説明

ポリエチレンフィルム

ポリエチレン組成物を含んでなるフィルムであって、1つの実施態様において、ポリエチレン組成物は、50,000amuより大きい重量平均分子量を有する高分子量成分と50,000amu未満の重量平均分子量を有する低分子量成分を含み;ポリエチレン組成物は、0.940〜0.970g/cm3の間の密度及び20dg/min未満のI21値を有し;ポリエチレン組成物は、有利には低い溶融温度で、有利に高い比押出量で押出することを特徴とし、且つフィルムは100未満のゲルカウントを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ポリエチレンフィルムに関し、より詳細には、フィルム不純物が低濃度であり且つ加工性が向上したフィルムに有用な二峰性ポリエチレン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
高密度二峰性ポリエチレン組成物及び、特に、高密度「二峰性」又は「多峰性」ポリエチレン(「bHDPE」)が、フィルム、パイプ、ブロー成形品等の種々の市販製品に好適なフィルムを製造するのに有用であることが知られている。しかしながら、大部分のbHDPEは、Dow、Basell、Borealis及びMitsuiのプロセス等の、二段階以上で及び/又は二段階以上の反応器で製造されるので、そのような組成物を製造するコストは、一つの不利な点であって、相対的に高い。そのような商業的な重合システムは、例えば、2 METALLOCENE-BASED POLYOLEFINS 366-378(John Scheirs及びW. Kaminsky編、John Wiley and Sons社、2000)にまとめられている。
【0003】
さらに、bHDPEの加工は、更なる商業的な問題を提示し得る。例えば、ポリエチレンの押出におけるフィルムの冷却は、FILM EXTRUSION MANUAL, PROCESS, MATERIALS, PROPERTIES, pp. 497 (TAPPI, 1992)に記載されているように、フィルム製造、特に高密度ポリエチレンの押出における制限因子である。この問題の一つの解決策は、望ましくは低い溶融温度で操作されることである。しかしながら、この樹脂に二峰性の性質が付与されると、溶融が不均一となるか、及び/又はその樹脂に対して、相対的に高い溶融温度を維持する必要がある。補償するために、高い背圧を維持することもできるが、これは他の問題をもたらし、またさらにエネルギーを消費する。望ましいものは、高いフィルム品質を維持しながら、低い押出機モーター負荷を用いて、相対的に低い溶融温度で迅速に押出すことができるbHDPEである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さらなる利点として、bHDPEを製造する低コスト法を使用することが望ましい。単一反応器システムは、そのようなコスト上の利点をもたらし得る。単一反応器システムは、フィルム用途の二峰性ポリエチレンを製造することができるものとして、H.-T. Liuらが195 MACROMOL. SYMP. 309-316 (2003年7月)中に記述しているが、それらのフィルムは、商業的に実行可能な現下の二元反応器由来のポリエチレンフィルムの品質及び成形性にやはり合致する必要がある。ポリマー特性のあるバランスが、キャスティング、ブロー成形、および他のフィルム製品に好適なポリエチレンフィルムを製造するこれらの商業的なニーズに合致することができ、且つ、これらの目的を達成することができることを本発明者らが見出したので、1つの側面において、本発明は、そのようなフィルムに関している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
1つの側面において、本発明は、0.940〜0.970g/cm3の間の密度及び20dg/min未満のI21値を有するポリエチレン組成物、好ましくは二峰性ポリエチレンを含んでなるフィルムであって、ポリエチレン組成物が以下の関係:Tm≦235−3.3(I21)を満たす溶融温度Tmで押出されることを特徴とし;ここで、ポリエチレン組成物は、1(0.454kg/hr/rpm)〜1.5lbs/hr/rpm(0.681kg/hr/rpm)の比押出量で押出され、且つ、フィルムが100未満のゲルカウントを有するものである、フィルムを提供する。
【0006】
他の側面において、本発明は、ポリエチレン組成物、好ましくは二峰性ポリエチレンを含んでなるフィルムであって、ポリエチレン組成物が、50,000amuより大きい重量平均分子量を有する高分子量成分と40,000amu未満又は20,000amu未満又は15,000amu未満又は12,000amu未満の重量平均分子量を有する低分子量成分を含み;ポリエチレン組成物が、0.940〜0.970g/cm3の間の密度及び20dg/min未満のI21値及び30又は35又は40より大きいMw/Mnを有し;フィルムが100未満のゲルカウントを有することを特徴とする、フィルムを提供する。
【0007】
さらに本発明の他の側面において、本発明のフィルムに有用なポリエチレン組成物は、単一反応器、好ましくは単一連続気相反応器中で製造される。
【0008】
本発明の種々の側面は、ポリマー組成物、ポリマー組成物の押出特性、及びフィルムを記述する実施態様の任意の一つ又は組合せにより記述することができ、それらの実施態様は、本明細書中にさらに詳細に記載されている。
【0009】
図面の簡単な説明
図1および図2は、1.84〜1.90lbs/hr/rpmの比押出量で押出された、0.5ミルゲージのフィルムを形成する押出しでのモーター負荷および圧力に対する本発明の実施例1及び2(◆)並びに比較例(△、□)のメルトインデックス(I21)値のグラフ的な表現である。
【0010】
図3、図4及び図5は、比較例1(―)と本発明の実施例3,4及び5(−−−)とを比較する、GPCで得られたデータのグラフ的な表現である。
【0011】
図6および図7は、1.16〜1.20lbs/hr/rpmの比押出量で押出された、0.5ミルゲージのフィルムを形成する押出しでのモーター負荷および溶融温度に対する本発明の実施例3及び5〜9(◆)並びに比較例(番号を付した白抜き丸印)のメルトインデックス(I21)値のグラフ的な表現である。
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、ポリエチレン組成物を含むフィルムに関し、1つの実施態様におけるポリエチレン組成物は、高分子量成分と低分子量成分を含み、特定の実施態様において、多峰性の又は二峰性のGPCプロフィールを示す。ポリエチレン組成物は、類似の密度とフローインデックス(I21)の他のポリエチレン樹脂に比べて、より低い押出機のモーター負荷(又は動力消費)で示されるような、改善された加工特性を有している。本発明の更なる特徴は、有利な低い溶融温度での高い比押出量である。本明細書に記載のフィルムは、類似の密度とI21の他のポリエチレンと同等の強さ、柔軟性、及び衝撃強さを維持しながら、低いゲル含量で例示されるような、高いフィルム品質を維持しながら、このような改善された加工特性を有している。
【0013】
本明細書で使用される場合の、用語「フィルム」又は「フィルム(複数)」は、1000μm未満の、より好ましくは500μm未満の、更により好ましくは200μm未満の、最も好ましくは100μm未満の厚さの皮膜、シート、又は膜を包含するものであり、本明細書で定義された押出加工された又はカレンダー加工された、好ましくは押出加工されたポリエチレンから、この分野で公知の任意の方法、例えばキャスティング法又はブロー法により製造されたフィルムを包含し、その用途は、包装、保護、梱包、袋詰め、コーティング、他の材料との共押出を含み、商業的に望ましい任意の大きさの幅、長さ等を有し得る。本発明のフィルムは、透明フィルムに限定されず、不透明又は半透明又は透明、好ましくは透明であり、本明細書に定義されたような他の特性を有し得る。本発明のフィルムは、他のシート及び/又は構造等と共押出又は固定されて、1000μmより厚い構造を形成してもよい。
【0014】
本発明のフィルムに固有の利点―ポリマー組成物を押出加工してフィルムを形成する際に要するモーター負荷が低いこと、それと同時に、低い溶融温度が達成されること(この双方は、商業的に受容可能な比押出量及び低いゲル濃度及び/又は高いFARで示されるような高いフィルム品質を維持しながら)―は、本明細書中に記載したように、かなり多数の実施態様により記述することができる。
【0015】
本発明の1つの側面は、0.940〜0.970g/cm3の間の密度及び4〜20dg/minのI21値を有するポリエチレン組成物を含んでなるフィルムであって、ポリエチレン組成物が以下の関係(I):
m≦235−3.3(I21) (I)
を満たす溶融温度Tmで押出されることを特徴とし、ここで、ポリエチレン組成物は、1(0.454kg/hr/rpm)〜1.5lbs/hr/rpm(0.681kg/hr/rpm)の比押出量で押出され、且つ、フィルムは100未満のゲルカウントを有するものである、フィルムに関する。値「I21」は、「3.3」を乗じるものとして理解される。(I)の他の実施態様において、溶融温度は、関係:Tm≦240−3.3(I21);他の実施態様において、Tm≦240−3.5(I21);更に他の実施態様において、Tm≦235−3.5(I21)で記述される。溶解温度は、ポリエチレン組成物を加工して本発明のフィルムを形成する際に使用される押出機の混合ゾーンの下流端の温度である。本発明のこの側面において、溶融温度は、本明細書に記載のように、フィルムを形成するのに好適な押出ラインから決定される。
【0016】
1つの実施態様において、ポリエチレン組成物は、式:Tm≦235−3.3(I21)を満たす溶融温度Tmで、1.00ポンドのポリエチレン/hr/rpm(0.454kg/hr/rpm)〜1.45ポンドのポリエチレン/hr/rpm(0.648kg/hr/rpm)の比押出量で押出されるように記述することができる。
【0017】
他の実施態様において、ポリエチレン組成物は、式:Tm≦235−3.3(I21)を満たす溶融温度Tmで、1.00ポンドのポリエチレン/hr/rpm(0.454kg/hr/rpm)〜1.40ポンドのポリエチレン/hr/rpm(0.636kg/hr/rpm)の比押出量で押出されるように記述することができる。
【0018】
更に他の実施態様において、ポリエチレン組成物は、式:Tm≦235−3.3(I21)を満たす溶融温度Tmで、1.00ポンドのポリエチレン/hr/rpm(0.454kg/hr/rpm)〜1.30ポンドのポリエチレン/hr/rpm(0.590kg/hr/rpm)の比押出量で押出されるように記述することができる。他の実施態様において、比押出量の下限は、1.10ポンドのポリエチレン/hr/rpm(0.499kg/hr/rpm)である。
【0019】
本発明のポリエチレン組成物に対する望ましい溶融温度Tmの例は、206℃又は204℃又は202℃又は200℃又は198℃又は196℃又は190℃又は188℃又は186℃又は184℃又は182℃又は180℃又は179℃未満の値であり、他の実施態様においては、少なくとも170℃または少なくとも175℃の溶融温度である。他の実施態様において、溶融温度の下限は、本明細書に記載の比押出量又は比ダイ速度での本明細書に記載のフィルムを得るのに必要な最低の溶融温度である。
【0020】
本発明の更に他の実施態様において、本明細書のフィルムの改善された押出特性は、特定のダイ速度で記述することができ;特定の実施態様において、本明細書でクレームされる有利なダイ速度が、特定の実施態様における21:1のL/Dを有する50mm溝供給押出機中で維持される。そこで、1つの実施態様において、本発明のフィルムは、以下の関係:Tm≦235−3.3(I21)を満たす溶融温度Tmにおいて、ダイ周囲1インチあたり、10〜20ポンドのポリマー(0.179〜0.357kg/hr/mm)という比ダイ速度でポリマー組成物を押出することにより形成され、他の実施態様においては、ダイ周囲1インチあたり、10〜15ポンドのポリマー(0.179〜0.268kg/hr/mm)という比ダイ速度でポリマー組成物を押出することにより形成される。本発明のこの側面において、溶融温度は、本明細書に記載のように、フィルムを形成するのに好適な押出ラインから決定される。
【0021】
一般に、本発明のフィルムは、その製造方法又は本発明のフィルムを形成するのに使用される本ポリエチレン組成物の製造方法に関係なく、4〜20dg/minのI21の従来技術でのbHDPEに比べて、改善された溶融温度を有するものとして記述することができる。(I)での上記の関係は、所与の押出機条件のセットに対して定義される。1つの実施態様において、この改善は、関係:Tm≦TmX−3.3(I21)(ここで、TmXは、所与の押出機条件のセットでの、I21=0に直線外挿された溶融温度である)において、より一般的に発現される。一般に、本発明のフィルムを作成するのに使用されるポリエチレン組成物の溶融温度は、同一の(±2〜±3以内)I21で、従来技術のbHDPEに対して、2〜20℃低い値を有する。
【0022】
本発明の他の側面は、0.940〜0.970g/cm3の間の密度及び4〜20dg/minのI21値を有するポリエチレン組成物を含んでなるフィルムであって、ポリエチレン組成物が、二段又は多段反応器プロセスで製造された類似の密度及びI21のポリエチレン組成物よりも2又は4〜10又は20℃低い溶融温度Tmで押出されることを特徴とし、さらに、フィルムが100未満のゲルカウントを有することを特徴とする、フィルムに関する。このような二段又は多段反応器プロセスは、F.P. Altらにより、163 MACROMOL. SYMP. 135-143 (2001)及び2 METALLOCENE-BASED POLYOLEFINS 366-378 (2000);並びに米国特許第6,407,185号、米国特許第4,975,485号、米国特許第4,511,704号の各明細書中に記載されているように、この分野で公知である。本明細書で使用される場合の、用語「多段反応器ポリエチレン組成物」とは、上記のそれらの文献中に記載のように、2以上の反応器を直列に使用することあるいは多段法で操作される1つの反応器を使用することを含む多段プロセスから製造されるポリエチレン組成物をいう。本発明のこの側面において、本発明のフィルムの溶融温度は、I21値が±3dg/min以内、より好ましくは±2dg/min以内、更により好ましくは±1dg/min以内である「多段反応器ポリエチレン組成物」と比較することが好ましい。
【0023】
本発明の更に他の実施態様において、フィルムは、ポリエチレン組成物を含んでなるものとして記述され、ポリエチレン組成物は、50,000amuより大きい重量平均分子量を有する高分子量成分と40,000amu未満又は20,000amu未満又は15,000amu未満又は12,000amu未満の重量平均分子量を有する低分子量成分を含み;ポリエチレン組成物は、0.940〜0.970g/cm3の間の密度及び20dg/min未満のI21値及び30又は35又は40より大きいMw/Mn値を有し;フィルムが100未満のゲルカウントを有することを特徴とする。ポリエチレン組成物の他の特徴は、本明細書に記載のように、更に明らかとなるであろう。
【0024】
本発明のフィルムの品質は、本明細書に記載のように、ゲルカウントで特徴づけられる。1つの実施態様において、フィルムは100未満のゲルカウントを有し、他の実施態様においては、60未満のゲルカウントであり、他の実施態様においては、50未満のゲルカウントであり、更に他の実施態様においては、40未満のゲルカウントであり、更に他の実施態様においては、35未満のゲルカウントである。言い換えると、本発明のフィルムは、+20より大きいFARを有し、他の実施態様においては、+30より大きいFARであり、更に他の実施態様においては、+40より大きいFARである。本発明のフィルムは、1つの実施態様では、合計厚みの16%未満のゲージ変動で、他の実施態様では、13%未満で、更に他の実施態様では10%未満で、形成することができる。
【0025】
本発明のフィルムを作成するのに使用されるポリエチレン組成物は、所与の比押出量及び溶融温度において、従来公知のものよりも、より低い動力レベル且つより低い圧力で押出される。所与の押出機に対して、同一の条件下で、本発明のポリエチレン組成物は、0.940〜0.970g/cm3の間の密度及び20dg/min未満のI21値を有する樹脂の間の比較で、同等の二峰性ポリエチレン組成物に対して、1〜10%低いモーター負荷で押出加工することができる。他の実施態様において、同等の二峰性ポリエチレン組成物に対して、改善は、2〜5%低いモーター負荷である。
【0026】
言い換えれば、所与の押出機に対して、本明細書に記載の特性を有する本発明のポリエチレン組成物は、1つの実施態様において、最大モーター負荷の80%未満のモーター負荷で、他の実施態様において、最大モーター負荷の77%未満のモーター負荷で、更に他の実施態様において、最大モーター負荷の75%未満のモーター負荷で、更に他の実施態様において、最大モーター負荷の66〜80%の間のモーター負荷で、更に他の実施態様において、最大モーター負荷の70〜77%の間のモーター負荷で押出され、ここで、望ましい範囲は、本明細書に記載の任意の上限%と任意の下限%との任意の組合せを含み得る。これらの有利な特性は、本明細書に記載の溶融温度と比押出量を保持したままで、存在する。
【0027】
本発明のフィルムは、商業的な使用に好適な特性を有する。例えば、本発明のフィルムは、1つの実施態様において、9,000〜15,000psiのMD引張強さ及び9,000〜15,000psiのTD引張強さ;並びに他の実施態様において、200〜350%のMD引張伸び及び200〜350%のTD引張伸び、並びに更に他の実施態様において、10〜30g/ミルのMDエルメンドルフ引裂値及び20〜60g/ミルのTDエルメンドルフ引裂値;並びに1つの実施態様において、150gより大きい、他の実施態様において、170gより大きいダート衝撃(F50)を有する。これらの値は、本明細書に更に記載の試験方法下で測定される。
【0028】
本発明のフィルムの1つの実施態様において、フィルムを製造するのに使用されるポリエチレン組成物は、好ましくは、「硬い汚染物」材料を含まない。これらの「硬い汚染物」は、明確な特徴を有するポリエチレン組成物マトリックス内の不均一な材料のゾーンである。1つの実施態様において、ハードゲルは、125℃〜133℃、他の実施態様においては126℃〜132℃の融点(DSC)を有し、さらに、ハードゲルは、1つの実施態様において0.5dg/min未満、他の実施態様において0.4dg/minのI21を有し;また、1つの実施態様において1000メガポアズより大きい、他の実施態様において1200メガポアズより大きいη(200℃で0.1rad/秒)値を有し、ここで、ハードゲルは、これらの特徴の任意の1種又は組合せで特徴付けることができる。「硬い汚染物材料を含まない」ことにより、ハードゲルは、もし存在したとしても、1つの実施態様において、全ポリエチレン組成物の1重量%以下、他の実施態様において、0.01重量%未満、更に他の実施態様において、0.001重量%未満の量で存在する。
【0029】
オレフィンを重合してポリオレフィンを形成するために知られている、任意の望ましいオレフィン重合法、例えば、気相、スラリー又は溶液プロセスが、本発明のフィルムに好適なポリエチレン組成物を製造するために好適である。1つの実施態様において、直列の2以上の反応器、例えば、直列の気相及びスラリー相反応器、又は直列の2個の気相反応器、又は直列の2個のスラリー相反応器が使用される。他の実施態様において、単一反応器、好ましくは単一気相反応器が使用される。より特定的には、本発明のこの後者の実施態様は、重合性モノマーと二金属触媒組成物の存在下に、高分子量(「HMW」)ポリエチレンを低分子量(「LMW」)ポリエチレンに、単一の反応器中で同時に加え、ポリエチレン組成物を形成することを含む。1つの実施態様において「ポリエチレン組成物」は、二峰性ポリエチレン組成物であり、ここで、組成物の80重量%より多い、好ましくは90%より多いモノマー由来単位は、エチレンであり、残余のモノマー単位は、本明細書で以下に記載のC3〜C12オレフィン及びジオレフィンに由来する。
【0030】
1つの実施態様において、LMWポリエチレンとHMWポリエチレンは、互いに連続的にあるいは同時に、好ましくは同時に、任意の好適な記述の1、2又はそれ以上の反応器から加えられ;特定の実施態様においては、単一の重合反応器中に互いに同時に加えられ得る。本発明の好ましい実施態様において、ポリエチレン組成物を作成するのに使用される重合反応器は、米国特許第4,302,566号、米国特許第5,834,571号、米国特許第5,352,749号の各明細書に記載のような、少なくとも1つの反応器を含む、特定の実施態様においては唯一つの反応器を含む、流動床、気相反応器である。
【0031】
1つの実施態様において、LMWポリエチレンは、0〜10重量%のC3〜C10のα−オレフィン由来の単位を含むポリエチレンホモポリマー又はコポリマー、より特定的には、エチレンのホモポリマー又はエチレンと1−ブテン、1−ペンテン、若しくは1−ヘキセン由来単位のコポリマーである。LMWポリエチレンは、いくつかの因子で特徴付けられる。LMWポリエチレンの重量平均分子量は、1つの実施態様において50,000amu未満の範囲であり、他の実施態様は、更に本明細書に記載される。
【0032】
1つの実施態様において、HMWポリエチレンは、0〜10重量%のC3〜C10のα−オレフィン由来の単位を含むポリエチレンホモポリマー又はコポリマー、より特定的には、エチレンのホモポリマー又はエチレンと1−ブテン、1−ペンテン、若しくは1−ヘキセン由来単位のコポリマーである。HMWポリエチレンの重量平均分子量は、1つの実施態様において50,000amuより大きい範囲であり、他の実施態様は、更に本明細書に記載されるとおりである。少なくともHMWおよびLMWポリマーを含む本発明のポリエチレン組成物は、また、本明細書に記載の任意の数のパラメーターにより記述することができる。
【0033】
オレフィンのポリオレフィンへの重合において、重合触媒を使用することは公知である。本発明のフィルムは、本明細書に記載のポリエチレン組成物及びフィルムの製造をもたらす任意の好適な触媒組成物により製造することができる。1つの実施態様において、フィルムは、1種の触媒化合物、他の実施態様においては2以上の同種の化合物の組合せ、又は更に他の実施態様においては2以上の異なる種類の触媒化合物の組合せを用いて重合プロセスから製造されたポリエチレン組成物から製造される。好ましい実施態様においては、本明細書に記載のポリエチレン組成物を含むフィルムは、二金属触媒組成物を利用する重合プロセスで製造される。そのような二金属触媒組成物は、少なくとも2種の、好ましくは2種の第3〜10族金属含有化合物を含み、その双方は、同一又は異なる配位圏、金属中心での置換パターン、又は金属中心に結合した配位子を有する同一又は異なる金属である。かなり多くの方法で二金属触媒組成物を形成するように結合することができる、好適なオレフィン重合触媒の非限定的な例として、例えば、米国特許第6,593,438号、米国特許第6,380,328号、米国特許第6,274,684号、米国特許第6,333,389号、WO99/01460及びWO99/46304の各明細書に記載のメタロセン、チーグラー・ナッタ触媒、金属アミド触媒;並びに、例えば、クロム−シクロペンタジエニル、酸化クロム、アルキルクロムそれらの担持及び修飾変形体を含む、米国特許第3,324,095号明細書中のようなクロム触媒が挙げられる。他の実施態様において、二金属触媒組成物は、2以上の種類の触媒化合物の組合せである。
【0034】
特定の実施態様において、本明細書に記載のポリマー組成物を作製するのに有用な二金属触媒組成物は、メタロセン及びチタン含有チーグラー・ナッタ触媒を含んでなり、その例は、米国特許第5,539,076号およびWO02/090393の各明細書に開示されており、各々、参照により本明細書に組み入れられる。好ましくは、触媒化合物は、担持されており、特定の実施態様において、双方の触媒組成物は、「一次」活性剤、特定の実施態様においてアルモキサンで担持されており、特定の実施態様における担体は、無機酸化物担体である。
【0035】
1つの実施態様において、二金属触媒組成物の一部としての、メタロセン触媒成分は、フィルムを作製するのに有用なポリエチレン組成物のLMWポリエチレンを製造する。本明細書に記載のメタロセン触媒化合物には、少なくとも1つの第3族〜第12族金属原子に結合した2個のCp配位子(シクロペンタジエニル及びシクロペンタジエニルにアイソローバルな配位子)及び少なくとも1つの金属原子に結合した1以上の脱離基を有する「フルサンドイッチ」化合物が包含される。更により特定的には、Cp配位子は、置換又は非置換シクロペンタジエニル配位子及びシクロペンタジエニルにアイソローバルな配位子より成る群から選択され、その非限定的な例として、シクロペンタジエニル、フルオレニル及びとの構造が挙げられる。以下においては、これらの化合物を「メタロセン」又は「メタロセン触媒成分」と称する。
【0036】
本明細書で使用されるように、周期表の元素の「族」に関して、CRC HANDBOOK OF CHEMISTRY AND PHYSICS (David R. Lide編, CRC Press 81版、2000年)中でのように、周期表の族に対する「新しい」番号付けスキームを使用している。
【0037】
メタロセン触媒化合物の金属原子「M」は、1つの実施態様においては第4,5及び6族原子より成る群から選択され、さらにより特定的な例示的な実施態様においてはTi、Zr、Hfより成る群から選択することができ、さらにより一層特定な例示的な実施態様においてはZrから選択することができる。Cp配位子は、金属原子Mと共に少なくとも1つの化学結合を形成して、「メタロセン触媒化合物」を形成する。本発明の1つの側面において、本発明のメタロセン触媒成分は、一般式(II)によって表わされる。
CpACpBMXn (II)
(式中、Mは前記の通りであり、各XはMに化学結合し、各Cp基はMに化学結合し、nは0又は1〜4の整数であり、特定的な例示的な実施態様においては1又は2である。)
【0038】
式(II)中のCpA及びCpBによって表わされる配位子は同一であっても異なっていてもよく、シクロペンタジエニル配位子又はシクロペンタジエニルにアイソローバルな配位子であり、それらのいずれか又は両方はヘテロ原子を含有していてもよく、また、それらのいずれか又は両方は基Rで置換されていてもよい。1つの実施態様において、CpA及びCpBはシクロペンタジエニル、インデニル、テトラヒドロインデニル、フルオレニル及び各々の置換誘導体より成る群から独立に選択される。
【0039】
なお、式(II)の各CpA及びCpBは独立に、非置換であってもよく、置換基Rの1つ又は組合せによって置換されていてもよい。構造(II)中で使用される置換基R及び構造(II)中の環置換基の非限定的な例には、水素基、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C3〜C6シクロアルキル、C6〜C10アリール、又はアルキルアリール、及びそれらの組合せが包含される。
【0040】
式(II)及び(III)中の各Xは、特定的な実施態様においてはハロゲンイオン(フルオリド、クロリド、ブロミド)、ヒドリド、C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C6〜C12アリール、C7〜C20アルキルアリール、C1〜C12アルコキシ、C6〜C16アリールオキシ、C7〜C18アルキルアリールオキシ、C1〜C12フルオロアルキル、C6〜C12フルオロアリール及びC1〜C12ヘテロ原子含有炭化水素並びにそれらの置換誘導体より成る群から独立に選択され;さらにより一層特定的な実施態様においてはフルオリドである。
【0041】
本発明の別の側面において、メタロセン触媒成分には、構造が式(III)で表わされるような、CpA及びCpBが少なくとも1つの架橋基(A)によって互いに架橋された式(I)のものが包含される。
CpA(A)CpBMXn (III)
【0042】
式(III)で表わされるこれらの架橋化合物は、「架橋メタロセン」として知られている。構造(III)中のCpA、CpB、M、X及びnは、式(II)について上で定義した通りであり;各Cp配位子はMに化学結合し、(A)は各Cpに化学結合する。架橋基(A)の非限定的な例には、少なくとも1個の第13〜16族原子(例えば炭素、酸素、窒素、ケイ素、アルミニウム、ホウ素、ゲルマニウム及び錫原子並びにそれらの組合せの少なくとも1つであり、ただしこれらに限定されない)を含有する二価炭化水素基が包含され、ここで、ヘテロ原子はまた、中性原子価を満たすためにC1〜C12アルキル又はアリール置換されていてもよい。架橋基(A)はまた、ハロゲン基及び鉄を含めて、(式(II)について)上で規定した通りの置換基Rを含有していてもよい。架橋基(A)のより一層特定的な非限定的例は、C1〜C6アルキレン、置換C1〜C6アルキレン、酸素、硫黄、R'2C=、R'2Si=、−Si(R')2Si(R'2)−、R'2Ge=、R'P=(ここで、「=」は2個の化学結合を表わす)で表され、ここで、R'はヒドリド、C1〜C10アルキル、アリール及び置換アリールより成る群から独立に選択される。
【0043】
1つの実施態様において、チーグラー・ナッタ触媒成分は、二金属触媒組成物の一部として、本発明のフィルムの作製において有用なポリエチレン組成物のHMW成分を製造する。チーグラー・ナッタ触媒化合物は、一般に、ZIEGLER CATALYSTS 363-386 (G. Fink, R. Mulhaupt及びH.H. Brintzinger編、Springer-Verlag 1995)及びRE33,683に開示されている。そのような触媒の例には、マグネシウム化合物、内部及び/又は外部電子供与体(アルコール、エーテル、シロキサン等)、アルミニウム又はアルキルホウ素及びハロゲン化アルキル、並びに酸化物担体と組み合わせた、第4、5又は6族遷移金属酸化物、アルコキシド及びハロゲン化物を含むもの、より特定的には、チタン、ジルコニウム又はバナジウムの酸化物、アルコキシド及びハロゲン化化合物が包含される。
【0044】
1つの実施態様において、チーグラー・ナッタ触媒は、メタロセン触媒成分と共にあるいはそれなしで、担体材料と結合される。チーグラー・ナッタ触媒成分は、様々な方法で、担体と結合され、その上に置かれ、あるいはそうでなければそれに添加される。それらの方法の1つにおいて、好適な非極性炭化水素希釈剤中の担体のスラリーが、有機マグネシウム化合物と接触され、次いで、それはスラリーの非極性炭化水素希釈剤中に溶解して、溶液を形成し、その後、それから有機マグネシウム化合物が担体上に沈着する。有機マグネシウム化合物は、式RMgR’(式中、R’及びRは、同一又は異なるC2〜C12アルキル基、又はC4〜C10アルキル基、又はC4〜C8アルキル基である)により表すことができる。少なくとも1つの特定の実施態様において、有機マグネシウム化合物はジブチルマグネシウムである。
【0045】
1つの実施態様において、有機マグネシウム及びアルコール処理スラリーは、次いで、遷移金属化合物と接触される。好適な遷移金属化合物は、特定の実施態様において、シリカスラリーを形成するのに使用される非極性炭化水素中に溶解する第4及び5族金属の化合物である。好適な第4、5又は6族金属化合物の非限定的な例には、例えば、チタン及びバナジウムのハロゲン化物、オキシハロゲン化物又はアルコキシハロゲン化物、例えば四塩化チタン(TiCl4)、四塩化バナジウム(VCl4)及びオキシ三塩化バナジウム(VOCl3)並びにチタン及びバナジウムのアルコキシド(ここで、アルコキシド部分は、分岐状又は非分岐状の、1〜20個の炭素原子、特定の実施態様では、1〜6個の炭素原子のアルキル基を有する)を包含する。そのような遷移金属化合物の混合物もまた、使用し得る。好ましい実施態様においては、TiCl4又はTiCl3が、マグネシウム含有チーグラー・ナッタ触媒を形成するのに使用される出発遷移金属化合物である。
【0046】
1つの実施態様において、チーグラー・ナッタ触媒は、電子供与体、例えば、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、エーテル、例えばテトラヒドロフラン、又は式R”OH(式中、R”は、C1〜C12アルキル基、又はC1〜C8アルキル基、又はC2〜C4アルキル基である)を有する有機アルコール、及び/又はエーテル若しくは環状エーテル例えばテトラヒドロフランと接触される。
【0047】
メタロセン又はチーグラー・ナッタ成分は、任意の順序で、担体と接触させ得る。本発明の特定の実施態様において、第一の触媒成分は、まず、上記の単体と反応され、次いで、この担持された第一の触媒成分を第二の触媒成分と接触させる。
【0048】
結合して二金属触媒成分を形成すると、第二の触媒成分からの金属と、第一の触媒成分とのモル比(すなわち、Ti:Zrのモル比)は、1つの実施態様において0.1〜100、他の実施態様において1〜50、更に他の実施態様において2〜20、更に他の実施態様において3〜12、更に他の実施態様において4〜10、更に他の実施態様において4〜8の値であり;Ti成分金属:Zr触媒成分金属の望ましいモル比は、本明細書に記載の任意の上限と任意の下限の任意の組合せである。
【0049】
本発明のフィルムを作製するのに有用なポリエチレン組成物を形成するために使用される重合方法は、好ましくは、担持触媒組成物を重合反応器に注入することを含む。触媒成分及び活性剤(メタロセン及びチーグラー・ナッタ成分)は、任意の好適な方法で、担体と結合することができ、この分野で公知の任意の好適な手段により担持される。好ましくは、触媒成分は、少なくとも1つの活性剤、好ましくはアルモキサンと共に担持される。他の活性剤、好ましくはアルキルアルミニウムは、他の実施態様において、別個の成分として重合反応器に共に注入される。最も好ましい実施態様においては、二金属触媒組成物は、好ましくは、メタロセンとチーグラー・ナッタ触媒成分を含み、本明細書に記載のような二峰性ポリエチレン組成物を製造するのに好適な重合条件下に、単一の反応器、好ましくは流動床気相反応器に注入される。
【0050】
メタロセンのようなシングルサイト触媒用の担体、担持方法、変性方法及び担体活性化方法は、例えばG.G. Hlatkyにより100(4) CHEM. REV. 1347-1374 (2000)で議論されている。本明細書において用いた場合の用語「担体」は、任意の担体物質、1つの実施態様では多孔性担体物質をいい、無機担体物質も有機担体物質も含む。特に好ましい担体物質には、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、塩化マグネシウム、グラファイト、及びそれらの混合物が包含される。特定の実施態様においては、担体は、平均粒径が50μm未満又は35μ未満で細孔容積が0.1〜1又は2〜5cm3/gである、無機酸化物、好ましくはシリカである。
【0051】
担体は、好ましくはか焼される。好適なか焼温度は、1つの実施態様においては500℃〜1500℃の範囲、他の実施態様においては600℃〜1200℃の範囲、他の実施態様においては700℃〜1000℃の範囲、さらに他の実施態様においては750℃〜900℃の範囲、さらにより一層特定的な実施態様においては800℃〜850℃の範囲である。ここで、望ましい範囲は、任意の上限温度と任意の下限温度との任意の組合せを含む。か焼は、例えば乾燥窒素の雰囲気を用いることによって、酸素及び湿分の不在下に行うことができる。あるいは、か焼は、湿分及び空気の存在下に行ってもよい。
【0052】
担体は、かなり多数の方法で、触媒系の他の成分と接触させることができる。1つの実施態様において、担体は、活性剤と接触されて、活性剤と担体の間で会合体又は「結合活性剤」を形成する。他の実施態様において、触媒成分は、担体と接触して、「結合触媒成分」を形成する。更に他の実施態様において、担体は、活性剤及び触媒成分と一緒に、あるいは各々部分的に任意の順序で接触させ得る。成分は、溶液、スラリー、又は固体形態であるいはそれらのある組合せで、任意の適切な手段により接触させることができ、25℃〜250℃で接触させる場合、加熱してもよい。
【0053】
1つの実施態様において、二金属触媒組成物は、少なくとも1種、好ましくは1種の活性剤を含む。本明細書で使用される場合、用語「活性剤」は、例えば触媒成分からカチオン種を生成させることにより、シングルサイト触媒化合物(例えば、メタロセン、金属アミド触媒等)を活性化することができる、担持された又は担持されていない任意の化合物又は化合物の組合せであると定義される。そのような活性剤の実施態様には、環状又はオリゴマー状のポリ(ヒドロカルビルアルミニウムオキシド)等のルイス酸が包含される。好ましくは、活性剤はアルモキサンであり、より好ましくは、無機酸化物担体物質に担持されたアルモキサンであり、担体物質は、アルモキサンと接触させる前に、か焼されている。
【0054】
1つの実施態様において、二金属触媒組成物のチーグラー・ナッタ成分の活性剤として、アルキルアルミニウムが、同様に、好ましくは重合反応器に加えられる。アルキルアルミニウム活性剤は、式AlR§3(式中、R§は、C1〜C20アルキル、C1〜C20アルコキシ、ハロゲン(塩素、フッ素、臭素)C6〜C20アリール、C7〜C25アルキルアリール、及びC7〜C25アリールアルキルより成る群から選択される)で記述し得る。アルキルアルミニウム化合物の非限定的な例には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム等が包含される。アルキルアルミニウムは、好ましくは触媒成分及び「一次」活性剤(例えば、アルモキサン)と共に、担体物質上に担持されておらず、反応器に加えられる別個の成分である。
【0055】
トリメチルアルミニウム又はトリエチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム化合物又は化合物の混合物は、1つの実施態様において、10重量ppm〜500重量ppm(エチレンの供給割合に対するアルキルアルミニウムの供給割合の重量ppm)、より特定的な実施態様において、50重量ppm〜400重量ppm、更により特定的な実施態様において、60重量ppm〜300重量ppm、更により特定的な実施態様において、80重量ppm〜250重量ppm、更に他の実施態様において、75重量ppm〜150重量ppmの割合で反応器に供給され、望ましい範囲は、任意の上限と任意の下限の任意の組合せである。
【0056】
この分野で公知の他の一次又は別個に注入される活性剤は、また、本明細書に記載の二金属触媒組成物を作製するのに有用であり得る。イオン化活性剤は、この分野で周知であり、例えば、Eugene You-Xian Chen及びTobin J. Marks、Cocatalysts for Metal-Catalyzed Olefin Polymerization: Activators, Activation Processes, and Structure-Activity Relationships 100(4) CHEMICAL REVIEWS 1391-1434 (2000) に記載されている。イオン性イオン化活性剤の例示としての非限定的な例には、トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素等のようなトリアルキル置換アンモニウム塩;N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素等のようなN,N−ジアルキルアニリニウム塩;ジ−(イソプロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素等のようなジアルキルアンモニウム塩;トリフェニルカルボニウムテトラ(フェニル)ホウ素等のようなトリアリールカルボニウム塩(トリチル塩);トリフェニルホスホニウムテトラ(フェニル)ホウ素等のようなトリアリールホスホニウム塩、並びにそれらのアルミニウム等価物が包含される。
【0057】
活性剤が環状又はオリゴマー状ポリ(ヒドロカルビルアルミニウムオキシド)(すなわち、「アルモキサン」、例えばメタルモキサン「MAO」)である場合には、活性剤対触媒成分のモル比は、1つの実施態様においては2:1〜100,000:1の範囲、他の具体例においては10:1〜10,000:1の範囲、更に他の例においては50:1〜2,000:1の範囲とし、最も好ましくは、アルモキサンは、一旦メタロセンと共に担持されると、アルミニウム(アルモキサン):第4、5又は6族金属(メタロセン)のモル比は、500:1〜10:1、最も好ましくは200:1〜50:1の割合である。
【0058】
本明細書に記載のような特徴を有するポリエチレンを製造するオレフィンを重合する任意の好適な方法(重合反応器及び反応プロセスの種類、すなわち、気相、スラリー、溶液、高圧など)を使用することができる。本明細書に記載の触媒系を用いる反応器は、1つの実施態様において、500lbs/hr(230kg/hr)より多い、他の実施態様において、1,000lbs/hr(450kg/hr)より多い、更に他の実施態様において、2,000lbs/hr(910kg/hr)より多い、また、更に他の実施態様において、10,000lbs/hr(4,500kg/hr)より多い、更に他の実施態様において、20,000lbs/hr(9,100kg/hr)より多い、更に他の実施態様において、500,000lbs/hr(230,000kg/hr)より多い量を製造することが可能である。
【0059】
好ましくは、本発明のフィルムは、連続流動床気相プロセスから、特に、この分野で公知の単一流動床反応器を使用して形成されたポリエチレンから押出、キャスト又はブロー成形される。このタイプの反応器及び反応器の操作手段は、周知であり、例えば、米国特許第4,003,712号、米国特許第4,588,790号、米国特許第4,302,566号、米国特許第5,834,571号、及び米国特許第5,352,749号の各明細書に完全に記載されている。あるいは、このプロセスは、米国特許第5,352,749号及び米国特許第5,462,999号の各明細書に記載のような単一気相反応器中で行うことができる。これらの後者の特許は、重合媒体が、気体状モノマー及び交代に「濃縮剤」の連続的な流れにより流動化される、気相重合方法を開示している。
【0060】
本発明のポリエチレンを生成する方法において有用な流動床反応器は、典型的には、反応ゾーン及びいわゆる速度減少ゾーンを有する。反応ゾーンは、反応ゾーンを通して重合熱を除去する気体状モノマー及び場合により希釈剤の連続的な流れにより流動化される、ポリエチレン粒子を成長させる床、生成したポリエチレン粒子、及び少量の触媒粒子を含む。場合により、再循環された気体のある部分は、冷却され、圧縮されて、液体を生成し、この液体は反応ゾーンに再度入れられたときに循環している気体の流れの熱除去能力を増大する。気体の流れの好適な速度は、簡単な実験で容易に決定することができる。気体状モノマーの循環する気体の流れへの追加は、特定のポリエチレン生成物及びそれに伴うモノマーが反応器から取り出される速度に等しい速度で行われ、反応器を通過する気体の組成は、反応ゾーン内で実質的に定常的な状態の気体組成が維持されるように調整される。反応ゾーンを離れる気体は、随伴粒子を除去する速度減少ゾーンを通過させられる。より細かい随伴粒子及び粉塵は、サイクロン及び/又は細かいフィルター中で除去し得る。気体は、重合熱を除去する熱交換器を通過して、圧縮機で圧縮され、その後、反応ゾーンに戻される。いわゆる「調節剤」(例えば、テトラヒドロフラン、イソプロピルアルコール、分枝状酸素、フェノール化合物、エトキシ化アミン等)を、本明細書に記載の反応器システムの任意の部分に添加してもよく、特定的な実施態様においては、リサイクルラインに0.1〜50重量ppmで導入され、更により特定的な実施態様においては、熱交換器の蒸留のリサイクルラインに導入される。これらの試剤は、膨張領域、リサイクルライン、底板等での静電帯電及び/又は反応器の汚れの低減を手助けすることが知られている。
【0061】
1つの実施態様において、反応器中で生成するポリエチレンの流動化嵩密度は、16〜24lbs/ft3、他の実施態様においては、16.5〜20lbs/ft3の範囲である。本発明のポリエチレンを製造するのに有用な反応器は、好ましくは、5〜20lb/hr/ft3で、より好ましくは6〜15lb/hr/ft3の空時収率で操作される。さらに、反応器中、好ましくは1個の反応器での滞留時間は、1〜7時間、より好ましくは1.2〜6時間、更により好ましくは1.3〜4時間である。
【0062】
より特定的には、ここでの流動床気相反応器の実施態様において、流動床プロセスの反応器温度は、70℃又は75℃又は80℃から90℃又は95℃又は100℃又は110℃の範囲であり、ここで、望ましい温度範囲は、任意の上限温度と任意の下限温度との任意の組合せを含む。一般に、反応器温度は、反応器内でのポリマー生成物の焼結温度及び又は反応器若しくはリサイクルラインで発生し得る汚れを考慮して、実行可能な最も高い温度で操作される。
【0063】
流動床気相反応器の実施態様において、気体が水素、エチレン及び高級コモノマーを含むものである、気相反応器圧は、1つの実施態様においては1(101kPa)〜100気圧(10,132kPa)の間、他の実施態様においては5(506kPa)〜50気圧(5066kPa)の間、さらに他の例示的な実施態様においては10(1013kPa)〜40気圧(4050kPa)の間である。
【0064】
本発明の方法は、エチレン由来単位を含むホモポリマー及び/又はエチレン由来単位と少なくとも1以上の他のオレフィン由来単位とのコポリマーの製造に好適である。好ましくは、エチレンは、例えば、一つの実施態様においては3〜12個の炭素原子、他の実施態様においては、4〜10個の炭素原子、さらに好ましい実施態様においては4〜8個の炭素原子を含むα−オレフィンと共重合される。更により好ましくは、エチレンは、1−ブテン又は1−ヘキセンと共重合され、最も好ましくは、エチレンは、1−ブテンと共重合されて、本発明のフィルムに有用なポリエチレン組成物を形成する。
【0065】
コモノマーは、このコモノマーの最終樹脂への所望の重量%の取り込みを達成させるであろう任意のレベルで存在し得る。ポリエチレン製造の1つの実施態様では、コモノマーは、エチレンと共に、循環気体流中に、モル比の範囲が0.005(コモノマー:エチレン)〜0.100、他の実施態様では0.0010〜0.050、さらに他の実施態様では0.0015〜0.040、さらに他の実施態様では0.018〜0.035で存在する。
【0066】
水素ガスは、ポリエチレン組成物の最終特性(例えば、I21及び/又はI2、嵩密度)を制御するために重合反応器に添加することができる。1つの実施態様において、循環気体流中の全エチレンモノマーに対する水素のモル比(H2:C2)は、1つの実施態様では0.001又は0.002又は0.003又は0.014又は0.016又は0.018又は0.024の範囲であり、ここで、望ましい範囲は、本明細書に記載されたモル比の任意の上限とモル比の任意の下限との任意の組合せを含むことができる。別の方法で説明すると、任意の時間での反応器中の水素の量は、1つの実施態様では1000ppm〜20,000ppmまでの範囲にあり、他の実施態様では2000〜10,000ppmまでの範囲にあり、さらに他の実施態様では3,000〜8,000ppmまでの範囲にあり、さらに他の例示的な実施態様では4,000〜7,000ppmの範囲にあり、ここで、望ましい範囲は、本明細書に記載された任意の水素の上限と任意の水素の下限とを含むことができる。
【0067】
二金属触媒組成物は、使用される重合反応器のタイプにかかわらず、任意の好適な手段により、重合反応器に導入することができる。1つの実施態様において、二金属触媒組成物は、実質的に乾燥状態で反応器に供給されるが、これは、触媒の単離された固体形状が、反応器に入れる前に、希釈剤で希釈されないか又はそれと組み合わせられないことを意味する。他の実施態様において、触媒組成物は、希釈剤と組み合わせられて、反応器に供給され;1つの実施態様における希釈剤は、例えば米国特許第5,290,745号明細書に記載の、アルカン、例えばC4〜C20アルカン、トルエン、キシレン、無機オイル若しくはシリコンオイル、またはそれらの組合せである。
【0068】
二金属触媒組成物は、1つの実施態様では、米国特許第6,608,153号明細書に開示のように、触媒系(又はその成分)の重量に対して、2.5重量%までの金属−脂肪酸化合物、例えば、ステアリン酸アルミニウムと結合することができる。脂肪酸と組み合わせて使用しうる他の好ましい金属には、他の第2族および第5〜13族金属が包含される。別の実施態様において、金属−脂肪酸化合物の溶液が、反応器に供給される。更に他の実施態様において、金属−脂肪酸化合物は、触媒と混合され、別個に反応器に供給される。これらの試剤は、触媒と混合されるか、あるいは触媒系若しくはその成分と共に又はそれなしに溶液若しくはスラリーで反応器に供給することができる。
【0069】
他の実施態様において、担持触媒は、活性剤と組み合せられ、例えば、タンブリング及びその他の好適な手段で、(触媒組成物の重量の)2.5重量%の帯電防止剤、例えばエトキシル化若しくはメトキシル化アミンと組み合わせられるが、その例は、Kemamine AS-990(ICI Specialties, Bloomington Delaware)である。
【0070】
本明細書に記載のポリエチレン組成物は、1つの実施態様において多峰性又は二峰性であり、好ましくは二峰性であり、特定的な実施態様において、少なくとも1種のHMWポリエチレンと少なくとも1種のLMWポリエチレンを含む。用語「二峰性」は、ポリエチレン組成物を記述するために使用された場合、「二峰性分子量分布」を意味し、その用語は、印刷刊行物及び発行特許中に反映されているような当業者がその用語に与えている最も広い定義を有するものとして理解される。例えば、少なくとも1種の同定可能な高分子量分布を有するポリオレフィンと少なくとも1種の同定可能な低分子量分布を有するポリオレフィンを含む単一のポリエチレン組成物は、その用語が本明細書で使用されるような、「二峰性」ポリオレフィンであると考えられる。それらの高分子量及び低分子量ポリマーは、本発明の二峰性ポリオレフィンの幅広の又は肩付のGPC曲線から2種のポリマーを識別する、この分野で公知の逆重畳法により同定することができ、他の実施態様において、本発明の二峰性ポリマーのGPC曲線は、図3〜5中の例に示されたような谷を有する明確なピークを示す。本発明のポリエチレン組成物は、特徴の組合せにより特徴付け得る。
【0071】
1つの実施態様において、ポリエチレン組成物は、ポリ(エチレン−コ−1−ブテン)又はポリ(エチレン−コ−1−ヘキセン)、好ましくはポリ(エチレン−コ−1−ブテン)であり、本質的に、ポリエチレン組成物のLMWポリエチレンについて、ポリマー組成物の0.1〜5モル%存在する。
【0072】
本発明のポリエチレン組成物は、1つの実施態様において、0.940〜0.970g/cm3の範囲の、他の実施態様において、0.942〜0.968g/cm3の範囲の、更に他の実施態様において、0.943〜0.965g/cm3の範囲の、更に他の実施態様において、0.944〜0.962g/cm3の範囲の密度を有し、ポリエチレン組成物の望ましい密度の範囲は、本明細書に記載の任意の上限密度と任意の下限密度の任意の組合せである。
【0073】
本発明のポリエチレン組成物は、本明細書に記載の、GPCで測定されたような、それらの分子量特性により特徴付けることができる。本発明のポリエチレン組成物は、1つの実施態様においては2,000〜70,000、他の実施態様においては10,000〜50,000の数平均分子量(Mn)値を、且つ、1つの実施態様においては50,000〜2,000,000、他の実施態様においては70,000〜1,000,000、さらに他の実施態様においては80,000〜800,000の重量平均分子量(Mw)値を有する。本発明の二峰性ポリオレフィンは、また、1つの実施態様においては200,000より大きい、他の実施態様においては800,000より大きい、1つの実施態様においては900,000より大きい、1つの実施態様においては1,000,000より大きい、他の実施態様においては1,100,000より大きい、更に他の実施態様においては1,200,000より大きい、更に他の実施態様においては1,500,000より大きいz−平均分子量(Mz)値を有し;Mn、Mw又はMzの望ましい範囲は、本明細書に記載の任意の上限と任意の下限の任意の組合せである。
【0074】
本発明のポリエチレン組成物は、好ましい実施態様において30又は40より大きい;1つの実施態様において30〜250、他の実施態様において35〜220、更に他の実施態様において40〜200の範囲の、分子量分布、重量平均分子量対数平均分子量(Mw/Mn)、又は「多分散指数」を有し、ここで、望ましい実施態様は、本明細書に記載の任意の上限と任意の下限の任意の組合せを含み得る。ポリエチレン組成物は、また、1つの実施態様において2〜20、他の実施態様において3〜20、他の実施態様において4〜10、更に他の実施態様において5〜8、更に他の実施態様において3〜10の分子量分布(Mz/Mw)を有し、望ましい範囲は、任意の上限と任意の下限の任意の組合せを含み得る。
【0075】
本発明のポリエチレン組成物は、1つの実施態様において0.01dg/min〜50dg/min、他の実施態様において0.02dg/min〜10dg/min、更に他の実施態様において0.03dg/min〜2dg/minの範囲のメルトインデックス(ASTM−D−1238−E 190℃/2.16kgで測定された、MIまたはI2)を有し、望ましい範囲は、本明細書に記載の任意の上限と任意の下限の任意の組合せである。本発明のポリエチレン組成物は、1つの実施態様において4〜20dg/min、他の実施態様において4〜18dg/min、更に他の実施態様において5〜16g/min、更に他の実施態様において6〜14g/min、更に他の実施態様において6〜12g/minの範囲のフローインデックス(ASTM−D−1238−F 190℃/21.6kgで測定された、FIまたはI21)を有し、望ましいI21の範囲は、本明細書に記載の任意の上限密と任意の下限の任意の組合せである。ある実施態様におけるポリエチレン組成物は、80〜400、他の実施態様において90〜300、他の実施態様において100〜250、更に他の実施態様において120〜220のメルトインデックス比(I21/I2)を有し、望ましいI21/I2の範囲は、本明細書に記載の任意の上限と任意の下限の任意の組合せである。
【0076】
他の実施態様において、ポリエチレン組成物は、HMWポリエチレンを全組成物の50重量%より多く、他の実施態様において55重量%より多く含み、他の実施態様においては、50〜80重量%の間、更に他の実施態様において55〜75%の間、更に他の実施態様において55〜70重量%の間であり、重量%は、GPC測定から決定される。
【0077】
更に、本発明のポリエチレン組成物は、1つの実施態様において100キロポアズ〜3000キロポアズ、他の実施態様において300キロポアズ〜1400キロポアズ、他の実施態様において350キロポアズ〜1000キロポアズ、他の実施態様において400キロポアズ〜800キロポアズ、更に他の実施態様において500キロポアズ〜700キロポアズの、200℃及び0.1/秒での動的粘度を有する。本明細書の実施例中の動的粘度は、ASTM D4440−95に従って、窒素雰囲気、1.5mmダイギャップ及び25mm平行プレートを用いて、200℃及び0.1/秒で測定した。
【0078】
本発明の他の側面において、フィルムの作製に有用なポリエチレン組成物は、0.60より大きい、他の実施態様において0.61より大きい、更に他の実施態様において0.62より大きい、更に他の実施態様において0.63より大きい弾性を有する。
【0079】
ポリエチレン組成物の個々の成分は、また、ある実施態様により記述され、1つの実施態様において、ポリエチレン組成物は、1種のHMWポリエチレン及び1種のLMWポリエチレンを含み、他の実施態様においては、ポリエチレン組成物は、実質的に、1種のHMWポリエチレン及び1種のLMWポリエチレンより成る。
【0080】
1つの実施態様において、HMWポリエチレンの分子量分布(Mw/Mn)は、3〜24の範囲であり、他の実施態様においては4〜24、他の実施態様においては6〜18、他の実施態様においては7〜16、更に他の実施態様においては8〜14の範囲であり、ここで、望ましい範囲は、本明細書に記載の任意の上限と任意の下限の任意の組合せを含む。HMWポリエチレンは、1つの実施態様において50,000amuより大きい範囲の、1つの実施態様において50,000〜1,000,000amuより大きい範囲の、他の実施態様において80,000〜900,000amuより大きい範囲の、他の実施態様において100,000〜800,000amuより大きい範囲の、他の実施態様において250,000〜700,000amuより大きい範囲の重量平均分子量を有し、ここで、望ましい範囲は、本明細書に記載の任意の上限と任意の下限の任意の組合せを含む。ポリエチレン組成物中のHMWポリエチレンの重量分率は、ポリエチレン組成物に望まれる特性に応じて任意の所望のレベルであることができ;1つの実施態様において、HMWポリエチレンの重量分率は、0.3〜0.7の範囲であり、他の特定の実施態様においては、0.4〜0.6、更に他の特定の実施態様においては、0.5〜0.6の範囲である。
【0081】
1つの実施態様において、LMWポリエチレンの分子量分布(Mw/Mn)は、1.8〜6の範囲であり、他の実施態様においては2〜5、更に他の実施態様においては2.5〜4の範囲であり、ここで、望ましい範囲は、本明細書に記載の任意の上限と任意の下限の任意の組合せを含む。LMWポリエチレンは、1つの実施態様において2,000〜50,000amu、他の実施態様において3,000〜40,000amu、更に他の実施態様において4,000〜30,000amuの範囲の重量平均分子量を有し、ここで、ポリエチレン組成物中のLMWポリエチレンの望ましい範囲は、本明細書に記載の任意の上限と任意の下限の任意の組合せを含む。1つの実施態様において、LMWポリエチレンの重量平均分子量は、50,000amu未満、他の実施態様において40,000amu未満、更に他の実施態様において30,000amu未満、更に他の実施態様において20,000amu未満、更に他の実施態様において15,000amu未満、更に他の実施態様において13,000amu未満である。LMWポリエチレンは、1つの実施態様において0.1〜10,000dg/min、他の実施態様において1〜5,000dg/min、更に他の実施態様において100〜3,000dg/minのI2値;及び1つの実施態様において2.0〜300,000dg/min、他の実施態様において20〜150,000dg/min、更に他の実施態様において30〜15,000dg/minのI21値を有し;ここで、I2及びI21値について、望ましい範囲は、本明細書に記載の任意の上限と任意の下限の任意の組合せを含む。LMWのI2及びI21は、この分野で公知の任意の手法により決定することができ;1つの実施態様において、GPC曲線の逆重畳により決定することができる。
【0082】
ポリエチレン材料の顆粒は、ポリエチレン組成物の作製において本明細書に記載の方法から生成される。場合により、1以上の添加剤をポリエチレン組成物とブレンドしてもよい。ポリエチレンと1以上の添加剤とのブレンドを製造する物理的方法に関して、最終フィルム製品に変換される前に、均一なブレンドが製造されることを保証するために、十分に撹拌すべきである。添加剤をポリオレフィンとブレンドする一つの方法は、タンブラー又は他の物理的ブレンド手段中で成分を接触させることであり、ポリオレフィンは、反応器顆粒の形態にある。その後、所望ならば、押出機中で溶融ブレンドすることを続いて行うことができる。成分をブレンドする他の方法は、押出機、ブラベンダー、又は任意の他の溶融ブレンド手段、好ましくは押出機中で、直接、ポリオレフィンペレットを添加剤と溶融ブレンドすることである。好適な押出機の例には、Farrel及びKobe製のものが包含される。本明細書に記載のポリエチレン組成物の測定された特性に影響を与えないと予想されるが、実施例に記載のポリエチレン組成物の密度、レオロジー及び他の特性は、添加剤と組成物とをブレンドした後に、測定される。
【0083】
添加剤の非限定的な例には、フッ素系エラストマー、ポリエチレングリコール及びポリカプロラクトン、抗酸化剤、核化剤、酸捕捉剤、可塑剤、安定剤、腐食防止剤、膨張剤、連鎖遮断性抗酸化剤等の他のUV吸収剤、消光剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、染料、及び充填剤、並びに過酸化物等の硬化剤が挙げられる。
【0084】
特に、有機ホスフィット、立体障害性アミン、及びフェノール性抗酸化剤等の抗酸化剤及び安定剤が、1つの実施態様において0.001〜2重量%、他の実施態様において0.01〜1重量%、そして更に他の実施態様において0.05〜0.8重量%存在することができ、他の方法で記述すると、全ポリマー組成物の1〜5000重量ppm、より特定的な実施態様においては100〜3000ppm存在することができる。好適である有機ホスフィットの非限定的な例は、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィット(IRGAFOS 168)及びジ(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフィット(ULTRANOX 626)である。立体障害性アミンの非限定的な例には、ポリ[2−N,N’−ジ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−ヘキサンジアミン−4−(1−アミノ−1,1,3,3−テトラメチルブタン)symトリアジン](CHIMASORB 944);セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)(TINUVIN 770)が包含される。フェノール性抗酸化剤の非限定的な例としては、テトラキス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ペンタエリスリチル(IRGANOX 1010);1,3,5−トリ(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−イソシアヌレート(IRGANOX 3114);トリス(ノニルフェニル)フォスフィット(TNPP);及びオクタデシル−3,5−ジ−(tert)−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマート(IRGANOX 1076)を包含し;他の添加剤にはステアリン酸亜鉛およびオレイン酸亜鉛が包含される。
【0085】
充填剤は、1つの実施態様において0.01〜5重量%、他の実施態様において組成物の0.1〜2重量%、そしてさらに他の実施態様において0.2〜1重量%、最も好ましくは0.02〜0.8重量%存在することができる。望ましい充填剤としては、それらに限定されるものではないが、二酸化チタン、炭化ケイ素、シリカ(及びシリカの他の酸化物、沈降性又は非沈降性)、酸化アンチモン、炭酸鉛、鉛白、リトポン、ジルコン、コランダム、スピネル、アパタイト、水簸性硫酸バリウム、硫酸バリウム、マグネシター、カーボンブラック、アセチレンブラック、ドロマイト、炭酸カルシウム、タルク及び水和された又は水和されていない、イオンMg、CaもしくはZnのAl、CrもしくはFe及びCO3及び/又はHPO4とのヒドロタルサイト化合物;石英粉末、塩化水素炭酸マグネシウム、ガラス繊維、粘土、アルミナ、並びに他の金属酸化物及び炭酸塩、金属水酸化物、クロム、亜リン酸及び臭素化難燃剤、三酸化アンチモン、シリカ、シリコーン、並びにそれらのブレンドが挙げられる。これらの充填剤は、特に、任意の他の充填剤及び多孔性充填剤並びにこの分野で公知の担体を包含しうる。
【0086】
全体で、充填剤、抗酸化剤及び他のそのような添加剤は、好ましくは、本発明のポリエチレン組成物中に全組成物の2重量%未満、好ましくは1重量%未満、最も好ましくは0.8重量%未満で存在する。
【0087】
1つの実施態様において、酸化剤が、また、ポリエチレン組成物との反応性成分として、ペレット化の間に加えられる。本発明のポリエチレン組成物のこの側面において、組成物は、WO03/047839明細書に開示されているように、酸化剤、好ましくは酸素と共に押出成形される。1つの実施態様において、0.01又は0.1又は1〜14又は16SCFM(1分あたりの標準立方フィート)の酸素が、押出成形中にポリエチレン組成物に添加されて、フィルムが形成され、正確な量は、使用される押出機及び他の条件に依存する。言い換えれば、1つの実施態様において、不活性気体、例えば窒素中の10〜21容積%の酸素が、押出ポリマー組成物に添加される。1つの実施態様において、十分な酸素が押出機に添加されると、押出機からのポリエチレン組成物のI21/I2値が1%から40%に、他の実施態様においては5%から25%に上昇する。それから製造されたペレットは、次いで、別個のライン、例えばAlpineライン中で、本発明のフィルムを押出成形するために使用される。
【0088】
添加剤を含むか含まない、得られたペッレット化されたポリエチレン組成物は、任意の好適なフィルム形成手段:フィルムブロー成形又はキャスティング及び例えば、PLASTICS PROCESSING (Radian Corporation, Noyes Data Corp. 1986)に記載のような一軸若しくは二軸延伸を達成する全てのフィルム成形法により加工される。特に好ましい実施態様において、本発明のポリエチレン組成物は、FILM EXTRUSION MANUAL, PROCESS, MATERIALS, PROPERTIES (TAPPI, 1992)に記載のように、フィルムに成形される。更により特定的には、本発明のフィルムは、ブロー成形フィルムであり、その方法が、例えば、FILM EXTRUSION MANUAL, PROCESS, MATERIALS,PROPERTIES pp. 16-29に、一般的に、記載されている。
【0089】
本明細書に記載のポリエチレン組成物に望ましい任意の条件下に操作されるHDPE(0.940g/cm3より大きい密度)の押出成形に好適な任意の押出機を、本発明のフィルムを製造するために使用することができる。そのような押出機は、当業者に公知である。そのような押出機には、1つの実施態様において30〜150mm、他の実施態様において35〜120mmの範囲のスクリュー直径を有し、且つ1つの実施態様において100〜1,500lbs/hr、他の実施態様において200〜1,000lbs/hrの押出量を有するものを包含する。1つの実施態様において、溝付供給押出機が使用される。押出機は、1つの実施態様において80:1〜2:1、他の実施態様において60:1〜6:1、更に他の実施態様において40:1〜12:1、更に他の実施態様において30:1〜16:1のL/D比を有する。
【0090】
一層又は多層ダイを使用することができる。1つの実施態様において、50〜200mm一層ダイが使用され、他の実施態様において90〜160mm一層ダイ、更に他の実施態様において100〜140mm一層ダイが使用され、ダイは、1つの実施態様において0.6〜3mm、他の実施態様において0.8〜2mm、更に他の実施態様において1〜1.8mmの範囲の公称ダイギャップを有し、ここで、望ましいダイは、本明細書に記載の任意の実施態様の任意の組合せにより記述することができる。特定の実施態様において、本明細書で主張する有利な比押出量は、特定の実施態様において、21:1のL/Dを有する50mm溝付フィード押出機中で維持される。
【0091】
押出機、押出機のネック及びアダプターのゾーン全体の温度は、1つの実施態様において150℃〜230℃、他の実施態様において160℃〜210℃、更に他の実施態様において170℃〜190℃の範囲である。ダイ全体にわたっての温度は、1つの実施態様において160℃〜250℃、他の実施態様において170℃〜230℃、更に他の実施態様において180℃〜210℃の範囲である。
【0092】
そこで、本発明のフィルムは、本明細書に開示の実施態様のいずれかにより、あるいは本明細書に記載の実施態様のいずれかの組合せにより記述することができる。本発明の実施態様は、限定されるものではないが、以下の実施例を参照してよりよく理解することができるであろう。
【実施例】
【0093】
以下の実施例は、エチレンと1−ブテンコモノマーを使用して、ポリエチレン組成物の製造をもたらす、8〜40T/hr以上の製造速度で、500lbs/hr(230kg/hr)より多い量を製造可能な流動床反応器中で行われる気相重合法に関する。表は、サンプル(「実施例」)回収の間の反応条件と共に、樹脂の種々のサンプル及びそれらのサンプルから作製されたフィルムを特定する。得られた樹脂生成物及びフィルム生成物の種々の特性をも特定する。実施例1及び2は、下記のように、酸素不存在下に押出成形され(「非調整(non-tailored)」)、一方、実施例3〜9は、参照により本明細書に組み入れられるWO03/047839のように、酸素の存在下に押出成形された(「酸素調整(oxygen tailored)」)。比較例は、入手したままのものをフィルムに成形した。
【0094】
反応器の流動床は、ポリエチレン顆粒で作製した。反応器は、アルキルアルミニウム、好ましくはトリメチルアルミニウムで不動態化する。各々の運転中、エチレンと水素の気体状供給流を、反応器床の前で、リサイクル気体ラインに導入した。その注入は、リサイクルライン熱交換器及び圧縮機の下流である。液状1−ブテンコモノマーは、反応器床の前に導入した。樹脂の開裂に影響し且つ汚れ、特に底部プレートの汚れの調節を助ける調節剤(典型的には、イソプロピルアルコール)は、もし加えるならば、気体又は液体形態で、反応器床の前で、リサイクル気体ラインに添加した。エチレン、水素及び1−ブテンコモノマーのそれぞれの流れは、各々の実施例で特定されているように、目的の反応器条件を維持するように調節した。気体の濃度は、オンラインのクロマト装置により測定した。
【0095】
実施例1および2は、直径が8フィートで、床高さ(分配器の「底部」プレートから膨張部の始点まで)が38フィートの単一気相流動床での3〜4日の重合運転から採取したサンプルである。実施例3〜9は、直径が11.3フィートで、床高さ(分配器の「底部」プレートから膨張部の始点まで)が44.6フィートの単一気相流動床での3〜4日の重合運転から採取したサンプルである。
【0096】
本発明の実施例の各重合運転において、担持二金属触媒は、純窒素を用いて、流動床に直接注入した。触媒注入速度は、ほぼ一定の生産速度が維持されるように調整した。各々の運転において、使用した触媒は、875℃で脱水したシリカ及びメタロセン化合物Cp2MX2(式中、Cpは、n−ブチル置換シクロペンタジエニル環であり、Mはジルコニウムであり、Xはフルオリドである)で作製した。チーグラー・ナッタ成分のチタン源は、TiCl4であった。
【0097】
各運転の間、成長するポリエチレン粒子の反応床は、反応ゾーンを通っての補給気体とリサイクル気体の連続的な流れにより、流動状態が維持した。表に示すように、本発明の実施例の各重合運転は、目的の反応器温度(「床温度」)、すなわち、約95℃の反応器温度を使用した。各運転の間、反応器温度は、リサイクル気体の温度を上下に調節して重合による発熱の度合いの変化に適応することにより、ほぼ一定に維持した。
【0098】
実施例のポリマー組成物を、500lbs/hr、0.125HP−Hr/lbの比エネルギー入力の割合で、4インチFarrel(又はKobe)連続ミキサー(4UMSD)中で押出成形して、ペッレトを形成した。添加剤パッケージをまた、実施例1〜9のポリマー組成物が、800ppm(IRGANOX 1010、ペンタエリスリチルテトラキス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオナート)、200ppm(IRGAFOS 168、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィット)および1500ppmステアリン酸亜鉛を含むように添加した。実施例1及び2は、窒素雰囲気中(0%酸素)で押出し;実施例3〜9は、WO03/047839に開示されたようにある量の酸素の存在下に押出した。
【0099】
ポリマー組成物の特性を、表に記載する。「I21:HMW:MFR」は、I21及びI2データからの高分子量成分のI21の計算値であり、以下の実験的モデル(IV)に基づくものであった。
【数1】

(式中、I21及びI2は、本明細書に記載のASTM標準から決定された)。「I21:HMW:DSR」は、以下のモデル(V)に基づく動的粘度測定からの高分子量成分のI21の計算値である。
【数2】

(式中、
η*x(ポアズ)は、200℃及び周波数xで測定した複合粘度であり、
G'x(dyne/cm2)は、200℃及び周波数xで測定した剪断モジュラスの真の成分であり、
G"x(dyne/cm2)は、200℃及び周波数(rad/sec)xで測定した剪断モジュラスの仮想成分である。
【0100】
これらのパラメーターは、25mm平行プレートを用い、測定した、約1.4mmのダイギャップ、10,000dyne/cm2の応力及びASTM標準D4440−01プラスチック用の標準試験法:動的機械特性:溶融レオロジー測定法を用いて、Rheometrics Dynamic Stress Rheometer上で測定した。
【0101】
実施例1および2は、表2に列挙した条件下でブローフィルムライン押出成形し;押出機スクリューは、「LLDPE」供給部を有する50mm21dスクリュー(Alpine部品番号171764)である。溶融温度Tmは、押出機の出口付近の、アダプター部に浸漬した熱電対により測定した。冷却の目的で、冷却空気をバブルの外側に当てた。
【0102】
他の分析法を記載する:
【0103】
フィルムゲージは、ASTM D374−94方法Cに従って測定した;
【0104】
FI(I21):フローインデックス(I21)は、190℃、21.6kgで、ASTM D1238に従って測定した;
【0105】
MI(I2):メルトインデックス(I2)は、190℃、2.16kgで、ASTM D1238に従って測定した;
【0106】
MFR:メルトフロー比は、比I21/I2として定義する;
【0107】
密度(g/cm3)は、ASTM D−4703−00に準じて成形され、ASTM D618方法Aに準じてコンディショニングされ、ASTM D1505−03に従って測定された、プラーク圧縮物から切り出されたチップを用いて決定した;
【0108】
弾性:これは、内部試験法であり、0.1ラジアン/秒で測定されたG’/G”の比として定義される。G’及びG”は、応力レオメーター(動的応力レオメーターを用いて、200℃)上で、1000Paの一定の応力で、振動剪断下に運転して、測定する。0.1ラジアン/秒でのG’及びG”の値は、弾性数について選択する;
【0109】
η*:0.1ラジアン/秒で、200℃で応力レオメーター上で測定された複合粘度;
【0110】
FAR:「フィルム外観の格付け」は、樹脂が標準的な操作ガイドライン下で押出成形される内部試験法であり、得られるフィルムは、表面の不完全さについて視覚的に検査される。フィルムは、標準フィルムの対照セットと比較され、FAR格付けは、操作者の評価に基づいてなされる。この評価は、相当の経験を有する操作者により行われる。FAR対照フィルムは、−50〜+50の範囲で入手可能であり、+20以上のFAR格付けは、需要者により、商業的に受け入れられるものと考えられる。
【0111】
ゲルカウント:使用された装置は、Optical Control Systems GmbH (OCS) Model ME-20押出機、OCS Model CR-8キャストフィルムシステム、及びOCS Model FS-5ゲルカウンターより成るものであった。ME-20押出機は、3/1圧縮比及び25/1 L/Dの3/4”標準スクリューより成っていた。それは、供給ゾーン、圧縮ゾーン、及び計量ゾーンを含んでいる。押出機は、全ての固体状態コントロール、スクリュー用可変周波数ACドライブ、5つの加熱ゾーン(3つはバレル用であり、1つは溶融温度及び圧力測定ゾーン用であり、1つはダイ用である)を用いる。ダイは、ダイギャップが約20ミルの、「魚の尾」の形の4”固定リップ・ダイであった。試験は、Southern Analytical, Inc., Houston TXにより行った。
【0112】
キャストフィルムシステムは、二本のステンレススチールのクロムメッキされ研磨された冷却ロール、切削精密エアーナイフ、ゲルカウンターを通してフィルムを引っ張るゴムニップロール、及びトルク駆動巻上げロールを含む。ニップロールは、冷却ロールとは別個に駆動され、速度と張力で調節されている。冷却ロール用の循環冷却/加熱システムが、同じく含まれ、エチレングリコールを使用する。スチールSSレール、フィルム破断センサー、及び他のものが含まれている。実施例3〜9及びC1のフィルムは、厚さ1ミル(25μm)で測定し、比較例のフィルムC2、C3及びC5は、2ミル(50μm)フィルムであった。
【0113】
ゲルカウンターは、デジタル2084ピクセルラインカメラ、ハロゲン系ライン照明システム、イメージ処理用コンピューター、及びウインドウスNT4ソフトより成っている。カメラ/照明システムは、冷却ロールとニップロールの間のキャストフィルムシステム上に搭載し、フィルム上で50ミクロンの解像度でセットした。これは、検出できる最小欠陥が50ミクロンx50ミクロンの大きさであることを意味している。
【0114】
ペレットサンプルは、一定の押出機温度(供給ゾーンについて180℃、全ての残りのゾーンについて190℃)及び40℃の一定の冷却温度で処理が実施された。押出機及び冷却ロールの速度は、サンプル間で多少変動させ、各々のサンプルについて最適のフィルムが得られるようにした。更に実験をして、全てのサンプルについて満足される、操作条件の1つのセットが見出された。ゲルカウンターは、50〜100ミクロンに始まって、100ミクロン間隔で増大する10種の大きさでの分類、完全な円形に始まって、より長楕円形になっていく4種の形状での分類、及び2つの検出レベル(1つはゲル用で、1つは黒い染み用)でセットした。使用したゲル検出レベル又は感度は、0〜100目盛りの35であった。
【0115】
カメラ設定パラメーターが一旦定まったならば、押出機を、試験条件が定常状態又は「平衡」となるまで、最初のサンプルでパージした(典型的には、約20分間)。これは、「y」軸上のゲルカウント数と「x」軸上の時間のトレンドラインチャートを見ることによって、行われた。次いで、試験は、カメラでフィルムを移動しながら、1試験あたり3立方メートルのフィルム上で実施した。試験の再現性を確認するために、サンプルについて3回の試験を連続して実施した。各々の3立方メートル試験の最後に、表形式の結果を印刷した。パージ時間の後、3回連続の3立方メートル試験を、第二のサンプルについて行い、結果を印刷した。
【0116】
残りのサンプルについて全てのゲル試験を、いくつかのサンプルについては押出機速度、冷却ロール速度及び得られるフィルム厚を変えたことを除いて、このようにして行った。分析器が見ていたものが本当にゲルであったことを確認するために、また、ゲルを2回測定したり測定し損なったりしていないことを確認するために、実際のゲルの写真を、テストの間中、同様に得た。粒状サンプルについて、1セットの操作条件が全てのサンプルに対して、フィルム厚を含めて順守されていたことを見出したので、全てのサンプルは直接比較することができた。
【0117】
表で報告のゲルカウントは、ゲージに対して正規化した。各サンプルは、3回試験した。試験から得られたデータを、大きさ200ミクロン以下の全てのゲルを算出するのに使用した。各サンプルからの3回の試験を平均化し、次いで、その平均値を、ミルでのゲージで除した。ゲルカウントの結果は、3m3のサンプル中の又は7.62x10-53あたりの200μm未満の大きさのゲルの数で表す。
【0118】
ダート衝撃強さ、F50:ASTM D1709−方法Aの手法のとおりに、フィルムについて測定した;
【0119】
エルメンドルフ引裂 ― ASTM D1922のとおりに、フィルムについて測定した;
【0120】
1%割線モジュラス ― ASTM D882のとおりに、フィルムについて測定した;並びに
【0121】
GPC.Mw/Mn、Mz/Mw、Mw(重量平均分子量)及びMn(数平均分子量)値、並びに%HMW成分など。GPC測定は、架橋ポリスチレンカラム;細孔サイズ順:1000未満を1本、混合5x10(7)を3本;145℃で1,2,4−トリクロロベンゼン溶媒を使用する、屈折率検出のゲル濾過クロマトグラフィーにより行った。GPCデータは、「Wesslauモデル」を使用することにより、高分子量成分及び低分子量成分に逆重畳し、そのモデルでは、E. Broyer&R.F. Abbotにより Analysis of molecular weight distribution using multicomponent models, ACS SYMP. SER. (1982), 197 (COMPUT. APPL. POLYM. SCI.), 45-64に記載のように、β項は、低分子量ピークについて1.4に拘束される。
【0122】
比較例1(「C1」)は、表2及び表4に列挙された特性を有する、単一反応器(気相)で製造された二峰性ポリエチレンである。それは、本発明の実施例について上記した触媒組成物と同様の、二金属触媒系を使用して製造された。
【0123】
C1樹脂の物性を決定するために、C1の粒状サンプルを得、1500ppmのテトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン(一般にIRGANOX 1010として知られている)、1500ppmのトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィット(一般にIRGAFOS 168として知られている)及び1500ppmのステアリン酸亜鉛とブレンドした。ブレンドした材料を、実験室規模のブラベンダー単一スクリュー押出機上で、窒素で覆いながら、溶融均質化した。溶融均質化材料のFI、MFR及び密度を測定し、表2にまとめた。より多量の同じC1を、200ppmのIRGAFOS 168、800ppmのIRGANOX 1010及び1500ppmのステアリン酸亜鉛とブレンドし、フィルム特性を測定した。このブレンドを、179kWH/メートルトンのSEIで及びフローダムの溶融側に加えられた8.8SCFMでの10.2%酸素で、Farrel 18UMSD上でコンパウンディングした。このコンパウンディング法の溶融均質化生成物をフィルムに加工した。フィルムプロセス及び物性は表3及び表4にまとめる。溶融温度は、押出機の混合ゾーンの下流端での温度である。
【0124】
比較例2(「C2」)は、チーグラー・ナッタ型の触媒を使用して、2段階二反応器気相法で製造されたDow UNIPOL(登録商標)II 2100二峰性ポリ(エチレン−コ−1−ブテン)である。
【0125】
比較例3(「C3」)は、ExxonMobil Chemical Co.から入手される2段階スラリープロセスで製造されたMitsui HD7960二峰性ポリ(エチレン−コ−1−ブテン)である。
【0126】
比較例4(「C4」)は、ExxonMobil Chemical Co.から入手される2段階スラリープロセスで製造されたMitsui HD7755二峰性ポリ(エチレン−コ−1−ブテン)である。
【0127】
比較例5(「C5」)は、Equistar Chemicalsから入手される2段階プロセスで製造されたAlathon(登録商標)L5005二峰性ポリ(エチレン−コ−1−ブテン)である。
【0128】
【表1】

【0129】
【表2】

【0130】
記載のように二金属触媒を使用して単一気相反応器で製造される、実施例1および2は、従来の単一反応器二峰性樹脂及び一般的に公知の二反応器製造二峰性樹脂に対して、改善された加工性という予期しない利点を有するポリマー組成物を製造した。図1及び図2に同じく示されるような、より低いパワーは、フィルム製造における画期的な改善を表しており、本発明のポリマー組成物はより容易に加工することができるので、従って、その商業的な価値は向上している。特に、実施例1及び2についてのI21値は、双方の比較例についてのそれよりも低いので、ダイを通ってフィルムを形成する流れは確かにより多くのパワーを要すると予想される。
【0131】
更なる利点として、本発明の実施例1及び2の溶融温度は、比較例と比べて、有意に低く、従って、また、加工性において改善されている。ダイ周囲の少なくとも10ポンドのポリマー/hr/インチの高い比ダイ速度及び高い比押出量を依然として維持しながら、180℃未満、特定の実施態様においては179℃未満の溶融温度が本発明の実施例において見出された。従って、C1及びC4の例と同等のモーター負荷及び/又は圧力が、本発明の実施例1及び2に加えられた場合には、同様の溶融温度で、比押出量が、少なくとも1.90ポンドのポリエチレン/hr/rpm(0.863kg/hr/rpm)高くなることが起こりうる。
【0132】
フィルム実施例3〜9に対応するポリエチレン組成物を製造する操作についての反応条件は、下記の表3にある。これらの対応する実施例のポリエチレン組成物の特性は、表4に示されている。実施例3〜9についての及び関係:Tm≦235−3.3(I21)を決定するフィルム押出条件並びにその特定の実施態様は以下のとおりである:50mm溝付供給押出機、21:1のLD比、押出機全体にわたって180℃のフラットな温度プロフィール、及びダイ全体にわたって190℃でフラット、4:1BUR(ブローアップ比、初期バブル直径のダイ直径に対する比)、200lbs/hrの押出量、並びに測定された1.4mmダイギャップの120mmのダイを有し、高密度型スクリューデザインを使用する、Alpine押出機ライン;また、単一リップエアーリング(冷却空気と共に)及び内部バブル安定剤を使用し;HDPEスクリューは、HDPE供給部を持つ50mm21dスクリューである(Alpine部品番号116882)。溶融温度Tmは、押出機の出口付近の、アダプター部に浸漬した熱電対により測定した。実施例3〜9は、C1と同様に、酸素調整したものであった。実施例3〜9の押出特性及びフィルム特性は、表5及び表6に示す。
【0133】
実施例3〜9は、検出可能な臭気を示さなかったが、C1サンプルは、押出成形で臭気を有していた。実施例3〜9は、酸素調整したため、平均してより大きなI21値およびより大きなI2値を示したが、従来技術の樹脂に比べて、より容易に加工されたので、依然として本発明の改善を示した。
【0134】
【表3】

【0135】
【表4】

【0136】
【表5】

【0137】
【表6】

【0138】
実施例3〜9のフィルム品質は、高いFAR値及び低いゲルカウントで示されるように、優れている。実施例1及び2の同等に高いFARを考えると、それらもまた同様に低いゲルカウントを有すると推察できる。従って、酸素調整は、フィルム品質に殆ど又は全く影響を与えない。
【0139】
さらに、本発明のフィルムの利点は、データから見ることができる。特に、相対的に高い比押出量において、使用する装置に対する許容最大モーター負荷の%で表されるモーター負荷は、実施例3〜9について、有意に低く、全て77〜78%未満であり、一方、各比較例についてのそれは、一般的に高く;更に、本発明の実施例についての溶融温度は、本発明の実施例の大部分について、有意により低かった。また、図6にグラフで表されているように、ポリエチレン組成物が1〜1.5lbs/hr/インチの比押出量で押出される実施例3〜9は、関係:Tm≦235−3.3(I21)に従う。さらに、それぞれのセットが異なる条件下に、異なる押出機スクリューを用いて押出されている、実施例1および2と実施例3〜9を比較すると、より一般的な関係:Tm≦Tmx−3.3(I21)が守られる。
【0140】
より特定的には、本発明の利点は、表5並びにグラフ状の図6及び図7中の本発明実施例3〜9のモーター負荷(%)及び溶融温度と比較例とを比較することにより明らかである。本発明の実施例の傾向は、I21が増大するにつれて、溶融温度とモーター負荷が減少に向かうことであるが、比較例の樹脂では、押出機のモーター負荷と溶融温度の双方ともより高い。
【0141】
比押出量、溶融温度及びモーター負荷から、本発明は、従来技術に比べて、更にH.-T. Liuらが195 MACROMOL. SYMP. 309-316 (2003年7月)中で開示しているような、従来開示されている単一反応器二峰性生成物に比べて、有意な改善をもたらしている。Liuらにおける加工パラメーター ― 6.2dg/minのI21及び0.95g/cm3の密度を有する樹脂 ― は、本発明のフィルムのようには有利ではない。なお、本発明の図3〜図5に見られるように、Liuらの二峰性樹脂は、上記のC1と類似である。確かに、本発明は、20未満のI21値及び0.930〜0.970g/cm3の範囲の密度を有する他の従来技術の二峰性樹脂に対して、有意な改善をもたらすことが示されており、商業的に多量の樹脂が商業的規模の押出機で加工されることを考慮すると、この改善は、非常に意義深いものである。
【0142】
特定の実施態様を参照して本発明を説明し且つ例証してきたが、本発明が、本明細書に必ずしも例示されていない多くの様々な変形にも適するということが当業者に理解されるであろう。これらの理由で、本発明の範囲を決定するためには、添付された特許請求の範囲のみを参照すべきである。さらに、本発明のある特徴は、数字の上限のセット及び数字の下限のセットの形で記述される。特記されない限り、これらの限界の任意の組合せにより形成される範囲は、本発明の範囲内であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】1.84〜1.90lbs/hr/rpmの比押出量で押出された、0.5ミルゲージのフィルムを形成する押出しでの圧力に対する本発明の実施例1及び2(◆)並びに比較例(△、□)のメルトインデックス(I21)値のグラフ的な表現である。
【図2】1.84〜1.90lbs/hr/rpmの比押出量で押出された、0.5ミルゲージのフィルムを形成する押出しでのモーター負荷に対する本発明の実施例1及び2(◆)並びに比較例(△、□)のメルトインデックス(I21)値のグラフ的な表現である。
【図3】比較例1(―)と本発明の実施例3(−−−)とを比較する、GPCで得られたデータのグラフ的な表現である。
【図4】比較例1(―)と本発明の実施例4(−−−)とを比較する、GPCで得られたデータのグラフ的な表現である。
【図5】比較例1(―)と本発明の実施例5(−−−)とを比較する、GPCで得られたデータのグラフ的な表現である。
【図6】1.16〜1.20lbs/hr/rpmの比押出量で押出された、0.5ミルゲージのフィルムを形成する押出しでの溶融温度に対する本発明の実施例3及び5〜9(◆)並びに比較例(番号を付した白抜き丸印)のメルトインデックス(I21)値のグラフ的な表現である。
【図7】1.16〜1.20lbs/hr/rpmの比押出量で押出された、0.5ミルゲージのフィルムを形成する押出しでのモーター負荷に対する本発明の実施例3及び5〜9(◆)並びに比較例(番号を付した白抜き丸印)のメルトインデックス(I21)値のグラフ的な表現である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.940〜0.970g/cm3の間の密度及び4〜20dg/minのI21値を有するポリエチレン組成物を含んでなるフィルムであって、ポリエチレン組成物が以下の関係:
m≦235−3.3(I21
を満たす溶融温度Tmで押出されることを特徴とし、ここで、ポリエチレン組成物は、1〜1.5lbs/hr/rpmの比押出量で押出され、且つ、フィルムに成形されるポリエチレン組成物は100未満のゲルカウントを有するものである、フィルム。
【請求項2】
ポリエチレン組成物を含んでなるフィルムであって、ポリエチレン組成物が、50,000amuより大きい重量平均分子量を有する高分子量成分と50,000amu未満の重量平均分子量を有する低分子量成分を含み;ポリエチレン組成物が、0.940〜0.970g/cm3の間の密度及び20dg/min未満のI21値及び35より大きいMw/Mn値を有し;フィルムが100未満のゲルカウントを有することを特徴とする、フィルム。
【請求項3】
ポリエチレン組成物が、50,000amuより大きい重量平均分子量を有する高分子量成分と40,000amu未満の重量平均分子量を有する低分子量成分を含む、請求項2のフィルム。
【請求項4】
ポリエチレン組成物が、35より大きいMw/Mn値を有する、先行請求項のいずれかのフィルム。
【請求項5】
ポリエチレン組成物が、0.60より大きい弾性を有する、先行請求項のいずれかのフィルム。
【請求項6】
ポリエチレン組成物が、硬い汚染物を含まないものである、先行請求項のいずれかのフィルム。
【請求項7】
フィルムが、
(a)エチレン及びC3〜C12のα−オレフィン、アルキルアルミニウム及び二金属触媒組成物を接触させることにより形成される低分子量ポリマーに高分子量ポリマーを組み込むことを含んでなるポリエチレン組成物をまず形成し;続いて、
(b)ポリエチレン組成物を押出して、場合により酸素を加えながらペレットを形成して、ポリエチレン組成物のペレットを形成し;
(c)ポリエチレン組成物のペレットを単離し;
(d)押出機中でポリエチレン組成物のペレットを押出して、フィルムを形成する、
ことを含む工程により製造される、先行請求項のいずれかのフィルム。
【請求項8】
工程(b)の間に、0.01〜14SCFMの酸素を加える、請求項7のフィルム。
【請求項9】
ポリエチレン組成物が、単一連続気相反応器プロセスにおいて製造されるものである、先行請求項のいずれかのフィルム。
【請求項10】
フィルムが、50未満のゲルカウントを有する、先行請求項のいずれかのフィルム。
【請求項11】
GPCにより測定される、全ポリエチレン組成物に対する高分子量成分の重量比が、50wt%より大きい、先行請求項のいずれかのフィルム。
【請求項12】
ポリエチレン組成物が、最大モーター負荷の80%未満のモーター負荷を使用して押出されるものである、先行請求項のいずれかのフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−513236(P2007−513236A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542546(P2006−542546)
【出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2004/009807
【国際公開番号】WO2005/061561
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(599168648)ユニベーション・テクノロジーズ・エルエルシー (70)
【Fターム(参考)】