説明

ポリエステルフィルム積層体とその製造方法

【課題】密着性を改善した耐候性ポリエステルフィルム積層体の提供。
【解決手段】120℃、相対湿度100%で熱処理した後の破断伸度保持率が50%以上に保持される熱処理時間が50時間以上である耐候性ポリエステルフィルムと、該耐候性ポリエステルフィルムの少なくとも片方の面上に設けられた層とを有し、前記耐候性ポリエステルフィルムの結晶化速度が10〜50J/g・minであることを特徴とするポリエステルフィルム積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルム積層体とその製造方法に関する。詳しくは、耐候性に優れ、かつ、密着性に優れたポリエステルフィルム積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは耐候性、特に使用環境下における耐加水分解性を比較的容易に高めることができることから、様々な用途に用いられている。近年では、クリーンエネルギーとして屋外に設置するタイプの太陽電池が急速に普及しつつあり、ポリエステルフィルムはこの太陽電池モジュールにおいて太陽電池素子や充填剤を封止するための太陽電池裏面封止用シートとして有用に用いられている。このようなポリエステルフィルムは、耐候性やガスバリア性に加え、さらに機械強度、耐熱性、耐電圧性、ガスバリア性などを高める観点から、耐候性ポリエステルフィルム上にこれらの機能を有する各種機能層を少なくとも1層積層したポリエステルフィルム積層体として用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
このような機能層は、耐候性ポリエステルフィルムと塗布や接着剤を用いた貼り合わせにより積層されている。特許文献1には、アルミナ蒸着したポリエチレンテレフタレート(以下、PETとも言う)フィルム、白色PETフィルムおよび耐候性PETフィルムが、それぞれ接着剤を用いて順次積層された太陽電池モジュール用裏面保護シート積層体が開示されている(図2参照)。
【0004】
特許文献2には、耐候性PETフィルム(B層)の一方の表面に導電性を有するA層を塗布により積層し、B層のもう一方の表面またはA層上にそれぞれ接着層を用いて一般的なPETフィルムおよびアルミナ蒸着PETフィルムを貼り合わせた太陽電池用バックシート用フィルム積層体が開示されている(図3参照)。
【0005】
また、特許文献3には、耐候性PETフィルムなどのポリエステルフィルムと太陽電池モジュールの充填剤として用いられているエチレン−ビニルアセテート共重合体層との接着性を改善するために、接着改善層として、ウレタン系樹脂を含む接着層とエチレン−ビニルアセテート共重合体エマルジョンを含む相溶性樹脂層を用いる方法が開示されている。同文献には、上記接着改善層をアルミナ蒸着PETフィルムのPETフィルム側に塗布し、アルミナ層の面に白色PETフィルムおよび耐候性PETフィルムの反対側の面を、それぞれ接着層を用いて積層した構成の太陽電池モジュール用裏面保護シート積層体などが開示されている(図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2007/122936号公報
【特許文献2】特開2009−158952号公報
【特許文献3】WO2008/069024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、本発明者がこれらの太陽電池用バックシート積層体について湿熱環境下で長期経時させたところ、各層の間や、各層の層内において密着不良が発生して、剥離が生じることが分かった。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、密着性を改善した耐候性ポリエステルフィルム積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、耐候性ポリエステルフィルムの120℃、相対湿度100%で熱処理した後の破断伸度保持率が50%以上に保持される熱処理時間(以下、耐候時間とも言う)を特定の範囲に制御し、かつ耐候性ポリエステルフィルムの結晶化速度を特定の範囲に制御することにより、積層体の密着性を改善できることを見出すに至った。すなわち、以下の構成によって上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
[1] 120℃、相対湿度100%で熱処理した後の破断伸度保持率が50%以上に保持される熱処理時間が50時間以上である耐候性ポリエステルフィルムと、該耐候性ポリエステルフィルムの少なくとも片方の面上に設けられた層とを有し、前記耐候性ポリエステルフィルムの結晶化速度が10〜50J/g・minであることを特徴とするポリエステルフィルム積層体。
[2] 前記耐候性ポリエステルフィルムの120℃、相対湿度100%で熱処理した後の破断伸度保持率が50%以上に保持される熱処理時間が50〜150時間であることを特徴とする[1]に記載のポリエステルフィルム。
[3] 前記耐候性ポリエステルフィルムの膜厚が50〜350μmであることを特徴とする[1]または[2]に記載のポリエステルフィルム。
[4] 前記耐候性ポリエステルフィルムが、融点のプレピーク温度が235〜250℃のポリエステル樹脂を耐候性ポリエステルフィルムに対して10〜500ppm含み、混練押出し機を用いて製膜されたことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム積層体。
[5] 前記耐候性ポリエステルフィルムが10〜1000sec−1の剪断速度での混練押出しにより製膜されたことを特徴とする[4]に記載のポリエステルフィルム積層体。
[6] 前記混練中に、前記混練押出し機の計量部のメルト温度を圧縮部のメルト温度より1〜20℃高くして製膜されたことを特徴とする[4]または[5]に記載のポリエステルフィルム積層体。
[7] 前記混練中に、前記混練押出し機のスクリュー回転数に0.01〜1%の変動を与えて製膜したことを特徴とする[4]〜[6]のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム積層体。
[8] 前記スクリューの外周長が600mm〜1900mmであることを特徴とする[7]に記載のポリエステルフィルム積層体。
[9] 前記混練押出し機からダイを通して押出したメルトを200〜5000℃/minで冷却固化して製膜されたことを特徴とする[4]〜[8]のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム積層体。
[10] 前記ダイから押出したメルトの厚みのむらが0.1〜5%であることを特徴とする[9]に記載のポリエステルフィルム積層体。
[11] 前記耐候性ポリエステルフィルムの少なくとも片面上に、120℃、相対湿度100%で熱処理した後の破断伸度保持率が50%以上に保持される熱処理時間が該耐候性ポリエステルフィルムより1時間〜100時間短い積層用ポリエステルフィルムを有することを特徴とする[1]〜[10]のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム積層体。
[12] 前記積層用ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を有することを特徴とする[11]に記載のポリエステルフィルム積層体。
[13] 前記耐候性ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を有することを特徴とする[1]〜[12]のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム積層体。
[14] 前記塗布層が、フィルム幅方向に0.5℃〜10℃の温度分布を与えて形成されたことを特徴とする[12]または[13]に記載のポリエステルフィルム積層体。
[15] 前記塗布層が、易接着層、UV吸収層、白色層、防汚層のうち少なくとも1層を含むことを特徴とする[12]〜[14]のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム積層体。
[16] ポリエステル樹脂と、該ポリエステル樹脂に対して10〜500ppmの融点のプレピーク温度(以下、Tmプレピーク温度とも言う)が235〜250℃のポリエチレンテレフタレート樹脂とを含む樹脂組成物を、混練押出し機を用いてメルト化し、製膜する工程を含むことを特徴とするポリエステルフィルム積層体の製造方法。
[17] 前記樹脂組成物を、10〜1000sec−1の剪断速度に制御しながら混練することを特徴とする請求項16に記載のポリエステルフィルム積層体の製造方法。
[18] 前記混練中に、前記混練押出し機の計量部のメルト温度を圧縮部のメルト温度より1〜20℃高くすることを特徴とする[16]または[17]に記載のポリエステルフィルム積層体の製造方法。
[19] 前記混練中に、前記混練押出し機のスクリュー回転数を0.01〜1%変動させることを特徴とする[16]〜[18]のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム積層体の製造方法。
[20] 前記スクリューの外周長が600mm〜1900mmであることを特徴とする[19]に記載のポリエステルフィルム積層体の製造方法。
[21] 前記混練押出し機からダイを通してメルトを押出し、該メルトを200〜5000℃/minで冷却固化することを特徴とする[16]〜[20]のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム積層体の製造方法。
[22] 前記ダイから押出したメルトの厚みのむらを0.1〜5%となるように制御することを特徴とする[21]に記載のポリエステルフィルム積層体の製造方法。
[23] ポリエステル樹脂を含み、かつ融点のプレピーク温度が235℃未満である樹脂組成物を前記耐候性ポリエステルフィルムの少なくとも片面上に適用して、積層用ポリエステルフィルムを製膜する工程を含むことを特徴とする[16]〜[22]のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム積層体の製造方法。
[24] 前記積層用ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、塗布により層を形成する工程を含むことを特徴とする[23]に記載のポリエステルフィルム積層体の製造方法。
[25] 前記耐候性ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、塗布により層を形成する工程を含むことを特徴とする[16]〜[24]のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム積層体の製造方法。
[26] フィルム幅方向に0.5℃〜10℃の温度分布を与えるように制御しながら前記塗布を行うことを特徴とする[24]または[25]に記載のポリエステルフィルム積層体の製造方法。
[27] 前記塗布により、易接着層、UV吸収層、白色層、防汚層のうち少なくとも1層を塗布形成することを特徴とする[24]〜[26]のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、密着性を改善した耐候性ポリエステルフィルム積層体を提供することができる。また、前記耐候性ポリエステルフィルム積層体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のポリエステルフィルム積層体の構成の一例について、その断面を示した概略図である。
【図2】国際公開WO2007/122936号公報の実施例1に記載のポリエステルフィルム積層体の構成の一例について、その断面を示した概略図である。
【図3】特開2009−158952号公報の実施例1に記載のポリエステルフィルム積層体の構成の一例について、その断面を示した概略図である。
【図4】国際公開WO2008/069024号公報の実施例1に記載のポリエステルフィルム積層体の構成の一例について、その断面を示した概略図である。
【図5】本発明のポリエステルフィルム積層体の構成の一例である実施例101のポリエステルフィルム積層体について、その断面を示した概略図である。
【図6】本発明のポリエステルフィルム積層体の構成の一例である実施例102のポリエステルフィルム積層体について、その断面を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明のポリエステルフィルム積層体やその製造方法などについて詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
[ポリエステルフィルム積層体]
本発明のポリエステルフィルム積層体(以下、本発明の積層体とも言う)は、120℃、相対湿度100%で熱処理した後の破断伸度保持率が50%以上に保持される熱処理時間(耐候時間)が50時間以上である耐候性ポリエステルフィルムと、該耐候性ポリエステルフィルムの少なくとも片方の面上に設けられた層とを有し、前記耐候性ポリエステルフィルムの結晶化速度が10〜50J/g・minであることを特徴とする。
以下、本発明のポリエステルフィルム積層体の好ましい態様を参照しつつ、本発明を具体的に説明する。
【0014】
<耐候性ポリエステルフィルム>
(耐候時間)
本発明のポリエステルフィルム積層体は、120℃、相対湿度100%で熱処理した後の破断伸度保持率が50%以上に保持される熱処理時間(耐候時間)が50時間以上である耐候性ポリエステルフィルムを含む。前記耐候性ポリエステルフィルムは、基材フィルムとして用いることが好ましく、該耐候性ポリエステルフィルムの少なくとも片方の面上にその他の層を設けて本発明のポリエステルフィルム積層体を得ることができる。以下、本明細書中において特に断りなく基材フィルムという場合は、前記耐候性ポリエステルフィルムのことを表す。
いかなる理論に拘泥するものでもないが、前記耐候性ポリエステルフィルムと他の層との間の剥がれの原因は下記のように推定される。まず、前記耐候性ポリエステルフィルムの耐加水分解性が低下することが挙げられる。耐加水分解性が低下すると、長期使用時にポリエステルの分子量が低下する。その結果、前記耐候性ポリエステルフィルムの脆性が増加し脆くなり、特に前記耐候性ポリエステルフィルムと他の層との界面のポリエステル分子も低分子量化し脆くなる。そのため、わずかな伸張応力で分子切断され易くなる。このように前記耐候性ポリエステルフィルムと他の層との間の界面が破壊され、剥がれが進行し易くなる。この耐加水分解性の低下は、前記耐候性ポリエステルフィルム中に水が入ることで加速される。
耐加水分解性については、上述した耐候時間により評価することが可能である。これは、強制的に120℃、相対湿度100%で加熱処理(以下、サーモ処理とも言う)することで加水分解を促進させた際の破断伸度の低下から求められる。具体的な測定方法は以下に示す。
【0015】
本発明中、前記耐候時間は、120℃、相対湿度100%で熱処理(サーモ処理)した後の破断伸度保持率が50%以上の範囲で保持される熱処理時間[hr]である。破断伸度保持率は、下記式(1)で求められる。
破断伸度保持率[%]=(サーモ処理後の破断伸度)/(サーモ処理前の破断伸度)×100 ・・・(1)
【0016】
具体的には、120℃、相対湿度100%で10時間〜300時間を10時間間隔で熱処理(サーモ処理)を実施した後、各サーモ処理サンプルの破断伸度を測定し、得られた測定値をサーモ処理前の破断伸度で除算し、各サーモ処理時間での破断伸度保持率を求める。そして、横軸にサーモ時間、縦軸に破断伸度保持率をとってプロットし、これを結んで破断伸度保持率が50%以上となる熱処理の時間を求める。
【0017】
前記破断伸度は、引っ張り試験機にポリエステルフィルムのサンプルをセットし、25℃、相対湿度60%環境下で20mm/分で引っ張ることにより破断するまでの伸度を、MD方向及びTD方向のそれぞれについて幅方向に10等分した各点にて20cm間隔で5回繰り返して計50点を測定し、得られた値を平均して求められる値である。
【0018】
前記耐候性ポリエステルフィルムの120℃、相対湿度100%で熱処理した後の破断伸度保持率が50%以上に保持される熱処理時間(耐候時間)は、50〜150時間であることが好ましく、より好ましくは60〜140時間、特に好ましくは75〜130時間である。前記耐候性ポリエステルフィルムの耐候時間の下限値を上記範囲以上に制御することにより、基材フィルムの加水分解に伴う脆化を抑制し、密着テストの際に基材フィルム中の凝集破壊による密着低下を抑制することができる。前記耐候性ポリエステルフィルムの耐候時間の上限値を上記範囲以下に制御することにより、フィルム含水率を高くし過ぎないように制御してフィルムに結晶構造が発達し過ぎて弾性率が高くなり、伸張応力が増加することに起因する剥がれを抑制することができる。
本発明においては、前記耐候性ポリエステルフィルムの耐候時間が50時間以上であることで、長期使用の際に被着物との密着界面で加水分解に伴う変化が抑えられ、密着状態を安定に保持することができる。これにより、被着物との間の剥がれが防止され、例えば屋外等の高温、高湿環境や曝光下に長期に亘り置かれる場合でも、高い耐久性能を示す。
【0019】
(結晶化速度)
本発明のフィルムは、結晶化速度が10〜50J/g・min、より好ましくは15〜45J/g・min、さらに好ましくは20〜40J/g・minである。
結晶化速度が本発明の範囲の上限値以下であれば、球晶が増大し過ぎず、これを応力集中点としたデラミによる密着不良が発生し難くなる。一方、結晶化速度が本発明の範囲の下限値以上であれば、球晶の量が十分となり、フィルム強度が低下し過ぎず、フィルム強度に起因するデラミによる密着不良が発生し難くなる。
従来、結晶性ポリエステルの結晶化速度を高める方法としては、特開2008−88213号公報に記載されているポリテトラフルオロエチレンのような発泡核剤を入れて気泡を生成させる方法が知られていた。しかしながら、このような核剤は結晶化を著しく加速し、得られるポリエステルフィルムの結晶化速度は、本発明に用いられる前記耐候性ポリエステルフィルムの結晶化速度の上限値を上回るものであった。
【0020】
前記結晶化速度は、本明細書中において、以下の方法で測定した値のことを言う。サンプル5〜10mgをAlパンに入れる。これをDSCでN下10℃/分で300℃まで昇温、これを液体N中でクエンチし、常温に戻し乾燥させる。これを205℃で1分結晶化(205℃のオーブン内に設置したヒートブロック(205℃に達した2kgの鉄の塊)に接触させた後、液体窒素でクエンチ。これを常温に戻し乾燥させた後、DSCでN下10℃/分で昇温し、130〜150℃の発熱ピーク量(H1)、220〜270℃の吸熱量(H2)をもとめ、H2−H1を結晶化速度とする。
【0021】
(膜厚)
本発明のポリエステルフィルム積層体は、前記耐候性ポリエステルフィルムの膜厚が50〜350μmであることが好ましく、70〜320μmであることがより好ましく、210〜310μmであることが特に好ましい。
一般的にフィルムを厚手に製膜した場合、含水率の向上、耐加水分解性の低下に直結し、ポリエステルフィルムが伸張し易くなるため、ポリエステルフィルムと被着物との間の寸法変化差からポリエステルフィルム内に伸張応力が発生し、これが剥がれを引起こしやすい。本発明では、フィルムを厚手に製膜した場合も前記耐候性ポリエステルフィルムと他の層間の剥がれを抑制することができる。
特に前記耐候性ポリエステルフィルムを厚手化することで含水率が増加し易くなる原因については、以下のように推察される。すなわち、ポリエステルの溶融製膜では、溶融した樹脂(メルト)をダイから押出し、これを急冷固化して非晶フィルムを調製し、これを延伸してフィルムに製膜するが、厚手化に伴い、溶融キャストフィルムが厚くなって冷却ロール上で溶融樹脂を冷却する際の冷却速度が低下し、球晶を生成する。これが、延伸ムラを引き起こす。球晶を含む未延伸フィルムを延伸した場合、球晶が均一延伸を阻害し、配向の高い個所と低い個所とが発現する結果、配向の低い個所は配向結晶やタイ分子を生成し難く、そこから水が浸入し易くなり、しかも加水分解が進行し易い。水が浸入しやすくなることで含水率が上昇し、それに伴い加水分解も進行する。
【0022】
(ポリエステル樹脂)
前記耐候性ポリエステルフィルムに用いられるポリエステル樹脂としては特に制限はなく、公知のポリエステル樹脂を用いることができる。その中でも、テレフタル酸またはその誘導体とエチレングリコールとを周知の方法でエステル交換反応させて得られるポリエチレンテレフタレートまたはその誘導体であることが好ましい。
【0023】
前記耐候性ポリエステルフィルムに用いられるポリエステル樹脂の数平均分子量は、18500〜40000であることが好ましく、19500〜35000であることがより好ましく、20500〜30000であることが特に好ましい。
【0024】
前記耐候性ポリエステルフィルムに用いられるポリエステル樹脂は、末端カルボキシル基(以下、「末端COOH」ともいう。)の量(末端COOH量;AV)が5eq/トン〜24eq/トンであることが好ましい。末端カルボン酸は分子間の相互作用が強く、分子が集合することを促すため、球晶生成を促す。このため、末端COOH量が24eq/トン以下であることで、球晶生成が抑制され、更にポリエステルの親水性を低減させて含水率を低減させることができる。また、末端COOH量が5eq/トン以上であることで、配向結晶が生成される。
上記のようなAVに調節するには、重合中の真空度を上げて、残留酸素による酸化を抑制することにより行なうことができる。また、固相重合を行なうことも好ましい。
【0025】
末端COOH量は、7eq/トン〜22eq/トンがより好ましく、更に好ましくは10eq/トン〜20eq/トンである。
【0026】
なお、末端COOH量は、ポリエステルをベンジルアルコール/クロロホルム(=2/3;体積比)の混合溶液に完全溶解させ、指示薬としてフェノールレッドを用い、これを基準液(0.025NのKOH−メタノール混合溶液)で滴定し、その滴定量から算出される値である。
【0027】
前記耐候性ポリエステルフィルムに用いられるポリエステル樹脂の極限粘度(IV:Intrinsic Viscosity)は、0.61以上0.9以下が好ましい。IVの値が前記範囲内であることで、分子の運動性を低下させ、球晶の生成が抑制され、含水量が低く抑えられる。さらに、分子量低下により発生する脆化に伴う被着物(特に太陽電池モジュールの電池側基板に設けられた封止材(例えばEVA)との間の界面における破壊(剥がれ)を抑制する効果も有する。また、IVの値が前記範囲内である場合、延伸性が良好であり、延伸ムラがより抑制される。
このようなIV値に調節するには、液相重合時の重合時間の調節及び/又は固相重合により行なうことができる。
【0028】
前記IVは、0.71以上0.85以下がより好ましく、さらに好ましくは0.75以上0.82以下である。
【0029】
なお、極限粘度(IV)は、溶液粘度(η)と溶媒粘度(η)の比η(=η/η;相対粘度)から1を引いた比粘度(ηsp=η−1)を濃度で割った値を濃度がゼロの状態に外挿した値である。IVは、1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(=2/3[質量比])混合溶媒中の30℃での溶液粘度から求められる。
【0030】
(添加剤)
前記耐候性ポリエステルフィルムは、光安定化剤、酸化防止剤などの添加剤を更に含有することができる。
【0031】
前記耐候性ポリエステルフィルムは、光安定化剤を含有することが好ましい。光安定化剤を含有することで、紫外線劣化を防ぐことができる。光安定化剤とは、紫外線などの光線を吸収して熱エネルギーに変換する化合物、フィルム等が光吸収して分解して発生したラジカルを捕捉し、分解連鎖反応を抑制する材料などが挙げられる。
【0032】
光安定化剤として好ましくは、紫外線などの光線を吸収して熱エネルギーに変換する化合物である。このような光安定化剤をフィルム中に含有することで、長期間継続的に紫外線の照射を受けても、フィルムによる部分放電電圧の向上効果を長期間高く保つことが可能になったり、フィルムの紫外線による色調変化、強度劣化等が防止されたりする。例えば紫外線吸収剤は、ポリエステルの他の特性が損なわれない範囲であれば、有機系紫外線吸収剤、無機系紫外線吸収剤、及びこれらの併用のいずれも、特に限定されることなく好適に用いることができる。一方、紫外線吸収剤は、耐湿熱性に優れ、フィルム中に均一分散できることが望まれる。
【0033】
前記紫外線吸収剤の例としては、有機系の紫外線吸収剤として、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系等の紫外線安定剤などが挙げられる。具体的には、例えば、サリチル酸系のp−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、ベンゾフェノン系の2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン、ベンゾトリアゾール系の2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2Hベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、シアノアクリレート系のエチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート)、トリアジン系として2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、ヒンダードアミン系のビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、そのほかに、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、及び2,4−ジ・t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ・t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、などが挙げられる。
これらの紫外線吸収剤のうち、繰り返し紫外線吸収に対する耐性が高いという点で、トリアジン系紫外線吸収剤がより好ましい。なお、これらの紫外線吸収剤は、上述の紫外線吸収剤単体でフィルムに添加してもよいし、有機系導電性材料や、非水溶性樹脂に紫外線吸収剤能を有するモノマーを共重合させた形態で導入してもよい。
【0034】
光安定化剤の前記耐候性ポリエステルフィルム中における含有量は、前記耐候性ポリエステルフィルムの全質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、より好ましくは0.3質量%以上7質量%以下であり、さらに好ましくは0.7質量%以上4質量%以下である。これにより、長期経時での光劣化によるポリエステルの分子量低下を抑止でき、その結果発生するフィルム内の凝集破壊に起因する密着力低下を抑止できる。
【0035】
前記耐候性ポリエステルフィルムの380nmでの吸光度は、0.001以上0.1以下であるのが好ましい。吸光度が前記範囲内であると、太陽電池用バックシートとして使用する場合にポリエステルフィルムが光分解して末端COOHを生成し、ひいては加水分解を促すのを抑制することができる。前記吸光度としては、0.01以上0.09以下がより好ましく、さらに好ましくは0.02以上0.08以下である。
前記吸光度は、有機系、無機系の紫外線(UV)吸収剤を添加することで調節が可能であるが、長期に亘り耐性を維持する観点からは、無機系のUV吸収剤を使用することが好ましい。UV吸収剤としては、後述の添加剤の項に記載の紫外線吸収剤と同様のものをあげることができる。中でも、UV吸収剤としては、TiOがより好ましい。UV吸収剤の好ましい添加量は、ポリエステルに対して0.01質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上3質量%以下であり、さらに好ましくは0.3質量%以上3質量%以下である。
前記吸光度は、分光光度計のサンプル側に厚み300μmのポリエステルフィルムを貼り付け、リファレンス側は空気として、波長380nmでの吸光度を測定することにより求められる。
【0036】
更に、前記耐候性ポリエステルフィルムは、前記光安定化剤の他にも、例えば、易滑剤(微粒子)、着色剤、熱安定剤、核剤(結晶化剤)、難燃化剤などを添加剤として含有することができる。
【0037】
<その他の層>
本発明のポリエステルフィルム積層体は、前記耐候性ポリエステルフィルムの少なくとも片方の面上に設けられた層を有する。このような耐候性ポリエステルフィルム以外のその他の層としては、特に制限はなく、一般的に太陽電池用バックシートに応用されるときに用いられている公知の層を採用することができる。
前記その他の層としては、例えば、後述する特定の耐候時間の積層用ポリエステルフィルム、白色ポリエステルフィルム、アルミナ蒸着ポリエステルフィルム(ガスバリア性ポリエステルフィルムとも言う)、各種機能層などを挙げることができる。
【0038】
(積層用ポリエステルフィルム)
その中でも、本発明のポリエステルフィルム積層体は、前記耐候性ポリエステルフィルムの少なくとも片面上に、120℃、相対湿度100%で熱処理した後の破断伸度保持率が50%以上に保持される熱処理時間(耐候時間)が該耐候性ポリエステルフィルムより1時間〜100時間短い積層用ポリエステルフィルムを有することが好ましい。
このような耐候性の弱い前記積層用ポリエステルフィルムを積層することで、いかなる理論に拘泥するものではないが、経時で耐候性の弱い前記積層用ポリエステルフィルムが加水分解を引き起こし、末端COOHが増加し、これが密着力を向上させることができる。前記積層用ポリエステルフィルムは、前記耐候性ポリエステルフィルムの耐候時間に対して、耐候時間が1時間以上100時間以下短いことが好ましく、5時間以上80時間以下短いことがより好ましく、5時間以上75時間以下短いことが特に好ましく、10時間以上60時間以下短いことがより特に好ましく、10時間以上50時間以下短いことがさらに好ましい。前記耐候性ポリエステルフィルムの耐候時間に対する前記積層用ポリエステルフィルムの耐候時間の短さが上記好ましい範囲の上限値以下であれば、耐候性が低下し過ぎず、分子量低下による脆性が増加する影響を抑制でき、凝集破壊による密着性の低下が起こりにくいため好ましい。また、前記耐候性ポリエステルフィルムの耐候時間に対する前記積層用ポリエステルフィルムの耐候時間の短さが上記好ましい範囲の下限値以上であれば、末端COOH量が十分となり、前記耐候性ポリエステルフィルムとの間の密着性を改善することができる。
前記積層用ポリエステルフィルムは、むしろ耐候性を弱くしサーモで分解させることで本発明のポリエステルフィルム積層体全体での密着性を改善しており、前記耐候性ポリエステルフィルムによる耐候性改善とあわせ、両者で機能分担して本発明の効果を相乗的に高めることができる。すなわち、前記耐候性ポリエステルフィルム(基材フィルム)は、上述のように積層用ポリエステルフィルムより高耐候性であり、サーモで物性が劣化しないで基材としての機能を維持ことが好ましい。
【0039】
このような積層用ポリエステルフィルムの密着力改善効果は、本発明のポリエステルフィルム積層体中において、積層用ポリエステルフィルムを前記耐候性ポリエステルフィルムと隣接するように配置して組み合わせることで、相乗的に改良される。このような積層用ポリエステルフィルムは、前記耐候性ポリエステルフィルムの上に貼り合せてもよく、共押出しして隣接して配置させてもよい。
【0040】
前記積層用ポリエステルフィルムの膜厚は、3〜300μmであることが好ましく、10〜250μmであることがより好ましく、30〜200μmであることが特に好ましい。
【0041】
前記積層用ポリエステルフィルムに用いられるポリエステル樹脂の数平均分子量は、1.3万〜3.8万であることが好ましく、1.5万〜3.5万であることがより好ましく、1.8万〜3.2万であることが特に好ましい。
【0042】
前記積層用ポリエステルフィルムに用いられるポリエステル樹脂の固有粘度は、0.45〜0.75であることが好ましく、0.48〜0.7であることがより好ましく、0.5〜0.68であることが特に好ましい。
【0043】
前記積層用ポリエステルフィルムに用いられるポリエステル樹脂の末端カルボキシル基量は、15〜60eq/トンであることが好ましく、20〜55eq/トンであることがより好ましく、25〜50eq/トンであることが特に好ましい。
【0044】
(白色ポリエステルフィルム)
本発明のポリエステルフィルム積層体は、白色ポリエステルフィルムを含むことも好ましい。
前記白色ポリエステルフィルムは、好ましくは、白色ポリエチレンテレフタレートフィルムである。さらに、白色ポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレートの二軸延伸フィルムが、加工性、透明性、耐熱性、価格の面から好ましく使用される。
本発明のポリエステルフィルム積層体を用いた太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいて、白色ポリエステルフィルムは、太陽光を反射させ発電効率を上げる為に使用する。白色ポリエステルフィルムは、好ましくは、波長λ=550nmの反射率が、30%以上のポリエステルフィルムであり、より好ましくは、反射率が40%以上のポリエステルフィルム、さらに好ましくは、反射率が50%以上のポリエステルフィルムである。
本発明のポリエステルフィルム積層体を用いた太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいて、ポリエステルフィルムの内部に微細な気泡を含有させたポリエステルフィルムを、白色ポリエステルフィルムとして使用することが好ましい。
本発明のポリエステルフィルム積層体を用いた太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいて、白色ポリエステルフィルムとして、ポリエステルフィルムを白色に着色する場合は、好ましくは、酸化チタン、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の白色添加物を添加する。さらに白色度を高めるためにはチオフェンジイル等の蛍光増白剤を用いると効果的である。
このような白色ポリエステルフィルムとしては、例えば東レ(株)製ルミラー(登録商標)E20、厚さ50μmなどを挙げることができる。
なお、前記耐候性ポリエステルフィルムを、白色ポリエステルフィルム層を兼ねる態様としてもよい。
【0045】
(その他のポリエステルフィルム)
本発明のポリエステルフィルム積層体は、その他のポリエステルフィルムを含んでいてもよい。前記その他のポリエステルフィルムとしては特に制限はなく、後述する機能層の支持体として用いられているポリエステルフィルムなどが含まれる。
【0046】
(機能層)
本発明のポリエステルフィルム積層体は、その他の機能層を有することが好ましい。前記その他の機能層は塗布に形成された塗布層であることが好ましい。
前記塗布層は、本発明のポリエステルフィルム積層体のいずれの層上に形成されていてもよく、前記耐候性ポリエステルフィルム上に形成された層であっても、前記積層用ポリエステルフィルム上に形成された層であっても、ある塗布層の上にさらに形成された層であってもよい。
その中でも、本発明のポリエステルフィルム積層体は、前記積層用ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を有することも、密着性向上の観点から好ましい。
また、本発明のポリエステルフィルム積層体は、前記耐候性ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を有することも、密着性向上の観点から好ましい。
【0047】
前記その他の機能層としては特に制限はないが、本発明のポリエステルフィルム積層体は、前記塗布層が、易接着層、UV吸収層、白色層、防汚層のうち少なくとも1層を含むことが好ましい。
【0048】
(1)耐電圧向上層
本発明のポリエステルフィルム積層体において、導電性を有する耐電圧向上層を含むことも好ましい。その場合、前記耐電圧向上層を構成する材料が無機系導電性材料の場合、その例としては、金、銀、銅、白金、ケイ素、硼素、パラジウム、レニウム、バナジウム、オスミウム、コバルト、鉄、亜鉛、ルテニウム、プラセオジウム、クロム、ニッケル、アルミニウム、スズ、亜鉛、チタン、タンタル、ジルコニウム、アンチモン、インジウム、イットリウム、ランタニウム、マグネシウム、カルシウム、セリウム、ハフニウム、バリウム、等の無機物群を主たる成分とするものを酸化、亜酸化、次亜酸化させたもの、もしくは上記無機物群と上記無機物群を酸化、亜酸化、次亜酸化させたものとの混合物(以後これらを称して無機酸化物とする)、上記無機物群を主たる成分とするものを窒化、亜窒化、次亜窒化させたもの、もしくは上記無機物群と上記無機物群を窒化、亜窒化、次亜窒化したものとの混合物(以後これらを称して無機窒化物とする)、上記無機物群を主たる成分とするものを酸窒化、亜酸窒化、次亜酸窒化させたもの、もしくは上記無機物群と上記無機物群を酸窒化、亜酸窒化、次亜酸窒化させたものの混合物(以後これらを称して無機酸窒化物とする)、上記無機物群を主たる成分とするものを炭化、亜炭化、次亜炭化させたもの、もしくは上記無機物群と上記無機物群を炭化、亜炭化、次亜炭化させたものとの混合物(以後これらを称して無機炭化物とする)、上記無機物群を主たる成分とするものをフッ化および/または塩素化および/または臭化および/またはヨウ化(以下、これらをハロゲン化とする)、亜ハロゲン化、次亜ハロゲン化させたもの、上記無機物群と上記無機物群をハロゲン化、亜ハロゲン化、次亜ハロゲン化させたものとの混合物(以後これらを称して無機ハロゲン化物とする)、もしくは上記無機物群と上記無機物群を硫化、亜硫化、次亜硫化させたものとの混合物(以後これらを称して無機硫化物とする)、および上記化合物に異元素をドープしたもの、グラファイト状カーボン、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの炭素系化合物(以後これらを称し炭素系化合物とする)、およびこれらの混合物などが挙げられる。上記材料は前記耐電圧向上層中に少なくとも含んでいればよいが、特に前記耐電圧向上層の層厚みが1μm以下である場合、表面比抵抗を上述の範囲とするためには、より好ましくは主たる成分とすることがよい。なお、該層中において50重量%を越える場合を主成分と定義する。
【0049】
本発明のポリエステルフィルム積層体において、前記耐電圧向上層を有し、前記耐電圧向上層を構成する材料が無機系導電性材料の場合、前記耐電圧向上層の表面比抵抗R0は膜中含まれる無機物群の変性(酸化、窒化、酸窒化、炭化、ハロゲン化、硫化など)の度合いや、無機物群と変性した無機物群との混合割合、その他材料との混合割合、膜厚等によって決まる。無機物群の変性の度合いが高いほど前記耐電圧向上層の表面比抵抗R0が高くなり、変性度合いが低いほどA面の表面比抵抗R0が小さくなる。また、前記耐電圧向上層に含まれる無機物群に対し変性した無機物群の割合が大きいほど表面比抵抗R0が高くなり、小さいほど表面比抵抗R0が小さくなる。また、膜厚が厚いほど表面比抵抗R0が低くなり、小さいほど表面比抵抗R0が高くなる。最適な組成、膜厚は使用する金属種や、変性方式などにより変わるが、表面比抵抗R0が上述の要件を満たす様に形成される。
【0050】
また、本発明のポリエステルフィルム積層体において、ポリエステルフィルム/及びまたは前記耐電圧向上層を構成する材料が有機系/無機系複合導電性材料の場合(例えばi)マトリックスとして非導電性の非水溶性樹脂を用い、導電性材料として無機系の導電性材料を用いた場合、ii)有機系導電性材料と無機系導電性材料を併用した場合、iii)有機系導電性材料に無機系の非導電性材料を併用した場合、iv)無機系導電材料中に非導電性の非水溶性樹脂を分散させた場合、など)、上述の有機系導電性材料、無機系導電性材料、非水溶性樹脂、架橋剤の他、無機系の非導電性材料を適宜組み合わせて構成される。
【0051】
i)の場合の例としては、ポリエステルフィルムおよび/または前記耐電圧向上層のマトリックスとして、非水溶性樹脂を用い、無機系導電性材料を分散させた構成が挙げられる。非水溶性樹脂については、上記有機導電性材料の場合に用いるものと同様のものが好適に用いられる。また、ポリエステルフィルムおよび/または前記耐電圧向上層のマトリックスとなる非水溶性樹脂中に分散した無機導電性材料の形状としては、真球状、回転楕円体状、扁平体状、数珠状、板状または針状等、特に限定されない。さらには、非水溶性樹脂中に微粒子が二次元あるいは三次元的に連結したものも含まれる。なお、これら無機粒子は単一元素からなるものであっても、複数の元素からなるものであっても構わない。
【0052】
上記無機系導電性材料において、ポリエステルフィルムおよび/または前記耐電圧向上層のマトリックスとなる非相溶性樹脂中への分散が容易という点で、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セシウム、酸化アンチモン、酸化スズ、インジウム・スズ酸化物、酸化イットリウム、酸化ランタニウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等の金属酸化物、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの炭素系微粒子等が好ましく用いられる。また、その無機系導電性材料の平均粒径は任意であるが、0.001μm以上20μm以下が好ましい。より好ましくは0.005μm以上10μm以下、特に好ましくは0.01μm以上1μm以下、更に好ましくは0.02μm以上0.5μm以下である。ここでいう粒子径とはメジアン径d50のことをいう。かかる粒子径が0.001μm以下の場合、マトリックスとなる非水溶性樹脂中に分散することが困難となる場合があるため好ましくなく、また20μm以上の場合は、均一なポリエステルフィルムおよび/または前記耐電圧向上層を形成することが困難となる。無機系導電材料の平均粒径を0.001μm以上20μm以下とすることによって、導電性と形成したフィルムの均一性を両立することが可能となる。
【0053】
(2)易接着層
本発明のポリエステルフィルム積層体は、太陽電池モジュールを構成するエチレンービニルアセテート共重合体系樹脂で形成された充填材層(以下、エチレン−ビニルアセテート共重合体系充填材層)と接着するための易接着層を耐候性ポリエステルフィルムに積層して構成したものである。ここで、「易接着層」とはエチレン−ビニルアセテート共重合体系樹脂と基材ポリエステルフィルムとを強固に接着するために設けられた層のことである。本発明は、この易接着層を、エチレンービニルアセテート共重合体系樹脂に相溶性のある樹脂で形成された相溶性樹脂層と接着層との積層体で構成し、易接着層の接着層を耐候性ポリエステルフィルム側へ向けて耐候性ポリエステルフィルムに積層することが好ましい。このような構成とすることで、本発明のポリエステルフィルム積層体を太陽電池モジュールに使用したときに、易接着層の相溶性樹脂層がエチレン−ビニルアセテート共重合体系充填材層と接するように構成できる。かかる易接着層を設けたことによって、エチレン−ビニルアセテート共重合体系充填材層との良好な接着性と、保存時にブロッキング、貼り付きなどが起きない良好な保存性を得るこができる。
本発明にかかる相溶性樹脂層は、エチレンービニルアセテート共重合体系充樹脂と相溶性があり、エチレンービニルアセテート共重合体系樹脂の軟化点以上で相溶性を生じるものであればよい。具体的には、エチレンービニルアセテート共重合体、エチレンービニルアセテート共重合体を基本構造として、アクリル、メタクリルモノマーなど第3成分を共重合した共重合ポリマーなどを使用することができる。特にエチレンービニルアセテート共重合体を水性エマルジョン化した塗料樹脂は、グラビアコーティングなどの生産性が高い塗工工程を採用することができるので、樹脂の使用量をより減らせる利点がある。
【0054】
(3)接着層
本発明のポリエステルフィルム積層体は、機能層を塗布で設けない場合は、各層間に接着層を有することが好ましい。ここでいう接着層とは、2枚のフィルムを貼り合せる際に使用する層を指す。すなわち、上記易接着層(一方のフィルム上に直接塗布で設けるもの)と接着層(接着層を基材フィルム上に形成した後、この接着層を本発明のポリエステルフィルム上に転写した後、貼り合せるもの)とは区別される。
本発明に用いられる接着剤は、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン、アイオノマーが、接着力および、ガスバリア性の点で好ましく、最も好ましくは、ウレタン樹脂であることが望ましい。
接着層の厚みが、0.1〜10μmの場合、接着力および、ガスバリア性の点で好ましい。更に好ましくは、接着層の厚みは、0.3〜8μmであり、特に好ましくは、0.5〜5μmである。
特に、接着層の厚みが、0.5〜5μmの場合は、金属酸化物層にピンホールや微細な亀裂がある場合にも優れたガスバリア性と強固な接着性を発揮できる。
【0055】
(4)蒸着層
本発明のポリエステルフィルム積層体は、蒸着層(水蒸気バリア層)を含むことも好ましい。前記蒸着層(水蒸気バリア層)は太陽電池を構成した際に発電素子の水蒸気の劣化を防ぐため、バックシート側からの水蒸気の進入を防ぐための層である。酸化珪素、酸化アルミニウム等の酸化物やアルミニウム等の金属層を真空蒸着やスパッタリングなどの周知の方法でフィルム表面に設けることにより形成される。その厚みは通常100〜200オングストロームの範囲であるのが好ましい。
【0056】
この場合、本発明のポリエステルフィルム積層体上に直接ガスバリア層を設ける場合と別のフィルムにガスバリア性を有する蒸着層を設け、このフィルムを本発明のポリエステルフィルム積層体の内部または表面に積層する場合のいずれも好ましく用いられる。ガスバリア性を有する蒸着層を設けた別のフィルムとしては、アルミナを蒸着したアルミナ蒸着ポリエステルフィルム(東レフィルム加工(株)製バリアロックス(登録商標)1011HG−CR、12μm厚、樹脂コート層/Al/ポリエチレンテレフタレートフィルム)などを挙げることができる。
また、金属箔(たとえばアルミ箔)をフィルム表面に積層する方法も用いることができる。この場合の金属箔の厚さは10〜50μmの範囲が、加工性とガスバリア性から好ましい。
【0057】
(5)UV層
また、本発明のポリエステルフィルム積層体において、ポリエステルフィルムおよび/または前記耐電圧向上層には、ポリエステルフィルムおよび/または前記耐電圧向上層および/または前記耐候性ポリエステルフィルムの紫外線劣化を防ぐために光安定化剤を含有することが好ましい。ここでいう光安定化剤とは、紫外線などの光線を吸収して熱エネルギーに変換する化合物、ポリエステルフィルムおよび/または前記耐電圧向上層が光吸収して分解して発生したラジカルを捕捉し、分解連鎖反応を抑制する材料などが挙げられる。より好ましくは紫外線などの光線を吸収して熱エネルギーに変換する化合物を用いるのがよい。光安定化剤をポリエステルフィルムおよび/または前記耐電圧向上層中に含有することで、長期の紫外線の照射を受けても、ポリエステルフィルムおよび/または前記耐電圧向上層の表面による部分放電電圧の向上効果を長期間にわたって高く保つことが可能となったり、ポリエステルフィルムおよび/または前記耐電圧向上層および/または前記耐候性ポリエステルフィルムの紫外線による色調変化、強度劣化等が防止されたりする。ここでいう紫外線吸収剤は、他の特性が損なわれない範囲であれば、有機系紫外線吸収剤、無機系紫外線吸収剤、およびこれらの併用、いずれも特に限定されずに好ましく用いることができるが、耐湿熱性に優れ、ポリエステルフィルムおよび/または前記耐電圧向上層中に均一に均一分散できることが望まれる。このような紫外線吸収剤の例としては、例えば、有機系の紫外線吸収剤の場合は、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤およびヒンダードアミン系等の紫外線安定剤などが挙げられる。具体的には、例えば、サリチル酸系のp−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、ベンゾフェノン系の2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン、ベンゾトリアゾール系の2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2Hベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、シアノアクリレート系のエチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート)、トリアジン系として2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、ヒンダードアミン系のビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、その他として、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、および2,4−ジ・t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ・t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、などが挙げられる。これらの紫外線吸収剤のうち、繰り返し紫外線吸収に対する耐性が高いという点で、トリアジン系紫外線吸収剤がより好ましい。なお、これらの紫外線吸収剤は上述の紫外線吸収剤単体でポリエステルフィルムおよび/または前記耐電圧向上層に添加しても良いし、有機系導電性材料や、非水溶性樹脂に紫外線吸収剤能を有するモノマーを共重合させた形態で導入してもよい。
【0058】
また、無機系の紫外線吸収剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、などの金属酸化物や、カーボン、フラーレン、カーボンファイバー、カーボンナノチューブなどの炭素系材料等が挙げられる。なお、これらの紫外線吸収剤は上述の紫外線吸収剤単体でポリエステルフィルムおよび/または前記耐電圧向上層に添加してもよいし、無機系導電性材料と機能を兼用したり、有機系導電性材料や非水溶性樹脂に導入したりしてもよい。
【0059】
また、上記紫外線吸収剤は、単独でも2種類以上の併用であってもよく、無機系、有機系の化合物を併用してもよい。
【0060】
本発明のポリエステルフィルム積層体のポリエステルフィルムおよび/または前記耐電圧向上層における紫外線吸収剤の含有量は、有機系紫外線吸収剤の場合、ポリエステルフィルムおよび/または前記耐電圧向上層中の全固形成分に対して0.05以上20重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1以上15重量%以下であり、さらに好ましくは0.15以上15重量%以下である。紫外線吸収剤の含有量が0.05重量%以上の場合には、耐光性が十分となり、長期使用時において、前記耐電圧向上層が劣化しにくく、部分放電電圧が低下しにくいため好ましく、また、20%以下あると、前記耐電圧向上層の着色が大き過ぎず好ましい。
【0061】
また無機系紫外線吸収剤の場合は、ポリエステルフィルムおよび/または前記耐電圧向上層の全固形成分1以上50重量%以下、より好ましくは2以上45重量%以下であり、さらに好ましくは5以上40重量%以下、特に好ましくは8重量%以上35重量%以下、最も好ましくは12重量%以上30重量%以下である。無機系紫外線吸収剤の場合は、紫外線吸収剤の含有量が1重量%以上の場合には、耐光性が十分で、長期使用時において、ポリエステルフィルムおよび/または前記耐電圧向上層が劣化しにくく、部分放電電圧が低下しにくいため好ましく、また、50重量%以下であると、ポリエステルフィルムおよび/または前記耐電圧向上層の強度が低下し過ぎないため、好ましい。
【0062】
(層構成)
本発明のポリエステルフィルム積層体は、前記のように、その相溶性樹脂層面と、太陽電池モジュールのエチレンービニルアセテート共重合体系充填材層面とを接着積層して太陽電池モジュールを構成することが好ましいものである。さらにその効果を助長させるための好ましい態様の積層例を次に列記する(各種フィルム間の接着剤層は表記していない)。なお、本発明のポリエステルフィルム積層体は以下の構成に限定されるものではなく、その他の構成も好ましく採用することができる。
・易接着層/白色ポリエステルフィルム(基材ポリエステルフィルム)/ガスバリアフィルム/前記耐候性ポリエステルフィルム
・易接着層/ガスバリア性ポリエステルフィルム(基材ポリエステルフィルム)/白色の前記耐候性ポリエステルフィルム
・易接着層/透明ポリエステルフィルム(基材ポリエステルフィルム)/白色の前記耐候性ポリエステルフィルム
・易接着層/白色の前記耐候性ポリエステルポリエステルフィルム(基材ポリエステルフィルム)
また、図1、図5、図6にそれぞれ記載の以下の積層例も好ましい。
・易接着層5/前記積層用ポリエステルフィルム6/前記耐候性ポリエステルフィルム(基材ポリエステルフィルム)1/耐電圧向上層2
・易接着層5/アルミナ蒸着ポリエステルフィルム9/白色ポリエステルフィルム10/前記耐候性ポリエステルフィルム(基材ポリエステルフィルム)1/耐電圧向上層2
・易接着層5/アルミナ蒸着ポリエステルフィルム9/紫外線吸収樹脂層11/前記積層用ポリエステルフィルム6/前記耐候性ポリエステルフィルム(基材ポリエステルフィルム)1/耐電圧向上層2
上記以外にも下記構成も好ましい
・蒸着PET:12μm/易接着層:3μm/積層PET(白色PET):50μm/易接着層:3μm/耐候性PET:188μm(WO2007/122936号公報の実施例に記載の態様)
・耐電塗布層/耐候性PET:50μm/接着層/積層PET:125μm(特開2009−158952号公報の実施例に記載の態様)
・易接着層:2μm/耐候性PET:25μm/易接着層:3μm/積層PET(白色):50μm/蒸着PET:12μm(WO2008/069024号公報の実施例に記載の態様)
・積層PET:10μm/易接着層:3μm/耐候性PET:75μm/UV吸収層(特開2007―253463号公報の実施例に類似の態様)
・積層PET(白色)/耐候性PET/積層PET(白色)(共押出しで積層)(WO2007―105306号公報の実施例に類似の態様)
【0063】
<ポリエステルフィルム積層体の特性>
本発明のポリエステルフィルム積層体は、密着性が高いことを特徴とする。
このような密着性は、ポリエステルフィルム積層体の両面に粘着テープを貼り付けて剥がしたときの剥離面積を測定することで、求めることができる。
【0064】
(層間の密着性)
一般にポリエステルフィルム積層体において、サーモ経時すると、製膜中に発生した低分子分解物がフィルム表面近傍に集積(析出)し、これが表面近傍のポリエステルの強度を低下させる。
これに対し、本発明のポリエステルフィルム積層体は、前記耐候性ポリエステルフィルムの特性および後述する本発明のポリエステルフィルム積層体の製造方法で製造されたことにより、層間の密着性が良好であることを特徴とする。
本発明のポリエステルフィルム積層体において、各層間の接着の態様については特に制限はなく、接着剤を用いて貼り合わせても、塗布により直接積層されていてもよい。
【0065】
また、ポリエステルフィルムは末端COOHを低減することで上述のとおり耐候性が向上するが、本発明のポリエステルフィルム積層体がその他の層として塗布層を有する場合、このような官能基の低減は塗布層との密着低下を起こしやすい。特にサーモ処理すると上記のようにポリエステルフィルムの表面強度が低下し、一層密着不良が発生し易くなる傾向がある。
これに対し、後述する本発明の製造方法のより好ましい塗布態様を採用することで、機能層を塗布により形成した場合であっても、ポリエステルフィルムと機能層間の密着性をより高めることができる。
【0066】
(ポリエステルフィルム層内の密着性)
一般にポリエステルフィルム積層体において、ポリエステルフィルムはフィルム面に平行な面において層内で剥離し易いことが知られている。特に、ポリエステルフィルムとしてPET等の芳香族系ポリエステルを用いると、製膜、延伸時に平坦な芳香環がフィルム面方向にスタックし易い。このため、本来フィルム面に沿ってポリエステルフィルムの層内で剥離し易いが、サーモ等の経時でこれが一層顕在化する。
これに対し、本発明のポリエステルフィルム積層体は、前記耐候性ポリエステルフィルムの特性および後述する本発明のポリエステルフィルム積層体の製造方法で製造されたことにより、層内の密着性が良好であり、経時でのデラミネーション(厚み方向の層状剥離)が少ないことを特徴とする。
【0067】
[ポリエステルフィルム積層体の製造方法]
本発明のポリエステルフィルム積層体の製造方法(以下、本発明の製造方法とも言う)は、ポリエステル樹脂と、該ポリエステル樹脂に対して10〜500ppmの融点のプレピーク温度が235〜250℃のポリエチレンテレフタレート樹脂とを含む樹脂組成物を、混練押出し機を用いてメルト化し、製膜する工程を含むことを特徴とする。
【0068】
本発明者は、上記サーモ経時後のポリエステルフィルム積層体の密着不良の原因がポリエステルフィルム内部または表面においてサーモ経時で球晶が成長し、これが密着テストの際に応力集中点となり、ここを起点として層状剥離が発生することにあることを見出した。また、このようなポリエステルフィルムの球晶は製膜時に生成した微細な結晶核(微結晶)を中心に成長することも見出した。これに対し、本発明の製造方法では、ポリエステル樹脂に対して10〜500ppmの融点のプレピーク温度が235〜250℃のポリエチレンテレフタレート樹脂を用いてポリエステルフィルムを溶融製膜することで、得られるポリエステルフィルム積層体の層状剥離を改善し、密着性を高めることができる。
以下、本発明のポリエステルフィルム積層体の製造方法の好ましい態様を参照しつつ、本発明を具体的に説明する。
【0069】
<耐候性ポリエステルフィルムの製膜>
(ポリエステル樹脂の合成)
本発明のポリエステルフィルム積層体の製造方法は、ポリエステルを合成するためのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行なうエステル化工程を含むことが、液相重合時の重合時間の調節及び/又は後述する固相重合により前記AVおよびIVの値を好ましい範囲に調節することができる観点から好ましい。
前記耐候性ポリエステルフィルムに用いられるポリエステル樹脂は、例えば、テレフタル酸またはその誘導体とエチレングリコールとを周知の方法でエステル交換反応させて合成することが好ましい。
【0070】
本発明のポリエステルフィルムを形成するポリエステルは、(A)マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸等の芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸もしくはそのエステル誘導体と、(B)エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、などの芳香族ジオール類等のジオール化合物と、を周知の方法でエステル化反応及び/又はエステル交換反応させることによって得ることができる。
【0071】
前記ジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸の少なくとも1種が用いられる場合が好ましい。より好ましくは、ジカルボン酸成分のうち、芳香族ジカルボン酸を主成分として含有する。なお、「主成分」とは、ジカルボン酸成分に占める芳香族ジカルボン酸の割合が80質量%以上であることをいう。芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分を含んでもよい。このようなジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸などのエステル誘導体等である。
また、ジオール成分として、脂肪族ジオールの少なくとも1種が用いられる場合が好ましい。脂肪族ジオールとして、エチレングリコールを含むことができ、好ましくはエチレングリコールを主成分として含有する。なお、主成分とは、ジオール成分に占めるエチレングリコールの割合が80質量%以上であることをいう。
【0072】
脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール)の使用量は、前記芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸)及び必要に応じそのエステル誘導体の1モルに対して、1.015〜1.50モルの範囲であるのが好ましい。該使用量は、より好ましくは1.02〜1.30モルの範囲であり、更に好ましくは1.025〜1.10モルの範囲である。該使用量は、1.015以上の範囲であると、エステル化反応が良好に進行し、1.50モル以下の範囲であると、例えばエチレングリコールの2量化によるジエチレングリコールの副生が抑えられ、融点やガラス転移温度、結晶性、耐熱性、耐加水分解性、耐候性など多くの特性を良好に保つことができる。
【0073】
これらの中でより好ましいポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)であり、さらに好ましいのはPETである。
【0074】
PETは、テレフタル酸とエチレングリコールとを90モル%以上含むものが好ましく、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上含むものである。
【0075】
前記エステル交換反応における反応触媒としてはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物などを挙げることができる。また、着色剤としては、リン化合物などを挙げることができる。
【0076】
前記エステル交換反応における重合触媒としては、アンチモン化合物またはゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては例えば、ゲルマニウム化合物を例に挙げると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加することが好ましい。
【0077】
芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールは、これらが含まれたスラリーを調製し、これをエステル化反応工程に連続的に供給することにより導入することができる。
【0078】
エステル化反応は、少なくとも2個の反応器を直列に連結した多段式装置を用いて、エチレングリコールが還流する条件下で、反応によって生成した水又はアルコールを系外に除去しながら実施することができる。
【0079】
また、上記したエステル化反応は、一段階で行なってもよいし、多段階に分けて行なうようにしてもよい。
【0080】
重縮合は、エステル化反応で生成されたエステル化反応生成物を重縮合反応させて重縮合物を生成する。重縮合反応は、1段階で行なってもよいし、多段階に分けて行なうようにしてもよい。
【0081】
エステル化反応で生成したオリゴマー等のエステル化反応生成物は、引き続いて重縮合反応に供される。この重縮合反応は、多段階の重縮合反応槽に供給することにより好適に行なうことが可能である。
【0082】
本発明のポリエステルフィルム積層体の製造方法は、さらにポリエステルの溶融前に、用いるポリエステルを固相重合する固相重合工程を含むことが、前記AVおよびIVの値を好ましい範囲に調節する観点から好ましい。固相重合は、既述のエステル化反応により重合したポリエステル又は市販のポリエステルをペレット状などの小片形状にし、これを用いて好適に行なえる。
【0083】
固相重合は、150℃以上250℃以下、より好ましくは170℃以上240℃以下、さらに好ましくは190℃以上230℃以下で5時間以上100時間以下、より好ましくは10時間以上80時間以下、さらに好ましくは15時間以上60時間以下の条件で行なうのが好ましい。また、固相重合は、真空中あるいは窒素(N)気流中で行なうことが好ましい。更に、多価アルコール(エチレングリコール等)を1ppm以上1%以下混合してもよい。
【0084】
固相重合は、バッチ式(容器内に樹脂を入れ、この中で所定の時間熱を与えながら撹拌する方式)で実施してもよく、連続式(加熱した筒の中に樹脂を入れ、これを加熱しながら所定の時間滞流させながら筒中を通過させて、順次送り出す方式)で実施してもよい。
【0085】
前記耐候性ポリエステルフィルムに用いられるポリエステル樹脂の数平均分子量を18500〜40000にコントロールする方法は、上記の方法で、数平均分子量が18000レベルの通常のポリエステル樹脂を重合した後、190℃〜ポリエステル樹脂の融点未満の温度で、減圧または窒素ガスのような不活性気体の流通下で加熱する方法、すなわち、いわゆる固相重合する方法が好ましい。該方法はポリエステル樹脂の末端カルボキシル基量を増加させることなく数平均分子量を高めることができる。
【0086】
(Tmプレピークの温度が特定範囲の樹脂の添加)
本発明の製造方法は、該ポリエステル樹脂に対して10〜500ppmの融点のプレピーク温度が235〜250℃のポリエチレンテレフタレート樹脂を添加することを特徴とする。このようなTmプレピークの温度が特定範囲の樹脂は溶融製造時に融解しにくく、これが不純物となって球晶生成を阻害することができる。
前記Tmプレピークの温度が特定範囲の樹脂の添加量は、ポリエステル樹脂に対して、好ましくは20〜400ppm、さらに好ましくは30〜300ppmである。
前記Tmプレピークの温度が特定範囲の樹脂の添加量がこの範囲を超えると結晶化速度が本発明の範囲未満となり、添加量が本発明の範囲を下回ると結晶化速度が本発明の範囲を上回る。
前記Tmプレピークの温度が特定範囲の樹脂は、0.001mm〜1mmの粉体を200〜230℃で20〜100時間加熱処理することで得られる。前記Tmプレピークの温度が特定範囲の樹脂を粉体にすることでメルトの中に分散し球晶阻害の効果発現し易い。
なお、前記Tmプレピークの温度が特定範囲の樹脂は、本発明のポリエステルフィルム積層体が複数のポリエステルフィルムを有する場合に耐候性ポリエステルフィルム以外のその他のポリエステルフィルムを製膜するときのメルトに含まれていても含まれていなくてもよいが、少なくとも耐候性ポリエステルフィルムを製膜するときのメルトには含まれる。
【0087】
(耐候性ポリエステルフィルムの製膜)
(1)押出し
本発明のポリエステルフィルム積層体に用いられる前記耐候性ポリエステルフィルムは、耐候性を高めるために固相重合等でポリエステルを高IV化(高分子量化)することが好ましいが、高IV化に伴い、押出し機内での剪断やこれに伴う発熱で樹脂が分解し易くなる。本発明者は、押出し機内での剪断やこれに伴う発熱による低分子分解物が発生すると密着不良を引き起こしやすくなる(詳細は後述)ことを見出した。これに対し、本発明の製造方法の好ましい態様では、ポリエステルを高IV化する場合であっても以下の好ましい条件で押出しを行うことで、より高い耐候性と密着性を備えた耐熱性ポリエステルフィルムが得られる。
【0088】
i)剪断速度
本発明のポリエステルフィルム積層体の製造方法は、前記ポリエステル樹脂と、該ポリエステル樹脂に対して10〜500ppmの融点のプレピーク温度が235〜250℃のポリエチレンテレフタレート樹脂とを含む樹脂組成物を、10〜1000sec−1の剪断速度に制御しながら混練することが、押出し機内での剪断による樹脂の分解を抑制する観点から好ましい。
押出し機内でのフライト部の剪断速度を10〜1000sec−1、より好ましくは50〜800sec−1、さらに好ましくは100〜600sec−1とすることで前記ポリエステル樹脂の分解を抑制することができる。
剪断速度が前記好ましい範囲の上限値以下であれば分子切断が発生し難くなり、AVが低下して好ましい。剪断速度が前記好ましい範囲の下限値以上であればバレルとフライト間で逆流するメルト成分が増加し過ぎず、滞留時間が長くなることに起因する樹脂分解物の量を抑制することができる。
具体的にこのような剪断速度に制御する方法としては、フライトとバレルの間隙の調整を挙げることができ、例えば50φのスクリューではギャップ0.1〜3mmのとき40rpmで1000sec−1、4rpmで100sec−1、0.4rpmで10sec−1となる。300φのスクリューではギャップ1mmのとき65rpmで1000sec−1、6.5rpmで100sec−1、0.65rpmで10sec−1となる。
なお、これと併せてバレル表面の粗さ(Ra)を0.01〜0.1μmとすることが好ましい。このように少し凹凸を持たせることで、逆流するメルトのバレル表面での流れを促進することができる。
【0089】
ii)押出し機内のメルト温度
本発明のポリエステルフィルム積層体の製造方法は、前記混練中に、前記混練押出し機の計量部のメルト温度を圧縮部のメルト温度より1〜20℃高くすることが好ましい。圧縮部のメルト温度より計量部のメルト温度が1〜20℃高温になるように制御することで、ポリエステル樹脂の融解を促進し、短時間で融解させることができる。すなわち、ポリエステル樹脂を長時間かけて融解した場合と比べて分解を抑制し、また、計量部の温度を上げることによりメルト粘度を低下させることで、メルトの押し出し機内での滞留が発生し難くなり、ポリエステル樹脂の分解を抑制することが好ましい。なお、ポリエステル樹脂のAV低下のため押出し機内のメルト温度を低下させるのが通常であるが、本発明では押出し機内のメルト温度を規定している。
前記混練押出し機の計量部のメルト温度は、圧縮部のメルト温度より2〜17℃高いことがより好ましく、3〜15℃高くすることが特に好ましい。
【0090】
前記混練押出し機の計量部のメルト温度と圧縮部のメルト温度の制御は、単純にバレル温度を上げることにより行っても、バレル出口の背圧を高めることにより行ってもよい。その中でも、バレル出口の背圧を1〜30MPa、より好ましくは2〜20MPa、さらに好ましくは3〜15MPaに高めることでバレル内のメルトの撹拌を激しくし、メルトとスクリューの摩擦熱で計量部のメルト温度を上げて、計量部の温度−圧縮部の温度差増大させることが、樹脂を効率的に溶融し、短時間での融解を可能にする。その結果、樹脂の熱分解を抑制するため好ましい。
【0091】
iii)押出機のスクリュー回転数
本発明のポリエステルフィルム積層体の製造方法は、前記混練中に、前記混練押出し機のスクリュー回転数を0.01〜1%変動させることが好ましい。これによりバレル内のメルトに脈流が発生し滞留を抑制し、分解を抑制することが好ましい。
スクリュー回転数の変動を前記好ましい範囲の下限値以上とすることで分解抑制効果が十分となり、前記好ましい範囲の上限値以下とすることでスクリューの変動でメルトの吐出不良が発生し難くなり、メルトが押出し機内に対流して分解が促進されること抑制することができる。
押出し機のスクリュー回転数に0.05%以上0.7%以下の変動を与えることがより好ましく、0.1%以上0.5%の変動を与えることが特に好ましい。
前記押出機のスクリュー回転数は、スクリューの駆動モーターに上記変動を与えることで制御することが好ましい。
【0092】
iv)押出し機のスクリューの外周長
本発明のポリエステルフィルム積層体の製造方法は、前記押出し機のスクリューの外周長が600mm〜1900mmであることが、上述したスクリュー変動の効果を大きくする観点から、好ましい。スクリュー回転に変動を付与した場合、スクリューの外周長が大きいほど同じ回転むらでも実際に変動する長さが長くなり、メルトに変動を与えやすい。
押出し機のスクリューの外周長は700mm以上1600mm以下であることがより好ましく、750mm以上1400mm以下とすることが特に好ましい。スクリュー径が前記好ましい範囲の下限値以上であれば上記効果が十分に発現する。一方、前記好ましい範囲の上限値以下であればスクリューの外周部での剪断応力が高くなり過ぎず、樹脂の分解が進行し難くなり好ましい。なお、スクリューの外周長とはスクリューのフライト部での周長を指し、多軸押出機の場合は、各スクリューのフライト部の周長の和を指す。
【0093】
(2)キャスト
溶融された溶融樹脂(メルト)は、ギアポンプ、濾過器等を通して、押出ダイから押出すことが好ましい。
本発明の製造方法では、ポリエステル樹脂と、該ポリエステル樹脂に対して10〜500ppmの融点のプレピーク温度が235〜250℃のポリエチレンテレフタレート樹脂とを含む樹脂組成物を溶融混練し、メルトを口金(押出ダイ)から押出すことにより、前記耐候性ポリエステルフィルムを成形することが好ましい。このとき、上記融点のプレピーク温度が235〜250℃のポリエチレンテレフタレート樹脂の効果により、積層体のデラミの発生原因となる球晶生成の核となる微結晶が、メルト中に生成されることを抑制することができる。
【0094】
このとき、単層で押出してもよいし、多層で押出してもよい。多層で押し出す場合、2台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出されたポリエステル樹脂を、マルチマニホールドダイやフィールドブロックやスタティックミキサー、ピノール等を用いて多層に積層する方法等を使用することもできる。また、これらを任意に組み合わせてもよい。
ダイから吐出されたポリエステルフィルムは、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出され、冷却固化され、キャスティングシートが得られる。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ、急冷固化させるのが好ましい。
【0095】
i)押し出したメルトの冷却速度
本発明のポリエステルフィルム積層体の製造方法は、前記混練押出し機からダイを通してメルトを押出し、該メルトを200〜5000℃/minで冷却固化することで前記耐候性ポリエステルフィルムを製膜することが好ましい。
押出したメルトの冷却速度は、200〜5000℃/分であることが好ましく、より好ましくは400〜3000℃/分、さらに好ましくは500〜2000℃/分である。
押出したメルトの冷却速度が前記好ましい範囲の下限値以上であれば、球晶が形成し易く、フィルム強度が向上し、このためデラミによる密着不良が生成し難くなる。一方、押出したメルトの冷却速度が前記好ましい範囲の上限値以下であれば、球晶の生成を好ましい範囲内に抑制し、これを応力集中点とするデラミによる密着不良が発生し難くなる。
【0096】
なお、冷却速度は、溶融樹脂自体の降温速度であり、結晶形成に最も大きな影響を及ぼす250℃〜120℃の間の冷却速度を指す。
前記範囲の平均冷却速度でのキャストは、例えば以下に示す方法で行なうことができる。
(a)キャストロール上に強制的にエア供給して溶融樹脂を冷却する方法
キャストロールに圧接するタッチロールに着地した直後にキャストロールに(例えばエアナイフで)高速の冷風を当て、溶融樹脂(メルト)を急冷する。
(b)タッチロールによる冷却する方法
キャストロールとともにタッチロールを冷却し、タッチロールとキャストロールとで溶融樹脂(メルト)を挟んでメルト両面から冷却する。
(c)キャストロール上のメルトを水冷する方法
キャストロール上のメルトに対し、冷水の噴霧及び/又は冷水槽への浸漬を行なってメルトを急冷する。
上記の(a)〜(c)の中でも、(b)及び(c)が好ましい。また、(b)に(a)又は(c)を組み合わせてもよく、(c)に(a)又は(b)を組み合わせてもよい。
【0097】
前記平均冷却速度は、ダイから押出された溶融樹脂(メルト)がキャストロールに接触した点から10cm刻みに温度を非接触温度計により測定する。キャストロールの周速から10cm間隔を通過する時間を求める。続いて、横軸にこの時間をとり、縦軸に上記温度をプロットしておき、メルト温度が250℃〜120℃の間の平均傾きから平均の冷却速度を求める。
【0098】
冷却ロール自体の温度は、10℃以上80℃以下が好ましく、より好ましくは15℃以上70℃以下、さらに好ましくは20℃以上60℃以下である。さらに、溶融樹脂(メルト)と冷却ロールとの間で密着性を高め、冷却効率を上げる観点からは、冷却ロールにメルトが接触する前に静電気を印加しておくことが好ましい。
【0099】
溶融樹脂(メルト)を吐出(例えばダイから押し出し)した後、キャストロールに接触させるまでの間(エアギャップ)は、相対湿度を5%以上60%以下、さらに好ましくは10%以上55%以下、さらに好ましくは15%以上50%以下に調整することが好ましい。エアギャップでの湿度を上記範囲にすることで、空気の疎水性を調整することで、COOH基やOH基のフィルム表面からの潜り込みを調整できる。
【0100】
ii)ダイから押出したメルトの厚みのむら
押出したメルトの冷却速度を上記温度範囲に制御することを達成するための方法としては、メルトに0.1%〜5%の厚みむらを与える方法を挙げることができる。すなわち、本発明のポリエステルフィルム積層体の製造方法は、前記ダイから押出したメルトの厚みのむらを0.1〜5%となるように制御することが好ましい。前記ダイから押出したメルトの厚みのむらは、より好ましくは0.2%〜3%、さらに好ましくは0.3%〜2%である。これによりチルロールへの密着が改善され、冷却効率が向上し、上記冷却速度を達成することができる。
メルトがチルロールに接触した際に収縮するが、上記のように僅かに厚みむら付与することでメルトがスムースにチルロール上で収縮、均一にチルロールと接触でき冷却効率を高めることができる。厚みむらが前記好ましい範囲の下限値以上であれば、とメルトの滑りが低下し過ぎず、メルトの一部がチルロールに粘着したりせず、収縮応力によりメルトの一部が粘着点間で引き伸ばされてチルロールと接触できずに冷却速度が低下したりすることが。一方、厚みむらが前記好ましい範囲の上限値以下であれば、冷却効率が適度な範囲となり、球晶の生成量が低減し過ぎない。なお、前記球晶はフィルムの強度を高める効果を有しており、低減し過ぎなければフィルム内の凝集破壊による密着力低下を引き起こさない。
【0101】
前記ダイから押出したメルトの厚みは、50μm以上5000μm以下が好ましく、より好ましくは500μm以上4500μm以下、さらに好ましくは2000μm以上4000μm以下である。また、他の層を積層した後のポリエステルフィルム積層体全体としての厚みの好ましい範囲も同様である。このような厚みにすることで、前記耐候性ポリエステルフィルムまたは前記耐候性ポリエステルフィルム上に塗布により層を形成する工程を含む場合に、後述する乾燥ゾーンでの幅方向の温度分布の効果をより顕在化し易い。上記メルトの厚みの好ましい範囲の下限値以上であればフィルムの熱容量が小さくなり過ぎず、フィルム内の温度が均一化しにくく(すなわち、フィルム面内の熱伝達が起き難く)なるため、フィルム表面においてフィルム幅方向の温度分布を与えやすくなる。また、上記メルトの厚みの好ましい範囲の上限値以下であるとフィルムの熱容量が大き過ぎず、塗布液の温度がフィルムにより奪われ過ぎなく(すなわち、フィルム厚み方向の熱伝達が起き難く)なるため、フィルム表面において幅方向の温度差を形成しやすくなる。これらの中でも、ダイから押出したメルトなどの厚みを薄くする場合のフィルム面内の熱伝達の効果の方が、厚くした場合のフィルム厚み方向の熱伝達の効果の方が顕著であることから、延伸後に従来よりも比較的厚手の領域である210〜310μmとすることが、特に塗布層を形成する場合に好ましい。
なお、ダイから押出したメルトの厚みは、延伸後の厚みの9倍〜15倍の厚みとなるように制御することが好ましい。
【0102】
(延伸)
このようにして得られたポリエステルフィルム(またはポリエステルフィルム積層体)は、必要に応じて2軸延伸しても構わない。2軸延伸とは、縦方向および横方向に延伸することをいう。延伸は、逐次2軸延伸してもよいし、同時に2方向に延伸してもよい。また、さらに縦および/または横方向に再延伸を行ってもよい。
ここで、縦方向への延伸とは、フィルムに長手方向の分子配向を与えるための延伸を言い、通常は、ロールの周速差により施される。この延伸は1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に延伸したものでもよい。かかる延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率は、2〜15倍が好ましく、例えばポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、縦方向延伸倍率としては、2〜4倍が特に好ましく用いられる。
この後、横方向に延伸を施すため端部を保持したクリップを2〜4倍の条件にセットしたレール上をクリップで保持した状態でフィルムを通し横方向(マシン幅方向)に横延伸する。雰囲気温度は、フィルムの延伸温度が85〜110℃になるように雰囲気温度をセットし横方向に延伸する。
延伸工程後の工程で寸法安定性を得るため180〜240℃熱処理を施してもよい。
【0103】
<他の層の積層>
本発明のポリエステルフィルム積層体の製造方法は、ポリエステル樹脂を含み、かつ融点のプレピーク温度が235℃未満である樹脂組成物を前記耐候性ポリエステルフィルムの少なくとも片面上に適用して、前記積層用ポリエステルフィルムを製膜する工程を含むことが好ましい。
前記融点のプレピーク温度が235℃未満であるポリエステル樹脂組成物としては、具体的には、融点のプレピーク温度が235〜250℃のポリエチレンテレフタレート樹脂を含まないポリエステル樹脂組成物や、融点のプレピーク温度が235〜250℃のポリエチレンテレフタレート樹脂をポリエステル樹脂に対して10ppm未満の範囲で含むポリエステル樹脂組成物を挙げることができる。
なお、その他の前記耐候性ポリエステルフィルムよりも耐候性の低い前記積層用ポリエステルフィルムの製造方法としては、固相重合の時間の制御によっても達成でき、固相重合の時間を短くすることで耐候性を低下させることができ、時間を長くすることで耐候性を高めることができる。
また、前記積層用ポリエステルフィルムは、耐候性ポリエステルフィルムの上に接着剤などを用いて貼り合せてもよく、共押出ししてもよい。なお、共押出しの方法としては特に制限はない。
【0104】
(塗布および乾燥)
本発明のポリエステルフィルム積層体の製造方法は、前記耐候性ポリエステルフィルムまたは前記耐候性ポリエステルフィルム上に塗布により層を形成する工程を含むことも好ましい。具体的には、本発明のポリエステルフィルム積層体の製造方法は、前記耐候性ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、塗布により層を形成する工程を含むことが好ましい。また、本発明のポリエステルフィルム積層体の製造方法は、前記積層用ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、塗布により層を形成する工程を含むことも好ましい。
本発明のポリエステルフィルム積層体の製造方法は、前記耐候性ポリエステルフィルムまたは前記耐候性ポリエステルフィルム上に塗布層や積層用ポリエステルフィルムを有する積層体の少なくとも片面に、易接着層、UV吸収層、白色層、防汚層のうち少なくとも1層を塗布形成することが好ましい。
【0105】
塗設には、ロールコート法、ナイフエッジコート法、グラビアコート法、カーテンコート法等の公知の塗布技術を用いることができる。塗布に用いる塗布液の溶媒としては、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトンのような有機溶媒でもよい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
また、これらの塗設前に表面処理(火炎処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等)を実施してもよい。
【0106】
本発明のポリエステルフィルム積層体の製造方法は、フィルム幅方向に0.5℃〜10℃の温度分布を与えるように制御しながら前記塗布を行うことが好ましい。
前記耐候性ポリエステルフィルムは、末端COOH量(AV)が低く、塗布層との密着性が通常のポリエステル(通常のPETなど)よりも悪い。本発明の製造方法では、塗布後の乾燥ゾーンにおいてフィルム幅方向に0.5℃〜10℃の温度分布を与えることによりフィルム表面の塗布液に温度むらを与え、塗布液内に対流を発生させることで、塗布液によるフィルム表面の膨潤や末端COOHの反応を促し、塗布層との密着を改良することができる。
塗布時のフィルム幅方向の温度分布は、より好ましくは1.5℃〜8℃、特に好ましくは1℃〜6℃である。
フィルム幅方向に0.5℃〜10℃の温度分布を与える方法としては特に制限はなく、前記乾燥ゾーン内の熱風噴出し風速を変えてもよく(例えば、噴出し口のスリットの変更)、幅方向に熱源(パネルヒーター、IRヒーター、ハロゲンランプ等)を設置し出力を変えてもよい。
【0107】
この時、乾燥ゾーン中の搬送張力を3kg/cm以上30kg/cm以下にすることが好ましく、より好ましくは4kg/cm以上20kg/cm以下、さらに好ましくは5kg/cm以上12kg/cm以下である。このような低張力で搬送することで、張力により引き起こされる面配向に伴うデラミネーションを抑制し、密着不良を抑制できる。塗布した場合、フィルム表面の分子は塗布液で膨潤し、張力で配向しやすいため、上記搬送張力の好ましい範囲の上限値以下であると密着不良が発生し難い。一方、上記搬送張力の好ましい範囲の下限値以上であると分子配向が崩れにくく(弛緩しにくく)なるため、塗布および乾燥工程で加わった熱と溶剤の影響があるにも関わらず、フィルム表面近傍に球晶を形成し難くなる。なお、このような球晶は密着テストの際に応力集中点となり、ここから凝集破壊が発生、密着不良が発生し易い。
【0108】
なお、本発明のポリエステルフィルム積層体の製造方法は、前記耐候性ポリエステルフィルムまたは前記耐候性ポリエステルフィルム上、あるいは、その他の層上に塗布層を形成する場合、オフラインで塗布を行ってもよく、延伸後に塗布を行ってもよい。例えば、前記易接着層は、延伸後にオフラインで塗布を行って形成することも好ましい。
【0109】
(接着)
一方、本発明のポリエステルフィルム積層体の製造方法は、前記耐候性ポリエステルフィルムまたは前記耐候性ポリエステルフィルム上に接着剤(粘着剤)により層を形成する工程を含むことも好ましい。具体的には、本発明のポリエステルフィルム積層体の製造方法は、前記耐候性ポリエステルフィルムまたは前記耐候性ポリエステルフィルム上に塗布層や積層用ポリエステルフィルムを有する積層体に、接着剤により易接着層、UV吸収層、白色層、防汚層のうち少なくとも1層を形成することも好ましい。
本発明のポリエステルフィルム積層体の製造方法は、アルミナ蒸着ポリエステルフィルム、白色ポリエステルフィルム、140℃高圧スチームで10時間保管後の引張伸度がフィルムの縦方向、横方向共に、60%以上を保持するポリエステルフィルムを積層して接着することが好ましい。接着の方法としては、接着剤を一方のフィルムに塗布したのち、もう一方のフィルムと重ね合せ、加圧あるいは、加熱下で接着する方法などを用いることができる。
アルミナ蒸着ポリエステルフィルム、白色ポリエステルフィルム、140℃高圧スチームで10時間保管後の引張伸度がフィルムの縦方向、横方向共に、60%以上を保持するポリエステルフィルムの接着に用いられる接着剤として代表的なものは、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂,ポリアミド、フェノール、ポリオレフィン、アイオノマー、エチレン酢ビ共重合体、ポリビニルアセタールなど、およびこれらの共重合体や、混合物などが挙げられる。
接着剤は、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂,ポリオレフィン、アイオノマーが、接着力および、ガスバリア性の点で好ましく、最も好ましくは、ウレタン樹脂であることが望ましい。
接着剤の厚みが、0.1〜10μmの場合、接着力および、ガスバリア性の点で好ましい。更に好ましくは、接着剤の厚みは、0.3〜8μmであり、特に好ましくは、0.5〜5μmである。
特に、接着剤の厚みが、0.5〜5μmの場合は、金属酸化物層にピンホールや微細な亀裂がある場合にも優れたガスバリア性と強固な接着性を発揮できる。
【0110】
<太陽電池モジュール>
本発明のポリステルフィルム積層体は、太陽電池モジュールに用いることができる。前記太陽電池モジュールは、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子を、太陽光が入射する透明性の基板と既述の本発明のポリエステルフィルム積層体(太陽電池用バックシート)との間に配置して構成されている。基板とポリエステルフィルムとの間は、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体等の樹脂(いわゆる封止材)で封止して構成することができる。
【0111】
太陽電池モジュール、太陽電池セル、バックシート以外の部材については、例えば、「太陽光発電システム構成材料」(杉本栄一監修、(株)工業調査会、2008年発行)に詳細に記載されている。
【0112】
透明性の基板は、太陽光が透過し得る光透過性を有していればよく、光を透過する基材から適宜選択することができる。発電効率の観点からは、光の透過率が高いものほど好ましく、このような基板として、例えば、ガラス基板、アクリル樹脂などの透明樹脂などを好適に用いることができる。
【0113】
太陽電池素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素などのIII−V族やII−VI族化合物半導体系など、各種公知の太陽電池素子を適用することができる。
【実施例】
【0114】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0115】
(測定法)
(1) 耐候時間
各PETフィルムを120℃、相対湿度100%で10〜300時間の範囲を10時間間隔でサーモ処理を実施した後、各サーモ処理サンプルの破断伸度を測定し、得られた測定値をサーモ処理前の破断伸度で除算し、各サーモ処理時間での破断伸度保持率を下記式から求めた。横軸にサーモ時間、縦軸に破断伸度保持率をとってプロットし、これを結んで破断伸度保持率が50%以上に維持できる熱処理の時間を求めた。
破断伸度保持率[%]=(サーモ処理後の破断伸度)/(サーモ処理前の破断伸度)×100
【0116】
(2) 混練剪断速度
下記式から求めた。
剪断速度(sec−1)=(π×D×N)/(60×H)
D=スクリュー直径(mm)、N=スクリュー回転数(rpm)
H=スクリューのフライトとバレルのクリアランス(mm)
【0117】
(3) メルトの厚みむら
ダイから押出したメルトを、ダイから5cmに設置した20℃のチルロールで固化、なおチルロールの線速度/メルトの吐出速度(ドロー比)=1.1倍とした(ダイーチルロール間を短くすること、ドロー比を小さくすることで外乱を無くし、ダイから押出したメルトの厚みを反映させた)。
幅方向中央部を長手方向に3mサンプリングし、接触式厚み計を用い測定、下記式から厚みむらを測定した。
厚みむら(%)=100×(最大厚み−最小厚み)/平均厚み
【0118】
[実施例1]
(1)耐候性ポリエステルフィルムの製膜
(1−1)ポリエステル樹脂の調製
ジメチルテレフタレート100部(重量部:以下単に部という)にエチレングリコール64部を混合し、さらに触媒として酢酸亜鉛を0.1部および三酸化アンチモン0.03部を添加し、エチレングリコールの環流温度でエステル交換を実施した。
【0119】
これにトリメチルホスフェート0.08部を添加して徐々に昇温、減圧にして271℃の温度で5時間重合を行った。得られたポリエチレンテレフタレートの固有粘度は0.55であった。該ポリマーを長さ4mmのチップ状に切断した、PET(ポリエチレンテレフタレート)のチップ形状は、円柱形であり、長さ:5.95〜8.05mm、幅:3.20〜4.80mm、高さ:1.70〜2.30mmであり、比重は1.3g/cmであった。このPETを固相重合温度210℃、真空度0.5mmHgの条件の回転式の真空装置(ロータリーバキュームドライヤー)に入れ撹拌しながら18時間加熱することでIV=0.81、AV=18のPETポリマーを得た。
これにTmプレピークの温度が240℃、平均体積0.1mmのPET樹脂粉末を表1記載の量、添加した。なお、この樹脂粉末は、PETペレットを−50℃に冷却し破砕した後、篩に掛け上記粒径のものを選別、これを100℃で3時間結晶化、120℃3時間乾燥後、220℃で80時間熱処理して得た。
【0120】
(1−2)耐候性ポリエステルフィルム製膜・耐電圧向上(AS)層塗布
(1−2−A)製膜および一次延伸
上記で重合したポリエチレンテレフタレートを、180℃の温度で3時間真空乾燥した後に押出機に供給し、窒素雰囲気下、表1記載の押出し条件(剪断速度、圧縮部、計量部の温度、スクリュー回転変動、スクリュー外周長)で溶融させ、Tダイ口金に導入した。
【0121】
次いで、Tダイ口金内より、メルトをシート状に押出して、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸フィルムを得た。この際、表1記載の厚みむらをメルトに与えることで表1記載の冷却速度を得た。続いて、該未延伸単層フィルムを90℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、95℃の温度の加熱ロールを用いて長手方向(縦方向)に3.3倍延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸された耐候性ポリエステルフィルムを得た。
【0122】
(1−2−B)耐電圧向上層(延伸間オンライン)塗布
一軸延伸した耐候性ポリエステルフィルムにコロナ処理を施した後、下記<塗剤1―1>を#6のメタリングバーにて塗布した。
【0123】
<塗剤1―1>
・非水溶性カチオン系導電性材料の水分散体:“BONDEIP−PM(登録商標)”主剤(コニシ油脂(株)製、固形分30%)18重量部
・アクリル系樹脂水分散体:メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸/N−メチロールアクリルアミド=62/35/2/1(重量比)共重合アクリル樹脂(ガラス転移温度:42℃)を粒子状に固形分10%で水に分散させたもの。3重量部
・オキサゾリン基含有化合物水分散体:“エポクロス(登録商標)“WS−500(日本触媒(株)製、固形分40%)0.75重量部
・アセチレンジオール系界面活性剤:“オルフィン(登録商標)”EXP4051F(日信化学工業(株)製) 0.1重量部
・水 78.15重量部。
【0124】
(1−2−C)二軸延伸
耐電圧向上層を塗布した後の一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内で、平均温度95℃で乾燥した。この際に表1記載の温度分布をテンター内に全幅にわたり10分割して設置したパネルヒーターの出力の調整により、幅方向に付与した。これに引き続き連続的に105℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(幅方向)に3.5倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで、215℃で20秒間の熱処理を施し、さらに180℃の温度で4%幅方向に弛緩処理を行った後、更に140℃の温度で3%幅方向に弛緩処理を行った。次いで、均一に徐冷後、巻き取って、表面に耐電圧向上層が膜厚0.15μmで形成された厚さ125μmの二軸延伸された耐候性ポリエステルフィルムを得た。
得られた耐候性ポリエステルフィルムの耐候時間および結晶化速度を測定し、下記表1にその結果を記載した。
【0125】
(2)積層用ポリエステルフィルムの製膜
耐候性ポリエステルフィルム用のポリエステル樹脂として用いたPETと同様の材料を用い、Tmプレピークの温度が240℃で平均体積0.1mmのPET樹脂粉末を用いず、固相重合時間と押出し機のスクリュー回転数に変動を与え、延伸間において耐電圧向上層を形成しない以外は耐候性ポリエステルフィルムの製膜と同様にして、耐候性ポリエステルフィルムとの耐候時間の差が表1に記載の値である積層用ポリエステルフィルムを得た。なお、押出し機内の圧縮部は280℃、計量部の温度は290℃、スクリューの外周長は800mmで押出し、メルトに厚み変動1%を付与し、冷却速度800℃/分で冷却、これを95℃で3.3倍に縦延伸、105℃で幅方向に3.5倍延伸した後、235℃で20秒間の熱処理を施し、さらに230℃で4%幅方向に弛緩処理を行い、厚さ75μmの二軸延伸された積層用ポリエステルフィルムを得た。
【0126】
(3)接着層(張り合わせ)
次に得られた耐候性ポリエステルフィルムを第1層とし、この耐電層の反対面にコロナ処理を行った後、接着層として“タケラック(登録商標)”A310(三井武田ケミカル(株)製)90重量(部)、“タケネート(登録商標)A3(三井武田ケミカル(株)製)を塗布した。
【0127】
(4)易接着層の塗布(延伸後オフライン塗布)
得られた積層用ポリエステルフィルムにコロナ放電処理を行った後、下記易接着層を塗工した。塗工は2ヘッドのタンデム型ダイレクトグラビアコーターを用いて、下記条件で塗工した。
【0128】
・接着層:三井化学ポリウレタン(株)製芳香族エステル系接着剤
主剤 :タケラック (登録商標)A−310 12部(液体)
硬化剤:タケネート (登録商標)A−3 1部(液体)
上記2液を混合
塗工条件:固形分膜厚0.3μm
乾燥条件 平均温度120℃4秒。
・相溶性樹脂層:中央理化工業(株)製アクアテックス(登録商標)MC−3800
(エチレンービニルアセテート共重合体エマルジョン)
塗工条件:固形分膜厚1.0μm
乾燥条件 平均温度125℃10秒。
この際、これらの乾燥ゾーンに下記表1に記載の温度分布を付与した(易接着層、相溶性樹脂層とも同じ温度分布を付与)。
この後、上記耐候性ポリエステルフィルムの接着層と、積層ポリエステルフィルムの易接着層の反対面を貼り合わせ、ポリエステル積層体を形成した。
【0129】
(5)評価
上記のように積層したポリエステルフィルム積層体を、120℃相対湿度100%で100時間経時した後、両面に粘着テープ(日東電工(株)製ポリエステル粘着テープNo.31B)を貼り付け、十分しごいた後、勢い良く剥がした。密着不良で剥れた面積を求め、得られた面積を、粘着テープを貼った面積で割り、密着不良率(%)を求めた。得られた結果を表1に記載した。
【0130】
[実施例2〜37、40〜51、比較例1および2]
実施例1において、下記表1および表2に記載の耐候性フィルム製膜時の混練条件、キャスト条件、耐電圧向上層塗布条件、易接着層塗布条件、搬送張力、積層用ポリエステルフィルム特性を変更した以外は同様にして、実施例2〜37、40〜51、比較例1および2のポリエステルフィルム積層体を製造した。実施例1と同様にしてポリエステルフィルム積層体の密着性を評価し、得られた結果を下記表1および表2に記載した。
【0131】
[比較例3、実施例38]
特開2009−158952号公報の実施例1にしたがって、図3の構成である比較例3のポリエステルフィルム積層体を製膜した。なお、耐電圧向上層の塗布方法は、同文献実施例1<塗剤1−1>に記載の方法でおこなった。
一方、比較例3において、耐候性フィルムを下記表1および表2に記載の混練条件、キャスト条件で製膜し、耐電圧向上層の塗布方法を特開2009−158952号公報の実施例に記載の方法としたままその塗布条件を下記表1および表2に記載のとおりに変更し、実施例34のポリエステルフィルム積層体を製膜した。実施例1と同様にしてポリエステルフィルム積層体の密着性を評価し、得られた結果を下記表1および表2に記載した。
【0132】
[比較例4、実施例39]
国際公開WO2008/069024号公報の実施例1にしたがって、図4の構成である比較例4のポリエステルフィルム積層体を製膜した。なお、易接着層の塗布方法は、同文献に記載の方法でおこなった。
一方、比較例4において、耐候性ポリエステルフィルム(東レ(株)製ルミラー(登録商標)X10S)を、下記表1および表2に記載の条件で製膜した耐候性フィルムに変更し、易接着層の塗布方法を特開2009−158952号公報の実施例に記載の方法としたままその塗布条件を下記表1および表2に記載のとおりに変更し、実施例35のポリエステルフィルム積層体を製膜した。実施例1と同様にしてポリエステルフィルム積層体の密着性を評価し、得られた結果を下記表1および表2に記載した。
【0133】
【表1】

【0134】
【表2】



【0135】
表1および表2より、本発明のポリエステルフィルムは、密着性に優れることがわかった。
一方、プレピーク240℃の微粒子の添加量が本発明の製造方法の下限値未満である比較例1の製造方法で得られた耐候性ポリエステルフィルムは、結晶化速度が本発明の範囲を超え、得られた比較例1のポリエステルフィルム積層体は耐電圧向上層の密着性も、易接着層の密着性も低いことがわかった。プレピーク240℃の微粒子の添加量が本発明の製造方法の上限値を超える比較例2の製造方法で得られた耐候性ポリエステルフィルムは、結晶化速度が本発明の範囲未満であり、得られた比較例2のポリエステルフィルム積層体は耐電圧向上層の密着性も、易接着層の密着性も低いことがわかった。
また、特開2009−158952号公報の実施例1を追試した比較例3では、耐候性フィルム製造時にプレピーク240℃の微粒子を添加しておらず、得られた耐候性ポリエステルフィルムは耐候時間が本発明の範囲未満であり、結晶化速度は本発明の範囲を超えるものであり、得られたポリエステルフィルム積層体の帯電圧向上層の密着性も悪かった。それに対して、比較例3において本発明の製造方法を採用した実施例34では、得られた耐候性ポリエステルフィルムは本発明の範囲の耐候時間および結晶化速度を満たすものであり、得られたポリエステルフィルム積層体の耐電圧向上層の密着性も良好となることがわかった。
また、国際公開WO2008/069024号公報の実施例1を追試した比較例4で用いている耐候性ポリエステルフィルム(東レ(株)社製ルミラー(登録商標)X10S)は耐候時間が本発明の範囲未満であり、結晶化速度は本発明の範囲を超えており、得られたポリエステルフィルム積層体の易接着層の密着性も悪かった。それに対して、比較例3において本発明の製造方法を採用した実施例35では、得られた耐候性ポリエステルフィルムは本発明の範囲の耐候時間および結晶化速度を満たすものであり、得られたポリエステルフィルム積層体の易接着層の密着性も良好となることがわかった。
【0136】
[実施例101]
図5に示す構成の、白色PET層とアルミナ蒸着PET層を有する実施例101のポリエステルフィルム積層体を製造した。
ポリエステルフィルムの片面にアルミナを蒸着したアルミナ蒸着ポリエステルフィルム(東レフィルム加工(株)製バリアロックス(登録商標)1011HG−CR、12μm厚、樹脂コート層/Al/ポリエチレンテレフタレートフィルム)を準備した。このアルミナ蒸着ポリエステルフィルムのポリエステルフィルム面上に実施例1と同様にして接着層及び相溶性樹脂層をこの順に塗工した。しかる後、アルミナ蒸着ポリエステルフィルムと白色ポリエステルフィルム(東レ(株)製ルミラー(登録商標)E20 厚さ50μm)を、接着剤を用いてアルミナ蒸着ポリエステルフィルムのアルミナ層側(樹脂コート層側)と白色ポリエステルフィルム面が対向するようにドライラミネートした。接着剤は市販のポリエステル系接着剤主剤LX703VL(大日本インキ化学工業(株)製)とポリイソシアネート硬化剤KR90(大日本インキ化学工業(株)製)を重量比で15:1に混合した接着剤(乾燥重量4g/m)を使用した。さらに白色フィルム上に同じ接着剤を用いて、実施例1(1)中において製膜した耐電圧向上層を塗布して二軸延伸した状態の耐候性ポリエステルフィルムを積層して、実施例101のポリエステルフィルム積層体を作成した。
【0137】
[実施例102]
図6に示す構成の、紫外線吸収性樹脂層とアルミナ蒸着PET層を有する実施例102のポリエステルフィルム積層体を製造した。
実施例1(1)〜(3)で製膜した耐電圧向上層を塗布して二軸延伸した状態の耐候性ポリエステルフィルムと積層用ポリエステルフィルムを貼り合わせた積層体を用いて、その積層用ポリエステルフィルム上に、適宜、紫外線吸収性化合物を含有する樹脂層を下記方法により積層した。紫外線吸収性樹脂化合物を含有する樹脂として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メタクリルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、ブチルアクリレートを40:10:50の比率で含有する共重合体を酢酸エチルで希釈してなる濃度45%の溶媒溶液の固形分100部に対して、架橋性化合物(住化バイエルウレタン(株)製デスモジュールN3200;HDIのビゥレット変性体)を固形分10部混合し、トルエンで固形分濃度20重量%とした均一塗液を調製した。
【0138】
上記均一塗液を表面にコロナ処理を行った実施例1中において製膜した耐電圧向上層を塗布して二軸延伸した状態の耐候性ポリエステルフィルムの耐電圧向上層が塗布されていない面上に、メタリングバーにより塗布した後、熱風循環式オーブンにより140℃で2分間乾燥し、厚み10μmの紫外線吸収性樹脂層を設けたポリエステルフィルムを得た(前駆体A)。透明ガスバリア性PETフィルムとして厚さ12μmのアルミ蒸着フィルム(東レフィルム加工(株)製“バリアロックス”1011HG−CR:樹脂コート層/Al/ポリエチレンテレフタレートフィルム)の樹脂コート層に接着層を設けて前駆体Aの紫外線吸収性樹脂層と貼合し、実施例102のポリエステルフィルム積層体を作成した。
【0139】
実施例101および102のポリエステルフィルム積層体について、実施例1と同様にしてポリエステルフィルム積層体の密着性を評価した。評価結果は、表2の実施例101、102に示した。
【符号の説明】
【0140】
1 耐候性ポリエステルフィルム
2 耐電圧向上層
3a、3b、3c、3d 接着層
4 相溶性樹脂層
5 易接着層
6 積層用ポリエステルフィルム
7、7a、7b 通常のポリエチレンテレフタレートフィルム
8 アルミナ層
9 アルミナ蒸着ポリエステルフィルム
10 白色ポリエステルフィルム
11 紫外線吸収性樹脂層
21 ポリエステルフィルム積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
120℃、相対湿度100%で熱処理した後の破断伸度保持率が50%以上に保持される熱処理時間が50時間以上である耐候性ポリエステルフィルムと、
該耐候性ポリエステルフィルムの少なくとも片方の面上に設けられた層とを有し、
前記耐候性ポリエステルフィルムの結晶化速度が10〜50J/g・minであることを特徴とするポリエステルフィルム積層体。
【請求項2】
前記耐候性ポリエステルフィルムの120℃、相対湿度100%で熱処理した後の破断伸度保持率が50%以上に保持される熱処理時間が50〜150時間であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記耐候性ポリエステルフィルムの膜厚が50〜350μmであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記耐候性ポリエステルフィルムが、融点のプレピーク温度が235〜250℃のポリエステル樹脂を耐候性ポリエステルフィルムに対して10〜500ppm含み、混練押出し機を用いて製膜されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム積層体。
【請求項5】
前記耐候性ポリエステルフィルムが10〜1000sec−1の剪断速度での混練押出しにより製膜されたことを特徴とする請求項4に記載のポリエステルフィルム積層体。
【請求項6】
前記混練中に、前記混練押出し機の計量部のメルト温度を圧縮部のメルト温度より1〜20℃高くして製膜されたことを特徴とする請求項4または5に記載のポリエステルフィルム積層体。
【請求項7】
前記混練中に、前記混練押出し機のスクリュー回転数に0.01〜1%の変動を与えて製膜したことを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム積層体。
【請求項8】
前記スクリューの外周長が600mm〜1900mmであることを特徴とする請求項7に記載のポリエステルフィルム積層体。
【請求項9】
前記混練押出し機からダイを通して押出したメルトを200〜5000℃/minで冷却固化して製膜されたことを特徴とする請求項4〜8のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム積層体。
【請求項10】
前記ダイから押出したメルトの厚みのむらが0.1〜5%であることを特徴とする請求項9に記載のポリエステルフィルム積層体。
【請求項11】
前記耐候性ポリエステルフィルムの少なくとも片面上に、120℃、相対湿度100%で熱処理した後の破断伸度保持率が50%以上に保持される熱処理時間が該耐候性ポリエステルフィルムより1時間〜100時間短い積層用ポリエステルフィルムを有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム積層体。
【請求項12】
前記積層用ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を有することを特徴とする請求項11に記載のポリエステルフィルム積層体。
【請求項13】
前記耐候性ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム積層体。
【請求項14】
前記塗布層が、フィルム幅方向に0.5℃〜10℃の温度分布を与えて形成されたことを特徴とする請求項12または13に記載のポリエステルフィルム積層体。
【請求項15】
前記塗布層が、易接着層、UV吸収層、白色層、防汚層のうち少なくとも1層を含むことを特徴とする請求項12〜14のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム積層体。
【請求項16】
ポリエステル樹脂と、該ポリエステル樹脂に対して10〜500ppmの融点のプレピーク温度が235〜250℃のポリエチレンテレフタレート樹脂とを含む樹脂組成物を、混練押出し機を用いてメルト化し、製膜する工程を含むことを特徴とするポリエステルフィルム積層体の製造方法。
【請求項17】
前記樹脂組成物を、10〜1000sec−1の剪断速度に制御しながら混練することを特徴とする請求項16に記載のポリエステルフィルム積層体の製造方法。
【請求項18】
前記混練中に、前記混練押出し機の計量部のメルト温度を圧縮部のメルト温度より1〜20℃高くすることを特徴とする請求項16または17に記載のポリエステルフィルム積層体の製造方法。
【請求項19】
前記混練中に、前記混練押出し機のスクリュー回転数を0.01〜1%変動させることを特徴とする請求項16〜18のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム積層体の製造方法。
【請求項20】
前記スクリューの外周長が600mm〜1900mmであることを特徴とする請求項19に記載のポリエステルフィルム積層体の製造方法。
【請求項21】
前記混練押出し機からダイを通してメルトを押出し、該メルトを200〜5000℃/minで冷却固化することを特徴とする請求項16〜20のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム積層体の製造方法。
【請求項22】
前記ダイから押出したメルトの厚みのむらを0.1〜5%となるように制御することを特徴とする請求項21に記載のポリエステルフィルム積層体の製造方法。
【請求項23】
ポリエステル樹脂を含み、かつ融点のプレピーク温度が235℃未満である樹脂組成物を前記耐候性ポリエステルフィルムの少なくとも片面上に適用して、積層用ポリエステルフィルムを製膜する工程を含むことを特徴とする請求項16〜22のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム積層体の製造方法。
【請求項24】
前記積層用ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、塗布により層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項23に記載のポリエステルフィルム積層体の製造方法。
【請求項25】
前記耐候性ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、塗布により層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項16〜24のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム積層体の製造方法。
【請求項26】
フィルム幅方向に0.5℃〜10℃の温度分布を与えるように制御しながら前記塗布を行うことを特徴とする請求項24または25に記載のポリエステルフィルム積層体の製造方法。
【請求項27】
前記塗布により、易接着層、UV吸収層、白色層、防汚層のうち少なくとも1層を塗布形成することを特徴とする請求項24〜26のいずれか一項に記載のポリエステルフィルム積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−255624(P2011−255624A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133339(P2010−133339)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】