説明

ポリエステルフィルム

実用上十分な可視光領域の反射性能を維持し、また、高濃度に無機微粒子を添加しても安定して製膜でき、光源からの熱による寸法変化に対しても安定である白色のポリエステルフィルムを提供する。共重合ポリエステルおよび無機微粒子からなる組成物からなるポリエステルフィルムであって、上記組成物における無機微粒子の割合が30〜50重量%であり、上記フィルムの85℃の熱収縮率が縦、横方向ともに0.7%以下、150℃の熱収縮率が縦、横方向ともに5.0%以下であり、波長400〜700nmにおける平均反射率が90%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ポリエステルフィルムに関する。さらに詳しくは、白色ポリエステルフィルム、特に反射板として好適に用いられる白色のポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
白色ポリエステルフィルムは、インクジェット、感熱転写、オフセット印刷などの印刷記録受容シートの基材として広く用いられている。この白色ポリエステルフィルムは、ポリエステルに無機微粒子を含有させ、または非相溶樹脂を含有せしめて製造することが一般的である。
近年、印刷精度が向上し、印刷物の鮮明性が向上したことから、より高級感を与える白色ポリエステルフィルムが求められるようになった。この要求に応えるため、特開平4−153232号公報および特開平6−322153号公報には、無機微粒子を複数種類添加したもの、または無機微粒子と非相溶樹脂とを併用添加したものが提案されている。しかし、これらの技術に対しても、さらなる鮮明性および高級感の向上が求められている。特に、コンビニエンスストア等の商店の店名表示や、商品の広告に使用される内照式電飾看板では、宣伝効果をあげるために光源の蛍光灯の本数を多くして、看板表面の明るさを1000ルックス以上とし、あるいは、色彩豊富なネオン管を使用して、看板に描かれた意匠を引き立てる工夫を行い、宣伝効果を高めているが、かかる内照式電飾看板は照度を上げるための反射板を使用している。また、液晶ディスプレイにおいて、表示面を照明するに際して、ディスプレイの背面からライトを当てるバックライト方式が一般に採用されていたが、近年、特開昭63−62104号公報に示されるようなサイドライト方式が、薄型で均一に照明できるメリットから、広く用いられるようになってきた。このサイドライト方式は、ある厚みを持ったアクリル板などのエッジより冷陰極管などの照明を当てる方式で、網点印刷のために、照明光が均一に分散され、均一な明るさをもった画面が得られる。この方式によれば、画面の背面でなくエッジ部に照明を設置するためバックライト方式より薄型にできる。
照明光の画面背面への逃げを防ぐため画面の背面に反射板を設置する必要があるが、この反射板には薄さと光の高反射性が要求される。この目的に合った液晶ディスプレイ反射板用白色ポリエステルフィルムとしては、作業性の容易さや安価なことから酸化チタンを含有せしめたものが知られている。しかし、特公平8−16175号公報に記載されているように、非相溶樹脂、酸化チタンなどの添加だけでは反射率向上には限界があり、画面の明るさが十分とは言えない。
酸化チタンなどの無機系粒子を高濃度添加すると反射効率の向上は期待できる。しかしながら、たとえば50重量%添加した場合、粒子濃度が非常に高いため、破断が多発し製膜することが非常に困難となり、場合によっては製膜できない状況であった。また、粒子濃度が非常に高い場合の破断の頻度を低下させる現実的な手段としてポリエステル樹脂を共重合化させることが考えられるが、この場合、熱収縮率が非常に高くなり、極めて熱寸法安定性が悪いフィルムしか得られていなかった。
【発明の開示】
本発明の目的は、かかる問題点を解決し、実用上十分な可視光領域の反射性能を維持し、また、高濃度に無機微粒子を添加しても安定して製膜でき、光源からの熱による寸法変化に対しても安定である白色のポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、上記の如き特性を有しそして太陽電池のバックシート、液晶ディスプレイや内照式電飾看板の反射板用基材として最適なポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第1に、
主たるジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、主たるグリコール成分がエチレングリコールでありそして共重合成分がイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびシクロヘキサンジメタノールよりなる群から選ばれる少なくとも1種である共重合ポリエステルおよびこの組成物に対し30〜50重量%の無機微粒子よりなる組成物からなり、
85℃における熱収縮率が、縦方向、横方向いずれの方向においても、0.7%以下であり且つ150℃における熱収縮率が、縦方向、横方向いずれの方向においても、5.0%以下であり、そして
波長400〜700nmにおける平均反射率が90%以上である、
ことを特徴とする、ポリエステルフィルムによって達成される。
上記組成物によって、従来では延伸製膜が非常に困難であった高濃度の無機微粒子を含有するフィルムを安定して製膜することができ、そして上記の如き特性を備えた白色ポリエステルフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明のポリエステルフィルムは、単層からなる単層フィルムであることができまた複数層からなる積層フィルムであることができる。
積層フィルムは、上記共重合体と無機微粒子からなる上記組成物からなる少なくとも1層を有する。例えば、上記組成物からなる一層と、上記共重合ポリエステルと無機微粒子からなりそして該無機微粒子が0〜30重量%を占める組成物からなる一層とからなる積層フィルムであることができる。
共重合ポリエステル
上記共重合ポリエステルは、主たるジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、主たるグリコール成分がエチレングリコールでありそして共重合成分がイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびシクロヘキサンジメタノールよりなる群から選ばれる少なくとも1種であるものである。
共重合成分の割合は全ジカルボン酸成分または全ジオール成分あたり、好ましくは1〜30モル%、さらに好ましくは3〜25モル%、より好ましくは5〜20モル%、特に好ましくは7〜15モル%である。1モル%未満であると無機微粒子を含有する層の延伸応力が高くなり、製膜できないことがあり、30モル%を超えると熱寸法安定性に欠けたり製膜が困難になったりする。
共重合成分は、上記の通り、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸例えば2,6−ナフタレンジカルボン酸またはシクロヘキサンジメタノール例えば1,4−シクロヘキサンジメタノールである。このような共重合ポリエステルを用いることによって、高濃度に無機微粒子を含有する組成物であっても安定して製膜することができて好ましい。共重合ポリエステルの融点は、好ましくは250℃以下、さらに好ましくは245℃以下、特に好ましくは240℃以下である。
無機微粒子
無機微粒子は組成物あたり30〜50重量%含有される。無機微粒子が30重量%未満であると十分な光線反射率や白度が得られ難い。50重量%を超えると製膜時に切断が発生しやすい。
無機微粒子の平均粒径は、好ましくは0.1〜3.0μm、さらに好ましくは0.2〜2.5μm、特に好ましくは0.3〜2.0μmである。0.1μm未満であると分散性が極端に悪くなり、粒子の凝集が起こるため、生産工程上のトラブルが発生し易く、フィルムに粗大突起を形成し、光沢の劣ったフィルムになる可能性があり好ましくない。3.0μmを超えるとフィルムの表面が粗くなり、光沢が低下して好ましくない。無機微粒子としては、例えば硫酸バリウム、酸化チタン、炭酸カルシウムまたは二酸化珪素が好ましい。これらは1種または2種以上一緒に用いることができる。酸化チタンとしては、例えばルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンを挙げることができる。ルチル型酸化チタンを用いると、光線によるポリエステルフィルムの黄変が少なく、色差の変化を抑制することができるので好ましい。ルチル型酸化チタンは、ステアリン酸等の脂肪酸またはその誘導体等を用いて分散性の向上をはかると、フィルムの光沢度を向上することができるので好ましい。そしてルチル型酸化チタンは、ポリエステルに添加する前に、精製プロセスを用いて、粒径調整を行い、粗大粒子を除去して用いるのが好ましい。この精製プロセスの工業的手段について、粉砕手段としては例えばジェットミル、ボールミルを用いることができ、また分級手段としては例えば乾式もしくは湿式遠心分離機を用いることができる。これらの手段は2種以上を組み合わせてもよく、段階的に精製してもよい。
無機微粒子を共重合ポリエステルに含有させる方法としては例えば下記の方法を挙げることができる。
共重合ポリエステル合成時のエステル交換反応もしくはエステル化反応終了前に添加、もしくは重縮合反応開始前に添加する方法によるか、あるいは共重合ポリエステルに添加し、溶融混練する方法によるか、いずれかの方法において不活性粒子を多量添加したマスターペレットを製造し、これらと添加剤を含有しない共重合ポリエステルとを混練して所定量の添加物を含有させる方法、または上記のマスターペレットをそのまま使用する方法。
なお、前記共重合ポリエステル合成時に添加する際に無機微粒子が酸化チタンの場合には、それをグリコールに分散したスラリーとして、反応系に添加することが好ましい。
共重合ポリエステル中において、無機微粒子の粗大凝集粒子の個数を少なくすることが好ましい。この目的のため、製膜時のフィルターとして線径15μm以下のステンレス鋼細線よりなる、平均目開きが好ましくは10〜100μm、より好ましくは20〜50μmの不織布型フィルターを用い、溶融した共重合ポリマー組成物を濾過することが好ましい。
無機微粒子は、上記の如く、複数種類を併用してもよい。例えば、ルチル型酸化チタンにアナターゼ型酸化チタンを併用してもよい。また、酸化チタンに、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、二酸化珪素を併用してもよい。
この共重合ポリエステル組成物は蛍光増白剤あるいは紫外線吸収剤を含有してもよい。含有する場合、蛍光増白剤の濃度は、組成物あたり、好ましくは0.005〜0.2重量%、さらに好ましくは0.01〜0.1重量%である。蛍光増白剤としては、例えばOB−1(イーストマン社製)、Uvitex−MD(チバガイギー社製)、JP−Conc(日本化学工業所製)を用いることができる。
蛍光増白剤の含有量が、0.005重量%未満では反射板としたときの照度の向上が十分に大きくなく添加した効果が希薄であり、0.2重量%を超えると、蛍光増白剤の持つ特有の色が現れてしまうため好ましくない。
紫外線吸収剤は、その種類を特に特定されないが、環状イミノエステル及び環状イミノエステルから選ばれる少なくとも1種の化合物を、未反応の形態で用いるのが好ましい。かかる環状イミノエステルとしては例えば特開昭59−12952号公報に記載されている、それ自体紫外線吸収剤として公知の化合物が用いられる。
紫外線吸収剤の添加量は、共重合ポリエステルに対し、0.1〜5重量%が好ましく、0.2〜3重量%がさらに好ましい。この量が0.1重量%未満では紫外線劣化防止効果が小さく、一方5重量%を超えるとポリエステルの製膜特性が低下し、好ましくない。
なお、本発明のポリエステルフィルムを構成する上記組成物は、共重合ポリエステルと実質的に非相溶性の樹脂成分を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、組成物あたり0〜1重量%、さらに好ましくは0〜0.5重量%であることを意味している。
熱収縮率
本発明のポリエステルフィルムは、85℃の熱収縮率が縦、横方向ともに0.7%以下、好ましくは0.6%以下、さらに好ましくは0.5%以下でありそして150℃の熱収縮率が縦、横方向ともに5.0%以下、好ましくは4.5%以下、さらに好ましくは4.0%以下である。そして、熱収縮率のバランスは、(縦方向85℃熱収縮率)/(横方向85℃熱収縮率)の比が、絶対値で1.0〜3.0の範囲にあることが好ましい。この範囲を超えると熱収縮率が上記値を示していてもしわになり易いため好ましくない。
厚み
本発明のポリエステルフィルムの厚みは、好ましくは25〜250μm、さらに好ましくは30〜220μm、特に好ましくは40〜200μmである。25μm未満であると光線反射率が低下し、250μmを超えても反射率の上昇が見込み難く好ましくない。
光学的性質
本発明のポリエステルフィルムの光線反射率は、波長400〜700nmの平均反射率として90%以上、好ましくは92%以上、さらにより好ましくは94%以上である。上記構成によりこの反射率を達成することができるが、この反射率を備えないと、反射板として用いたとき十分な反射効率を得ることができない。
さらに、本発明のポリエステルフィルムは、好ましくは、光学濃度が1.2以上であり且つ400〜700nmの波長域における絶対正反射率の平均値が2.0以上である。
層構成
本発明のポリエステルフィルムは、前記の通り、単層からなるフィルムであっても、複数の層からなるフィルムであってもよい。複数の層からなる場合、例えばA層およびB層からなる2層から構成されることができ、また、A層、B層、A層からなる3層あるいはA層、B層、C層からなる3層から構成されることもできる。また、4層以上から構成されてもよい。作製上の容易さと効果を考慮すると単層、2層、A層/B層/A層からなる3層の形態が特に良好である。またフィルムの片面または両面に、他の機能を付与するために、他の層をさらに積層した積層フィルムとしてもよい。ここでいう、他の層とは、例えば透明なポリエステルフィルム、金属薄膜、ハードコート層、インク受容層などである。
製造方法
以下、複数の層からなる積層フィルムである場合の製造方法の一例を説明する。単層フィルムの場合も、この方法に準拠して製造することができる。
積層フィルムの製造のためには、フィードブロックを用いた同時多層押出し法により、積層未延伸フィルムを製造する。すなわちA層を形成するポリマーの溶融物とB層を形成するポリマーの溶融物とを、フィードブロックを用いてA層/B層/A層となるように積層し、ダイに展開して押出しを実施する。この時、フィードブロックで積層されたポリマーは積層された形態を維持している。ダイより押出されたシートは、キャスティングドラム上で冷却固化され、未延伸状態の積層フィルムとなる。
この未延伸状態にある延伸可能な積層フィルムを、ロール加熱、赤外線加熱等で加熱して縦方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。延伸温度はポリエステルのガラス転移点(Tg)より高い温度、好ましくはTgより20〜40℃高い温度で行なう。延伸倍率は、フィルムに要求される特性にもよるが、好ましくは2.5〜4.0倍、さらに好ましくは2.8〜3.9倍である。2.5倍未満ではフィルムの厚み斑が大きくなり良好なフィルムが得られず、4.0倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなり好ましくない。
縦延伸フィルムは、続いて、横延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとされる。これらの処理はフィルムを走行させながら行うことが有利である。横延伸の処理は好ましくは、ポリエステルのガラス転移点(Tg)より10℃以上高い温度から始めそしてTgより(10〜70)℃高い温度まで昇温しながら行う。横延伸過程での昇温は連続的でも段階的(逐次的)でもよいが通常逐次的に昇温する。例えばテンターの横延伸ゾーンをフィルム走行方向に沿って複数に分け、ゾーン毎に所定温度の加熱媒体を流すことで昇温する。横延伸の倍率は、フィルムに要求される特性にもよるが、好ましくは2.5〜4.5倍、さらに好ましくは2.8〜3.9倍である。2.5倍未満ではフィルムの厚み斑が大きくなり良好なフィルムが得られず、4.5倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなり好ましくない。
横延伸後のフィルムは、両端を把持したままポリエステルの融点(Tm)より20〜80℃低い温度、(Tm−20〜80)℃で定幅または10%以下の幅減少下で熱処理して熱収縮率を低下させるのがよい。これより高い温度であるとフィルムの平面性が悪くなり、厚み斑が大きくなる。また、熱処理温度が(Tm−80)℃より低いと熱収縮率が大きくなることがある。また、熱固定後フィルム温度を常温に戻す過程で(Tm−20〜80)℃以下の領域の熱収縮量を調整する為に、把持しているフィルムの両端を切り落し、フィルム縦方向の引き取り速度を調整し、縦方向に弛緩させることが好ましい。弛緩させる手段としてはテンター出側のロール群の速度を調整する。弛緩させる割合として、テンターのフィルムライン速度に対してロール群の速度ダウンを行い、好ましくは0.1〜1.2%、さらに好ましくは0.2〜1.0%、特に好ましくは0.3〜0.8%の速度ダウンとし、弛緩を実施する。この弛緩により縦方向の熱収縮率を調整することができる。フィルム横方向は、両端を切り落すまでの過程で幅減少させて、所望の熱収縮率を得ることができる。
本発明によれば、実用上十分な可視光領域の反射性能を維持し、また、高濃度に無機微粒子を添加しても安定して製膜でき、光源からの熱による寸法変化に対しても安定である白色のポリエステルフィルムを提供することができる。本発明のポリエステルフィルムは、光線の反射板例えば太陽電池のバックシート、液晶ディスプレイや内照式電飾看板の如きフラットパネルディスプレイの反射板、あるいは印刷記録受容シートの反射板として最適である。
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳述する。なお、各特性値は以下の方法で測定した。
(1)フィルム厚み
フィルムサンプルをエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製 K−402B)にて、10点厚みを測定し、平均値をフィルムの厚みとした。
(2)各層の厚み
フィルムサンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUT−S)で縦方向に平行な断面を50nm厚の薄膜切片にした後、透過型電子顕微鏡を用いて、加速電圧100kvにて観察撮影し、写真から各層の厚みを測定し、平均厚みを求めた。
(3)全光線相対反射率
分光光度計(島津製作所製UV−3101PC)に積分球を取り付け、BaSO白板を100%とした時の全光線相対反射率を400〜700nmにわたって測定する。得られた測定値より2nm間隔で反射率を読み取った。得られた値の平均値を、全光線相対反射率の平均値とした。平均値を次の基準で評価した。
○:全測定領域において反射率90%以上である。
△:測定領域において平均反射率90%以上であり、一部に反射率90%未満の領域がある。
×:全測定領域において平均反射率が90%未満である。
(4)絶対正反射率
分光光度計(島津製作所製UV−3101PC)に絶対反射率測定装置(島津製作所製ASR3105)を取り付け入射5°で、400〜700nmにわたって測定する。得られた測定値より2nm間隔で反射率を読み取った。得られた値の平均値を、絶対正反射率の平均値とした。
(5)光学濃度
光学濃度計(X−Rite社製 商品名「TR−310」)を用いてフィルムサンプルの3原色におけるV(Visual)光学濃度を測定した。
(6)延伸性
縦方向に3.4倍、横方向に3.6〜3.7倍に延伸して製膜し、このときフィルムを安定に製膜できるかどうかを下記基準で評価した。
○:1時間以上安定に製膜できる
×:1時間以内に切断が発生し、安定な製膜ができない。
(7)熱収縮率
温度をそれぞれ85℃、150℃に設定されたオーブン中でフィルムサンプルを無緊張状態で30分間保持し、加熱処理前後の標点間距離を測定し、下記式により熱収縮率(85℃熱収縮率と150℃熱収縮率)を算出する。
熱収縮率%=((L0−L)/L0)×100
L0:熱処理前の標点間距離
L :熱処理後の標点間距離
(8)ガラス転移点(Tg)、融点(Tm)
示差走査熱量測定装置(TA Instruments 2100 DSC)を用い、昇温速度20m/分で測定した。
[実施例1〜4]
表1に示す各共重合ポリエステルに表1に示す無機微粒子を添加し、それぞれ280℃に加熱された2台の押出機に供給し、A層ポリマー、B層ポリマーをA層とB層がA/B/Aとなるような3層フィードブロック装置を使用して合流させ、その積層状態を保持したままダイスよりシート状に成形した。さらにこのシートを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化して得た未延伸フィルムを、85〜98℃に加熱したロール群に導き、長手方向(縦方向)に3.4倍延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き120℃に加熱された雰囲気中で長手方向に垂直な方向(横方向)に3.7の倍率で延伸した。その後テンター内で表2に記載の温度で熱固定を行い、表2に記載の温度にて縦方向の弛緩、横方向の幅入れを行い、室温まで冷やして二軸延伸フィルムを得た。このフィルムを反射板として用いたときの物性は表2のとおりであった。
[実施例5、6]
実施例1〜4において、フィルムの層構成を単層のものにし、条件を表1、2に記載したとおりとする以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。層構成を単層のものにするために押出機は1台用いた。
比較例1
表1、2に記載した条件をとる他は実施例1と同様にして製膜した。縦方向、横方向の弛緩を実施していないため、熱収縮率に対して劣っていた。
比較例2
表1、2に記載した条件をとる他は実施例1と同様にして製膜した。無機微粒子の含有量が少なく反射率が劣っていた。
比較例3
表1、2に記載した条件をとる他は実施例1と同様にして製膜した。フィルム厚みが不足であり、反射率が劣っていた。
比較例4
表1、2に記載した条件をとる他は実施例1と同様にして製膜した。共重合されていないポリマーを用いており、延伸性が極めて低く、製膜時の切断が多発し、そのためフィルムが作製できなかった。
比較例5
表1、2に記載した条件をとる他は実施例1と同様にして製膜した。共重合成分の割合が低く、延伸性の低下を招いた為、製膜時の切断が多発した。そのため、物性を測定できなかった。
比較例6
A層にポリエチレンテレフタレートに炭酸カルシウムを14重量%配合した組成物を用い、B層にポリエチレンテレフタレートに非相溶樹脂であるポリメチルペンテン樹脂を10重量%、ポリエチレングリコール1重量%配合した組成物を用いる他は実施例1と同様にして製膜した。結果を表1および2に示す。反射率が劣った結果であった。




本発明のポリエステルフィルムは、紙代替、すなわちカード、ラベル、シール、宅配伝票、ビデオプリンタ用受像紙、インクジェット、バーコードプリンタ用受像紙、ポスター、地図、無塵紙、表示板、白板、感熱転写、オフセット印刷、テレフォンカード、ICカードなどの各種印刷記録の用途に好適に用いることができる。本発明のポリエステルフィルムは、反射率が高く意匠性に優れた受容シートの基材として、また、商品や店舗の宣伝に、あるいは駅の案内表示板等に使用する内照式電飾看板に用いて最適であり、液晶画面をライトにより照明した場合に、より明るい画面が得られる反射板用基材を構成することが可能であって、光源の熱による寸法変化が小さいので、液晶ディスプレイの反射板用基材や太陽電池のバックシートに特に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主たるジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、主たるグリコール成分がエチレングリコールでありそして共重合成分がイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびシクロヘキサンジメタノールよりなる群から選ばれる少なくとも1種である共重合ポリエステルおよびこの組成物に対し30〜50重量%の無機微粒子よりなる組成物からなり、
85℃における熱収縮率が、縦方向、横方向いずれの方向においても、0.7%以下であり且つ150℃における熱収縮率が、縦方向、横方向いずれの方向においても、5.0%以下であり、そして
波長400〜700nmにおける平均反射率が90%以上である、
ことを特徴とする、ポリエステルフィルム。
【請求項2】
無機微粒子が、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウムおよび二酸化珪素からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項3】
組成物が共重合ポリエステルに非相溶性の樹脂を高々1重量%で含有する請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項4】
2層以上からなりそしてそのうちの少なくとも1種が請求項1に記載の組成物からなる積層フィルムである、請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物からなる1層ならびに請求項1に記載の共重合ポリエステルおよびこの組成物に対し0〜30重量%の無機微粒子よりなる組成物からなる1層を少なくとも有する積層フィルムである、請求項4に記載のポリエステルフィルム。
【請求項6】
光学濃度が1.2以上であり且つ400〜700nmの波長域における絶対正反射率の平均値が2.0以上である請求項4に記載のポリエステルフィルム。
【請求項7】
フィルムの厚みが25〜250μmである請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項8】
反射板に用いる請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項9】
フラットパネルディスプレイの反射板に用いる請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項10】
印刷記録受容シートに用いる請求項1に記載のポリエステルフィルム。

【国際公開番号】WO2005/026241
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【発行日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513810(P2005−513810)
【国際出願番号】PCT/JP2004/007637
【国際出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】