説明

ポリエステル系熱収縮フィルム

【課題】本発明は、ポリエステルとポリオレフィンからなる樹脂組成物を延伸して得られ、包装材として好適なポリエステル系熱収縮フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】 (A):ポリエステル樹脂60〜90重量%、(B):エチレン・α−オレフィン共重合体5〜35重量%、(C):(C−1)〜(C−3)から選ばれる相溶化剤3〜20重量%、(ここで、A、B、Cの合計量が100重量%になる。)とからなるポリエステル系樹脂組成物を、延伸温度65〜90℃、延伸倍率1.5〜5.0倍で延伸して得られる熱収縮性フィルム。
(C−1)カルボン酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体
(C−2)エポキシ変性エチレン・α−オレフィン共重合体
(C−3)エチレン単位と、エステル基を有する単位からなる2元共重合体

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材として好適なポリエステル系フィルムに関する。本発明は特に、ポリエステルとポリオレフィンからなる樹脂組成物を延伸して得られる熱収縮フィルムに関し、より詳細には、再生ポリエステル樹脂や再生ポリオレフィン樹脂にも適用可能な、半透明状のパール状の光沢を持つ透明性と衝撃性能と引裂き強度に優れた熱収縮フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、使用済みPETボトルの再生技術が進歩し、また使用済みポリオレフィン樹脂の回収が自動車部品を初めとして多くの産業分野で行なわれている。一般に再生処理品は未使用品に比べて分子量低下が起こっており、それに伴って機械的物性も低下している。従って、再生品の物性低下の影響を補いつつ、再生PET樹脂と再生ポリオレフィン樹脂とを併せた新たな活用策が考えられるならば、資源リサイクルと言う社会的要請にも応えることができる。
【0003】
ところで熱を加えることで収縮する熱収縮性フィルムが知られており、接着剤を用いることなく物体に一体化するという機能を有するため、物品の被覆、ラベル、結束用、外装といった各種用途に広く用いられている。
前述した再生PET樹脂と再生ポリオレフィン樹脂を用い、収縮むらが少なく、さらに外観や耐熱性に優れた熱収縮性フィルムを提供できれば産業上有用であると考えられる。
【0004】
一方、熱収縮性フィルムは一般的にはPET樹脂、ポリスチレン系樹脂はTダイキャスト成形が採用されている。しかし、これらの樹脂は、溶融時の粘度が低い為、フィルム生産効率が高いインフレーションフィルム成形法が適用できない欠点がある。
また、再生PET樹脂単独を延伸した際フィルムの結晶性が高い為、熱収縮フィルムとした場合に、配向結晶が進行し易く、良好な収縮特性が得られない欠点がある。
【0005】
例えば特許文献1には、ポリエステル系フィルムの光線透過率を落とす手段として、ポリエステル成分に非相容の樹脂をブレンドした後、延伸する事で微細な空洞を作る、或いは発泡等の提案がなされている。しかし、このような方法で得られた非相容系樹脂フィルムは、微細な空洞の影響で、フィルムの強度が劣ることがある。
【特許文献1】特開2003−305772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、ポリエステルとポリオレフィンからなる樹脂組成物を特定の温度と延伸倍率で延伸成形して得られるフィルムに関し、半透明状で良好な光沢を持ち、Tダイキャストフィルム成形法及びインフレフィルム成形法で成形可能な熱収縮性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を行い、
(A):ポリエステル樹脂60〜90重量%、(B):エチレン・α−オレフィン共重合体5〜35重量%、(C):(C−1)〜(C−3)から選ばれる相溶化剤1〜20重量%、(ここで、A、B、Cの合計量が100重量%になる。)とからなるポリエステル系樹脂組成物を、延伸温度65〜90℃、延伸倍率1.5〜5.0倍で延伸して得られる熱収縮性フィルム。
(C−1)カルボン酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体
(C−2)エポキシ変性エチレン・α−オレフィン共重合体
(C−3)エチレン単位と、エステル基を有する単位からなる2元共重合体
が上記課題を解決出来ることを見出して発明を完成した。
【0008】
前記(A)が、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
前記(B)が、直鎖状低密度ポリエチレンであることが好ましい。
前記(C)としては、以下から選ばれる相溶化剤が好ましい:
(C−1’)無水マレイン酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体
(C−2’)グリシジル変性エチレン・α−オレフィン共重合体
(C−3’)エチレンとアクリル酸エステルの2元共重合体
【0009】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の密度が0.92(g/cm3)以下であることが更に好ましい。密度がこの範囲であると、相容化作用がより高まり、得られる樹フィルムの耐衝撃性が向上するため好ましい。
本発明の熱収縮性フィルムに用いる樹脂は、270℃での溶融粘度が、ずり速度20〜30sec-1の領域にて、600Pa・s以上を示すことが望ましい。溶融粘度がこの範囲にあると、Tダイキャスト成形法のみならず、インフレフィルム成形が可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、透明性半透明状でパール状の光沢を持ち、Tダイキャストフィルム成形法及びインフレフィルム成形法で成形可能な熱収縮性フィルムが提供される。本発明により得られるフィルムは、結晶性ポリエステルのみからなる熱収縮性フィルムに無い、延伸倍率を上げた場合に配向結晶の進行が低く抑えられ、良好な収縮率が得られる特徴を持っている。
【0011】
更に、本発明はPET樹脂に代表される結晶性のポリエステル樹脂単体と比較すると、フィルムの相構造上大きな違いがある。詳しく説明すると、本フィルムの場合、海島構造を示し、海相のPET樹脂の中に、エチレン・α−オレフィン共重合体が島相として存在している。この構造を取ることで、延伸倍率を上げた場合に、ミクロンオーダーで分散した島相のエチレン・α−オレフィン共重合体が配向結晶の進行を抑える効果を持つと推察され、PET樹脂単一系の場合に認められる、配向結晶の進行による収縮率の低下現象を低く抑える効果を見出した。その結果、PET樹脂単体に比較し、高延伸倍率での収縮率の低下を抑え、広い範囲での延伸加工が可能となり、生産性向上が期待できる。
【0012】
本発明で提供されるインフレーションフィルム、又はTダイキャストフィルムは、再生ポリエステル樹脂を主原料とすることが可能であり、資源リサイクルと言う社会的要請にも応えることができる。容易に加工することができる。また、ポリエステル樹脂はその燃焼熱が少ないので、最終的に廃棄する場合に、焼却炉等への熱負荷が少なくて済む利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[ポリエステル樹脂(A)]
本発明に使用可能なポリエステル樹脂は、基本的には芳香族または脂肪族のジカルボン酸とジオールとの重縮合体であって、製造に際してジカルボン酸およびジオールは、各々1種類を選び、あるいは2種類以上を適宜組み合わせて選び、触媒の存在下に通常の重縮合条件下で製造される。
【0014】
ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ジフニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸等を例示することができる。
【0015】
ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、 2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等を例示することができる。重縮合に際して、p−ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸を共存させてもよい。
【0016】
前記のジカルボン酸およびジオールとから製造したポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートを一例として挙げることができる。またポリエステル樹脂は、それらの成形品を一旦使用した後の再生品であってもよく、さらに未使用品と再生品との混合物であってもよい。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0017】
それらポリエステル樹脂は、フェノール/テトラクロロエチレン=50/50(重量比)混合溶媒中、25℃で測定した極限粘度(IV)が、0.60〜0.85(dl/g)の範囲にある重合体がインフレーションフィルム成形又はTダイキャストフィルム成形に適している。
【0018】
[エチレン系重合体(B)]
本発明に使用できるエチレン・α−オレフィン共重合体は、特に限定されないが、低密度のものが好ましい。具体的には、その密度が0.92以下、好ましくは0.91未満、より好ましくは0.87〜0.91(g/cm3)の範囲にあることが望ましい。このような密度範囲にある重合体をフィルム構成樹脂の一成分として使用すると、ポリエステル樹脂に対する十分な機械的強度の改良効果が得られる。
【0019】
その内のエチレン・α−オレフィン共重合体は、結晶性ないし非晶性のエチレン・α−オレフィン共重合体であってもよいし、結晶性を有しかつエチレン単独重合体に近い物性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体であってもよい。
従って、このエチレン・α−オレフィン共重合体を構成するモノマー組成は、エチレン単位が70モル%以上、α−オレフィン単位が30モル%以下と広範囲に亘っている。ここで、α−オレフィンは、前述した炭素数3〜20のオレフィンの中から適宜選択して使用することができ、特にプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4メチル−1−ペンテン、1−オクテンが好ましい。
【0020】
このような結晶性から非晶性の範囲にあるエチレン・α−オレフィン共重合体は、バナジウム化合物またはチタン化合物と有機アルミニウム化合物との組み合わせを一例としたチーグラー系触媒、シクロペンタジエニル環を有するジルコニウム化合物とオキシアルミニウム化合物との組み合わせを一例としたメタロセン系触媒のようなオレフィン立体規則性重合触媒を用いることによって製造することができる。
【0021】
好ましいエチレン系重合体としては、エチレン単独重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体であって、特に低密度ポリエチレン、結晶性のエチレン・1−ヘキセン共重合体、非晶性のエチレン・プロピレン共重合体、非晶性のエチレン・1−ブテン共重合体、非晶性のエチレン・1−オクテン共重合体が好適である。なお、エチレン系重合体をフィルム形成樹脂組成物の一成分として使用すると、その種類によっては樹脂組成物が白色不透明化することもあるので、透明なフィルムが必要な場合にはエチレン系重合体の種類と配合量を適宜選択することが必要である。
【0022】
そのメルトフローレート(MFR)は、ASTM D−1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重下に測定した値が、0.1〜20、好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.5〜10(g/10分)である。MFRの値がこの範囲内にあると、インフレーションフィルムの成形性及びTダイキャストフィルム成形を良好にし、フィルムの機械的強度を高めることができる。
【0023】
実際の使用に好適なエチレン系重合体としては、線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)を含む中低圧法低密度ポリエチレンを挙げることができ、それらは未使用の重合体であっても、再生品であってもよい。
【0024】
[相容化剤(C)]
本発明では、以下から選ばれる相容化剤(C)を用いる:
(C−1)カルボン酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体
(C−2)エポキシ変性エチレン・α−オレフィン共重合体
(C−3)エチレン単位と、エステル基を有する単位からなる2元共重合体
【0025】
(C−1)カルボン酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体は、カルボン酸基を含むエチレン・α−オレフィン共重合体であって、具体的にはエチレン・α−オレフィン共重合体へα,β−不飽和カルボン酸化合物をグラフト共重合して得た重合体(グラフト変性共重合体)、あるいはエチレン・α−オレフィン共重合体を酸化処理してその共重合体分子中にカルボン酸基を生成させた重合体等を例示することができる。
グラフトモノマーになるα,β−不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、ソルビン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ハイミック酸を例として挙げることができる。アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特に無水マレイン酸が好ましい。α,β−不飽和カルボン酸のグラフト量は、(C−1)成分の配合量にもよるが通常0.1〜5重量%の範囲にある。
【0026】
(C−2)エポキシ変性エチレン・α−オレフィン共重合体は、グリシジル変性エチレン・α−オレフィン共重合体があげられ、更には、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体を例示することが出来る。(メタ)アクリル酸エステル単位含量は20〜35重量%が好ましく、(メタ)アクリル酸グリシジル単位含量は2〜10重量%が好ましい。
【0027】
(C−3)エチレン単位と、エステル基を有する単位からなる2元共重合体としては、エチレン単位と、エチレン・アクリルエステル共重合体またはエチレン・メタクリルエステル共重合体を例示することが出来る。
エチレン・(メタ)アクリルエステル共重合体としては、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、及びエチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体、エチレン・メタクリル酸ブチル共重合体等を例示することができる。(C)はエチレンとアクリル酸エステルの2元共重合体であることが好ましく、中でも、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体が好ましい。
【0028】
エチレン・アクリル酸エステルのアクリル酸エステルの部分は、PET樹脂との反応性を高く保つ為に、10wt%以上配合されているのが好ましく、20wt%以上がより好ましい。成形性の面から見ると、アクリル酸エステルの含量が10wt%より少ない場合は、樹脂組成物の溶融粘度が低く、Tダイキャスト成形は容易であるが、インフレフィルム成形時の場合にフィルムが立ち上がらなかったり、バブルの揺れが大きく安定した成形が難しくなることがある。
【0029】
[樹脂組成物]
本発明のフィルムを成形する樹脂組成物を構成する各成分の混合割合(重量%)は、
(A)ポリエステル樹脂60〜90重量%、
(B)エチレン・α−オレフィン共重合体5〜35重量%、
(C)相容化剤1〜20重量%
の範囲にある。ここで、前記各3成分の合計量が100重量%になっている。各成分が、この組成範囲内にあると、Tダイキャスト成形及びインフレーションフィルムの成形を容易にし、機械的強度が良好で、半透明状のパール状の光沢を持つフィルムを得ることができる。
【0030】
各成分の混合割合(重量%)は、(A)ポリエステル樹脂重量70〜90%、(B)エチレン・α−オレフィン共重合体重量%5〜25、(C)相容化剤重量2〜10%、であることが更に好ましい。
【0031】
この樹脂組成物には、本発明の目的から逸脱しない範囲内で、各種の添加剤を適宜加えることができる。添加剤の例としては、酸化防止剤、耐候安定剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、核剤、滑剤、顔料等を挙げることができる。
【0032】
[フィルムの製造]
フィルム製造に先立ち、まずヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等を用いて前記の各成分を所定の混合割合にドライブレンドして均一組成に調製し、それをインフレーションフィルム又はTダイキャストフィルム成形用樹脂組成物とする。またその後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ミキシングロール等を用いて溶融混練りを加えることによって、ペレット状のインフレーションフィルム又はTダイキャストフィルム成形用樹脂組成物としてもよい。
【0033】
前記したペレット状の樹脂組成物を製造する場合、ポリエステル樹脂が加水分解されることを避けるために、ポリエステル樹脂の溶融混練り前に十分に乾燥しておくことが必要である。また、それに代わって押出機のベント口から減圧操作を加え、物性低下を招かない程度の吸水量まで水分を除去する方法をとることもできる。
【0034】
[熱収縮性フィルムの製造]
インフレーション成形又はTダイキャストフィルム成形法によって得た、非晶質フィルム原反から、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを以下の方法で製造する。本熱収縮性フィルムは加熱操作を加えて1軸若しくは2軸方向に延伸して成形する。収縮特性特に収縮率に大きく影響する延伸条件には、延伸温度、延伸倍率、延伸速度、延伸後の熱処理等の諸要因が挙げられる。まず、延伸温度であるが、ポリエステル、エチレン・α-オレフィン共重合体及び相容化剤からなる本発明の熱収縮フィルムのガラス転移温度Tgより5℃低い70℃から、15℃高い90℃の範囲に均一に加熱した後延伸する。
【0035】
この場合、延伸倍率は1.5倍から5倍程度、好ましくは2倍から4倍に選定する。延伸倍率を5倍以上に上げると、延伸時に配向結晶化が進行し、結果収縮率が低下し、良好な収縮性能が得られなくなることがある。延伸速度は、0.5m/minから10m/minの広い範囲で延伸可能である。生産効率を考えると高速延伸が好ましいが、収縮率低下傾向が認められるので、1.0から5.0m/minの範囲での延伸速度が望ましい。この条件内の延伸温度と延伸倍率、延伸速度を適正な条件とすると、パール状の光沢を持つ半透明状の熱収縮性フィルムが得られる。
【0036】
一般に熱収縮性フィルムの収縮率は高いほうが好ましく、最低20%以上の収縮率があれば、熱収縮フィルムとして採用可能である。ペットボトル用ポリエステル樹脂単体で延伸した場合には、結晶質材料の特性上、延伸時の配向結晶化が起こり易い欠点があるが、本ポリエステル系樹脂組成物の場合、ポリエステル樹脂単体に比較し、ミクロンオーダーに適度に分散した海島構造を示し、その効果として、配向の障害となる島部が配向結晶の進行を抑える効果を持つと考えられ、広い範囲の延伸操作に対応可能となる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例に示した各物性は以下の方法にて評価した。
【0038】
(1)熱収縮率
延伸後のフィルムを、幅10mmの短冊状に切断し、収縮率測定方向の長さ100mmに極細針で標線(ポイント)を記したフィルムを準備する。次に、所定温度に調整した温水中に10秒浸漬後、直ちに23℃の温度に調整された室内に取出し、フィルムを冷却後、1/100mmの単位で読み取り可能なスケールにて収縮方向の寸法変化を測定し、次の式に従って、熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)={(100−収縮後の長さ)/100}×100(%)
(2)ガラス転移温度(Tg)
パーキンエレマー社製、示差熱走査型熱量計(Pyris1)にて、昇温速度10℃/分でフィルムを昇温した時のサーモグラフよりガラス転移温度(Tg)を読み取った。
【0039】
(実施例1)
乾燥したフレーク状のポリエチレンテレフタレート樹脂(使用済みPETボトル再生品)75重量%とカルボン酸変性エチレン・α−オレフィン重合体、具体的には、エチレン・プロピレン共重合体に無水マレイン酸を1重量%グラフト共重合した共重合体3重量%、及び密度903(kg/m3)の直鎖状低密度ポリエチレン[(株)プライムポリマー製エボリュー]22重量%を均一にメルトブレンドしペレット状に加工した後、Tダイキャストフィルム成形機に供給し、100μmの厚みのフィルムを成形した。次いで、延伸操作に入るが、本操作は共通して、東洋精機株式会社製パンタグラフ方式2軸延伸に90mm×90mmサイズの試験片をセットし、よこ方向(成形方向に垂直方向)に1軸延伸した。この場合の延伸条件は、以下の方法で行った。
【0040】
試料セット後、恒温部カバーを密閉し、80℃で、30秒間均一に試料を昇温後、よこ方向に1.4m/minの速度で、2.0〜4.0倍の延伸倍率にて延伸後、直ちに試料を冷却した後取出し収縮率測定試料とした。この際、本試料を延伸時の温度のまま放置すると、延伸時の歪が固定し、収縮率が低下するので、延伸後、直ちに冷却することが肝要である。この熱収縮性フィルムを前記熱収縮率の測定方法で60℃〜100℃の範囲で熱収縮率を求めた。この結果を表1の実施例に示した。
【0041】
(実施例2)
次に、熱収縮フィルム原反をインフレフィルム成形法にて評価した場合の熱収縮性フィルムの評価を行った。この場合も材料は実施例1と同一の配合とした。この場合は、3種の樹脂を予めメルトブレンドすることなく、ドライブレンド状態でインフレーションフィルム成形機に供給し、厚さ30μmのフィルムを成形した。以下、80℃で、30秒間均一に試料を昇温後、よこ方向に1.4m/minの速度で、2.0〜3.0倍の延伸倍率にて延伸後、95℃の熱水中に10秒間浸漬後熱収縮率を測定した。その結果を表1に示した。
【0042】
(比較例1)
ポリエチレンテレフタレート(使用済みPETボトル再生品)単体のペレット状樹脂を使い、70μmのTダイキャストフィルムを成形した後、実施例1と同一方法で評価した結果を表1に示した。
【表1】

【0043】
表1に示したように、実施例1及び実施例2で得られた熱収縮性フィルムは、延伸倍率2〜4倍の範囲で良好な収縮特性を持っている。一方、比較例に示したPET樹脂単独系の場合、延伸倍率が3倍を超えると、急激に収縮率が低下する傾向が認められ、実施面で制約が多い。実施例の熱収縮フィルムは、30%以上の熱収縮率を持っているので、物品の被覆、ラベル、結束用、外装等の様々な用途に広く用いる事が出来る。さらに、一般的なTダイキャスト成形法のみならず生産効率が高いインフレーションフィルム成形法にてフィルム原反が成形可能となる。
なお収縮性能は、延伸倍率3倍・収縮温度60℃〜100℃の範囲で熱収縮率を求めた場合に、30%以上の熱収縮率を示す場合は○とし、いずれの温度でも30%を下回る場合を×として評価した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A):ポリエステル樹脂60〜90重量%、(B):エチレン・α−オレフィン共重合体5〜35重量%、(C):(C−1)〜(C−3)から選ばれる相溶化剤1〜20重量%、(ここで、A、B、Cの合計量が100重量%になる。)とからなるポリエステル系樹脂組成物を、延伸温度65〜90℃、延伸倍率1.5〜5.0倍で延伸して得られる熱収縮性フィルム。
(C−1)カルボン酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体
(C−2)エポキシ変性エチレン・α−オレフィン共重合体
(C−3)エチレン単位と、エステル基を有する単位からなる2元共重合体
【請求項2】
海島構造をとり、海相がポリエステル樹脂、微分散した海島がエチレン・α−オレフィン共重合体となる請求項1の熱収縮性フィルム。
【請求項3】
樹脂組成物の270℃での溶融粘度が、ずり速度20〜30sec-1の領域にて、600Pa・s以上を示す請求項1の熱収縮性フィルム。

【公開番号】特開2007−262183(P2007−262183A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87178(P2006−87178)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】