ポリエチレングリコールで被覆した、葉酸レセプタ標的を有する酸化鉄ナノ粒子
【課題】スーパーパラマグネティック酸化鉄−ポリエチレングリコール葉酸(SPIO−PEG−FA)化合物及びその製備方法の提供。
【解決手段】スーパーパラマグネティック酸化鉄−ポリエチレングリコール葉酸(SPIO−PEG−FA)化合物及びその製備方法で、細胞の葉酸レセプタをターゲットして細胞内に進入することができ、且つ、高弛緩率のナノ粒子を有する。スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子は磁気共振造影対比剤とすることができる。
【解決手段】スーパーパラマグネティック酸化鉄−ポリエチレングリコール葉酸(SPIO−PEG−FA)化合物及びその製備方法で、細胞の葉酸レセプタをターゲットして細胞内に進入することができ、且つ、高弛緩率のナノ粒子を有する。スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子は磁気共振造影対比剤とすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気共振造影対比剤及びその製備方法に関し、特に、スーパーパラマグネティック酸化鉄(Superpara-magnetic Iron Oxide,SPIO)ナノ粒子を含んだ磁気共振造影対比剤及びその製備方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医学映像を利用して診断を補助する物理療法において、磁気共振造影(MRI)は高解析の映像を提供でき且つX−rayのような輻射傷害がないので核磁気造影技術は益々広汎に臨床診断に応用されるようになった。MRIは強磁界下で引導された弛緩率差異により映像対比をもたらさせ、対比剤(contrast agents)を使用することにより映像の対比を一層向上した。
【0003】
磁気共振対比剤の発展は磁界下における特性につれて大きく二つに分けられる。その一つは縦方向弛緩時間(spin-lattice relaxation time,T1)の減少を主とする磁気共振造影対比剤(T1造影剤と称する)であり、この種の造影剤はT1の信号強度を上昇させるので、組織信号を増強することに用いられる(MRI映像は比較的明るいように見える)。目前T1対比剤に属する金属錯化合物は〔Gd(DTPA)〕2-(diethylene-triaminepentaacetate-gadolinium(III))、〔Gd(DOTA)〕2-(1,4,7,10-tetra-azacyclododecane-N,N’,N’’,N’’’-tetraacetate-gadolinium(III))、〔Gd(BOPTA)〕2-(benzyloxypropioic-diethylenetriamine pentaacetate-gadolinium(III))、MnDPDP(N,N’-dipyridoxylethylene diamine-N,N’-diacetate-5,5’-bis(phosphate)-manganese(II))等である。他の一つは横方向弛緩時間(spin-spinrelaxation time,T2)の減少を主とする対比剤(T2対比剤と称する)であり、これは一種の微細物質の重合体であって、通常スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子(SPIO nanoparticles)と称する。この種の対比剤は磁界強度不均一の現象を発生してT2弛緩時間を短縮するので、組織信号を減少して組織が正常か否かを識別するに用いられる(MRI映像上では比較的暗いように見える)。
【0004】
T1の降下方法は血管内にしか応用されないので、その効果範囲は比較的小さく、T2の方法範囲が微血管周辺組織までに及ぶ可能性を低下する。したがって、SPIOを主とするT2磁気共振造影対比剤は極めて潜在的な応用価値を有する。その中、Product-orientedを有する磁気共振造影対比剤は目前磁気共振造影研究の重要方向である。
【0005】
しかしながら、酸化鉄ナノ粒子が比較的大きな表面積を有しているので、酸化鉄ナノ粒子が容易に集中し血漿蛋白(plasma proteins)を吸着する。酸化鉄ナノ粒子が人体に注射された後、もし酸化鉄ナノ粒子が集中又は吸着現象が発生すると、人体内に巨大細胞が存在して、迅速に単核球食細胞系統(mononuclear phagocyte system,MPS)により除去されるので、酸化鉄ナノ粒子が快速に血液中から排除され、細胞組織に達することができない。したがって、酸化鉄ナノ粒子の血液中における半生期を増長するために、酸化鉄ナノ粒子の表面に一層のフィルムを被覆している。このフィルムの材料は高度な生物相容性(biocompatibility),非免疫性(nonimmunogenic),非抗原性(nonantigenic)及び抗蛋白質吸着(protein-resistant)を具備しなければならない。フィルムで被覆した後の酸化鉄ナノ粒子はその集中及び吸着を回避でき、これにより酸化鉄ナノ粒子が単核球食細胞系統に食われるのを減らして、順利に細胞を組織することができる。
【0006】
目前、SPIOを被すためのフィルムは主に葡萄多糖類又はその派生物により組成されている。その中、ポリエチレングリコール(PEG)は低毒性無電荷の親水性残基であり、体内で分解代謝できるので、近十年来、多くの薬物はPEGを通して彼等の生物相容性を改善しており、同時に蛋白質が吸着されるのを防止している。しかしながら、酸化鉄ナノ粒子を被覆する場合大量のPEGが必要なので、一般市販のPEGはより反応性を具備させるために不同官能を修飾しており、目前市中では修飾を経過した後−NHS又は−COOHの官能基を帯びたものが販売されている。これは繁雑な合成ステップを経過してから製備できるので、市販価格が比較的高い。
【0007】
酸化鉄ナノ粒子を細胞に内化するには、通常以下の方式、例えば液相飲作用(fluid phase pinocytosis)、レセプタ引導飲作用(receptor-mediated pinocytosis)及び食作用(phagocytosis)がある。その中、レセプタ引導飲作用の方式で、酸化鉄ナノ粒子の表面を、特殊細胞レセプタに目標化する探針を有するように修飾し、レセプタ引導飲作用を利用して細胞で酸化鉄ナノ粒子をおさめることにより、酸化鉄ナノ粒子に細胞専一性を備えさせることができる。酸化鉄ナノ粒子により呈された磁気共振造影は極めて応用潜力を有するが、目前実際に医学映像診断依拠の標的に応用されているのは僅に目前EDA許可を受けたResovist(登録商標) ,Feridex(登録商標),Endorem(登録商標),Gastro MARK(登録商標) 及びLumirem(登録商標)しかなく、その標的はいずれも正常組織細胞である。したがって、もし一歩進んでSPIOの特定レセプタ探針を修飾でき且つ損害を受けた組織細胞を標的とすれば、更に一歩進んでSPIOの応用範囲を広めることができる。
【0008】
葉酸(folic acide,FA)は細胞生長に不可欠な重要因子である水溶性ビタミンBであり、DNA及びRNA生成の先駆物である。正常な細胞膜上には葉酸のレセプタがある。そして癌細胞細胞膜には正常細胞よりも多数倍多い葉酸レセプタが出現する。したがって、もし葉酸レセプタを標的とする酸化鉄ナノ粒子を設計できれば、癌細胞の位置の検出及び一歩進んだ治療に用いられることができる。
【0009】
M.Zhang等は2004年J.Am.Chem.Soc.第126巻第7206ページに、PEG分子量が600ダルトンのを使用して被覆物とする合成方法は、フーリエ変換赤外スペクトログラフ測定量により、酸化鉄ナノ粒子の表面には確実に既にPEG及び葉酸が修飾されているのを証明したと掲示されている。
【0010】
したがって、目前市中には既に修飾後不同官能基を帯びたPEGがあるが、そのスーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子の合成ステップは繁雑且つ高価であるので、目前では医学診断映像上において素早やく癌細胞の専一性標的の対比剤を得ることにより、磁気共振映像で明確に癌細胞の位置を判別することが切に望まれている。
【0011】
これに鑑がみ、上記従来の技術にて発生した欠陥を解決するために鋭意テストと研究とを重ねた結果、ついに、本発明の「スーパーパラマグネティック酸化鉄−ポリエチレングリコール−葉酸(SPIO−PEG−FA)化合物及びその方法を案出した。
【発明の開示】
【0012】
本発明は先行技術が存在していた欠陥を克服するために、分子式がX−Yn −Zである化合物を提供する。式中、Xはスーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子、Yはポリエチレングリコール、Zは葉酸、nはポリエチレングリコールの重合数である。
【0013】
上記化合物において、該Xはシリコーンにより修飾されたスーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子である。
【0014】
また上記化合物において、該ポリエチレングリコールの重合数nは8−25である。
【0015】
また、上記化合物において該スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子の粒径は3−5nmである。
【0016】
また上記化合物において、該シリコーンは3−(アミノプロピル)トリメトキシシラン(以下、APTMSと略称)である。
【0017】
本発明は他に磁性粒子の製備方法を提供する。該方法は(1)スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子を製備するステップと、(2)ポリエチレングリコールを修飾するステップと、(3)該スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子と修飾後のポリエチレングリコールとをカップリングして結合物を得るステップと、(4)該結合物と葉酸とをカップリングして磁性粒子を得るステップとを備えてなる。
【0018】
上記方法において、該スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子は油酸と酸化鉄との作用により得られる。
【0019】
また上記方法において、該ステップ(1)の後は更に、シリコーンで該スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子表面をカバーするステップ(1−1)を備える。
【0020】
また上記方法において、該シリコーンはAPTMSである。
【0021】
また上記方法において、該ステップ(2)の修飾作用はトリエチレンアミン、ポリエチレングリコール及びトルエン−4−スルホニルクロリド(TsCl)による作用である。
【0022】
また上記方法において、該修飾作用の産物はトルエンスルホン基ポリエチレングリコールである。
【0023】
また上記方法において該ポリエチレングリコールの平均分子量は400ダルトンである。
【0024】
また、該ポリエチレングリコールの平均分子量は1000ダルトンである。
【0025】
更には該ポリエチレングリコールの平均分子量は2000ダルトンである。
【0026】
上記方法において、ステップ(4)の葉酸は1−エチル−3−(3−ジエチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDCと略称)とN’−ヒドロキシサクシンイミド(NHSと略称)とにより修飾されている。
【0027】
また上記方法において、該結合物と修飾後の葉酸とをカップリングすることにより、磁性粒子を得ることができる。
【0028】
また、本発明により提供される方法によれば、磁性粒子を得ることができ、該化合物は核磁気造影の対比剤に用いられる。
【0029】
本発明はスーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子に関し、且つ、トルエンスルホン基ポリエチレングリコールを利用してスーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子を被覆した後葉酸と結合し、葉酸標的癌細胞細胞上の葉酸レセプタを利用して、特性標的性を有する磁気共振造影対比剤とする。
【0030】
以下、図面を参照しながら比較的好適な実施例を説明すれば十分に理解を得ることができ、この分野に熟知せるものであればこれに基づいて完成することができる。しかしながら本発明の技術的思想はこれら実施例に限定されないのは言うまでもない。
【実施の形態】
【0031】
図1は本発明の化合物製備方法を示す見取図である。これを参照しながら以下その方法を詳細に説明する。
【0032】
図1のステップ(a)に示すように、スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子製備方法は、先ず5.2g(31.43mmole)FeCl3 及び3.12g(15.42mmole)FeCl3 ・4H2 Oを25ml(0.4M)塩酸中に溶解し、激烈に攪拌した後徐々に250ml(2.5M)水酸化ナトリウム(NaOH)溶液中に滴定する;次にこれに続いて1時間攪拌した後、4000rpmで10分間遠心すると黒色固体が得られた。この固体を取り、脱イオン水で新たに分散した後、4000rpmで10分間遠心し、これを5回重複して過量のNaOHを洗浄した。再度黒色固体を脱イオン水で新たに分散し、攪拌下で油酸を添加した後、更にトルエンで抽出を行って黒色液体を取得すると、フーリエ変換赤外スペクトル(FT−IR)が3399.0cm-1,1636.7cm-1であるスーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子が得られた。続いて、0.1gスーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子を200mlトルエン中に溶解し、N2 の通気下で95℃まで加熱した後持続30分間攪拌した。最後に、3−(アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)を160℃まで加熱して6時間回流すると、図1ステップ(a)に示す、シリコーンで表面を被覆したスーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子(以下SPIO−Siと略称する)が得られた。
【0033】
本発明はPEGの分子量に対して三つの異なる実施例を選択した。その中図1ステップ(b)に示すように、第1の実施例において平均分子量(Mn)が400ダルトンであるPEG(以下PEG(400)と称する)を採択した。12.3g(62.5mmole)トルエン−4−スルホニルクロリド(TsCl)を200mlトルエン中に溶解した。10g(25mmole)PEG(400)及び9.53ml(68.75mmole)トリエチレンアミン(TEA)を50mlトルエンに溶解し、激烈に攪拌した後徐々にTsCl溶液中に滴定して室温下で24時間反応した。H2 O/トルエンで抽出して真空濃縮機でトルエン層を濃縮した後真空系統で乾燥し、最後ヘキサンで過量のTsClを洗浄すると、トルエンスルホン基ポリエチレングリコール(400)(以下PEG(400)−OTsと称する)16.72g(23.6mmole)、歩留94.4%の産物が得られた。PEG(400)−OTsの水素核磁気共振スペクトル 1H−NMR(400MHz,CDCl3 ),δ(ppm):2.445(s,6H,−C6 H4 −CH3 ),3.577−3.692(m,3H,−(CH2 −O−CH2 )n −),4.142,4.154,4.166(t,4H,−OCH2 −CH2 −SO2 −),7.388,7.358,7.781,7.801(dd,8H,−C6 H4 −)。13C−NMR(100MHz,CDCl3 ),δ(ppm):144.639,132.696,129.642,127.733,70.460,70.332,70.279,70.241,69.104,68.407,21.433。
【0034】
図1ステップ(b)に示すように、第2の実施例において平均分子量(Mn)が1000ダルトンであるPEG(以下、PEG(1000)と称する)を採択した。12.3g(62.5mmole)TsClを250mlトルエン中に溶解し、25g(25mmole)PEG(1000)及び9.53ml(68.75mmole)TEAを添加して室温下で48時間反応した。抽気ろ過した後、H2 O/トルエンで抽出して真空濃縮機でH2 O層を濃縮した後、更にクロロフォルム(CHCl3 )で溶解ろ過し、最後に真空濃縮機でろ液を濃縮すると、トルエンスルホン基ポリエチレングリコール(1000)(以下PEG(1000)−OTsと称する)30.7g(23.5mmole)、歩留93.7%の産物が得られた。PEG(1000)−OTsの水素核磁気共振スペクトル 1H−NMR(400MHz,CDCl3 ),δ(ppm):2.410(s,6H,−C6 H4 −CH3 ),3.539−3.655(m,108H,−(CH2 −O−CH2 )n −),4.103,4.115,4.127(t,4H,−OCH2 −CH2 −SO2 −),7.300,7.320,7.744,7.764(dd,8H,−C6 H4 −)。13C−NBR(100MHz,CDCl3 ),δ(ppm):144.592,132.836,129.644,127.764,70.519,70.398,70.360,70.307,69.966,68.071,68.457,21.437。
【0035】
図1ステップ(b)に示すように、第3の実施例では平均分子量(Mn)が2000ダルトンであるPEG(以下、PEG(2000)と称する)を採択した。12.3g(62.5mmole)TsClを250mlトルエン中に溶解し、50g(25mmole)PEG(2000)及び9.53ml(68.75mmole)TEAを添加して室温下で48時間反応した。抽気ろ過した後、H2 O/トルエンで抽出して真空濃縮機でH2 O層を濃縮した後、更にクロロフォルム(CHCl3 )で溶解ろ過し、最後に真空濃縮機でろ液を濃縮すると、トルエンスルホン基ポリエチレングリコール(2000)(以下、PEG(2000)−OTsと称する)53.5g(23.2mmole)、歩留92.6%の産物が得られた。PEG(2000)−OTs水素核磁気共振スペクトル 1H−NMR(400MHz,CDCl3 ),δ(ppm):2.453(s,6H,−C6 H4 −CH3 ),3.585−3.701(m,196H,−(CH2 −O−CH2 )n −),4.148,4.161,4.173(t,4H,−OCH2 −CH2 −SO2 −),7.339,7.359,7.791,7.812(dd,8H,−C6 H4 −)。13C−NMR(100MHz,CDCl3 ),δ(ppm):144.729,133.002,129.773,127.931,70.693,70.511,70.231,70.117,69.185,68.631,21.589。
【0036】
図1ステップ(c)に示すように、ステップ(a)で得た産物のSPIO−Si溶液を80℃の温度に降下し、第1の実施例中において別に3g(4.2mmole)PEG(400)−OTsを取り、これを50mlトルエン中に溶解させた後、前項SPIO−Si溶液を添加して80℃の温度下で20時間反応した。400rpmで10分間遠心してトルエンで過量のAPTMS及びPEG(400)−OTsを洗浄した後、再び遠心して褐色の沈澱物を得、これをメチルアルコールで分散した後4mlアンモニア水を添加して48時間攪拌した。脱イオン水を加えた後メチルアルコールを抽出して除去した。SPETRUM透析膜(12,000−14,000out off)を使用して透析し、大量の脱イオン水で10回以上透析して溶液中の塩類を完全に除去した。得られた産物SPIO−PEG(400)のフーリエ変換赤外スペクトラム(FT−IR):3417.7cm-1,3295.5cm-1,2923.4cm-1,2853.4cm-1,1641.8cm-1,1548.9cm-1,1461.6cm-1,1351.5cm-1,1120.4cm-1,929.7cm-1。
【0037】
図1ステップ(c)に示すように、ステップ(a)で得た産物のSPIO−Si溶液を80℃の温度に降下し、第2の実施例中において別に6g(4.6mmole)PEG(1000)−OTsを取り、これを50mlトルエン中に溶解させた後、前項SPIO−Si溶液を添加して80℃の温度下で20時間反応した。4000rpmで10分間遠心してトルエンで過量のAPTMS及びPEG(1000)−OTsを洗浄した後、再び遠心して褐色の沈澱物を得、これをメチルアルコールで分散した後4mlアンモニア水を添加して48時間攪拌した。脱イオン水を加えた後メチルアルコールを抽出して除去した。SPETRUM透析膜(12,000−14,000out off)を使用して透析し、大量の脱イオン水で10回以上透析して溶液中の塩類を完全に除去した。得られた産物SPIO−PEG(1000)のフーリエ変換赤外スペクトラム(FT−IR):3425.7cm-1,3298.8cm-1,2923.9cm-1,2853.9cm-1,1642.0cm-1,1546.3cm-1,1490.0cm-1,1351.3cm-1,1106.3cm-1,949.3cm-1。
【0038】
図1ステップ(c)に示すように、ステップ(a)で得た産物のSPIO−Si溶液を80℃の温度に降下し、第3の実施例中において別に9g(3.9mmole)PEG(2000)−OTsを取り、これを50mlトルエン中に溶解させた後、前項SPIO−Si溶液を添加して80℃の温度下で20時間反応した。4000rpmで10分間遠心してトルエンで過量のAPTMS及びPEG(2000)−OTsを洗浄した後、再び遠心して褐色の沈澱物を得、これをメチルアルコールで分散した後4mlアンモニア水を添加して48時間攪拌した。脱イオン水を加えた後メチルアルコールを抽出して除去した。SPETRUM透析膜(12,000−14,000out off)を使用して透析し、大量の脱イオン水で10回以上透析して溶液中の塩類を完全に除去した。得られた産物SPIO−PEG(2000)のフーリエ変換赤外スペクトラム(FT−IR):3426.9cm-1,3284.1cm-1,2921.6cm-1,2855.1cm-1,1641.9cm-1,1462.5cm-1,1351.5cm-1,1104.6cm-1,950.7cm-1。
【0039】
図1ステップ(d)に示すように、0.002g(4.8μmole)葉酸を5mlジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、0.036g(0.23mmole)EDC及び0.026g(0.023mmole)NHSを添加して30分間攪拌した後、更に第1の実施例の5ml(10.8mM)SPIO−PEG(400)と混合し、室温下で48時間攪拌した。SPETRUM透析膜(12,000−14,000out off)を使用して透析し、大量の脱イオン水で10回以上透析して溶液中の塩類を完全に除去した。得られた産物SPIO−PEG(400)−FAのフーリエ変換赤外スペクトラム(FT−IR):3397.2cm-1,2924.6cm-1,2583.7cm-1,1687.8cm-1,1641.8cm-1,1607.8cm-1,1106.0cm-1。紫外線/可視光線吸収スペクトラム(UV/Vis):360nm,280nm,200nm。
【0040】
図1ステップ(d)に示すように、0.002g(4.8μmole)葉酸を5mlジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、0.036g(0.23mmole)EDC及び0.026g(0.023mmole)NHSを添加して30分間攪拌した後、更に第2の実施例の5ml(10.8mM)SPIO−PEG(1000)と混合し、室温下で48時間攪拌した。SPETRUM透析膜(12,000−14,000out off)を使用して透析し、大量の脱イオン水で10回以上透析して溶液中の塩類を完全に除去した。得られた産物SPIO−PEG(1000)−FAのフーリエ変換赤外スペクトラム(FT−IR):3395.6cm-1,2924.4cm-1,2853.8cm-1,1686.6cm-1,1608.9cm-1,1106.1cm-1。紫外線/可視光線吸収スペクトラム(UV/Vis):360nm,280nm,200nm。
【0041】
図1ステップ(d)に示すように、0.002g(4.8μmole)葉酸を5mlジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、0.036g(0.23mmole)EDC及び0.026g(0.023mmole)NHSを添加して30分間攪拌した後、更に第3の実施例の5ml(10.8mM)SPIO−PEG(2000)と混合し、室温下で攪拌した。SPETRUM透析膜(12,000−14,000out off)を使用して透析し、大量の脱イオン水で10回以上透析して溶液中の塩類を完全に除去した。得られた産物SPIO−PEG(2000)−FAのフーリエ変換赤外スペクトラム(FT−IR):3358.5cm-1,2923.8cm-1,2853.5cm-1,1687.8cm-1,1604.5cm-1,1100.0cm-1。紫外線/可視光線吸収スペクトラム(UV/Vis):360nm,280nm,200nm。
【0042】
図2はSQUIDでSPIO粉末を測量する、感応磁界と印加磁界との対応関係を示す図である。図2(a)に示すように、SPIOが310Kの場合、図2のマグネティック・クリーピング曲線は印加磁界が消失した時に、SPIOの感応磁界もそれにつれて消失し、マグネティック・クリーピンク現象が発生しない。これはSPIOがスーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子であるのを証明し、且つ、その飽和磁化率は20000Oeの時に62emu/gである。これにより、SPIOがスーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子であることを証明できる。
【0043】
図3は本発明化合物のPEG(400)の赤外線スペクトログラフ分析図である。図3に示すように、(a)はSPIOであり、3399cm-1において一つの信号を有し、これは酸化鉄ナノ粒子の表面−OH官能基である。(b)はAPTMSであり、1300〜1600cm-1の間にいくらかの低強度の信号があると共に、2887〜2973cm-1の間に−CH2 −の信号がある。したがって、SPIOにAPTMSを被覆した後得られたSPIO−Siは、図3(c)に示すように、3381cm-1において一つのワイド・バンドの信号、即ち−NH2 及び−OHの混合信号があり、且つ1300〜1600cm-1に低強度の信号があり、APTMSが既にSPIOの表面を修飾していることを裏付けている。そしてSPIO−Siは継続的にPEG(400)と反応してSPIO−PEG(400)を生成し、図3(d)に示すように、スペクトログラムは3417cm-1と3295cm-1との箇所に二組の、−NH及び−NH2 の官能基である信号があり、また1351.5cm-1と1120.4cm-1との箇所にC−O−Cである吸収信号があることから、PEGは既にしっかり酸化鉄ナノ粒子の表面にリンクされていることを裏付けている。(e)は葉酸であり、3000〜3600cm-1の間及び1100〜1700cm-1の間に数組の信号があり、特に、1605cm-1及び1694cm-1のこの両組は葉酸の代表信号である。したがって、葉酸とリンクを生成したSPIO−PEG(400)−FAは、図3(f)に示すように、3100〜3600cm-1の間に一つのワイド・バンドの吸収信号があり、そして1607cm-1及び1687cm-1にも葉酸を代表する吸収信号がある。フーリエ変換赤外線スペクトログラフを利用して各サンプルの吸収信号を測量したところ、PEG(400)が既にうまくSPIOの表面を被覆しており、且つ、SPIO−PEG(400)上に葉酸が修飾、リンクされておることが証明された。
【0044】
図4は本発明化合物のPEG(1000)の赤外線スペクトログラフ分析図である。図4に示される結果から図2と吻合しているので、既にうまくPEG(1000)を酸化鉄ナノ粒子の表面に修飾し、PEG上において修飾を行い、葉酸とリンクしてSPIO−PEG(1000)−FAを生成していることが証明されている。
【0045】
図5は本発明化合物のPEG(2000)の赤外線スペクトログラフ分析図である。図5に示される結果から図2とも吻合しているので、既にうまくPEG(2000)を酸化鉄ナノ粒子の表面に修飾し、PEG上において修飾を行い、葉酸とリンクしてSPIO−PEG(2000)−FAを生成していることが証明されている。
【0046】
図6、図7、図8は本発明化合物のPEG(400),PEG(1000)及びPEG(2000)の紫外可視線スペクトログラフ分析図である。図6に示すように、SPIO−PEG(400)の波長は、220nmにおいて明らかに激増した吸収ピークを有し、そして葉酸は360nm及び290nmにおいて明らかに激増した吸収ピークを有している。葉酸とリンクを生成したSPIO−PEG(400)−FAは、波長360nm、280nm及び200nmにおいていずれも吸収ピークを有しており、SPIO−PEG(400)−FAの表面が確に修飾され、葉酸に連結していることが立証されている。同様な状況も、他の二つの不同分子量で修飾された酸化鉄ナノ粒子上にあり、図7及び図8においても同様な吸収ピークが見られた。これは不同分子量のPEGを被覆した酸化鉄ナノ粒子を証明し、SPIO−PEG(400)−FA,SPIO−PEG(1000)−FA及びSPIO−PEG(2000)−FAはいずれもうまく葉酸を酸化鉄ナノ粒子の表面に修飾していることを証明している。
【0047】
酸化鉄ナノ粒子は、まだ生物相容性を有する材料を被覆していない時、容易に集中が発生し巨大顆粒を形成して沈澱する。良好な生物相容性の材料を被覆した後、各酸化鉄ナノ粒子の外層は一層のフィルムが形成され、このフィルムは酸化鉄ナノ粒子に集中を発生させないので、その分散性を増加する。我々は透過式電子顕微鏡の分析を通して酸化鉄ナノ粒子が集中しているか否かを判断でき、これにより既に良好な生物相容性の材料を被覆してその分散性を増加できることが証明されている。そして合成した酸化鉄ナノ粒子、そのシデロホア部分の平均粒径サイズを計測した。
【0048】
図9は本発明化合物のPEG(400)の透過式電子顕微鏡映像分析を示す図である。図9に示すように、SPIO−PEG(400)−FAのシデロホア部分はその平均粒径が3.8±0.8nm、且つ、分散性が良好である。酸化鉄ナノ粒子はPEG(400)を被覆し、且つ、葉酸とリンクした後でもなお良好な分散性を具備している。図10及び図11は本発明におけるPEG(400)の透過式電子顕微鏡分析映像を示す図である。分析の結果から、SPIO−PEG(1000)−FA及びSPIO−PEG(2000)−FAのシデロホア平均粒径はいずれも3.8±0.8nmであり、SPIO−PEG(400)−FAと同一の結果を有するので、良好な分散性の酸化鉄ナノ粒子を有している。
【0049】
腫瘍細胞は一種の絶えず快速に分裂した細胞であり、分裂時に大量のDNA及びRNAを合成する必要がある。葉酸は細胞の生長に不可欠な重要因子であり、DNA及びRNAの生成先駆物であるので、細胞の分裂時に大量の葉酸を収める必要がある。したがって、大部分の腫瘍細胞の細胞膜上には、いずれも葉酸レセプタの過度表現がある。これであれば、既に葉酸を修飾した酸化鉄ナノ粒子は容易に細胞膜上にターゲットして細胞内に進入することができる。人類鼻咽喉表皮癌細胞(KB cell)は葉酸レセプタが過度表現を有する腫瘍細胞であり、既に葉酸を修飾した酸化鉄ナノ粒子を大量細胞中に進入させる。他方、蛍光染色剤Fiuorescein isothiocy anate(FITC)は蛍光を発する特性があって、PEGとカップリングして栄光検出ターゲットとすることが出来るので、FITC−PEG(1000)を利用して葉酸を修飾した酸化鉄ナノ粒子の競争試剤とすることができる。このようにすることにより、流式細胞分析儀を利用して葉酸を修飾した酸化鉄ナノ粒子が標的葉酸レセプタの特性を有するか否かを分析することができる。
【0050】
図12は本発明化合物のPEG(400)の流式細胞儀分析結果を示す図である。SPIO−PEG(400)−FAとKB細胞とを培養した結果、図12に示すように、赤色線はKB細胞しかなく、緑色線はSPIO−PEG(400)−FA+KB細胞であり、得られた結果は赤色線と同様、いずれもFITCの信号表現を有していない。黒色線はFITC−PEG(1000)−FA+KB細胞であり、その信号に明らかな上昇があるのを見る。青色線はKB細胞であり、先ずSPIO−PEG(400)−FAと作用した後、さらにFITC−PEG(1000)−FAを添加したが、KB細胞膜上の葉酸レセプタが既にSPIO−PEG(400)−FAに占拠されているので、後に続いて添加したFITC−PEG(1000)−FAは、もはや再度KB細胞膜上の葉酸レセプタにリンクすることができない。したがって、信号の表現はSPIO−PEG(400)−FAがKB細胞と作用する表現と一致しており、SPIO−PEG(400)−FAはKB細胞上の葉酸レセプタをターゲットできることが証明されている。図13及び図14は本発明のPEG(1000)及びPEG(2000)の流式細胞儀分析結果を示し、この分析結果から、SPIO−PEG(1000)−FA及びSPIO−PEG(2000)−FAはSPIO−PEG(400)−FAと同様、いずれもKB細胞上の葉酸レセプタにターゲットできることが立証された。
【0051】
表1は本発明の実施例と先行技術との弛緩率の比較を示す。20MHz弛緩メータを使用して、37.0±0.1℃の温度下でSPIO−PEG(400),SPIO−PEG(1000) 及びSPIO−PEG(200)の縦方向時間と横方向弛緩時間とを測量したが、SPIO−PEG(400)のr1 が11.5±1.3mM-1s-1、r2 が122.1±1.8mM-1s-1、r2 /r1 の比率が10.62であった。SPIO−PEG(1000)のr1 は10.9±±1.5mM-1s-1、r2 は110.1±2.0mM-1s-1、r2 /r1 比率は10.10である。SPIO−PEG(2000)のrは12.1±1.2mM-1s-1、r2 は104.0±1.8mM-1s-1、r2 /r1 比率は8.60である。表1に示すように、本発明により合成された酸化鉄ナノ粒子r/r1 の数値は市販のResovistよりも高い。したがって、本発明の、葉酸レセプタ標的特性を有するSPIO−PEG(400)−FA,SPIO−PEG(1000)−FA及びSPIO−PEG(2000)−FAは将来葉酸レセプタ過度表現を有する細胞を検出するものとすることができ、標的葉酸レセプタの磁気共振造影対比剤となる潜力を有する。
【0052】
表1:20MHz弛緩メータを使用して37.0±0.1℃の温度下でSPIO−PEG(400)−FA,SPIO−PEG(1000)−FA及びSPIO−PEG(2000)−FAの縦方向及び横方向弛緩時間を測量した。
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の化合物製備フローを示す見取図である。
【図2】SQUIDでSPIO粉末を測量する、感応磁界と印加磁界との対応関係を示す図である。
【図3】本発明化合物のPEG(400)の赤外線スペクトログラフ分析図である。
【図4】本発明化合物のPEG(1000)の赤外線スペクトログラフ分析図である。
【図5】本発明化合物のPEG(2000)の赤外線スペクトログラフ分析図である。
【図6】本発明化合物のPEG(400)の紫外可視線スペクトログラフ分析図である。
【図7】本発明化合物のPEG(1000)の紫外可視線スペクトログラフ分析図である。
【図8】本発明化合物のPEG(2000)の紫外可視線スペクトログラフ分析図である。
【図9】本発明化合物のPEG(400)の透過式電子顕微鏡映像分析図である。
【図10】本発明化合物のPEG(1000)の透過式電子顕微鏡映像分析図である。
【図11】本発明化合物のPEG(2000)の透過式電子顕微鏡映像分析図である。
【図12】本発明化合物のPEG(400)の流式細胞儀分析結果を示す図である。
【図13】本発明化合物のPEG(1000)の流式細胞儀分析結果を示す図である。
【図14】本発明化合物のPEG(2000)の流式細胞儀分析結果を示す図である。
【主要素子の符号の説明】
【0054】
SPIO スーパーパラマグネティック酸化鉄
PEG ポリエチレングリコール
FA 葉酸
APTMS 3−(アミノプロピル)トリメトキシシラン
PEG−OTs トルエンスルホン基ポリエチレングリコール
TsCl トルエン−4−スルホニルクロリド
TEA トリエチルアミン
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気共振造影対比剤及びその製備方法に関し、特に、スーパーパラマグネティック酸化鉄(Superpara-magnetic Iron Oxide,SPIO)ナノ粒子を含んだ磁気共振造影対比剤及びその製備方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医学映像を利用して診断を補助する物理療法において、磁気共振造影(MRI)は高解析の映像を提供でき且つX−rayのような輻射傷害がないので核磁気造影技術は益々広汎に臨床診断に応用されるようになった。MRIは強磁界下で引導された弛緩率差異により映像対比をもたらさせ、対比剤(contrast agents)を使用することにより映像の対比を一層向上した。
【0003】
磁気共振対比剤の発展は磁界下における特性につれて大きく二つに分けられる。その一つは縦方向弛緩時間(spin-lattice relaxation time,T1)の減少を主とする磁気共振造影対比剤(T1造影剤と称する)であり、この種の造影剤はT1の信号強度を上昇させるので、組織信号を増強することに用いられる(MRI映像は比較的明るいように見える)。目前T1対比剤に属する金属錯化合物は〔Gd(DTPA)〕2-(diethylene-triaminepentaacetate-gadolinium(III))、〔Gd(DOTA)〕2-(1,4,7,10-tetra-azacyclododecane-N,N’,N’’,N’’’-tetraacetate-gadolinium(III))、〔Gd(BOPTA)〕2-(benzyloxypropioic-diethylenetriamine pentaacetate-gadolinium(III))、MnDPDP(N,N’-dipyridoxylethylene diamine-N,N’-diacetate-5,5’-bis(phosphate)-manganese(II))等である。他の一つは横方向弛緩時間(spin-spinrelaxation time,T2)の減少を主とする対比剤(T2対比剤と称する)であり、これは一種の微細物質の重合体であって、通常スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子(SPIO nanoparticles)と称する。この種の対比剤は磁界強度不均一の現象を発生してT2弛緩時間を短縮するので、組織信号を減少して組織が正常か否かを識別するに用いられる(MRI映像上では比較的暗いように見える)。
【0004】
T1の降下方法は血管内にしか応用されないので、その効果範囲は比較的小さく、T2の方法範囲が微血管周辺組織までに及ぶ可能性を低下する。したがって、SPIOを主とするT2磁気共振造影対比剤は極めて潜在的な応用価値を有する。その中、Product-orientedを有する磁気共振造影対比剤は目前磁気共振造影研究の重要方向である。
【0005】
しかしながら、酸化鉄ナノ粒子が比較的大きな表面積を有しているので、酸化鉄ナノ粒子が容易に集中し血漿蛋白(plasma proteins)を吸着する。酸化鉄ナノ粒子が人体に注射された後、もし酸化鉄ナノ粒子が集中又は吸着現象が発生すると、人体内に巨大細胞が存在して、迅速に単核球食細胞系統(mononuclear phagocyte system,MPS)により除去されるので、酸化鉄ナノ粒子が快速に血液中から排除され、細胞組織に達することができない。したがって、酸化鉄ナノ粒子の血液中における半生期を増長するために、酸化鉄ナノ粒子の表面に一層のフィルムを被覆している。このフィルムの材料は高度な生物相容性(biocompatibility),非免疫性(nonimmunogenic),非抗原性(nonantigenic)及び抗蛋白質吸着(protein-resistant)を具備しなければならない。フィルムで被覆した後の酸化鉄ナノ粒子はその集中及び吸着を回避でき、これにより酸化鉄ナノ粒子が単核球食細胞系統に食われるのを減らして、順利に細胞を組織することができる。
【0006】
目前、SPIOを被すためのフィルムは主に葡萄多糖類又はその派生物により組成されている。その中、ポリエチレングリコール(PEG)は低毒性無電荷の親水性残基であり、体内で分解代謝できるので、近十年来、多くの薬物はPEGを通して彼等の生物相容性を改善しており、同時に蛋白質が吸着されるのを防止している。しかしながら、酸化鉄ナノ粒子を被覆する場合大量のPEGが必要なので、一般市販のPEGはより反応性を具備させるために不同官能を修飾しており、目前市中では修飾を経過した後−NHS又は−COOHの官能基を帯びたものが販売されている。これは繁雑な合成ステップを経過してから製備できるので、市販価格が比較的高い。
【0007】
酸化鉄ナノ粒子を細胞に内化するには、通常以下の方式、例えば液相飲作用(fluid phase pinocytosis)、レセプタ引導飲作用(receptor-mediated pinocytosis)及び食作用(phagocytosis)がある。その中、レセプタ引導飲作用の方式で、酸化鉄ナノ粒子の表面を、特殊細胞レセプタに目標化する探針を有するように修飾し、レセプタ引導飲作用を利用して細胞で酸化鉄ナノ粒子をおさめることにより、酸化鉄ナノ粒子に細胞専一性を備えさせることができる。酸化鉄ナノ粒子により呈された磁気共振造影は極めて応用潜力を有するが、目前実際に医学映像診断依拠の標的に応用されているのは僅に目前EDA許可を受けたResovist(登録商標) ,Feridex(登録商標),Endorem(登録商標),Gastro MARK(登録商標) 及びLumirem(登録商標)しかなく、その標的はいずれも正常組織細胞である。したがって、もし一歩進んでSPIOの特定レセプタ探針を修飾でき且つ損害を受けた組織細胞を標的とすれば、更に一歩進んでSPIOの応用範囲を広めることができる。
【0008】
葉酸(folic acide,FA)は細胞生長に不可欠な重要因子である水溶性ビタミンBであり、DNA及びRNA生成の先駆物である。正常な細胞膜上には葉酸のレセプタがある。そして癌細胞細胞膜には正常細胞よりも多数倍多い葉酸レセプタが出現する。したがって、もし葉酸レセプタを標的とする酸化鉄ナノ粒子を設計できれば、癌細胞の位置の検出及び一歩進んだ治療に用いられることができる。
【0009】
M.Zhang等は2004年J.Am.Chem.Soc.第126巻第7206ページに、PEG分子量が600ダルトンのを使用して被覆物とする合成方法は、フーリエ変換赤外スペクトログラフ測定量により、酸化鉄ナノ粒子の表面には確実に既にPEG及び葉酸が修飾されているのを証明したと掲示されている。
【0010】
したがって、目前市中には既に修飾後不同官能基を帯びたPEGがあるが、そのスーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子の合成ステップは繁雑且つ高価であるので、目前では医学診断映像上において素早やく癌細胞の専一性標的の対比剤を得ることにより、磁気共振映像で明確に癌細胞の位置を判別することが切に望まれている。
【0011】
これに鑑がみ、上記従来の技術にて発生した欠陥を解決するために鋭意テストと研究とを重ねた結果、ついに、本発明の「スーパーパラマグネティック酸化鉄−ポリエチレングリコール−葉酸(SPIO−PEG−FA)化合物及びその方法を案出した。
【発明の開示】
【0012】
本発明は先行技術が存在していた欠陥を克服するために、分子式がX−Yn −Zである化合物を提供する。式中、Xはスーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子、Yはポリエチレングリコール、Zは葉酸、nはポリエチレングリコールの重合数である。
【0013】
上記化合物において、該Xはシリコーンにより修飾されたスーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子である。
【0014】
また上記化合物において、該ポリエチレングリコールの重合数nは8−25である。
【0015】
また、上記化合物において該スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子の粒径は3−5nmである。
【0016】
また上記化合物において、該シリコーンは3−(アミノプロピル)トリメトキシシラン(以下、APTMSと略称)である。
【0017】
本発明は他に磁性粒子の製備方法を提供する。該方法は(1)スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子を製備するステップと、(2)ポリエチレングリコールを修飾するステップと、(3)該スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子と修飾後のポリエチレングリコールとをカップリングして結合物を得るステップと、(4)該結合物と葉酸とをカップリングして磁性粒子を得るステップとを備えてなる。
【0018】
上記方法において、該スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子は油酸と酸化鉄との作用により得られる。
【0019】
また上記方法において、該ステップ(1)の後は更に、シリコーンで該スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子表面をカバーするステップ(1−1)を備える。
【0020】
また上記方法において、該シリコーンはAPTMSである。
【0021】
また上記方法において、該ステップ(2)の修飾作用はトリエチレンアミン、ポリエチレングリコール及びトルエン−4−スルホニルクロリド(TsCl)による作用である。
【0022】
また上記方法において、該修飾作用の産物はトルエンスルホン基ポリエチレングリコールである。
【0023】
また上記方法において該ポリエチレングリコールの平均分子量は400ダルトンである。
【0024】
また、該ポリエチレングリコールの平均分子量は1000ダルトンである。
【0025】
更には該ポリエチレングリコールの平均分子量は2000ダルトンである。
【0026】
上記方法において、ステップ(4)の葉酸は1−エチル−3−(3−ジエチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDCと略称)とN’−ヒドロキシサクシンイミド(NHSと略称)とにより修飾されている。
【0027】
また上記方法において、該結合物と修飾後の葉酸とをカップリングすることにより、磁性粒子を得ることができる。
【0028】
また、本発明により提供される方法によれば、磁性粒子を得ることができ、該化合物は核磁気造影の対比剤に用いられる。
【0029】
本発明はスーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子に関し、且つ、トルエンスルホン基ポリエチレングリコールを利用してスーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子を被覆した後葉酸と結合し、葉酸標的癌細胞細胞上の葉酸レセプタを利用して、特性標的性を有する磁気共振造影対比剤とする。
【0030】
以下、図面を参照しながら比較的好適な実施例を説明すれば十分に理解を得ることができ、この分野に熟知せるものであればこれに基づいて完成することができる。しかしながら本発明の技術的思想はこれら実施例に限定されないのは言うまでもない。
【実施の形態】
【0031】
図1は本発明の化合物製備方法を示す見取図である。これを参照しながら以下その方法を詳細に説明する。
【0032】
図1のステップ(a)に示すように、スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子製備方法は、先ず5.2g(31.43mmole)FeCl3 及び3.12g(15.42mmole)FeCl3 ・4H2 Oを25ml(0.4M)塩酸中に溶解し、激烈に攪拌した後徐々に250ml(2.5M)水酸化ナトリウム(NaOH)溶液中に滴定する;次にこれに続いて1時間攪拌した後、4000rpmで10分間遠心すると黒色固体が得られた。この固体を取り、脱イオン水で新たに分散した後、4000rpmで10分間遠心し、これを5回重複して過量のNaOHを洗浄した。再度黒色固体を脱イオン水で新たに分散し、攪拌下で油酸を添加した後、更にトルエンで抽出を行って黒色液体を取得すると、フーリエ変換赤外スペクトル(FT−IR)が3399.0cm-1,1636.7cm-1であるスーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子が得られた。続いて、0.1gスーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子を200mlトルエン中に溶解し、N2 の通気下で95℃まで加熱した後持続30分間攪拌した。最後に、3−(アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)を160℃まで加熱して6時間回流すると、図1ステップ(a)に示す、シリコーンで表面を被覆したスーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子(以下SPIO−Siと略称する)が得られた。
【0033】
本発明はPEGの分子量に対して三つの異なる実施例を選択した。その中図1ステップ(b)に示すように、第1の実施例において平均分子量(Mn)が400ダルトンであるPEG(以下PEG(400)と称する)を採択した。12.3g(62.5mmole)トルエン−4−スルホニルクロリド(TsCl)を200mlトルエン中に溶解した。10g(25mmole)PEG(400)及び9.53ml(68.75mmole)トリエチレンアミン(TEA)を50mlトルエンに溶解し、激烈に攪拌した後徐々にTsCl溶液中に滴定して室温下で24時間反応した。H2 O/トルエンで抽出して真空濃縮機でトルエン層を濃縮した後真空系統で乾燥し、最後ヘキサンで過量のTsClを洗浄すると、トルエンスルホン基ポリエチレングリコール(400)(以下PEG(400)−OTsと称する)16.72g(23.6mmole)、歩留94.4%の産物が得られた。PEG(400)−OTsの水素核磁気共振スペクトル 1H−NMR(400MHz,CDCl3 ),δ(ppm):2.445(s,6H,−C6 H4 −CH3 ),3.577−3.692(m,3H,−(CH2 −O−CH2 )n −),4.142,4.154,4.166(t,4H,−OCH2 −CH2 −SO2 −),7.388,7.358,7.781,7.801(dd,8H,−C6 H4 −)。13C−NMR(100MHz,CDCl3 ),δ(ppm):144.639,132.696,129.642,127.733,70.460,70.332,70.279,70.241,69.104,68.407,21.433。
【0034】
図1ステップ(b)に示すように、第2の実施例において平均分子量(Mn)が1000ダルトンであるPEG(以下、PEG(1000)と称する)を採択した。12.3g(62.5mmole)TsClを250mlトルエン中に溶解し、25g(25mmole)PEG(1000)及び9.53ml(68.75mmole)TEAを添加して室温下で48時間反応した。抽気ろ過した後、H2 O/トルエンで抽出して真空濃縮機でH2 O層を濃縮した後、更にクロロフォルム(CHCl3 )で溶解ろ過し、最後に真空濃縮機でろ液を濃縮すると、トルエンスルホン基ポリエチレングリコール(1000)(以下PEG(1000)−OTsと称する)30.7g(23.5mmole)、歩留93.7%の産物が得られた。PEG(1000)−OTsの水素核磁気共振スペクトル 1H−NMR(400MHz,CDCl3 ),δ(ppm):2.410(s,6H,−C6 H4 −CH3 ),3.539−3.655(m,108H,−(CH2 −O−CH2 )n −),4.103,4.115,4.127(t,4H,−OCH2 −CH2 −SO2 −),7.300,7.320,7.744,7.764(dd,8H,−C6 H4 −)。13C−NBR(100MHz,CDCl3 ),δ(ppm):144.592,132.836,129.644,127.764,70.519,70.398,70.360,70.307,69.966,68.071,68.457,21.437。
【0035】
図1ステップ(b)に示すように、第3の実施例では平均分子量(Mn)が2000ダルトンであるPEG(以下、PEG(2000)と称する)を採択した。12.3g(62.5mmole)TsClを250mlトルエン中に溶解し、50g(25mmole)PEG(2000)及び9.53ml(68.75mmole)TEAを添加して室温下で48時間反応した。抽気ろ過した後、H2 O/トルエンで抽出して真空濃縮機でH2 O層を濃縮した後、更にクロロフォルム(CHCl3 )で溶解ろ過し、最後に真空濃縮機でろ液を濃縮すると、トルエンスルホン基ポリエチレングリコール(2000)(以下、PEG(2000)−OTsと称する)53.5g(23.2mmole)、歩留92.6%の産物が得られた。PEG(2000)−OTs水素核磁気共振スペクトル 1H−NMR(400MHz,CDCl3 ),δ(ppm):2.453(s,6H,−C6 H4 −CH3 ),3.585−3.701(m,196H,−(CH2 −O−CH2 )n −),4.148,4.161,4.173(t,4H,−OCH2 −CH2 −SO2 −),7.339,7.359,7.791,7.812(dd,8H,−C6 H4 −)。13C−NMR(100MHz,CDCl3 ),δ(ppm):144.729,133.002,129.773,127.931,70.693,70.511,70.231,70.117,69.185,68.631,21.589。
【0036】
図1ステップ(c)に示すように、ステップ(a)で得た産物のSPIO−Si溶液を80℃の温度に降下し、第1の実施例中において別に3g(4.2mmole)PEG(400)−OTsを取り、これを50mlトルエン中に溶解させた後、前項SPIO−Si溶液を添加して80℃の温度下で20時間反応した。400rpmで10分間遠心してトルエンで過量のAPTMS及びPEG(400)−OTsを洗浄した後、再び遠心して褐色の沈澱物を得、これをメチルアルコールで分散した後4mlアンモニア水を添加して48時間攪拌した。脱イオン水を加えた後メチルアルコールを抽出して除去した。SPETRUM透析膜(12,000−14,000out off)を使用して透析し、大量の脱イオン水で10回以上透析して溶液中の塩類を完全に除去した。得られた産物SPIO−PEG(400)のフーリエ変換赤外スペクトラム(FT−IR):3417.7cm-1,3295.5cm-1,2923.4cm-1,2853.4cm-1,1641.8cm-1,1548.9cm-1,1461.6cm-1,1351.5cm-1,1120.4cm-1,929.7cm-1。
【0037】
図1ステップ(c)に示すように、ステップ(a)で得た産物のSPIO−Si溶液を80℃の温度に降下し、第2の実施例中において別に6g(4.6mmole)PEG(1000)−OTsを取り、これを50mlトルエン中に溶解させた後、前項SPIO−Si溶液を添加して80℃の温度下で20時間反応した。4000rpmで10分間遠心してトルエンで過量のAPTMS及びPEG(1000)−OTsを洗浄した後、再び遠心して褐色の沈澱物を得、これをメチルアルコールで分散した後4mlアンモニア水を添加して48時間攪拌した。脱イオン水を加えた後メチルアルコールを抽出して除去した。SPETRUM透析膜(12,000−14,000out off)を使用して透析し、大量の脱イオン水で10回以上透析して溶液中の塩類を完全に除去した。得られた産物SPIO−PEG(1000)のフーリエ変換赤外スペクトラム(FT−IR):3425.7cm-1,3298.8cm-1,2923.9cm-1,2853.9cm-1,1642.0cm-1,1546.3cm-1,1490.0cm-1,1351.3cm-1,1106.3cm-1,949.3cm-1。
【0038】
図1ステップ(c)に示すように、ステップ(a)で得た産物のSPIO−Si溶液を80℃の温度に降下し、第3の実施例中において別に9g(3.9mmole)PEG(2000)−OTsを取り、これを50mlトルエン中に溶解させた後、前項SPIO−Si溶液を添加して80℃の温度下で20時間反応した。4000rpmで10分間遠心してトルエンで過量のAPTMS及びPEG(2000)−OTsを洗浄した後、再び遠心して褐色の沈澱物を得、これをメチルアルコールで分散した後4mlアンモニア水を添加して48時間攪拌した。脱イオン水を加えた後メチルアルコールを抽出して除去した。SPETRUM透析膜(12,000−14,000out off)を使用して透析し、大量の脱イオン水で10回以上透析して溶液中の塩類を完全に除去した。得られた産物SPIO−PEG(2000)のフーリエ変換赤外スペクトラム(FT−IR):3426.9cm-1,3284.1cm-1,2921.6cm-1,2855.1cm-1,1641.9cm-1,1462.5cm-1,1351.5cm-1,1104.6cm-1,950.7cm-1。
【0039】
図1ステップ(d)に示すように、0.002g(4.8μmole)葉酸を5mlジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、0.036g(0.23mmole)EDC及び0.026g(0.023mmole)NHSを添加して30分間攪拌した後、更に第1の実施例の5ml(10.8mM)SPIO−PEG(400)と混合し、室温下で48時間攪拌した。SPETRUM透析膜(12,000−14,000out off)を使用して透析し、大量の脱イオン水で10回以上透析して溶液中の塩類を完全に除去した。得られた産物SPIO−PEG(400)−FAのフーリエ変換赤外スペクトラム(FT−IR):3397.2cm-1,2924.6cm-1,2583.7cm-1,1687.8cm-1,1641.8cm-1,1607.8cm-1,1106.0cm-1。紫外線/可視光線吸収スペクトラム(UV/Vis):360nm,280nm,200nm。
【0040】
図1ステップ(d)に示すように、0.002g(4.8μmole)葉酸を5mlジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、0.036g(0.23mmole)EDC及び0.026g(0.023mmole)NHSを添加して30分間攪拌した後、更に第2の実施例の5ml(10.8mM)SPIO−PEG(1000)と混合し、室温下で48時間攪拌した。SPETRUM透析膜(12,000−14,000out off)を使用して透析し、大量の脱イオン水で10回以上透析して溶液中の塩類を完全に除去した。得られた産物SPIO−PEG(1000)−FAのフーリエ変換赤外スペクトラム(FT−IR):3395.6cm-1,2924.4cm-1,2853.8cm-1,1686.6cm-1,1608.9cm-1,1106.1cm-1。紫外線/可視光線吸収スペクトラム(UV/Vis):360nm,280nm,200nm。
【0041】
図1ステップ(d)に示すように、0.002g(4.8μmole)葉酸を5mlジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、0.036g(0.23mmole)EDC及び0.026g(0.023mmole)NHSを添加して30分間攪拌した後、更に第3の実施例の5ml(10.8mM)SPIO−PEG(2000)と混合し、室温下で攪拌した。SPETRUM透析膜(12,000−14,000out off)を使用して透析し、大量の脱イオン水で10回以上透析して溶液中の塩類を完全に除去した。得られた産物SPIO−PEG(2000)−FAのフーリエ変換赤外スペクトラム(FT−IR):3358.5cm-1,2923.8cm-1,2853.5cm-1,1687.8cm-1,1604.5cm-1,1100.0cm-1。紫外線/可視光線吸収スペクトラム(UV/Vis):360nm,280nm,200nm。
【0042】
図2はSQUIDでSPIO粉末を測量する、感応磁界と印加磁界との対応関係を示す図である。図2(a)に示すように、SPIOが310Kの場合、図2のマグネティック・クリーピング曲線は印加磁界が消失した時に、SPIOの感応磁界もそれにつれて消失し、マグネティック・クリーピンク現象が発生しない。これはSPIOがスーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子であるのを証明し、且つ、その飽和磁化率は20000Oeの時に62emu/gである。これにより、SPIOがスーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子であることを証明できる。
【0043】
図3は本発明化合物のPEG(400)の赤外線スペクトログラフ分析図である。図3に示すように、(a)はSPIOであり、3399cm-1において一つの信号を有し、これは酸化鉄ナノ粒子の表面−OH官能基である。(b)はAPTMSであり、1300〜1600cm-1の間にいくらかの低強度の信号があると共に、2887〜2973cm-1の間に−CH2 −の信号がある。したがって、SPIOにAPTMSを被覆した後得られたSPIO−Siは、図3(c)に示すように、3381cm-1において一つのワイド・バンドの信号、即ち−NH2 及び−OHの混合信号があり、且つ1300〜1600cm-1に低強度の信号があり、APTMSが既にSPIOの表面を修飾していることを裏付けている。そしてSPIO−Siは継続的にPEG(400)と反応してSPIO−PEG(400)を生成し、図3(d)に示すように、スペクトログラムは3417cm-1と3295cm-1との箇所に二組の、−NH及び−NH2 の官能基である信号があり、また1351.5cm-1と1120.4cm-1との箇所にC−O−Cである吸収信号があることから、PEGは既にしっかり酸化鉄ナノ粒子の表面にリンクされていることを裏付けている。(e)は葉酸であり、3000〜3600cm-1の間及び1100〜1700cm-1の間に数組の信号があり、特に、1605cm-1及び1694cm-1のこの両組は葉酸の代表信号である。したがって、葉酸とリンクを生成したSPIO−PEG(400)−FAは、図3(f)に示すように、3100〜3600cm-1の間に一つのワイド・バンドの吸収信号があり、そして1607cm-1及び1687cm-1にも葉酸を代表する吸収信号がある。フーリエ変換赤外線スペクトログラフを利用して各サンプルの吸収信号を測量したところ、PEG(400)が既にうまくSPIOの表面を被覆しており、且つ、SPIO−PEG(400)上に葉酸が修飾、リンクされておることが証明された。
【0044】
図4は本発明化合物のPEG(1000)の赤外線スペクトログラフ分析図である。図4に示される結果から図2と吻合しているので、既にうまくPEG(1000)を酸化鉄ナノ粒子の表面に修飾し、PEG上において修飾を行い、葉酸とリンクしてSPIO−PEG(1000)−FAを生成していることが証明されている。
【0045】
図5は本発明化合物のPEG(2000)の赤外線スペクトログラフ分析図である。図5に示される結果から図2とも吻合しているので、既にうまくPEG(2000)を酸化鉄ナノ粒子の表面に修飾し、PEG上において修飾を行い、葉酸とリンクしてSPIO−PEG(2000)−FAを生成していることが証明されている。
【0046】
図6、図7、図8は本発明化合物のPEG(400),PEG(1000)及びPEG(2000)の紫外可視線スペクトログラフ分析図である。図6に示すように、SPIO−PEG(400)の波長は、220nmにおいて明らかに激増した吸収ピークを有し、そして葉酸は360nm及び290nmにおいて明らかに激増した吸収ピークを有している。葉酸とリンクを生成したSPIO−PEG(400)−FAは、波長360nm、280nm及び200nmにおいていずれも吸収ピークを有しており、SPIO−PEG(400)−FAの表面が確に修飾され、葉酸に連結していることが立証されている。同様な状況も、他の二つの不同分子量で修飾された酸化鉄ナノ粒子上にあり、図7及び図8においても同様な吸収ピークが見られた。これは不同分子量のPEGを被覆した酸化鉄ナノ粒子を証明し、SPIO−PEG(400)−FA,SPIO−PEG(1000)−FA及びSPIO−PEG(2000)−FAはいずれもうまく葉酸を酸化鉄ナノ粒子の表面に修飾していることを証明している。
【0047】
酸化鉄ナノ粒子は、まだ生物相容性を有する材料を被覆していない時、容易に集中が発生し巨大顆粒を形成して沈澱する。良好な生物相容性の材料を被覆した後、各酸化鉄ナノ粒子の外層は一層のフィルムが形成され、このフィルムは酸化鉄ナノ粒子に集中を発生させないので、その分散性を増加する。我々は透過式電子顕微鏡の分析を通して酸化鉄ナノ粒子が集中しているか否かを判断でき、これにより既に良好な生物相容性の材料を被覆してその分散性を増加できることが証明されている。そして合成した酸化鉄ナノ粒子、そのシデロホア部分の平均粒径サイズを計測した。
【0048】
図9は本発明化合物のPEG(400)の透過式電子顕微鏡映像分析を示す図である。図9に示すように、SPIO−PEG(400)−FAのシデロホア部分はその平均粒径が3.8±0.8nm、且つ、分散性が良好である。酸化鉄ナノ粒子はPEG(400)を被覆し、且つ、葉酸とリンクした後でもなお良好な分散性を具備している。図10及び図11は本発明におけるPEG(400)の透過式電子顕微鏡分析映像を示す図である。分析の結果から、SPIO−PEG(1000)−FA及びSPIO−PEG(2000)−FAのシデロホア平均粒径はいずれも3.8±0.8nmであり、SPIO−PEG(400)−FAと同一の結果を有するので、良好な分散性の酸化鉄ナノ粒子を有している。
【0049】
腫瘍細胞は一種の絶えず快速に分裂した細胞であり、分裂時に大量のDNA及びRNAを合成する必要がある。葉酸は細胞の生長に不可欠な重要因子であり、DNA及びRNAの生成先駆物であるので、細胞の分裂時に大量の葉酸を収める必要がある。したがって、大部分の腫瘍細胞の細胞膜上には、いずれも葉酸レセプタの過度表現がある。これであれば、既に葉酸を修飾した酸化鉄ナノ粒子は容易に細胞膜上にターゲットして細胞内に進入することができる。人類鼻咽喉表皮癌細胞(KB cell)は葉酸レセプタが過度表現を有する腫瘍細胞であり、既に葉酸を修飾した酸化鉄ナノ粒子を大量細胞中に進入させる。他方、蛍光染色剤Fiuorescein isothiocy anate(FITC)は蛍光を発する特性があって、PEGとカップリングして栄光検出ターゲットとすることが出来るので、FITC−PEG(1000)を利用して葉酸を修飾した酸化鉄ナノ粒子の競争試剤とすることができる。このようにすることにより、流式細胞分析儀を利用して葉酸を修飾した酸化鉄ナノ粒子が標的葉酸レセプタの特性を有するか否かを分析することができる。
【0050】
図12は本発明化合物のPEG(400)の流式細胞儀分析結果を示す図である。SPIO−PEG(400)−FAとKB細胞とを培養した結果、図12に示すように、赤色線はKB細胞しかなく、緑色線はSPIO−PEG(400)−FA+KB細胞であり、得られた結果は赤色線と同様、いずれもFITCの信号表現を有していない。黒色線はFITC−PEG(1000)−FA+KB細胞であり、その信号に明らかな上昇があるのを見る。青色線はKB細胞であり、先ずSPIO−PEG(400)−FAと作用した後、さらにFITC−PEG(1000)−FAを添加したが、KB細胞膜上の葉酸レセプタが既にSPIO−PEG(400)−FAに占拠されているので、後に続いて添加したFITC−PEG(1000)−FAは、もはや再度KB細胞膜上の葉酸レセプタにリンクすることができない。したがって、信号の表現はSPIO−PEG(400)−FAがKB細胞と作用する表現と一致しており、SPIO−PEG(400)−FAはKB細胞上の葉酸レセプタをターゲットできることが証明されている。図13及び図14は本発明のPEG(1000)及びPEG(2000)の流式細胞儀分析結果を示し、この分析結果から、SPIO−PEG(1000)−FA及びSPIO−PEG(2000)−FAはSPIO−PEG(400)−FAと同様、いずれもKB細胞上の葉酸レセプタにターゲットできることが立証された。
【0051】
表1は本発明の実施例と先行技術との弛緩率の比較を示す。20MHz弛緩メータを使用して、37.0±0.1℃の温度下でSPIO−PEG(400),SPIO−PEG(1000) 及びSPIO−PEG(200)の縦方向時間と横方向弛緩時間とを測量したが、SPIO−PEG(400)のr1 が11.5±1.3mM-1s-1、r2 が122.1±1.8mM-1s-1、r2 /r1 の比率が10.62であった。SPIO−PEG(1000)のr1 は10.9±±1.5mM-1s-1、r2 は110.1±2.0mM-1s-1、r2 /r1 比率は10.10である。SPIO−PEG(2000)のrは12.1±1.2mM-1s-1、r2 は104.0±1.8mM-1s-1、r2 /r1 比率は8.60である。表1に示すように、本発明により合成された酸化鉄ナノ粒子r/r1 の数値は市販のResovistよりも高い。したがって、本発明の、葉酸レセプタ標的特性を有するSPIO−PEG(400)−FA,SPIO−PEG(1000)−FA及びSPIO−PEG(2000)−FAは将来葉酸レセプタ過度表現を有する細胞を検出するものとすることができ、標的葉酸レセプタの磁気共振造影対比剤となる潜力を有する。
【0052】
表1:20MHz弛緩メータを使用して37.0±0.1℃の温度下でSPIO−PEG(400)−FA,SPIO−PEG(1000)−FA及びSPIO−PEG(2000)−FAの縦方向及び横方向弛緩時間を測量した。
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の化合物製備フローを示す見取図である。
【図2】SQUIDでSPIO粉末を測量する、感応磁界と印加磁界との対応関係を示す図である。
【図3】本発明化合物のPEG(400)の赤外線スペクトログラフ分析図である。
【図4】本発明化合物のPEG(1000)の赤外線スペクトログラフ分析図である。
【図5】本発明化合物のPEG(2000)の赤外線スペクトログラフ分析図である。
【図6】本発明化合物のPEG(400)の紫外可視線スペクトログラフ分析図である。
【図7】本発明化合物のPEG(1000)の紫外可視線スペクトログラフ分析図である。
【図8】本発明化合物のPEG(2000)の紫外可視線スペクトログラフ分析図である。
【図9】本発明化合物のPEG(400)の透過式電子顕微鏡映像分析図である。
【図10】本発明化合物のPEG(1000)の透過式電子顕微鏡映像分析図である。
【図11】本発明化合物のPEG(2000)の透過式電子顕微鏡映像分析図である。
【図12】本発明化合物のPEG(400)の流式細胞儀分析結果を示す図である。
【図13】本発明化合物のPEG(1000)の流式細胞儀分析結果を示す図である。
【図14】本発明化合物のPEG(2000)の流式細胞儀分析結果を示す図である。
【主要素子の符号の説明】
【0054】
SPIO スーパーパラマグネティック酸化鉄
PEG ポリエチレングリコール
FA 葉酸
APTMS 3−(アミノプロピル)トリメトキシシラン
PEG−OTs トルエンスルホン基ポリエチレングリコール
TsCl トルエン−4−スルホニルクロリド
TEA トリエチルアミン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子式がX−Yn −Zである化合物であって、式中Xはスーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子、Yはポリエチレングリコール、Zは葉酸、nはポリエチレングリコールの重合数である化合物。
【請求項2】
前記Xはシリコーンにより修飾されたスーパーマグネティック酸化鉄ナノ粒子であり、該シリコーンは3−(アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMSと略称)である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
前記ポリエチレングリコールの重合数nは8−25であり、そして前記スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子の粒径は3−5nmである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
(1)スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子を製備するステップと、
(2)ポリエチレングリコールを修飾するステップと、
(3)前記スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子と、前記修飾後のポリエチレングリコールとをカップリングして結合物を得るステップと、
(4)前記結合物と葉酸とをカップリングして磁性粒子を得るステップと、
を備えてなる磁性粒子の製備方法。
【請求項5】
前記ステップ(1)における前記スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子は油酸と酸化鉄との作用により得られ、
前記ステップ(1)後は更に、シリコーンで該スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子の表面をカバーするステップ(1−1)を備え、及び/又は
前記ステップ(2)の修飾作用はトリエチレンアミン、ポリエチレングリコール及びトルエン−4−スルホニルクロリドによる作用であり、該修飾作用の産物はトルエンスルホン基ポリエチレングリコールである、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記ポリエチレングリコールの分子量は400ダルトン、1000ダルトン又は2000ダルトンであり、及び/又は
前記ステップ(4)の葉酸は1−エチル−3−(3−ジエチルアミノプロピル)−カルボジイミドとN−ヒドロキシサクシンイミドとにより修飾される、
請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記結合物と修飾後の葉酸とをカップリングすることにより磁性粒子を得る請求項4記載の方法。
【請求項8】
請求項4の方法により製造される磁性粒子。
【請求項9】
前記磁性粒子は磁気共振造影の対比剤に用いられる、請求項8記載の磁性粒子。
【請求項1】
分子式がX−Yn −Zである化合物であって、式中Xはスーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子、Yはポリエチレングリコール、Zは葉酸、nはポリエチレングリコールの重合数である化合物。
【請求項2】
前記Xはシリコーンにより修飾されたスーパーマグネティック酸化鉄ナノ粒子であり、該シリコーンは3−(アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMSと略称)である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
前記ポリエチレングリコールの重合数nは8−25であり、そして前記スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子の粒径は3−5nmである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
(1)スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子を製備するステップと、
(2)ポリエチレングリコールを修飾するステップと、
(3)前記スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子と、前記修飾後のポリエチレングリコールとをカップリングして結合物を得るステップと、
(4)前記結合物と葉酸とをカップリングして磁性粒子を得るステップと、
を備えてなる磁性粒子の製備方法。
【請求項5】
前記ステップ(1)における前記スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子は油酸と酸化鉄との作用により得られ、
前記ステップ(1)後は更に、シリコーンで該スーパーパラマグネティック酸化鉄ナノ粒子の表面をカバーするステップ(1−1)を備え、及び/又は
前記ステップ(2)の修飾作用はトリエチレンアミン、ポリエチレングリコール及びトルエン−4−スルホニルクロリドによる作用であり、該修飾作用の産物はトルエンスルホン基ポリエチレングリコールである、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記ポリエチレングリコールの分子量は400ダルトン、1000ダルトン又は2000ダルトンであり、及び/又は
前記ステップ(4)の葉酸は1−エチル−3−(3−ジエチルアミノプロピル)−カルボジイミドとN−ヒドロキシサクシンイミドとにより修飾される、
請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記結合物と修飾後の葉酸とをカップリングすることにより磁性粒子を得る請求項4記載の方法。
【請求項8】
請求項4の方法により製造される磁性粒子。
【請求項9】
前記磁性粒子は磁気共振造影の対比剤に用いられる、請求項8記載の磁性粒子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−38138(P2008−38138A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161276(P2007−161276)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(505302362)高雄醫學大學 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(505302362)高雄醫學大學 (11)
【Fターム(参考)】
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