり、そのため、環化後の体積収縮率がより高い。結果として、生成物の望ましい厚さを達成するために、コーティング手順を何回も繰り返さなければならず、それにより工程がより複雑になる。
【0091】
本発明によるアミド酸エステルオリゴマーは、エステル(-C(O)OR)およびカルボキシル(-C(O)OH)末端基の両方を有することを特徴とし、メタ安定状態にあり、それら自体のアミノ基(-H2N)と反応しない。このアミド酸エステルオリゴマーは、分子量が低いので、コーティングの間、これらの操作性はより良好であり、レベリング効果が達成可能である。次の硬化では、100℃を超える温度に上昇させた後、エステルおよびカルボキシル末端基をアミノ基で無水物にし、次いで反応させてアミド酸エステルオリゴマーを形成する。その後、オリゴマーをさらに重合させて、優れた熱特性、機械的特性、および引張特性を有するポリイミドをもたらすための次の縮合のために、より高い分子量を有する分子を形成する。より高い粘度を有するポリ(アミド酸)が使用された従来の技術と比較して、本発明は、コーティングするときに、より良好なレベリング性および操作性を示す粘度がより低いアミド酸エステルオリゴマーを利用する。
【0092】
さらに本発明のポリイミドは、前駆体組成物のイミド化の間に、アミド酸エステルオリゴマーが、分子間重合および環化の前に分子内で環化されることを特徴とする。この反応の順序は、ポリイミドに残る内部応力を効果的に低減する。従来技術と比較して、本発明の前駆体組成物の環化により得られるポリイミドは、歪まないであろう。
【0093】
本発明のポリイミドの前駆体組成物は、高い固体含有量を有するので、使用する溶媒の量を削減することができ、その結果焼成時間を短縮し、焼成温度を低下させ、大量の溶媒の揮発に起因する体積収縮現象を防ぐことになる。また、乾燥および膜形成速度がより速くなり、生成物の望ましい厚さを達成するためのコーティング回数を削減できる。
【0094】
さらなる態様では、ポリイミドを調製するための環化温度は、一般に従来技術で300℃〜350℃までであった。しかし、本発明の前駆体組成物は、約200℃〜250℃の範囲の温度で環化させることができ、稼動コストをさらに低減することができる。
【0095】
その上、一般の重合反応では、分子間で架橋するように、通常いくつかのモノマーまたは短鎖オリゴマーを加える。しかし、本発明の前駆体は、光重合性基を含むので、硬化ステップ時に自己架橋可能である。したがって、本発明の前駆体組成物は、追加的な不飽和モノマーまたはオリゴマーを必要とせず、工程の複雑性を低減し、費用を削減することができる。
【0096】
本発明を下記の実施例により詳細に記載するが、その記述は、本発明の範囲を限定するためではなく、本発明を説明するためのみに使用される。当業者により容易に達成可能であるすべての修正または同等のものは、本明細書および添付の特許請求の範囲における開示の範囲内である。
【0097】
(実施例)
実施例1〜20では、本発明のポリイミドを生成するための組成物を調製するためのステップおよび条件を説明する。比較例1は、ポリイミドを生成するための従来技術の組成物に関する。
【0098】
(実施例1)
21.81g(0.1mol)のピロメリト酸二無水物(PMDA)を、200gのN-メチル-2-ピロリジノン(NMP)に溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間撹拌した。1.161g(0.01mol)の2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を混合物にゆっくりと滴下し、50℃で2時間撹拌した。次いで、20.024g(0.1mol)の4,4'-オキシ-ジアニリン(ODA)を溶液に加えた。完全に溶解した後、溶液をさらに50℃で6時間撹拌した。
【0099】
(比較例1)
20.024g(0.1mol)のODAを200gのNMPに溶解し、次いで混合物を1時間撹拌しながら0℃の氷浴中に置いた。次いで、0.29g(0.002mol)の無水フタル酸を加え、反応物を1時間撹拌した。次いで、21.59g(0.099mol)のPMDAをゆっくりと加え、12時間撹拌した。
【0100】
(実施例2)
21.81g(0.1mol)のPMDAを、200gのNMPに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間撹拌した。13.01g(0.01mol)の2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を混合物にゆっくりと滴下し、50℃で2時間撹拌した。次いで、20.024g(0.1mol)のODAを溶液に加えた。完全に溶解した後、溶液をさらに50℃で6時間撹拌した。
【0101】
(実施例3)
21.81g(0.1mol)のPMDAを、200gのNMPに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間撹拌した。1.161g(0.01mol)のHEAを混合物にゆっくりと滴下し、50℃で2時間撹拌した。次いで、10.814g(0.1mol)のパラ-フェニレンジアミン(pPDA)を溶液に加えた。完全に溶解した後、溶液をさらに50℃で6時間撹拌した。
【0102】
(実施例4)
21.81g(0.1mol)のPMDAを、200gのNMPに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間撹拌した。13.01g(0.01mol)のHEMAを混合物にゆっくりと滴下し、50℃で2時間撹拌した。次いで、10.814g(0.1mol)のpPDAを溶液に加えた。完全に溶解した後、溶液をさらに50℃で6時間撹拌した。
【0103】
(実施例5)
21.81g(0.1mol)のPMDAを、200gのNMPに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間撹拌した。1.161g(0.01mol)のHEAを混合物にゆっくりと滴下し、50℃で2時間撹拌した。次いで、21.23g(0.1mol)の2,2-ジメチル-4,4-ジアミノ-ビフェニル(DMDB)を溶液に加えた。完全に溶解した後、溶液をさらに50℃で6時間撹拌した。
【0104】
(実施例6)
21.81g(0.1mol)のPMDAを、200gのNMPに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間撹拌した。13.01g(0.01mol)のHEMAを混合物にゆっくりと滴下し、50℃で2時間撹拌した。次いで、21.23g(0.1mol)のDMDBを溶液に加えた。完全に溶解した後、溶液をさらに50℃で6時間撹拌した。
【0105】
(実施例7)
21.81g(0.1mol)のPMDAを、200gのNMPに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間撹拌した。1.161g(0.01mol)のHEAを混合物にゆっくりと滴下し、50℃で2時間撹拌した。次いで、21.23g(0.1mol)のo-トリジン(oTLD)を溶液に加えた。完全に溶解した後、溶液をさらに50℃で6時間撹拌した。
【0106】
(実施例8)
21.81g(0.1mol)のPMDAを、200gのNMPに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間撹拌した。13.01g(0.01mol)のHEMAを混合物にゆっくりと滴下し、50℃で2時間撹拌した。次いで、21.23g(0.1mol)のoTLDを溶液に加えた。完全に溶解した後、溶液をさらに50℃で6時間撹拌した。
【0107】
(実施例9)
21.81g(0.1mol)のPMDAを、200gのNMPに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間撹拌した。1.161g(0.01mol)のHEAを混合物にゆっくりと滴下し、50℃で2時間撹拌した。次いで、32.02g(0.1mol)の2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を溶液に加えた。完全に溶解した後、溶液をさらに50℃で6時間撹拌した。
【0108】
(実施例10)
21.81g(0.1mol)のPMDAを、200gのNMPに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間撹拌した。13.01g(0.01mol)のHEMAを混合物にゆっくりと滴下し、50℃で2時間撹拌した。次いで、32.02g(0.1mol)のTFMBを溶液に加えた。完全に溶解した後、溶液をさらに50℃で6時間撹拌した。
【0109】
(実施例11)
21.81g(0.1mol)のPMDAを、200gのNMPに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間撹拌した。0.32g(0.01mol)のメタノールを混合物にゆっくりと滴下し、50℃で2時間撹拌した。次いで、20.024g(0.1mol)のODAを溶液に加えた。完全に溶解した後、溶液をさらに50℃で6時間撹拌した。
【0110】
(実施例12)
21.81g(0.1mol)のPMDAを、200gのNMPに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間撹拌した。0.601g(0.01mol)のイソプロパノールを混合物にゆっくりと滴下し、50℃で2時間撹拌した。次いで、20.024g(0.1mol)のODAを溶液に加えた。完全に溶解した後、溶液をさらに50℃で6時間撹拌した。
【0111】
(実施例13)
21.81g(0.1mol)のPMDAを、200gのNMPに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間撹拌した。0.32g(0.01mol)のメタノールを混合物にゆっくりと滴下し、50℃で2時間撹拌した。次いで、10.814g(0.1mol)のpPDAを溶液に加えた。完全に溶解した後、溶液をさらに50℃で6時間撹拌した。
【0112】
(実施例14)
21.81g(0.1mol)のPMDAを、200gのNMPに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間撹拌した。0.601g(0.01mol)のイソプロパノールを混合物にゆっくりと滴下し、50℃で2時間撹拌した。次いで、10.814g(0.1mol)のpPDAを溶液に加えた。完全に溶解した後、溶液をさらに50℃で6時間撹拌した。
【0113】
(実施例15)
21.81g(0.1mol)のPMDAを、200gのNMPに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間撹拌した。0.32g(0.01mol)のメタノールを混合物にゆっくりと滴下し、50℃で2時間撹拌した。次いで、21.23g(0.1mol)のDMDBを溶液に加えた。完全に溶解した後、溶液をさらに50℃で6時間撹拌した。
【0114】
(実施例16)
21.81g(0.1mol)のPMDAを、200gのNMPに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間撹拌した。0.601g(0.01mol)のイソプロパノールを混合物にゆっくりと滴下し、50℃で2時間撹拌した。次いで、21.23g(0.1mol)のDBDBを溶液に加えた。完全に溶解した後、溶液をさらに50℃で6時間撹拌した。
【0115】
(実施例17)
21.81g(0.1mol)のPMDAを、200gのNMPに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間撹拌した。0.32g(0.01mol)のメタノールを混合物にゆっくりと滴下し、50℃で2時間撹拌した。次いで、21.23g(0.1mol)のoTLDを溶液に加えた。完全に溶解した後、溶液をさらに50℃で6時間撹拌した。
【0116】
(実施例18)
21.81g(0.1mol)のPMDAを、200gのNMPに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間撹拌した。0.601g(0.01mol)のイソプロパノールを混合物にゆっくりと滴下し、50℃で2時間撹拌した。次いで、21.23g(0.1mol)のoTLDを溶液に加えた。完全に溶解した後、溶液をさらに50℃で6時間撹拌した。
【0117】
(実施例19)
21.81g(0.1mol)のPMDAを、200gのNMPに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間撹拌した。0.32g(0.01mol)のメタノールを混合物にゆっくりと滴下し、50℃で2時間撹拌した。次いで、32.02g(0.1mol)のTFMBを溶液に加えた。完全に溶解した後、溶液をさらに50℃で6時間撹拌した。
【0118】
(実施例20)
21.81g(0.1mol)のPMDAを、200gのNMPに溶解した。混合物を50℃に加熱し、2時間撹拌した。0.601g(0.01mol)のイソプロパノールを混合物にゆっくりと滴下し、50℃で2時間撹拌した。次いで、32.02g(0.1mol)のTFBMを溶液に加えた。完全に溶解した後、溶液をさらに50℃で6時間撹拌した。
【0119】
ポリイミドの物性試験
製造したポリイミドの分子量についての関連データをHT-GPC機器(Waters2010型)で試験し、表1に記載した。
【0120】
【表1】

【0121】
表1のデータから、本発明がより低い分散性、すなわち、より狭い分子量分布およびより小さな高い分子量と低い分子量との差を有しており、より良好な品質を示すポリイミドをもたらすことができることがわかる。
【0122】
実施例1および比較例1の組成物で、スピンコーティングによって膜を形成した。次いで、3段階の加熱曲線制御により、すなわち2℃/分の加熱速度で150℃/60分、250℃/60分、および350℃/60分オーブン中で膜を焼成し、次いで冷却した。この膜の物性について試験した。
【0123】
万能試験機(Hungta Instrument製、高温屈曲試験機9102型)により、ポリイミド膜の機械的特性を試験した。ポリイミド膜を12cm×10cm×0.25mmの寸法を有する試験試料に切断し、次いで万能試験機に取り付けた。試験は、23℃の温度および10mm/分の速度で実施した。実施例1および比較例1の組成物から調製したポリイミド膜を別々に試験し、それらの引張強度を測定した。結果を表2に記載した。
【0124】
【表2】

【0125】
表2の結果より、本発明のポリイミド膜が、より良好な引張強度および伸びを示すことが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1):
【化1】

(式中、
Rは炭素原子1〜14個を有する直鎖もしくは分枝のアルキル、炭素原子6〜14個を有するアリールもしくはアラルキル、またはエチレン性不飽和基を表し、
Rxは、各々独立に、Hまたはエチレン性不飽和基を表し、
Gは、各々独立に、四価の有機基を表し、
Pは、各々独立に、二価の有機基を表し、
mは0〜100の整数である)
の構造を有するポリイミドの前駆体。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和基が、ビニル、プロペニル、メチルプロペニル、n-ブテニル、イソブテニル、ビニルフェニル、プロペニルフェニル、プロペニルオキシメチル、プロペニルオキシエチル、プロペニルオキシプロピル、プロペニルオキシブチル、プロペニルオキシアミル、プロペニルオキシヘキシル、メチルプロペニルオキシメチル、メチルプロペニルオキシエチル、メチルプロペニルオキシプロピル、メチルプロペニルオキシブチル、メチルプロペニルオキシアミル、およびメチルプロペニルオキシヘキシル、ならびに下記の式(2):
【化2】

(式中、R1はフェニレン、C3〜C8シクロアルキレン、直鎖もしくは分枝のC1〜C8アルキレン、直鎖もしくは分枝のC2〜C8アルケニレン、または直鎖もしくは分枝のC1〜C8ヒドロキシアルキレンであり、R2はHまたはC1〜C4アルキルである)
の基からなる群から選択される、請求項1に記載の前駆体。
【請求項3】
Rxが、各々独立に、H、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート基、エチルメタクリレート基、エチルアクリレート基、プロペニル、メチルプロペニル、n-ブテニル、またはイソブテニルを表す、請求項1に記載の前駆体。
【請求項4】
Rxが、各々独立に、Hまたは2-ヒドロキシプロピルメタクリレートを表す、請求項1に記載の前駆体。
【請求項5】
前記四価の有機基が、
【化3】

(式中、Yは、各々独立に、H、ハロ基、C1〜C4ペルフルオロアルキル、またはC1〜C4アルキルを表し、Bは、-CH2-、-O-、-S-、-CO-、-SO2-、-C(CH3)2-、または-C(CF3)2-を表す)
からなる群から選択される、請求項1に記載の前駆体。
【請求項6】
前記四価の有機基が、
【化4】

からなる群から選択される、請求項5に記載の前駆体。
【請求項7】
前記二価の有機基が、
【化5】

(式中、Xは、各々独立に、H、ハロ基、C1〜C4アルキル、またはC1〜C4ペルフルオロアルキルを表し、Aは、-O-、-S-、-CO-、-CH2-、-OC(O)-、または-CONH-を表し、wおよびzは、各々1〜3の整数を表す)
からなる群から選択される、請求項1に記載の前駆体。
【請求項8】
前記二価の有機基が、
【化6】

からなる群から選択される、請求項7に記載の前駆体。
【請求項9】
mが5〜25の整数である、請求項1に記載の前駆体。
【請求項10】
Rが、
【化7】

(式中、nは0〜10の整数である)
からなる群から選択される、請求項1に記載の前駆体。
【請求項11】
請求項1に記載の前駆体および溶媒を含む、ポリイミドの前駆体組成物。
【請求項12】
前記溶媒が、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、キシレン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ベンゾフェノン、ベンゾイン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、N-フェニルグリシン、9-フェニルアクリジン、ベンジルジメチルケタール、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ジフェニルケトン、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、およびこれらの混合物からなる群から選択される光開始剤をさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の前駆体の重合により調製されるポリイミド。

【公開番号】特開2009−52042(P2009−52042A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−200120(P2008−200120)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(500202322)長興化學工業股▲ふん▼有限公司 (30)
【Fターム(参考)】