説明

ポリイミドシロキサンを含む硬化性組成物、並びに該硬化性組成物の硬化物

【課題】電気絶縁性の保護膜に利用されるポリイミドシロキサンを含む組成物及び該組成物を硬化してなる、優れた耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性及び機械的特性を有する硬化物の提供。
【解決手段】酸基含有のポリイミドシロキサン及び末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンを含む硬化性組成物、並びに、該硬化性組成物の硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドシロキサンを含む硬化性組成物に関する。詳細には、例えばプリント回路基板、半導体集積回路又はフレキシブル配線板に用いられる電気絶縁性の保護膜に利用されるポリイミドシロキサンを含む組成物及び該組成物を硬化してなる硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香族ポリイミド、エポキシ樹脂などを電気絶縁性の保護膜として利用することは、例えば、固体素子への絶縁膜、半導体集積回路、フレキシブル配線板などの絶縁膜などの用途において知られている。一般に、エポキシ樹脂は硬化剤と併用が必要であり、その硬化剤に係る保存安定性、二液調製のための作業性などの種々の問題があり、また、絶縁膜として使用した場合に、熱硬化によって形成される絶縁膜が剛直であり、柔軟性に欠け、屈曲性に劣るという問題があった。
また、一般に芳香族ポリイミドは、有機溶媒に溶解し難いために、芳香族ポリイミドの前駆体(芳香族ポリアミック酸)の溶液として塗布し、次いで乾燥とイミド化とを高温で長時間、加熱処理することによって、芳香族ポリイミドの硬化膜を形成する必要があるため、保護すべき電気又は電子部材自体が熱劣化するという問題があった。
そこで、かかる問題を避けるべく、有機溶剤に対して可溶性のポリイミドが提案されたが(特許文献1)、基板との密着性(接着性)が十分でなかった。そこで、特許文献2は、特定のポリイミドシロキサン、エポキシ樹脂及びタルクからなる組成物を提案しており、該特許文献2には、該組成物が有機溶剤に対して可溶性であり、硬化膜を形成したときには、高い非反り性(非カール性)を有すると記載されている。また、特許文献3は、ポリイミド鎖の繰り返し単位中にエポキシ基を含有させることにより、ポリイミド樹脂の持つ耐熱性、機械的特性を低下させることなく、金属等に対する密着性を向上させ、耐有機溶剤性も向上させる技術を提案している。
【特許文献1】特公昭57−41491号公報
【特許文献2】特開平7−304950号公報
【特許文献3】特開2002−371132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
硬化膜は、その用途の点から、優れた耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性及び非反り性という性能をすべて併せ持つことが必要とされる。この点において、上記特許文献2には、硬化物が非反り性を有することが記載されているが、実際のところ、該硬化物の硬度は十分に高いものの、その反面、非反り性は、必要とされる水準までさらに向上させなければならないことが判った。また、硬化物の耐溶剤性についてみても、所定の水準に及ばなかった。特許文献3に記載の発明においてもまた同様に、上記の性能を併せ持つ硬化物を得ることはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで本発明者は鋭意研究を行ったところ、2種のポリイミドシロキサン、即ち、酸基含有のポリイミドシロキサン及び末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンを含む組成物を硬化させたときに、硬化膜の硬度が高いとともに非反り性に優れ、なお且つ、優れた耐溶剤性、耐熱性及び耐薬品性をも併せ持ち、よって目的とする性能をすべて有する硬化物となることを突き止め、本発明を完成した。
すなわち本発明は、酸基含有のポリイミドシロキサン及び末端エポキシ基含有のポリイ
ミドシロキサンを含む硬化性組成物に関する。
本発明の好ましい態様は、前記酸基含有のポリイミドシロキサンは、その構造中に、以下の式(1)、(2)及び(3)で表される構造単位:
【化1】

(式(1)、(2)及び(3)中、
1、R2及びR3は各々、テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の残基を
表し、
4は、酸基を有する芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の残基を表し、
5は、ポリシロキサン基を有するジアミンからアミノ基を除いた2価の残基を表し、
6は、芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の残基を表す。)を、
酸基含有のポリイミドシロキサンの質量に基づき、式(1)で表される構造単位を5ないし20質量%、式(2)で表される構造単位を60ないし90質量%、及び式(3)で表される構造単位を2ないし10質量%の割合で(但し、これら3つの構造単位の合計は100質量%である。)有するものであり、並びに、
前記末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンは、その構造中に、以下の式(4)、(5)及び(6)で表される構造単位:
【化2】

(式中、
7、R8及びR9は各々、テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の残基を
表し、
10は、2価の芳香族基を表し、
11は、末端エポキシ基を含有した有機基を表し、
12は、ポリシロキサン基を有するジアミンからアミノ基を除いた2価の残基を表し、
13は、芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の残基を表す。)を、
末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンの質量に基づき、式(4)で表される構造単位を5ないし15質量%、式(5)で表される構造単位を60ないし90質量%、及び
式(6)で表される構造単位を1ないし10質量%の割合で(但し、これら3つの構造単位の合計は100質量%である。)有するものである、硬化性組成物に関する。
このうち、より好ましい態様は、前記酸基含有のポリイミドシロキサンは、式(1)、(2)及び(3)中、
基R1、R2及びR3のうち少なくとも1つが式
【化3】

で表される基を表し、
基R4が、次式:
【化4】

[式中、
14は、カルボキシル基を表し、
1及びr2は、1又は2の整数を表し、r3は、0ないし3の整数を表し、
Xは、
【化5】

(式中、R15及びR16は、水素原子又は炭素原子数1ないし10のアルキル基を表す。)で表される基を表す。]
で表される基を表し、
基R5が次式:
【化6】

(式中、
17は、2価の炭化水素基又はフェニレン基を表し、
18は、各々独立して、炭素原子数1ないし3のアルキル基又はフェニル基を表し、
pは、1ないし30の整数を表す。)
で表される基を表し、
基R6が、式
【化7】

で表されるジアミンからアミノ基を除いた2価の基を表し、及び
酸基含有のポリイミドシロキサンの質量に基づき、式(1)で表される構造単位を5ないし20質量%、式(2)で表される構造単位を60ないし90質量%、及び式(3)で
表される構造単位を2ないし10質量%の割合で(但し、これら3つの構造単位の合計は100質量%である。)有するものである、硬化性組成物に関する。
また別の好ましい態様は、前記末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンは、
式(4)、(5)及び(6)中、
基R7、R8及びR9のうちの少なくとも1つが、次式:
【化8】

で表される基を表し、
基R10が、次式:
【化9】

で表される基を表し、
基R11が、次式:
【化10】

で表される基を表し、
12が、次式:
【化11】

(式中、
17は、2価の炭化水素基又はフェニレン基を表し、
18は、各々独立して、炭素原子数1ないし3のアルキル基又はフェニル基を表し、
pは、1ないし30の整数を表す。)
で表される基を表し、
13が、
【化12】

で、表されるジアミンからアミノ基を除いた2価の基を表し、及び
末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンの質量に基づき、式(4)で表される構造単位を5ないし15質量%、式(5)で表される構造単位を60ないし90質量%、及び式(6)で表される構造単位を1ないし10質量%の割合で(但し、これら3つの構造単
位の合計は100質量%である。)有するものである、硬化性組成物に関する。
また好ましくは、酸基含有のポリイミドシロキサンと末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンは、1:5ないし5:1のモル比で含有されているところの、硬化性組成物に関する。このうちより好ましくは、酸基含有のポリイミドシロキサンと前記末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンは、1:1のモル比で含有されているところの、硬化性組成物に関する。
また、さらに好ましい態様は、酸基含有のポリイミドシロキサンと末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンとの合計100質量部に対して、0.01ないし10質量部のメラミンを硬化剤としてさらに含むことを特徴とする、硬化性組成物に関する。
特に好ましい態様は、酸基含有のポリイミドシロキサンと末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンとの合計100質量部に対して、2ないし50質量部の平均粒径およそ2ないし20μmのタルクをさらに含むことを特徴とする、硬化性組成物に関する。
また本発明の別の態様は、上記の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る硬化性組成物は、酸基含有のポリイミドシロキサン及び末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンを含む構成のものである。而して、本発明の硬化性組成物は、溶剤に対して高い溶解性を示す。そして、該硬化性組成物から得られた硬化物は、優れた非反り性、硬度、耐熱性、耐溶剤性及び耐薬品性を併せ持つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明においては、2種のポリイミドシロキサン、即ち、酸基含有のポリイミドシロキサン及び末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンが併用される。かかる2種のポリイミドシロキサンを含む組成物を熱硬化することにより、酸基含有のポリイミドシロキサンの酸基と、末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンの末端エポキシ基とが互いに反応して架橋構造を形成して、優れた非反り性、硬度、耐熱性、耐溶剤性及び耐薬品性を併せ持つ硬化物を形成する。
より詳細には、酸基含有のポリイミドシロキサンは、その構造中に、上記式(1)で表される酸基を有するポリイミド構造単位、式(2)で表されるポリシロキサン基を有するポリイミド構造単位、及び式(3)で表される芳香族環を有するポリイミド構造単位を含有する。一方、末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンは、その構造中に、上記式(4)で表されるエポキシ基を構造の末端に有するポリイミド構造単位と、式(5)で表されるポリシロキサン基を有するポリイミド構造単位、及び(6)で表される芳香族環を有するポリイミド構造単位とを有する。
酸基含有のポリイミドシロキサンと末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンの混合比は、モル比で1:5ないし5:1である。このモル比率の範囲内において、本発明の所定の効果である、優れた非反り性、硬度、耐熱性、耐溶剤性及び耐薬品性を同時に得ることができる。このうち、これらの効果が最も顕著に優れているのは、酸基含有のポリイミドシロキサンと末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンの混合比が、モル比でおよそ1:1である。
【0007】
上記式で表される構造単位のうち、式(1)で表される酸基を有するポリイミド構造構造単位は、末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサン中のエポキシ基と架橋反応を起こし、網目構造のポリマーを形成することにより、硬化物の硬度及び耐薬品性を向上させる役割を果たす。また、式(2)及び(5)で表されるポリイミド構造単位は、主として硬化物の非反り性を高める機能を果たす。また、式(3)及び(6)で表されるポリイミド構造単位は、硬化物の柔軟性を高め、もって対象との密着性を高める役割を果たす。一方、式(4)で表されるポリイミド構造単位は、そのエポキシ基が酸基含有のポリイミドシロキサン中の酸基と架橋する。また、式(4)で表されるポリイミド構造単位中のエポキシ基自体は、その極性から、被覆物との密着性を高める役割をも果たす。
【0008】
式(1)ないし(6)で表される構造単位中の基R1、R2、R3、R7、R8及びR9は、テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の残基を表す。かようなテトラカルボン酸は例えば、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルエ−テルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ベンゼンジカルボン酸無水物)ヘキサフルオロプロパン、ピロメリット酸、1,4−ビス(3,4−ベンゼンジカルボン酸)ベンゼン、2,2−ビス〔4−(3,4−フェノキシジカルボン酸)フェニル〕プロパン、又はそれらの無水物や低級アルコ−ルのエステル化物が挙げられる。好ましくは、4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)及び2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)である。
【0009】
式(1)で表される酸基を有するポリイミド構造単位中、R4は酸基を有する芳香族ジ
アミンからアミノ基を除いた2価の残基を表す。かような酸基を有する芳香族ジアミンは例えば、3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノ安息香酸などのベンゼンカルボン酸類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシビフェニルなどのカルボキシビフェニル化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルメタン、2,2−ビス〔3−アミノ−4−カルボキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−アミノ−3−カルボキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−アミノ−4−カルボキシフェニル〕ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2、2’,5,5’−テトラカルボキシビフェニルなどのカルボキシジフェニルアルカン化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルエ−テルなどのカルボキシジフェニルエ−テル化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルスルホンなどのカルボキシジフェニルスルホン化合物類、2,2−ビス〔4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパンなどのビス(カルボキシフェノキシフェニル)アルカン化合物類、4,4’−ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)ビフェニルなどのビス(カルボキシフェノキシ)ビフェニル化合物類、2,2−ビス〔4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル〕スルホンなどのビス(カルボキシフェノキシフェニル)スルホン化合物類である。好ましくは、ビス(3−カルボキシ−4−アミノフェニル)メタン(MBAA)である。
式(1)で表される酸基を有するポリイミド構造単位中、酸基の数は、エポキシ基との架橋の度合にもよるが、おおむね1ないし4個である。
また本発明において、基R4は、酸基の代わりにヒドロキシル基を有する芳香族ジアミ
ンからアミノ基を除いた2価の残基であってもよい。かようなヒドロキシル基を有する芳香族ジアミンは例えば、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(HAB)又は2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BIS−AP−AF)である。
【0010】
末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンの式(4)で表される構造単位は例えば、テトラカルボン酸無水物と、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有する芳香族モノアミンとを重合し及びイミド化させ、さらに分子内に2個のエポキシ基を有する化合物を反応
させることによって形成される。ここで基R10及びR11は、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有する芳香族モノアミン及び分子内に2個のエポキシ基を有する化合物にそれぞれ対応する。またイミド化の反応において、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有する芳香族モノアミンは末端停止剤として作用し、芳香族モノアミンのアミノ基が反応する一方で、反応に関与しなかったヒドロキシル基又はカルボキシル基が分子末端となって反応が停止する。そしてその後さらに、その末端のヒドロキシル基又はカルボキシル基が分子内に2個のエポキシ基を有する化合物と反応して、末端にエポキシ基を有する式(4)で表される構造単位が形成する。
分子内に2個のエポキシ基を有する化合物としては例えば、RE−305及びNC−3000(商品名;日本化薬社製)、エピコート825又はYX4000(商品名;ジャパン エポキシ レジン社製)などのビフェノール系エポキシ樹脂が挙げられる。また、ヒドロキシル基を有するモノアミンとしては例えば、アミノフェノールが挙げられ、カルボキシル基を有するモノアミンとしては例えば、アミノ安息香酸が挙げられる。
【0011】
また、式(2)及び(5)で表される構造単位中のそれぞれの基R5及びR12は、ポリ
シロキサン基を有するジアミンからアミノ基を除いた2価の残基を表す。本発明に適するポリシロキサン基を有するジアミンとしては例えば、α,ω−ビス(2−アミノエチル)
ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサ
ン、α,ω−ビス(4−アミノフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジフェニルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノブチル)ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。好ましくは、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(商品名:KF−8010;信越化学工業社製)が挙げられる。
【0012】
また、式(3)及び(6)で表される構造単位中のそれぞれの基R6及びR13は、芳香
族ジアミンからアミノ基を除いた2価の残基を表す。本発明に適する芳香族ジアミンは例えば、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2,5−ジハロゲノベンゼンなどのベンゼン1個を含むジアミン類、ビス(4−アミノフェニル)エ−テル、ビス(3−アミノフェニル)エ−テル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、ビス(3−アミノフェニル)メタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、o−ジアニシジン、o−トリジン、トリジンスルホン酸類などのベンゼン2個を含むジアミン類、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼンなどのベンゼン3個を含むジアミン類、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4’−(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、5,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセンなどのベンゼン4個以上を含むジアミン類などのジアミン化合物が挙げられる。好ましくは、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)が挙げられる。また、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノドデカンなど脂肪族ジアミン化合物を上記ジアミンと共に使用することができる。
【0013】
本発明においては、酸基含有のポリイミドシロキサンの質量に基づき、式(1)で表さ
れる構造単位を5ないし20質量%、式(2)で表される構造単位を60ないし90質量%、及び式(3)で表される構造単位を2ないし10質量%の割合で(但し、これら3つの構造単位の合計は100質量%である。)含有し、並びに、末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンの質量に基づき、式(4)で表される構造単位を5ないし15質量%、式(5)で表される構造単位を60ないし90質量%、及び式(6)で表される構造単位を1ないし10質量%の割合で(但し、これら3つの構造単位の合計は100質量%である。)含有する硬化性組成物が、硬化物の非反り性、柔軟性及び密着性の点で、最もバランスがとれている。
【0014】
さらにまた、本発明の硬化性組成物は好ましくは、硬化剤としてメラミンをさらに含む。メラミンを含むことにより、硬化性組成物の熱硬化において、酸基含有のポリイミドシロキサンと末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンとの架橋反応に加えて、メラミンの熱架橋反応が起きて、2種のポリイミドシロキサンをさらに強く結合させるため、硬化物の機械的機特性がより向上するという利点を有する。本発明の硬化性組成物は、酸基含有のポリイミドシロキサンと末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンとの合計100質量部に対して、0.01ないし10質量部のメラミンを含む。
【0015】
さらにまた、本発明の硬化性組成物は好ましくは、酸基含有のポリイミドシロキサンと末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンとの合計100質量部に対して、2ないし50質量部の平均粒径およそ2ないし20μmのタルクをさらに含み得る。より好ましくは、平均粒径およそ5ないし15μmのタルクを含み得る。また好ましくは本発明で用いられるタルクは、10μm以下の粒度分布が50%以上及び20μm以上の粒度分布が10%以下のものである。タルクの平均粒径は、例えば遠心沈降法によって求めることができる。
【0016】
本発明の硬化性組成物において、酸基含有のポリイミドシロキサンは、例えば以下記載するように製造され得る:
(1)テトラカルボン酸無水物、酸基を有するジアミン、ポリシロキサン基を有するジアミン及び芳香族ジアミンを、溶媒中で連続的に15〜250℃で重合及びイミド化させて、酸基含有のポリイミドシロキサンを得る方法。
(2)各成分を分けて、例えば、まずテトラカルボン酸無水物と酸基を有するジアミンとを溶媒中で重合及びイミド化させて得たオリゴマーに、テトラカルボン酸無水物とポリシロキサン基を有するジアミンとを溶媒中で重合及びイミド化させて得たオリゴマー、並びに、テトラカルボン酸無水物と芳香族ジアミンとを溶媒中で重合及びイミド化させて得たオリゴマーを、15〜60℃で反応させて、さらに130〜250℃に昇温して、酸基含有のポリイミドシロキサンを得る方法。
一方、末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンは、上記(1)及び(2)に記載の方法において、酸基を有するジアミンに代えて、分子内に2個のエポキシ基とヒドロキシル基又はカルボキシル基を有する芳香族モノアミンとを反応させる他は同様にして製造され得る。
【0017】
上記の酸基含有のポリイキドシロキサン及び末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンを製造する際に使用される溶媒としては例えば、アミド系溶媒、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2− ピロリドンなど、硫黄原子を含有する溶
媒、例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ヘキサメチルスルホルアミドなど,フェノール系溶媒、例えばクレゾール、フェノール、キシレノールなど、ジグライム系溶媒例えばジエチレングリコール ジメチル
エーテル(ジグライム)、トリエチレングリコール ジメチルエーテル(トリグライム)
、テトラグライムなど、酸素原子を分子内に有する溶媒、例えばアセトン、メタノール、
エタノール、エチレングリコール、ジオキサン、テトラヒドロフランなど,その他ピリジン、テトラメチル尿素などを挙げることができる。また必要に応じてベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒やソルベントナフサ、ベンゾニトリルなど他の有機溶媒を併用してもよい。
【0018】
本発明の酸基含有のポリイミドシロキサン及び末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンを含む硬化性組成物の硬化物は例えば、被覆すべき対象(フレキシブル回路板、半導体等)に、常温又は加温下で、回転塗布機、ロールコータ又は印刷機などを使用する塗布方法で均一な厚さに塗布し、80℃ないし110℃にておよそ10ないし30分間プリベークした後、およそ110℃以上で、好ましくは130ないし160℃の温度でおよそ20ないし60分間硬化させることにより得られる。
【0019】
以下、本発明を実施例により具合的に説明するが、それにより本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0020】
酸基含有のポリイミドシロキサンの合成
合成例1−1:
容量300mLのフラスコに4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)31.02g(100ミリモル)、N−メチル−2−ピロリドン39gを仕込み、撹拌して溶解した後に、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(信越化学工業社製;商品名:KF−8010)を53.30g(65ミリモル)注入して窒素雰囲気下、室温で1時間撹拌後、185℃にて加熱して3時間重合した。次いでこの反応液を室温に戻して、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)4.10g(10ミリモル)とビス(3−カルボキシ4−アミノフェニル)メタン(MBAA)7.16g(25ミリモル)を添加して4時間反応させて、酸基含有のポリイミドシロキサン1102を得た。
合成例1−2:
合成例1−1において、BAPPの代わりにBAPSを用いた他は同様にして、酸基含有のポリイミドシロキサン1103を得た。
合成例1−3:
合成例1−1において、BAPPの代わりにDADEを用いた他は同様にして、酸基含有のポリイミドシロキサン1104を得た。
合成例1−4:
合成例1−3において、MBAAの代わりにHABを用いた他は同様にして、酸基含有のポリイミドシロキサン2051を得た。
合成例1−5:
合成例1−4において、ポリジメチルシロキサン70ミリモル、HAB15ミリモル、及びDADE15ミリモルを用いた他は同様にして、酸基含有のポリイミドシロキサン1105を得た。
合成例1−6:
合成例1−5において、HABの代わりにMBAAを用いた他は同様にして、酸基含有のポリイミドシロキサン2180を得た。
上記合成例でそれぞれ得られたポリイミドシロキサンの官能基を下記表1に示す。
【表1】

【0021】
末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンの合成
合成例2−1:
容量300mLのフラスコに4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)24.82g(80ミリモル)、N−メチル−2−ピロリドン63gを仕込み、撹拌して溶解後にα,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(信越化学工業社製;商品名:KF−8010)45.92g(56ミリモル)を注入して窒素雰囲気下、室温で1時間撹拌後、185℃に加熱して3時間重合した。次いでこの反応液を室温に戻して2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(和歌山化学工業社製;商品名:BAPP)2.46g(6ミリモル)とm−アミノフェノール3.93g(18×2ミリモル)を添加撹拌後、185℃にて3時間重合した。次いでこの反応液を90℃に下げてRE−305(商品名;ビスフェノール系エポキシ樹脂;日本化薬社製)の70%N−メチルピロリドン溶液9.87gと2−エチル−4−メチルイミダゾール1.5gを添加して3時間撹拌して末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサン1001Eを得た。合成例2−2:
合成例2−1において、RE−305の代わりにNC−3000(商品名;ビスフェノール系エポキシ樹脂;日本化薬社製)を用いた他は同様にして、末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサン2167Eを得た。
合成例2−3:
合成例2−1において、BAPPの代わりに4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)を用いた他は同様にして、末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサン1002Eを得た。
合成例2−4:
合成例2−3において、ODPAの代わりに、ODPA80ミリモルと2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)20ミリモルの割合の混合物、ポリジメチルシロキサン70ミリモル、BAPP7.5ミリモル及びm−アミノフェノール(22.5×2ミリモル)を用いた他は同様にして、末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサン1003Eを得た。
合成例2−5:
合成例2−4において、ODPAとBPDAの混合物の代わりにODPA100ミリモル、BAPPの代わりにDADE、及びRE−305の代わりにNC−3000を用いた他は同様にして、末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサン2181Eを得た。
合成例2−6:
合成例2−5において、DADEの代わりにBAPSを用いた他は同様にして、末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサン1004Eを得た。
上記合成例でそれぞれ得られたポリイミドシロキサンの官能基を下記表2に示す。
【表2】

【0022】
実施例1ないし26
上記合成例で得られた酸基含有のポリイミドシロキサン及び末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンを、下記表に示す配合で混合して硬化性組成物を調製し、これら硬化性組成物から得た硬化物をそれぞれ実施例1ないし26とした。硬化性組成物の組成は下記表3のとおりである(表中、PIはポリイミドシロキサンの略称を示す。)。
【表3】

【表4】

【表5】

B34:無機充填材;硫酸バリウム;堺化学工業(株)
アエロジル200:チキソトロピー剤;日本アエロジル(株)
スタフィロイド:高分子充填材;ガンツ化成
LMP100:無機充填材(タルク:平均粒径およそ11μm);富士タルク工業
PF777:チキソトロピー剤(シリチン);独ホフマンミネラル社
イミダゾール:硬化促進剤;キュアゾール2E4MZ;四国化成工業
TSA-750s:消泡剤(シリコーン);モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ ジャパン合同会社
【0023】
次に、上記実施例1ないし26並びに比較例1ないし3の硬化物の反り、硬度、耐溶剤性、耐薬品性及び耐熱性について、以下の試験例に従い試験を行った。
試験例1:反りに関する試験
ガラエポ基板に市販のポリイミドフィルムを四方からセロハンテープで貼り付けた。ポリイミドフィルム上から25mmになるポリイミドフィルムのスペーサーを使用して実施例1ないし26並びに比較例1ないし3の硬化性組成物をスキージし、80℃にて30分間熱乾燥して、硬化物を得た。次に、硬化物の周りのセロハンテープを剥がし、該硬化物フィルムを改めて別のガラエポ基板に耐熱テープで四方から貼り付けて160℃にて60分間、加熱乾燥後、耐熱テープを剥離し、ポリイミドシロキサンをコートしたフィルムを50mm×50mmの正方形に切り出して卓上での硬化物フィルムの反り具合を評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:卓上に密着して反りが見られない。
△:卓上より1〜2mmの反りが見られる
×:卓上より2mm以上の大きな反りが見られる
【0024】
試験例2:硬化物の硬度に関する試験
上記実施例1ないし26並びに比較例1ないし3の硬化性組成物を硬化後、それぞれ形成した硬化物について、JIS 5600−5−4に従う引っかき硬度(鉛筆法)試験に従い硬度の測定を行った。
硬度の評価基準は以下のとおりである。
6B、5B、4B、3B、2B、B、HB、F、H、2H、3H、4H、5H、6H
このうち、評価6Bが最も硬度が低く、評価6Hに向かうに従い硬度が高くなり、評価6Hが最も硬度が高い。
また、テープピール及びクロスカットについても評価した。その評価基準は以下のとおりである。
○:硬化膜の剥がれが全く見られない。
△:硬化膜の剥がれが若干見られる。
×:硬化膜の剥がれが多く見られる。
【0025】
試験例3:硬化物の耐溶剤性
実施例1ないし26並びに比較例1ないし3の硬化性組成物を厚さ75μmとなるように硬化させ硬化物を得た後、該硬化物の0.5gを20℃に調節した酢酸エチル100mLに30分間浸漬した。続いて、該硬化物を酢酸エチルから引き上げ、室温にて1時間乾燥させた後、該硬化物の質量を測定し、残存割合、即ち浸漬前の硬化物の質量に対する浸漬後の該硬化物の質量の割合(%)を求めた。該割合(%)の数値が大きいほど、酢酸エチルに対して耐溶剤性が高いことを意味する。なお、酢酸エチルに代えて、イソプロピルアルコール(IPA)及びアセトンに対してもそれぞれ同様に、硬化物の耐溶剤性を試験した。耐溶剤性の評価基準は以下のとおりである。
○:残存割合(%)が80%以上
△:残存割合(%)が50%以上80%未満
×:残存割合(%)が50%未満
【0026】
試験例4:耐薬品性に関する試験
[金メッキ性の測定方法]
銅張基板をクレインザーブラッシング処理後、1.8mmないし4.5mmの穴径を有するパターンを、160メッシュのテトロンスクリーン版を用い実施例1ないし26並びに比較例1ないし3の硬化性組成物を印刷した。そして、80℃にて30分間、160℃にて60分間加熱乾燥して、硬化膜を形成した後、銅張基板の表面を脱脂剤(奥野製薬工業社製:IPCクリーンHAC)で処理し、過硫酸アンモニウム、濃硫酸の混合液にてソフトエッチングした。さらに濃硫酸にてスマット除去後、塩酸にてプリディップし、銅表面を活性化(奥野製薬工業社製:1cpアクセラ)して、無電解ニッケルメッキを打った。そして、水洗して濃硫酸により酸活性後フラッシュゴールド2000を用い無電解金メッキを行った。水洗、乾燥後、硬化膜の硬度、テープピール及びクロスカットについて評価した。評価基準は、上記試験例2と同様である。
【0027】
試験例5:耐熱性に関する試験
[はんだ耐熱性の測定方法]
銅張基板をクレインザーでブラッシングして、水洗、洗浄後、乾燥させた後、1.8mmから4.5mm径のドットを有する160メッシュのテトロンスクリーンを開いて、実施例1ないし26並びに比較例1ないし3の硬化性組成物をインクにて印刷し、80℃にて30分、160℃で60分加熱乾燥して、硬化膜を形成した。そして、この硬化膜を形成した銅張基板上にロジン系フラックス(サンワ化学工業社製:FF−650)を塗布した後、260℃の溶融はんだ浴に10秒3回接触させ、硬化膜のふくれ及び剥離を観察し、以下の評価基準に従い評価した。
○:硬化膜にふくれ又は剥離が全く見られない。
△:硬化膜にふくれ又は剥離が若干見られる。
×:硬化膜にふくれ又は剥離が多く見られる。
【0028】
試験例1ないし試験例5の結果を、下記表4に記載する。
【表6】

【表7】

上記表4に記載の試験結果から、酸基含有のポリイミドシロキサンとエポキシ樹脂を含む硬化性組成物から得られた硬化物(比較例1)は、硬化膜の硬度が2Hである反面、反りが著しく生じたことが判った。また、酸基含有のポリイミドシロキサンを含む硬化性組成物から得られた硬化物(比較例2及び3)は、耐溶剤性及び耐熱性の面で不満足な結果となった。これに対し、酸基含有のポリイミドシロキサン及び末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンを含む本発明の硬化性組成物から得られた硬化物(実施例1ないし26)は、硬化膜の硬度が維持されるとともに、反りが効果的に防止された。なお且つ、実施例1ないし26の硬化物は、優れた耐溶剤性、耐薬品性及び耐熱性を併せ持つことが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸基含有のポリイミドシロキサン及び末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンを含む硬化性組成物。
【請求項2】
前記酸基含有のポリイミドシロキサンは、その構造中に、以下の式(1)、(2)及び(3)で表される構造単位:
【化1】

(式(1)、(2)及び(3)中、
1、R2及びR3は各々、テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の残基を
表し、
4は、酸基を有する芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の残基を表し、
5は、ポリシロキサン基を有するジアミンからアミノ基を除いた2価の残基を表し、
6は、芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の残基を表す。)を、
酸基含有のポリイミドシロキサンの質量に基づき、式(1)で表される構造単位を5ないし20質量%、式(2)で表される構造単位を60ないし90質量%、及び式(3)で表される構造単位を2ないし10質量%の割合で(但し、これら3つの構造単位の合計は100質量%である。)
有するものであり、並びに、
前記末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンは、その構造中に、以下の式(4)、(5)及び(6)で表される構造単位:
【化2】

(式中、
7、R8及びR9は各々、テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の残基を
表し、
10は、2価の芳香族基を表し、
11は、末端エポキシ基を含有した有機基を表し、
12は、ポリシロキサン基を有するジアミンからアミノ基を除いた2価の残基を表し、
13は、芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の残基を表す。)を、
末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンの質量に基づき、式(4)で表される構造単位を5ないし15質量%、式(5)で表される構造単位を60ないし90質量%、及び式(6)で表される構造単位を1ないし10質量%の割合で(但し、これら3つの構造単位の合計は100質量%である。)有するものである、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記酸基含有のポリイミドシロキサンは、式(1)、(2)及び(3)中、
基R1、R2及びR3のうち少なくとも1つが式
【化3】

で表される基を表し、
基R4が、次式:
【化4】

[式中、
14は、カルボキシル基を表し、
1及びr2は、1又は2の整数を表し、r3は、0ないし3の整数を表し、
Xは、
【化5】

(式中、R15及びR16は、水素原子又は炭素原子数1ないし10のアルキル基を表す。)で表される基を表す。]
で表される基を表し、
基R5が次式:
【化6】

(式中、
17は、2価の炭化水素基又はフェニレン基を表し、
18は、各々独立して、炭素原子数1ないし3のアルキル基又はフェニル基を表し、
pは、1ないし30の整数を表す。)
で表される基を表し、
基R6が、式
【化7】

で表されるジアミンからアミノ基を除いた2価の基を表し、及び
酸基含有のポリイミドシロキサンの質量に基づき、式(1)で表される構造単位を5ないし20質量%、式(2)で表される構造単位を60ないし90質量%、及び式(3)で
表される構造単位を2ないし10質量%の割合で(但し、これら3つの構造単位の合計は100質量%である。)有するものである、請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンは、
式(4)、(5)及び(6)中、
基R7、R8及びR9のうちの少なくとも1つが、次式:
【化8】

で表される基を表し、
基R10が、次式:
【化9】

で表される基を表し、
基R11が、次式:
【化10】

で表される基を表し、
12が、次式:
【化11】

(式中、
17は、2価の炭化水素基又はフェニレン基を表し、
18は、各々独立して、炭素原子数1ないし3のアルキル基又はフェニル基を表し、
pは、1ないし30の整数を表す。)
で表される基を表し、
13が、
【化12】

で、表されるジアミンからアミノ基を除いた2価の基を表し、及び
末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンの質量に基づき、式(4)で表される構造単位を5ないし15質量%、式(5)で表される構造単位を60ないし90質量%、及び
式(6)で表される構造単位を1ないし10質量%の割合で(但し、これら3つの構造単位の合計は100質量%である。)有するものである、請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記酸基含有のポリイミドシロキサンと前記末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンは、1:5ないし5:1のモル比で含有されているものである、請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記酸基含有のポリイミドシロキサンと前記末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンは、1:1のモル比で含有されているものである、請求項5に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
酸基含有のポリイミドシロキサンと末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンとの合計100質量部に対して、0.01ないし10質量部のメラミンを硬化剤としてさらに含むことを特徴とする、請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
酸基含有のポリイミドシロキサンと末端エポキシ基含有のポリイミドシロキサンとの合計100質量部に対して、2ないし50質量部の平均粒径およそ2ないし20μmのタルクをさらに含むことを特徴とする、請求項1ないし7のうちいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1ないし8のうちいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。


【公開番号】特開2009−167260(P2009−167260A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5014(P2008−5014)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(507285968)サンワ化学工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】