説明

ポリイミドフィルム

【課題】透明性が優秀でありながらも耐熱性がすぐれて透明導電性フィルム、TFT基板、フレキシブル印刷回路基板などに有用なポリイミドフィルムを提供する。
【解決手段】ジアミン類と酸二無水物類を重合して得られるポリアミド酸のイミド化物を除膜して得られて、次の式(1)によって決定される絶対分子量が10×104g/mol以下であるポリイミドの含量がフィルム重量を基準に70.0%以下であるポリイミドフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無色透明で耐熱性が優秀なポリイミドフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、不溶かつ不融の超高耐熱性樹脂で、耐熱酸化性、耐熱特性、耐放射線性、低温特性、耐薬品性などが優秀な特性を有している。ポリイミド樹脂は、自動車材料、航空素材、宇宙船素材などの耐熱先端素材、及び絶縁コーティング剤、絶縁膜、半導体、TFT-LCDの電極保護膜や電子材料など、広範囲な分野に使用されている。また、最近は、光繊維や液晶配向膜のような表示材料、フィルム内に導電性フィラーを含むか、または表面にコーティングされる透明電極フィルムなどにも利用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、一般的なポリイミド樹脂は、高い芳香族環の密度によって茶色または黄色に着色されているので、可視光線領域での透過度(光透過率)が低く、透明性が要求される分野に使用するのに困難な点があった。
これまでに、ポリイミドフィルムの色相及び透過度改善を目的とする多様な努力がなされているが、フィルムの色相及び透過度が改善されても、耐熱性が低下する傾向が見られる。また、ポリイミドフィルムが適用される多様な電気、電子材料用途では機能の多様化に伴って、高い耐熱性を有する透明フィルムの提供も求められている。
【0004】
本発明は、透明性及び耐熱性を満足するポリイミドフィルムを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一具現例では、ジアミン類と酸二無水物類を重合して得られるポリアミド酸のイミド化物を除膜して得られて、下記の式(1)によって決定される絶対分子量が10×10以下であるポリイミドの含量がフィルム重量を基準に70%以下であるポリイミドフィルムを提供する。
工程性の側面で望ましくは、絶対分子量が10×10g/mol以下であるポリイミドの含量は、フィルム重量を基準に0.03%以上である。
【0006】
本発明の一具現例によるポリイミドフィルムにおいて、式(1)によって決定される絶対分子量(Mw)は、30,000乃至170,000g/molであってもよい。
【0007】
【数1】

【0008】
前記式は、物質が光(light)との相互作用によって電荷の偏極化を起こして、これによって振動電荷らが光を放射状にまき散らす現象において、物質の偏極度(polarizability)によって電荷の移動量及び光の放射量が変わる原理を利用して、任意の高分子及び溶媒を含む溶液にレーザー光を照射して測定される散乱された光の量及び角変動(angular variation)から高分子のモル質量(molar mass)及び大きさを決定する原理によって導出されるものである。
【0009】
式中、
θは、過剰レイリー比(the excess Rayleigh ratio)であり、
*=4π(dn/dc)λ-4-1であり、ここで、nは溶媒の屈折率、Nはアボガドロ数(Avogadro's number)、 dn/dc は特異的屈折率の増分であり、ポリイミドフィルムを有機溶媒中の希薄溶液状態で微分屈折計(differential refractometer)のフローセル内に注入して屈折率を検出した時、希薄溶液濃度の変化率による屈折率の変化率値を微分した値で、濃度変化区間0.001乃至0.1g/ml範囲で測定した値であり、
cは溶液中の高分子濃度(g/ml)であり、
Mは、モル質量(molar mass)で、多分散試料の場合重量平均分子量(Mw)であり、
は2次ビリアル係数(the second virial coefficient)であり、
P(θ)=Rθ/Rである。
【0010】
本発明の一具現例によるポリイミドフィルムにおいて、次のように定義される特異的屈折率増分(dn/dc)は、0.100乃至0.1800であってもよい。
特異的屈折率増分(dn/dc)は、ポリイミドフィルムを有機溶媒中の希薄溶液状態で微分屈折計(differential refractometer)のフローセル内に注入して屈折率を検出した時、希薄溶液濃度の変化率による屈折率の変化率値を微分した値で、濃度変化区間0.001乃至0.1g/ml範囲で測定した値である。
【0011】
より望ましくは、特異的屈折率増分(dn/dc)は、0.100乃至0.1300であることができる。
本発明の一具現例によるポリイミドフィルムにおいて、酸二無水物類は2、2-ビス(3、4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物を含むことであることができるし、望ましくは2、2-ビス(3、4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物を酸二無水物類のうちで30モル%乃至100モル%で含むものであることができる。
【0012】
本発明の一具現例によるポリイミドフィルムにおいて、ジアミン類は2、2’-ビス(トリフルオロメチル)-4、4’-ジアミノビフェニルを含むことであることができるし、望ましくは2、2’-ビス(トリフルオロメチル)-4、4’-ジアミノビフェニルをジアミン類のうちで20モル%乃至100モル%で含むことであることができる。
本発明の一具現例によるポリイミドフィルムは、フィルム厚さ50〜100μmを基準に黄色度が3.5以下のものであることができる。
【0013】
本発明の一具現例によるポリイミドフィルムは、また、フィルム厚さ50〜100μmを基準に熱機械分析法によって50乃至250℃範囲で測定した平均線膨脹係数(CTE)が70ppm/℃以下のものであることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一具現例によるポリイミドフィルムは、透明性が優秀でありながらも耐熱性にすぐれており、熱応力による寸法変化が少なく、透明導電性フィルム、TFT基板、フレキシブル印刷回路基板などに有用であるものとして期待される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1から得られるフィルムに対して分離重量分画を測定したグラフである。
【図2】図1の分離重量分画から得られる累積重量分画グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をさらに詳しく説明すれば次のようである。
本発明の一具現例によるポリイミドフィルムは、透明性を確保しながら耐熱性を満足させるものであって、ジアミン類と酸二無水物類を重合して得られるポリアミド酸のイミド化物を除膜して得られるものであり、次の式(1)によって決定される絶対分子量が10×10g/mol以下であるポリイミドの含量が、フィルム重量を基準として70%以下のものであることができる。
【0017】
【数2】

【0018】
前記式は、物質が光(light)との相互作用によって電荷の偏極化を起こして、これによって振動電荷らが光を放射状にまき散らす現象において、物質の偏極度(polarizability)によって電荷の移動量及び光の放射量が変わる原理を利用して、任意の高分子及び溶媒を含む溶液にレーザー光を照射して測定される散乱された光の量及び角変動(angular variation)から高分子のモル質量(molar mass)及び大きさを決定する原理によって導出されるものであり、
θは、過剰レイリー比(the excess Rayleigh ratio)であり、
*=4π(dn/dc)λ-4-1であり、ここで、nは溶媒の屈折率、Nはアボガドロ数(Avogadro's number)、 dn/dc は特異的屈折率の増分であり、ポリイミドフィルムを有機溶媒中の希薄溶液状態で微分屈折計(differential refractometer)のフローセル内に注入して屈折率を検出した時、希薄溶液濃度の変化率による屈折率の変化率値を微分した値で、濃度変化区間0.001乃至0.1g/ml範囲で測定した値であり、
cは溶液中の高分子濃度(g/ml)であり、
Mは、モル質量(molar mass)で、多分散試料の場合重量平均分子量(Mw)であり、
は2次ビリアル係数(the second virial coefficient)であり、
P(θ)=Rθ/Rである。
【0019】
高分子の分子量測定において、絶対分子量を測定する方法の一例で、高分子溶液で光散乱(Light scattering)を利用して絶対分子量を測定する方法を挙げることができる。
高分子溶液で高分子鎖によって光散乱が起こるが、これは高分子のコイルの大きさが光の波長より小さいか、または似ているためであり、また高分子鎖らが入射される光の電場によって分極されるためである。散乱の程度は散乱を起こす物質の量に比例しないで、同一な量の散乱体がある場合、大きい粒子による散乱が小さな粒子による散乱より非常に強い。したがって、光の散乱程度は粒子の大きさによって影響を受けるので、光散乱程度を利用すれば高分子の分子量に関する情報を得ることができる。また、溶媒の屈折率がその溶媒に溶解された高分子の屈折率と相異な希薄高分子溶液に光が通過する時、光は高分子と溶媒の屈折率差に加えて溶解された高分子の大きさと濃度に依存する強度によって散乱されるであろう。高分子溶液が十分な希薄溶液なら散乱された光の強度は、溶液中によく分離されたそれぞれの高分子コイルらによって発生する散乱寄与度の和として現われるであろう。溶解された高分子コイルの大きさが光の波長より相当に小さければ、それらが等方性であるか、あるいはすべての方向に同一な偏極性を有するようになれば、任意の方向で各高分子コイルによって散乱される光の強度は、散乱された光波動ベクター大きさの二乗に比例するためである。
【0020】
本発明において、絶対分子量はこのような原理によって測定されることができるし、特定絶対分子量値を有するポリイミド分画比を算出することもこれを利用して可能である。
ポリイミドフィルムの分子量プロファイルは、ゲル透過クロマトグラフィーで得られることができる。
%で示す“分離重量分画(differential weight fraction)”の価格はモル質量分画のパーセント頻度を示すものであり、前記のような原理の検出器を利用して具体的にフィルムを構成するポリイミドの分子量分画比を測定することができる。
【0021】
一例で図1には、本発明の一具現例によって得られるフィルムに対する分離重量分画検出結果グラフを示したが、これを累積重量分画データに変換するようになれば、図2のような累積グラフを得ることができる。
図2の累積グラフから絶対分子量が10×10g/mol以下である分子量の総分画割合は60.1%程度であることを確認することができる。
【0022】
このような原理から得られるポリイミドフィルムを構成するポリイミドの分子量において、絶対分子量が10×10g/mol以下である分子量の分画割合が70.0%以下である場合、耐熱性や透過性を満足しながら黄色度が優秀である。
仮に、ポリイミドフィルムを構成するポリイミドの分子量において、絶対分子量が10×10g/mol以下である分子量の分画割合が70.0%より大きくなるようになれば、透過度には大きい影響を及ぼさないが黄色度が高くなる。
【0023】
ポリイミドフィルムを構成するポリイミドの分子量において、絶対分子量が10×10g/mol以下である分子量の分画割合が70.0%より少ない場合なら透明性及び熱的特性を有意的に変化しないのに黄色度が漸進的に向上する。
しかし、絶対分子量が10×10g/mol以下である分子量の分画割合がすぎるほど大きくなる場合は除膜特性を阻害することができるので、望ましくは、絶対分子量が10×10g/mol以下である分子量の分画割合が、少なくとも0.03%であることが望ましいことがある。言い換えれば、絶対分子量が10×10g/mol以下である分子量の分画割合がすぎるほど大きくなる場合は、全体的に高分子鎖が長いものなどがたくさん存在するようになるので、粘度が上昇するようになって除膜工程上不利なことがあって、絶対分子量が10×10g/mol以下である分子量の分画割合が少なくとも0.03%であることが望ましいことがある
一方、このような光の散乱による分子量情報を算出するにおいて、先行されなければならないことは、各高分子が有する濃度による屈折率値の常数を決定するものであり、濃度による屈折率値の常数はポリイミド前具体重合時に使用される酸二無水物類を構成する単量体のモル比と係わる値で、物質が有する固有な値に該当する。
【0024】
しかし、一般的にポリイミド粉末またはポリイミドフィルムの場合、試料を有機溶媒に溶解させることで目的とする濃度の試料を準備することは難しく、また屈折率を測定することも難しい。これは芳香族環が多量存在することにより高分子溶液化が難しいためであろう。芳香族環が多量存在する場合有色を帯びるようになる。
このような点で本発明の一具現例で提供する特異的屈折率増分(dn/dc)が0.100乃至0.1800であるポリイミドフィルムの場合、透明性が優秀でありながら耐熱性が優秀である。さらに望ましくは、特異的屈折率の増分(dn/dc)が0.100乃至0.1300であるポリイミドフィルムであることが透明性及び耐熱性の側面で望ましいことがある。
【0025】
一方、本発明が一具現例によるポリイミドフィルムは、次の式(1)によって決定される絶対分子量が30,000乃至170,000g/molであることができる。
【0026】
【数3】

【0027】
前記式は、物質が光(light)との相互作用によって電荷の偏極化を起こして、これによって振動電荷らが光を放射状にまき散らす現象において、物質の偏極度(polarizability)によって電荷の移動量及び光の放射量が変わる原理を利用して、任意の高分子及び溶媒を含む溶液にレーザー光を照射して測定される散乱された光の量及び角変動(angular variation)から高分子のモル質量(molar mass)及び大きさを決定する原理によって導出されることで、
θは、過剰レイリー比(the excess Rayleigh ratio)であり、
*=4π(dn/dc)λ-4-1で、ここでnは溶媒の屈折率、Nはアボガドロ数(Avogadro's number)、Dn/dcは特異的屈折率の増分であり、ポリイミドフィルムを有機溶媒中の希薄溶液状態で微分屈折計(differential refractometer)のフローセル内に注入して屈折率を検出した時、希薄溶液濃度の変化率による屈折率の変化率値を微分した値で、濃度変化区間0.001乃至0.1g/ml範囲で測定した値であり、
cは、溶液中の高分子濃度(g/ml)であり、
Mは、モル質量(molar mass)で、多分散試料の場合重量平均分子量(Mw)であり、
は2次ビリアル係数(the second virial coefficient)であり、
P(θ)=Rθ/Rである。
【0028】
前述したもののように一般的に、ポリイミドフィルムの場合光散乱によって絶対分子量を測定しにくいところ、これは芳香族環が多量存在することにより高分子溶液化が難しいためであるとするであろう。芳香族環が多量存在する場合ポリイミドフィルムは有色を帯びるようになる。
このような点で本発明の一具現例で提供するMALSによって得られる絶対分子量(Mw)が30,000乃至170,000g/molであるポリイミドフィルムの場合透明性が優秀でありながら耐熱性が優秀である。
【0029】
前記のような分離重量分画、特異的屈折率増分(dn/dc)及び絶対分子量値を得る装置の一例として、Wyatt社から出るMALS(Multi Angle Light Scattering)システムがある。これを通じて分析しようとする試料の重量平均分子量と大きさ、分子量分布などその他のさまざまなデータらを得ることができる。
前記のような絶対分子量の分離重量分画の割合を満足するポリイミドフィルムを得る方法の一例としては、単量体の選別、単量体含量の制御、重合順序及び重合方法などによって変わることができるし、またポリイミド粉末を得るための沈澱方法によっても変わることができる。
【0030】
一例で、本発明の一具現例によるポリイミドフィルムは、酸二無水物とジアミンの重合によってポリアミド酸を得て、これをイミド化した粉末を除膜して得られることができる。
透明性を考慮する時、酸二無水物は2、2-ビス(3、4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6-FDA)を含むことが望ましい。その外に4-(2、5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1、2、3、4-テトラヒドロナフタレン-1、2-ジカルボン酸二無水物(TDA)及び4、4’-(4、4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)(HBDA)のうちから選ばれた1種以上をさらに含むことができる。耐熱性を考慮する時さらに望ましくは、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及びオキシジフタール酸ジアンヒドリド(ODPA)のうちから選択された1種以上をさらに併用することが望ましいことがある。
【0031】
酸二無水物のうちで6-FDAの使用量は、30乃至100モル%であるものが透明性を発現しながら耐熱性などその他の物性を阻害しない側面で望ましいことがある。
一方、ジアミンの例としては、2、2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-フェニル]プロパン(6HMDA)、2、2’-ビス(トリフルオロメチル)-4、4’-ジアミノビフェニル(2、2’-TFDB)、3、3’-ビス(トリフルオロメチル)-4、4’-ジアミノビフェニル(3、3’-TFDB)、4、4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン(DBSDA)、ビス(3-アミノフェニル)スルホン(3DDS)、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(4DDS)、1、3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-133)、1、4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-134)、2、2’-ビス[3(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(3-BDAF)、2、2’-ビス[4(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(4-BDAF)、2、2’-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(3、3’-6F)、2、2’-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(4、4’-6F)及びオキシジアニリン(ODA)のうちから選ばれた1種以上を有することができるし、側鎖による適切な自由体積確保の側面で望ましくは、2、2'-TFDBをジアミンのうちで含むことであることができる。
【0032】
さらに望ましくは、2、2'-TFDBを全体ジアミンのうちで20乃至100モル%で含むことが側鎖による自由体積確保を通じた透明性の維持側面で望ましいことがある。
以上の酸二無水物の成分とジアミン成分は、等モル量になるようにして、溶媒中に溶解して反応させてポリアミド酸溶液を製造する。
反応時の条件は特に限定されないが、反応温度は-20〜80℃が望ましくて、重合時間は1乃至24時間、望ましくは8乃至12時間が望ましい。また、反応時アルゴンや窒素などの不活性雰囲気であることがより望ましい。
【0033】
前記した単量体らの溶液重合反応のための溶媒(以下、第1溶媒と言う)の一例としては、ポリアミド酸を溶解する溶媒なら特に限定されない。公知された反応溶媒としてm-クレゾール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、ジエチルアセテートのうちから選ばれた一つ以上の極性溶媒を使用する。この他にも、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムのような低沸点溶液またはγ-ブチロラクトンのような低吸水性溶媒を使用することができる。
【0034】
第1溶媒の含量に対して特に限定されないが、適切なポリアミド酸溶液の分子量と粘度を得るために第1溶媒の含量は全体ポリアミド酸溶液のうちで50〜95重量%が望ましく、70〜90重量%であることがより望ましい。
このような単量体を利用してポリイミド粉末を製造する方法は、特定の方法に限定されるものではないが、その一例として、ジアミン類と酸二無水物類を第1溶媒下で重合してポリアミド酸溶液を修得して、修得されたポリアミド酸溶液をイミド化してイミド化物を含む溶液を製造した後、イミド化物を含む溶液に第2溶媒を添加して沈澱させる工程、及び沈澱された固形分を濾過及び乾燥してポリイミド樹脂の固形分を得る工程を含む方法が挙げられる。
【0035】
この時、第2溶媒は第1溶媒より極性が低いものであることができるし、これは樹脂固形分を沈澱させるための溶媒である。
その例で、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、2-ブチルアルコール、2-プロピルアルコール、2-ヘキシルアルコール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、フェノール、t-ブチルアルコールなどを挙げることができる。
【0036】
一方、単量体投入手順を制御することによってもポリイミドの耐熱性を制御することができる。一例で、酸二無水物のうちで6-FDAを先投入するよりは最後に投入して重合することが分子量を増加させることができるし、同一な重合時間においてより大きい絶対分子量を有するポリイミド粉末を得ることができる点で望ましいことがある。結果的に単量体投入手順を制御することによってフィルムの耐熱性を制御することができるところ、絶対分子量が大きいポリイミド粉末の場合、耐熱性がより向上されることができる。
【0037】
また、重合時間によってもフィルムの耐熱性を制御することができるが、重合時間が長くなるほど絶対分子量値を大きくすることができる。しかし、一定の重合時間が経過しながら絶対分子量値が再び小さくなるようになるところ、重合時間がすぎるほど長くなれば、解重合によって絶対分子量が減少するようになるものと言えるであろう。
したがって、重合時間がすぎるほど長くなれば、分子量減少によって熱的安全性(CTE)が悪くなることができるし、反面、重合時間がすぎるほど短ければ分子量の分布(PDI)がすぎるほど広くなって、フィルムの機械的物性低下が現われることができるので、望ましくは、1乃至24時間の間に、一番望ましくは、8乃至12時間であることが適正な絶対分子量値及び絶対分子量分布を有することができるし、これで、耐熱性及び透明性をすべて等しく満足するポリイミド粉末を得ることができる。
【0038】
ポリアミド酸溶液に化学的変換剤を投入して、イミド化する時光学的、機械的及び耐熱性の側面でイミド化率が80%以上、望ましくは、85%以上になるようにした方が良いことがある。
修得されたポリイミド樹脂固形分を濾過した後乾燥する条件は、第2溶媒の沸騰点を考慮して温度は50〜120℃、時間は3時間〜24時間であることが望ましい。
【0039】
ポリイミドフィルムを製造する工程は、上述した方法によって得られるポリイミド粉末を有機溶媒に溶解してポリイミド溶液を得た後、これを除膜して、熱処理する工程を含むことができる。この時の有機溶媒としては前記した第1溶媒を使用することができる。
ポリイミド溶液を支持体上にキャストして40〜400℃の温度範囲で徐徐に昇温させながら1分〜8時間加熱して、ポリイミドフィルムを得ることができるし、熱安定性増加及び熱履歴減少の側面でもう一度熱処理工程を経ることができる。追加熱処理工程の温度は、100〜500℃が望ましくて、熱処理時間は1分〜30分が望ましい。
【0040】
熱処理を終えたフィルムの残留揮発成分は5%以下であり、望ましくは3%以下であることがある。
この時、化学的変換剤は、無水酢酸などの酸無水物で代表される脱水剤とイソキノリン、β-ピコリン、ピリジンなどの3級アミン類などで代表されるイミド化触媒を有することができるし、このような化学的イミド化を並行することが分子量減少低下の側面で望ましいことがある。
【0041】
また、本発明の一具現例によるポリイミドフィルムは、透明性を確保する側面でフィルム厚さ50〜100μmを基準で黄色度が3.5以下であることが望ましい。
また、フィルム厚さ50〜100μmを基準にUV分光光度計で測定された400乃至740nmでの平均透過度が85%以上であることが望ましい。仮に、フィルム厚さ50〜100μmを基準にUV分光光度計で測定された400乃至740nmでの平均透過度が85%より小さければディスプレイ用途で使用するにおいて、適正な視覚効果を発揮することができない問題があり得る。
【0042】
また、寸法変化への影響を考慮する時、ポリイミドフィルムはフィルム厚さ50〜100μmを基準に熱機械分析法によって50乃至250℃範囲で測定した平均線膨脹係数(CTE)が70ppm/℃以下であることが望ましい。線膨脹係数が前記値より大きい場合接着フィルムで製造時に線膨脹係数がすぎるほど大きくなって金属箔の線膨脹係数との差が大きくなるために、寸法変化の原因になることができる。平均線膨脹係数(CTE)は、望ましくは、15ppm/℃乃至60ppm/℃である。
【0043】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明すれば、次のようであるところ、本発明がこれらの実施例によって限定されるものではない。
<実施例1>
反応器として撹拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却機を取り付けた1L反応器に窒素を通過させながら、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)605.6gを満たした後、反応器の温度を25℃に合わせた。その後、TFDB64.046g(0.2mol)を溶解して、この溶液を25℃に維持した。ここにBPDA11.7680g(0.04mol)を添加して、1時間撹拌してBPDAを完全に溶解させた。この時、溶液の温度は25℃に維持した。そして、6FDA71.08g(0.16mol)を添加したし、固形分の濃度は20重量%であるポリアミド酸溶液を得た。
【0044】
ポリアミド酸溶液を常温で12時間撹拌して、ピリジン31.64g、無水酢酸40.91gを投入して30分撹拌後、再び80℃で1時間撹拌して常温で冷やして、これをメタノール20Lが盛られている容器に徐徐に投入して沈澱させて、沈澱された固形分を濾過して粉碎した後80℃で真空に6時間乾燥して147gの固形分粉末を得た(イミド化率80.5%)。
【0045】
得られた固形分粉末を588gのN、N-ジメチルアセトアミド(DMAc)にとかして20wt%の溶液(粘度70poise)を得た。
反応が終わった後修得された溶液をステンレス板に塗布した後700μmでキャストして150℃の熱風で1時間乾燥した後、フィルムをステンレス板で剥離してフレームにピンで固定した。
【0046】
フィルムが固定されたフレームを真空オーブンに入れて100℃から300℃まで2時間ゆっくり加熱した後、徐々に冷却し、フレームから分離してポリイミドフィルムを修得した。以後、最終熱処理工程として再び300℃で30分間熱処理した(厚さ100μm、イミド化率99.8%)。
得られたポリイミドフィルムに対して次のような方法で高分子に対するデータを収集した。
【0047】
(1)分析装備及び分析方法
GPC & MALS分析装備:GPC-Water 1525 Binary HPLCpump;RI detector-Wyatt optilab rEX;MALS-Wyatt Dawn8+;Column-Shodex K-803、K-804及びK-805を連結使用
(2)試料の前処理方法
得られるフィルム0.05gを秤量してDMF(0.05%LiCl含有)10mlをバイオルに入れる。フィルム含有DMF溶液を50℃オーブンに入れて撹拌しながら2時間程度とかす。試料を完全にとかした状態で0.45μmシリンジフィルターを利用して、フィルターした後にMALS autosamplerに装着する。
【0048】
(3)分析方法
Injection volume:400μL
Injection Temp.:50℃
Flow Rate:1ml/min
Eluent:DMF(LiCl0.05%含有、Refractive index1.390)
Column Temp.:50℃
Dn/Dc:下記説明参照
ここで、 Dn/Dc は特異的屈折率増分であり、ポリイミドフィルムを有機溶媒中の希薄溶液状態で微分屈折計(differential refractometer)のフローセル内に注入して屈折率を検出した時、希薄溶液濃度の変化率による屈折率の変化率値を微分した値であり、濃度変化区間0.001乃至0.1g/ml範囲で測定した値で、具体的には次のような方法で設定される値である。
【0049】
(4) Dn/Dc 設定に使用される分析装備
RI Detector:Wyatt Optilavb rEX
(5) Dn/Dc 測定のための試料の前処理方法
得られるポリイミドフィルム0.2gをDMF(0.05%LiCl含有)50mlにとかして高濃度の試料を作る。この時、よくとけないために50℃オーブンに入れて撹拌しながら2時間程度とかす。得られた高濃度の試料を希釈して、それぞれ0.0032g/ml、0.0024g/ml、0.0016g/ml、0.0008g/ml濃度の試料を作った。この試料をそれぞれ0.45μmシリンジフィルターを利用して濃度による屈折率値を測定した。
【0050】
(6) Dn/Dc 試料分析方法
injection volumn :10ml
injector Temp.:50℃
flow rate:16ml/hr
Eluent:DMF(0.05%LiCl含有、Refractive index 1.390)
このように分析した結果、ポリイミドフィルムの場合DMF(0.05%LiCl含有)50℃での Dn/Dc 値が0.1246±0.0012であった。
【0051】
得られる Dn/Dc値から上述した方法によってMALSによる絶対分子量値及び分離重量分画(differential weight fraction)を算出することができるし、その結果を次の表1に示した。
図1には、実施例1によって得られるフィルムに対する分離重量分画の検出結果グラフを示したし、これを累積重量分画データに変換するようになれば図2のような累積グラフを得ることができる。
【0052】
これから実施例1によって得られるフィルムにおいて、絶対分子量が10×10g/mol以下である分子量の総分画割合は60.1%であることを確認することができる。
以下の実施例らにおいて分離重量分画を算出した結果、データは共にこのようなグラフに基づいた結果であることは勿論である。
<実施例2乃至3>
前記実施例1と同一な方法でフィルムを製造するが、但し、次の表1のようにポリアミド酸溶液製造時にTFDB対比BPDAモル%を変更した。
【0053】
得られたフィルムに対して、実施例1と同一の方法で、Dn/Dc 値及びMALSによる絶対分子量値及び分離重量分画を算出した。その結果を次の表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
前記実施例1乃至3から得られるフィルムに対してASTM E313規格で黄色度を測定して、その結果を次の表2に示した。また、熱機械分析法によって50乃至250℃範囲で線膨脹係数(CTE)値を測定した。その結果を次の表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
<実施例4乃至6及び参照例1乃至2>
前記実施例1のような方法でポリイミドフィルムを製造するが、但し、ポリアミド酸を撹拌する時間を次のように制御して、次の表3のような分離重量分画比及び絶対分子量を有するフィルムを製造した。
【0058】
【表3】

【0059】
前記実施例4乃至6及び参照例1乃至2から得られるフィルムに対してASTM E313規格で黄色度を測定して、その結果を次の表4で示した。また、熱機械分析法によって50乃至250℃範囲で線膨脹係数(CTE)値を測定した。その結果を次の表4に示す。
【0060】
【表4】

【0061】
前記表2及び表4の結果から、絶対分子量が10×10g/mol以下であるポリイミド含量が全体フィルム重量に対して70%以下である場合黄色度が優秀であり、さらに熱的特性及び光透過性も優秀であることが分かる。
反面に、絶対分子量が10×10g/mol以下であるポリイミド含量が全体フィルム重量に対して70%を超過する場合には光透過性の有意的な低下がないにもかかわらず黄色度が悪くなることが分かる。
【0062】
一方、絶対分子量が10×10g/mol以下であるポリイミド含量が少なくなることと比例して黄色度が向上することを分かるが、実施例6のようにその含量が少なくなるようになれば全体的に高分子鎖の長いものなどがたくさん存在するようになるので、粘度が上昇するようになって除膜工程上不利なことがあるので、絶対分子量が10×10g/mol以下であるポリイミド含量が0.03%よりは多いことが望ましい。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミン類と酸二無水物類を重合して得られるポリアミド酸のイミド化物を除膜して得られて、
次の式(1)によって決定される絶対分子量が10×10g/mol以下であるポリイミドの含量がフィルム重量を基準に70.0%以下であるポリイミドフィルム。
【数1】


前記式は物質が光(light)との相互作用によって電荷の偏極化を起こして、これによって振動電荷らが光を放射状にまき散らす現象において、物質の偏極度(polarizability)によって電荷の移動量及び光の放射量が変わる原理を利用して、任意の高分子及び溶媒を含む溶液にレーザー光を照射して測定される散乱された光の量及び角変動(angular variation)から高分子のモル質量(molar mass)及び大きさを決定する原理によって導出されるものであり、
θは、過剰レイリー比(the excess Rayleigh ratio)であり、
*=4π(dn/dc)λ-4-1であり、ここで、nは溶媒の屈折率、Nはアボガドロ数(Avogadro's number)、 dn/dcは特異的屈折率の増分であり、ポリイミドフィルムを有機溶媒中の希薄溶液状態で微分屈折計(differential refractometer)のフローセル内に注入して屈折率を検出した時、希薄溶液濃度の変化率による屈折率の変化率値を微分した値で、濃度変化区間0.001乃至0.1g/ml範囲で測定した値であり、
cは溶液中の高分子濃度(g/ml)であり、
Mは、モル質量(molar mass)で、多分散試料の場合重量平均分子量(Mw)であり、
は2次ビリアル係数(the second virial coefficient)であり、
P(θ)=Rθ/Rである。
【請求項2】
絶対分子量が10×10g/mol以下であるポリイミドの含量が、フィルム重量を基準に0.03%以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
次の式(1)によって決定される絶対分子量(Mw)が30,000乃至170,000g/molであることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【数2】


前記式は、物質が光(light)との相互作用によって電荷の偏極化を起こして、これによって振動電荷らが光を放射状にまき散らす現象において、物質の偏極度(polarizability)によって電荷の移動量及び光の放射量が変わる原理を利用して、任意の高分子及び溶媒を含む溶液にレーザー光を照射して測定される散乱された光の量及び角変動(angular variation)から高分子のモル質量(molar mass)及び大きさを決定する原理によって導出されることで、
θは、過剰レイリー比(the excess Rayleigh ratio)であり、
*=4π(dn/dc)λ-4-1で、ここで、nは溶媒の屈折率、Nはアボガドロ数(Avogadro's number)、 dn/dc は特異的屈折率増分であり、ポリイミドフィルムを有機溶媒中の希薄溶液状態で微分屈折計(differential refractometer)のフローセル内に注入して屈折率を検出した時、希薄溶液濃度の変化率による屈折率の変化率値を微分した値であり、濃度変化区間0.001乃至0.1g/ml範囲で測定した値であり、
cは、溶液中の高分子濃度(g/ml)であり、
Mは、モル質量(molar mass)であり、多分散試料の場合重量平均分子量(Mw)であり、
は、2次ビリアル係数(the second virial coefficient)であり、
P(θ)=Rθ/Rである。
【請求項4】
特異的屈折率増分(dn/dc)が0.100乃至0.1800であり、
特異的屈折率増分(dn/dc)が、ポリイミドフィルムを有機溶媒中の希薄溶液状態で微分屈折計(differential refractometer)のフローセル内に注入して屈折率を検出した時、希薄溶液濃度の変化率による屈折率の変化率値を微分した値であり、濃度変化区間0.001乃至0.1g/ml範囲で測定した値であると定義される、
請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項5】
特異的屈折率増分(dn/dc)が0.100乃至0.1300であることを特徴とする請求項2に記載のポリイミドフィルム。
【請求項6】
酸二無水物類は、2、2-ビス(3、4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項7】
2、2-ビス(3、4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物を酸二無水物類のうちで30モル%乃至100モル%で含むことを特徴とする請求項6に記載のポリイミドフィルム。
【請求項8】
ジアミン類は、2、2’-ビス(トリフルオロメチル)-4、4’-ジアミノビフェニルを含むことを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項9】
2、2’-ビス(トリフルオロメチル)-4、4’-ジアミノビフェニルをジアミン類のうちで20モル%乃至100モル%で含むことを特徴とする請求項8に記載のポリイミドフィルム。
【請求項10】
フィルム厚さ50〜100μmを基準に、黄色度が3.5以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項11】
フィルム厚さ50〜100μmを基準に熱機械分析法によって50乃至250℃範囲で測定した平均線膨脹係数(CTE)が70ppm/℃以下であることを特徴とする請求項10に記載のポリイミドフィルム。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−208143(P2011−208143A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76174(P2011−76174)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(597114649)コーロン インダストリーズ インク (99)
【Fターム(参考)】