説明

ポリエステル積層体

【課題】ヒートシール性、保香性に優れ、安定して製造できるポリエステル積層体を提供する。
【解決手段】 全ジオール単位中の5〜80モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステル樹脂(A)を含むポリエステル層(C)、ならびにポリエステル樹脂(A)以外の樹脂を含む樹脂層(D)および紙層(E)から選ばれた少なくとも一つの層を有するポリエステル積層体であって、少なくとも一方の表層がポリエステル層(C)であるポリエステル積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオール単位中に環状アセタール骨格を有するポリエステル樹脂を含む樹脂層を有するポリエステル積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートシール性を有する樹脂層を表層とするラミネート積層体は、包装や容器材料として多用されている。その中でもポリオレフィン、特にポリエチレンを使用したラミネート積層体が代表的であるが、ポリエチレンはガスバリア性が不十分であることや、香気成分の吸着や低沸成分の移行があり内容物の保香性に劣ること、ビタミン類などの有効成分の吸着があることから、ガスバリア性、保香性等、有効成分の非吸着性が要望される食品包装容器等の分野では不向きであった。
【0003】
そこでラミネート積層体にガスバリア性・保香性の優れたポリエチレンテレフタレートを使用する検討がなされてきたが、包装容器材料としてはヒートシール性に劣り、また溶融強度が低いために押出ラミネートに適していないという問題があった。この問題を解決するため、共重合ポリエチレンテレフタレートやポリエステル組成物を使用する方法が提案されている(特許文献1〜3参照。)。しかし、これらの共重合ポリエステル等はヒートシール性が良好であるものの、十分な溶融強度を有しておらず安定な製造が困難であり、またガラス転移温度が低いために高温の内容物を入れるとやはり低沸成分の移行があり保香性も十分では無かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−196899号公報
【特許文献2】特開2002−225211号公報
【特許文献3】特開2003−311888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は前記の如き状況に鑑み、ヒートシール性、保香性に優れ、安定して製造できるポリエステル積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ジオール単位中に特定の割合の環状アセタール骨格を有するポリエステル樹脂を含む樹脂層と該ポリエステル樹脂を含む樹脂層以外の層とを有するポリエステル積層体であって、ポリエステル樹脂を含む樹脂層が表層にあるポリエステル積層体がヒートシール性、保香性に優れ、安定して製造できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、全ジオール単位中の5〜80モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステル樹脂(A)を含むポリエステル層(C)、ならびにポリエステル樹脂(A)以外の樹脂を含む樹脂層(D)および紙層(E)から選ばれた少なくとも一つの層を有するポリエステル積層体であって、少なくとも一方の表層がポリエステル層(C)であるポリエステル積層体に関するものである。さらに、ポリエステル積層体を加工してなる容器に関するものである。
なお、本発明において、ポリエステル樹脂のジカルボン酸単位またはジオール単位とは、エステル結合による繰り返し単位を指し、該ポリエステル樹脂のエステル結合を加水分解した際に生成するジカルボン酸またはジオールの名称を挙げ、それらに由来するジカルボン酸単位またはジオール単位と表記する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリエステル積層体は、ヒートシール性、保香性に優れ、食品包装分野等における用途で好適に用いることができ、本発明の工業的意義は大きい。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明のポリエステル積層体は、全ジオール単位中の5〜80モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステル樹脂(A)を含むポリエステル層(C)を少なくとも1層、ならびにポリエステル樹脂(A)以外の樹脂を含む樹脂層(D)および紙層(E)から選ばれた少なくとも一つの層を有するポリエステル積層体であって、少なくとも一方の表層がポリエステル層(C)であるポリエステル積層体である。
【0009】
本発明に使用するポリエステル樹脂(A)のジオール単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位は一般式(1)または一般式(2)で表される化合物に由来するジオール単位が好ましい。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

一般式(1)と(2)において、RおよびRはそれぞれ独立して、炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。例示するならば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基などのブチレン基の構造異性体、シクロヘキシレン基;フェニレン基などが挙げられる。中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基が好ましい。Rは炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。例示するならば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基などのブチル基の構造異性体、シクロヘキシル基、フェニル基などが挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基が好ましい。一般式(1)または(2)の化合物としては、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン等が特に好ましい。
【0012】
また、環状アセタール骨格を有するジオール単位以外のジオール単位としては、特に制限はされないが、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール類;1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6−デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7−デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロドデカンジメタノール等の脂環式ジオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテル化合物類;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(テトラブロモビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニルプロパン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;前記ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類のアルキレンオキシド付加物;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)アリールアルカン類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル等で例示されるジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等で例示されるジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等で例示されるジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等で例示されるジヒドロキシジアリールスルホン類;ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノン等の芳香族ジヒドロキシ化合物;及び前記芳香族ジヒドロキシ化合物のアルキレンオキシド付加物等に由来するジオール単位が例示できる。ポリエステル樹脂(A)の機械強度、耐熱性、及びジオールの入手の容易さを考慮するとエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等に由来するジオール単位が好ましく、エチレングリコールに由来するジオール単位が特に好ましい。
【0013】
本発明に使用するポリエステル樹脂(A)のジカルボン酸単位としては、特に制限はされないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−カルボキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、5−カルボキシ−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−カルボキシエチル)−1,3−ジオキサン等の脂肪族ジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位が例示できる。ポリエステル樹脂(A)の機械強度、耐熱性、及びジカルボン酸の入手の容易さを考慮するとテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位が特に好ましい。
【0014】
本発明に使用するポリエステル樹脂(A)には、溶融粘弾性や分子量などを調整するために、本発明の目的を損なわない範囲でブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコールなどのモノアルコール単位やトリメチロールプロパン、グリセリン、1,3,5−ペンタントリオール、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコール単位、安息香酸、プロピオン酸、酪酸などのモノカルボン酸単位、トリメリット酸、ピロメリット酸など多価カルボン酸単位、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸単位を含んでもよい。
【0015】
成形性、耐熱性、機械的性能、耐加水分解性などを考慮すると、本発明で用いるポリエステル樹脂(A)は、環状アセタール骨格を有するジオール単位が3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンに由来するジオール単位であり、環状アセタール骨格を有するジオール単位以外のジオール単位がエチレングリコールに由来するジオール単位であり、ジカルボン酸単位がテレフタル酸、イソフタル酸、および2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位から選ばれる1種類以上のジカルボン酸単位であるポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0016】
本発明に用いるポリエステル樹脂(A)のジオール単位中、環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合は5〜80モル%であることが好ましく、より好ましくは10〜70モル%であり、特に好ましくは15〜60モル%である。環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合が上記範囲内で多いと、ポリエステル樹脂はガラス転移温度が高くなり耐熱性や保香性に優れるようになり、また溶融強度の向上も達成される。更に、上記範囲にある場合、結晶性が低下してヒートシール性が向上する。
【0017】
本発明に用いるポリエステル樹脂(A)の耐熱性は用途に応じて適宜選択することができるが、ガラス転移温度は85〜150℃であることが好ましく、より好ましくは90〜150℃、特に好ましくは95〜140℃である。ガラス転移温度が上記範囲内にある場合、本発明のポリエステル積層体は保香性に優れ、また適度なヒートシール温度を有する。ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度は構成単位の種類及び割合により変化するが、主に環状アセタール骨格を有するジオール単位が3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンに由来するジオール単位であり、環状アセタール骨格を有するジオール単位以外のジオール構成単位がエチレングリコールに由来するジオール単位であり、ジカルボン酸構成単位がテレフタル酸及び/又は2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位である場合、上記範囲のガラス転移温度が達成される。
【0018】
本発明に用いるポリエステル樹脂(A)の極限粘度は適宜選択することができるが、フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの質量比6:4の混合溶媒を用いた25℃での測定値で0.5〜1.5dl/gの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.2dl/gであり、更に好ましくは0.6〜1.0dl/gである。極限粘度がこの範囲にある場合、本発明に使用するポリエステル樹脂(A)は成形性及び機械的性能のバランスに優れる。
【0019】
本発明に用いるポリエステル樹脂(A)の溶融粘度も適宜選択することができるが、温度240℃、せん断速度100sec−1において300〜7000Pa・sの範囲であることが好ましく、より好ましくは500〜5000Pa・sである。溶融粘度がこの範囲にある場合、本発明におけるポリエステル樹脂(A)は成形性及び機械的性能のバランスに優れる。溶融粘度はポリエステル樹脂(A)の極限粘度にも依存するが、構成単位にも依存する。具体的には、環状アセタール骨格を有するジオール単位が多いほど溶融粘度は高くなる。
【0020】
本発明に用いるポリエステル樹脂(A)の溶融強度は適宜選択することができるが、せん断速度100sec−1、溶融粘度1400Pa・sの条件で測定される溶融強度が0.8〜20cNであることが好ましく、より好ましくは1〜10cNである。溶融強度が上記範囲にある場合、特に押出ラミネートを行う際にネックインが少なく安定した積層体が得られる。
【0021】
本発明に用いるポリエステル樹脂(A)を製造する方法は特に制限はなく、従来公知のポリエステルの製造方法を適用することができる。例えばエステル交換法、直接エステル化法等の溶融重合法、又は溶液重合法等を挙げることができる。製造時に用いるエステル交換触媒、エステル化触媒、エーテル化防止剤、熱安定剤、光安定剤等の各種安定剤、重合調整剤等も従来既知のものを用いることができ、これらは反応速度やポリエステル樹脂(A)の色調、安全性、熱安定性、耐候性、自身の溶出性や安全衛生性などに応じて適宜選択される。
【0022】
本発明のポリエステル積層体のポリエステル層(C)はポリエステル樹脂(A)のみからなる樹脂層でも良いが、ポリエステル樹脂(A)を含む組成物からなる樹脂層であっても良い。組成物中のポリエステル樹脂(A)の含量は、ポリエステル樹脂(A)のジオール単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合や要求性によって適宜選択されれば良いが、10重量%以上であることが好ましく、より好ましくは20重量%以上、特に好ましくは30重量%以上である。ポリエステル樹脂(A)の含量が上記範囲にある場合、本発明のポリエステル積層体は目的とするヒートシール性や保香性、非吸着性を有するものとなる。
【0023】
ポリエステル樹脂(A)以外にポリエステル層(C)に含むことのできるものは特に限定されるものではないが、好適な例としては、ポリエステル樹脂(A)以外のポリエステル樹脂(B)があり、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれる1種以上の化合物に由来するジカルボン酸単位、ならびにエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびビスフェノールAからなる群から選ばれる1種以上の化合物に由来するジオール単位からなるポリエステル樹脂が挙げられる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、テレフタル酸−1,4−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体、イソフタル酸−テレフタル酸−エチレングリコール共重合体、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、テレフタル酸−2,6−ナフタレンジカルボン酸−エチレングリコール−1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合体、ポリアリレートなどが挙げられる。ポリエステル樹脂(B)を含むことで、ポリエステル層(C)の耐熱性や成形性、耐衝撃性などを調整することができる。ポリエステル樹脂(B)のうち、ポリエステル樹脂(A)との相溶性、機械物性、入手の容易さ、コストなどを勘案するとポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。ポリエステル層(C)にポリエステル樹脂(B)を含む場合、その含量は1〜90重量%であり、より好ましくは1〜80重量%であり、特に好ましくは1〜70重量%である。
【0024】
また、ポリエステル層(C)に含むことのできる他のものの例としては、酸素透過率がポリエチレンテレフタレートより小さい酸素バリア性樹脂がある。酸素バリア性樹脂を含むことにより、本発明のポリエステル積層体は酸素バリア性に優れ、食品包材等に好適に使用できる。酸素バリア性樹脂は従来公知のものを使用することができ、特に制限されるものではないが、例えば、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ブタジエングラフトアクリロニトリル−アクリレート共重合体、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール−エチレン共重合体、セロハン、ポリ三フッ化塩化エチレン、ポリフッ化ビニル、ナイロン6、ナイロン66、キシリレン基含有ポリアミド樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリグリコール酸、ポリエチレンナフタレート、エチレンテレフタレート−エチレンナフタレート共重合体、ポリエチレンイソフタレート、エチレンテレフタレート−エチレンイソフタレート共重合体が挙げられる。中でもキシリレン基含有ポリアミド樹脂が好ましく、キシリレン基含有ポリアミド樹脂の具体例として、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンセバカミド、ポリメタキシリレンスベラミド、ポリパラキシリレンピメラミド、ポリメタキシリレンアゼラミド等の単独重合体;及びメタキシリレン−パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン−パラキシリレンピメラミド共重合体、メタキシリレン−パラキシリレンセバカミド共重合体、メタキシリレン−パラキシリレンアゼラミド共重合体等の共重合体;あるいはこれらの単独重合体または共重合体の成分とヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、ピペラジン等の脂環式ジアミン、パラ−ビス(2−アミノエチル)ベンゼン等の芳香族ジアミン、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、ε−カプロラクタム等のラクタム、7−アミノヘプタン酸等のω−アミノカルボン酸、パラ−アミノメチル安息香酸等の芳香族アミノカルボン酸等を共重合した共重合体が挙げられる。さらに、m−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分と、脂肪族ジカルボン酸及び/又は芳香族ジカルボン酸とから得られるポリアミドが特に好適に用いることができ、特に、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分とアジピン酸を70モル%以上含むジカルボン酸成分を重縮合して得られたキシリレン基含有ポリアミド樹脂、酸素バリア性、成形性、ポリエステル樹脂(A)との相溶性等に優れており好ましく用いられる。また、上記酸素バリア性樹脂には、モンモリロナイト等の粘土鉱物やステアリン酸コバルト等の有機遷移金属化合物を添加することにより、ポリエステル積層体のガスバリア性が向上することがある。ポリエステル層(C)に酸素バリア性樹脂を含む場合、その含量は1〜90重量%であり、より好ましくは1〜60重量%であり、特に好ましくは1〜40重量%である。
【0025】
更に、ポリエステル層(C)には酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、増量剤、艶消し剤、乾燥調節剤、帯電防止剤、沈降防止剤、界面活性剤、流れ改良剤、乾燥油、ワックス類、着色剤、補強剤、表面平滑剤、レベリング剤、硬化反応促進剤、増粘剤などの各種添加剤、成形助剤;ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリイミド樹脂、AS樹脂等の樹脂、又はこれらのオリゴマー;木粉、竹粉、やし殻粉、コルク粉、パルプ粉、架橋ポリエステル、ポリスチレン、スチレン・アクリル、尿素樹脂、カーボン繊維、合成繊維、天然繊維などの有機フィラー;炭酸カルシウム、タルク、カオリンクレー、マイカ、ネフエリンシナイト、合成ケイ酸、石英粉、珪石粉、ケイソー土、硫酸バリウム、軽石粉、シラスバルン、ガラスバルン、フライアッシュバルン、ガラス繊維、セピオライト、鉱物繊維、ウイスカーなどの無機フィラーなどを添加することもできる。
【0026】
本発明のポリエステル積層体は、ポリエステル層(C)以外に、ポリエステル樹脂(A)以外の樹脂を含む樹脂層(D)および紙層(E)から選ばれた少なくとも1つの層を有する。各層は2層以上含まれていてもよい。樹脂層(D)の材料は特に制限されるものではないが、例えば、ポリエステル樹脂(B)、酸素バリア性樹脂、回収ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリイミド樹脂、AS樹脂等のポリエステル樹脂(A)以外の樹脂挙げられる。紙層(E)の材料としては、例えば、クラフト紙、ロール紙、アート紙、カートン紙、グラシン紙、クルパック紙、板紙、段ボール等が挙げられる。これらは機能、用途、要求性能等により適宜選択されれば良く、単一の材料からなる層であっても良いし、複数の材料の組成物からなる層であっても良い。本発明のポリエステル積層体を食品包材に用いる際、酸素バリア性樹脂、特にはメタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分とアジピン酸を70モル%以上含むジカルボン酸成分を重縮合して得られたキシリレン基含有ポリアミド樹脂を樹脂層(D)として用いることが有効である。
本発明のポリエステル積層体は、鉄、アルミニウム、亜鉛等の金属;酸化珪素、酸化アルミニウム等の金属酸化物;および炭素から選ばれた少なくとも1種の材料からなる無機層(F)を任意に有していてもよい。
【0027】
本発明のポリエステル積層体では、ポリエステル層(C);樹脂層(D)および紙層(E)の少なくとも一つ;および無機層(F)を積層する場合に、エチレン−アクリル酸共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、共重合ポリエステル等の接着剤層(G)を用いることができる。
【0028】
本発明のポリエステル積層体の層構成は用途により適宜選択されれば良いが、少なくとも一つの表層はポリエステル層(C)である。ポリエステル層(C)を表層にすることで、良好なヒートシール性や保香性、有効成分の非吸着性を付与することができる。各層(C)、(D)、(E)および(F)、(G)の数は、夫々2以上であってもよい。
層構成の具体例としては、C/D、C/D/C、C/D/D、C/D/D/C、C/D/D/D、C/G/D/D、C/G/D/D/C、C/G/D/D/D、C/G/D/D/D/C、C/G/D/D/D/D、C/G/D/D/D/G/C、C/G/D/D/D/G/D、C/F/D、C/F/D/C、C/F/D/D、C/F/D/F/C、C/F/D/F/D、C/F/G/D、C/F/G/D/C、C/F/G/D/D、C/G/F/D、C/G/F/D/C、C/G/F/D/D、C/G/F/G/D、C/G/F/G/D/C、C/G/F/G/D/D、C/D/E、C/D/E/C、C/D/E/D、C/G/D/E、C/G/D/E/C、C/G/D/E/D、C/G/D/E/D/C、C/G/D/E/D/D、C/G/D/E/D/G/C、C/G/D/E/D/G/D、C/F/E、C/F/E/C、C/F/E/D、C/F/E/F/C、C/F/E/F/D、C/F/G/E、C/F/G/E/C、C/F/G/E/D、C/G/F/E、C/G/F/E/C、C/G/F/E/D、C/G/F/G/E、C/G/F/G/E/C、C/G/F/G/E/Dなどが挙げられる。ポリエステル層(C)が2以上含まれる場合、これらの層は同一でも異なっていてもよい。層(D)、(E)、(F)および(G)についても同様である。
【0029】
紙層(E)に用いる紙材の坪量は10〜500g/mであるのが、適用範囲が広く好ましい。また、必要に応じ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、尿素樹脂微粒子等の填料、ロジン、アルキルケテンダイマー、高級脂肪酸、エポキシ化脂肪酸アミド、パラフィンワックス、アルケニルコハク酸等のサイズ剤、でんぷん、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン、ポリアクリルアミド等の紙力増強剤、硫酸バンド、カチオン性ポリマー等の定着剤等が添加してあっても良い。
【0030】
本発明のポリエステル積層体の製造方法は押出ラミネート、ドライラミネート、ウェットラミネートなどの従来公知の製造方法を用いることができる。生産性の点から押出ラミネーとが好ましく用いられるが、本発明に用いるポリエステル樹脂(A)は溶融強度が高いため、押出ラミネートであっても安定してポリエステル積層体を製造できる。また、共押出法、共押出ラミネート法、押出ラミネート法、ドライラミネート法等の公知の積層化技術を用いることができる。またこれらの積層化のために適した接着剤、あるいは接着性樹脂を用いても良い。
【0031】
押出ラミネートの方法について更に詳しく述べるならば、ポリエステル樹脂(A)を溶融し、好ましくは火炎処理やコロナ放電処理等によって密着性を向上させた紙や樹脂フィルム若しくは金属の上に溶融したポリエステル樹脂(A)を押出す。ロールにて圧着してラミネートする。押出温度は好ましくは、260〜320℃である。押出温度が上記範囲にある場合、ポリエステル層(C)の密着性が良く、またネックインが少ないため安定した製造が可能となる。更に、多層押出装置を用いることにより、酸素バリア性樹脂層(樹脂層(D))や接着剤層(G)を容易に設けることができる。例えば、ポリエステル樹脂(A)、接着剤、酸素バリア性樹脂を別々の押出機で溶融し、これらをフィードブロックを介して多層溶融状態を形成し、上記と同様に紙や樹脂フィルム若しくは金属の上に押出してロールにて圧着すれば多層の積層体が得られる。
【0032】
ポリエステル層(C)の厚みは押出条件により適宜選択できるが、5〜300μmであることが好ましい。上記範囲にある場合、ポリエステル層(C)と樹脂層(D)、紙層(E)又は無機層(F)との密着性やヒートシール性、機械強度などのバランスが良い。
樹脂層(D)の厚みは5〜300μm、紙層(E)の厚みは30〜1000μm、無機層(F)の厚みは0.01〜200μm、接着層(G)の厚みは0.1〜50μmであるのが好ましい。ポリエステル積層体の総厚みは10〜2000μmであるのが好ましい。
【0033】
本発明のポリエステル積層体は優れたヒートシール性を有し、適当なヒートシール条件を選択することにより、0.8kgf/15mm以上のヒートシール強度を示す。
【0034】
本発明のポリエステル積層体は従来公知の方法により種々の形状に加工することができる。形状や加工方法は、用途により適宜選択されれば良く、特に制限されるものではないが、例えば、形状としてはシート、カード、フィルムなどの平面状、カートン、カップ、箱、パウチなどの容器など、加工方法としては、打ち抜き、切抜き、折り曲げ、ヒートシールなどが挙げられる。本発明のポリエステル積層体は打ち抜き加工性に優れ、樹脂のヒゲが生じにくいという特徴を有する。
【0035】
特にポリエステル層(C)が内面になるよう加工してなる容器は、ヒートシールが容易にでき、また、内容物がポリエステル樹脂(A)と接触するため保香性や有効成分の非吸着性にも優れる。
【0036】
本発明のポリエステル積層体を加工してなる容器に充填される内容物は、特に制限されるものではなく、食品、化粧品、医薬品、トイレタリー、機械・電気・電子部品、オイル、樹脂類などが挙げられるが、本発明のポリエステル積層体の持つヒートシール性、保香性、有効成分の非吸着性などを勘案すると本発明のポリエステル積層体は、特に食品を保存するための容器として好適に使用できる。また、本発明のポリエステル積層体に用いるポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度が高いため、ポリエステル積層体やポリエステル積層体を加工した容器を熱過酸化水素水での殺菌を行っても結晶化によるヒートシール強度の低下や脆化を起こしにくい。
【0037】
充填される食品は、特に制限されるものではないが、抽出、殺菌、溶融、調理などの理由で製造上加熱されるもの特に好適な例として挙げられる。具体例を示すならば、例えば、野菜汁、果汁、お茶類、コーヒー・コーヒー飲料類、乳・乳飲料類、ミネラルウォーター、イオン性飲料、酒類、乳酸菌飲料、豆乳等の飲料;豆腐類、卵豆腐類、ゼリー類、プリン、水羊羹、ムース、ヨーグルト類、杏仁豆腐などのゲル状食品;ソース、醤油、ケチャップ、麺つゆ、バーベキューソース、テリヤキソース、食酢、味醂、ドレッシング、ジャム、マヨネーズ、味噌、漬物の素、すり下ろし香辛料等の調味料;サラミ、ハム、ソーセージ、焼鳥、ミートボール、ハンバーグ、ローストポーク、ビーフジャーキー等の食肉加工品;蒲鉾、貝水煮、煮魚、竹輪等の水産加工品;粥、炊飯米、パエリャ、サフランライス等の米加工品;ミートソース、マーボーソース、パスタソース、カレー、シチュー、ハヤシソース等のソース類;チーズ、バター、クリーム、コンデンスミルク等の乳加工品;ゆで卵等の卵加工品;煮野菜・煮豆;揚げ物、蒸し物、炒め物、煮物、焼き物等の惣菜類;漬物;うどん、そば、スパゲッティ等の麺類およびパスタ類;果物シラップ漬け等が挙げられる。
【0038】
更に、本発明のポリエステル積層体を加工してなる容器は、加熱用の容器としても好適に用いることができる。容器を加熱方法や加熱する理由は、特に制限されるものではないが、加熱方法の具体例として、例えば、電子レンジ、湯煎、加熱空気、水蒸気、紫外線、ボイル、レトルト、ホットベンダーなどが挙げられ、加熱する理由として調理や再加熱、殺菌、保温などが挙げられる。加熱の温度や時間は、方法や理由、充填される内容物等により異なるが、容器の加熱温度は55〜140℃、加熱時間は0.001〜100分の範囲内で好適に使用できる。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によりその範囲を限定されるものではない。
【0040】
本製造例中のポリエステル樹脂、紙で裏打ちされたポリエステル積層体およびフィルムで裏打ちされたポリエステル積層体の評価方法は以下の通りである。
[1]ポリエステル樹脂の評価方法
(1)環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合
ポリエステル樹脂中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合はH−NMR測定にて算出した。測定装置は日本電子(株)製JNM−AL400を用い、400MHzで測定した。溶媒には重クロロホルムを用いた。
【0041】
(2)ガラス転移温度
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は島津製作所製DSC/TA−50WSを使用し、試料約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(30ml/min)気流中昇温速度20℃/minで測定し、DSC曲線の転移前後における基線の差の1/2だけ変化した温度をガラス転移温度とした。
【0042】
(3)極限粘度
極限粘度測定の試料はポリエステル樹脂0.5gをフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンの混合溶媒(質量比=6:4)120gに加熱溶解し、濾過後、25℃まで冷却して調製した。装置は(株)柴山科学機械製作所製、毛細管粘度計自動測定装置SS−300−L1を用い、温度25℃で測定を行った。
【0043】
(4)溶融粘度
溶融粘度は、(株)東洋精機製作所、商品名:キャピログラフ 1Cを用いて測定した。キャピラリの径は1mm、長さは10mmであり、測定条件は測定温度240℃、予熱時間3分、せん断速度100sec−1である。
【0044】
(5)溶融強度
溶融強度は、(株)東洋精機製作所、商品名:キャピログラフ 1Cを用いて測定した。キャピラリの径は1mm、長さは10mmであり、せん断速度100sec−1で溶融粘度1400Pa・sとなる温度にて、クロスヘッド速度10mm/minで樹脂を押し出し、ストランドを40m/minの速度で引き取る際の負荷を溶融強度とした。
【0045】
[2]紙で裏打ちされたポリエステル積層体の評価方法
(1)成形性
積層体の幅方向に50mm間隔で7点、押出し方向に100mm間隔で7点、計49点厚み測定を行い、樹脂層の厚みの平均値と標準偏差を算出した。標準偏差を平均値で除した値が小さいほど成形性が良いと評価できる。
【0046】
(2)ヒートシール強度
(株)東洋精機製作所、熱傾斜試験機HG−100を用いて温度160〜220℃、圧力2kgf/cm2、時間5秒の条件でヒートシールを行い、(株)東洋精機製作所、引張試験機ストログラフV1−Cを用いて、チャック間距離50mm、引張速度300mm/分、幅15mmの条件でT型剥離試験を行い、ヒートシール強度を測定した。
【0047】
(3)保香性
積層体を幅100mmに切り出し、ヒートシールにて表面層が内面になるよう加工して正四面体の容器を作製した。作製した容器に90℃の緑茶を入れ、室温で24時間経過後、緑茶を取り出し香りの官能評価を行った。評価基準は次の通りである。
A:緑茶の香りが損なわれておらず、樹脂のにおいの移行も無い。
B:緑茶の香りが損なわれていないが、樹脂のにおいが移行している。
C:緑茶の香りが損なわれており、樹脂のにおいも移行している。
【0048】
(4)吸着性
(3)と同様の容器にオレンジジュースを入れ、室温で7日間保存し、ガスクロマトグラフィー法によってオレンジジュース中のリモネンの含量を測定した。また、同様に乳酸菌飲料を室温で7日間保存し、液体クロマトグラフィー法にて乳酸菌飲料中のビタミンDの残存量を測定した。何れも残存量が多い程、容器の吸着性が低く良好な結果といえる。
【0049】
[3]フィルムで裏打ちされたポリエステル積層体の評価方法
【0050】
(1)ヒートシール強度
(株)東洋精機製作所、熱傾斜試験機HG−100を用いて温度160〜200℃、圧力2kgf/cm2、時間2秒の条件でヒートシールを行い、(株)東洋精機製作所、引張試験機ストログラフV1−Cを用いて、チャック間距離50mm、引張速度300mm/分、幅15mmの条件でT型剥離試験を行い、ヒートシール強度を測定した。
【0051】
[4]原料樹脂
実施例、比較例で使用した樹脂を以下に記す。
(1)ポリエチレンテレフタレート:日本ユニペット(株)製、RT−543C(表中PETと略記)
(2)ポリアミド樹脂1:三菱ガス化学(株)製、MXナイロン 6011
(3)ポリアミド樹脂2:宇部興産(株)製、ナイロン6 5015
(4)接着性樹脂:三菱化学(株)製、モディック P534
(5)共重合ポリエステル樹脂:三井・デュポンポリケミカル(株)製、シーラーPT8307(表中PTと略記)
【0052】
[5]原紙
東京製紙(株)製、MCP270(坪量270g/m、厚さ300μm)を幅400mmにスリットしたものを用いた。
【0053】
[6]ラミネート紙
比較例で使用したポリエチレンラミネート紙を以下に記す。
(1)Stora Enso Packaging Boards社製、CUPFORMA CLASSIC PE(280+15)(表中PEと略記)
【0054】
[7]ポリエステルフィルム
実施例5、6で使用したポリエステルフィルム(PETフィルム)を以下に記す。
(1)東洋紡績社製、E5100
【0055】
製造例1〜2
ポリエステル樹脂(A1〜A2)の合成
充填塔式精留塔、分縮器、全縮器、コールドトラップ、撹拌機、加熱装置、窒素導入管を備えた150リットルのポリエステル製造装置に表1に記載の原料モノマーを仕込み、ジカルボン酸成分に対し酢酸マンガン四水和物0.03モル%の存在下、窒素雰囲気下で215℃迄昇温してエステル交換反応を行った。ジカルボン酸成分の反応転化率を90%以上とした後、ジカルボン酸成分に対して、酸化アンチモン(III)0.02モル%とリン酸トリメチル0.06モル%を加え、昇温と減圧を徐々に行い、最終的に270℃、0.1kPa以下で重縮合を行った。適度な溶融粘度になった時点で反応を終了し、ポリエステル樹脂(A1〜A2)を得た。評価結果を表1に示す。
【0056】
表1
製造例番号 製造例1 製造例2
モノマー仕込量(モル)
ジカルボン酸成分(モル)
DMT 201.8 174.6
ジオール成分(モル)
SPG 62.6 80.3
EG 341.1 356.2
ポリエステル樹脂の評価結果
ポリエステル樹脂 A1 A2
環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合(モル%)
31 46
ガラス転移温度(℃) 104 113
極限粘度(dl/g) 0.70 0.66
溶融粘度(Pa・s) 2150 2950
溶融強度(cN) 2.1 2.9
DMT:テレフタル酸ジメチル
EG:エチレングリコール
SPG:3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン
【0057】
実施例1
シリンダー径が40mmの押出機にて、シリンダー温度250〜290℃、Tダイ温度300℃でポリエステル樹脂(A1)を溶融し、(株)トモエ工業製コロナ放電処理装置(150W/m/min)にて処理した原紙上に押出した。70℃のロールにて圧着して8m/分の速度で押出ラミネートを行い、紙で裏打ちされたポリエステル積層体を製造した。評価結果を表2に示す。
【0058】
実施例2
実施例1のポリエステル樹脂(A1)の替わりにポリエステル樹脂(A2)を使用した以外は実施例1と同様に紙で裏打ちされたポリエステル積層体を製造した。評価結果を表2に示す。
【0059】
実施例3
実施例1のポリエステル樹脂(A1)の替わりにポリエステル樹脂(A2)67重量部、ポリエチレンテレフタレート33重量部からなる組成物を使用した以外は実施例1と同様に紙で裏打ちされたポリエステル積層体を製造した。評価結果を表2に示す。
【0060】
実施例4
シリンダー径が40mmの押出機にて、シリンダー温度230〜240℃、ポリエステル樹脂(A1)を溶融し(a層を構成)、シリンダー径が30mmの押出機からシリンダー温度230〜240℃で接着性樹脂を溶融し(b層を構成)、シリンダー径が40mmの押出機からシリンダー温度250〜270℃でポリアミド樹脂1 80重量部、ポリアミド樹脂2 20重量部の組成物(c層を構成)を溶融し、層構成がa層/b層/c層の順となるようにフィードブロック(280〜290℃)を介して多層溶融状態を形成させ、Tダイ温度290℃で(株)トモエ工業製コロナ放電処理装置(150W/m/min)にて処理した原紙上にa層/b層/c層/紙の順となるように押出した。70℃のロールにて圧着して8m/分の速度で押出ラミネートを行い、紙で裏打ちされたポリエステル積層体を製造した。評価結果を表2に示す。
【0061】
表2
実施例番号 実施例1 実施例2 実施例3 実施例4
ラミネート紙の評価結果
成形性(樹脂層厚み)
平均値(μm) 52.0 62.8 55.4 93.3
標準偏差(μm) 5.0 5.8 7.1 7.4
標準偏差/平均値 0.095 0.092 0.128 0.080
ヒートシール強度(kgf/15mm)
シール温度160℃ 1.40 1.43 1.55
180℃ 1.29 1.45 1.36 1.08
200℃ 1.30 1.35 1.41 2.24
220℃ 1.35 2.80
保香性 A A A A
吸着性(リモネン;ppm) 8.9 8.8 8.7 9.0
吸着性(ビタミンD;ppb) 2.9 2.9 2.9 2.8
【0062】
比較例1〜2
ポリエステル樹脂(A1)に替えてポリエチレンテレフタレート、又は共重合ポリエステル樹脂を使用した以外は実施例1と同様に紙で裏打ちされた積層体を製造した。評価結果を表3に示す。
【0063】
比較例3
市販の紙で裏打ちされたポリエチレン積層体(Stora Enso Packaging Boards社製、CUPFORMACLASSIC PE(280+15))を評価した。評価結果を表3に示す。
【0064】
表3
比較例番号 比較例1 比較例2 比較例3
樹脂 PET PT PE
ラミネート紙の評価結果
成形性(樹脂層厚み)
平均値(μm) 77.4 80.0 15.0
標準偏差(μm) 5.8 20.6 1.1
標準偏差/平均値 0.092 0.258 0.073
ヒートシール強度(kgf/15mm)
シール温度160℃ 0.22 1.90 0.88
180℃ 0.36 1.55 0.76
200℃ 0.33 1.35
保香性 B B C
吸着性(リモネン;ppm) 8.8 8.8 2.5
吸着性(ビタミンD;ppb) 2.9 2.9 2.6
【0065】
参考例1、2
シリンダー径が30mmの押出機にて、シリンダー温度230〜250℃、Tダイ温度250℃でポリエステル樹脂(A1及びA2)を押出し、厚さ100μmの未延伸フィルムを作製した。
ポリエステルフィルムに接着剤(東洋モートン TM−329)を塗布し、85℃で10秒間溶媒を乾燥した後、ラミネーター(三芝商事製ハルラーラミネーターMRK)を用いて各上記未延伸フィルムとラミネートした。得られたフィルムで裏打ちされたポリエステル積層体は40℃で7日間加熱した後、ヒートシール性を評価した。
【0066】
表4
参考例番号 参考例1 参考例2
ラミネートフィルムの評価結果
ヒートシール強度(kgf/15mm)
シール温度160℃ 0.84
180℃ 3.57
200℃ 4.65 0.99

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全ジオール単位中の5〜80モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステル樹脂(A)を含むポリエステル層(C)および紙層(E)を有するポリエステル積層体であって、少なくとも一方の表層がポリエステル層(C)であり、ポリエステル層(C)と紙層(E)とが直接積層されてなるポリエステル積層体。
【請求項2】
環状アセタール骨格を有するジオール単位が、一般式(1):
【化1】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。)、
または一般式( 2 ) :
【化2】

(式中、Rは前記と同様であり、Rは炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。)
で表されるジオールに由来する請求項1記載のポリエステル積層体。
【請求項3】
式(1)のジオールが3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、式(2)のジオールが5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサンである請求項2記載のポリエステル積層体。
【請求項4】
ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度が85〜150℃ である請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル積層体。
【請求項5】
ポリエステル樹脂(A)の、せん断速度100sec−1、溶融粘度1400Pa・sの条件で測定された溶融強度が0.8〜20cNである請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル積層体。
【請求項6】
ポリエステル層(C)が、ポリエステル樹脂(A)以外のポリエステル樹脂(B)を含む請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル積層体。
【請求項7】
ポリエステル樹脂(B)が、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれる1種以上の化合物に由来するジカルボン酸単位、ならびにエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびビスフェノールAからなる群から選ばれる1種以上の化合物に由来するジオール単位からなるポリエステル樹脂である請求項6記載のポリエステル積層体。
【請求項8】
ポリエステル樹脂(B)がポリエチレンテレフタレートである請求項7記載のポリエステル積層体。
【請求項9】
ポリエステル層(C)が、酸素透過率がポリエチレンテレフタレートより小さい酸素バリア性樹脂を含む請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステル積層体。
【請求項10】
酸素バリア性樹脂が、全ジアミン単位中の70モル%以上がメタキシリレンジアミン単位であり、全ジカルボン酸単位中の70モル%以上がアジピン酸単位である、キシリレン基含有ポリアミド樹脂である請求項9記載のポリエステル積層体。
【請求項11】
さらに、金属、金属酸化物および炭素から選ばれた少なくとも1種の材料からなる無機層(F)を含む請求項1〜10のいずれかに記載のポリエステル積層体。
【請求項12】
さらに、ポリエステル樹脂(A)以外の酸素透過率がポリエチレンテレフタレートより小さい酸素バリア性樹脂層を有する請求項1〜11のいずれかに記載のポリエステル積層体。
【請求項13】
押出ラミネートにより製造された請求項1〜12のいずれかに記載のポリエステル積層体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のポリエステル積層体を加工してなる容器。
【請求項15】
前記容器の内面がポリエステル層(C)である請求項14記載の容器。
【請求項16】
前記容器が食品保存容器である請求項14または15に記載の容器。

【公開番号】特開2011−152798(P2011−152798A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86934(P2011−86934)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【分割の表示】特願2005−260598(P2005−260598)の分割
【原出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】