説明

ポリウレタングラフト化ヒドロゲル

ヒドロゲル層と末端官能化ポリウレタン層とを含む2つの化学的にグラフトされたポリマー層を含む物品。本発明は、この物品を製造、使用する方法も含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条に基づいて2008年8月5日に出願の米国仮特許出願第61/086442号「Polyurethane−Grafted Hydrogels」の優先権を主張するものであり、この文献は参照により全て援用される。
【0002】
参照による援用
本明細書で言及する全ての出版物及び特許出願は本願において参照により、各出版物又は特許出願が参照により具体的且つ個別に示されて援用される場合と同程度に援用される。
【0003】
本発明は概してポリマー、より具体的にはヒドロゲルポリマーとポリウレタンポリマーとをグラフトして2層構造を形成する方法、及びこれらを医療器具、市販の器具に有用な形で骨に付着させる方法に関する。本発明は、この方法によって形成される材料及び物品も含む。
【背景技術】
【0004】
水を吸収して膨潤するポリマーネットワークがある。これらの膨潤ヒドロゲルは様々な出発材料から生成され、また様々な用途に使用されている。しかしながら、提案された用途においける従来のヒドロゲルの有用性は、ヒドロゲルを構成している組成物の性質によって制限される。加えて、出発材料及びこのような従来の組成物の調製、使用方法では、得られるポリマーの性質だけではなく製造プロセスやこのようなプロセスで作製された物品の商業的実現可能性も制限される。また、従来のポリマーの機械的性質は、使用するポリマー成分の機械的性質によって制限されることが多く、本質的に最も親水性が高く水膨潤性であるポリマーの場合、通常、機械的性質は極めて低い。
【0005】
ヒドロゲルをポリウレタンと組み合わせることによって、特定の有用な性質を有する物品を形成してきた。ヒドロゲル材料をポリウレタン及びその他の材料で強化することによって、より頑丈なバッキング材料を得てきた。また、ヒドロゲルのコーティング又は被覆層を疎水性ポリマーの物品に追加することによってその物品の生体適合性を改善することができる。しかしながら、従来のヒドロゲルとポリウレタンとの組み合わせでは、強度と膨潤性との組み合わせが最適なものにならなかった。加えて、ヒドロゲルとポリウレタンとを組み合わせるための従来の方法では、高価及び/又は毒性のあるプロセスを採用している。
【0006】
例えば、Hoffmanらの米国特許第3826678号の明細書には、不活性な高分子基体を反応性ヒドロゲルポリマーで被覆し、次に生物活性分子を付着させることによって生体機能表面を備えた生体適合性材料を形成するプロセスが記載されている。Hoffmanは、ヒドロゲルをポリウレタンに付着させるのに「放射線グラフト(radiation grafting)」を使用し、また生体活性分子の付着に反応性ヒドロゲルを使用した。Hoffmanの「放射線グラフト」とは、高コストの高エネルギーをポリマーに印加する、結合の非特異的な形成と結合の非特異的な切断の両方を引き起こす処理のことである。形成される結合は、2種類のポリマー間で主鎖に沿ってどこででも形成される非特異的な結合、また各ポリマー内での非特異的な結合(架橋)である。「放射線グラフト」を使用するための条件はHoffmanによって好適ではない反応より好適な反応がより多く起こるように選択された。
【0007】
Hoffmanは「放射線グラフト」を、事前に生成されたヒドロゲル又はヒドロゲルモノマーと接触させた後の事前に形成された材料(ポリウレタン等)に使用し、材料を高エネルギー放射(例えば、γ線照射、X線)に供した。その結果、架橋されたヒドロゲル部が架橋されたポリウレタン部に非特異的にグラフトされた。次に、生体活性材料を、生体材料をヒドロゲルに結合させる特殊な結合を使用して付着させた。このようにすると、生体材料を放射線処理によるフラグメンテーション作用に曝すことなく、生体活性材料が得られた。
【0008】
Yangら(J.Biomed Mater Res45:133−139,1999)は、ポリウレタンとヒドロゲルの両方を有するグラフト材料を形成するためのプロセスについて記載している。Yangは、ポリウレタンとアクリル酸と光開始剤との混合物を生成し、この混合物を脱ガス工程の不在下、UV光で処理することによって、その組成全体にわたってグラフトされた均質且つ非積層化されたアクリル酸/ポリウレタンポリマーを生成した。
【0009】
Park及びNho(Radiation Physics and Chemistry;67(2003):361−365)は、ポリウレタン層及びヒドロゲル層から構成される創傷包帯材の製造について記載している。まず、ポリウレタンを溶媒に溶解させ、乾燥させることによってポリウレタン層を形成した。次に、ポリビニルアルコール/ポリ−N−ビニルピロリドンとキトサンとグリセリンとの水中混合物を既に形成されているポリウレタン層上に注ぐ。この材料は、任意で凍結融解サイクルで処理された。条件は、照射処理中に材料の劣化よりヒドロゲル内での架橋反応が多く起こるように選択され、材料はγ線照射に供され、ヒドロゲルが生成された。この結果、ポリウレタンにヒドロゲルが隣接した。Parkらは、ポリウレタン層とヒドロゲル層との間の相互反応の性質については説明していない。
【0010】
Wangら(米国特許公開第2002/00524480号)は、材料のバルク特性を維持しながら表面にその他の化合物をつなぎ留めるのに使用可能な改質面を有する材料を形成するためのプロセスについて記載している。Wangは、アシル(acylic)又はポリウレタン等の生成済みの疎水性ポリマーから開始し、アシレート(acylate)、ビニルモノマー等の官能性モノマー及び開始剤をちょうどポリマー表面に例えば溶媒中でのポリマーの限定的な膨潤によって導入した。官能性モノマーをUV照射等で処理することによって第2ポリマーが生成された。ヘパリン等の表面改質剤をこの第2ポリマーに結合させ得る。この結果、重合により生成されたポリマーとの間の面に相互侵入ポリマーネットワーク(Interpenetrating Polymer Network:IPN)が形成され、第1ポリマーと第2ポリマーとの間にだけ間接的な相互作用があり、場合によっては第2ポリマーに共有結合させる改質剤で変性された。
【0011】
Gaoら(Chinese Journal of Polymer Science Vol.19,No.5,(2001),493−498)は、身体に統合される長期インプラント(血管及び人工心臓に入れる器具等)の改良に使用するための材料の改良について記載している。Gaoは、セグメント化ポリウレタン上に、細胞を付着させ成長を支援する官能基を有する親水性表面を形成するための2つの方法について記載している。両方の方法において、セグメント化ポリウレタンは、反応性基を生成するために、高濃度の毒性である過酸化水素(30%)及びUV光で活性化された。
【0012】
Gaoの「溶液グラフト法(Solution Grafting Method)」においては、活性化されたセグメント化ポリウレタンを、親水性モノマー(2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド等)及び硫酸アンモニウム鉄(II)六水和物の溶液中に浸漬し、モノマーはセグメント化ポリウレタン上にUV光処理によってグラフトされた。鉄化合物が、溶液中のモノマーの望ましくない重合を防止する。
【0013】
Gaoの「前吸収グラフト法(Pre−Absorbing Grafting Method)」においては、活性化させたセグメント化ポリウレタン膜を親水性モノマーの溶液に浸漬し、取り出し、窒素下に置き、親水性モノマーを、セグメント化ポリウレタンの反応性基にUV光処理によってグラフトした。膜を温水で48時間にわたってすすぐことによってホモポリマーを除去した。この結果、ポリウレタン表面上に極めて薄い親水性ポリマーコーティング層が形成された。「溶液グラフト法」を使用して形成した材料と「前吸収グラフト法」を使用して形成した材料とをSEM画像で比較すると、異なる方法で形成した材料における外見の大きな違いがわかる。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、ヒドロゲルとポリウレタンとの組み合わせから形成される従来の物品及びこのような物品の製造方法を改良するものである。特定の医療用途に望まれる機械的性質は、多くの親水性出発材料の可能性の範囲外にあることが多い。このため、本発明の一態様では、極めて特殊な装置(例えば、60Co放射線源)の使用に伴うコスト、問題点或いは結合を起こすための処理(例えば、γ線照射)における特異性の欠如に起因する、形成される材料の組成への損傷及び/又は組成に関する曖昧さを伴うことなくヒドロゲルによって付与されるその他の望ましい性質に加えて高い機械的強度という目標を達成するための有用なやり方として、疎水性出発材料の高い機械的強度を利用し、またこれらの材料をヒドロゲルと組み合わせる。
【0015】
本願の目的において、「相互侵入ポリマーネットワーク」すなわちIPNは、分子スケールで少なくとも部分的に交錯しているが互いに共有結合はしておらず、また化学結合を切断しない限り分離できない2つ以上のポリマーネットワークを含む材料である。
【0016】
「ポリマー」は巨大分子を含む物質であって(モノマーの繰り返し単位を含む)、ホモポリマー及びコポリマーが含まれる。
【0017】
「コポリマー」は、2種以上のモノマーに由来するポリマーである。
【0018】
「ホモポリマー」は、単一のモノマー種に由来するポリマーである。
【0019】
「グラフトポリマー」は、主鎖のものとは異なる原子が含まれた側鎖を有するポリマー(グラフト高分子)である。この定義には、ポリマーである側鎖が含まれる。
【0020】
「グラフトコポリマー」は、主鎖(又は側鎖)内の隣接するブロックが異なるモノマー種を含むグラフトポリマーである。
【0021】
本発明の一態様は、末端官能化ポリウレタン層に化学的にグラフトされたヒドロゲル層を有する物品を提供する。一部の実施形態において、ヒドロゲル層及びポリウレタン層は界面グラフトされる。一部の実施形態において、ポリウレタン層は、ポリカーボネートウレタン、ポリカーボネートウレタンウレア、ポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリウレタンウレア及びこれらのシリコーン誘導体から成る群から選択される。
【0022】
ポリウレタン層は、ハードセグメント、ソフトセグメント、鎖延長剤(chain extender)及び末端基を有し得る。一部の実施形態において、ハードセグメントは、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、イソホロンイソシアネート(IPDI)、3,3−ビトルエンジイソシアネート(TODI)、メチレンビス(p−シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、2,6−トルエンジイソシアネート又は2,4−トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチルジイソシアネート(HMDI)及びメチレンビス(p−フェニルイソシアネート)(MDI)の群から選択される。
【0023】
一部の実施形態において、ポリウレタン層のソフトセグメントは、ヒドロキシ末端ブタジエン、ヒドロキシル末端ポリイソブチレン、ヒドロキシブチル末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリ(1,6−ヘキシル−1,2−エチルカーボネート)、水素化ポリブタジエン、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリヘキサメチレンカーボネートグリコール、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリテトラメチレンアジペート及びポリ(テトラメチレンオキシド)(PTMO)の群から選択される。
【0024】
一部の実施形態において、ポリウレタン層の鎖延長剤は、1,4−ブタンジオール、エチレンジアミン、4,4´−メチレンビス(2−クロロアニリン)(MOCA)、エチレングリコール及びヘキサンジオールの群から選択される。
【0025】
一部の実施形態において、ポリウレタン末端基は、アシルアミド(acylamide)、アクリレート、アリルエーテル、メタクリレート又はビニルの群から選択される。
【0026】
一部の実施形態において、ヒドロゲル層は、末端結合マクロマー(end-linked macromeric)サブユニット(例えば、PEG、生体分子)又は重合モノマーサブユニットである。一部の実施形態において、生体分子は、例えばコラーゲン、1種以上の成長因子、ステロイド、ビスホスホネート、これらの組み合わせ又は誘導体である。一部の実施形態において、生体分子は、骨形成タンパク質(bone morphogenetic protein)、線維芽細胞増殖因子、形質転換増殖因子又は造骨性タンパク質(osteogenic protein)の群から選択される。
【0027】
一部の実施形態において、ヒドロゲル層はホモポリマーである。一部の実施形態において、ヒドロゲル層は、重合モノマーサブユニットである。一部の実施形態において、ヒドロゲル層はコポリマーである。コポリマーは重合サブユニット、例えばアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートから成る群から選択されるサブユニットを有し得る。一部の実施形態において、ヒドロゲルネットワークは、少なくとも50%、少なくとも75%又は少なくとも90%(乾燥質量)のテレケリック(telechelic)マクロモノマーを含有する。
【0028】
一部の実施形態において、ヒドロゲル層は、第1及び第2ネットワークを有するIPNである。一部の実施形態において、第1IPNネットワークは末端結合マクロマーサブユニットである。一部の実施形態において、重合マクロマーサブユニットは、PEG、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリジメチルシロキサン、ポリ(ビニルアルコール)、多糖及び生体分子から成る群から選択される。一部の実施形態において、重合マクロマーサブユニットは、アクリルアミド、アクリレート、アリル、メタクリルアミド、メタクリレート、N−ビニルスルホン及びビニルから成る群から選択される末端又は側鎖官能基を有する。
【0029】
一部の実施形態において、第2IPNネットワークは重合サブユニット(モノマー)である。一部の実施形態において、サブユニットは親水性である。親水性サブユニットはイオン化可能になり得る。イオン化可能なサブユニットはアニオン性になり得る。アニオン性サブユニットは、カルボン酸基及び/又はスルホン酸基を含み得る。一部の実施形態において、第2ネットワークはポリアクリル酸である。一部の実施形態において、イオン化可能なサブユニットはカチオン性である。一部の実施形態において、親水性サブユニットは非イオン性である。非イオン性サブユニットは、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、メチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート及び/又はこれらの誘導体から成る群から選択され得る。
【0030】
一部の実施形態において、IPNの両方のネットワークがポリウレタン層にグラフトされる。
【0031】
一部の実施形態において、第2ポリウレタンを第1ポリウレタンに付着させる。一部の実施形態において、第2ポリウレタンは官能化末端基を有する。一部の実施形態において、第2ポリウレタンは、塩、例えば10μm〜1000μmのサイズの結晶の塩を含む。一部の実施形態において、第2ポリウレタンは多孔性であり、孔径は例えば10μm〜1000μmである。一部の実施形態において、第2ポリウレタンは、孔径が例えば10μm〜1000μmの開放気泡多孔構造を形成するための発泡剤を含有する。
【0032】
一部の実施形態において、第2ポリウレタンは生体分子を含む。一部の実施形態において、生体分子は、コラーゲン、骨形成タンパク質、ビスホスホネート及び造骨性タンパク質から成る群から選択される。一部の実施形態において、第2ポリウレタンは骨成分、すなわち天然の骨に通常見出される材料を含む。骨成分は、炭酸アパタイト、ヒドロキシアパタイト、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム及びその他のリン酸カルシウムの1種以上になり得る。
【0033】
一部の実施形態において、第2ポリウレタンは封入充填剤(entrapped filler)を含む。
【0034】
一部の実施形態において、第2ポリウレタンは酸化防止剤を含む。酸化防止剤は、アスコルビン酸、βカロチン、グルタチオン、Irganox(登録商標)、リポ酸、レチノール、サントホワイト(santowhite)、尿酸、ユビキノール及びビタミンEから成る群から選択され得る。
【0035】
本発明の別の態様は、第1ポリウレタンと、この第1ポリウレタンに付着した第2ポリウレタンとを有し、この第2ポリウレタンがパテ様硬度を有する物品を提供する。一部の実施形態において、第2ポリウレタンは反応性末端基を有する。一部の実施形態において、第2ポリウレタンは塩を含む。一部の実施形態において、第2ポリウレタンは多孔性である。
【0036】
一部の実施形態において、第1及び第2ポリウレタンの組成物は封入充填剤を含む。
【0037】
一部の実施形態において、第1及び第2ポリウレタンの組成物は酸化防止剤を含む。酸化防止剤は、アスコルビン酸、ビタミンE、Irganox、サントホワイト、グルタチオン、尿酸、リポ酸、βカロチン、レチノール及びユビキノールから成る群から選択され得る。
【0038】
本発明の別の態様は、ポリウレタンをヒドロゲルにグラフトするための方法を提供し、この方法は以下の工程:反応性ヒドロゲル前駆体又は末端官能化ポリウレタン前駆体を含有する第1溶液を凍結させる;末端官能化ポリウレタン前駆体又は反応性ヒドロゲル前駆体を含有する第2溶液を第1溶液に適用する;これらの溶液を重合及び架橋することによってポリウレタンとヒドロゲルとを有する積層グラフトポリマーを生成する、を含む。
【0039】
本発明の別の態様は、ポリウレタンをヒドロゲルにグラフトするための方法を提供し、本方法は以下の工程:末端官能化ポリウレタン前駆体を含有する溶液から層を流延する;反応性ヒドロゲル前駆体を含有する第2溶液を適用し、ここでこの第2溶液はポリウレタン層用の溶媒を含有する;これらの溶液を重合及び架橋することによってポリウレタンとヒドロゲルとを有する積層グラフトポリマーを生成する、を含む。
【0040】
一部の実施形態において、重合工程においてUV光又は熱を使用する。
【0041】
一部の実施形態において、本方法は、積層グラフトポリマーの少なくとも一部を第3溶液に浸漬し、ここでこの第3溶液は第1又は第2溶液の前駆体とは異なるヒドロゲル前駆体を有し、グラフトポリマーを膨潤させ、第3溶液を重合することによってポリウレタンとIPNとを有するグラフトポリマーを生成する工程を含み、IPNは第1ヒドロゲルネットワークと絡み合った第2ヒドロゲルネットワークを有する。一部の実施形態において、第3溶液は第1ヒドロゲルの部分溶媒(partial solvent)であり、また第1ヒドロゲルネットワークを膨潤可能である。
【0042】
一部の実施形態において、ヒドロゲル前駆体を含有する溶液はテレケリック分子を有する。様々な実施形態において、このテレケリック分子は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、ビニル又はアリルエーテルから成る群から選択される1つ以上の末端基を有するポリ(エチレン)グリコールである。
【0043】
一部の実施形態において、ポリウレタン溶液は、ビニル末端ポリウレタン、ポリカーボネートウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリカーボネートウレタンウレア、ポリエステルウレタン、ポリウレタンウレア及びこれらのシリコーン誘導体から成る群から選択される1種以上の材料を有する。
【0044】
本発明の別の態様は、骨に付着可能な材料を製造する方法を提供し、本方法は、以下の工程:反応性末端基を有するポリウレタン前駆体、更に溶媒、光開始剤及び架橋剤を含有する溶液をヒドロゲルにグラフトする第1ポリウレタンに適用する;ポリウレタン前駆体を重合する;熱及び対流で処理することによって溶媒を除去してポリウレタングラフト化ヒドロゲル上に被覆された第2未反応テレケリックポリウレタン表面を得る、を含む。
【0045】
一部の実施形態において、第2ポリウレタンはポリカーボネートウレタン、その他の実施形態においてポリエーテルウレタンである。
【0046】
一部の実施形態において、反応性末端基は、アクリルアミド、アクリレート、アリルエーテル、メタクリレート及びビニルから成る群から選択される。一部の実施形態において、溶媒は、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びテトラヒドロフランから成る群から選択される。
【0047】
一部の実施形態において、適用工程は塩の適用を含む。
【0048】
本発明の別の態様は、物品を骨に付着させるための方法を提供し、この物品は、光開始剤及び架橋剤を有する多孔性ポリウレタンを含み、本方法は、多孔性ポリウレタンを骨に対して並置し、第2ポリウレタンを重合することによって物品を骨に付着させる工程を含む。一部の実施形態において、多孔性ポリウレタンは骨に接触し、また骨内に流入する。物品は、多孔性ポリウレタンに付着した第2ポリウレタン及び任意のヒドロゲルも含み得る。一部の実施形態において、重合工程は、ポリウレタンをUV光、熱又は化学開始剤に曝露することを含む。
【0049】
本発明のポリウレタングラフト化ヒドロゲルは、医薬及び工業分野において多くの用途を有する。整形外科学においては、天然の軟骨の性質に匹敵する軟骨置換材料への需要が大きい。本発明は、整形外科学のその他の領域(いずれの関節)、例えば脊椎、椎間板若しくは椎間関節の置換等又は滑液嚢の置換品として有用になり得る。ポリウレタングラフト化ヒドロゲルのその他の応用も創傷治療(例えば、創傷包帯材)、形成手術、泌尿器科(例えば、カテーテル)又は心臓病学(例えば、ステント、カテーテル、弁材料として)を含む分野において可能であるが、これらの分野に限定はされない。
【0050】
ポリウレタングラフト化ヒドロゲルは、関節表面における欠陥を修復するためのプラグ、パッチ、キャップ又はカップの形態の器具として有用である。器具は、ヒドロゲル支持側と多孔性ポリウレタン/骨界面側とを備え、これらの面は互いに化学的に結合されている。ヒドロゲル側は滑らかな「軟骨様」支持面となり、ポリウレタン側は構造強化を行い且つ骨の付着及び内部成長を促進する。ポリウレタングラフト化ヒドロゲルの骨界面側を、上記のアプローチのいずれかを通じて骨に付着させる。
【0051】
本発明の新規な特徴を、以下の請求項において詳細に説明する。本発明の特徴及び利点は、本発明の原理を活用した実例となる実施形態についての以下の詳細な説明及び添付の図面を参照することによってより深く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1A】本発明の一態様によるヒドロゲルとポリウレタンとをグラフトする方法を示す。
【図1B】本発明の一態様によるヒドロゲルとポリウレタンとをグラフトする方法を示す。
【図1C】本発明の一態様によるヒドロゲルとポリウレタンとをグラフトする方法を示す。
【図2A】メタクリレート官能化ポリウレタンにポリエチレングリコール(PEG)−ジメタクリレートヒドロゲルをグラフトしてポリウレタングラフト化PEGヒドロゲルとした一例を示す。
【図2B】メタクリレート官能化ポリウレタンにポリエチレングリコール(PEG)−ジメタクリレートヒドロゲルをグラフトしてポリウレタングラフト化PEGヒドロゲルとした一例を示す。
【図3A】どのようにしてIPNを形成しポリウレタンにグラフトするかを示す。
【図3B】どのようにしてIPNを形成しポリウレタンにグラフトするかを示す。
【図3C】どのようにしてIPNを形成しポリウレタンにグラフトするかを示す。
【図4A】どのようにしてポリウレタンとヒドロゲルIPNとの間に2重ポリマーグラフトを形成するかを示す。
【図4B】どのようにしてポリウレタンとヒドロゲルIPNとの間に2重ポリマーグラフトを形成するかを示す。
【図5A】どのようにしてテレケリックポリウレタン接着剤をポリウレタンバッキング層上に堆積するかを示す。
【図5B】どのようにしてテレケリックポリウレタン接着剤をポリウレタンバッキング層上に堆積するかを示す。
【図5C】どのようにしてテレケリックポリウレタン接着剤をポリウレタンバッキング層上に堆積するかを示す。
【図6A】ポリウレタンバッキング材料及びポリウレタン接着剤の例を示す。
【図6B】ポリウレタンバッキング材料及びポリウレタン接着剤の例を示す。
【図7A】本発明の一態様において接着性ポリウレタンがどのようにして材料を骨に付着させるかを示す。
【図7B】本発明の一態様において接着性ポリウレタンがどのようにして材料を骨に付着させるかを示す。
【図7C】本発明の一態様において接着性ポリウレタンがどのようにして材料を骨に付着させるかを示す。
【図7D】本発明の一態様において接着性ポリウレタンがどのようにして材料を骨に付着させるかを示す。
【図8A】どのようにしてグラフトコポリマーが骨に付着するかを示す。
【図8B】どのようにしてグラフトコポリマーが骨に付着するかを示す。
【図9A】本発明のポリマーグラフトから形成された骨軟骨グラフトインプラントをどのようにして関節内での軟骨の置換又は増強に使用可能かを示す。
【図9B】本発明のポリマーグラフトから形成された骨軟骨グラフトインプラントをどのようにして関節内での軟骨の置換又は増強に使用可能かを示す。
【図10】本発明の一態様に従って形成された材料のポリウレタングラフト化ヒドロゲルの断面の顕微鏡写真である。
【図11】本発明の材料の静的材料特性の試験結果を示す。
【図12】本発明に従って形成された材料の強度を求めるための重ねせん断試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
一実施形態において、ポリウレタンをヒドロゲルに界面グラフトすることによって積層構造の強靭で滑らかなポリマーグラフト材料を形成する。ポリウレタングラフト化ヒドロゲルを生成するために、ヒドロゲル前駆体のモノマー又はマクロモノマーを光開始剤及び任意の架橋剤と共に有機溶媒又は緩衝剤に溶解させる。一部の実施形態においては、コポリマーを形成する第2ヒドロゲル前駆体のモノマー又はマクロモノマーも溶解させる。一部の実施形態においては、生体分子を添加する。ポリウレタン前駆体のモノマー又はマクロモノマーも光開始剤及び任意の架橋剤と共に有機溶媒又は緩衝剤に溶解させる。この有機溶媒又は緩衝剤は、ヒドロゲル前駆体を溶解させたものと同一又は異なる組成物になり得る。材料に追加の性質を付与する追加材料(添加剤)を一方又は両方の溶液に添加することができる。添加剤は2つの溶液において同一又は異なり得る。
【0054】
いずれのタイプの有機溶媒を使用してもモノマー及びマクロモノマーの溶液を生成することができ、例えばジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン又はクロロホルムである。
【0055】
いずれのタイプの光開始剤も使用することができる。光開始剤には、限定するものではないが2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン及び2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノンが含まれる。
【0056】
いずれのタイプの適合する架橋剤を使用しても、例えばエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート(又はジアクリレート)、トリエチレングリコールジメタクリレート(又はジアクリレート)、テトラエチレングリコールジメタクリレート(又はジアクリレート)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、N,N´−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、これらの誘導体又は組み合わせである上記のいずれの第1ネットワークの存在下でも、第2ネットワークを架橋し得る。
【0057】
いずれのモノマー又はマクロモノマーを使用してもポリウレタン層を形成し得る。一部の実施形態において、ポリウレタンは反応性末端を有する。ポリウレタンの一方又は両方の末端を官能化し得る。使用可能な材料の例は、表面活性末端基を有するポリマーである。例えばWardらの米国特許第5589563号明細書を参照のこと。
【0058】
一部の実施形態においては、生体分子(例えば、コラーゲン、成長因子(骨形成タンパク質(BMP))、線維芽細胞増殖因子(FGF)、形質転換増殖因子(例えば、TGFβ)、造骨性タンパク質(例えば、OP−1、オステオポンチン)、ステロイド(例えば、デキサメタゾン)、ビスホスホネート)を添加剤として或いはこれらの共有結合、組み合わせ及び/又は誘導体によって組み込む。骨成分も器具内に組み込み得て、例えばヒドロキシアパタイト、炭酸アパタイト、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、これらの組み合わせ及び/又は誘導体である。この用途に有用な孔径は約10μm〜1000μmである。
【0059】
一実施形態において、開始剤を含有するヒドロゲル前駆体溶液を型上に流延し、例えば液体窒素浴内で急速凍結させる。次に、開始剤を含有するポリウレタン前駆体溶液を固化したヒドロゲル前駆体溶液の表面上に流延する。ポリウレタン前駆体溶液は例えば室温以下になり得る。第2の前駆体セットを追加する前に第1の前駆体セットを凍結させることによって、2種類の前駆体セットが大きく混ざり合うことを防止する。次に、重合及び架橋をUV又は熱によって開始させる。
【0060】
別の実施形態においては、開始剤を含有するポリウレタン前駆体溶液を型上に流延し、例えば液体窒素浴内で急速凍結させる。次に、開始剤を含有するヒドロゲル前駆体溶液を固化したポリウレタン前駆体溶液の表面上に流延する。ヒドロゲル前駆体溶液は例えば室温以下になり得る。次に、重合及び架橋をUV又は熱によって開始させる。
【0061】
別の実施形態においては、ポリウレタン前駆体溶液(例えば、ジメチルアセトアミド又はテトラヒドロフラン中)を型上に流延し、(例えば、室温で)乾燥させることによって層を形成する。ポリウレタン層用の溶媒(例えば、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン)を少なくとも部分的に含有するヒドロゲル前駆体溶液をポリウレタン層の表面上に適用する。重合及び架橋をUV又は熱によって開始させる。
【0062】
図1A〜Cは、本発明による、ヒドロゲルポリマーにグラフトさせたポリウレタンポリマーを有するグラフトポリマー及びその製造方法を示す。
【0063】
図1Aは、重合前のポリマー前駆体の2層を示す。一方の前駆体層は凍結させられ(例えば、液体窒素浴を使用)、或いは別の方法で固化され(例えば、乾燥)、次に第2前駆体層を固化層に追加する。この図は、官能性末端基4、6を有するテレケリックヒドロゲル前駆体層2を示す。テレケリック末端は同一又は異なる構造になり得る。図は、ハードセグメント10及びソフトセグメント12を有するテレケリックポリウレタン前駆体8の第2層を示す。ポリウレタン前駆体の末端の官能基14、16は同一又は異なる構造になり得る。「底」(固化)層はいずれかの前駆体セットを含み、「上」層はもう一方の前駆体セットを含む。一実施形態において、テレケリックポリウレタン前駆体8が凍結させられる。別の実施形態においては、ヒドロゲル前駆体2を凍結する。積層状態の溶液をガラス板で覆い、例えばUV光26への曝露を利用したフリーラジカル重合により重合する。UV光への曝露には2つの効果があると考えられる。(1)2種類の前駆体溶液の重合及び架橋を開始させる。(2)凍結ヒドロゲル又はテレケリックポリウレタン前駆体層の少なくとも一部を溶融させることによって2つの層の間の界面に鎖運動性をもたらし、また2つの層の間の界面でのヒドロゲル層のポリウレタン層へのグラフトを可能にする。重合の過程で凍結層の大部分を溶融する追加の熱が発生して層の重合及び架橋を可能にし得る。
【0064】
重合によって、図1Bに示されるように、ポリウレタングラフト化ヒドロゲル材料24が形成される。ヒドロゲルポリマー18は、グラフト22によってポリウレタンポリマー20に共有結合される。ポリウレタンポリマー20のハードセグメントが集合して図1Cのグラフトポリマー29に示されるような硬質相26が形成される。ソフトセグメントは軟質相28内に集合する。末端官能化ポリウレタン前駆体の使用によって、比較的安価なUV重合を利用してヒドロゲル層をポリウレタン層にグラフトすることが可能になり、同時にグラフトを促進するために使用する開始剤(過酸化水素等)の量を最小限に抑えることができる。
【0065】
いずれのモノマー、マクロモノマー又は生体分子を使用してもヒドロゲルポリマーネットワークを形成し得る。便宜上、ヒドロゲルポリマーネットワークを「第1」ネットワーク、ポリウレタンポリマーネットワークを「第2」ネットワークと称するが、どちらの溶液を最初に固化(例えば、凍結又は乾燥)させることもできることを理解すべきである。
【0066】
一実施形態においては、事前に生成されたポリエチレングリコール(PEG)マクロモノマーを、ヒドロゲルポリマーネットワークの基礎として使用する。PEGは生体適合性で水溶液に可溶であり、また幅広い分子量及び化学構造に合成可能である。二官能性グリコールのヒドロキシル末端基を架橋/重合可能な末端基に変性してアクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニル又はアリルエーテル等のビニル末端基を有するテレケリックPEG分子を形成することができる。
【0067】
図2A〜Bは、ヒドロゲルポリマーにグラフトさせたポリウレタンポリマーを有するグラフトポリマーの特定例を示す。図2Aは、反応性メタクリレート末端基106を有するポリウレタン102の存在下で重合及び架橋されている反応性ジメチルアクリレート末端基111を有するポリ(エチレングリコール)100を示す。結果として、共有結合114を介して官能化ポリウレタン112に付着させられたネットワークヒドロゲルポリマー110を有するポリウレタングラフト化PEGヒドロゲル104が得られる。使用する溶媒は水又は有機溶媒(例えば、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン)になり得る。
【0068】
ポリ(エチレングリコール)に加えて、その他のマクロモノマー(ポリカーボネート、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリジメチルシロキサン、ポリ(ビニルアルコール)、多糖(例えば、デキストラン)、生体高分子(例えば、コラーゲン)、これらの誘導体又は組み合わせ等)を末端又は側鎖官能基(アクリレート、メタクリレート、アリルエーテル、ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド等)で化学的に修飾して、ヒドロゲルポリマーネットワークの形成に使用することもできる。
【0069】
第1ネットワークを、限定するものではないがアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート又はこれらの誘導体を基礎としたものを含むいずれの数のその他のポリマーと共重合することもできる。重合サブユニットは、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アリルエーテル又はアクリルアミドモノマーの誘導体であり得る。
【0070】
好ましくは、第1ポリマーネットワークの乾燥質量は、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも75質量%、最も好ましくは少なくとも95質量%テレケリックマクロモノマーである。
【0071】
第2ネットワークのポリウレタンポリマーは、限定するものではないがポリカーボネートウレタン、ポリカーボネートウレタンウレア、ポリエーテルウレタン、セグメント化ポリウレタンウレア、シリコーンポリカーボネートウレタン又はシリコーンポリエーテルウレタンを含む市販の材料又は新規の材料であり得る。第2ポリマー層の分子量は、材料に構造安定性を付与するに十分な高さである。ポリウレタン前駆体は、ビニル末端(一端又は両端)ポリウレタン、ポリカーボネートウレタン、ポリカーボネートウレタンウレア、ポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリウレタンウレア、これらのシリコーン誘導体又はこれらの組み合わせであり得る。
【0072】
いずれのタイプの化学及び化学量論を利用してもポリウレタンポリマーを生成することができる。ハードセグメントの形成に使用されるイソシアネートには、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、イソホロンイソシアネート(IPDI)、3,3−ビトルエンジイソシアネート(TODI)、メチレンビス(p−シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、2,6−トルエン(tolylene)ジイソシアネート又は2,4−トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチルジイソシアネート又はメチレンビス(p−フェニルイソシアネート)が含まれる。
【0073】
ソフトセグメントの形成に使用し得る化学物質には、ヒドロキシ末端ブタジエン、ヒドロキシル末端ポリイソブチレン、ヒドロキシブチル末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリ(1,6−ヘキシル−1,2−エチルカーボネート)、水素化ポリブタジエン、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリヘキサメチレンカーボネートグリコール、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリテトラメチレンアジペート及びポリ(テトラメチレンオキシド)(PTMO)が含まれる。
【0074】
鎖延長剤として使用される化学物質には、1,4−ブタンジオール、エチレンジアミン、4,4´−メチレンビス(2−クロロアニリン)(MOCA)、エチレングリコール及びヘキサンジオールが含まれる。
【0075】
ポリウレタンマクロモノマーの官能化に使用される基は、ヒドロゲルマクロモノマーを官能化するための上で挙げたものと同じ群から選択することができる(例えば、アクリルアミド、アクリレート、アリルエーテル、メタクリルアミド、メタクリレート、ビニル)。官能基は一端又は両端に存在し得て、また同一又は異なる基であり得る。
【0076】
上記のプロセスのフリーラジカル重合を、紫外光を使用しないその他の方法(熱開始反応、その他の化学反応等)でも開始させ得る。
【0077】
いずれの数の添加剤も材料のヒドロゲル側又はポリウレタン側に組み込むことができる。これらの添加剤を封入充填剤又は共有結合分子若しくは粒子として含めることができる。例えば、酸化防止剤を、酸化防止剤のメタクリルオキシ官能化によってヒドロゲルに共有結合させることができる。一例において、メタクリレート基を、L−アスコルビン酸(ビタミンC)の第1級ヒドロキシル基に、2,2,2−トリフルオロメチルメタクリレートとカンジダ・アンタークティカ由来の固定化リパーゼ酵素とを60℃、ジオキサン中で重合抑制剤の存在下(例えば、ヒドロキノン、ジ−tert−ブチルメチルフェノール)反応させることによって領域選択的に結合させることができる。限定するものではないがβカロチン、グルタチオン、Irganox、リポ酸、レチノール、サントホワイト、ユビキノール、尿酸又はビタミンEを含むその他の酸化防止剤も添加することができる。
【0078】
別の実施形態においては、ヒドロゲルグラフト化ポリウレタン又はヒドロゲルグラフト化ポリウレタンの第1ヒドロゲルネットワーク部位を、開始剤と共にヒドロゲル前駆体を含有している第2溶液中で膨潤させることによって、第2ヒドロゲルネットワークを第1ヒドロゲルネットワークに追加することができる。第2溶液は、溶解させることなくヒドロゲルネットワークを膨潤させるための部分溶媒として機能し得る。第2ヒドロゲルネットワークの前駆体は第1ヒドロゲルネットワークの内部で重合される。この結果、ポリウレタンにグラフトされた相互侵入ポリマーネットワーク(IPN)が得られる。
【0079】
図3A〜Cは、ポリウレタングラフト化相互侵入ポリマーネットワークヒドロゲルを有するグラフトポリマーの実施形態を示す。
【0080】
図3Aは、グラフト結合22を介して単一のヒドロゲルネットワーク18にグラフトされたポリウレタンポリマー20を有するポリウレタングラフト化ヒドロゲル24を示す。ポリウレタンポリマー20は、硬質相26及び軟質相28を有する。ポリマーグラフトは、図3Bに示されるように、任意の架橋剤及び光開始剤(図示せず)と共に第2ヒドロゲル前駆体30を含有する溶液中で膨潤させられる。第2ヒドロゲル前駆体30は、UV光36での重合によって、図3Cに示されるように、第1ヒドロゲルネットワーク18内に相互侵入した第2ヒドロゲルネットワーク34を形成する。この結果、ポリウレタングラフト化相互侵入ポリマーネットワークヒドロゲル32が最終的に得られる。
【0081】
別の実施形態においては、第2ヒドロゲルネットワークを第1ヒドロゲルネットワークに追加する。ヒドロゲルグラフト化ポリウレタンを、任意の架橋剤及び光開始剤と共にヒドロゲル前駆体を含有する第2溶液中で膨潤させる。第2溶液は、ヒドロゲルネットワーク用の部分溶媒として機能し得る。次に、第2ヒドロゲルネットワークの前駆体を第1ヒドロゲルネットワークの内部で重合及び架橋させることによってポリマーグラフトを得る。相互侵入ポリマーネットワークの両方のヒドロゲルがポリウレタンにグラフトされる。第1ヒドロゲルネットワークにグラフトされるポリウレタン第2ネットワークは、利用可能な反応性基(過剰なイソシアネート等)を有する。
【0082】
図4A〜Bは、ヒドロゲルIPNの2つのネットワークにグラフトされたポリウレタンポリマーを有する2重グラフトポリマーの例を示す。図4Aは、イソシアネート等の過剰な官能基132を有するポリウレタン130に架橋136された第1ヒドロゲルネットワーク124を示す。第1ヒドロゲルネットワーク124は第2ヒドロゲルネットワーク126と絡み合ってヒドロゲルIPNを形成する。第2ヒドロゲルネットワーク126は、カルボキシレート等の官能基128を有する。第2ヒドロゲルネットワークの官能基128は、ポリウレタンの反応性基132との相互作用により結合134を形成し、図4に示されるような2重ポリマーグラフト122が得られる。
【0083】
一実施形態において、第2ヒドロゲルネットワーク中の親水性前駆体はイオン化可能であり且つアニオン性であり(負に帯電可能)、イオン化可能な第2ヒドロゲルネットワークが得られる。
【0084】
イオン化可能な第2ヒドロゲルポリマーネットワークは、アクリル酸モノマーの水溶液から生成されるポリ(アクリル酸)(PAA)ヒドロゲルになり得る。その他のイオン化可能なモノマーには、負に帯電したカルボン酸又はスルホン酸基を含有するものが含まれ、例えば2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリル酸、ヒアルロン酸、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、これらの誘導体又は組み合わせである。
【0085】
第2ヒドロゲルネットワークモノマーは、正に帯電又はカチオン性でもあり得る。
【0086】
第2ヒドロゲルポリマーネットワークの親水性前駆体は非イオン性でもあり得て、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、メチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート又はこれらの誘導体である。その他の実施形態において、これらを、イオン化可能なモノマー又は親水性がより低い種(メチルメタクリレート等)又はその他のより疎水性であるモノマー若しくはマクロモノマーと共重合する。これらのモノマーを基礎とした架橋線状ポリマー鎖(すなわち、巨大分子)、同じく生体高分子(タンパク質、ポリペプチド(例えば、コラーゲン、ヒアルロン酸、キトサン)等)も第2ネットワークで使用し得る。
【0087】
本発明のその他の態様は、ポリウレタンを骨に接合するための方法である。一実施形態において、光開始剤及び架橋剤と共に有機溶媒中に在る光反応性末端基を有するテレケリックポリウレタンを、ポリウレタン上に被覆する。溶媒を約24〜72時間にわたって熱(例えば、35℃)及び対流下で除去することによって、末端結合可能なポリウレタンのパテ様層を既に存在しているポリウレタン上に積層する。既に存在しているポリウレタン層をこのやり方で被覆することによって、2種類のポリウレタンのハードセグメントがパッキングされて2種類の材料が効果的に結合し、単一体が効果的に形成される。次に、このパテを下準備を施した骨の表面に押し込み、ポリウレタンを刺激(UV光等)に曝露することによって重合及び架橋を誘発させる。これが骨の孔内でのポリウレタンの機械的固着につながる。
【0088】
一部の実施形態において、ポリウレタンは、ポリカーボネートウレタン又はポリエーテルウレタンである。
【0089】
一部の実施形態において、ポリウレタンの光反応性末端基はアクリルアミド、アクリレート、アリルエーテル、メタクリレート又はビニルである。
【0090】
一部の実施形態において、有機溶媒はジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン又はこれらの組み合わせである。
【0091】
一部の実施形態において、ポリウレタンは、結合モノマーを含むコポリマーを含む。結合モノマーには、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、HEMA、トリエチレングリコールジメタクリレート、メチルメタクリレート及びヒドロキシエチルアクリレート(HEA)が含まれ得る。結合モノマーはパテの強度を改善し得る。
【0092】
別の実施形態においては、塩を骨接触層に組み込む。いずれのタイプの塩も使用し得る。パテを骨に組み込んだ後、時間が経過すると、塩は体液で溶解され得る(例えば、NaCl)又は身体によって再吸収され得る(例えば、リン酸三カルシウム、炭酸アパタイト)。
【0093】
一部の実施形態において、ポリウレタンは上述のようにしてヒドロゲルに付着させられる。
【0094】
その他の実施形態においては、熱的、化学的に又は重合を引き起こすその他の方法を使用して、下準備を施した骨の表面に押し込められたパテを重合及び架橋する。
【0095】
図5A〜Cは、どのようにしてテレケリック接着性ポリウレタンを第1ポリウレタン上に堆積するかを示す。接着性ポリウレタンは骨伝導性及び/又は多孔性であり得る。
【0096】
図5Aは、ハードセグメント40、ソフトセグメント42及び官能性末端基44、46を有する接着性テレケリックポリウレタン前駆体38を示す。テレケリックポリウレタンの末端基44、46は同一又は異なる構造であり得る。テレケリックポリウレタン前駆体は、図示されるようにいずれの数の繰り返し数nのハードセグメント及びソフトセグメントを有する官能性末端基を備えたマクロモノマーでもあり得る。例として、図5B、Cは、ポリウレタン前駆体38が繰り返しのない(n=1)単一のモノマーである最も単純なケースを示すが、実際には、ポリウレタン前駆体はいずれの数の繰り返し単位も有し得る(n>1)。図5Aは、ポリウレタンバッキング層52及びこのポリウレタンバッキング層に接合された任意のヒドロゲル層54を有する材料50も示す。材料50は、整形外科用途等の器具の形状であり得る。溶媒66の存在下、ポリウレタン前駆体38で材料50の表面を被覆することによってポリウレタン52上に未反応パテ層70を形成することができ、パテ層とバッキング層とはハードセグメントの結晶化によって結び付けられて、図5Bに示されるように単一体68を構成する。パテ層をUV光74での処理によって硬化させ、溶媒76を除去し、図5Cに示されるような反応接着剤80を形成する。任意で、塩78を反応接着剤に含めることができる。塩によって材料は骨伝導性となる。すなわち、塩の除去後、新しい骨の内部成長を可能にする孔が形成される。
【0097】
その他の実施形態においては、発泡剤をポリウレタン前駆体溶液又は第2ポリウレタンに添加して開放気泡多孔構造を形成する。孔径は例えば約10μm〜約1000μmである。
【0098】
その他の実施形態において、溶媒はUV硬化工程より前に除去される。別の実施形態において、溶媒はUV硬化工程後に除去される。
【0099】
その他の実施形態においては、上記のプロセスに続いて熱的、化学的に又は重合を引き起こすその他の方法を使用して第2ポリウレタンで第1ポリウレタン裏打ちヒドロゲルを被覆する。
【0100】
一部の実施形態において、第2テレケリックポリウレタンの反応性基はアクリルアミド、アクリレート、アリルエーテル、メタクリレート又はビニル基である。
【0101】
図6A〜Bは、本発明で使用可能な材料の例を示す。図6Aは、図1、3に示されるようなもの等のポリウレタングラフト化ヒドロゲルにおいて且つ図5のバッキング材料として使用可能なBionate(登録商標)ポリカーボネートウレタンの構造を示す。図6Bは、図5A〜Cに示されるような接着層として使用可能なアクリレート官能化末端基を有するBionateポリカーボネートウレタンを示す。小文字のm及びnは、ポリウレタンがいずれの数のソフトセグメント及びハードセグメントも有し得ることを示す。
【0102】
図7A〜Cは、本発明のポリウレタンを使用してどのようにして器具を骨に付着させることができるかを示す概略図である。図7Aは、整形外科的器具等の器具200を示し、この器具は塩204を含有するポリウレタン接着剤又はパテ202の層を有する。器具に付着させたパテを、骨206の下処理を施した面に並置し、パテ202は図7Bに示されるように骨206周囲で相互嵌合させられる。図7Cに示されるように、UV光214又はその他の刺激を与えると、パテが骨の周囲で硬化する。洗浄すると又は時間が経過すると、塩が除去され、孔210がそこに残る。図7Dに示されるように、孔は、新しい骨212が硬化したパテ208内へと成長するための空間となり、器具はその場所に固定される。
【0103】
加えて、その他の治療薬をパテに組み込むこともでき、限定するものではないが抗生物質及び抗菌剤が含まれる。
【0104】
別の実施形態においては、多孔性ポリウレタンを本発明のポリウレタンバッキング層に組み込む。この多孔性ポリウレタンは、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒(約10〜75質量%)中のポリウレタンの塩飽和(約25〜90質量%)溶液を流延し、熱(例えば、80℃)及び対流下で溶媒を蒸発させ、次に塩を水中で洗浄除去することによって組み込むことができる。塩はいずれのタイプの塩にもなり得て、限定するものではないが塩化ナトリウム、リン酸カルシウム、これらの誘導体及び/又は組み合わせが含まれる。得られる多孔性バッキング層は、市販の接着剤又はセメント(例えば、骨セメント、歯科用セメント)を使用して骨に付着させるための表面として機能可能であり、また骨の内部成長のための多孔性スカフォールドとしての役割も果たす。
【0105】
一部の実施形態においては、生体分子(例えば、コラーゲン、成長因子(骨形成タンパク質(BMP)等)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、形質転換増殖因子(例えば、TGFβ)、造骨性タンパク質(例えば、OP−1、オステオポンチン)、ステロイド(例えば、デキサメタゾン)、ビスホスホネート)を添加剤として或いはこれらの共有結合、組み合わせ及び/又は誘導体によって器具に組み込む。骨成分も器具に組み込み得て、例えばヒドロキシアパタイト、炭酸アパタイト、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、これらの組み合わせ及び/又は誘導体である。この用途に有用な孔径は約10μm〜1000μmである。
【0106】
一部の実施形態において、多孔性ポリウレタン/ポリウレタンはその他の組織(例えば、軟部組織、筋肉、皮膚、象牙質)に付着させられる。
【0107】
図8A〜Bは、本発明の骨軟骨グラフト及びその他のインプラントの経時的な統合を示す。図8Aにおいて、上述のようにして形成された骨軟骨グラフトインプラント300は滑らかな単一のネットワークヒドロゲルポリマー又はIPNヒドロゲル面302を有し、この表面はグラフトコポリマー領域304を経てポリウレタンポリマー303へと移行している。ポリウレタンポリマーは骨インプラント面である。多孔性であり及び/又は塩を含有し得るこのポリウレタンは骨301に隣接して置かれる。インプラント後、時間が経過すると、骨組織は骨301から骨接触面303内に向かって成長し、図8Bに示されるように重複域309を形成する。
【0108】
図9A〜Cは、本発明による、軟骨性連結面を修復するための骨軟骨インプラントの考えられ得る3つの構成を示す。図9Aにおいて、インプラント310は滑らかなネットワークヒドロゲル又はIPNヒドロゲル面311を有するキャップとして形成され、上述したようにヒドロゲル面はグラフトコポリマー領域を経てポリウレタン製の骨接触面312へと移行している。インプラントすると、インプラント310は骨313の外面を覆う。
【0109】
図9B、Cは、滑らかなネットワークヒドロゲルポリマー又はIPN表面を有する(それぞれ)パッチ又はプラグとして形成されたインプラント314の構成を示し、上述したように表面はグラフトコポリマー領域を経てポリウレタン製の骨接触面316へと移行している。インプラントすると、インプラント314は、骨313の下処理を施された開口部317内に嵌合する。
【0110】
別の変形例においては、既に存在している高分子物品(ポリウレタン他)を、反応性末端基を有するポリウレタン(単官能性又はテレケリック)溶液中で浸漬キャスティングする。次に、この浸漬キャスティングされた物品を上述したように凍結させ、次に適切な開始剤及び架橋剤と共にヒドロゲルモノマーを含有する溶液に再度浸漬させることができる。次に、この物品を再度凍結させることができる。次に、材料をUV又はその他の適切な刺激に曝露することによってヒドロゲル及びその下の誘導体化されたPU層の重合及びグラフトを開始させる。乾燥及び洗浄後、ポリウレタンの介在層を介して物品の表面にグラフトされたヒドロゲルが最終的に得られる。
【実施例】
【0111】
実施例1
一実施例において、ポリウレタンに付着させられた2種類のポリカーボネート・ウレタングラフト化IPNヒドロゲルが生成された。使用された方法は同様のものであり、これらの方法は共に本明細書に記載されている。特注の型を使用した2工程光重合法によって2つの試料を別々に合成した。相互侵入ポリマーネットワークヒドロゲル成分は、UV開始フリーラジカル重合を基礎とした2工程連続ネットワーク形成技法によって合成された。第1ヒドロゲルネットワーク用の前駆体溶液は、UV感受性フリーラジカル開始剤としての2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンと共にジメチルアセトアミドに溶解させられた精製PEG−ジメタクリレート(MW3400)(43質量%)から構成された。溶液を(別々に)特注のパイレックスガラス型内に流延し、次に型内の溶液を液体窒素浴内で急速凍結させた。ポリカーボネート・ウレタンモノメタクリレートの25%溶液(ジメチルアセトアミドに溶解)をヒドロゲル溶液の凍結面上に広げ、それぞれをガラス板で覆い、UV光源下、室温で反応させた。UV(2mW/cm2、350nm、10分)への曝露によって、各ケースにおけるヒドロゲル、ポリウレタン前駆体溶液はフリーラジカル誘発ゲル化を経て、同時に末端基の適合性により互いにグラフトした。第2ヒドロゲルネットワークを第1ヒドロゲルネットワークに組み込むために、ポリウレタングラフト化ヒドロゲルを型から取り出し、70%v/vアクリル酸溶液(一方は有機溶媒、もう一方は水。光開始剤としての1%v/v2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び架橋剤としての1%v/vトリエチレングリコールジメタクリレートも含む)に24時間にわたって室温で浸漬した。膨潤したゲルをUV源に曝露し、第2ネットワークを第1ネットワーク内部で重合させることによって各ポリマー内にIPN構造を形成した。合成に続いて、ポリウレタングラフト化ヒドロゲルをジメチルアセトアミド中で洗浄し、熱対流炉(80℃)内で乾燥させ、溶媒を繰り返し交換しながらリン酸緩衝食塩水で広範囲に5日間にわたって洗浄することによって未反応成分を除去した。材料のサンプルを切断し、図10に示されるように顕微鏡で分析した。ポリウレタンの追加層をその他のサンプルに追加するために、ヒドロゲルのポリウレタン側の表面を空気乾燥させ、次にジメチルアセトアミド中のポリカーボネートウレタンの溶液(熱可塑性Bionate(登録商標)。図6を参照のこと)をその表面上に広げ、熱及び対流によって溶媒を蒸発させた。硬化、乾燥させたポリウレタン含有前駆体の静的機械的性質の分析結果を図11に示す。
【0112】
図10は、ポリウレタングラフト化ヒドロゲルの断面の顕微鏡写真である(60倍)。左側のヒドロゲルは厚さ1.5mmであり、右側のポリウレタンは0.6mmである。
【0113】
図11は、静的機械的性質の試験結果を示す。材料の初期引張ヤング率、破断ひずみ及び破断応力を測定するために単軸引張試験を行った。イヌの骨の試料をASTM D638に従って試験した。接合界面部のポリウレタン材料の平均真応力(MPa)・真ひずみ曲線(%)を図11に示す。引張強度は20MPaより高い。
【0114】
実施例2
別の実施例において、ポリエーテルウレタンを出発材料として使用した。材料は、実施例1に記載のプロセスに従って形成された。
【0115】
実施例3
別の実施例において、別のポリウレタン上に積層させたポリウレタンを形成し、骨に接合した。メタクリレート末端基を有するポリカーボネートウレタンを、メチレンジフェニルジイソシアネートとポリカーボネートジオール(ソフトセグメント)及び鎖延長剤としての1,4−ブタンジオールとを固体濃度30%でジメチルアセトアミド中、35℃で反応させることによって合成した。モノマーである2−ヒドロキシエチルメタクリレートを反応混合物に添加し、溶液を更に24時間にわたって反応させた。得られたポリカーボネートウレタンジメタクリレートを事前に形成されたポリカーボネートウレタン(Bionate(登録商標))の表面上に流延し、溶媒を35℃、対流下で除去した。
【0116】
溶媒を除去した後、未反応ポリカーボネートウレタンジメタクリレートを事前に準備した(清浄化、乾燥済み)ウシの骨の試料の表面に押し付け、UV光(2mW/cm2、350nm、10分)に曝露した。この結果、骨に接合されたポリカーボネートウレタンが得られた。
【0117】
接合強度を、ASTM D3163に記載されるような重ねせん断試験の実行によって試験した。簡単に説明すると、重ねせん断試験では、骨及び多孔性ポリウレタングラフトを握り、これらを反対方向に引っ張り、その間にデータを収集した。せん断応力(MPa)を変位(mm)の関数としてプロットする。図12に示されるように、ポリウレタンを骨から取り外すのに必要なせん断応力は約670kPaであった。9個のサンプルを試験することによって、平均(±S.D.)せん断強度520±120kPaが得られた。
【0118】
本発明の好ましい実施形態を本明細書において示し、説明してきたが、当業者には、このような実施形態が例として挙げられたにすぎないことが明らかである。ここから当業者は数多くの変形、変更及び置き換えを本発明から逸脱することなく考案することができる。本明細書に記載の本発明の実施形態の様々な代替案を本発明の実践において採用し得ることを理解すべきである。以下の請求項が本発明の範囲を定め、またこれらの請求項の範囲内の方法及び構造並びにこれらの同等物がこれらの請求項に含まれることが意図される。
【図1A−1C】

【図2A−2B】

【図3A−3C】

【図4A−4B】

【図5A−5C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロゲル層と末端官能化ポリウレタン層とを含む2つの化学的にグラフトされたポリマー層を含む物品。
【請求項2】
前記ヒドロゲルが前記ポリウレタンに界面グラフトされる、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記ポリウレタンが、ポリカーボネートウレタン、ポリカーボネートウレタンウレア、ポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリウレタンウレア又はこれらのシリコーン誘導体を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記ポリウレタンが、ハードセグメントと、ソフトセグメントと、鎖延長剤と末端基とを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記ポリウレタンハードセグメントが、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、イソホロンイソシアネート(IPDI)、3,3−ビトルエンジイソシアネート(TODI)、メチレンビス(p−シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、2,6−トルエンジイソシアネート又は2,4−トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチルジイソシアネート(HMDI)又はメチレンビス(p−フェニルイソシアネート)(MDI)を含む、請求項4に記載の物品。
【請求項6】
前記ポリウレタンソフトセグメントが、ヒドロキシ末端ブタジエン、ヒドロキシル末端ポリイソブチレン、ヒドロキシブチル末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリ(1,6−ヘキシル−1,2−エチルカーボネート)、水素化ポリブタジエン、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリヘキサメチレンカーボネートグリコール、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリテトラメチレンアジペート又はポリ(テトラメチレンオキシド)(PTMO)を含む、請求項4に記載の物品。
【請求項7】
前記ポリウレタン鎖延長剤が、1,4−ブタンジオール、エチレンジアミン、4,4´−メチレンビス(2−クロロアニリン)(MOCA)、エチレングリコール又はヘキサンジオールを含む、請求項4に記載の物品。
【請求項8】
前記ポリウレタン末端基が、アシルアミド、アクリレート、アリルエーテル、メタクリレート又はビニルを含む、請求項4に記載の物品。
【請求項9】
前記ヒドロゲルが、末端結合マクロマーサブユニットを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記マクロマーサブユニットがPEGである、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
前記ヒドロゲルが生体分子を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項12】
前記生体分子が、コラーゲン、1種以上の成長因子、ステロイド、ビスホスホネート、これらの組み合わせ又は誘導体を含む、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記成長因子が、骨形成タンパク質、線維芽細胞増殖因子、形質転換増殖因子又は造骨性タンパク質の1種以上を含む、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記ヒドロゲルがホモポリマーを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項15】
前記ヒドロゲルが重合モノマーサブユニットを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項16】
前記ヒドロゲルがコポリマーを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項17】
前記コポリマーが重合サブユニットを含む、請求項16に記載の物品。
【請求項18】
前記サブユニットが、アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートの1種以上である、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
ヒドロゲルの乾燥質量の少なくとも50%がテレケリックマクロモノマーを含む、請求項16に記載の物品。
【請求項20】
ヒドロゲルの乾燥質量の少なくとも75%がテレケリックマクロモノマーを含む、請求項16に記載の物品。
【請求項21】
ヒドロゲルの乾燥質量の少なくとも95%がテレケリックマクロモノマーを含む、請求項16に記載の物品。
【請求項22】
前記ヒドロゲルが、第1及び第2ネットワークを含むIPNを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項23】
前記第1ネットワークが重合マクロマーサブユニットを含む、請求項22に記載の物品。
【請求項24】
前記マクロマーサブユニットが、PEG、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリジメチルシロキサン、ポリ(ビニルアルコール)、多糖又は生体分子を含む、請求項23に記載の物品。
【請求項25】
前記マクロマーサブユニットが末端又は側鎖官能基を含み、前記末端又は側鎖官能基が、アクリルアミド、アクリレート、アリル、メタクリルアミド、メタクリレート、N−ビニルスルホン及びビニルの少なくとも1種を含む、請求項23に記載の物品。
【請求項26】
前記第2ネットワークが重合サブユニットを含む、請求項22に記載の物品。
【請求項27】
前記第2ネットワークが親水性である、請求項26に記載の物品。
【請求項28】
前記第2ネットワークがイオン化可能である、請求項27に記載の物品。
【請求項29】
前記イオン化可能なネットワークがアニオン性である、請求項28に記載の物品。
【請求項30】
前記アニオン性第2ネットワークの前記サブユニットが、カルボン酸基及びスルホン酸基の少なくとも一方を含む、請求項29に記載の物品。
【請求項31】
前記アニオン性第2ネットワークがポリアクリル酸である、請求項29に記載の物品。
【請求項32】
前記イオン化可能なネットワークがカチオン性である、請求項29に記載の物品。
【請求項33】
前記親水性ネットワークが非イオン性である、請求項27に記載の物品。
【請求項34】
前記非イオン性ネットワークのサブユニットが、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、メチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート又はこれらの誘導体の1種以上を含む、請求項33に記載の物品。
【請求項35】
両方のネットワークが前記ポリウレタンにグラフトされる、請求項22に記載の物品。
【請求項36】
前記第1ポリウレタンに付着した第2ポリウレタンを更に含む、請求項1に記載の物品。
【請求項37】
前記第2ポリウレタンが官能化末端基を含む、請求項36に記載の物品。
【請求項38】
前記第2ポリウレタンが塩を含む、請求項36に記載の物品。
【請求項39】
前記第2ポリウレタンが多孔性である、請求項36に記載の物品。
【請求項40】
前記第2ポリウレタンが発泡剤を含む、請求項36に記載の物品。
【請求項41】
前記第2ポリウレタンが生体分子を更に含む、請求項36に記載の物品。
【請求項42】
前記生体分子が、コラーゲン、骨形成タンパク質、ビスホスホネート及び造骨性タンパク質の少なくとも1種を含む、請求項41に記載の物品。
【請求項43】
前記第2ポリウレタンが骨成分を更に含む、請求項36に記載の物品。
【請求項44】
前記骨成分が、少なくとも炭酸アパタイト、ヒドロキシアパタイト、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム及びその他のリン酸カルシウムの一種である、請求項43に記載の物品。
【請求項45】
封入充填剤を更に含む、請求項1に記載の物品。
【請求項46】
酸化防止剤を更に含む、請求項1に記載の物品。
【請求項47】
前記酸化防止剤が、アスコルビン酸、ビタミンE、Irganox(登録商標)、サントホワイト、グルタチオン、尿酸、リポ酸、βカロチン、レチノール及びユビキノールから成る群から選択される、請求項46に記載の物品。
【請求項48】
第1ポリウレタンと、前記第1ポリウレタンに付着した第2ポリウレタンとを含む物品であって、前記第2ポリウレタンがパテ様硬度を有することを特徴とする物品。
【請求項49】
前記第2ポリウレタンが反応性末端基を含む、請求項48に記載の物品。
【請求項50】
前記反応性基が、アクリレート、アクリルアミド、アリルエーテル、メタクリレート又はビニルを含む、請求項49に記載の物品。
【請求項51】
前記第2ポリウレタンが塩を含む、請求項48に記載の物品。
【請求項52】
前記第2ポリウレタンが多孔性である、請求項48に記載の物品。
【請求項53】
封入充填剤を更に含む、請求項48に記載の物品。
【請求項54】
酸化防止剤を更に含む、請求項48に記載の物品。
【請求項55】
前記酸化防止剤が、アスコルビン酸、βカロチン、グルタチオン、Irganox(登録商標)、リポ酸、レチノール、サントホワイト、尿酸、ユビキノール及びビタミンEから成る群から選択される。請求項54に記載の物品。
【請求項56】
ポリウレタンをヒドロゲルにグラフトする方法であって、
反応性ヒドロゲル前駆体又は末端官能化ポリウレタン前駆体を含む第1溶液を提供し、
前記第1溶液に第2溶液を適用し、前記第1溶液がヒドロゲル前駆体を含む場合は前記第2溶液が末端官能化ポリウレタン前駆体を含み、前記第1溶液がポリウレタン前駆体を含む場合は前記第2溶液が反応性ヒドロゲル前駆体を含み、
前記2つの溶液を重合及び架橋することによってポリウレタンとヒドロゲルとを含む積層グラフトポリマーを形成する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項57】
前記第1溶液を凍結させることによって固化層を形成することを更に含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記第1溶液を乾燥させることによって固化層を形成することを更に含む、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記重合工程が、前記第1及び第2溶液をUV光又は熱に曝露することを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記積層グラフトポリマーの少なくとも一部を第3溶液に浸漬し、前記第3溶液が前記第1又は第2溶液の前駆体とは異なるヒドロゲル前駆体を含み、
前記グラフトポリマーの少なくとも一部を膨潤させ、
前記第3溶液を重合することによってポリウレタンと、第1ヒドロゲルネットワークと絡み合った第2ヒドロゲルネットワークを含むIPNとを含むグラフトポリマーを生成することを更に含む、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
前記第3溶液が前記第1ヒドロゲルの部分溶媒を含み、また前記第1ヒドロゲルネットワークを膨潤可能である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記ヒドロゲル溶液がテレケリック分子を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項63】
前記テレケリック分子が、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、ビニル及びアリルエーテルから成る群から選択される1つ以上の末端基を有するポリ(エチレングリコール)である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記ポリウレタン溶液が、ビニル末端ポリウレタン、ポリカーボネートウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリカーボネートウレタンウレア、ポリエステルウレタン、ポリウレタンウレア及びこれらのシリコン誘導体の1種以上を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項65】
骨に付着可能な材料を製造する方法であって、
反応性末端基を含むポリウレタン前駆体、溶媒、光開始剤及び架橋剤を含む溶液をヒドロゲルにグラフトする第1ポリウレタンに適用し、
前記ポリウレタン前駆体を重合し、
熱及び対流で処理することによって前記溶媒を除去してポリウレタングラフト化ヒドロゲル上に被覆された第2ポリウレタンを得る工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項66】
前記第2ポリウレタンが、ポリカーボネートウレタン又はポリエーテルウレタンを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記反応性末端基が、アクリルアミド、アクリレート、アリルエーテル、メタクリレート及びビニルの1種以上を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記溶媒が、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びテトラヒドロフランの1種以上を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記適用工程が塩を更に含む、請求項65に記載の方法。
【請求項70】
物品を骨に付着させる方法であって、前記物品が光開始剤及び架橋剤を含む多孔性ポリウレタンを含み、
前記多孔性ポリウレタンを前記骨に対して並置し、
前記多孔性ポリウレタンを重合することによって前記物品を前記骨に付着させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項71】
前記多孔性ポリウレタンを前記骨に接触させる及び前記骨内に流入させることを更に含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記物品が、前記多孔性ポリウレタンに付着した第2ポリウレタンを更に含む、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記物品がヒドロゲルを更に含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記重合工程が、前記多孔性ポリウレタンをUV光、熱又は化学開始剤に曝露することを含む、請求項70に記載の方法。

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7A−7D】
image rotate

【図8A−8B】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図9C】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2011−530336(P2011−530336A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522212(P2011−522212)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/052828
【国際公開番号】WO2010/017282
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
【出願人】(510252427)バイオミメディカ インコーポレイテッド (3)
【出願人】(511030390)エマージェンス ベンチャー パートナーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー (1)
【Fターム(参考)】