説明

ポリエステルフィルム用コーティング剤

【課題】ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム上に、該フィルム表面に密着性付与のためのプライマー塗布等の処理なしに、密着性良好なコーティング層を形成可能なコーティング剤を提供すること。
【解決手段】芳香族基含有ビニル系単量体(例えば、スチレン)と、α、β−不飽和ジカルボン酸誘導体(特に、フマル酸エステル誘導体)とを必須成分とするビニル系単量体類をラジカル重合によって得られる重合体(A)を含有するポリエステルフィルムコーティング用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等のプラスチックの表面コートに好適なコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビをはじめ、パソコン、携帯電話など液晶ディスプレイの用途が拡大し、より明るい液晶ディスプレイが求められている。この液晶ディスプレイの明るさ向上を図るにはバックライトユニットの光拡散フィルムにおける光拡散性、光透過性が重要であり、約90%はPETフィルムが用いられている。実際のベースフィルムにはPETフィルムにアクリル樹脂をバインダーとしてアクリルビーズなどの充填剤を配合したコーティング剤を塗布することで、更に光拡散性を高めている。しかしながら、PETフィルム自体がコーティング剤に対して難付着性の基材であるため、これらコーティング剤を付着させる方法が求められている。
現行はPETフィルム自体にプラズマ表面処理、薬品処理といった表面改質を行うことで、上記のコーティング剤を付着させることは比較的容易であった。例えば、密着性を付与するために、二軸延伸ポリエステルフィルム状に水性ウレタン、水性アクリル、水性ポリエステル等の塗布層を形成したのち、再度延伸して密着性良好なポリエステルフィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、前記の方法では、密着性を付与するには効果があるものの、高温で再度延伸する必要があり、延伸操作を省略すると高い密着性が得られない難点があった。従って、液晶ディスプレイメーカーのコストダウン追及により、表面改質を行わない未処理のPETフィルムに移行しつつある。これにより上記コーティング剤を付着させることは困難となってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3211350号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム上に、該フィルム表面に密着性付与のためのプライマー塗布等の処理なしに、密着性良好なコーティング層を形成可能なコーティング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決するため、鋭意検討の結果、フマル酸ジエステル類と芳香族ビニル化合物を必須成分とする共重合体を含むコーティング剤を塗布すると、該コーティング層がポリエステルフィルムとの密着性が良好なことを見出し発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、芳香族基含有ビニル系単量体と、α、β−不飽和ジカルボン酸誘導体とを必須成分とするビニル系単量体類をラジカル重合によって得られる重合体(A)を含有するポリエステルフィルムコーティング用樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂組成物をバインダーとして使用することにより、ポリエステルフィルム(例えば、PETフィルム)自体の表面処理の有無にかかわらず、密着性良好な種々のコーティング層を形成することが可能となり、例えば上記に示すようなアクリルビーズなどの光拡散性向上を目的としたコーティング剤をPETフィルムに対して付着させることを可能とした
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に用いるα、β−不飽和ジカルボン酸誘導体としては、例えば下記一般式(1)の構造を有するものが挙げられる。(下記一般式(1)中のR、Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基を表す。)
【0009】
【化1】

【0010】
前記一般式(1)で表される化合物としては、マレイン酸又はフマル酸、或いはマレイン酸又はフマル酸を炭素原子数1〜12のアルコールでエステル化して得られるジアルキルエステル類等が挙げられる。これらの具体例としては、フマル酸ジメチル、、フマル酸ジエチル、フマル酸ジ−n−プロピル、フマル酸ジ−iso−プロピル、フマル酸ジ−n−ブチル、フマル酸ジ−iso−ブチル、フマル酸ジ−tert−ブチル、フマル酸ジ(2−エチルヘキシル)、マレイン酸ジメチル、、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ−n−プロピル、マレイン酸ジ−iso−プロピル、マレイン酸ジ−n−ブチル、マレイン酸ジ−iso−ブチル、マレイン酸ジ−tert−ブチル、マレイン酸ジ(2−エチルヘキシル)等が挙げられる。
これらの中でも、フマル酸ジアルキルエステル類が、ポリエステルフィルムの密着性向上に顕著な効果を奏する点から好ましい。
【0011】
本発明に用いる芳香族基含有ビニル系単量体としては、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロルメチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0012】
本発明に用いられる前記重合体は、前記α、β−不飽和ジカルボン酸誘導体(a)と芳香族基含有ビニル系単量体(b)とを含有していれば、その他の単量体類を併用して共重合体を製造しても良い。前記(a)と(b)の合計の含有量は、共重合体100重量部(固形分)あたり40重量部以上であることが好ましい。
また、前記α、β−不飽和ジカルボン酸誘導体(a)と芳香族基含有ビニル系単量体(b)との配合率〔(a)/(b)〕(重量比)は0.4〜2.4であることが好ましい。0.5〜1.0であることが特に好ましい。
【0013】
前記以外のその他の単量体類としては、前記α、β−不飽和ジカルボン酸誘導体(a)、芳香族基含有ビニル系単量体(b)と共重合可能な化合物であれば特に限定されない。
【0014】
例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜30のアルキル(メタ)アクリレート類のアクリル系不飽和単量体;
【0015】
マレイン酸またはそのモノエステル、フマル酸のモノエステル、イタコン酸またはそのモノエステル、クロトン酸、p−ビニル安息香酸などのカルボン酸基含有不飽和単量体およびこれらの塩;2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、α−メチルスチレンスルホン酸などのスルホン酸基含有不飽和単量体およびこれらの塩;
【0016】
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、N−メチルビニルピリジウムクロライド、(メタ)アリルトリエチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等の第3級または第4級アミノ基含有不飽和単量体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルラクタム類などアミド基含有不飽和単量体;
【0017】
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系不飽和単量体;ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン不飽和単量体;ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、メタクリル酸アリル、フタル酸ジアリル、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等の多官能不飽和単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のビニル系不飽和単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、オクチルビニルエステル、ベオバ9、ベオバ10、ベオバ11〔ベオバ:シェルケミカルカンパニー(株)商標〕等のビニルエステル不飽和単量体;エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル不飽和単量体;エチルアリルエーテル等のアリルエーテル不飽和単量体;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロアルキルアクリレート、フルオロメタクリレート等のハロゲン含有不飽和単量体等;
【0018】
(メタ)アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有不飽和単量体;ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン系不飽和単量体;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルブチルケトン、ダイアセトンアクリレート、アセトニトリルアクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルアセトフェノン、ビニルベンゾフェノン等のカルボニル基含有不飽和単量体等が挙げられる。
【0019】
重合体(A)の重量平均分子量としては、3000〜100000であることが密着性が良好であることが好ましい。また、ガラス転移温度が0℃〜90℃であることも、前記の理由から好ましい。なお、前記ガラス転移温度は、後述する方法で測定した。
【0020】
本発明に用いる芳香族基含有ビニル系単量体および、α、β−不飽和ジカルボン酸誘導体を必須成分とした重合性単量体を重合した重合体は、適度な分子量まで重合して、そのまま種々の有機溶剤に溶解して有機溶剤溶液として用いても良い。
【0021】
また、反応性の官能基(例えば水酸基など)を有するモノマーを共重合して、対応する硬化剤を組み合わせて用いても良い。
【0022】
前記の例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有不飽和単量体やを併用して、活性水素含有基(水酸基)と反応性を有するイソシアネート基含有化合物或いはブロックイソシアネート類を配合して、塗布したのち硬化させても良い。前記イソシアネート化合物として、例えば、トリレンジイソシアネートもしくはジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネートもしくはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の如き、各種の脂肪族系ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート等の脂環族系ジイソシアネート; 前記ジイソシアネート類と、エチレングリコール、トリメチロールエタンもしくはトリメチロールプロパン等の多価アルコール類や、ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオール類や、イソシアネート基と反応する官能基を有するポリカプロラクトンポリオール類や比較的低分子量のポリエステル樹脂(油変性タイプを含む)やアクリル系共重合体等との付加物; あるいは、ビュレット構造を有するイソシアネート類;ジイソシアネート類を環化させて得られるイソシアヌレート環含有イソシアネート類;イソシアネート類を公知慣用のブロック化剤でブロック化させて得られるものがある。
【0023】
イソシアネート類の代表的な市販品の例としては、「バーノックDN−950、バーノックDN−980、バーノックDN−981、バーノックDN−992、バーノックD−550」〔いずれも、大日本インキ化学工業(株)製品〕、「デュラネート24A−100、デュラネートTHA−100、デュラネートTPA−B80X」〔いずれも、旭化成工業(株)製品〕、「コロネートHK、コロネート2507」〔いずれも、日本ポリウレタンウレタン工業(株)製品〕、「タケネートD−140N」〔武田薬品工業(株)製品〕等がある。
【0024】
該イソシアネート化合物の使用量としては、得られる塗料組成物の硬化性や塗料価格等を考慮すると、本発明に係るビニル系共重合体が有する水酸基の1当量に対して、イソシアネート基が0.2〜1.5当量となる様な範囲内、つまり、当量比〔OH基〕/〔NCO基〕が1/0.2〜1/1.5なる範囲が好ましい。
【0025】
本発明に用いる重合体(A)は、有機溶媒に溶解して使用に供することが好ましく、これらの有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、「ソルベッソ 150」[エクソン化学(株)製品]等のような芳香族系炭化水素溶剤類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル系溶剤類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;n−ヘキサンまたはn−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、グリコールエーテルエステル系溶剤類等が上げられる。
【0026】
有機溶剤溶液として用いるの不揮発分としては、ポリエステルフィルムへの塗工が円滑に行われれば、特に限定されないが、例えば、20〜80重量%が好ましい。
【0027】
本発明に係わるポリエステルフィルムの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを例示することができ、これらの共重合体またはこれと小割合の他樹脂とのブレンドであってもよい。これらのポリエステルのうち、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが力学的物性や光学物性等のバランスが良いので好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により、一層具体的に説明する。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」、「%」は「重量%」である。
【0029】
実施例1
温度計、撹拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、酢酸ブチルの45部を仕込んで、110℃にまで昇温した。110℃に達した時点で、スチレン32部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート11部、フマル酸ジブチル25部、メチルメタクリレート32部からなる単量体類の混合物と、パーブチルOの0.5部、パーブチルD95の0.3部を14部の酢酸ブチルに溶解したものを、同時に、5時間かけて滴下し、110℃に保ちながら、滴下終了後90分間、攪拌、反応を続けた。次いで、酢酸ブチルの0.5部とパーブチルOの0.2部を投入し、。その後、不揮発分65%以上、粘度(ガードナー)がZ以上になるまで反応を継続した。反応終了後、室温にまで冷却して、41部の酢酸ブチルを加え、目的とする重合体(A)を得た。得られた重合体の水酸基価は、47mgKOH/g、重量平均分子量は40000、計算上のガラス転移温度は65℃であった。
次いで、前記重合体(A)を下記に示す配合でコーティング剤を調製し、下記の塗装方法でポリエステルフィルムに塗装し、密着性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0030】
実施例2
前記単量体類をスチレン42部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート23部、フマル酸ジブチル35部に代えた以外は実施例と同様にして、重合体を得た。得られた重合体の水酸基価は、100mgKOH/g、重量平均分子量は40000、計算上のガラス転移温度は49℃であった。次いで、実施例1と同様にしてコーティング剤を調製し、下記の塗装方法でポリエステルフィルムに塗装し、密着性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0031】
実施例3
前記単量体類をスチレン20部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、フマル酸ジブチル10部、メチルメタクリレート59部、メタクリル酸1部に代えた以外は実施例と同様にして、重合体を得た。得られた重合体の水酸基価は、43mgKOH/g、重量平均分子量は20000、計算上のガラス転移温度は84℃であった。次いで、実施例1と同様にしてコーティング剤を調製し、下記の塗装方法でポリエステルフィルムに塗装し、密着性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0032】
比較例1
前記単量体類をスチレン25部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5部、メチルメタクリレート57部、n−ブチルアクリレート12部、メタクリル酸1部に代えた以外は実施例と同様にして、重合体を得た。得られた重合体の水酸基価は、22mgKOH/g、重量平均分子量は30000、計算上のガラス転移温度は69℃であった。次いで、実施例1と同様にしてコーティング剤を調製し、下記の塗装方法でポリエステルフィルムに塗装し、密着性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0033】
比較例2
前記単量体類を2−ヒドロキシエチルメタクリレート11部、メチルメタクリレート33部、メタクリル酸1部、エチルアクリレート55部に代えた以外は実施例1と同様にして、重合体を得た。得られた重合体の水酸基価は、47mgKOH/g、重量平均分子量は65000、計算上のガラス転移温度は17℃であった。次いで、実施例1と同様にしてコーティング剤を調製し、下記の塗装方法でポリエステルフィルムに塗装し、密着性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0034】
比較例3
前記単量体類を2−ヒドロキシエチルメタクリレート8部、メチルメタクリレート65部、フマル酸ジブチル15部、マレイン酸ジブチル10部、メタクリル酸2部に代えた以外は実施例1と同様にして、重合体を得た。得られた重合体の水酸基価は、35mgKOH/g、重量平均分子量は10000、計算上のガラス転移温度は70℃であった。次いで、実施例1と同様にしてコーティング剤を調製し、下記の塗装方法でポリエステルフィルムに塗装し、密着性試験を行った。得られた結果を表1に示す。
【0035】
[重量平均分子量の測定]
なお、本発明におけるGPCによる重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR−Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0重量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
【0036】
[ガラス転移温度の算出方法]
ガラス転移温度は、下記式で求めた。
Tg−1=ΣXi・Tgi−1 (K)
ここで重合体は、i=1〜nまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの重量分率で、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度である。モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、Polymer Handbook(4th Edition)J.Brandrup,E.H.Immergut,E.A.Grulke著(Wiley Interscience)記載の値を使用した。上記に記載のないものについては、適宜仮定した値を用いた
【0037】
[コーティング剤配合例]
ビニル系共重合体 10g
シンナー(酢酸ブチル) 23.3g
硬化剤*1 1.2g
*1;バーノック DN−980;DIC株式会社製ポリイソシアネート
(〔(OH)/(NCO)〕=1.0(固形分換算)で配合した。)
【0038】
[塗装方法]
基材[未処理のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム]にバーコーターを用いて乾燥膜厚2〜5μとなるように塗装、乾燥機にて80℃、30分加熱乾燥したのち、常温にて1日乾燥して付着試験を行った。
【0039】
[試験方法]
(1次密着性試験)
被膜表面にカッターにて1mm角で10×10個の切れ目を入れ、セロファンテープによる剥離試験を行い、残存する目数を下記評価基準で評価した。
評価基準 ◎:100個
○:85〜99個
△:65〜84個
×:35〜64個
××:34個以下
【0040】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族基含有ビニル系単量体と、α、β−不飽和ジカルボン酸誘導体とを必須成分とするビニル系単量体類をラジカル重合によって得られる重合体(A)を含有するポリエステルフィルムコーティング用樹脂組成物
【請求項2】
前記ビニル系単量体類の合計100重量部に対して、芳香族基含有ビニル系単量体を10〜50部、且つ、α、β−不飽和ジカルボン酸誘導体を5〜50部含有する請求項1に記載のポリエステルフィルムコーティング用樹脂組成物
【請求項3】
更に、ビニル系単量体として(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルを含有する請求項1、または2記載のポリエステルフィルムコーティング用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の重合体(A)の重量平均分子量が3000〜100000、且つ、ガラス転移温度が0℃〜90℃であるポリエステルフィルムコーティング用樹脂組成物
【請求項5】
更に、イソシアネート硬化剤を配合した請求項3記載のポリエステルフィルムコーティング用樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−275344(P2010−275344A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126353(P2009−126353)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】