説明

ポリエステル組成物およびそれからなるポリエステル包装材料

【課題】透明性、熱安定性および香味保持性、あるいは透明性、熱安定性、香味保持性およびガスバリヤ−性に優れ、さらには成形時での金型汚れを発生させにくいポリエステル組成物およびそれからなるポリエステル包装材料を提供する。
【解決手段】熱可塑性ポリエステル100重量部と部分芳香族ポリアミド0.01〜30重量部とから主としてなるポリエステル組成物であって、前記部分芳香族ポリアミド中のリン原子含有量(P1)が10ppm以上であることを特徴とする。(ただし、P1は、前記部分芳香族ポリアミドを31P−NMR測定溶媒に溶解してトリフロロ酢酸添加後、構造分析した場合、下記構造式(1)の構造で検出されるリン化合物由来のリン原子含有量である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用ボトルをはじめとする中空成形容器、シート状物、フィルム、モノフィラメントなどの成形体や、紙、フィルムなどの基材の上にコートされた被覆物など包装材料の素材として好適に用いられるポリエステル組成物およびそれからなる透明性、熱安定性および香味保持性に優れ、また、ガスバリヤ−性に優れたポリエステル成形体およびポリエステル被覆物などのポリエステル包装材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレ−ト(以下、PETと略称することがある)などの熱可塑性ポリエステルは、機械的性質および化学的性質が共に優れているため、工業的価値が高く、繊維、フィルム、シ−ト、ボトルなどとして広く使用されている。さらに、熱可塑性ポリエステルは、耐熱性、透明性およびガスバリヤ−性に優れているので、特にジュ−ス、清涼飲料、炭酸飲料などの飲料充填用容器等の包装材料の素材として最適である。
【0003】
このような熱可塑性ポリエステルは、例えば、射出成形機械などの成形機に供給して中空成形体用プリフォ−ムを成形し、このプリフォ−ムを所定形状の金型に挿入し延伸ブロ−成形した後ボトルの胴部を熱処理(ヒ−トセット)して中空成形容器に成形され、さらには必要に応じてボトルの口栓部を熱処理(口栓部結晶化)させるのが一般的である。
【0004】
しかしながら、PETは、溶融重縮合時の副生物としてアセトアルデヒド(以下、AAと略称することがある)を含有する。また、PETは、中空成形体等の成形体を熱成形する際に熱分解によりアセトアルデヒドを生成し、得られた成形体の材質中のアセトアルデヒド含有量が多くなり、中空成形体等に充填された飲料等の風味や臭いに影響を及ぼす。
【0005】
かかる問題を解決するために、従来より熱可塑性ポリエステル成形体中のアセトアルデヒド含有量を低減させるために種々の方策が採られてきた。一般的には、溶融重縮合したプレポリマーを固相重合することによってAA含有量を低下させた熱可塑性ポリエステルを用いる方法、融点がより低い共重合熱可塑性ポリエステルを使用して成形時のAA生成を低下させる方法、熱成形時における成形温度を可及的に低くする方法および熱成形時におけるせん断応力を可及的に小さくする方法等が公知である。
【0006】
近年、ポリエチレンテレフタレ−トを中心とする熱可塑性ポリエステル製容器は、ミネラルウォ−タやウ−ロン茶等の低フレ−バ−飲料用の容器として使用されるようになってきた。このような飲料の場合は、一般にこれらの飲料を熱充填したり、または充填後加熱して殺菌されるが、前記の方法による熱可塑性ポリエステル成形体材質中のAA含有量低減だけでは、これらの容器内容物の風味や臭いが改善されないことが判明し、改善が求められている。
【0007】
かかる問題を解決する技術として、熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、メタキシリレン基含有ポリアミド樹脂を0.05重量部以上、1重量部未満の量を添加したポリエステル組成物を用いる方法(例えば、特許文献1参照)や、熱可塑性ポリエステルに、末端アミノ基濃度をある範囲に規制した特定のポリアミドを含有させたポリエステル組成物からなるポリエステル製容器(例えば、特許文献2参照)が提案されているが、ミネラルウオ−タ等の低フレ−バ−飲料用の容器としては、なお飲料の風味、臭いの点で不十分な場合があることも判ってきた。
【0008】
また、一方、PETを主体とする熱可塑性ポリエステル包装材料は前記のとうりガスバリヤ−性に優れているが、ビタミンC等のように酸素に非常に敏感な化合物を含有する内容物用の中空成形体等としては不満足であることが判明し、改善が求められている。
【0009】
このような問題を解決する技術として、我々は、熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、メタキシリレン基含有ポリアミド樹脂1〜100重量部を含有させた熱可塑性ポリエステル中空成形体(例えば特許文献3参照)を提案した。しかしながら、このようなポリエステル組成物からなる中空成形体に充填された飲料、特に低フレーバ−飲料の風味や臭いが問題となることが判ってきた。
【0010】
また、前記ポリエステル組成物を用いて耐熱性中空成形体を製造する際に前記の中空成形体の胴部を熱処理するが、その熱処理の際に金型内面や金型のガスの排気口、排気管に異物が付着する金型汚れが、熱可塑性ポリエステル樹脂のみを用いて成形する場合に比べて非常に発生しやすいという問題があり、この点も未解決で、改善が求められている。
【0011】
また、耐熱性の良好な熱可塑性ポリエステル系フィルムを金属板にラミネートし、前記ラミネート金属板を清涼飲料、ビール、缶詰等の主として食料品容器用金属缶に利用することが検討されている。このような用途において、香味保持性を改良するために、アセトアルデヒド含有量を20ppm以下にした金属板張り合わせ用熱可塑性ポリエステルフィルム(例えば、特許文献4参照)が提案されているが、このような手段を用いても問題の完全な解決にはならないことが判明し、改善が求められている。
【特許文献1】特公平6−6662号公報
【特許文献2】特公平4−71425号公報
【特許文献3】特公平4−54702号公報
【特許文献4】特開平5−339393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記の従来技術の問題点を解決することにあり、透明性、熱安定性および香味保持性、あるいは透明性、熱安定性、香味保持性およびガスバリヤ−性に優れ、さらには成形時での金型汚れを発生させにくいポリエステル組成物およびそれからなるポリエステル成形体やポリエステル被覆物などのポリエステル包装材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、熱可塑性ポリエステル100重量部と部分芳香族ポリアミド0.01〜30重量部とから主としてなるポリエステル組成物を用いて、透明性と香味保持性、あるいは透明性、香味保持性およびガスバリヤ−性に優れたポリエステル成形体およびポリエステル被覆物などのポリエステル包装材料並びにそれらの製造について検討した結果、前記ポリエステル組成物に用いられる部分芳香族ポリアミド中のリン化合物の構造が熱安定性、透明性、香味保持性およびガスバリアー性に関係があることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明のポリエステル組成物は、熱可塑性ポリエステル100重量部と部分芳香族ポリアミド0.01〜30重量部とからなるポリエステル組成物であって、前記部分芳香族ポリアミド中のリン原子含有量(P1)が10ppm以上であることを特徴とするポリエステル組成物である。
(ただし、P1は、前記部分芳香族ポリアミドを31P−NMR測定溶媒に溶解してトリフロロ酢酸添加後、構造分析した場合、下記構造式(1)の構造で検出されるリン化合物由来のリン原子含有量である。)
【0015】
【化3】

【0016】
(ただし、R1、R2は水素、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基またはアリールアルキル基、X1は水素)
【0017】
本発明に係るリン原子含有量(P1)は、より好ましくは15ppm以上、さらに好ましくは20ppm以上である。P1の含有量が10ppm未満の場合は、本発明のポリエステル組成物の熱安定性が悪くなり、得られたポリエステル包装材料が着色しやすくなるだけでなく、ゲル化しやすくなり、得られた中空成形体やフィルムなどの成形体に異物やフィッシュアイなどの発生が多くなり、また、香味保持性も悪くなって商品価値を落とす場合がある。
【0018】
この場合において、部分芳香族ポリアミド中のリン原子含有量(P2)が30ppm以上であることが好ましい。(ただし、P2は、前記部分芳香族ポリアミドを31P−NMR測定溶媒に溶解してトリフロロ酢酸添加後、構造分析した場合、下記構造式(2)の構造で検出されるリン化合物由来のリン原子含有量である。)
【0019】
【化4】

【0020】
(ただし、R3は水素、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基またはアリールアルキル基、X2、X3は水素)
【0021】
本発明に係るリン原子含有量(P2)は、より好ましくは35ppm以上、さらに好ましくは40ppm以上である。
【0022】
そして、本発明に係るリン原子含有量(P1)が10ppm以上であり、かつ、リン原子含有量(P2)の含有量が30ppm以上の場合は、リン原子含有量(P1)が10ppm以上を満足するだけの場合よりも、本発明のポリエステル組成物の熱安定性はより一層改良される。
【0023】
ここで、部分芳香族ポリアミド中のリン原子含有量の測定には、後記するリン化合物の構造分析(31P−NMR法)を用いた。
【0024】
また、熱可塑性ポリエステルが、エチレンテレフタレ−トを主たる繰返し単位とするポリエステルであることが好ましい。
【0025】
また、ポリエステル組成物のアセトアルデヒド含有量が10ppm以下であることが好ましい。
【0026】
また、ポリエステル組成物を射出成形して得られた成形体のアセトアルデヒド含有量(At)(ppm)と、射出成形前のポリエステル組成物のアセトアルデヒド含有量(A0)(ppm)との差(At−A0)が、15ppm以下であることが好ましい。
【0027】
ここで、ポリエステル組成物を射出成形して得られた成形体のアセトアルデヒド含有量(At)とは、窒素気流下で100℃で乾燥したポリエステル組成物を名機製作所社製M−150C(DM)射出成形機により、シリンダー温度290℃において、10℃の水で冷却した段付平板金型(表面温度約22℃)を用いて射出成形して得られた段付成形板の2mm厚みのプレートより採取した樹脂のアセトアルデヒド含有量を意味し、また、射出成形前のポリエステル組成物のアセトアルデヒド含有量(A0)とは、射出成形前の乾燥したポリエステル組成物のアセトアルデヒド含有量を意味する。そして、前記の差(At−A0)は、後記の測定法(5)の項で説明するように次式により求める。
【0028】
射出成形前後のアセトアルデヒド含有量の差(At−A0)(ppm)
=射出成形後の段付成形板のアセトアルデヒド含有量(At)(ppm)
−射出成形前の乾燥したポリエステル組成物のアセトアルデヒド含有量(A0)(ppm)
【0029】
また、前記のポリエステル組成物を用いてなるポリエステル包装材料とすることができる。
【0030】
また、前記ポリエステル包装材料中のアセトアルデヒド含有量が15ppm以下であることが好ましい。
【0031】
また、前記ポリエステル包装材料中の環状エステルオリゴマー含有量が、溶融重縮合熱可塑性ポリエステルが含む環状エステルオリゴマー含有量の60%以下であることが好ましい。
【0032】
ここで、溶融重縮合熱可塑性ポリエステルとは本文に説明する製造方法によって溶融重縮合して得た熱可塑性ポリエステルのことである。また、熱可塑性ポリエステルは、一般に種々の重合度の環状エステルオリゴマーを含有しているが、本発明でいう環状エステルオリゴマーとはこれら環状エステルオリゴマーのうちで最も含有量が高い環状エステルオリゴマーを意味しており、例えば、エチレンテレフタレートを主繰返し単位とするポリエステル(PET)やエチレンナフタレートを主繰返し単位とするポリエステル(以下、PENと略称することがある)の場合には環状3量体のことである。
【0033】
また、前記ポリエステル包装材料中の、290℃で30分間溶融処理した時のアセトアルデヒド含有量の増加量(△AA)(ppm)が15ppm以下、あるいは290℃で30分間溶融処理した時のアセトアルデヒド含有量の増加量(△AA)(ppm)が15ppm以下であって、かつ、環状エステルオリゴマーの増加量(△COLG2)(重量%)が0.40重量%以下、であることが好ましい。
【0034】
ここで、ポリエステル包装材料を290℃で30分間溶融処理した時の、アセトアルデヒド含有量の増加量(△AA)(ppm)および環状エステルオリゴマーの増加量(△COLG2)(重量%)は、後記の測定法(6)および(7)の項で説明するように次式により求める。
【0035】
溶融処理時のアセトアルデヒド含有量の増加量(△AA)(ppm)
=溶融処理後のアセトアルデヒド含有量(ppm)
−溶融処理前の乾燥後のアセトアルデヒド含有量(ppm)
【0036】
溶融処理時の環状エステルオリゴマー増加量(△COLG2)(重量%)
=溶融処理後の環状エステルオリゴマー含有量(重量%)
−溶融処理前の環状エステルオリゴマー含有量(重量%)
【0037】
さらにまた、前記の本発明のポリエステル包装材料は、中空成形体、シ−ト状物あるいは前記シート状物を少なくとも一方向に延伸してなる延伸フィルム、または被覆物のいずれかであることができる。
【0038】
なお、ここで、中空成形体とは、未延伸中空成形体あるいは少なくとも一方向に延伸された延伸中空成形体のことであり、また、被覆物とは、ポリエステル組成物をある基材上に、溶融押出成形してなる薄膜状物や熱接着あるいは接着剤などにより接着されてなるフィルム状物などのことである。
【発明の効果】
【0039】
本発明のポリエステル組成物によれば、透明性、熱安定性および香味保持性、あるいは透明性、熱安定性、香味保持性およびガスバリヤ−性に優れたポリエステル成形体やポリエステル被覆物などのポリエステル包装材料が得られ、また、本発明のポリエステル包装材料は、上述したように、清涼飲料などの飲料用包装材料として非常に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明に係る熱可塑性ポリエステル、ポリエステル組成物およびそれからなるポリエステル包装材料の実施の形態を具体的に説明する。
【0041】
本発明に係る熱可塑性ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸成分とグリコ−ル成分とからなる構成単位を30モル%以上含む熱可塑性ポリエステルであり、好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の50モル%以上含む熱可塑性ポリエステルであり、さらに好ましくは70モル%以上、特に好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の90モル%以上含む熱可塑性ポリエステルである。
【0042】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニ−ル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸およびその機能的誘導体等が挙げられる。
【0043】
また、本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルを構成するグリコ−ル成分としては、エチレングリコ−ル、1,3−トリメチレングリコ−ル、テトラメチレングリコ−ルなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコ−ル等が挙げられる。
【0044】
前記熱可塑性ポリエステル中に共重合成分として使用される酸成分としては、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニ−ル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸およびその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマ−酸等の脂肪族ジカルボン酸およびその機能的誘導体、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸およびその機能的誘導体などが挙げられる。
【0045】
前記熱可塑性ポリエステル中に共重合成分として使用されるグリコ−ル成分としては、エチレングリコ−ル、1,3−トリメチレングリコ−ル、テトラメチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族グリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコ−ル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、ポリブチレングリコ−ル等のポリアルキレングリコ−ルなどが挙げられる。
【0046】
また、熱可塑性ポリエステルが実質的に線状である範囲内で多官能化合物、例えばトリメリット酸、無水トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、トリカルバリル酸、グリセリン、ペンタエリスリト−ル、トリメチロ−ルプロパン等を共重合してもよく、また、単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0047】
さらにまた、前記熱可塑性ポリエステルを重合した後に無水フタル酸、無水コハク酸、無水1,8−ナフタル酸、無水1,2−シクロヘキサンジカルボン酸などを後付加してもい。
【0048】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルの好ましい一例は、主たる繰返し単位がエチレンテレフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含み、共重合成分としてイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4―シクロヘキサンジメタノールなどを含む線状共重合熱可塑性ポリエステルであり、特に好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を90モル%以上含む線状熱可塑性ポリエステルである。
【0049】
これら線状熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称)、ポリ(エチレンテレフタレート−エチレンイソフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−エチレンイソフタレート−エチレン−2,6−ナフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−エチレン−2,6−ナフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−ジオキシエチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−1,3−プロピレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−エチレンシクロヘキシレンジカルボキシレート)共重合体などが挙げられる。
【0050】
また、本発明に係る熱可塑性ポリエステルの好ましい一例は、主たる構成単位がエチレンイソフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンイソフタレ−ト単位を70モル%以上含み、共重合成分としてテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4―シクロヘキサンジメタノールなどを含む線状共重合熱可塑性ポリエステルであり、特に好ましくはエチレンイソフタレ−ト単位を90モル%以上含む線状熱可塑性ポリエステルである。
【0051】
これら線状熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリエチレンイソフタレート(以下、PEIと略称)、ポリ(エチレンイソフタレート−エチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレンイソフタレート−エチレンテレフタレート−エチレン−2,6−ナフタレート)共重合体、ポリ(エチレンイソフタレート−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレンイソフタレート−エチレン−2,6−ナフタレート)共重合体、ポリ(エチレンイソフタレート−ジオキシエチレンイソフタレート)共重合体、ポリ(エチレンイソフタレート−1,3−プロピレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレンイソフタレート−エチレンシクロヘキシレンジカルボキシレート)共重合体、ポリ(エチレンイソフタレート−エチレンテレフタレート)共重合体、テレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコールおよび1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンからの共重合体などが挙げられる。
【0052】
また、本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルの好ましい他の一例は、主たる繰り返し単位がエチレン−2、6−ナフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン−2、6−ナフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状熱可塑性ポリエステルであり、特に好ましいのは、エチレン−2、6−ナフタレ−ト単位を90モル%以上含む線状熱可塑性ポリエステルである。
【0053】
これら線状熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリエチレン−2,6―ナフタレート(PEN)、ポリ(エチレン−2,6―ナフタレート−エチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレン−2,6―ナフタレート−エチレンイソフタレート)共重合体、ポリ(エチレン−2,6―ナフタレート−ジオキシエチレン−2,6―ナフタレート)共重合体などが挙げられる。
【0054】
また、本発明に係る熱可塑性ポリエステルの好ましいその他の例としては、主たる構成単位が1,3−プロピレンテレフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルであり、さらに好ましくは1,3−プロピレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状熱可塑性ポリエステルであり、特に好ましいのは1,3−プロピレンテレフタレ−ト単位を90モル%以上含む線状熱可塑性ポリエステルである。
【0055】
これら線状熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリプロピレンテレフタレート(PTT)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート−1,3−プロピレンイソフタレート)共重合体、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート−1,3−プロピレンー2,6−ナフタレート)共重合体などが挙げられる。
【0056】
さらにまた、本発明に係る熱可塑性ポリエステルの好ましいその他の例としては、主たる構成単位がブチレンテレフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルであり、さらに好ましくはブチレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状共重合熱可塑性ポリエステルであり、特に好ましくはブチレンテレフタレ−ト単位を90モル%以上含む線状熱可塑性ポリエステルである。
【0057】
これら線状熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリブチレンテレフタレ−ト(PBT)、ポリ(ブチレンテレフタレート−ブチレンイソフタレート)共重合体、ポリ(ブレンテレフタレート−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(ブレンテレフタレート−ブチレン−2,6−ナフタレート)共重合体、ポリ(ブチレンテレフタレート−1,3−プロピレンテレフタレート)共重合体、ポリ(ブチレンテレフタレート−ブチレンシクロヘキシレンジカルボキシレート)共重合体などが挙げられる。
【0058】
前記以外の本発明に係る熱可塑性ポリエステルの好ましいその他の例としては、主たる構成単位が1,3−プロピレン−2、6−ナフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルや主たる構成単位がブチレン−2、6−ナフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルが挙げられる。
【0059】
前記の熱可塑性ポリエステルは、基本的には従来公知の溶融重縮合法あるいは溶融重縮合法―固相重合法によって製造することが出来る。溶融重縮合反応は1段階で行っても良いし、また、多段階に分けて行っても良い。これらは回分式反応装置から構成されていてもよいし、また、連続式反応装置から構成されていてもよい。また、溶融重縮合工程と固相重合工程は連続的に運転してもよいし、分割して運転してもよい。
【0060】
以下に、ポリエチレンテレフタレート(PET)を例にして、本発明に係る熱可塑性ポリエステルの好ましい連続式製造方法の一例について説明するが、これに限定されるものではない。即ち、PETの場合には、テレフタ−ル酸とエチレングリコ−ルおよび必要により上記共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化した後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物、Ti化合物またはAl化合物から選ばれた一種またはそれ以上の化合物を用いて減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、またはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルおよび必要により上記共重合成分をエステル交換触媒の存在下で反応させてメチルアルコ−ルを留去しエステル交換させた後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物、Ti化合物またはAl化合物から選ばれた一種またはそれ以上の化合物を用いて主として減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。
【0061】
さらに熱可塑性ポリエステルの極限粘度を増大させ、アセトアルデヒド含有量や環状エステル3量体含有量を低下させるために固相重合を行ってもよい。
【0062】
前記のエステル化反応、エステル交換反応、溶融重縮合反応および固相重合反応は、回分式反応装置で行っても良いし、また、連続式反応装置で行っても良い。これらいずれの方式においても、溶融重縮合反応は1段階で行っても良いし、また、多段階に分けて行っても良い。固相重合反応は、溶融重縮合反応と同様、回分式装置や連続式装置で行うことが出来る。溶融重縮合と固相重合は連続で行っても良いし、分割して行ってもよい。
【0063】
前記の出発原料である芳香族ジカルボン酸ジメチルエステル、芳香族ジカルボン酸またはエチレングリコールなどのグリコール類としては、パラキシレンから誘導されるバージンのジメチルテレフタレート、テレフタル酸あるいはエチレンから誘導されるエチレングリコールは勿論のこと、使用済みPETボトルからメタノール分解やエチレングリコール分解などのケミカルリサイクル法により回収したジメチルテレフタレート、テレフタル酸、ビスヒドロキシエチルテレフタレートあるいはエチレングリコールなどの回収原料も、出発原料の少なくとも一部として利用することが出来る。前記回収原料の品質は、使用目的に応じた純度、品質に精製されていなければならないことはいうまでもない。
【0064】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルの製造に使用されるSb化合物としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリ、オキシ塩化アンチモン、アンチモングリコレ−ト、五酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン等が挙げられる。Sb化合物は、生成ポリマ−中のSb残存量として50〜250ppmの範囲になるように添加する。
【0065】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルの製造に使用されるGe化合物としては、無定形二酸化ゲルマニウム、結晶性二酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、亜リン酸ゲルマニウム等が挙げられる。Ge化合物を使用する場合、その使用量は熱可塑性ポリエステル中のGe残存量として5〜150ppm、好ましくは10〜100ppm、さらに好ましくは15〜70ppmである。
【0066】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルの製造に使用されるチタン(Ti)化合物としては、テトラエチルチタネ−ト、テトライソプロピルチタネ−ト、テトラ−n−プロピルチタネ−ト、テトラ−n−ブチルチタネ−ト等のテトラアルキルチタネ−トおよびそれらの部分加水分解物、酢酸チタン、蓚酸チタニル、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルナトリウム、蓚酸チタニルカリウム、蓚酸チタニルカルシウム、蓚酸チタニルストロンチウム等の蓚酸チタニル化合物、トリメリット酸チタン、硫酸チタン、塩化チタン、チタンハロゲン化物の加水分解物、シュウ化チタン、フッ化チタン、六フッ化チタン酸カリウム、六フッ化チタン酸アンモニウム、六フッ化チタン酸コバルト、六フッ化チタン酸マンガン、チタンアセチルアセトナート等が挙げられる。チタン(Ti)化合物は、生成ポリマ−中のチタン(Ti)残存量として0.1〜50ppmの範囲になるように添加することが好ましい。
【0067】
また、本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルの製造に使用されるAl化合物としては、具体的には、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn-プロポキサイド、アルミニウムiso-プロポキサイド、アルミニウムn-ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso-プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩およびキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに塩基性酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートがとくに好ましい。Al化合物は、生成ポリマ−中のAl残存量として5〜200ppmの範囲になるように添加する。
【0068】
これらの触媒化合物は、例えばエチレングリコール溶液としてエステル交換工程中またはエステル交換反応終了後から重縮合反応開始までの任意の段階、あるいはエステル化工程中またはエステル化反応終了後から重縮合反応開始までの任意の段階において添加することができる。
【0069】
また、本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルの製造において、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を併用してもよい。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、これら元素の酢酸塩等のカルボン酸塩、アルコキサイド等が挙げられ、粉体、水溶液、エチレングリコ−ル溶液等として反応系に添加される。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、生成ポリマ−中のこれらの元素の残存量として1〜50ppmの範囲になるように添加する。
【0070】
前記の触媒化合物は、前記熱可塑性ポリエステル生成反応工程の任意の段階で、粉体、水溶液、エチレングリコ−ル溶液等として添加することができる。
【0071】
また、安定剤として種々のリン化合物を使用することができる。本発明で使用されるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニ−ルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジエチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジフェニ−ルエステル等であり、これらは単独で使用してもよく、また、2種以上を併用してもよい。リン化合物は、生成ポリマ−中のリン残存量として5〜100ppmの範囲になるように前記の熱可塑性ポリエステル生成反応工程の任意の段階で添加する。
【0072】
また、本発明に係る熱可塑性ポリエステルの製造において、グリコールから副生するジアルキレングリコールの生成を抑制するために塩基性窒素化合物を用いることが好ましい。塩基性窒素化合物としては、脂肪族、脂環式、芳香族および複素環式窒素化合物のいずれでもかまわない。具体例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ジメチルアニリン、ピリジン、キノリン、ジメチルベンジルアミン、ピペリジン、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルベンジルアンモニウムハイドロオキサイド、イミダゾール、イミダゾリン等が挙げられる。これらの化合物は遊離形で用いてもよいし、低級脂肪酸やTPAの塩として用いてもよい。また、これらの塩基性窒素化合物の反応系への添加は、初期重縮合反応が終了するまでの任意の段階で適宜選ぶことが出来、単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
【0073】
これらの塩基性窒素化合物の配合量は、ポリエステル当り0.01〜1モル%、好ましくは0.05〜0.7モル%、さらに好ましくは0.1〜0.5モル%である。塩基性窒素化合物の配合量が0.01モル%未満では得られたポリエステルからの中空成形体、特に延伸熱固定中空成形体の透明性が非常に悪くなる。また、1モル%を超えるとポリエステルの色調が悪くなる。
【0074】
また、本発明のポリエステル組成物の溶融時の粘度低下を抑制したり、成形前の乾燥や熱処理時に刺激臭の強いアセトアルデヒドやアリルアルデヒド等の熱分解によって生成する低分子量の副生を抑えるためには、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を添加することも好ましい。このようなヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、公知のものを使用してよく、例示するならばペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンゼン)イソフタル酸、トリエチルグリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレン−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を例示することができる。なかでもペンタエリスリトール−テトラエキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等が挙げられる。この場合ヒンダードフェノール系酸化安定剤は、熱可塑性ポリエステルに結合していてもよく、 ヒンダードフェノール系酸化安定剤のポリエステル組成物中の量としては、ポリエステル組成物の重量に対して、1重量%以下が好ましい。これは、1重量%を越えると着色する場合があることと、1重量%以上添加しても溶融安定性を向上させる能力が飽和するからである。好ましくは、0.02〜0.5重量%である。
【0075】
本発明に係る熱可塑性ポリエステル、特に主たる構成単位がエチレンテレフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルの極限粘度は、好ましくは0.55〜2.00デシリットル/グラム、より好ましくは0.58〜1.50デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.60〜1.00デシリットル/グラムの範囲である。極限粘度が0.55デシリットル/グラム未満では、得られた成形体等の機械的特性が悪いこととがある。また、2.00デシリットル/グラムを越える場合は、成型機等による溶融時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、保香性に影響を及ぼす遊離の低分子量化合物が増加したり、成形体が黄色に着色する等の問題が起こる場合がある。
【0076】
また、本発明に係る熱可塑性ポリエステル、特に主たる構成単位がエチレンイソフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルの極限粘度は、好ましくは0.30〜0.80デシリットル/グラム、より好ましくは0.40〜0.70デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.50〜0.60デシリットル/グラムの範囲である。極限粘度が0.30デシリットル/グラム未満では、得られた成形体等の機械的特性が悪いこととがある。また、0.80デシリットル/グラムを越える場合は、成形性や保香性に影響を及ぼす遊離の低分子量化合物が増加し、成形時に成形機の汚れが激しくなり、正常な生産が困難となる等の問題が起こる。
【0077】
また、本発明に係る熱可塑性ポリエステル、特に主たる繰り返し単位がエチレン−2、6−ナフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルの極限粘度は0.40〜1.00デシリットル/グラム、好ましくは0.42〜0.95デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.45〜0.90デシリットル/グラムの範囲である。極限粘度が0.40デシリットル/グラム未満では、得られた包装材料等の機械的特性が悪い。また、1.00デシリットル/グラムを越える場合は、成型機等による溶融時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、保香性に影響を及ぼす遊離の低分子量化合物が増加したり、包装材料が黄色に着色する等の問題が起こる。
【0078】
また、本発明に係る熱可塑性ポリエステル、特に主たる構成単位が1,3−プロピレンテレフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルの極限粘度は、0.50〜2.00デシリットル/グラム、好ましくは0.55〜1.50デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.60〜1.00デシリットル/グラムの範囲である。極限粘度が0.50デシリットル/グラム未満では、得られた包装材料等の機械的特性が悪くなり問題である。また、極限粘度の上限値は、2.00デシリットル/グラムであり、これを越える場合は、成型機等による溶融時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、分子量の低下が激しく、また、黄色に着色する等の問題が起こる。
【0079】
また、本発明に係る熱可塑性ポリエステル中に共重合されたジアルキレングリコール含有量は、前記熱可塑性ポリエステルを構成するグリコ−ル成分の好ましくは0.5〜5.0モル%、より好ましくは1.0〜4.0モル%、さらに好ましくは1.5〜3.0モル%である。ジアルキレングリコ−ル量が5.0モル%を越える場合は、熱安定性が悪くなり、成型時に分子量低下が大きくなったり、また、アルデヒド類の含有量の増加量が大となり好ましくない。また、ジアルキレングリコ−ル含有量が0.5モル%未満の熱可塑性ポリエステルを製造するには、エステル交換条件、エステル化条件あるいは重合条件として非経済的な製造条件を選択することが必要となり、コストが合わない。ここで、熱可塑性ポリエステル中に共重合されたジアルキレングリコールとは、例えば、主たる構成単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルの場合には、グリコールであるエチレングリコールから製造時に副生したジエチレングリコ−ルのうちで、前記熱可塑性ポリエステルに共重合したジエチレングリコ−ル(以下、DEGと略称する)のことであり、1,3−プロピレンテレフタレ−トを主たる構成単位とするポリエステルの場合には、グリコールである1,3−プロピレングリコールから製造時に副生したジ(1,3−プロピレングリコ−ル)(またはビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテル)のうちで、前記熱可塑性ポリエステルに共重合したジ(1,3−プロピレングリコ−ル(以下、DPGと称する))のことである。
【0080】
また、本発明に係る熱可塑性ポリエステルのアセトアルデヒドなどのアルデヒド類の含有量は、50ppm以下、好ましくは30ppm以下、より好ましくは10ppm以下であることが望ましい。特に、本発明のポリエステル組成物が、ミネラルウオータ等の低フレーバー飲料用の容器の材料として用いられる場合には、前記熱可塑性ポリエステルのアルデヒド類の含有量は10ppm以下、好ましくは8ppm以下、より好ましくは5ppm以下であることが望ましい。アルデヒド類含有量が50ppmを超える場合は、この熱可塑性ポリエステルから成形された成形体等の内容物の香味保持性の効果が悪くなる。また、これらの下限は製造上の問題から、0.1ppbであることが好ましい。ここで、アルデヒド類とは、熱可塑性ポリエステルがエチレンテレフタレ−トを主たる構成単位とするポリエステルの場合はアセトアルデヒドであり、1,3−プロピレンテレフタレ−トを主たる構成単位とするポリエステルの場合はアリルアルデヒドである。
【0081】
また、本発明に係る熱可塑性ポリエステルの環状エステルオリゴマーの含有量は、前記熱可塑性ポリエステルの溶融重縮合体が含有する環状エステルオリゴマーの含有量の70%以下、好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下、特に好ましくは35%以下であることが好ましい。
【0082】
前記熱可塑性ポリエステルがエチレンテレフタレ−トを主たる構成単位とするポリエステルの代表であるPETの場合は、溶融重縮合ポリエステルの環状3量体の含有量は約1.0重量%であるから、本発明に係る熱可塑性ポリエステルの環状3量体の含有量は、0.70重量%以下、好ましくは0.60重量%以下、さらに好ましくは0.50重量%以下、特に好ましくは0.35重量%以下である。
【0083】
このような環状エステルオリゴマーの含有量を低減したポリエステルは、溶融重縮合ポリエステルを固相重合するか、あるいは融点以下の温度で不活性気体下で加熱処理するなどの方法により得ることができる。
【0084】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステルのチップの形状は、シリンダ−型、角型、球状または扁平な板状等のいずれでもよい。その平均粒径は通常1.3〜5mm、好ましくは1.5〜4.5mm、さらに好ましくは1.6〜4.0mmの範囲である。例えば、シリンダ−型の場合は、長さは1.3〜4mm、径は1.3〜4mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、チップの重量は10〜40mg/個の範囲が実用的である。
【0085】
一般的に熱可塑性ポリエステルは、製造工程中で発生する、共重合成分および該共重合成分含量が熱可塑性ポリエステルのチップと同一である微粉、すなわち、ファインをかなりの量含んでいる。このようなファインは熱可塑性ポリエステルの結晶化を促進させる性質を持っており、多量に存在する場合には、このようなファインを含む前記ポリエステル組成物から成形したポリエステル包装材料の透明性が非常に悪くなったり、また、ボトルの場合には、ボトル口栓部結晶化時の収縮量が規定値の範囲内に収まらずキャップで密栓できなくなるという問題が生じる。したがって、本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル中のファインの含有量は1000ppm以下、好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下、特に好ましくは100ppm以下であることが望ましい。
【0086】
本発明に係るポリアミドは、脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミンとから誘導される単位を主構成単位とするポリアミドまたは芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとから誘導される単位を主構成単位とするポリアミドのいずれかを分子鎖中に50モル%以上、好ましくは60モル%以上、特に好ましくは70モル%以上含有するポリアミドである。
【0087】
なお以下においては、本発明に係る部分芳香族ポリアミドを単にポリアミドということがある。
本発明に係るポリアミドが、脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミンとから誘導される単位を主構成単位とするポリアミドの場合は、かかるポリアミドを構成する芳香族ジアミン成分としては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、パラ−ビス(2−アミノエチル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0088】
また、かかるポリアミドを構成する脂肪族ジアミン成分としては、炭素数2〜12の脂肪族ジアミンあるいはその機能的誘導体である。脂肪族ジアミンは直鎖状の脂肪族ジアミンであっても分岐を有する鎖状の脂肪族ジアミンであってもよい。このような直鎖状の脂肪族ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、1−メチルエチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。
【0089】
本発明に係るポリアミドが、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとから誘導される単位を主構成単位とするポリアミドの場合は、かかるポリアミドを構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニ−ル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸およびその機能的誘導体等が挙げられる。
【0090】
また、かかるポリアミドを構成する脂肪族ジカルボン酸成分としては、直鎖状の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、さらに炭素数4〜12のアルキレン基を有する直鎖状脂肪族ジカルボン酸が特に好ましい。このような直鎖状脂肪族ジカルボン酸の例としては、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン酸、ウンデカジオン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸およびこれらの機能的誘導体などを挙げることができる。
【0091】
また、本発明に係るポリアミドを構成するジアミン成分として、上記のような芳香族ジアミンや脂肪族ジアミン以外に脂環族ジアミンを使用することもできる。脂環族ジアミンとしては、シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジアミンが挙げられる。
【0092】
また、本発明に係るポリアミドを構成するジカルボン酸成分として、上記のような芳香族ジカルボン酸や脂肪族ジカルボン酸以外に脂環族ジカルボン酸を使用することもできる。脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
【0093】
前記のジアミンおよびジカルボン酸以外にも、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類、パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等も共重合成分として使用できる。とりわけ、ε−カプロラクタムの使用が望ましい。
【0094】
また、共重合成分として、少なくとも一つの末端アミノ基、もしくは末端カルボキシル基を有する分子量が2000〜20000のポリエーテル、又は前記末端アミノ基を有するポリエーテルの有機カルボン酸塩、又は前記末端カルボキシル基を有するポリエーテルのアミノ塩を用いることもできる。具体的な例としては、ビス(アミノプロピル)ポリ(エチレンオキシド)(分子量が2000〜20000のポリエチレングリコール)が挙げられる。
本発明に係る部分芳香族ポリアミドの好ましい例としては、メタキシリレンジアミン、もしくはメタキシリレンジアミンと全量の30%以下のパラキシリレンジアミンを含む混合キシリレンジアミンと脂肪族ジカルボン酸とから誘導される構成単位を分子鎖中に少なくとも50モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上、特に好ましくは70モル%以上含有するメタキシリレン基含有ポリアミドである。
【0095】
また、本発明に係る部分芳香族ポリアミドは、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3塩基以上の多価カルボン酸から誘導される構成単位を実質的に線状である範囲内で含有していてもよい。
【0096】
これらポリアミドの例としては、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンセバカミド、ポリメタキシリレンスペラミド等のような単独重合体、およびメタキシリレンジアミン/アジピン酸/イソフタル酸共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピペラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体、メタキシリレンジアミン/アジピン酸/イソフタル酸/ε−カプロラクタム共重合体、メタキシリレンジアミン/アジピン酸/イソフタル酸/ω―アミノカプロン酸共重合体等が挙げられる。
【0097】
また、本発明に係る部分芳香族ポリアミドの好ましいその他の例としては、脂肪族ジアミンとテレフタル酸またはイソフタル酸から選ばれた少なくとも一種の酸とから誘導される構成単位を分子鎖中に少なくとも50モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上、特に好ましくは70モル%以上含有するポリアミドである。
【0098】
これらポリアミドの例としては、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/イソフタル酸共重合体、ポリノナメチレンテレフタルアミド、ポリノナメチレンイソフタルアミド、ノナメチレンジアミン/テレフタル酸/イソフタル酸共重合体、ノナメチレンジアミン/テレフタル酸/アジピン酸共重合体等が挙げられる。
【0099】
また、本発明に係る部分芳香族ポリアミドの好ましいその他の例としては、脂肪族ジアミンとテレフタル酸またはイソフタル酸から選ばれた少なくとも一種の酸以外に、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類、パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等を共重合成分として使用して得た、脂肪族ジアミンとテレフタル酸またはイソフタル酸から選ばれた少なくとも一種の酸とから誘導される構成単位を分子鎖中に少なくとも50モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上、特に好ましくは70モル%以上含有するポリアミドである。
【0100】
これらポリアミドの例としては、ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/ε−カプロラクタム共重合体、ヘキサメチレンジアミン/イソフタル酸/ε−カプロラクタム共重合体、ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/アジピン酸/ε−カプロラクタム共重合体等が挙げられる。
【0101】
本発明に係るポリアミドは、基本的には従来公知の、水共存下での溶融重縮合法あるいは水不存在下の溶融重縮合法や、これらの溶融重縮合法で得られたポリアミドをさらに固相重合する方法などによって製造することが出来る。溶融重縮合反応は1段階で行っても良いし、また、多段階に分けて行っても良い。これらは回分式反応装置から構成されていてもよいし、また、連続式反応装置から構成されていてもよい。また、溶融重縮合工程と固相重合工程は連続的に運転してもよいし、分割して運転してもよい。
【0102】
以下に、キシリレン基含有ポリアミド(Ny−MXD6)を例にして、本発明に係るポリアミドの好ましい回分式製造方法について説明するが、これに限定されるものではない。
【0103】
即ち、例えば、メタキシリレンジアミンとアジピン酸との塩、熱分解抑制剤としてアルカリ金属原子を含有するアルカリ金属含有化合物およびリン化合物の水溶液を加圧下および常圧下に加熱し、水および重縮合反応で生ずる水を除去しながら溶融状態で重縮合させる方法により得ることが出来る。
【0104】
この際、メタキシリレンジアミンを貯蔵するタンクおよびアジピン酸を貯蔵するタンクは、別々に、窒素ガス雰囲気とし、これら窒素ガス雰囲気中の酸素濃度を20ppm以下とすることが好ましい。より好ましくは16ppm、最も好ましくは15ppmとすることが好ましい。貯蔵タンク内の窒素ガス雰囲気中の酸素含有量が20ppmを越える場合は、得られたポリアミド中の構造式(1)で表されるリン化合物由来のリン原子含有量(P1)が10ppm未満となり、また、構造式(2)で表されるリン化合物由来のリン原子含有量(P2)が30ppm未満となり、ポリアミドの熱安定性が劣ることとなる。また、貯蔵タンク内の雰囲気の酸素濃度を抑える方法としては、タンク内に窒素などの不活性ガスを流入させて、空気を窒素ガスに置換し、その後に窒素ガスなどの不活性ガスを流しておく方法が好ましい。また、各原料中の酸素含有量を減らす方法としては、缶底部より不活性ガスをバブリングするのが好ましい。使用される不活性ガスとしては、酸素含有量が12ppm以下の窒素ガス、より好ましくは1ppm以下の窒素ガスを使用することが好まれる。
【0105】
また、前記原料と各種添加剤と水とを混ぜ合わせ、メタキシリレンジアミンとアジピン酸との塩を調整する工程においても、窒素ガス雰囲気中の酸素濃度を20ppm以下、さらに好ましくは18ppm以下、より好ましくは16ppm、最も好ましくは15ppmとすることが好ましい。さらに酸素濃度を下げる方法として、前記の塩水溶液中に不活性ガス、例えば、窒素ガスを使用し、バブリングする方法が挙げられる。この工程においても、酸素含有量が20ppmを越えると、得られたポリアミド中の構造式(1)で表されるリン化合物由来のリン原子含有量(P1)が10ppm未満となり、また、構造式(2)で表されるリン化合物由来のリン原子含有量(P2)が30ppm未満となり、ポリアミドの熱安定性が劣ることとなる。
【0106】
また、前記の塩を調整する際の温度としては、熱酸化劣化による着色を抑えるためや副反応や添加剤の熱酸化劣化反応を抑えるために、140℃以下が好ましく、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは120℃以下、最も好ましくは110℃以下である。また、下限については、前記塩の固化が起こらない温度することが好ましく、30℃以上、より好ましくは40℃以上である。
【0107】
次いで、前記の調製された塩水溶液を重合缶に移送し重縮合するが、塩水溶液中の水を蒸発させる際に未反応物質の飛散を防ぐためや系内への酸素の混入を防ぐために、缶内に圧力を0.5〜1.5MPa掛けながら、徐々に昇温させて、留出する水を系外に除き、缶内温度を230℃にした。この時の反応時間は、好ましくは1〜10時間であり、より好ましくは2〜8時間、さらに好ましくは3〜7時間である。急激な温度上昇は添加剤の高分子量化やポリマーの副反応を進める一因ともなり、後工程におけるゲル化等の樹脂の熱安定性低下の原因となるため、好ましくはない。その後、缶内圧を30〜90分かけて、徐々に放圧し、常圧に戻した。さらに温度を上昇させ、常圧で攪拌し、重合反応を進めた。重合温度は好ましくは280℃以下、より好ましくは270℃以下、さらに好ましくは265℃以下、最も好ましくは260℃以下である。重合温度が280℃を越えるような高温であると、添加剤の高分子量化やポリマーの熱酸化反応や副反応をより進行させることなり、好ましくない。下限はポリマー融点を基準にし、固化しない範囲の温度が好ましい。重合時間については、短いほど好ましいが、好ましくは2時間以内、より好ましくは1.5時間以内、さらに好ましくは1.0時間以内である。
【0108】
目標粘度に達した時点で攪拌を停止させ、放置し、ポリマー中の気泡を取り除いた。長時間の放置は熱劣化を進める要因ともなるので、好ましくない。反応缶下部の取り出し口より溶融樹脂を取り出し、冷却固化させてストランドカッタなどのチップカッターで樹脂チップを得た。この際、キャスティングに要する時間が長いと、取り出し口での熱酸化劣化の影響を大きく受けたり、缶内などの樹脂が熱劣化を受け、ゲル化物が生成したり着色したりするため、好ましくない。また、キャスティングが短くすぎると、取り出し口より出たストランド状のポリマー温度が高くなりすぎるため、樹脂や添加剤の熱酸化劣化を受けやすくなり、ポリマーの熱安定性の低下の一因となりうる。よって、キャスティング時間は、回分式反応缶の場合、好ましくは10〜120分であり、より好ましくは15〜100分である。また、その際のストランド状ポリマー温度は好ましくは20〜70℃、より好ましくは30〜65℃の範囲である。その他の方法として、取り出し口でのポリマーの熱酸化劣化を防ぐ方法としては、不活性ガスを吹き掛ける方法が挙げられる。
【0109】
この際、前記ポリアミド製造時に添加するリン化合物およびアルカリ金属化合物に由来するリン原子含有量(PC)とアルカリ金属原子含有量(M)が下記式(3)、(4)の範囲を満たすことが好ましい。
【0110】
100≦PC<400ppm (3)
1<(M/PC)モル比<7 (4)
【0111】
PCに関して、下限はより好ましくは110ppm、さらに好ましくは120ppm以上である。上限としては好ましくは370ppm、さらに好ましくは350ppm以下である。また、(M/PC)モル比に関しても、下限はより好ましくは1.3、さらに好ましくは1.5以上である。リン原子が100ppmより小さい場合は、ポリマーの色調を悪化させ、また、熱安定性に劣り、好ましくはない。また、逆にリン原子の含有量が400ppmより大きくなると、添加剤にかかる原料費が多くなり、コストアップの一因となったり、ポリエステル組成物を溶融成形する際のフィルターの異物詰りが大きくなり、後工程での生産性の低下が懸念される。また、(M/PC)モル比が1以下であると、粘度上昇が激しく、ゲル化物の混入が多くなる危険性がある。また、逆に(M/PC)モル比が7以上であると、反応速度が非常に遅く、生産性の低下が否めない。
【0112】
本発明に係るポリアミド製造時に用いられるリン化合物としては、下記化学式(A−1)〜(A−4)で表される化合物が挙げられる。
【0113】
【化5】

【0114】
【化6】

【0115】
【化7】

【0116】
【化8】

【0117】
(ただし、式(A−1)、(A−2)、(A−3)及び(A−4)において、R1〜R7は水素、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基またはアリールアルキル基、X1〜X5は水素、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アリールアルキル基またはアルカリ金属、あるいは各式中のX1〜X5とR1〜R7のうちそれぞれ1個は互いに連結して環構造を形成してもよい)
化学式(A−1)で表されるホスフィン酸化合物としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸マグネシウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸エチル、
【0118】
【化9】

【0119】
または
【0120】
【化10】

【0121】
の化合物およびこれらの加水分解物、ならびに上記ホスフィン酸化合物の縮合物などがある。
【0122】
化学式(A−2)で表されるホスホン酸化合物としてはホスホン酸、ホスホン酸ナトリウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸リチウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸マグネシウム、ホスホン酸カルシウム、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウムなどがある。
【0123】
化学式(A−3)で表される亜ホスホン酸化合物としては、亜ホスホン酸、亜ホスホン酸ナトリウム、亜ホスホン酸リチウム、亜ホスホン酸カリウム、亜ホスホン酸マグネシウム、亜ホスホン酸カルシウム、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチルなどがある。
【0124】
化学式(A−4)で表される亜リン酸化合物としては、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸などがある。
【0125】
本発明に係るポリアミドの製造の際には、下記化学式(B)で表されるアルカリ金属含有化合物を添加する。
Z−OR8 (B)
【0126】
(ただし、Zはアルカリ金属、R8は水素、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、−C(O)CH3または−C(O)OZ'、(Z'は水素、アルカリ金属))
【0127】
化学式(B)で表されるアルカリ化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、炭酸ナトリウムなどが挙げられるが、とりわけ、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウムを使用するのが好ましい。但し、いずれもこれらの化合物に限定されるものではない。
【0128】
本発明に係るポリアミドに前記リン化合物や前記アルカリ金属含有化合物を配合するには、ポリアミドの重合前の原料、重合中にこれらを添加するかあるいは前記重合体に溶融混合してもよい。また、これらの化合物は同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。
【0129】
本発明に係るポリアミドの相対粘度は、1.5〜4.0、好ましくは1.5〜3.0、より好ましくは1.7〜2.5、さらに好ましくは1.8〜2.0の範囲である。相対粘度が1.5以下では分子量が小さすぎて、本発明のポリエステル組成物からなる成形体の機械的性質に劣ることがある。逆に相対粘度が4.0以上では、重合に長時間を要し、ポリマーの劣化、ゲル化や好ましくない着色の原因となる場合があるだけでなく、生産性が低下しコストアップ要因となることがある。
【0130】
また、本発明に係るポリアミドのチップの形状は、シリンダ−型、角型、球状または扁平な板状等のいずれでもよい。その平均粒径は通常1.0〜5mm、好ましくは1.2〜4.5mm、さらに好ましくは1.5〜4.0mmの範囲である。例えば、シリンダ−型の場合は、長さは1.0〜4mm、径は1.0〜4mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、チップの重量は3〜50mg/個の範囲が実用的である。
【0131】
本発明のポリエステル組成物を構成する熱可塑性ポリエステルと部分芳香族ポリアミドとの混合割合は、前記熱可塑性ポリエステル100重量部に対して前記部分芳香族ポリアミド0.01重量部〜100重量部であることが好ましい。前記のポリエステル組成物からアルデヒド類の含有量が非常に少なく、香味保持性に優れた成形体を得たい場合の部分芳香族ポリアミドの添加量は、前記熱可塑性ポリエステル100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、下限はより好ましくは0.1重量部、さらに好ましくは0.5重量部であり、上限はより好ましくは4重量部、さらに好ましくは3重量部である。
【0132】
また、ガスバリヤ−性が非常に優れ、かつ実用性を損なわない透明性を持ち、かつアルデヒド類の含有量が非常に少なく香味保持性に優れた成形体を得たい場合は、前記熱可塑性ポリエステル100重量部に対して、好ましくは3〜100重量部、下限はより好ましくは4重量部、さらに好ましくは5重量部であり、上限はより好ましくは60重量部、さらに好ましくは30重量部である。
【0133】
部分芳香族ポリアミドの混合量が、熱可塑性ポリエステル100重量部に対して0.01重量部未満の場合は、得られた成形体のAA等のアルデヒド類の含有量が低減されにくく、成形体内容物の香味保持性が非常に悪くなる場合がある。また、部分芳香族ポリアミドの混合量が、熱可塑性ポリエステル100重量部に対して100重量部を超える場合は、得られた成形体の透明性が非常に悪くなり易く、また、成形体の機械的特性も低下することがある。
【0134】
本発明のポリエステル組成物のアセトアルデヒドなどのアルデヒド類の含有量は、50ppm以下、好ましくは30ppm以下、より好ましくは10ppm以下であることが望ましい。特に、本発明のポリエステル組成物が、ミネラルウオータ等の低フレーバー飲料用の容器や被覆物などの包装材料として用いられる場合には、前記ポリエステル組成物のアルデヒド類の含有量は10ppm以下、好ましくは8ppm以下、より好ましくは5ppm以下、もっとも好ましくは4ppm以下であることが望ましい。アルデヒド類含有量が50ppmを超える場合は、このポリエステル組成物から成形された成形体等の内容物の香味保持性の効果が悪くなる。また、これらの下限は製造上の問題から、1ppbであることが好ましい。
【0135】
本発明のポリエステル組成物を後記の測定法(5)に記載した方法で射出成形して得られた成形体のアセトアルデヒド含有量(At)(ppm)と、射出成形前のポリエステル組成物のアセトアルデヒド含有量(A0)(ppm)との差(At−A0)が、15ppm以下、好ましくは13ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下、最も好ましくは5ppm以下であることが好ましい。射出成形前後のアセトアルデヒド含有量の差 (At−A0)が15ppmを超える場合には、得られたポリエステル成形体などの香味保持性が悪くなる。また、射出成形前後のアセトアルデヒド含有量の差(At−A0)の下限は1ppmであり、これ以下に低減するにはポリエステル成形体などの生産条件を非生産的な条件にしなければならず、不経済である。
【0136】
前記の差(At−A0)が15ppm以下のポリエステル組成物は、例えば、アセトアルデヒド含有量が7ppm以下のポリエステル組成物、アセトアルデヒド含有量が10ppm以下で、かつ残存する重縮合触媒を失活処理した熱可塑性ポリエステルを構成成分とするポリエステル組成物、あるいは、アセトアルデヒド含有量が10ppm以下の熱可塑性ポリエステルと溶融成形時に重縮合触媒を失活できるリン化合物とを構成成分として含むポリエステル組成物を用いることによって得ることができるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0137】
熱可塑性ポリエステル中の重縮合触媒を失活処理する方法としては、例えば、溶融重縮合後や固相重合後に熱可塑性ポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法が挙げられる。また、重縮合触媒を失活させる別の手段として、リン化合物を溶融重縮合後または固相重合後のポリエステルの溶融物に添加、混合して重合触媒を不活性化する方法が挙げられる。使用されるリン化合物としては、本発明に係る熱可塑性ポリエステルの製造時に安定剤として使用することができると説明した前記のリン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また、2種以上を併用してもよい。但し、これらの方法に限定されるものではない。
【0138】
本発明のポリエステル組成物は、前記熱可塑性ポリエステルの低重合度オリゴマーの製造から溶融重縮合ポリマーの製造の任意の反応段階において所定量の部分芳香族ポリアミドを添加することによって製造することができる。例えば、前記の部分芳香族ポリアミドを細粒、粉状、溶融体など適当な形としてエステル化反応器や重縮合反応器などの反応器に添加したり、前記の反応器から次工程の反応器への前記ポリエステルの反応物の輸送配管中に前記部分芳香族ポリアミドまたは前記部分芳香族ポリアミドと前記ポリエステルとの混合物を溶融状態で導入したりして得ることができる。さらには必要に応じて得られたチップを高真空下または不活性ガス雰囲気下で固相重合して得ることも可能である。
【0139】
また、本発明のポリエステル組成物は、従来公知の方法により前記の熱可塑性ポリエステルと前記の部分芳香族ポリアミドを混合して得ることもできる。例えば、前記のポリアミドチップと前記のポリエステルチップとをタンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等でドライブレンドしたもの、さらにドライブレンドした混合物を一軸押出機、二軸押出機、ニーダー等で1回以上溶融混合したもの、さらには必要に応じて溶融混合物からのチップを高真空下または不活性ガス雰囲気下で固相重合したものなどが挙げられる。
【0140】
さらに、前記ポリアミドを粉砕して用いてもよい。粉砕した場合の粒径は約10メッシュ以下が好ましい。また、前記ポリアミドをヘキサフロロイソプロパノールなどの溶剤に溶解させた溶液を熱可塑性ポリエステルのチップの表面に付着させる方法、前記ポリアミド製の部材が存在する空間内で、前記熱可塑性ポリエステルを前記部材に衝突接触させて前記熱可塑性ポリエステルチップ表面に前記ポリアミドを付着させる方法などが挙げられる。
【0141】
本発明のポリエステル組成物には、必要に応じて他の添加剤、例えば、公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、酸素吸収剤、酸素捕獲剤、外部より添加する滑剤や反応中に内部析出させた滑剤、離型剤、核剤、安定剤、帯電防止剤、顔料などの各種の添加剤を配合してもよい。また、紫外線遮断性樹脂、耐熱性樹脂、使用済みポリエチレンテレフタレ−トボトルからの回収品等を適当な割合で混合することも可能である。
【0142】
本発明のポリエステル包装材料中のアセトアルデヒド含有量は15ppm以下、好ましくは13ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。本発明のポリエステル包装材料中のアセトアルデヒド含有量が15ppmを超える場合には、ポリエステル包装材料の香味保持性が悪くなる。また、ポリエステル包装材料中のアセトアルデヒド含有量の下限値は3ppmであり、これ以下に低減するには採算を度外視した成形となり問題である。ポリエステル包装材料中のアセトアルデヒド含有量を15ppm以下に維持するためには、アセトアルデヒド含有量が10ppm以下、好ましくは8ppm以下、さらに好ましくは6ppm以下、もっとも好ましくは4ppm以下のポリエステル組成物を用いることが好ましい。
【0143】
また、本発明のポリエステル包装材料中の環状エステルオリゴマーの含有量は、前記ポリエステルの溶融重縮合ポリエステルポリマーが含有する環状エステルオリゴマーの含有量の60%以下、好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下、特に好ましくは35%以下であることが好ましい。ポリエステル包装材料中の環状エステルオリゴマーの含有量が60%を超える場合には、例えば、中空成形体では成形の樹脂溶融時に環状エステルオリゴマーが増加し、加熱金型表面への前記オリゴマ−付着が急激に増加し、これが原因で得られた中空成形体の透明性が非常に悪化するとともに、香味保持性も悪くなり問題である。また、フィルムの場合にはシート状物製膜時や延伸時に前記オリゴマーがダイスの出口近辺や延伸ロール表面、熱固定室の内部に付着、蓄積して、これらがフィルム表面に付着して異物になったりして問題となる。また、これらの下限は製造上の問題や生産コストの問題から、溶融重縮合ポリエステルポリマーが含有する環状エステルオリゴマーの含有量の20%であることが好ましい。
【0144】
ポリエステル包装材料中の環状エステルオリゴマーの含有量を前記溶融重縮合ポリエステルが含有する環状エステルオリゴマーの含有量の60%以下に維持するためには、ポリエステル組成物中の前記環状エステルオリゴマーの含有量は、前記溶融重縮合ポリエステルが含有する環状エステルオリゴマーの含有量に対して、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下であることが好ましい。
【0145】
また、発明のポリエステル包装材料は、これを290℃で30分間溶融処理した時のアセトアルデヒド含有量の増加量(△AA)(ppm)が、15ppm以下、好ましくは13ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下、である。溶融処理した時のアセトアルデヒド含有量の増加量(△AA)(ppm)が15ppmを超える場合は、使用済み後のPETボトルなどのリサイクル回収品を一部用いてポリエステル包装材料を成形する際、得られたポリエステル包装材料のAA含有量を目的の値に低下させることが非常に困難となったり、また、バージンPETへのリサイクル回収品の混合比率を極端に低下させなければならなくなる。
【0146】
このような、290℃で30分間溶融処理した時のアセトアルデヒド含有量の増加量(△AA)(ppm)が15ppm以下のポリエステル包装材料は、例えば、アセトアルデヒド含有量が5ppm以下のポリエステル組成物、アセトアルデヒド含有量が8ppm以下で、かつ残存する重縮合触媒を失活処理した熱可塑性ポリエステルを構成成分とするポリエステル組成物、あるいは、アセトアルデヒド含有量が8ppm以下の熱可塑性ポリエステルと溶融成形時に重縮合触媒を失活できるリン化合物とを構成成分として含むポリエステル組成物を用いて、溶融成形時の樹脂温度を用いるポリエステルの融点より40℃以下、好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下に制御して成形する方法、または、さらに成形時の溶融滞留時間を20分以内、好ましくは10分以内、さらに好ましくは5分以内に制御して成形する方法などによって達成することができるが、これらに限定するものではない。
【0147】
また、本発明のポリエステル包装材料は、これを290℃で30分間溶融処理した時の環状エステルオリゴマーの増加量(△COLG2)が0.40重量%以下、好ましくは0.38重量%以下、さらに好ましくは0.35重量%以下であることが望ましい。290℃の温度で60分間溶融した時の環状エステルオリゴマーの増加量(△COLG2)が0.40重量%を越える場合は、成形体などの包装材料の透明性が非常に悪化するとともに、香味保持性も悪くなり問題である。また、使用済み後のPETボトルなどのリサイクル回収品を一部用いてポリエステル包装材料を成形する際、得られたポリエステル包装材料の透明性が悪くなり、バージンPETへのリサイクル回収品の混合比率を極端に低下させなければならなくなる。
【0148】
ポリエステル包装材料を290℃で30分間溶融処理した時の前記環状エステルオリゴマーの増加量(△COLG2)を0.40重量%以下に維持するためには、290℃の温度で30分間溶融処理した時の環状エステルオリゴマーの増加量(△COLG1)が0.40重量%以下、好ましくは0.35重量%以下、さらに好ましくは0.30重量%以下の熱可塑性ポリエステルを用いることが好ましい。290℃の温度で30分間溶融処理した時の環状エステルオリゴマーの増加量(△COLG1)が0.40重量%を越える熱可塑性ポリエステルを用いると、ポリエステル組成物を成形する際の樹脂溶融時に環状エステルオリゴマー量が増加し、例えば、中空成形体では加熱処理条件によって加熱金型表面へのオリゴマ−付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化する。
【0149】
290℃の温度で30分間溶融した時の環状エステルオリゴマーの増加量(△COLG1)が0.40重量%以下である熱可塑性ポリエステルは、溶融重縮合後や固相重合後に得られた熱可塑性ポリエステルに残存する重縮合触媒を失活処理することにより製造することができる。熱可塑性ポリエステル中の重縮合触媒を失活処理する方法としては、前記したと同様の方法を用いることができるが、これらに限定するものではない。
なお、熱可塑性ポリエステルについての、290℃の温度で30分間溶融処理した時の環状エステルオリゴマーの増加量(△COLG1)は、測定法の項で説明する方法によって求める。
【0150】
また、本発明のポリエステル組成物をフィルム用途に使用する場合には、滑り性、巻き性、耐ブロッキング性などのハンドリング性を改善するために、ポリエステル組成物中に炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等の無機粒子、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等の有機塩粒子やジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体等の架橋高分子粒子などの不活性粒子を含有させることが出来る。
【0151】
本発明のポリエステル組成物は、一般的に用いられる溶融成形法を用いて、フィルム、シート状物、容器、その他の成形体、モノフィラメントを含む繊維などを成形したり、また溶融押出法によって別の基材上にコートした被覆物などのポリエステル包装材料を形成することができる。
【0152】
また、本発明のポリエステル組成物は、前記のように溶融重縮合ポリマーの製造工程の任意の反応器や輸送配管に所定量の部分芳香族ポリアミドを添加し、目的とする特性を持つように溶融重縮合した後、溶融状態で直接成形工程に導入して成形体としたり、あるいは最終溶融重縮合反応器の後に設置された輸送配管中に所定量の部分芳香族ポリアミドを添加混合し、溶融状態で直接成形工程に導入して成形体とすることもできる。
【0153】
本発明のポリエステル組成物からなるシート状物は、それ自体公知の手段にて製造することができる。例えば、押出機とダイを備えた一般的なシート成形機を用いて製造することができる。
【0154】
また、このシート状物は、圧空成形、真空成形によって、カップ状やトレイ状に成形することもできる。また、本発明のポリエステル組成物からのポリエステル成形体は、電子レンジおよび/またはオ−ブンレンジ等で食品を調理したり、あるいは冷凍食品を加熱するためのトレイ状容器の用途にも用いることができる。この場合は、シ−ト状物をトレイ形状に成形後、熱結晶化させて耐熱性を向上させる。
【0155】
本発明のポリエステル組成物の用途が延伸フィルムである場合は、射出成形もしくは押出成形して得られたシート状物を、通常PETの延伸に用いられる一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のうちの任意の延伸方法を用いて成形される。
【0156】
以下には、PETの場合の種々の用途についての具体的な製法を簡単に説明する。
延伸フィルムを製造するに当たっては、延伸温度は通常は80〜130℃である。延伸は一軸でも二軸でもよいが、好ましくはフィルム実用物性の点から二軸延伸である。延伸倍率は一軸の場合であれば通常1.1〜10倍、好ましくは1.5〜8倍の範囲で行い、二軸延伸であれば縦方向および横方向ともそれぞれ通常1.1〜8倍、好ましくは1.5〜5倍の範囲で行えばよい。また、縦方向倍率/横方向倍率は通常0.5〜2、好ましくは0.7〜1.3である。得られた延伸フィルムは、さらに熱固定して、耐熱性、機械的強度を改善することもできる。熱固定は通常緊張下、120℃〜240、好ましくは150〜230℃で、通常数秒〜数時間、好ましくは数十秒〜数分間行われる。
【0157】
中空成形体を製造するにあたっては、PETから成形したブリフォームを延伸ブロー成形するが、従来PETのブロー成形で用いられている装置を用いることができる。具体的には例えば、射出成形または押出成形で一旦プリフォームを成形し、そのままあるいは口栓部、底部を加工後、それを再加熱し、ホットパリソン法あるいはコールドパリソン法などの二軸延伸ブロー成形法が適用される。この場合の成形温度、具体的には成形機のシリンダー各部およびノズルの温度は通常260〜290℃の範囲である。延伸温度ば通常70〜120℃、好ましくは90〜110℃で、延伸倍率は通常縦方向に1.5〜3.5倍、円周方向に2〜5倍の範囲で行えばよい。得られた中空成形体は、そのまま使用できるが、特に果汁飲料、ウーロン茶などのように熱充填を必要とする飲料の場合には一般的に、さらにブロー金型内で熱固定処理を行い、耐熱性を付与して使用される。熱固定は通常、圧空などによる緊張下、100〜200℃、好ましくは120〜180℃で、数秒〜数時間、好ましくは数秒〜数分間行われる。
【0158】
また、口栓部に耐熱性を付与するために、射出成形または押出成形により得られたプリフォ−ムの口栓部を遠赤外線や近赤外線ヒ−タ設置オ−ブン内で結晶化させたり、あるいはボトル成形後に口栓部を前記のヒ−タで結晶化させる。
【0159】
また、本発明のポリエステル組成物は、これを溶融押出し後に切断した溶融塊を圧縮成形して得たプリフォームを延伸ブロー成形する、所謂、圧縮成形法による延伸中空成形体の製造にも用いることができる。
【0160】
また、本発明のポリエステル組成物は、積層成形体や積層フィルム等の複合成形体においてフィルム状や塗膜状の形態をした一構成層としても用いることが出来る。特に、PETとの積層体の形で容器等の製造に使用される。積層成形体の例としては、本発明のポリエステル組成物からなる外層とPET内層との二層から構成される二層構造あるいは本発明のポリエステル組成物からなる内層とPET外層との二層から構成される二層構造の成形体、本発明のポリエステル組成物を含む中間層とPETの外層および最内層から構成される三層構造あるいは本発明のポリエステル組成物を含む外層および最内層とPETの中間層から構成される三層構造の成形体、本発明のポリエステル組成物を含む中間層とPETの最内層、中心層および最内層から構成される五層構造の成形体等が挙げられる。PET層には、他のガスバリア−性樹脂、紫外線遮断性樹脂、耐熱性樹脂、使用済みポリエチレンテレフタレ−トボトルからの回収品等を適当な割合で混合使用することができる。
【0161】
また、その他の積層成形体の例としては、ポリオレフィン等のポリエステル以外の樹脂との積層成形体、紙や金属板等の異種の基材との積層成形体が挙げられる。
【0162】
前記の積層成形体の厚みおよび各層の厚みには特に制限は無い。また、前記の積層成形体は、シ−ト状物、フィルム状物、板状物、中空体、容器等、種々の形状で使用可能である。
【0163】
前記の積層体の製造は、樹脂層の種類に対応した数の押出機と多層多種ダイスを使用して共押出しにより行うこともできるし、また、樹脂層の種類に対応した数の射出機と共射出ランナ−および射出型を使用して共射出により行うこともできる。
【0164】
また、本発明のポリエステル組成物の別の用途は、ラミネート金属板の片面あるいは両面にラミネートするフィルムである。用いられる金属板としては、ブリキ、ティンフリースチール、アルミニウム等が挙げられる。
【0165】
ラミネート法としては、従来公知の方法が適用でき、特に限定されないが、有機溶剤フリーが達成でき、残留溶剤による食料品の味や臭いに対する悪影響が回避できるサーマルラミネート法で行うことが好ましい。なかでも、金属板の通電加工によるサーマルラミネート法が特に推奨される。また、両面ラミネートの場合は、同時にラミネートしてもよいし、逐次でラミネートしてもよい。
【0166】
なお、接着剤を用いてフィルムを金属板にラミネートできることはいうまでもない。
また、金属容器は、前記ラミネート金属板を用いて成形することによって得られる。前記金属容器の成形方法は特に限定されるものではない。また、金属容器の形状も特に限定されるものではないが、絞り成型、絞りしごき成型、ストレッチドロー成型等の成型加工により製缶されるいわゆる2ピース缶への適用が好ましいが、例えばレトルト食品やコーヒー飲料等の食料品を充填するのに好適な天地蓋を巻締めて内容物を充填する、いわゆる3ピース缶へも適用可能である。
【0167】
なお、本発明における、主な特性値の測定法を以下に説明する。
【実施例】
【0168】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定させるものではない。なお、本明細書中における主な特性値の測定法を以下に説明する。
(評価方法)
(1)ポリエステルの極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。
【0169】
(2)ポリエステル中に共重合されたジエチレングリコ−ル含有量
メタノ−ルにより分解し、ガスクロマトグラフィ−によりジエチレングリコ−ル量を定量し、全グリコ−ル成分に対する割合(モル%)で表した。
【0170】
(3)環状エステルオリゴマーの含有量
冷凍粉砕した試料300mgをヘキサフルオロイソプロパノ−ル/クロロフォルム混合液(容量比=2/3)3mlに溶解し、さらにクロロフォルム30mlを加えて希釈する。これにメタノ−ル15mlを加えてポリマ−を沈殿させた後、濾過する。濾液を蒸発乾固し、ジメチルフォルムアミド10mlで定容とし、高速液体クロマトグラフ法により環状エステルオリゴマーを定量した。
PETおよびPENの場合は環状3量体(CT含有量)である。
【0171】
(4)アセトアルデヒド含有量(以下「AA含有量」という)
試料/蒸留水=1グラム/2ccを窒素置換したガラスアンプルに入れた上部を溶封し、160℃で2時間抽出処理を行い、冷却後抽出液中のアセトアルデヒドを高感度ガスクロマトグラフィ−で測定し、濃度をppmで表示した。
【0172】
(5)ポリエステル組成物の射出成形前後のアセトアルデヒド含有量の差(以下「At−A0」という)(ppm)
窒素気流下で100℃で乾燥したポリエステル組成物を名機製作所社製M−150C―DM射出成形機により、(13)の方法で段付成形板を射出成形する。2mm厚みのプレート(図1のA部)より試料を採取し、(4)の測定方法によってアセトアルデヒド含有量(At)を求め、下記の式より射出成形前後のアセトアルデヒド含有量の差を求める。
【0173】
射出成形前後のアセトアルデヒド含有量の差(At−A0)(ppm)
=射出成形後の段付成形板のアセトアルデヒド含有量(At)(ppm)
−射出成形前の乾燥したポリエステル組成物のアセトアルデヒド含有量(A0)(ppm)
【0174】
(6)ポリエステル包装材料の溶融処理時のアセトアルデヒド含有量の増加量(以下「△AA」という)(ppm)
ポリエステル包装材料より約1〜3mm角の試料3gを採取し、これをガラス製試験管に入れて約70℃で真空乾燥したあと常圧窒素雰囲気下で290℃のオイルバスに30分浸漬させて溶融処理する。溶融処理時のアセトアルデヒド含有量の増加量は、次式により求める。
【0175】
溶融処理時のアセトアルデヒド含有量の増加量(ppm)(△AA)
=溶融処理後のアセトアルデヒド含有量(ppm)
−溶融処理前の乾燥後のアセトアルデヒド含有量(ppm)
【0176】
(7)ポリエステルの溶融処理時の環状エステルエステルオリゴマー増加量(以下、「△COLG1」という)(重量%)およびポリエステル包装材料の溶融処理時の環状エステルオリゴマー増加量(以下、「△COLG2」という)(重量%)
ポリエステルチップあるいはポリエステル包装材料、3gをガラス製試験管に入れて約70℃で真空乾燥した後、常圧窒素雰囲気下で290℃のオイルバスに30分浸漬させ溶融させる。ポリエステル包装材料は約1〜3mm角の大きさにカットして測定に供する。
【0177】
ポリエステルの溶融処理時の環状エステルオリゴマー増加量(△COLG1)およびポリエステル包装材料の溶融処理時の環状エステルオリゴマー増加量(△COLG2)は、次式により求める。
【0178】
ポリエステルの溶融処理時の環状エステルオリゴマー増加量(重量%)(△COLG1
=溶融処理後の環状エステルオリゴマー含有量(重量%)
−溶融処理前のポリエステルの環状エステルオリゴマー含有量(重量%)
【0179】
ポリエステル包装材料の溶融処理時の環状エステルオリゴマー増加量(△COLG2
=溶融処理後の環状エステルオリゴマー含有量(重量%)
−溶融処理前のポリエステル包装材料の環状エステルオリゴマー含有量(重量%)
【0180】
(8)ポリアミドの相対粘度(以下「Rv」という)
試料0.25gを96%硫酸25mlに溶解し、この溶液10mlをオストワルド粘度管にて20℃で測定、下式より求めた。
【0181】
Rv=t/t0
0:溶媒の落下秒数
:試料溶液の落下秒数
【0182】
(9)ポリアミド中のリン化合物の構造分析(31P−NMR分析)
試料340〜350mgを重ベンゼン/1,1,1,3,3,3―ヘキサフロロイソプロパノール=1/1(vol比)混合溶媒2.5mlに室温で溶解させ、トリ(t−ブチルフェニール)リン酸(以下、TBPPAと略称)をPとしてポリアミド樹脂に対して100ppm添加し、さらに室温でトリフロロ酢酸を0.1ml加え、30分後にフーリエ変換核磁気共鳴装置(BRUKER社製AVANCE500)にてリン化合物の構造分析(31P−NMR分析)を行った。なお、31P共鳴周波数は202.5MHz、検出パルスのフリップ角は45°、データ取り込み時間1.5秒、遅延時間1.0秒、積算回数1000〜20000回、測定温度は室温、プロトン完全デカップリングの条件で分析を行った。
【0183】
得られたNMRチャートより、各リン化合物のピーク積分値を算出し、下記式Aから構造式(1)で表されるリン化合物と構造式(2)で表されるリン化合物とのモル比を求めた。
【0184】
リン化合物のモル比=XP1/XP2 ・・・・(式A)
【0185】
(XP1は構造式(1)で表されるリン化合物のピーク積分値、XP2は構造式(2)で表されるリン化合物のピーク積分値である。)
【0186】
次に、TBPPA(トリ(t−ブチルフェニール)リン酸)に対応するPピーク積分値を100ppmとし、15ppm〜−15ppmの領域に観察される、ポリアミド中の各Pピーク積分値の合計である全Pピーク積分値PNを算出する。
【0187】
次に、NMRスペクトルに観察される全てのリン化合物のPピーク相対値(Ps)を下記式Bから求める。
【0188】
Pピーク相対値(Ps)=PN/PC ・・・・(式B)
【0189】
(PNはポリアミドの全Pピーク積分値(ppm)、PCはポリアミド中のリン原子含有量(ppm)である。ここで、ポリアミド中のリン原子含有量PCは下記(11)の分析方法により求める。Pピーク相対値が1より大きい場合は、Pピーク相対値=1とする。)
【0190】
次に、ポリアミド中の構造式(1)の構造で検出されるリン化合物の割合(P1r)及び構造式(2)の構造で検出されるリン化合物の割合(P2r)を下記式C、Dから求める。
【0191】
P1r=Ps×(構造式(1)で表されるリン化合物のピーク積分値XP1)/PN
・・・・(式C)
【0192】
P2r=Ps×(構造式(2)で表されるリン化合物のピーク積分値XP2)/PN
・・・・(式D)
【0193】
なお、Pピーク相対値が1より小さい場合、ポリアミド中の各リン化合物の割合を合計した値が100にならないが、これは、上記の方法によるポリアミドの溶液作成で溶解しないリン化合物が存在するためである。
【0194】
実施例及び比較例に用いたポリアミドにおいては、構造式(1)に相当するリン化合物は次亜リン酸(下記(化11))であり、この構造に起因するピークは9〜12ppmの範囲に見られた。また、構造式(2)に相当するリン化合物は亜リン酸(下記(化12)であり、この構造に起因するピークは4〜7ppmの範囲に見られた。
【0195】
【化11】

【0196】
【化12】

【0197】
次いで、下記の式により、構造式(1)の構造で検出されるリン化合物由来のリン原子含有量(P1)及び構造式(2)の構造で検出されるリン化合物由来のリン原子含有量(P2)を求める。
【0198】
構造式(1)の構造で検出されるリン化合物由来のリン原子含有量(P1)(ppm)=PC×P1r
構造式(2)の構造で検出されるリン化合物由来のリン原子含有量(P2)(ppm)=PC×P2r
【0199】
図1にPのNMRスペクトルを示す。
【0200】
(10)チップのカラーb(Co−b)
カラーメーター(日本電色社製、Model 1001DP)を使用し、カラーb値を測定した。
【0201】
(11)ポリアミドのP含有量(PC)の分析
試料を炭酸ソーダ共存下において乾式灰化分解するか、硫酸・硝酸・加塩素酸系または硫酸・加酸化水素水系において湿式分解し、リンを正リン酸とした。次いで、1mol/L硫酸溶液中においてモリブデン酸塩を反応させて、リンモリブデン酸とし、これを硫酸ヒドラジンで還元して生ずるヘテロポリ青の830nmの吸光度を吸光光度計(島津製作所社製、UV−150−02)で測定して比色定量した。
【0202】
(12)ポリアミドのNa含有量(Na)の分析
試料を白金ルツボにて、灰化分解し、6mol/L塩酸を加えて蒸発乾固した。1.2mol/L塩酸で溶解し、その溶液を原子吸光(島津製作所社製、AA−640−12)で定量した。
【0203】
(13)段付成形板の成形
ヤマト科学社製真空乾燥器DP61型を用いて140℃で16時間程度減圧乾燥したポリエステル組成物を名機製作所社製射出成形機M−150C−DM型射出成形機により図1、図2に示すようにゲート部(G)を有する、2mm〜11mm(A部の厚み=2mm、B部の厚み=3mm、C部の厚み=4mm、D部の厚み=5mm、E部の厚み=10mm、F部の厚み=11mm)の厚さの段付成形板を射出成形した。
【0204】
成形中に吸湿を防止するために、成形材料ホッパー内は乾燥不活性ガス(窒素ガス)パージを行った。M−150C−DM射出成形機による可塑化条件としては、フィードスクリュウ回転数=70%、スクリュウ回転数=120rpm、背圧0.5MPa、シリンダー温度はホッパー直下から順に45℃、250℃、以降ノズルを含め290℃に設定した。射出条件は射出速度および保圧速度は20%、また、成形品重量が146±0.2gになるように射出圧力および保圧を調整し、その際保圧は射出圧力に対して0.5MPa低く調整した。
【0205】
射出時間、保圧時間はそれぞれ上限を10秒、7秒,冷却時間は50秒に設定し、成形品取出時間も含めた全体のサイクルタイムは概ね75秒程度である。
【0206】
金型には常時、水温10℃の冷却水を導入し温調するが、成形安定時の金型表面温度は22℃前後である。
成形品特性評価用のテストプレートは、成形材料導入し樹脂置換を行った後、成形開始から11〜18ショット目の安定した成形品の中から任意に選ぶものとした。2mm厚みのプレート(図1のA部)を(5)の測定に使用する。
【0207】
(14)中空成形体の成形
窒素ガスを用いた乾燥機で乾燥したPETの所定量および窒素ガスを用いた乾燥機で乾燥した部分芳香族ポリアミドの所定量を用いて、各機製作所社製M−150C―DM射出成型機により樹脂温度290℃でプリフォ−ムを成形した。このプリフォ−ムの口栓部を自家製の口栓部結晶化装置で加熱結晶化させた後、コ−ポプラスト社製LB−01E延伸ブロ−成型機を用いて二軸延伸ブロ−成形し、引き続き約145℃に設定した金型内で熱固定し、1000ccの中空成形体を得た。
【0208】
PENの場合は、樹脂温度を300℃とし、また、熱固定処理を実施しない以外は、上記と同様にして1000ccの中空成形体を得た。
【0209】
(15)中空成形体の透明性
(14)で2000本成形後に得られた中空成形体の外観を目視で観察し、下記のように評価した。
【0210】
◎ : 透明である
○ : 実用的な範囲で透明であり、未溶融物等の異物は見られない
△ : 実用的な範囲で透明であるが、未溶融物等の異物が認められる
× : 透明性に劣る、着色が認められる、又は未溶融物が見られる
【0211】
(16)中空成形体の黄変度
(14)の2000本成形後に得られた中空成形体の外観を目視で観察し、下記のように評価した。
◎ : 着色は見られない
○ : 着色が見られるが、実用的な範囲である
× : 着色がひどく、実用性に乏しい
【0212】
(17)官能試験
上記の(14)で得た中空成形体に沸騰した蒸留水を入れ密栓後30分保持し、室温へ冷却し室温で1ヶ月間放置し、開栓後風味、臭いなどの試験を行った。
【0213】
比較用のブランクとして、蒸留水を使用。官能試験は10人のパネラーにより次の基準により実施し、平均値で比較した。
【0214】
(評価基準)
◎ : 異味、臭いを感じない
○ : ブランクとの差をわずかに感じる
△ : ブランクとの差を感じる
× : ブランクとのかなりの差を感じる
×× : ブランクとの非常に大きな差を感じる
【0215】
(18)酸素透過量(cc/容器1本・24hr・atm)
Modern Controls社製酸素透過量測定器OX−TRAN100により、1000ccのボトル1本当りの透過量として20℃、0%RHで測定した。
【0216】
(実施例および比較例に使用したポリエチレンテレフタレ−ト(PET))
試験に用いたPETはすべて日本ユニペット(株)のPETである。その特性を表1に示す。
RT543CTは固相重合後に熱水処理して触媒を失活処理したもの、RT543Gは固相重合品である。
【0217】
なお、これら全てのファイン含有量はすべて50〜70ppm以下であった。
ファイン含有量は下記のようにして測定した。すなわち、樹脂約0.5kgを、JIS−Z8801による呼び寸法1.7mmの金網をはった篩(直径30cm)の上に乗せ、テラオカ社製揺動型篩い振トウ機SNF−7で1800rpmで1分間篩った。この操作を繰返し、樹脂を合計20kg篩った。篩の下にふるい落とされたファインは、イオン交換水で洗浄し岩城硝子社製G1ガラスフィルターで濾過して集めた。これらをガラスフィルターごと乾燥器内で100℃で2時間乾燥後、冷却して秤量した。再度、イオン交換水で洗浄、乾燥の同一操作を繰返し、恒量になったことを確認し、この重量からガラスフィルターの重量を引き、ファイン重量を求めた。ファイン含有量は、ファイン重量/篩いにかけた全樹脂重量、である。
【0218】
【表1】

【0219】
(実施例に使用したポリエチレンナフタレート)
試験に用いたPENはすべて東洋紡績(株)のPENである。その特性を表2に示す。
PN650は溶融重縮合したプレポリマーを固相重合して得たものである。なお、前記と同じ方法で測定したファイン含有量は、すべて100〜200ppm以下であった。
【0220】
【表2】

【0221】
(実施例および比較例に使用した部分芳香族ポリアミド)
用いたポリアミドは、耐圧重縮合釜中でメタキシリレンジアミンとアジピン酸あるいは下記に示した第三成分をNaOHやNaH2PO2・H2Oの存在下において加圧下および常圧下に加熱して重縮合する回分式方法により得たものである。
【0222】
試験に使用したNy−MXD6(A)〜Ny−MXD6(M)の特性を表3に示す。
【0223】
(Ny−MXD6(A))
攪拌機、分縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた調整缶に精秤したメタキシリレンジアミンおよびアジピン酸および水を所定量加え、窒素ガスにより加圧、放圧の操作を5回繰返し、窒素置換を行い、雰囲気窒素中の酸素含有量9ppm以下とした。その時の内温は80℃とした。さらに、添加剤として、NaOHやNaH2PO2・H2Oを加え、攪拌して均一な塩水溶液とした。この際も、雰囲気窒素中の酸素含有量9ppm以下に維持した。
【0224】
この溶液を攪拌機、分縮機、温度計、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた反応缶に移送し、缶内温度190℃、缶内圧1.0MPaとして、徐々に昇温させて留出する水を系外に除き、缶内温度を230℃にした。この時までの反応時間は4.5時間であった。その後、缶内圧を60分かけて、徐々に放圧し、常圧に戻した。さらに温度を255℃まで上昇させ、常圧で20分攪拌し、所定の粘度まで到達させ、反応を終了した。その後、20分間放置し、ポリマー中の気泡を取り除き、反応缶下部より溶融樹脂を押出し、冷水で冷却固化しながらキャスティングを行った。キャスティング時間は約70分間であり、また、冷却固化した樹脂温度は50℃であった。
【0225】
なお、ナトリウム量としては次亜リン酸ナトリウムと水酸化ナトリウムのナトリウム原子の合計量としてリン原子の2.7倍モルになるようにした。
【0226】
(Ny−MXD6(B))
重合時間を延長する以外はNy−MXD6(A)と同様の重合方法により得たものである。
【0227】
(Ny−MXD6(C))
添加剤の使用量を変える以外は、Ny−MXD6(A)と同様の重合方法により得たものである。
【0228】
(Ny−MXD6(D))
添加剤の使用量を変える以外は、Ny−MXD6(A)と同様の重合方法により得たものである。
【0229】
(Ny−MXD6(E))
上記のリン原子含有化合物、およびアルカリ化合物は添加せずに、Ny−MXD6(A)と同様の重合方法により得たものである。
【0230】
(Ny−MXD6/MXDI(F))
原料としてメタキシリレンジアミン、アジピン酸、イソフタル酸を表3の組成に対応するように調整すること以外はNy−MXD6(A)と同様の重合方法により得たものである。
【0231】
(Ny−MXD6/66(G))
原料としてメタキシリレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸を表3の組成に対応するように調整すること以外はNy−MXD6(A)と同様の重合方法により得たものである。
【0232】
【表3】

【0233】
(実施例1)
RT543CT、100重量部に対してNy−MXD6(A)0.3重量部を用いて、評価方法の項に記載した種々の評価を実施した。
【0234】
得られたポリエステル組成物および中空成形体の特性を表4に示す。
ポリエステル組成物のAA含有量は3.0ppm、射出成形前後のアセトアルデヒド含有量の差(At−A0)は8ppmであり、中空成形体の着色は認められず、透明であり、AA含有量は10ppm、△AAは13ppm、官能試験評価は「○」(ブランクとの差をわずかに感じる)、また、CTは0.35重量%、△CTは0.10重量%と問題なかった。
【0235】
(実施例2〜8)
表4に示したポリエステル組成物について、実施例1と同様にして種々の評価を行った。
得られたポリエステル組成物および中空成形体の特性を表4に示す。
結果はすべて問題なかった。
【0236】
(比較例1、2)
表4に示したポリエステル組成物について、実施例1と同様にして種々の評価を行った。
得られたポリエステル組成物および中空成形体の特性を表4に示す。評価結果はすべて悪かった。
【0237】
【表4】

【0238】
(実施例9〜12)
表5に示したポリエステル組成物について、評価方法の項に記載した種々の評価を実施した。
得られたポリエステル組成物および中空成形体の特性を表4に示す。
結果はすべて問題なかった。
【0239】
(比較例3、4)
表5に示したポリエステル組成物について、実施例9と同様に種々の評価を実施した。
得られたポリエステル組成物および中空成形体の特性を表5に示す。評価結果はすべて悪かった。
【0240】
(比較例5)
PET100重量部を用いて、実施例9と同様にして中空成形体を成形し、評価を行った。
得られた中空成形体の特性の評価結果を表5に示す。
中空成形体のAA含有量は高く、官能試験も問題があった。
【0241】
【表5】

【0242】
(実施例13〜15)
表6に示したポリエステル組成物について、評価方法の項に記載した種々の評価を実施した。
得られたポリエステル組成物および中空成形体の特性を表6に示す。
結果はすべて問題なかった。
【0243】
(比較例6、7)
表6に示したポリエステル組成物について、実施例13と同様に種々の評価を実施した。
得られたポリエステル組成物および中空成形体の特性を表6に示す。評価結果はすべて悪かった。
【0244】
【表6】

【0245】
以上、本発明のポリエステル組成物について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0246】
本発明のポリエステル組成物によれば、透明性、熱安定性および香味保持性、あるいは透明性、熱安定性、香味保持性およびガスバリヤ−性に優れたポリエステル成形体やポリエステル被覆物などのポリエステル包装材料が得られ、また、本発明のポリエステル包装材料は、上述したように、清涼飲料などの飲料用包装材料として非常に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0247】
【図1】代表的な例の31P−NMRスペクトル
【図2】実施例において使用した段付成形板の平面図
【図3】図2の段付成形板の側面図
【符号の説明】
【0248】
A 段付成形板の部位A部
B 段付成形板の部位B部
C 段付成形板の部位C部
D 段付成形板の部位D部
E 段付成形板の部位E部
F 段付成形板の部位F部
G 段付成形板のゲート部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリエステル100重量部と部分芳香族ポリアミド0.01〜30重量部とから主としてなるポリエステル組成物であって、前記部分芳香族ポリアミド中のリン原子含有量(P1)が10ppm以上であることを特徴とするポリエステル組成物。
(ただし、P1は、前記部分芳香族ポリアミドを31P−NMR測定溶媒に溶解してトリフロロ酢酸添加後、構造分析した場合、下記構造式(1)の構造で検出されるリン化合物由来のリン原子含有量である。)
【化1】

(ただし、R1、R2は水素、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基またはアリールアルキル基、X1は水素)
【請求項2】
部分芳香族ポリアミド中のリン原子含有量(P2)が30ppm以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル組成物。
(ただし、P2は、前記部分芳香族ポリアミドを31P−NMR測定溶媒に溶解してトリフロロ酢酸添加後、構造分析した場合、下記構造式(2)の構造で検出されるリン化合物由来のリン原子含有量である。)
【化2】

(ただし、R3は水素、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基またはアリールアルキル基、X2、X3は水素)
【請求項3】
熱可塑性ポリエステルが、エチレンテレフタレ−トを主たる繰返し単位とするポリエステルであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のポリエステル組成物。
【請求項4】
アセトアルデヒド含有量が10ppm以下であることを特徴とする請求項3に記載のポリエステル組成物。
【請求項5】
ポリエステル組成物を射出成形して得られた成形体のアセトアルデヒド含有量(At)(ppm)と、射出成形前のポリエステル組成物のアセトアルデヒド含有量(A0)(ppm)との差(At−A0)が、15ppm以下であることを特徴とする請求項3または4のいずれかに記載のポリエステル組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル組成物からなることを特徴とするポリエステル包装材料。
【請求項7】
アセトアルデヒド含有量が15ppm以下であることを特徴とする請求項6に記載のポリエステル包装材料。
【請求項8】
環状エステルオリゴマー含有量が、溶融重縮合熱可塑性ポリエステルが含む環状エステルオリゴマー含有量の60%以下であることを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載のポリエステル包装材料。
【請求項9】
290℃で30分間溶融処理した時のアセトアルデヒド含有量の増加量(△AA)(ppm)が15ppm以下、あるいは290℃で30分間溶融処理した時のアセトアルデヒド含有量の増加量(△AA)(ppm)が15ppm以下であって、かつ、環状エステルオリゴマーの増加量(△COLG2)(重量%)が0.40重量%以下、であることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のポリエステル包装材料。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれかに記載のポリエステル包装材料が、中空成形体、シ−ト状物あるいはこのシート状物を少なくとも一方向に延伸してなる延伸フィルム、または被覆物のいずれかであることを特徴とするポリエステル包装材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−63467(P2007−63467A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253455(P2005−253455)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】