説明

ポリエステル繊維の疎水化製造方法並びにスーツ地、シャツ地、ボトム、セーター、コートなど防寒衣、スキーウエア、ライフジャケット等のアウター類並びに靴下、ショーツ、ブラジャー等の下着類並びに水着類並びに傘、鞄、靴等の雑貨類並びにシーツ、テーブルクロス、シャワーカーテン、テント、セールクロス、各種カーシートのシート類並びに魚網、オイルフェンス等の資材類

【課題】本発明は、通常のポリエステルの染色工程、乾燥工程の中でゴミやホコリの付着の原因となる静電気の発生を抑制して(防汚)水系洗濯の摩擦における耐久性を向上させ疎水化効果を持続させる(水系防汚)機能を付与させイージーケアを実現させる、ポリエステル繊維の疎水化製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ポリエステル繊維を分散染料を用いて染色する際、親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物及び多価アミノ化合物を共存させポリエステル繊維を疎水化の機能性を付与させるポリエステル繊維の疎水化製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル繊維を染色する際に分散染料と親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物と多価アミノ化合物を共存させ「浴中吸尽法」を用いて第1次の30℃〜140℃までの昇温熱処理を付した後、第2次の60℃〜190℃の乾熱処理を付す「連続乾熱法」を含む工程を有しポリエステル繊維のイージーケア及び耐久性のある疎水性を付与向上させるものである。より具体的には本発明は、ポリエステル繊維構造物を染色する際、一般式(1)で表される2,6−ジハロゲノ−4−Y−1,3,5−トリアジン誘導体、分散染料、水溶性の多価アミノ化合物を共存させ「浴中吸尽法」を用いて第1次の30℃〜140℃までの昇温熱処理を付与した後、疎水化を得る向上剤として水溶性または水分散性(以下、水系と記す)パーフルオロアルキルアクリレートと、助剤として水系シリコーンソフナー、水系メラミン尿素誘導体及び水系ウレタンから選ばれた少なくとも一種を併用し第2次の60℃〜190℃の乾熱処理を付す「連続乾熱法」を含む工程を有しポリエステル繊維のイージーケア(防汚)及び耐久性のある疎水化性(水系防汚)を付与向上させポリエステル繊維の用途を拡大する疎水化製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維は、衣料、産業用繊維にとどまらず、医療分野をはじめ幅広い分野に拡がっている。しかし天然素材や再生繊維、セロロース系繊維と比較して繊維内部に親水基を有していなく、吸放湿性が無く繊維構造上公定水分率(平衡水分率)が低い事が知られている。
【0003】
更に電気の不導体であり激しく摩擦される事によって多量の静電気が発生して蓄積される事が知られている。
【0004】
しかし天然繊維、再生繊維に比べて分散染料で染色されたポリエステル繊維は洗濯等による洗濯堅牢度も良く摩擦によってフィルビル、ピリング等の発生も抑制され粗硬化の原因となるフェルト化を引き起こさないことで剛柔性に富み防縮性を含めて形態安定性が優れているという特性がある。
【0005】
従来からポリエステル繊維は一般的な衣料、スポーツウエア、インナー、水着、下着類更には傘、鞄、靴等の雑貨類、シャワーカーテン、テント、などのシート類、魚網、オイルフェンスなどの産業・工業用資材類など幅広い用途に使用されている
更なる機能として疎水化におけるポリエステル繊維に水や雨などが浸み込まない特性が強く要求されてきた。
【0006】
しかし、ポリエステル繊維は平衡水分率が低く分散染料を用いて染色する際には水を用いるため静電気の発生は無いが乾燥時には該繊維構造物が電気の不導体であるため多量の静電気を発生、帯電を防止するために表面作用型高分子薬剤の帯電防止剤及びイオン性を保持している導電剤を付着、被膜化させる。
【0007】
この様に染色、加工されたポリエステル繊維に疎水化の要求に対して開発されたシリコーン系やフッ素系撥水剤を付与し合成樹脂で被膜化が積層された製品が提案されている(特許文献1)。
【0008】
しかしこれらの疎水化技術について使用者からは充分に満足したとの評価を得られていない。
【0009】
その原因としては前記のとおりポリエステル繊維はその該繊維構造物の特性による。
【0010】
ポリエステル繊維は平衡水分率が低く、帯電列(北川徹三氏の学説からなる)によると高い序列の正(−)に帯電するとされている。ポリエステル繊維は摩擦される事により正(−)の摩擦電機が発生し、該繊維構造物が電気の不導体である事から発生した静電気は逃げてゆく事ができない。このため多量に蓄積される事になる。このような静電気の発生は有益な事もあるが、有害な事の方が多い。ポリエステル繊維の帯電を防止する技術として表面作用型高分子薬剤の帯電防止剤や導電剤を付着させ化学装飾技術が代表例とされている。これには2つの理由があると考えられている。第1に表面作用型高分子薬剤は、摩擦係数を低下させるので静電気の発生が低減される。第2にこれらの薬剤に導電体であるイオン性を保持させ、たとえ摩擦によって静電気が発生しても、逃がしてしまう事により静電気の蓄積を防ぐ。しかし、これらの表面作用型の高分子薬剤はポリエステル繊維に被膜化して付着させているだけであるから、温度や湿度などの環境要因による経時変化や度重なる摩擦等による劣化により帯電防止機能が低下する等、耐久性に問題点がある。
【0011】
この様に染色加工処理されたポリエステル繊維に疎水化を付与するためシリコーン系やフッ素系の撥水剤を合成樹脂を用いて加工を実施する。
【0012】
ポリエステル繊維に疎水化を付与するため多くの分野、複合、合成のコンプレックス技術は帯電防止剤の付着量やイオン性バランス及び疎水性を付与するためのシリコーン系やフッ素系の撥水剤を合成樹脂を用いて加工する技術は高温条件下、加工工程が複雑で技術的にも難しいとされている。
【0013】
しかし、これらの加工を実施し疎水化を実現させても使用者からは充分に満足したとの評価は得られていないのが現状である。第一点に水系洗濯において摩擦により帯電防止効果が無くなり静電気が発生するという点にある。単に帯電防止剤はポリエステル繊維の表面に被膜して付着しているのみで、水系洗濯で簡単に脱落してしまう。疎水化を訴求するためシリコーン系やフッ素系撥水剤を合成樹脂で被膜化すると摩擦によって脱落、温度や湿度の経時変化によって摩擦係数が上がり静電気の発生により、ゴミやホコリが付着する要因となる。第二点に疎水化を付与するにあたり撥水剤の構成や塗布量のアップがなされているが合成樹脂によるポリエステル繊維表面への積層(ラミネート)や被膜(コーティング)のため該繊維構造物の粗硬化、強伸度の低下、着衣快適性の低さなど疎水性を付与されたポリエステル繊維の品質にある。更には帯電防止と疎水性との複合、合成のコンプレックス技術で再現性が難しく加工失敗すると復元できないなど有害な薬害や合成樹脂の使用に起因する安全性にも問題がある。
【0014】
また、本発明において後で説明するように親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン化合物を用いて天然繊維や再生繊維を処理することについて、有機天然繊維製品の改質加工技術として羊毛、絹、皮革、木綿、麻、再生繊維等の有機天然繊維材料に親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン化合物を用いて2段階の熱処理加工を施して、それにより疎水性を付与する加工手法が提案されている(特許文献2)。
【0015】
しかし、この特許文献2に記載の従来技術は繊維構造物において相違するものである。
【0016】
すなわち、本発明の目的ポリエステル繊維への疎水性を付与、向上させ、水系防汚性、摩擦撥水の耐久性、静電気の発生を抑制してゴミやホコリが付着することを防ぐ防汚性などを付与し向上させイージーケアを実現し生活資材、産業・工業資材への活用など広い用途開拓する事であり、その目的に沿ったポリエステル繊維を提供せんとするものである。
【0017】
【特許文献1】特開平6−57641号公報
【特許文献2】特開2008−63708号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明に係るポリエステル繊維の疎水化製造方法はポリエステル繊維を染色する際に分散染料、親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン化合物及び多価アミノ化合物を共存させ「浴中吸尽法」を用いる。
【0019】
「浴中吸尽法」は、昇温熱処理を用いて浴液温度30℃〜140℃まで40分間〜60分間かけて徐々に昇温し100℃〜140℃を10分〜60分処理するという意味である。徐々にとは急激かつ不均一に昇温すると分散染料の染色ムラの発生及び親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン化合物が加水分解や凝集を引き起こしポリエステル繊維への不均一な被膜化を実施するため、より具体的に昇温速度が2℃/分以下であることが好ましい。
【0020】
また、本発明において用いる、多価アミノ化合物として分子数20000以下の水溶性の加水分解シルクを用いる。
【0021】
更に本発明方法において第1次の熱処理時間30℃〜140℃においてはポリエステル繊維へ疎水化製造方法として分散染料、親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン化合物及び多価アミノ化合物を共存させ、「浴中吸尽法」を用いる。染色及び反応をより均一にする目的で酢酸、リンゴ酸、お及びクエン酸から選ばれた少なくとも1種を添加してPhを3.5〜6.5の範囲にする事が好ましい。
【0022】
第2次熱処理として「連続乾熱法」を用いて60℃〜190℃の工程を有し、ポリエステル繊維への疎水化製造方法として、疎水性向上剤として水溶性または水系のパーフルオロアルキルアクリレートと、助剤として水系シリコーンソフナー、水系メラミン尿素誘導体及び水系ウレタンから選ばれた少なくとも一種を併用することが好ましい。
【0023】
本発明において以下のような化学構造式を有する分散染料を用いる。
【0024】
ベンゼンアゾ系(モノアゾ及びジスアゾ)、複素環アゾ系(チアゾールアゾ、ベンゾチアゾールアゾ、ピリゾンアゾ、ビラゾロンアゾ、チオフェンアゾ等)アントラキノン系、縮合系(キノフタロン、スチリル、クマリン)等になる。
【0025】
本発明において親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物としては、下記一般式(1)で表される2,6−ジハロゲノ−4−Y−1,3,5−トリアジン誘導体が好ましく使用される。
【0026】
【化2】

【0027】
上記式(1)中、Xは塩素、フッ素及び臭素からなる群より選ばれるハロゲン基、Yはスルホン基、カルボキシル基、水酸基及びチオール基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基により置換されたアリールアミノ基、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、トリアジニルアミノ基、トリアジニルオキシ基、トリアジニルチオ基、またはトリアジニルアミノスチルベンアミノ基であり、前記スルホン基、カルボキシル基、水酸基及びチオール基はその水素原子がアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子で置換されてもよい。
【0028】
また本発明において用いる多価アミノ化合物は繭、毛羽、生糸から得られる、分子数20000以下の低分子水溶性の加水分解シルクを用いる。
【0029】
ポリエステル繊維を染色する際用いられる分散染料の染液の中へ前記一般式(1)で表される親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン化合物を及び多価アミノ化合物は酸性浴条件下で電子置換反応を実施して分散染料と同様に該繊維構造物へイオン結合被膜化してクロルトリアジン環は非イオンとなる。
【0030】
前記した水系フルオロアルキルアクリレート、水系シリコーンソフナー、水系メラミン尿素誘導体、水系ウレタンの分子中に、水酸基と、カルボキシル基、スルホン基などの水溶性置換基を有していることが好ましい。これらの化合物は、ポリエステル繊維に非イオンとして被膜化しているクロルトリアジン環と熱処理において共有結合、イオン結合して疎水化を付与することができると考えられる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の製造方法によって得られるポリエステル繊維の疎水化製造方法は、従来の合成樹脂を用いてラミネートやコーティングさせる加工法と比較して、水系洗濯による摩擦撥水の耐久性の向上、ゴミやホコリの静電気発生による付着防止効果など着衣快適性を付与されたポリエステル繊維を提供できる。
【0032】
さらに、本発明方法の特徴は、合成樹脂や有機溶剤を使用することなく作業環境も安全で環境適合性に優れた安価な加工薬剤であること。合成樹脂加工による莫大なエネルギーを使用することなくシンプルな技術加工方法である。二酸化炭素や窒素酸化物の削減にも寄与し、熱による作業環境の悪化を防ぐことができる点であり、これらのことから、新規の設備を設置することなく、遊休設備を活用できるなど優れた経済性のもとで、従来は制約が多かった衣料分野のみならず工業・産業資材の各種分野でポリエステル繊維の用途を、広く拡大できるものである。
【0033】
具体的には一般的な衣類、帽子、防寒衣類、スキー衣類、カジュアル衣類、トレッキング衣類、ユニホーム類、介護用シーツ類、ドクター.ナース衣類、調理師衣類、カバン、靴、手袋、テント、各種シート等の水・雨・水系液体から防御する用途、テーブルクロス等の水系汚れ防止用途、フィールドウェア、アスレチックウェア等の軽さが求められる用途、靴下、ショーツ、ガードル、スリップ、ブラジャー、パンティーストッキング、ボディースーツ、その他のランジェリー・ファンディーション等の下着用途などに使用することができるものとなる。
【0034】
このように、本発明のポリエステル繊維の疎水化製造方法は、技術的にもシンプルで実用設備の中で製造可能で実用的価値が高く、近年の地球規模クラスのエネルギー、環境問題にも充分対応できるものであり、産業界に大いに貢献することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本発明について、望ましい実施の形態とともに詳細に説明する。
【0036】
本発明はポリエステル繊維を染色させる際に分散染料と親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン化合物及び多価アミノ化合物を共存させ、第1次「浴中吸尽法」を用いて30℃〜140℃の昇温熱処理を付与した後第2次の60〜190℃の「連続乾熱法」を水溶性または水系のパーフルオロアルキルアクリレートと、助剤として水系シリコーンソフナー、水系メラミン尿素誘導体及び水系ウレタンから選ばれた少なくとも一種を併用して乾熱処理を実施するものである。
【0037】
本発明は、ポリエステル繊維へ耐久性に優れた疎水化追求及び着衣快適性をもともなう撥水性などの水系防汚性、ホコリやゴミの付着しない防汚性などのイージーケアを実現するにあたり熱処理を行うものである。
親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン化合物と多価アミノ化合物は酸性浴中で第1次の熱処理でイオン反応を実施してその電子置換性においてクロルトリアジン環は非イオン化を実施してポリエステル繊維へ非イオンの分散染料と共存して被膜化をする。第2次の熱処理において水溶性又は水系パーフルオロアルキルアクリレートと助剤として水系シリコーンソフナー、水系メラミン尿素誘導体及び水系ウレタンから選ばれた少なくとも一種を併用することによりクロルトリアジン環と共有結合、イオン結合を実施して疎水化に寄与する。
【0038】
「浴中吸尽法」を用いてポリエステル繊維へ疎水化を付与するにあたり反応機構を詳細に説明する。
【0039】
ポリエステル繊維の疎水化製造方法には第1次の熱処理として「浴中吸尽法」を用いる。加工方法は高圧タイプの液流染色機へ減量加工されたポリエステル繊維を投入して常温の水を所定量仕込む、その後染色目的に応じた所定量の分散染料、親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン化合物及び多価アミノ酸化合物を共存させ酢酸などを用いて酸性浴に調液する。その後徐々に昇温を開始する。親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン化合物は有機繊維構造物を加工する際アルカリ浴の中でその電子置換性により30℃〜50℃で該繊維構造物の(H)部位と第1次の置換反応を引き起こし(−)イオンを帯び60℃〜70℃で第2次の(H)部位と置換反応を引き起こして(−)のクロルトリアジン環を形成して繊維と共有結合を実施する事が公知である。しかしポリエステル繊維は(H)ハロゲン部位を有する繊維構造物では無いため、共有結合は引き起こさない。酸性浴中では80℃付近で(−)のクロルトリアジン環を形成することが公知のためこの電子置換性を応用して水に溶解している多価アミノ酸化合物の有する(H)ハロゲン部位と電子置換反応を実施して非イオン化させたクロルトリアジン環をポリエステル繊維へ被膜化させる。その後、分散染料は高温条件下で染色されるがイオン性は非イオンであるためクロルトリアジン環と共存してポリエステル繊維にイオン結合、被膜化している。北川学説によるとポリエステルは(−)に帯電しているとされるが親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン化合物と多価アミノ化合物との置換反応により染色されたポリエステル繊維は非イオン化された静電気の発生を抑制する繊維構造物となる。
【0040】
本発明の方法において第2次の「連続乾熱法」としてパッド.ドライ.キュア法を用いる。第1次にてポリエステル繊維に被膜化している非イオンのクロルトリアジン環と水溶性あるいは水系パーフルオロアクリレート並び助剤として水系シリコーンソフナー、水系メラミン尿素誘導体、水系ウレタンを少なくとも1種を併用して、逐次にあるいは同時に第2次の60℃〜190℃の乾熱処理工程において共有結合、イオン結合を実施、疎水性を付与向上させイージーケアの機能を有した生活資材や工業・産業資材に優れたポリエステル繊維を提供するものである。
【0041】
本発明で用いることができる親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン化合物は、下記一般式(1)で表される2,6−ジハロゲノ−4−Y−1,3,5−トリアジン誘導体が付与されていることを特徴とする。
【0042】
【化3】

【0043】
上記式(1)中、Xは塩素、フッ素及び臭素からなる群より選ばれるハロゲン基、Yはスルホン基、カルボキシル基、水酸基及びチオール基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基により置換されたアリールアミノ基、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、トリアジニルアミノ基、トリアジニルオキシ基、トリアジニルチオ基、またはトリアジニルアミノスチルベンアミノ基であり、前記スルホン基、カルボキシル基、水酸基及びチオール基はその水素原子がアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子で置換されてもよい。
【0044】
前記一般式(1)で表される繊維材料の改質薬剤をより具体的に説明すると、トリハロゲノ−S−トリアジン、好ましくは塩化シアヌルを主原料として用い、カルボキシル基、水酸基、チオール基、アミノ基、スルホン基、スルホン酸基等水溶性あるいは親水性置換基を有するアニリン類、フェノール類、チオフェノール類、ナフチルアミン類、ナフトール類、アミノ酸類、トリアジン類等の単体あるいは混合物を塩化シアヌル1モルに対して1モルを酸結合剤を共存させた中性ないし弱アルカリ性で縮合させるか、あるいは塩化シアヌルを重炭酸ソーダ、炭酸ソーダ、苛性ソーダ、苛性カリ、水酸化マグネシウム等を用いてアルカリ性で加水分解させることによって得られる。これらの化合物は純粋である必要はなく、前記2種以上の混合物と塩化シアヌルを反応させたものであってもよいし、純粋に作られたものをあとから混合して多成分系として使用することが好ましい場合もある。
【0045】
本発明の加工薬剤ジハロゲノトリアジン類は、ドイツ公開特許第2357252号公報、あるいはアメリカ特許第5601971号明細書等に記載があるように公知の合成法に準じて合成することができるが、その概要は次の通りである。
【0046】
すなわち、例えば、塩化シアヌル1.00モルを5℃以下の氷水の中へ仕込み、次いで例えばm-スルファニル酸1.02モルと炭酸ソーダ約1モルをよく撹拌しながら徐々に仕込む。m-スルファニル酸と炭酸ソーダの仕込みはPH=7±1で約3時間を要して5〜10℃で仕込み、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析し、塩化シアヌルがほぼ消滅すれば、更に1時間保温撹拌して反応を完結させる。この間PHは6〜8に維持し、HPLCによって組成を分析し、モノスルフアニル体が90%以上となれば反応を終了する。反応後微量の不溶物を濾過して除き、最終的にはPHは7に調整する。このようにして2.6−ジクロル−4−(3−スルフォアニリノ)−S−トリアジンNa塩水溶液が高収率で得られる。この化合物は冷蔵庫内で5℃以下保管すれば約1ヶ月間は安定である。
【0047】
親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物は、具体的には次のような化合物の単体あるいは混合物を例として挙げることができる。
2,6−ジクロル−4−(3−スルホアリニノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(4−スルホアリニノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(3−スルホアリニノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(2,5−ジスルホアリニノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(3,5−ジスルホアリニノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(3−カルボキシアリニノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(4−カルボキシアリニノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(2−カルボキシアリニノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(β−カルボキシエチルアミノ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−ウレイド−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−チオウレイド−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(4−カルボキシフェノキシ)−S−トリアジン
2,6−ジクロル−4−(4−カルボキシフェニルチオ)−S−トリアジ
2,6−ジクロル−4−オキシ−S−トリアジンNa塩
2,6−ジクロル−4−オキシ−S−トリアジンLi塩
2,6−ジクロル−4−オキシ−S−トリアジンMg塩
2,6−ジクロル−4−チオ−S−トリアジンNa塩
親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン類は、この他にも数多くの有効な化合物が考えられるのであって、本発明はこれらの具体例に制約されるものではなく、親水性置換基を有する化合物であることと、活性ハロゲン原子またはそれに類する反応性基を2個以上有することがポイントである。
【0048】
本発明において、親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物のクロルトリアジン環を非イオン化させるために用いる多価アミノ化合物は繭、毛羽、生糸から得られる分子数20000以下の低分子、水溶性の加水分解シルクは以下の様にして得られる。
【0049】
水溶性加水分解シルクとなる繭、毛羽、生糸を洗濯槽内へ投入して常温で約1時間洗濯を実施して不純物を除去する。洗浄した原料を遠心の脱水機を用いて充分脱水する。
水溶液中に原料を投入して重炭酸ソーダ−を用いて100℃まで昇温煮沸し、その時間を120分持続し、再度遠心脱水機を用いてセリシンとフィビィロインに分離する。セリシンを有している水溶液は酵素分解槽内へ投入、アルカラーゼ、セルラーゼ等の酵素を用いて約60℃までの温度で300分間精練を実施する、分離されたフィビィロインも同様の精練を実施するセリシンを有している水溶液を真空濃縮機に投入してリンゴ酸、クエン酸等を用いて濃縮工程を数回繰り返してゼムライト等を使用して濾過をしてその後300℃まで昇温したスプレードライ機内で噴射して、パウダー化を行う。遠心脱水機並び濾過して残留したフィビィロインは酵素精練並び高アルカリ下において再三、再四フィビィロインを分解して同様に濃縮工程をセリシン水溶液と同様のスプレードライを実施する。
【0050】
この様にして得られた加水分解シルクの分子量を京都府.織物機械金属振興センターにて評価の結果、低分子の加水分解シルク(セリシンパウダー)は分子量、10000、加水分解シルク(シルクパウダー)は分子量、1000という結果となり水溶性の加水分解シルクを得た。これらの多価アミノ化合物は親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物と酸性浴内において非イオン性のクロルトリアジン環を形成させ該繊維構造物に被膜化、ポリエステル繊維の疎水化に寄与する。
【0051】
本発明でいうフルオロアルキルアクリレートとしては、ポリフルオロアルキル基(以下、Rf基と記す)を有する(メタ)アクリル酸エステルの重合単位を含むものである。ここで、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルから選ばれた少なくとも1種をいう。「(メタ)アクリルアミド」等の表記についても同様である。Rf基を有する(メタ)アクリル酸エステルとは、Rf基が(メタ)アクリル酸エステルのアルコール残基部分に存在する化合物をいう。
【0052】
Rf基は、アルキル基の水素原子の2個以上がフッ素原子に置換された基である。Rf基の炭素数は2〜20が好ましく、特に6〜16が好ましい。またRf基は直鎖構造または分岐構造であり、直鎖構造が好ましい。分岐構造である場合には、分岐部分がRf基の末端部分に存在し、かつ炭素数が1〜4程度の短鎖であるのが好ましい。Rf基は、フッ素原子以外のハロゲン原子を含んでいてもよい。フッ素原子以外のハロゲン原子としては塩素原子が好ましい。
【0053】
Rf基の末端部分の構造としては、−CF2CF3、−CF(CF3)2、−CF2H、−CFH2、−CF2Cl等が挙げられ、−CF2CF3が好ましい。また、Rf基中の炭素−炭素結合間には、エーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子が挿入されていてもよい。
【0054】
Rf基中のフッ素原子数は、[(Rf基中のフッ素原子数)/(Rf基と同一炭素数の対応するアルキル基中に含まれる水素原子数)]×100(%)で表現した場合、60%以上が好ましく、特に80%以上が好ましい。さらにRf基は、アルキル基の水素原子の全てがフッ素原子に置換された基、すなわち、パーフルオロアルキル基(以下、RF基と記す。)、またはRF基を末端部分に有する基が好ましい。
【0055】
RF基の炭素数は2〜20が好ましく、特に6〜16が好ましい。炭素数が2未満の場合には撥水性が低下する傾向にある。炭素数が20超の場合には共重合体が常温で固体となり、昇華性も大きくなり、取扱いが困難になる傾向がある。
Rf基の具体例を以下に挙げる。なお、以下の例においては、同一分子式を有する構造の異なる基である構造異性の基を含む。
【0056】
C4F9−(F(CF2)4−、(CF3)2CFCF2−、(CF3)3C−等)、C5F11−(F(CF2)5−、(CF3)3CCF2−等)、C6F13−(F(CF2)6−等)、C7F15−、C8H17−、C9F19−、C10F21−、Cl(CF2)s−(sは2〜16の整数)、H(CF2)t−(tは1〜16の整数)、(CF3)2CF(CF2)y−(yは1〜14の整数)等。
【0057】
Rf基が、炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子、またはチオエーテル性硫黄原子が挿入された基である場合の具体例を、以下に挙げる。
【0058】
F(CF2)5OCF(CF3)−、F(CF(CF3)CF2O)rCF(CF3)CF2CF2−、F(CF(CF3)CF2O)zCF(CF3)−、F(CF(CF3)CF2O)uCF2CF2−、F(CF2CF2CF2O)vCF2CF2−、F(CF2CF2O)wCF2CF2−(rは1〜6の整数、zは1〜5の整数、uは2〜6の整数、vは1〜6の整数、wは1〜9の整数)等。
【0059】
Rf基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、下記式(2)で表される化合物が好ましい。ただし、式1においてRfはRf基、Qは2価の有機基、R1は水素原子またはメチル基を示す。
【0060】
Rf−Q−OCOCR1=CH2・・・式(2)
式(2)におけるRf基としては、エーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子を含まないRf基が好ましく、特にRF基が好ましい。とりわけ−(CF2)F(ただし、nは2〜20の整数。)で表される基が好ましく、nが5〜17の整数である基が好ましく、特にnが7〜13の整数である基が好ましい。
式(2)におけるQとしては、−(CH2)p+q−、−(CH2)pCONH(CH2)q−、−(CH2)pOCONH(CH2)q−、−(CH2)pSO2NR2(CH2)q−、−(CH2)pNHCONH(CH2)q−、−(CH2)pCH(OH)−(CH2)q−等が好ましい。ただし、R2は水素原子またはアルキル基を示す。また、pおよびqは0以上の整数を示し、p+qは1〜22の整数である。これらのうち、−(CH2)p+q−、−(CH2)pCONH(CH2)q−、−(CH2)pSO2NR2(CH2)q−であり、かつ、qが2以上の整数であってかつp+qが2〜6である場合が好ましい。特に、p+qが2〜6である場合の−(CH2)p+q−、すなわち、ジメチレン基〜ヘキサメチレン基が好ましい。Qと結合するRfの炭素原子には、フッ素原子が結合しているのが好ましい。
【0061】
Rf基を有する(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、下記の化合物が挙げられる。ただし、R1は水素原子またはメチル基を示す。
【0062】
F(CF2)5CH2OCOCR1=CH2、 F(CF2)6CH2CH2OCOCR1=CH2、 H(CF2)6CH2OCOCR1=CH2、 H(CF2)8CH2OCOCR1=CH2、 H(CF2)10CH2OCOCR1=CH2、 H(CF2)8CH2CH2OCOCR1=CH2、 F(CF2)8CH2CH2CH2OCOCR1=CH2、 F(CF2)10CH2CH2OCOCR1=CH2、 F(CF2)12CH2CH2OCOCR1=CH2、 (CF3)2CF(CF2)4CH2CH2OCOCR1=CH2、 (CF3)2CF(CF2)6CH2CH2OCOCR1=CH2、 (CF3)2CF(CF2)8CH2CH2OCOCR1=CH2、 F(CF2)8SO2N(C3H7)CH2CH2OCOCR1=CH2、 F(CF2)8(CH2)4OCOCR1=CH2、 F(CF2)8SO2N(CH3)CH2CH2OCOCR1=CH2、 F(CF2)8SO2N(C2H5)CH2CH2OCOCR1=CH2、 F(CF2)8CONHCH2CH2OCOCR1=CH2、 (CF3)2CF(CF2)5(CH2)3OCOCR1=CH2、 (CF3)2CF(CF2)5CH2CH(OCOCH3)− −OCOCR1=CH2、 (CF3)2CF(CF2)5CH2CH(OH)CH2− −OCOCR1=CH2、 (CF3)2CF(CF2)7CH2CH(OH)CH2− −OCOCR1=CH2、 F(CF2)9CH2CH2OCOCR1=CH2、 F(CF2)9CONHCH2CH2OCOCR1=CH2。
【0063】
本発明でいうフルオロアルキルアクリレートは、Rf基を有する(メタ)アクリル酸エステルを2種以上含んでもよい。Rf基を有する(メタ)アクリル酸エステルを2種以上含む場合には、炭素数の異なるRf基を有する(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。また、本発明でいうフルオロアルキルアクリレートは、Rf基を有する(メタ)アクリル酸エステルの重合単位以外の重合単位を含んでもよい。他の重合単位としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、クロロプレン等のオレフィン類、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン等のスチレン類、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ハロゲン化アルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、アリルグリシジルエーテル等のアリルエーテル類、酢酸ビニル等のカルボン酸ビニル類、酢酸アリル等のカルボン酸アリル類、エチルビニルケトン等のビニルアルキルケトン類。
【0064】
メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜26の直鎖または分岐のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、ポリオキシアルキレンジ(メタ)アクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、ポリジメチルシロキサン基を有する(メタ)アクリレート、ブロックされたイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート、第4アンモニウム塩の基を有する(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類。
【0065】
トリアリルシアヌレート、N−ビニルカルバゾール、マレイミド、N−アルキルマレイミド、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等。
【0066】
本発明において、フルオロアルキルアクリレートを使用する場合は、下記の化合物すなわち、ブロックされたイソシアネート基を1個以上有し、かつ重合性炭素−炭素不飽和結合を有しない化合物であり、イソシアネート基をブロック化剤でブロックした構造の化合物、を併用することが好ましい。そして、ポリイソシアネートと分子内に活性水素原子を2個以上有する化合物とを反応させた化合物のイソシアネート基をブロック化剤でブロックした構造が好ましい。
【0067】
ポリイソシアネートとしては、以下のポリイソシアネートが好ましく挙げられる。
【0068】
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2−プロパンジイソシアネ−ト、1,2−ブタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート類または脂環族イソシアネート類、およびそれらのイソシアヌレート変性体、プレポリマー変性体、ビュレット変性体、アロファネート変性体等。
【0069】
イソシアネート基のブロック化剤としては、アルキルケトオキシム類、フェノール類、アルコール類、β−ジケトン類、ラクタム類が好ましい。特にメチルエチルケトオキシム、ε−カプロラクタム、フェノール、クレゾール、アセチルアセトン、マロン酸ジエチル、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、マレイン酸イミド等が好ましい。とりわけ、メチルエチルケトオキシム等のジアルキルケトオキシム類、ε−カプロラクタム等のラクタム類の解離温度120〜180℃の化合物が好ましい。
【0070】
上記ブロックされたイソシアネートとしては、メイカネートMF、BP−11、NBP−75、NBP−231(以上、明成化学工業社製)、WB−730、WB−920、XWB−72−Z56(以上、武田薬品工業社製)、BI−8(日本ポリウレタン社製)等の市販の化合物を用いてもよい。
【0071】
これらの化合物は、ポリエステル繊維に非イオン化して被膜化しているクロルトリアジン環と共有結合やイオン結合することによって耐久性のある疎水性(水系防汚)及びホコリやゴミの付着しにくい(防汚)イージーケアの機能性を付与することができる。
【0072】
これら親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物、多価アミノ化合物及び水溶性または水系パーフルオロアルキルアクリレートと助剤として水系シリコーンソフナー、水系メラミン尿素誘導体及び水系ウレタンから選ばれた少なくとも1種を併用する前記薬剤はポリエステル繊維の疎水化及びイージーケアを付与することを可能ならしめる。概要は分散染料を用いて染色する際酸性浴の中で親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物が多価アミノ化合物の有する(H)部位と電子置換を実施、非イオンのクロルトリアジン環を形成して非イオンの分散染料と共存して(+)(−)イオンがバランス良くポリエステル繊維とイオン結合を実施して被膜化、静電気を抑制する該繊維構造物となる。その後水溶液又は水系パーフルオロアルキルアクリレートと助剤として水系シリコーンソフナー、水系メラミン尿素誘導体及び水系ウレタンから選ばれた少なくとも1種を併用し熱処理を実施し非イオン化して被膜化しているクロルトリアジン環と立体的な、あるいは網目的な共有結合、イオン結合を実施してリエステル繊維に耐久性のある疎水化、静電気を抑制してゴミやホコリの付着しにくい機能を付与しイージーケアを達成することができる。従来技術の合成樹脂を用いてラミネートやコーティング技術とは違い共有結合やイオン結合を用いるシンプルなポリエステル繊維の疎水化製造方法で撥水性やイージーケアを達成させる事ができる。
【0073】
本発明で疎水性の機能を付与されるポリエステル繊維からなる繊維構造物は単品でも混合品でもよく、天然繊維や再生繊維、半合成繊維やナイロン繊維、アセテート、トリアセテート、アクリルを含めた複合系繊維構造物であってもよい。具体的には、絹、ウール、カシミア、アルパカ、アンゴラなどの動物繊維、木綿、麻、ビスコースレーヨン、キュプラレーヨン、リヨセル、テンセル、酢酸セルロース等、分子構造中にカルボキシル基やアルコール性水酸基を有するセルロース系繊維あるいは再生繊維を主要成分とする繊維からなる繊維構造物である。
【0074】
本発明において、上記薬剤を用いてポリエステル繊維の疎水化を達成させる加工条件の概要を説明する。第1次の熱処理は高圧タイプの液流染色機を用いて30℃〜140℃の昇温熱処理する「浴中吸尽法」を用いる。ポリエステル繊維の総重量に対して1:30以下になるように染色内の水量を調整し目的染色の分散染料を該繊維構造物の重量比0.1%〜5%仕込む。親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物を薬剤の純度100%換算で0.1%〜10%(o.m.f)及び多価アミノ化合物0.01%〜10%(o.m.f)仕込む。酢酸、氷酢酸、リンゴ酸、クエン酸などを用いて0.1〜10%(o.w.s)添加してPh3.5〜6.5に調液する。調液が終了すれば2℃/分以下で30℃〜140℃まで昇温熱処理を実施する。110℃〜140℃を30分〜60分実施してクールダウン、分散染料を染色時と同様、湯洗、水洗してRCを実施して乾燥仕上げをする。
【0075】
ポリエステル繊維の疎水化を達成させるため第2回乾熱処理は「連続乾熱法」でパッド、ドライ、キュア法を用いる。乾燥機はシリンダー乾燥機、テンター乾燥機、シュリンク乾燥機など、ポリエステル繊維の製織、製編及び不織布等を勘案して使用機を選択すれば良い。1回は該繊維構造物を60℃〜120℃の乾熱処理で実質的に乾燥するまで熱処理を実施。その後2回の乾熱処理として140℃〜190℃の乾熱でキュアを実施する。パッド浴の中に調液温度に注意しながら水溶性または水系パーフルオロアルキルアクリレートと助剤として水系シリコーンソフナー、水系メラミン尿素誘導体及び水系ウレタンから選ばれた少なくとも一種を併用し目的の疎水化を得るためて該繊維構造物0.01%〜10%(o.m.s)仕込んで調液する。この時ポリエステル繊維の内部まで充分に浸績することを可能ならしめるため少量の多価アルコール類を添加すると良い結果となる。調液された浴へポリエステル繊維を含浸しパディングによって絞り率20%〜200%で該繊維構造物へ付与する。パディング回数は1回に留まらず数回パッドを実施すると良い結果を生む場合がある第1回の熱処理として乾熱温度60℃〜120℃で数分間〜60分間の乾熱処理を実施して、実質的に乾燥するまで熱処理を実施する。第2回の熱処理として乾燥キュア温度140℃〜190℃の乾熱温度で30秒間〜30分間でキュア工程を終了する。
また本発明においては第1次の「浴中吸尽法」を用いる昇温熱処理の工程、第2次の「連続乾熱法」パッド、ドライ、キュア法の乾熱処理工程の順序での製造、処理工程が含まれていれば良い。
【0076】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制約されるものではない。
【0077】
<実施例1>
高圧液流染色機内に水216kg、2.6−ジクロル−4−(3−スルフォアニリノ)−S−トリアジン10%水溶液3.8kg、酢酸40cc、加水分解シルク360g、ペースト状の分散染料920gを投入して、ポリエステル繊維100%平織地18kg含浸して黒に染色する、常温にて5分間ポリエステル繊維構造物を循環させる、その後毎分2℃にて昇温し135℃まで槽内の水溶液を昇温継続し、その後135℃の温度を30分間持続して槽内の加工液を排水して85℃の熱湯の中でソーピングを実施、水洗いしてRCを実施後パッド、ドライ乾燥した。その後パッディング浴液を、水溶性パ−フルオロアルキレ−ト7kg、ブロックイソシアネ−ト500gを混合して水を加えて合計100リットルのパッディング浴液を調合した。マングルにて絞り率70%で均一に含浸させて110℃にて乾燥した。引き続きテンタ−で170℃で30秒間乾熱処理して第2段階の熱処理加工を終了した。このようにして得られた該繊維構造物を評価した結果を表1に示す。
【0078】
<比較例1>
実施例1で使用したものと同じポリエステル繊維構造物を水溶性パーフルオロアルキルアクリレート7kg、ブロックイソシアネート500gのみを用いて実施例1と同様の熱処理を実施した。その結果を表1に示す。
【0079】
<実施例2>
水270kg、2.6−ジクロル−4−オキシ−S−トリアジンNa塩10%水溶液3.6kg、酢酸100cc、パウダー状の分散染料540g加水分解シルク360gを室温でよく混合して紺色に染色するため高圧液流染色機内へ投入しポリエステル100%の揚柳生地17kgを投入した充分に分散染料、加水分解シルク薬剤が混合、ポリエステル繊維へ浸漬する様に常温にて10分間循環回転させ、その後毎分3℃の昇温にて90℃まで昇温した、その時点で酢酸18ccを投入、90℃を10分間保持し、130℃まで昇温し130℃を30分間保持した後、排水しソーピング、水洗い、パット、ドライ乾燥した。その後、パッド、ドライ、キュア法を用いておいて実施例1と同様の加工を実施した。その評価結果を表2に示す。
【0080】
<比較例2>
実施例2で使用した同じポリエステル繊維構造物を水溶性パーフルオロアルキルアクリレート7kg、ブロックイソシアネート500gのみを用いて実施例1と同様の熱処理を実施した、その評価結果を表2に示す。
【0081】
<実施例3>
水252kg、2.6−ジクロル−4−(4−スルフォアニリノ)−S−トリアジン10%水溶液2.4kg、酢酸50g、ペースト状の分散染料1780g、加水分解シルク250gを室温でよく混合した加工液を用いてしたポリエステル65%、綿35%のT/C、2/2の綾地織物を液流染色機で加工した。90℃まで2℃/分で昇温、90℃になった時点で酢酸50gを投入して10分間温度を保持した。その後、120℃まで昇温、120℃で20分間保持後、排水し、ソーピング、水洗した、その後反応染料を用いて綿の染色を実施した。その後、パッド、ドライ、キュア法を用いておいて実施例1と同様の加工を実施した、その評価結果を表3に示す。
【0082】
<比較例3>
実施例3で使用したものと同じT/Cを比較例2と同様の加工実施した、その評価結果を表3に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
(Spray測定法)
米国の測定方法で生地に所定の角度をつけ生地上から水を滴下して濡れを測定したもので50は半分濡れている事を示しています。
【0087】
(Oil Drop測定方法)
Oil Repellency Test(AATCC test Method 118)炭素数の異なる1級〜8級の炭化水素(油)を生地上に滴下して生地に鏡面反射があるか(濡れるか、濡れないか)を見る試験。級が大きくなるほど表面張力が大きい、つまり試験結果の級が大きいほどその生地の撥水・撥油性が優れていることを示します。
【0088】
洗濯方法 AATCC135(2)(III)(A)(ii) 20回
アイロン JISL1096法H-1 140℃
表1に示した実施例1と比較例1からわかる様に、本発明では、水系洗濯による摩擦からの疎水化の耐久性が向上していて(水系防汚)技術加工の優位性を実証した。更に親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物と多価アミノ化合物の電子置換性の非イオン化は静電気の発生を抑制して、ゴミやホコリの付着しない(防汚)ポリエステル繊維のイージーケアを実現する良好な結果が得られた。
【0089】
表2に示した実施例2と比較例2からわかる様に実施例2と同様の結果が得られた。
【0090】
表3に示した実施例3と比較例3からわかるように、本発明では疎水性の向上のみならず撥油性能をも付与できる良好な結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル繊維を分散染料を用いて染色する際、親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物及び多価アミノ化合物を共存させポリエステル繊維を疎水化の機能性を付与させることを特徴とするポリエステル繊維の疎水化製造方法。
【請求項2】
親水性の置換基を有する前記ジハロゲノトリアジン化合物が、下記一般式(1)で表される2,6−ジハロゲノ−4−Y−1,3,5−トリアジン誘導体が付与されていることを特徴とする請求項1記載のポリエステル繊維の疎水化製造方法。
【化1】

上記式化1中、Xは塩素、フッ素及び臭素からなる群より選ばれるハロゲン基、Yはスルホン基、カルボキシル基、水酸基及びチオール基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基により置換されたアリールアミノ基、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、トリアジニルアミノ基、トリアジニルオキシ基、トリアジニルチオ基、またはトリアジニルアミノスチルベンアミノ基であり、前記スルホン基、カルボキシル基、水酸基、及びチオール基はその水素原子がアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子で置換されてもよい。
【請求項3】
前記ポリエステル繊維を分散染料を用いて染色する際その水溶液の中に親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物及び多価アミノ化合物を共存させ「浴中吸尽法」を用いて該繊維構造物を30℃〜140℃の昇温熱処理する、第1次の熱処理とその後該繊維構造物を疎水化させるにあたり水溶性または水分散性のパーフルオロアルキルアクリレートと、助剤として水系シリコーンソフナー、水系メラミン尿素誘導体及びウレタンから選ばれた少なくとも一種を併用して含浸させ「連続乾熱法」を用いて60℃〜190℃の第2次の熱処理を含むことを特徴とするポリエステル繊維の疎水化製造方法。
【請求項4】
ポリエステル繊維を分散染料を用いて染色する際「浴中吸尽法」を用いて浴比を1:30以下の水溶液に分散染料を該繊維構造物の重量比0.1%〜5%、親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物、純度100%該繊維構造物重量比0.1%〜10%、多価アミノ化合物、該繊維構造物重量比0.01%〜10%共存させ30℃〜140℃の第1次の昇温熱処理を含むことを特徴とするポリエステル繊維の疎水化製造方法。
【請求項5】
請求項4によって、分散染料を用いて染色されたポリエステル繊維へ疎水化の機能を付与させるため、水溶性または水分散性のパーフルオロアルキルアクリレートと助剤として水系シリコーンソフナー、水系メラミン尿素誘導体及びウレタンから選ばれた少なくとも一種を併用して該繊維構造物の重量比0.1%〜10%含浸させ「連続乾熱法」を用いて60℃〜190℃の第2次の乾熱処理を含むことを特徴とするポリエステル繊維の疎水化製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエステル繊維の疎水化製造方法における水溶中に酢酸、リンゴ酸、氷酢酸及びクエン酸から選ばれた少なくとも1種を添加してPh3.5〜6.5に調液することを特徴とするポリエステル繊維の疎水化製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエステル繊維の疎水化製造方法におけるポリエステル繊維構造物を用いてなることを特徴とするスーツ地、シャツ地、ボトム、セーター、コートなど防寒衣、スキーウエア、ライフジャケット等のアウター類。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエステル繊維の疎水化製造方法のポリエステル繊維構造物を用いてなることを特徴とする靴下、ショーツ、ブラジャー等の下着類。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエステル繊維の疎水化製造方法におけるポリエステル繊維構造物を用いてなることを特徴とする水着類。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエステル繊維の疎水化製造方法におけるポリエステル繊維構造物を用いてなることを特徴とする傘、鞄、靴等の雑貨類。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエステル繊維の疎水化製造方法におけるポリエステル繊維構造物を用いてなることを特徴とするシーツ、テーブルクロス、シャワーカーテン、テント、セールクロス、各種カーシートのシート類。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエステル繊維の疎水化製造方法におけるポリエステル繊維構造物を用いてなることを特徴とする魚網、オイルフェンス等の資材類。

【公開番号】特開2011−174186(P2011−174186A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161847(P2008−161847)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(500147805)株式会社 きものブレイン (13)
【Fターム(参考)】