説明

ポリエステル生地昇華転写用インクジェットインクおよびそのインクを用いた昇華転写方法

【課題】印刷時にカスレ、ドット欠け、飛行曲がりが生じず、印刷された昇華転写紙にべたつきがなく、ポリエステル生地に熱プレスして、転写画像が歪むことなく、高濃度で鮮明なフルカラー画像となることである。
【解決手段】水溶性有機溶剤は、グリセリン、グリコール類およびグリコールエーテル類の少なくとも3種からなり、インクにおいて、グリセリンの含有量が5重量%以上30重量%以下の範囲であり、グリコール類の含有量が1重量%以上15重量%以下の範囲であり、グリコールエーテル類の含有量が0.1重量%以上5重量%以下の範囲であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間画像を昇華転写紙に形成して、昇華転写紙の中間画像と被転写体を合わせて熱プレスして、中間画像を被転写体へ昇華転写させて、被転写体に画像を形成することに関する。特に、中間画像をピエゾ式インクジェットプリンタにて昇華転写紙に印刷して形成するものであり、被転写体がポリエステル生地であり、ポリエステル生地にフルカラー画像を形成することに適した昇華転写用インクジェットインクおよびそれを用いた昇華転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生地を染色するための捺染方法として、凸版を用いるローラー捺染や孔版を用いるスクリーン捺染がある。これらは大量単品種生産において主流の方法である。しかし、消費者ニーズの激しい移り変わりに対応するため、大量単品種生産ではなく、少量多品種生産の要望が強くなっている。そこで、インクジェットプリンタによる昇華転写方法が注目されている。この方法であれば、製版工程が不要であり、短期間での生産が可能となる。少量多品種を短期間で生産できるため、のぼり作製などのサイン業界やユニフォーム作製などのスポーツアパレル業界で特に注目されている。
【0003】
インクジェットプリンタには、いくつかの種類があり、インク吐出の方式に違いがある。その中で、フルカラー画像を印刷するのに適しており、インクに特性を持たせやすいのは、ピエゾ式(圧電効果式)である。しかし、どのような材料でもまたどのような配合でもインクになるわけではない。インクの材料や配合によっては、ピエゾ式であるプリンタヘッドのノズルに、インクがうまく流れず、印刷時にカスレが生じることがある。また、長く印刷していると、ノズルにインクが目詰まりして、インクが吐出されないドット欠けが生じたり、吐出されたインク滴が曲がってしまう飛行曲がりが生じたりする。ドット欠けや飛行曲がりは、印刷された画像を目視観察することによって確認することができる。
【0004】
このような吐出の不具合が生じないように、インクジェットインクには、水だけでなく水溶性有機溶剤が混合されている。インクが吐出された後に、これら水と水溶性有機溶剤が蒸発して乾燥するが、乾燥が遅いと昇華転写紙の印刷面が濡れたようなべたつきが生じる。べたつきがひどくなくても、隙間なく広い面積をベタ印刷すると、印刷面がうねるような波打ちが生じることもある。印刷面に波打ちがあっても、熱プレスによってうまく昇華転写できる場合もあるが、昇華転写できない場合は、転写画像が歪んだり濃度が薄かったりすることがある。
【0005】
このような印刷面のべたつきや波打ちがなくても、インクの乾燥が不充分な場合もあり、そのまま熱プレスすると、うまく昇華されずに転写画像の濃度が薄かったり、熱プレス時に中間画像が滲んで、転写画像が鮮明でなかったりする不具合が生じやすい。しかしながら実際の生産においては、納期等の関係から、中間画像を昇華転写紙に印刷した直後に熱プレスする必要に迫られる場合がある。このよう場合であっても、上記のような不具合が生じずに、高濃度で鮮明な転写画像となる昇華転写が要求されている。
【0006】
水溶性有機溶剤がグリコールエーテル類からなるもの(特許文献1)が開発されているが、上記までに示したすべての不具合が生じないものではなく、また、被転写体のポリエステル100%であるポリエステル生地に熱プレスして、高濃度で鮮明な転写画像となるまではいたっていなかった。
【特許文献1】国際公開第00/04103号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、印刷時にカスレ、ドット欠け、飛行曲がりが生じず、印刷された昇華転写紙にべたつきがなく、ポリエステル生地に熱プレスして、転写画像が歪むことなく、高濃度で鮮明なフルカラー画像となることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のポリエステル生地昇華転写用インクジェットインクは、少なくとも昇華性染料、アセチレングリコール系界面活性剤、水溶性有機溶剤および水を含有するポリエステル生地昇華転写用インクジェットインクにおいて、水溶性有機溶剤は、グリセリン、グリコール類およびグリコールエーテル類の少なくとも3種からなり、インクにおいて、グリセリンの含有量が5重量%以上30重量%以下の範囲であり、グリコール類の含有量が1重量%以上15重量%以下の範囲であり、グリコールエーテル類の含有量が0.1重量%以上5重量%以下の範囲であることを特徴とするものである。また、インクの色がマゼンタ、シアン、イエローからなる3色の組合せによって、ピエゾ式インクジェットプリンタにて昇華転写紙に印刷して、フルカラーの中間画像を形成することができることを特徴とするものである。さらに、インクの色がマゼンタ、シアン、イエローからなる少なくとも3色の組合せ、またはこれらにブラックを加えた少なくとも4色の組合せによって、フルカラーの中間画像をピエゾ式インクジェットプリンタにて昇華転写紙に印刷して、昇華転写紙の中間画像とポリエステル生地を合わせて、230℃以下の温度で熱プレスして、中間画像をポリエステル生地へ昇華転写させて、ポリエステル生地にフルカラー画像を形成することを特徴とするポリエステル生地昇華転写用インクジェットインクを用いた昇華転写方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、印刷時にカスレ、ドット欠け、飛行曲がりが生じず、印刷された昇華転写紙にべたつきがなく、ポリエステル生地に熱プレスして、転写画像が歪むことなく、高濃度で鮮明なフルカラー画像となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
昇華性染料は、60℃以上で昇華又は気化する染料が好ましく、さらには分散染料または油溶性染料が好ましい。例えばC.I.ディスパースイエロー1、3、8、54、60など、C.I.ディスパースレッド1、4、11、15,17、55、60、73など、C.I.ディスパースブルー26、56、60、64、72、108、359などが挙げられ、これらの染料を単独もしくは複数混合して用いる。
【0011】
アセチレングリコール系界面活性剤は、インクをピエゾ式プリンタヘッドのノズルに適した物性にする効果や、昇華転写紙に印刷するフルカラーの中間画像の滲みを抑えて鮮明な画像を得る効果がある。例えば、サーフィノール82、61、104、420、440、465、485、SE、SE−F、PSA−336、604、2502が挙げられ、単独もしくは複数混合して用いる。アセチレングリコール系界面活性剤の含有量は、インクにおいて、0.01重量%以上3重量%以下の範囲であることが好ましい。
【0012】
水溶性有機溶剤は、グリセリン、グリコール類およびグリコールエーテル類の少なくとも3種からなり、インクにおいて、グリセリンの含有量が5重量%以上30重量%以下の範囲であり、グリコール類の含有量が1重量%以上15重量%以下の範囲であり、グリコールエーテル類の含有量が0.1重量%以上5重量%以下の範囲であることが好ましい。これら3種のうち1種でも含まれないと、また、含有量もこれらの範囲から外れると、課題にあるどれかの不具合が生じることになる。
【0013】
グリコール類としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコールなどが挙げられる。グリコールエーテル類としては、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。なお、これらすべては1気圧での沸点が230℃以上のものである。グリセリンも、1気圧での沸点が230℃以上のものである。
【0014】
実際の生産において、納期等の関係から、中間画像を昇華転写紙に印刷した直後に熱プレスする場合、水溶性有機溶剤は、グリセリン、グリコール類およびグリコールエーテル類の少なくとも3種からなり、これら水溶性有機溶剤3種それぞれの1気圧での沸点が230℃以上であることがより好ましい。これは、沸点が高いため、完全に乾燥するのではなく、これらの水溶性有機溶剤が存在したまま、うまく昇華転写することができるからである。グリセリン、グリコール類およびグリコールエーテル類の少なくとも3種を用いるのは、これら溶剤における昇華転写紙厚さ方向への染み込みの違いが昇華転写に影響を与えるからである。グリセリンよりグリコール類の方が、昇華転写紙厚さ方向へより深く染み込み、グリコール類よりグリコールエーテル類の方が、昇華転写紙厚さ方向へより深く染み込む。あまり深く染み込み過ぎると、逆に昇華転写の性能が悪くなるので、グリコールエーテル類の含有量を多くすることはできない。この染み込みの違いも考慮して、最適な昇華転写の性能を得るために、これら水溶性有機溶剤の含有量の範囲を見出したものでもある。なお、本発明の効果を損なわないのであれば、他の目的のために、これら以外の溶剤を混合することもある。
【0015】
本発明のインクは、ピエゾ式インクジェットプリンタに適した物性である。インクの粘度は、25℃で2mPa・s以上10mPa・s以下の範囲であり、2mPa・s以上8mPa・s以下の範囲がより好ましい。また、インクの表面張力は、25℃で25mN/m以上50mN/m以下の範囲であり、25mN/m以上40mN/m以下の範囲がより好ましい。必要に応じて、分散剤、防腐剤、防カビ剤、表面張力調整剤、酸化防止剤など、他の添加剤を加えても、ピエゾ式に適した物性にしても良い。
【0016】
また、本発明のインクは、インクの色がマゼンタ、シアン、イエローからなる3色の組合せによって、ピエゾ式インクジェットプリンタにて昇華転写紙に印刷すると、フルカラーの中間画像を形成することができるものである。インクの材料や配合が異なれば、印刷時にカスレが生じたり、ドット欠けや飛行曲がりが生じたりして、インクがうまく吐出されないことがあり、これとは別に、各色のインク同士の相性が悪いと、これら3色からなる中間色がうまく出ないこともあり、フルカラーの中間画像を形成することができないことがある。
【0017】
昇華転写方法は、インクの色がマゼンタ、シアン、イエローからなる少なくとも3色の組合せ、またはこれらにブラックを加えた少なくとも4色の組合せによって、フルカラーの中間画像をピエゾ式インクジェットプリンタにて昇華転写紙に印刷して、昇華転写紙の中間画像とポリエステル生地を合わせて、230℃以下の温度で熱プレスして、中間画像をポリエステル生地へ昇華転写させて、ポリエステル生地にフルカラー画像を形成する方法である。
【0018】
インクの色がマゼンタ、シアン、イエローからなる3色の組合せ、またはこれらにブラックを加えた4色の組合せによって、フルカラーの中間画像を印刷することができる。3色の組合せでもブラックの色を出すことは可能であるが、ブラックを加えた4色の組合せの方がより鮮明な画像となる。さらにライトマゼンタとライトシアンを加えた6色の組合せによって、フルカラーの中間画像を印刷することが多くなってきている。この6色の組合せの方が、さらにより鮮明な画像となるからである。
【0019】
熱プレスの方式は、バッチ式の平型タイプでも、連続式のローラー型タイプでも構わないが、温度、圧力、時間(連続式では速度)の転写条件によって、昇華転写に影響を与える。特に本発明においては温度が、水溶性有機溶剤にグリセリン、グリコール類およびグリコールエーテル類の3種を用いているため、大きな影響を与えるものである。そのため、熱プレスの温度は、230℃以下であり、昇華性染料の昇華温度以上230℃以下の範囲で行うのが好ましい。230℃以下であるのは、グリコール類やグリコールエーテル類には、1気圧での沸点が230℃近くのものもあり、沸点近くで熱プレスしてこれらの溶剤の急激な蒸発があると、昇華転写がうまくできないことがあるからである。昇華性染料の昇華温度以上であればよいが昇華転写の性能や効率から170℃以上であり、また、水溶性有機溶剤の沸点から210℃以下であるのが、つまり、170℃以上210℃以下の範囲がより好ましい。この温度で、圧力と時間(速度)を適宜設定して最適な昇華転写を行うことができる。
【0020】
昇華転写紙は、一般的な昇華転写紙を用いることができるが、インク受容層を設けたインクジェット専用の昇華転写紙の方がより好ましい。インク受容層としては、例えばシリカを含ませて、インク吸収と昇華を良くしているものがある。
【0021】
以下、実施例にて本発明を具体的に説明する。インクの作製は、まず昇華性染料の分散液を作製して、それにアセチレングリコール系界面活性剤と水溶性有機溶剤を混合する方法である。
【0022】
分散液は、昇華性染料が20重量%、分散剤(花王株式会社製デモールNL)が4重量%になるように、水に順次投入し分散処理を行って作製する。昇華性染料として、インクの色をマゼンタにするマゼンタ分散液には、C.I.ディスパースレッド60を用いる。インクの色をシアンにするシアン分散液には、C.I.ディスパースブルー359を用いる。インクの色をイエローにするイエロー分散液には、C.I.ディスパースイエロー54を用いる。
【0023】
この分散液が25重量%、アセチレングリコール系界面活性剤(日信化学工業株式会社製サーフィノール465)が0.5重量%、水溶性有機溶剤として、グリセリンが10重量%、ジエチレングリコールが5重量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが2重量%になるように、水に順次投入し、十分に攪拌混合して、10μmのメンブランフィルターを用いてろ過して、マゼンタ、シアン、イエロー各色のインクを作製する。
【0024】
インクの色をブラックにする場合には、ブラック分散液を作製して、上記と同様に、ブラック分散液を25重量%となるように混合して、ブラックのインクを作製する。ブラック分散液は、C.I.ディスパースレッド60を5重量%、C.I.ディスパースブルー359を15重量%、C.I.ディスパースイエロー54を5重量%で混合した昇華性染料が計25重量%になるように水を減らして作製する。ブラック分散液において昇華性染料の含有量を増やしているのは、ブラックという色の特徴となる隠蔽性を上げるためである。
【0025】
インクの色をライトマゼンタやライトシアンにする場合には、インクにおける昇華性染料の含有量を減らすために、マゼンタ分散液が5重量%となるように水を増やして、また、シアン分散液が5重量%となるように水を増やして、上記と同様に、これらのインクを作製する。
【実施例1】
【0026】
上記のように作製したインクの色がマゼンタ、シアン、イエローからなる3色の組合せによって、ピエゾ式の大型インクジェットプリンタ(株式会社ミマキエンジニアリング製JV4−130)にて昇華転写紙に、財団法人日本規格協会のJIS−SCID(N5)「自転車」画像を反転で中間画像として印刷した。この中間画像とポリエステル生地を合わせて、平型タイプの熱プレス機にて200℃で熱プレスして、中間画像をポリエステル生地へ昇華転写させて、ポリエステル生地に「自転車」画像を形成した。
【実施例2】
【0027】
マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックからなる4色の組合せであること以外は実施例1と同様にして、昇華転写紙に印刷し、昇華転写させて、ポリエステル生地に画像を形成した。
【実施例3】
【0028】
マゼンタ、シアン、イエロー、ブラック、ライトマゼンタ、ライトシアンからなる6色の組合せであること以外は実施例1と同様にして、昇華転写紙に印刷し、昇華転写させて、ポリエステル生地に画像を形成した。
【実施例4】
【0029】
グリセリンが30重量%、ジエチレングリコールが15重量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが5重量%になるように水を減らしたこと以外は実施例3と同様にして、6色の組合せによって昇華転写紙に印刷し、昇華転写させて、ポリエステル生地に画像を形成した。
【実施例5】
【0030】
グリセリンが5重量%、ジエチレングリコールが1重量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが0.1重量%になるように水を増やしたこと以外は実施例3と同様にして、6色の組合せによって昇華転写紙に印刷し、昇華転写させて、ポリエステル生地に画像を形成した。
【0031】
(比較例1)
グリセリンが40重量%になるように水を減らしたこと以外は実施例3と同様にして、6色の組合せによって昇華転写紙に印刷し、昇華転写させて、ポリエステル生地に画像を形成した。
【0032】
(比較例2)
ジエチレングリコールが20重量%になるように水を減らしたこと以外は実施例3と同様にして、6色の組合せによって昇華転写紙に印刷し、昇華転写させて、ポリエステル生地に画像を形成した。
【0033】
(比較例3)
ジエチレングリコールモノブチルエーテルが7重量%になるように水を減らしたこと以外は実施例3と同様にして、6色の組合せによって昇華転写紙に印刷し、昇華転写させて、ポリエステル生地に画像を形成した。
【0034】
(比較例4)
グリセリンが0重量%になるように(混合せずに)水を増やしたこと以外は実施例3と同様にして、6色の組合せによって昇華転写紙に印刷し、昇華転写させて、ポリエステル生地に画像を形成した。
【0035】
(比較例5)
ジエチレングリコールが0重量%になるように(混合せずに)水を増やしたこと以外は実施例3と同様にして、6色の組合せによって昇華転写紙に印刷し、昇華転写させて、ポリエステル生地に画像を形成した。
【0036】
(比較例6)
ジエチレングリコールモノブチルエーテルが0重量%になるように(混合せずに)水を増やしたこと以外は実施例3と同様にして、6色の組合せによって昇華転写紙に印刷し、昇華転写させて、ポリエステル生地に画像を形成した。
【0037】
なお、これら実施例と比較例における各色のインクは、ピエゾ式インクジェットプリンタに適した物性であった。インクの粘度はすべて25℃で2mPa・s以上8mPa・s以下の範囲であり、インクの表面張力はすべて25℃で25mN/m以上40mN/m以下の範囲であった。
【0038】
これら実施例と比較例において、印刷時のカスレ、ドット欠け、飛行曲がり、中間画像のフルカラー性、印刷された昇華転写紙のべたつき、転写画像の歪み、濃度、鮮明性を評価した。評価内容は次の通りである。
【0039】
カスレは、実施例と比較例の各色のインクを、ピエゾ式の大型インクジェットプリンタ(株式会社ミマキエンジニアリング製JV4−130)にて、ベタ柄で連続10m印刷して、印刷時のカスレの有無を目視観察にて評価した。カスレが各色どれにもなければ○、1色にでもあれば×とした。
【0040】
その後、続いて上記プリンタに内蔵のノズルチェックパターン「テスト サクズ」を用いて、ドット欠けと飛行曲がりの有無を目視観察にて評価した。ドット欠けがなければ○、あれば×、また、飛行曲がりがなければ○、あれば×とした。
【0041】
昇華転写紙に印刷した実施例と比較例の各中間画像において、フルカラー性を目視観察にて評価した。原画と同様にフルカラーの画像として良好であれば○、不良であれば×とした。また、中間画像印刷後にべたつきも評価した。中間画像を指でこすって指に色移りがなければ○、あれば×とした。
【0042】
中間画像を昇華転写紙に印刷して、直後に昇華転写したものと、24時間経過後に昇華転写したものにおいて、転写画像の歪み、濃度、鮮明性を評価した。歪みがなければ○、あれば×とした。充分な濃度があれば○、濃度が薄ければ×とした。画像が鮮明であれば○、不鮮明であれば×とした。
【0043】
これらの評価結果をまとめたものを表に示す。なお、評価結果が×で、それ以降の評価をしなかったものは−とした。
【0044】
【表1】

【0045】
以上のように、実施例においては、すべての評価結果で○となり、課題を解決するものとなり、高濃度で鮮明なフルカラー画像となった。水溶性有機溶剤がグリセリン、グリコール類およびグリコールエーテル類の3種を使用すると、それらの含有量が多くても少なくても評価結果が×になる比較例があり、これらの評価結果より、すべての評価結果で○となるために最適な範囲があることがわかる。
【0046】
また、ポリエステル生地へ昇華転写されたフルカラー画像において、実施例1の3色の組合せによるものよりも、実施例2の4色の組合せによるものの方が、より鮮明な画像であった。さらにこれらよりも、実施例3の6色の組合せによるものの方が、さらにより鮮明な画像であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも昇華性染料、アセチレングリコール系界面活性剤、水溶性有機溶剤および水を含有するポリエステル生地昇華転写用インクジェットインクにおいて、水溶性有機溶剤は、グリセリン、グリコール類およびグリコールエーテル類の少なくとも3種からなり、インクにおいて、グリセリンの含有量が5重量%以上30重量%以下の範囲であり、グリコール類の含有量が1重量%以上15重量%以下の範囲であり、グリコールエーテル類の含有量が0.1重量%以上5重量%以下の範囲であることを特徴とするポリエステル生地昇華転写用インクジェットインク。
【請求項2】
インクの色がマゼンタ、シアン、イエローからなる3色の組合せによって、ピエゾ式インクジェットプリンタにて昇華転写紙に印刷して、フルカラーの中間画像を形成することができることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル生地昇華転写用インクジェットインク。
【請求項3】
請求項1に記載のポリエステル生地昇華転写用インクジェットインクであり、インクの色がマゼンタ、シアン、イエローからなる少なくとも3色の組合せ、またはこれらにブラックを加えた少なくとも4色の組合せによって、フルカラーの中間画像をピエゾ式インクジェットプリンタにて昇華転写紙に印刷して、昇華転写紙の中間画像とポリエステル生地を合わせて、230℃以下の温度で熱プレスして、中間画像をポリエステル生地へ昇華転写させて、ポリエステル生地にフルカラー画像を形成することを特徴とする請求項1に記載のポリエステル生地昇華転写用インクジェットインクを用いた昇華転写方法。

【公開番号】特開2010−53197(P2010−53197A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217579(P2008−217579)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000115119)ユニオンケミカー株式会社 (67)
【Fターム(参考)】