説明

ポリウレタン製品およびその成形方法

【課題】 軟質〜硬質で、半透明性〜高透明性のゲル状あるいは樹脂状のポリウレタン製品、特に優れた蓄光性を有する製品、及びその成形方法の提供。
【解決手段】 ショア硬度5〜100、全光線透過率10〜100%のポリウレタンからなるポリウレタン製品で、該製品は(1)ショア硬度5〜30のゲル状で、かつ全光線透過率10〜50%の半透明性、(2)ショア硬度10〜100の樹脂状で、かつ全光線透過率80%以上の高透明性であってもよく、少なくとも一部に蓄光剤を含有する領域を有していてもよいし、該領域と共に光反射性箔を含有する領域を有していてもよい。 ポリオレフィン系樹脂製型に、前記ポリウレタンとを注型するポリウレタン製品の成形方法。
【効果】優れた畜光性と発光持続性を有し、食品衛生基準に合格した素材を用いて得られる無臭・無害の上記製品、その成形方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質〜硬質で、かつ半透明性〜高透明性のゲル状あるいは樹脂状のポリウレタン製品とその成形方法に関し、特に優れた蓄光性を有すると共に、食品衛生基準に合格した素材を用いて得られる無臭・無害の上記製品と、この製品の特性(軟〜硬質、半〜高透明性、特異な柔軟性と復元性、優れた蓄光性《高透明性に起因する》、無臭、無害)を損なうことなく該製品を成形する方法とに関する。
なお、本発明において、ゲル状とは、軟質の半透明性で粘(着)性を有する状態を言い、樹脂状とは、軟質〜硬質の高透明性で粘(着)性を有しない状態を言う。
【背景技術】
【0002】
近年、蓄光剤を含有する各種プラスチック製品が開発され、実用化されている。
例えば、ウレタンポリマー(樹脂・ゴムを含む)に蓄光剤を含有させた製品として、ガラス繊維や増粘剤と共に蓄光剤を含有させた特殊接着剤(特開2005−23289)、蓄光剤を含有させてワイヤー状に成形し、先端に金属や硬質プラスチック製リングからなる係合手段を取り付けた釣り仕掛けのショックアブソーバー、(特開2002−247944)等がある。
また、ウレタンポリマー以外では、ゴムラテックスに蓄光剤を含有させた蓄光コンドーム(特開2004−242958)や、特定粒径の蓄光顔料を含有するゴム強化スチレン樹脂と、これから得られる成形品(特開2004−59858)等もある。
【0003】
これら先提案では、蓄光性の持続を意図するものの、必ずしも満足するものではなく、しかも一般家庭等において日用品等として使用する際の、衛生面での安全性や、物理衝撃に対する安全性についても、必ずしも満足するものではない。
【特許文献1】特開平10−296918号公報
【特許文献2】特開平10−329274号公報
【特許文献3】特開平11− 48413号公報
【特許文献4】特開平10−100334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上の諸点を悉く満足する軟質〜硬質で、かつ半透明性〜高透明性のゲル状あるいは樹脂状のポリウレタン製品であって、優れた蓄光性と優れた発光持続性などを有すると共に、食品衛生基準に合格した素材を用いた無臭・無害の該製品および、この製品の特性(軟〜硬質、半〜高透明性、粘(着)性、特異な柔軟性と復元性、優れた蓄光性《高透明性に起因する》、無臭、無害)を損なうことなく成形することのできる方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明者らは、先ず、(ア)蓄光性能に優れたポリウレタン製品を開発するべく種々検討を行った結果、光反射性を有する例えば金属箔や、金属色膜で被覆されたプラスチック箔等を、蓄光剤と共に特定態様で使用することで、この光反射性箔が該製品の外側にある光を反射し、この反射光が該製品に練り込められた蓄光剤に蓄えられるばかりでなく、この蓄光剤は、製品の外側にある光をも直接(すなわち、反射性箔からの反射光としてではなく)蓄えるために、蓄光性能を大幅に向上させたポリウレタン製品となるとの知見を得た。
そして、光反射性箔を蓄光剤と共に特定態様で使用する場合は、ポリウレタンの透明性がそれほど高くなくても、用途によっては十分に実用的な製品を得ることができるとの知見、言い換えれば、本発明においては、半透明〜高明性の軟質〜硬質のポリウレタンを使用して、用途に応じた優れた蓄光性能を有する製品を得ることができるとの知見をも得た。
【0006】
次に、本発明者らは、(イ)ゲル状のポリウレタンに着目し、種々検討を重ねた結果、軟質で半透明性の製品について、種々の用途に適した例えば蓄光性能をも要求される用途や粘(着)性のみが要求される用途、あるいはゲル状ポリウレタンに特有な柔軟性と復元性が要求される用途等に適した製品を自在に得ることができるとの知見を得た。
【0007】
加えて、特に(ウ)樹脂状ポリウレタンの場合は、食品衛生基準に合格した無臭・無害のポリウレタンを使用すれば、各種分野において安全に使用できる製品となるとの知見を得た。
【0008】
更に、ポリウレタンは周知の通り他の素材との接着性が高く、一般のポリウレタン成形用金型を用いて成形する場合には、該金型にポリウレタン成形品が接着してしまい、脱型が困難となるため、一般には離型剤を予め塗布した金型を使用するが、離型剤を使用すると、上記ポリウレタンの特性、特に高い透明性や、ゲル状の場合の粘性を毀損させてしまい、蓄光剤の含有量を多くしても、また蓄光剤と共に光反射性箔を多量に使用しても、本発明が目的としている蓄光性能を大幅に向上させたポリウレタン製品、あるいは粘性を利用するゲル状製品を得ることはできなくなる。
これを解決するために検討を重ねた結果、本発明品の成形用型として、ポリウレタンとの相溶性の低いポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂製の成形型を使用すればよいとの知見を得た。
【0009】
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであって、〔1〕ショア硬度5〜100、全光線透過率10〜100%のポリウレタンからなることを特徴とするポリウレタン製品を要旨とする。
このポリウレタン製品は、(1)ショア硬度5〜30のゲル状で、かつ全光線透過率10〜50%の半透明性(すなわち、軟質の半透明性で、粘《着》性を有する状態のポリウレタン製品)、または(2)ショア硬度10〜100の樹脂状で、かつ全光線透過率80%以上の高透明性(すなわち、軟〜硬質の高透明性で、粘《着》性を有しない状態のポリウレタン製品)であってもよい。
また、本発明におけるポリウレタン製品は、(3)少なくとも一部に上記のポリウレタン100重量部に対し1〜50重量部の蓄光剤を含有する領域を有していてもよいし、(4)この蓄光剤を含有する領域と共に、該領域以外の少なくとも一部に、上記のポリウレタン100重量部に対し、最長辺1〜10mm、最短辺1〜10mmの光反射性箔を1〜50重量部含有する領域を有していてもよい。
【0010】
〔2〕また、本発明は、〔1〕に記載の軟〜硬質で、半〜高透明性のポリウレタン製品を成形する方法であって、ポリオレフィン系樹脂製型に、
(11)i)ショア硬度5〜100、全光線透過率10〜100%のポリウレタンを注型するか、
(12)前記i)のポリウレタンと、ii)蓄光剤含有該ポリウレタンとを注型するかまたは、
(13)前記i),ii)と、iii)光反射性箔含有該ポリウレタンとを注型する、
ことを特徴とするポリウレタン製品の成形方法を要旨とする。
なお、本発明において、“注型”は、原料を常圧で成形型に注入することや、原料に圧を掛けて射出することなど、成形型に原料を入れて成形することを意味する。
また、本発明では、軟〜硬質で半〜高透明性のポリウレタンは、該ポリウレタン100重量部に対し1〜50重量部の硬化補助剤(触媒)を含有していてもよい。
【0011】
本発明におけるポリウレタン製品は、ショア硬度が5〜100の軟〜硬質であって、全光線透過率が10〜100%の半〜高透明性のポリウレタンからなるものである。
好ましくは、(1)ショア硬度が5〜30の粘(着)性を帯びたゲル状で、かつ全光線透過率が10〜50%の半透明性のポリウレタン製品、または(2)ショア硬度が10〜100の粘(着)性を帯びていない樹脂状で、かつ全光線透過率が80%以上の高透明性のポリウレタン製品である。
【0012】
本発明において、ショア硬度が5未満では、柔らかすぎて取り扱いが困難となる上、実用品としての用途が極めて狭く限定されてしまい、100を超えると、硬すぎてやはり実用品としての用途が極めて狭くなってしまう。
全光線透過率は、10%未満のものは、原料コストが高騰してしまい、実用品としては馴染まず、後述する蓄光剤等を配合する場合の作用・効果の観点から理想的には100%である。
【0013】
本発明のポリウレタン製品が上記(1)のゲル状製品(軟質の半透明性で、粘(着)性を有する製品)の場合は、ショア硬度が5未満では、上記と同様の不都合があり、30を超えると、ゲル状製品の粘(着)性を利用する分野が限定されてしまう。
このゲル状製品の場合、全光線透過率は、原料コストや入手のし易さ、あるいは後述する蓄光剤等を配合する場合の作用・効果の観点からから10〜50%とする。全光線透過率が50%より低いと、ポリウレタンに練り込められた蓄光剤への光線到達率が低下し、十分な蓄光効果を得ることができないばかりか、やはりポリウレタンに練り込められた光反射性箔への光線到達率も低下し、該光反射性箔による光反射効果が低下することはもちろん、この反射光が蓄光剤に到達することも不十分となり、いわば光反射性箔による2次蓄光効果を良好に得ることが困難となる。
【0014】
また、本発明のポリウレタン製品が上記(2)の樹脂状製品(軟〜硬質の高透明性で、粘(着)性を有しない製品)の場合は、ショア硬度が10未満のものは、樹脂状製品としての実用的な用途に馴染まず(取扱性が極端に低下したり、復元力が不十分となることもあり、実用品としての適正を欠く)、100を超えると、硬すぎて、実用的な用途、特に後述する蓄光剤等を配合した製品(夜間におけるステップ等の標識)の用途において、安全性が阻害される可能性(例えば、ステップを踏む人に危害を加える場合などが)がある。樹脂状製品における好ましいショア硬度は20〜80、より好ましくは40〜60である。
【0015】
全光線透過率は、80%以上、好ましくは90%の高透明性であることが、上記のゲル状製品の場合と同様な理由から好ましく、特に樹脂状製品においてはゲル状製品より高い透明性ひいては高い蓄光効果を得ることができるため、原料ポリウレタンとしてはゲル状の場合よりも高い光線透過率を有するものを使用することが好ましい。
【0016】
さらに、樹脂状製品の場合の原料ポリウレタンは、上記のショア硬度や全光線透過率を有すると共に、食品衛生基準に合格した無臭・無害のものであることが好ましい。このようなポリウレタンであれば、乳幼児や老人の居住する家屋や各種の施設において、安全に使用することができる。
【0017】
本発明では、上記のゲル状または樹脂状ポリウレタン製品の少なくとも一部に、蓄光剤を含有する領域を設ける。
この領域は、ポリウレタン製品の全域でもよいが、後述するように、本発明の製品では、蓄光効果を一層高めるために、光反射性箔を含有する領域と、この蓄光剤含有領域とを併有する態様とすることが好適であることから、製品の一部に設けることが適している。
この蓄光剤としては、ポリウレタンに練り込むことができるものであれば、どのような蓄光剤であってもよく、蓄光効果が多少低いものであっても、本発明においては、良好に使用することができる。
このため、本発明では、一般に市販されている種々の蓄光剤を、そのまま使用することができる。
【0018】
蓄光剤の含有量は、少なすぎれば練り込む技術的意義が発現せず、多すぎても効果が飽和するため、蓄光剤含有領域を構成するポリウレタン100重量部に対し1〜50重量部、好ましくは10〜30重量部とすることが適している。
【0019】
また、本発明におけるポリウレタン製品は、上記の蓄光剤含有領域とは別に、光反射性箔含有領域を有している。
この領域は、蓄光剤含有領域と隣り合って設けることが、該領域に練り込まれている光反射性箔による光反射作用と、隣り合う領域に練り込まれている蓄光剤による光蓄積作用とを相乗させる上で好ましい。
【0020】
なお、同じ領域に蓄光剤と光反射性箔とを練り込むと、ポリウレタンを通して入ってきた光を蓄光剤が蓄光する前に光反射性箔が反射してしまい、蓄光剤の特性を十分発現させることができないと言う現象が発生してしまう。しかも、光反射性箔による反射光も、ポリウレタンを通して該ポリウレタン製品の外側に取り出したいときに、該反射光が外側に出る前に蓄光剤によって蓄光されてしまい、やはり光反射性箔の特性を十分に発現させることができないと言う現象も発生してしまう。
また、蓄光剤含有領域と光反射性箔含有領域とを、隣り合わせずに、蓄光剤も光反射性箔も含有しないポリウレタンのみの領域を介在させて設ける場合にも、蓄光剤と光反射性箔とがそれぞれの特性を発現するのみで、相乗作用を得ることはできない。
このような作用は、透明度の高いポリウレタンを使用する場合であっても生じてしまう。よって、本発明では、蓄光剤含有領域と光反射性箔含有領域とは、隣り合って設けるものとする。
【0021】
光反射性箔は、光反射性を有する箔であればどのようなものでもよく、例えば、金属箔や、金属色膜で被覆されたプラスチック箔等を挙げることができる。
これらの光反射性箔は、あまり大きすぎると、均一な混合が困難になったり、あるいは混合作業や本発明製品の成形作業中に折れ曲がりや捩れが発生し易くなり、これらが発生すると十分な光反射性能を得ることができなくなる。逆に、小さすぎると、所望の光反射性能が得られないことがあるため、本発明では、最長辺が1〜10mm、最短辺が1〜10mmの範囲内に入るものを使用することが適している。
【0022】
上記大きさの光反射性箔の含有量は、少なすぎれば練り込む技術的意義が発現せず、多すぎても効果が飽和するため、光反射性箔含有領域を構成するポリウレタン100重量部に対し1〜50重量部、好ましくは10〜30重量部とすることが適している。
【0023】
本発明では、蓄光剤含有領域、光反射性箔含有領域、あるいはこれらの何れをも含有しない領域において、通常のゲル状あるいは樹脂状のポリウレタン製品に含有させる各種添加剤(例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤など)のうち、これらポリウレタン製品の透明度,ショア硬度,安全性,特異な柔軟性や復元性を阻害しないものを、これらの特性を阻害しない範囲内の量で適宜配合することができる。
また、本発明の製品は、上記のゲル状または樹脂状のものそれぞれを複数層で積層することもできるし、あるいはゲル状の層と樹脂状の層とを混在させて積層することもできる。この場合において、各層毎に色を変えたり、各層毎に蓄光剤や光反射性箔を含有させたり、あるいは樹脂状の層の下部に接触させてゲル状の層を設け、該ゲル状の層のすぐた粘着性で樹脂状層を目的の箇所に貼着させるなど種々の使用態様がある。
【0024】
以上説明した本発明製品は、ポリオレフィン系樹脂製型を用いて成形することができる。
すなわち、本発明製品の母材であるポリウレタンは、他の素材との粘着性が高く、一般のポリウレタン成形用金型を用いて成形する場合には、該金型にポリウレタン成形品が粘着してしまい、良好な脱型が不可能ないしは極めて困難となる。このため、一般には、離型剤を予め塗布した金型を使用して成形加工を行うが、離型剤を使用すると、ポリウレタンの特性、特に高い透明性やゲル状製品の場合の粘(着)性が阻害されてしまう。この結果として、蓄光剤の含有量を多くしても、また蓄光剤と共に光反射性箔を多量に使用しても、所望の蓄光性能を有するゲル状あるいは樹脂状のポリウレタン製品を成形することはできなくなったり、所望の粘(着)性を有するゲル状のポリウレタン製品を成形することはできなくなる。
そこで、本発明では、成形用型として、ポリウレタンとの相溶性の低いポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂製のものを使用する。
【0025】
本発明製品は、上記のポリオレフィン系樹脂製型を用い、この型に離型剤等を使用することなく直接、上記した蓄光剤含有ポリウレタン、または該蓄光剤含有ポリウレタンと光反射性箔含有ポリウレタン、あるいはこれらと共に蓄光剤も光反射性箔をも含有しない上記ポリウレタンを注型し、ポリウレタンが固化した後、脱型することにより得ることができる。
【0026】
このときの注型時の温度や圧力、固化時の温度や圧力、脱型時の温度などの条件は、使用するポリウレタンや添加剤、あるいは製品の型などによって最適のものを選定すればよい。
例えば、2液型ポリウレタンを使用する場合には、注型時の温度や圧力は、常温・常圧で注型、あるいは常温で適度の圧による射出などでよく、固化時の温度・圧力・時間は、ポリウレタン結合が生じる温度と圧力と時間(例えば、常温・常圧・24時間程度、あるいは50〜100℃・常圧・30分〜3時間程度)でよく、脱型時は、常温、常圧でよい。
【0027】
但し、本発明では、母材のポリウレタンとして例えば軟質で高透明性のもの、あるいは良好な粘(着)性を有するゲル状製品用の母材を使用し、これらの特性をそのまま製品ポリウレタンに反映させるためには、上記の注型・固化を迅速に進行させることが重要となる。
そこで、本発明では、ポリウレタンの硬化補助剤(すなわち、触媒)を含有させることが好ましい。
この硬化補助剤は、ウレタン結合反応を促進させる触媒として作用するものであって、母材であるポリウレタンの硬度と透明度、あるいはゲル状製品の良好な粘(着)性や特異な柔軟性と復元性を阻害しないものであれば、どのようなものでも使用することができる。
【0028】
上記硬化補助剤の使用量は、少なすぎれば、ウレタン結合反応を促進させる実用的な効果を得ることができず、多すぎても、この効果が飽和するのみならず、却って製品ポリウレタンの硬度を高くしてしまう場合がある。そこで、本発明では、母材であるポリウレタン100重量部に対し1〜50重量部の硬化補助剤(触媒)となるように配合することが適している。
この硬化補助剤は、蓄光剤含有領域および光反射性箔含有領域、あるいは蓄光剤も光反射性箔含有しない領域の全てに配合することが好ましく、どの領域に配合する場合にあっても、本発明では上記範囲内の量であれば、製品ポリウレタンの所期の特性(例えば、樹脂状製品であって、ショア硬度20〜80の軟質で全光線透過率80%以上の高透明性、あるいはショア硬度5〜30のゲル状製品であって、良好な粘(着)性)を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のポリウレタン製品によれば、軟質〜硬質の高い透明度を有する樹脂状、あるいは軟質の半透明性を有するゲル状であるため、これらの製品に練り込まれた蓄光剤や光反射性箔の作用を良好に発現させることができ、この結果として、優れた蓄光性と優れた発光持続性を保有することができる。
しかも、樹脂状製品にあっては、ポリウレタン素材として食品衛生基準に合格したものを用いることにより無臭・無害となるため、特に軟質のものの場合において乳幼児や老人が起居する住宅において、あるいは乳幼児や老人が利用する各種施設において、暗所におけるステップ等の各種設備の標識や、電気機器類のスイッチなどとして、極めて安全に使用することができる。
また、ゲル状製品にあっては、良好な粘(着)性や特異な柔軟性と復元性を有するため、この粘(着)性と柔軟性・復元性とにより、あるいはこれらの特性と上記の優れた蓄光性・蓄光持続性との相乗作用により、広範囲な用途を確保することができる。
【0030】
また、本発明のポリウレタン製品の成形方法によれば、他の素材と接着しやすい性質を持つポリウレタンを、他の物質との相溶性が極めて少ないポリオレフィン系樹脂製の成形型を用いるため、透明性や粘(着)性を阻害する離型剤を使用することなく、本発明のポリウレタン製品を、所期の特性を損なうことなく、良好に成形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
〔実施例1〕
ショア硬度50、全光線透過率が90%の軟質・高透明性ポリウレタン(ポリシス社製商品名“ポリクリスタル”、硬化促進剤を樹脂分100重量部に対し40重量部含有し、食品衛生基準に合格している)100重量部に対し、市販の蓄光剤10重量部を配合したもの(以下、“ポリウレタン原料1”と記す)と、同じ軟質・高透明性ポリウレタン100重量部に対し、最長辺が1〜10mmで最短辺が1〜10mmの範囲内の大きさの市販の光反射性箔10重量部を配合したもの(以下、“ポリウレタン原料2”と記す)とを、ポリエチレン製の成形型を用いて注型(原料を常温・常圧で注入して成形すること、以下同じ)し、常温・常圧で24時間放置(固化)後、脱型し、図1に示す態様の製品1を得た。
【0032】
図1において、2がドーナツ状の蓄光剤含有領域であり、このドーナツ状領域2の中央部に該領域2と接触して光反射性箔4含有領域3が設けられている。
【0033】
図1に示す態様の製品1は、先ず、光反射性箔含有領域3と同形のキャビティを有する第1のポリエチレン製成形型(図示省略)にポリウレタン原料2を注型して、光反射性箔含有領域3部を成形した。
次いで、製品1と同形のキャビティを有する第2のポリエチレン製成形型(図示省略)の中央部に、上記の成形された光反射性箔含有領域3部を中子として設置し、ドーナツ状をしたキャビティ内にポリウレタン原料1を注型して、蓄光剤含有領域2部を成形した。
この蓄光剤含有領域2部は、該部2の成形と同時に光反射性箔含有領域3部と相溶し、両領域2,3が強固に接着した状態の製品1を得ることができた。
【0034】
この製品1を、太陽光線の直射の無い事務所内の事務デスク上にam9:00からpm5:00まで置いた後、同事務所内のファイル格納用キャビネット内に収納し、同事務所内の電灯を消した。
この状態で、pm11:00まで放置した後、事務所内の電灯を消したままキャビネットを少し開けて、キャビネット内を覗いたところ、蓄光剤含有領域2部が鮮明に光を放っており、該領域2の形状は明確に確認することができた。
光反射性箔含有領域3においては、光反射性箔4が鮮明に確認できる部分と、僅かにしか確認できない部分と、殆ど確認できない部分とがあった。
【0035】
キャビネットを閉じ、さらに4時間静置し、翌日のam3:00に、事務所内の電灯を消したままキャビネットを少し開けて、キャビネット内を覗いた。
蓄光剤含有領域2部は、未だ十分に光を放っており、該領域2の形状は明確に確認することができた。
また、光反射性箔含有領域3においては、少し減少はしたものの光反射性箔4が鮮明に確認できる部分は大きく存在しており、この減少した分だけ僅かにしか確認できない部分と殆ど確認できない部分とはやや増加していた。
【0036】
なお、注型温度を80℃にし、固化時間を1時間とする以外は上記と同様にして実施して得られた製品についても、上記と同様の実験を行った結果、上記と略同様の結果が得られた。
【0037】
〔実施例2〕
ショア硬度15、全光線透過率30%の軟質・半透明性ポリウレタン(ポリシス社製商品名“プリンゲル”、硬化促進剤を樹脂分100重量部に対し6重量部含有している)100重量部に対し、市販の蓄光剤10重量部を配合したもの(以下、“ポリウレタン原料3”と記す)と、蓄光剤を含有しない上記の軟質・半透明性ポリウレタンのみのもの(以下、“ポリウレタン原料4”と記す)とを、実施例1で使用した成形型と同じ原料(すなわち、ポリエチレン)製の成形型を用いて注型し、図2に示す態様の猫の頭部をデフォルメした製品11を得た。
【0038】
図2に示す猫の頭部様製品11は、先ず、猫の目に相当する蓄光剤含有領域12と同形のキャビティを有する第1のポリエチレン製成形型(図示省略)にポリウレタン原料3を注型して、蓄光剤含有領域12部を成形した。
次いで、猫の頭部様製品11と同形のキャビティを有する第2のポリエチレン製成形型(図示省略)の猫の目に相当する部分に、上記の成形された猫の目に相当する蓄光剤含有領域12部を中子として設置し、猫の頭部様をしたキャビティ内にポリウレタン原料4を注型して、蓄光剤非含有領域15部を成形した。
この蓄光剤非含有領域15部(すなわち、猫の頭部様部)は、該部15の成形と同時に蓄光剤含有領域12部(すなわち、猫の目部)と相溶し、両領域12,15が強固に接着した状態の猫の頭部様製品11を得ることができた。
【0039】
〔実施例3〕
実施例2において、ポリウレタン原料4に代えて、該原料4に市販の光反射性箔を該原料4の100重量部に対して10重量部配合したもの(以下、“ポリウレタン原料5”と記す)を用いる以外は、実施例2と全く同様にして注型し、図3に示す態様の猫の頭部様製品111を成形した。
【0040】
図3において、図2と同一符号は図2と同一機能部を示し、13が猫の頭部に相当する光反射性箔14含有領域部である。
【0041】
〔実施例2と実施例3の効果確認試験〕
実施例2で成形した猫の頭部様製品11と、実施例3で成形した猫の頭部様製品111のそれぞれに澱粉を打粉して表面の粘(着)性を抑えた後、実施例1と全く同様にしてキャビネットに収納し、pm11:00と翌日のam3:00に実施例1と全く同様にしてキャビネット内を覗いたところ、次のような結果を得た。
【0042】
pm11:00においては、製品11も製品111も同じように、猫の目に相当する蓄光剤含有領域12部が鮮明に光を放っているのが確認できた。
am3:00においては、製品11については猫の目に相当する蓄光剤含有領域12部の光がかなり減少してはいたが、該部12の存在は僅かに確認できた。一方、製品111については、猫の目に相当する蓄光剤含有領域12部はまだ十分に明るさを保って光を放っており、該部12の存在は鮮明に確認できた。
【0043】
なお、製品111については、猫の頭部に相当する光反射性箔含有領域13が、pm11:00の時点では、光反射性箔14が鮮明に確認できる部分と、僅かにしか確認できない部分と、殆ど確認できない部分とがあり、翌日のam3:00の時点では、少し減少はしたものの光反射性箔14が鮮明に確認できる部分は大きく存在しており、この減少した分だけ僅かにしか確認できない部分と殆ど確認できない部分とはやや増加していた。
【0044】
以上の実施例1〜実施例3の結果を総合すると、光反射性箔4,14含有領域3,13と蓄光剤含有領域2,12とを互いに隣り合って設けることにより、蓄光剤と光反射性箔4,14とが相乗作用をなし、蓄光剤の蓄光効果を一層高め得ることが判る。
【0045】
〔その他の実施例〕
〔1〕ポリウレタン原料4を用い、実施例1で使用した成形型と同じ原料(すなわち、ポリエチレン)製のシート成形用成形型を用いて注型し、80℃、常圧で1時間放置(ゲル化)後、脱型し、1m×1m×0.5mm寸法の粘着性シートを得た。
これを10cm×10cm×0.5mm寸法に裁断し、プラスチック製ロール(柄付)の表面に接着テープで取り付け、このロールを、100円と500円の硬貨を10個ずつ置いた事務所床面上に転がしたところ、100円と500円の硬貨数枚がロール表面の粘着性シートに良好に粘着した。
なお、粘着性シートには、硬貨と共に事務所床面のゴミも大量に付着していたため、硬貨を取り外した後、粘着性シートをロールから剥がし水洗いし、乾燥後再び粘着テープでロールに取り付け、上記と同じ実験を行ったところ、上記と同じ結果を得ることができた。
この水洗い、乾燥による繰り返し使用を、毎日10回1週間に亘って行った結果、1週間後においても粘着性に何ら変化は見られず、良好な粘着性を維持していた。
また、上記の粘着性シートは、特異な柔軟性と復元性を有しており、事務家具下の狭隘な隙間にも自在に挿入でき、またこの隙間から出せば元のシート状に容易復元できることが確認でき、従って硬貨等の磁性を有しないものの回収具として極めて効果的に使用できることが判る。
【0046】
〔2〕上記〔1〕の粘着性シートを3cm×5cm×0.5mm寸法に裁断し、プラスチック製ロールに代えて、深さ0.4mmのプラスチック製ケース(深さ0.2mmの蓋があり、ケース本体の外面には幅1cmのテープが人の手が入る程度の隙間を設けて取り付けられている)のケース本体内に容易に脱落しない状態で収納した。
一方、カシミヤ製のマフラーの表面に繊維くずを付着させたものを容易した。
このカシミヤ製マフラーを、上記ケースの蓋を外し露出させた粘着性シート面で軽く叩いたところ、繊維くずは粘着性シート面に移行した。
繊維くずの付着した粘着性シートは、ケースに収納したまま、あるいはケースから取り出して、極く少量(数10滴)の食器洗浄用洗剤を溶かした水で洗い、乾燥後、再び上記の実験を行った(ケースから取り出したものは、ケースに再度収納して実験を行った)ところ、上記と同じ結果を得ることができた。
この水洗い、乾燥による繰り返し使用を、毎日10回1週間に亘って行った結果、1週間後においても粘着性に何ら変化は見られず、良好な粘着性を維持していた。
【0047】
〔3〕ポリウレタン原料3と、ポリウレタン原料4に赤色・黄色・緑色の顔料それぞれを適量配合した3種類のポリウレタン原料(以下、“ポリウレタン原料41”,“ポリウレタン原料42”,“ポリウレタン原料43”と記す)と、ポリウレタン原料5と、ポリウレタン原料4とポリウレタン原料5とを等量混合したもの(以下、“ポリウレタン原料6”と記す)を用意し、これらポリウレタン原料3,41〜43,5,6をそれぞれ、実施例1で使用した成形型と同じ原料(すなわち、ポリエチレン)製の球成形用成形型を用いて注型し、80℃、常圧で1時間放置(ゲル化)後、脱型し、直径2cmの7種類の粘着性ボールを得た。
これら7種類のボールを10個ずつ、事務所床面に転がし、箒で掃き集めたところ、各ボール表面には事務所床面に存在していたゴミが付着しており、、床面は美麗に掃除されていた。
また、書棚下の暗所に転がっていたポリウレタン原料3,5,6製のボールは、蓄光剤あるいは光反射性箔の影響で容易に見つけることができた。
さらに、ゴミが付着した各ボールは、水(極く少量(数10滴)の食器洗浄用洗剤を溶かした水でもよい)で洗い、乾燥の後、上記と同じ実験を行ったところ、上記と同じ結果を得ることができた。
この水洗い、乾燥による繰り返し使用を、毎日10回1週間に亘って行った結果、1週間後においても粘着性に何ら変化は見られず、良好な粘着性を維持していた
なお、このボールも前記[1]の粘着性シートと同様に、特異な柔軟性と復元性を有しており、事務家具下の狭隘な隙間にも自在に挿入でき、またこの隙間から出せば元のボール状に容易復元できることが確認でき、従って狭隘な箇所の掃除用具として極めて効果的に使用できることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明におけるポリウレタン製品は、優れた蓄光性と優れた発光持続性が要求される分野において、良好に使用することができる。
また、本発明におけるポリウレタン製品が樹脂状の場合は、軟質から硬質のものまで広範囲な硬度のものとすることができ、このうち軟質で、かつ食品衛生基準に合格したポリウレタン素材を用いる場合には、無臭・無害となるため、乳幼児や老人が起居する住宅において、あるいは乳幼児や老人が利用する各種施設において、暗所におけるステップ等の各種設備の標識や、電気機器類のスイッチなどとして、極めて安全に使用することができる。
さらに、本発明におけるポリウレタン製品がゲル状の場合は、良好な粘(着)性を有するため、磁性を有しない硬貨等の回収具として、カシミヤ等高級な素材製の塵埃取り具として、あるいは掃除用ボールなどとして好適に使用することができる。
加えて、ゲル状製品は、特異な柔軟性と復元性を有するため、澱粉その他の適宜の粉を打粉して上記の粘(着)性を抑えれば、玩具や機能回復具として、極めて良好に使用することができる。
【0049】
さらに、本発明のポリウレタン製品の成形方法は、他の素材と接着しやすい性質を持つポリウレタンを、他の物質との相溶性が極めて少ないポリオレフィン系の成形型を用いるため、透明性や粘(着)性を阻害する離型剤を使用することなく、本発明のポリウレタン製品を、良好な特性を保持したまま、良好に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明における軟質・高透明性の樹脂状ポリウレタン製品の一実施態様例を示す説明図である。
【図2】本発明における軟質・半透明性のゲル状ポリウレタン製品の一実施態様例を示す説明図である。
【図3】本発明における軟質・半透明性のゲル状ポリウレタン製品の他の実施態様例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1, 軟質・高透明性の樹脂状ポリウレタン製品
11,111 軟質・半透明性のゲル状ポリウレタン製品
2,12 蓄光剤含有量領域
3,13 光反射性箔含有領域
4,14 光反射性箔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショア硬度5〜100、全光線透過率10〜100%のポリウレタンからなることを特徴とするポリウレタン製品。
【請求項2】
ポリウレタン製品が、
(1)ショア硬度5〜30のゲル状で、かつ全光線透過率10〜50%の半透明性、または、
(2)ショア硬度10〜100の樹脂状で、かつ全光線透過率80%以上の高透明性
であることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン製品。
【請求項3】
製品の少なくとも一部に前記ポリウレタン100重量部に対し1〜50重量部の蓄光剤を含有する領域を有することを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレタン製品。
【請求項4】
少なくとも他の一部に、請求項1〜3の何れかに記載のポリウレタン100重量部に対し、最長辺1〜10mm、最短辺1〜10mmの光反射性箔を1〜50重量部含有する領域を有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のポリウレタン製品。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のポリウレタン製品を成形する方法であって、
ポリオレフィン系樹脂製型に、
(1)i)ショア硬度5〜100、全光線透過率10〜100%のポリウレタンを注型するか、
(2)前記i)のポリウレタンと、ii)蓄光剤含有該ポリウレタンとを注型するかまたは、
(3)前記i),ii)のポリウレタンと、iii)光反射性箔含有該ポリウレタンと
を注型する、
ことを特徴とするポリウレタン製品の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−328256(P2006−328256A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−155199(P2005−155199)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(505197241)有限会社南信化工 (1)
【出願人】(505197252)株式会社日宝化成 (1)
【出願人】(505197263)有限会社タマワークス (3)
【Fターム(参考)】