説明

ポリエチレン系樹脂製フィルム

【課題】衝撃強度、剛性、緩光性のバランスに優れ、易カット性を有するポリエチレン系樹脂製フィルムを提供する。
【解決手段】ポリエチレン系樹脂製フィルムであって、このフィルムが以下の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有する樹脂組成物からなり、この樹脂組成物に含まれる成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計量を100質量%とするとき、成分(A)の含有量が18〜40質量%であり、成分(B)の含有量が55〜77質量%であり、成分(C)の含有量が3〜15質量%であるポリエチレン系樹脂製フィルム。
成分(A):脂肪族ポリエステル
成分(B):流動の活性化エネルギー(Ea)が45〜100kJ/molであるエチレン−α−オレフィン共重合体
成分(C):前記成分(A)と前記成分(B)との相容化剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系樹脂製フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装材として使用されるフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルや、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン等の樹脂からなるフィルムが知られている。しかしながら、このような樹脂からなるフィルムは、焼却処理すると、高い燃焼熱が発生し、この燃焼熱によって焼却炉の劣化が促進されてしまうという問題があった。
一方、ポリ乳酸やポリ−3−ヒドロキシ酪酸エステルは、植物由来の樹脂であり、自然環境中で生分解されるため、これらを原料とするフィルムは、廃棄処理が容易になることが期待される。
そこで、従来のポリオレフィン等と、ポリ乳酸とを組み合わせて使用する試みがなされている。特許文献1には、ポリ−3−ヒドロキシブチレート系重合体及び/又はポリ乳酸1〜99質量%と、ポリエチレン系樹脂99〜1質量%とからなる樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−232228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているような樹脂組成物を用いてポリエチレン系樹脂製フィルムを製造した場合、得られるフィルムの衝撃強度、剛性、緩光性、易カット性のバランスは十分なものではなかった。
以上の課題に鑑み、本発明は衝撃強度、剛性、緩光性のバランスに優れ、易カット性を有するポリエチレン系樹脂製フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリエチレン系樹脂製フィルムであって、このフィルムが以下の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有する樹脂組成物からなり、この樹脂組成物に含まれる成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計量を100質量%とするとき、成分(A)の含有量が18〜40質量%であり、成分(B)の含有量が55〜77質量%であり、成分(C)の含有量が3〜15質量%であるポリエチレン系樹脂製フィルムを提供する。
成分(A):脂肪族ポリエステル
成分(B):流動の活性化エネルギー(Ea)が45〜100kJ/molであるエチレン−α−オレフィン共重合体
成分(C):前記成分(A)と前記成分(B)との相容化剤
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、衝撃強度、剛性、緩光性のバランスに優れ、易カット性を有するポリエチレン系樹脂製フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、以下の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有する樹脂組成物からなるポリエチレン系樹脂製フィルムである。
成分(A):脂肪族ポリエステル
成分(B):流動の活性化エネルギー(Ea)が45〜100kJ/molであるエチレン−α−オレフィン共重合体
成分(C):前記成分(A)と前記成分(B)との相容化剤
以下、詳細に説明する。なお、本明細書において、「ポリエチレン系樹脂製フィルム」を、単に「フィルム」ということがある。
【0008】
[樹脂組成物]
<成分(A):脂肪族ポリエステル>
本発明における脂肪族ポリエステルとしては、ヒドロキシカルボン酸を重合して得られるポリエステルや、ジオールとジカルボン酸を共重合して得られるポリエステルが挙げられる。これらは単独又は2種以上併用して用いてもよい。
【0009】
ヒドロキシカルボン酸を重合して得られるポリエステルとしては、下記一般式(1)で示される3−ヒドロキシアルカノエートに由来する繰り返し単位を有する重合体が挙げられる。
【0010】
【化1】

〔式中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜15のアルキル基であり、Rは単結合、又は炭素数1〜4のアルキレン基である〕
【0011】
上記式(1)で示される繰り返し単位を有する重合体は、単独重合体であってもよく、上記繰り返し単位を二種以上含有する多元共重合体であってもよい。多元共重合体は、ランダム共重合体、交替共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。
【0012】
上記単独重合体としてはポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸エステル、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシプロピオネート)等が挙げられる。多元共重合体としては、3−ヒドロキシブチレート−3−ヒドロキシプロピオネート共重合体、3−ヒドロキシブチレート−4−ヒドロキシブチレート共重合体、3−ヒドロキシブチレート−3−ヒドロキシバリレート共重合体、3−ヒドロキシブチレート−3−ヒドロキシヘキサノエート共重合体、3−ヒドロキシブチレート−3−ヒドロキシオクタノエート共重合体、3−ヒドロキシブチレート−3−ヒドロキシバリレート−3−ヒドロキシヘキサノエート−4−ヒドロキシブチレート共重合体、3−ヒドロキシブチレート−乳酸共重合体等が挙げられる。このうち、ポリ乳酸、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸エステル又はこれらの混合物を用いることが好ましい。
【0013】
ジオールとジカルボン酸を共重合して得られる脂肪族ポリエステルとしては、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ブチレンサクシネート−ブチレンアジペート共重合体、ブチレンサクシネート−ブチレンテレフタレート共重合体、ブチレンアジペート−ブチレンテレフタレート共重合体、エチレンサクシネート−エチレンテレフタレート共重合体等が挙げられる。
【0014】
脂肪族ポリエステルとして、ポリ乳酸を用いることが好ましい。ここで、本発明におけるポリ乳酸とは、L−乳酸及び/又はD−乳酸に由来する繰り返し単位のみからなる重合体、L−乳酸及び/又はD−乳酸に由来する繰り返し単位と、L−乳酸及びD−乳酸以外のモノマーに由来する繰り返し単位と、からなる共重合体、及び、前記重合体と前記共重合体の混合物、をいう。ここで、上記L−乳酸及びD−乳酸以外のモノマーとしては、グリコール酸等のヒドロキシカルボン酸、ブタンジオール等の脂肪族多価アルコール及びコハク酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
【0015】
ポリ乳酸におけるL乳酸又はD乳酸に由来する繰り返し単位の含有量は、得られるフィルムの耐熱性を高める観点から、好ましくは80モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上であり、さらに好ましくは95モル%以上である。ポリ乳酸のメルトフローレート(MFR)は、流動性の観点から好ましくは1g/10分以上であり、より好ましくは2g/10分以上であり、更に好ましくは3g/10分以上であり、更により好ましくは5g/10分以上であり、最も好ましくは10g/10分以上である。また、フィルムの強度の観点から、20g/10分以下であり、より好ましくは18g/10分以下であり、更に好ましくは15g/10分以下である。なお、MFRは、JIS K7210−1995に規定された方法において、荷重21.18N、温度190℃の条件で、A法により測定する。
【0016】
<成分(B):エチレン−α−オレフィン共重合体>
本発明におけるエチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンに由来する繰り返し単位の含有量が50質量%以上であるエチレン−α−オレフィン共重合体をいう。
エチレン−α−オレフィン共重合体としては、エチレンと1種類以上の炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。炭素数3〜12のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。このうち、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンを用いることが好ましく、1−ブテン、1−ヘキセンを用いることがより好ましい。
【0017】
エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体等が挙げられる。このうち、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体を用いることが好ましく、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体を用いることがより好ましい。
【0018】
エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、905〜950kg/mであることが好ましい。フィルムの剛性の観点から、好ましくは910kg/m以上であり、より好ましくは912kg/m以上である。また、フィルムの衝撃強度の観点から、好ましくは940kg/m以下であり、より好ましくは930kg/m以下である。なお、成分(A)の密度は、JIS K7112(1999)に従い測定する。
【0019】
エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、0.1〜10g/10分であることが好ましい。フィルムの加工性の観点から、より好ましくは0.3g/10分以上であり、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。得られるフィルムの機械的強度の観点から、好ましくは8g/10分以下、より好ましくは5g/10分以下、更に好ましくは3g/10分以下、更により好ましくは2g/10分以下である。なお、ここでいうメルトフローレートとは、JIS K7210(1995)に従い、試験荷重21.18N、試験温度190℃の条件で測定する。
【0020】
エチレン−α−オレフィン共重合体の流動の活性化エネルギー(Ea)は、45〜100kJ/molであることが好ましい。流動性の観点から、好ましくは50kJ/mol以上、より好ましくは55kJ/mol以上であり、更に好ましくは60kJ/mol以上であり、更により好ましくは65kJ/mol以上である。また、高温で十分な成形性を得るという観点から、Eaは、好ましくは100kJ/mol以下であり、より好ましくは90kJ/mol以下である。
【0021】
エチレン−α−オレフィン共重合体のη*0.1/η*100は、10〜100であることが好ましい。η*0.1/η*100は、加工性を高める観点から、好ましくは15以上であり、より好ましくは20以上であり、更に好ましくは25以上である。また、機械的強度を高める観点から、好ましくは90以下であり、より好ましくは80以下、更に好ましくは70以下である。なお、η*0.1、η*100は、粘弾性測定装置(例えば、Rheometrics社製Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS−800等。)を用いて測定温度190℃のもとで測定される。η0.1/η100の測定には、エチレン−α−オレフィン共重合体を用いて、温度190℃下で厚み2.0mmのプレスシートを作成し、このプレスシートを直径25mmの円盤状にくり抜いて作製したサンプルを用いた。
【0022】
エチレン−α−オレフィン共重合体の引張衝撃強度は、400〜2000kJ/m2であることが好ましい。引張衝撃強度は、機械的強度を高める観点から、好ましくは450kJ/m2以上であり、より好ましくは500kJ/m2以上、更に好ましくは550kJ/m2以上であり、更により好ましくは600kJ/m2以上である。引張衝撃強度は、ASTM D1822−68に従って測定する。
【0023】
<成分(C):相容化剤>
本発明において成分(C)とは、成分(A)と成分(B)との相容化剤をいう。相容化剤としては、エポキシ基を有する重合体、スチレン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。成分(A)と成分(B)とを相容化させる成分(C)として好ましくは、エポキシ基を有する重合体が用いられる。
ある化合物が成分(C)に該当するかどうかは、次の方法で判定する。以下、ある化合物を成分(X)と称する。
まず、成分(A)、成分(B)及び成分(X)を、所定の量混合した混合物(1)を、溶融混練して樹脂組成物(1)を得る。この樹脂組成物(1)を用いて、フィルム(1)を製造する。
次に、フィルム(1)を製造した条件と同じ条件で、成分(B)を用いてフィルム(2)を製造する。
フィルム(1)の衝撃強度とフィルム(2)の衝撃強度を測定する。フィルム(1)の衝撃強度が、フィルム(2)の衝撃強度の50%を超えている場合、成分(X)は成分(A)と成分(B)の相容化剤、すなわち成分(C)である。
【0024】
エポキシ基を有する重合体としては、エチレンに由来する繰り返し単位と、エポキシ基を有する単量体に由来する繰り返し単位とを有する共重合体が挙げられる。エポキシ基を有する単量体としては、例えば、グリシジルメタアクリレート、グリシジルアクリレート等のα,β−不飽和グリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル等のα,β−不飽和グリシジルエーテルを挙げることができ、好ましくはグリシジルメタアクリレートである。
【0025】
エポキシ基を有する重合体としては、具体的には、グリシジルメタアクリレート−エチレン共重合体(例えば、住友化学製 商品名ボンドファースト)、エポキシ基を有する重合体としては、グリシジルメタアクリレート−スチレン共重合体やグリシジルメタアクリレート−アクリロニトリル−スチレン共重合体、グリシジルメタアクリルレート−プロピレン共重合体等が挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、水添及び非水添のスチレン−共役ジエン系等に、エポキシ基を有する単量体を、溶液若しくは溶融混練でグラフト重合させたものを用いてもよい。
【0026】
エポキシ基を有する重合体において、エポキシ基を有する単量体に由来する繰り返し単位の含有量は、0.01質量%〜30質量%であり、好ましくは0.1質量%〜20質量%であり、より好ましくは5質量%〜15質量%であり、更に好ましくは8質量%〜15質量%であり、更により好ましくは10質量%〜20質量%である(ただし、エポキシ基を有するエチレン系重合体を100質量%とする)。なお、エポキシ基を有する単量体に由来する繰り返し単位の含有量は、赤外法により測定される。具体的には、プレスシートを作成し、赤外吸収スペクトルの特性吸収の吸光度を厚さで補正して、検量線法により求める。グリシジルメタアクリレート特性吸収としては、910cm−1のピークを用いる。
【0027】
エポキシ基を有する重合体のメルトフローレート(MFR)は、1g/10分〜15g/10分である。加工性の観点から好ましくは1.5g/10分以上、より好ましくは2g/10分以上である。エポキシ基を有する重合体と他の成分との反応のしやすさの観点から、好ましくは8g/10分以下であり、より好ましくは7g/10分以下であり、更に好ましくは5g/10分以下であり、更により好ましくは4g/10分以下である。ここでいうメルトフローレートとは、JIS K 7210(1995)に規定された方法によって、試験荷重21.18N、試験温度190℃の条件で測定した値を用いる。
【0028】
エポキシ基を有する重合体の製造方法としては、例えば、高圧ラジカル重合法、溶液重合法、乳化重合法等により、エポキシ基を有する単量体とエチレンと、必要に応じて他の単量体とを共重合する方法、エチレン系樹脂にエポキシ基を有する単量体をグラフト重合させる方法等を挙げることができる。
【0029】
エポキシ基を有する重合体は、他の単量体に由来する繰り返し単位を有していてもよい。他の繰り返し単位としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等の不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和ビニルエステル等が挙げられる。
【0030】
上記樹脂組成物中の成分(C)として、スチレン系熱可塑性エラストマーを使用することもできる。スチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)又はその水素添加物(H−SBR)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)又はその水素添加物(SEBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)又はその水素添加物(SEPS、HV−SIS)、スチレン−(ブタジエン/イソプレン)ブロック共重合体、スチレン−(ブタジエン/イソプレン)ランダム共重合体等が挙げられる。
【0031】
本発明で用いる樹脂組成物中の各成分の含有量としては、樹脂組成物に含まれる成分(A)、(B)及び(C)の合計量を100質量%として、成分(A)の含有量が18〜40質量%であり、成分(B)の含有量が55〜77質量%であり、成分(C)の含有量が3〜15質量%である。好ましくは、成分(A)の含有量が20〜35質量%であり、成分(B)の含有量が55〜77質量%であり、成分(C)の含有量が3〜15質量%であり、より好ましくは、成分(A)の含有量が20〜35質量%であり、成分(B)の含有量が55〜77質量%であり、成分(C)の含有量が3〜10質量%であり、更に好ましくは、成分(A)の含有量が20〜35質量%であり、成分(B)の含有量が55〜75質量%であり、成分(C)の含有量が3〜10質量%であり、更により好ましくは、成分(A)の含有量が25〜35質量%であり、成分(B)の含有量が55〜75質量%であり、成分(C)3〜10の含有量が質量%であり、最も好ましくは成分(A)の含有量が25〜35質量%であり、成分(B)の含有量が60〜70質量%であり、成分(C)の含有量が3〜8質量%である。各成分の配合割合を、上記のような範囲とすることにより、衝撃強度、剛性、緩光性のバランスに優れ、易カットき性を有するフィルムを得ることが可能となる。
【0032】
なお、上記樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、中和剤、滑剤、帯電防止剤、造核剤、紫外線防止剤、可塑剤、分散剤、防曇剤、抗菌剤、有機多孔質パウダー、顔料等の添加剤を添加することが可能である。
【0033】
なお、上記樹脂組成物には本発明の効果を阻害しない範囲内で、成分(B)以外のオレフィン系樹脂を添加してもよい。成分(B)以外のオレフィン系樹脂としては、例えば、流動の活性化エネルギーが44kJ/mol以下であるエチレン−α−オレフィン共重合体、HDPE又は高圧法低密度ポリエチレンが挙げられる。
【0034】
樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、公知のブレンド方法を用いることができる。公知のブレンド方法としては、例えば、成分(A)〜(C)と必要に応じて添加剤等の他の成分とを、ドライブレンドやメルトブレンドする方法等が挙げられる。ドライブレンドする方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の各種ブレンダーを用いる方法が挙げられ、メルトブレンドする方法としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の各種ミキサーを用いる方法が挙げられる。
【0035】
〔フィルムの製造方法〕
本発明に係るフィルムの製造方法としては、例えば、インフレーション法、Tダイキャスト法等により製造する方法が挙げられる。このような方法により得られるフィルムの厚さとしては、500μm以下、好ましくは5〜300μm、より好ましくは10〜200μm、更に好ましくは15〜100μmである。
フィルムの製造方法としては、インフレーション法が好ましい。フィルムを製造する際の加工温度は180℃〜230℃であることが好ましい。加工性の観点から、好ましくは185℃以上、より好ましくは190℃以上であり、好ましくは220℃以下であり、さらに好ましくは210℃以下である。
【0036】
Tダイキャスト法によってフィルムを製造する場合、フィルムを製造する際の加工温度は、好ましくは150〜280℃である。樹脂の熱劣化を抑制する観点から、好ましくは260℃以下であり、より好ましくは250℃以下である。また、加工性の観点から、好ましくは180℃以上であり、より好ましくは200℃以上であり、更に好ましくは210℃以上である。
【0037】
本発明に係るフィルムのHAZEは、緩光性の観点から、好ましくは20%以上であり、より好ましくは25%以上、更に好ましくは30%以上である。ここで、緩光性とは、フィルムに対して入射する光の強度を下げる性質のことであり、フィルムが完全に入射する光を遮断することを意味するものではない。緩光性のあるフィルムからなる包装袋は、入射する光の強度を下げるため、光によって劣化する物質を保存するための包装袋として適している。本発明に係るフィルムのHAZEは、好ましくは90%以下であり、より好ましくは80%以下であり、更に好ましくは70%以下である。なお、HAZEは、ASTM D1003に規定された方法で測定される。
【0038】
本発明に係るフィルムの剛性とは、1%正割弾性率をいう。フィルムの1%正割弾性率は、好ましくは500〜1200MPaであり、より好ましくは550MPa以上であり、更に好ましくは575MPa以上であり、更により好ましくは600MPa以上であり、更により好ましくは650MPa以上である。
フィルムの1%正割弾性率は、好ましくは1100MPa以下であり、より好ましくは1000MPa以下であり、更に好ましくは800MPa以下であり、更により好ましくは750MPa以下である。
なお、1%正割弾性率とは、幅20mm、長さ120mmの短冊形試験片を用いて、チャック間60mm、引張速度5mm/minの条件で試験片の引張試験を行い、応力と歪曲を測定して得られる応力−歪曲線から、試験片が1%伸びた時の荷重(単位:N)を求め、下記式から算出した値である。
1%SM=[F/(t×l)]/[s/L]/10
F:試験片が1%伸びた時の荷重 (単位:N)
t:試験片厚み (単位:m)
l:試験片幅 (単位:m,0.02)
:チャック間距離 (単位:m,0.06)
s:1%歪み (単位:m,0.0006)
【0039】
本発明に係るフィルムの衝撃強度は13kJ/m以上である。フィルムの衝撃強度は、好ましくは14kJ/m以上であり、より好ましくは15kJ/m以上であり、更に好ましくは20kJ/m以上であり、更により好ましくは23kJ/m以上であり、最も好ましくは25kJ/m以上である。なお、フィルムの衝撃強度は、ASTM D1709記載のA法に従って測定した。
【0040】
本発明に係るフィルムのMD方向(フィルムの引取り方向と平行な方向)の引裂き強度は、20kN/m以下である。フィルムの易カット性の観点から、引裂き強度は好ましくは15kN/m以下であり、より好ましくは12kN/m以下であり、更に好ましくは10kN/m以下であり、更により好ましくは8kN/m以下であり、最も好ましくは6kN/m以下である。なお、フィルムの引裂き強度は、ASTM D1922に規定された方法で測定した。
【0041】
本発明に係るフィルムは、耐熱性と、このフィルムを用いて包装袋を製造する際の加工性とのバランスの観点から、DSCで測定される融解曲線の最大ピーク温度が98℃〜130℃であることが好ましい。最大ピーク温度は、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは102℃以上である。最大ピーク温度は好ましくは125℃以下であり、より好ましくは123℃以下であり、更に好ましくは120℃以下である。なお、最大ピーク温度とは、フィルム6〜12mgをアルミパンに詰めて150℃で5分間保持した後に5℃/分で20℃まで降温し、20℃で2分間保持した後に5℃/分で150℃まで昇温した時に観測される、熱流の絶対値が最も大きい融解ピーク温度である。
【0042】
本発明に係るフィルムは、包装袋として好適である。フィルムを所定の箇所でヒートシールすることにより、包装袋を得ることができる。その際、フィルムを2枚以上重ね合わせてもよい。ヒートシールの方法としては、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の方法が挙げられる。幅の比較的小さい包装袋を製造する方法としては、予め所定の幅に合わせた折径の共押出インフレーション積層フィルムを製造し、所定長さに切断した後、一端をヒートシールする方法、所謂チューブ袋を製造する方法がコストの点でも望ましい。
本発明に係るフィルムは、食品、繊維、医薬品、肥料、雑貨品、工業部品等の包装袋、ゴミ袋、規格袋等に用いることが可能である。
【0043】
本発明に係るフィルムは、緩光性を有するため、光劣化が引き起こされる物質を包装するための包装袋に適している。また、本発明に係るフィルムは、易カット性を有するため内容物を取り出す際に、引裂き易さが求められる包装袋に適している。本発明に係るフィルムは、衝撃強度、剛性、易カット性のバランスに優れることから、高い硬度を求められるスタンディングパウチ等に好適に用いられる。
【0044】
また、本発明に係るフィルムは、上記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含む樹脂組成物からなる層の他に、他の層を有している多層フィルムであってもよい。
他の層としては、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂からなる層、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂からなる層、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド樹脂からなる層、セロハン、紙、アルミニウム箔等からなる層等が挙げられる。多層フィルムの製造方法としては、共押出し法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、サンドラミネート法、ホットメルトラミネート法等が挙げられる。
多層フィルムの場合、前記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含む樹脂組成物からなる層の厚みは、通常50%以上であり、好ましくは65%以上である。
【実施例】
【0045】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。物性の評価は、以下の方法によって行った。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
各成分のメルトフローレートは、JIS K 7210(1995)に従い、試験荷重21.18N、試験温度190℃の条件で測定を行った。
(2)密度(d、単位:kg/m
成分(B)の密度は、150℃でプレス成形して得られた厚さ1mmのシートを用い、JIS K 6760(1981)に従って測定を行った。ただし、アニールせずに測定した。
【0046】
(3)引張衝撃強度(単位:kJ/m
参考例で用いたシートの引張衝撃強度は、ASTM D1822−68に従って測定した。この値が大きいほど機械的強度に優れる。
(4)エレメンドルフ引裂強度
実施例及び比較例のフィルムの易カット性は、エレメンドルフ引裂強度の値を用いて評価した。
フィルムの引裂強度は、ASTM D1922に規定された方法に従い、フィルムの引取り方向(MD方向)について測定した。
【0047】
(5)1%正割弾性率(1%SM)(単位:MPa)
実施例及び比較例のフィルムの剛性は、1%正割弾性率の値を用いて評価した。
幅20mm、長さ120mmの短冊形試験片を、フィルムから採取した。試験片としては、その長手方向がフィルムの引取り方向(MD方向)である試験片と、その長手方向がフィルムのMD方向に対して直交する方向(TD方向)である試験片とを準備した。この試験片を用いて、チャック間60mm、引張速度5mm/minの条件で引張試験を行い、応力−歪曲線を測定した。この応力−歪曲線から、試験片が1%伸びた時の荷重(単位:N)を求め、下記式から1%SMを算出し、フィルムの剛性とした。
1%SM=[F/(t×l)]/[s/L]/10
F:試験片が1%伸びた時の荷重 (単位:N)
t:試験片厚み (単位:m)
l:試験片幅 (単位:m,0.02)
:チャック間距離 (単位:m,0.06)
s:1%歪み (単位:m,0.0006)
(6)ダート衝撃強度(単位:kJ/m
実施例及び比較例のフィルムの衝撃性は、ダート衝撃強度の値を用いて評価した。
フィルムのダート衝撃強度は、ASTM D1709記載のA法に従って測定した。この値が高いほどフィルムの強度が高いことを示す。
【0048】
(7)HAZE(単位:%)
実施例及び比較例で用いた試料の緩光性は、HAZE値を用いて評価した。
フィルムのHAZEは、ASTM D1003に規定された方法に従って測定した。数値が高いほど、フィルムが緩光性に優れることを示す。
(8)成分(B)のη*0.1/η*100
成分(B)のη*0.1/η*100は、以下の手順により算出した。
歪制御型の回転式粘度計(レオメーター)を用いて、下記の条件で角周波数0.1rad/秒から100rad/秒までの動的複素粘度を測定した後、角周波数0.1rad/秒における動的複素粘度(η*0.1)を角周波数100rad/秒における動的複素粘度(η*100)で除した値(η*0.1/η*100)を求めた。歪制御型回転レオメーターとしてはTA Instruments社製のARESを用いた。
温度 :190℃
ジオメトリー:パラレルプレート
プレート直径:25mm
プレート間隔:1.5〜2mm
ストレイン :5%
角周波数 :0.1〜100rad/秒
測定雰囲気 :窒素
【0049】
(9)成分(B)の流動の活性化エネルギー(Ea、単位:kJ/mol)
成分(B)の流動の活性化エネルギーEaは、歪制御型の回転式粘度計(レオメーター)を用いて、下記の条件(a)〜(d)で測定される各温度T(K)における動的粘弾性データを温度−時間重ね合わせ原理に基づいてシフトする際のシフトファクター(aT)のアレニウス型方程式:log(aT)=Ea/R(1/T−1/T0)(Rは気体定数、T0は基準温度463Kである。)から算出される成形性の指標をいう。計算ソフトウェアには、Reometrics社Rhios V.4.4.4を使用し、アレニウス型プロットlog(aT)−(1/T)における直線近似時の相関係数r2が0.99以上の場合のEa値を採用した。測定は窒素下で実施した。
条件(a)ジオメトリー:パラレルプレート、直径25mm、プレート間隔:1.5〜2mm
条件(b)ストレイン:5%
条件(c)剪断速度:0.1〜100rad/sec
条件(d)温度:190、170、150、130℃
【0050】
(10)融点(最大ピーク温度)
実施例及び比較例のフィルムの融点は、以下の方法により測定した。
パーキンエルマー社製の示差走査型熱量計Diamond DSCを用いて、本発明に係るフィルムの最大ピーク温度(単位:℃)と融解エンタルピーΔH(単位:J/g)を測定した。ここでいう最大ピーク温度とは、フィルム6〜12mgをアルミパンに詰めて20℃で1分間保持した後に5℃/分で200℃まで昇温した時に観測される融解ピーク温度をいう。複数ピークが有る場合、その中で最も高い吸熱量(単位:mW)を示す融解ピーク位置の温度を最大ピーク温度(単位:℃)とした。
【0051】
本発明の実施例で使用した各成分は、以下の通りである。
成分(A):ポリ乳酸
ユニチカ株式会社製、商品名「テラマックTE−2000C」、MFR(190℃)=12g/10分
成分(B):エチレン−α−オレフィン共重合体
B−1:住友化学株式会社製、商品名「スミカセンEP GT140」(エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、MFR(190℃)=0.91g/10分、密度=914kg/m、Ea=64kJ/mol)
B−2:エチレン系重合体
住友化学株式会社製、商品名「スミカセンF200」(低密度ポリエチレン、MFR(190℃)=2.0g/10分、密度=919kg/m3、Ea=65kJ/mol)
【0052】
成分(C):エポキシ基を有するエチレン系重合体
C−1:住友化学株式会社製、商品名「ボンドファーストE」(エチレン−グリシジルメタアクリレート共重合体、MFR(190℃)=3g/10分、グリシジルメタアクリレートに由来する繰り返し単位含有量=12質量%)
C−2:住友化学株式会社製、商品名「ボンドファースト20C」(エチレン−グリシジルメタアクリレート共重合体、MFR(190℃)=13g/10分、グリシジルメタアクリレートに由来する繰り返し単位含有量=19質量%)
C−3:住友化学株式会社製、商品名「アクリフト WK307」(MFR(190℃)=7g/10分、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位の含有量=25質量%)
C−4:住友化学株式会社製、商品名「アクリフト WH206」(MFR(190℃)=2g/10分、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位含有量=20質量%)
C−5:住友化学株式会社製、商品名「エバテート H2020」(MFR(190℃)=1.5g/10分、酢酸ビニルに由来する繰り返し単位含有量=15質量%、エチレン−酢酸ビニル共重合体)
C−6:住友化学株式会社製、商品名「エバテート KA30」(MFR(190℃)=7.0g/10分、酢酸ビニルに由来する繰り返し単位含有量=28質量%、エチレン−酢酸ビニル共重合体)
【0053】
〔実施例1、実施例3、実施例4〕
上記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を表1に記載の組成割合で、一括混合した混合物を、スクリュー径40mmの押出機を用いて190℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。
次いで、インフレーションフィルム成形機(プラコー社製、フルフライトタイプスクリューの単軸押出機(径30mmφ、L/D=28)、ダイス(ダイ径50mmφ、リップギャップ0.8mm)、二重スリットエアリング)を用い、加工温度190℃、押出量5.5kg/hr、フロストラインディスタンス(FLD)200mm、ブロー比1.8の加工条件で樹脂組成物を厚み50μmのフィルムに成形した。
これらのフィルムの物性評価結果を表1に示す。
【0054】
〔実施例2〕
成分(A)、成分(B)及び成分(C)を表1に記載の組成割合で、一括混合した混合物を、スクリュー径40mmの押出機を用いて190℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。
次いで、SHIモダンマシナリー(株)社製のTダイフィルム成形機にてフィルムを製造した。直径50mm、L/Dが32(Lは押出機のシリンダーの長さ、Dは押出機のシリンダーの直径)の押出機のブレーカープレート(φ51mm)に、焼結フィルター(日本精線社製MFF NF06、ろ過径:10μm)を、80メッシュの金網で挟む構成でセットした。220℃にて前記樹脂組成物を溶融混練した後、前記焼結フィルターを通して220℃に温度調節したTダイ(600mm幅)内へ供給し、このTダイから押し出した後、75℃のチルロールで引き取ることによって冷却固化し、50μm厚みのフィルムを得た。得られたフィルムの物性評価結果を表1に示した。
【0055】
〔実施例5、実施例6〕
実施例1と同様の方法で樹脂組成物を製造した。次いで押出量を8.0kg/hr、ブロー比を2.5とした以外は実施例1と同様の方法で厚み50μmのフィルムを製造した。得られたフィルムの物性評価結果を表1に示す。
【0056】
〔実施例7〕
成分(A)、成分(B)及び成分(C)を表1に記載の組成割合で一括混合した混合物を、フィード速度6kg/hrでスクリュー径20mmの二軸押出機にフィードし、190℃で溶融混練することで、樹脂組成物を得た。
次いで、実施例1と同様の方法で厚み50μmのフィルムを製造した。得られたフィルムの物性評価結果を表1に示す。
【0057】
〔実施例8〕
成分(A)、成分(B)及び成分(C)を表1に記載の組成割合で使用し、実施例7と同様の方法で樹脂組成物を得た。
次いで、実施例5と同様の方法で厚み50μmのフィルムを製造した。得られたフィルムの物性評価結果を表2に示す。
【0058】
〔実施例9〕
成分(A)、成分(B)及び成分(C)を表1に記載の組成割合で一括混合した混合物を、フィード速度4kg/hrでスクリュー径20mmの二軸押出機にフィードし、190℃で溶融混練することで、樹脂組成物を得た。
次いで、実施例1と同様の方法で厚み50μmのフィルムを製造した。得られたフィルムの物性評価結果を表2に示す。
【0059】
〔実施例10〕
成分(A)を60質量%、成分(B−1)を30質量%、成分(C−1)を10質量%の割合で一括混合した混合物を、フィード速度6kg/hrでスクリュー径20mmの二軸押出機にフィードし、190℃で溶融混練することで、樹脂組成物(MB−1)を得た。
得られた樹脂組成物(MB−1)を50質量%、成分(B−1)を50質量%の割合で一括混合した混合物を、フィード速度6kg/hrでスクリュー径20mmの二軸押出機にフィードし、190℃で溶融混練することで、樹脂組成物(CO−1)を得た。
次いで、実施例1と同様の方法で厚み50μmのフィルムを製造した。
樹脂組成物(CO−1)に含まれる成分(A)、成分(B)及び成分(C)の最終的な組成と、得られたフィルムの物性評価結果を表2に示す。
【0060】
〔実施例11〕
実施例10と、同様の方法で樹脂組成物(CO−1)を得た。
次いで、押出量を8.0kg/hr、ブロー比を2.5とした以外は実施例1と同様の方法で厚み50μmのフィルムを製造した。樹脂組成物(CO−1)に含まれる成分(A)、成分(B)及び成分(C)の最終的な組成と、得られたフィルムの物性評価結果を表2に示す。
【0061】
〔実施例12〕
成分(A)を60質量%、成分(B−1)を30質量%、成分(C−1)を10質量%の割合で一括混合した混合物を、フィード速度4kg/hrでスクリュー径20mmの二軸押出機にフィードし、190℃で溶融混練することで、樹脂組成物(MB−2)を得た。
得られた樹脂組成物(MB−2)を50質量%、成分(B−1)を50質量%の割合で一括混合した混合物を、フィード速度4kg/hrでスクリュー径20mmの二軸押出機にフィードし、190℃で溶融混練することで、樹脂組成物(CO−3)を得た。
次いで実施例1と同様の方法で厚み50μmのフィルムを製造した。樹脂組成物(CO−3)に含まれる成分(A)、成分(B)及び成分(C)の最終的な組成と、得られたフィルムの物性評価結果を表2に示す。
【0062】
〔実施例13〕
成分(A)、成分(B)及び成分(C)を表1に記載の組成割合で一括混合した混合物を、スクリュー径40mmの押出機を用いて190℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。
次いで押出量を8.0kg/hr、フロストラインディスタンス(FLD)150mm、ブロー比を2.5とした以外は実施例1と同様の方法で厚み50μmのフィルムを製造した。得られたフィルムの物性評価結果を表2に示す。
【0063】
〔比較例1〜10〕
成分(A)、成分(B)及び成分(C)を表2に記載の組成割合で一括混合した混合物を、スクリュー径40mmの押出機を用いて190℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。次いで、インフレーションフィルム成形機(プラコー社製、フルフライトタイプスクリューの単軸押出機(径30mmφ、L/D=28)、ダイス(ダイ径50mmφ、リップギャップ0.8mm)、二重スリットエアリング)を用い、加工温度190℃、押出量5.5kg/hr、フロストラインディスタンス(FLD)200mm、ブロー比1.8の加工条件で前記樹脂組成物を厚み50μmのフィルムに成形した。比較例1〜10で得られたフィルムの物性評価結果を表3、表4に示す。
【0064】
〔参考例1〜5〕
成分(A)、成分(B)及び成分(C)を表2に記載の組成割合で一括混合した混合物を、スクリュー径40mmの押出機を用いて190℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を、成形温度190℃、予熱時間10分、圧縮時間5分、圧縮圧力5MPaの条件でプレスして厚み2mmのシートを得た。このシートの引張衝撃強度を、ASTM D1822−68に従って測定した。得られたシートの引張衝撃強度を参考例として表5に記載した。また、成分(B)(B−1及びB−2)のMFR、密度、流動の活性化エネルギー、η*0.1/η*100を表2に記載した。
【0065】
表5の参考例1と参考例2を比較した場合、参考例2の方が、引張衝撃強度が強い。一方で、参考例2に対応する組成の比較例1と、参考例1に対応する実施例1を比較した際、フィルムの衝撃強度は実施例1の方が強いことが分かる。本発明は、樹脂組成物をフィルムに加工することにより、強度が発現することを見出したものである。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
【表4】

【0070】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂製フィルムであって、このフィルムが以下の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有する樹脂組成物からなり、この樹脂組成物に含まれる成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計量を100質量%とするとき、成分(A)の含有量が18〜40質量%であり、成分(B)の含有量が55〜77質量%であり、成分(C)の含有量が3〜15質量%であるポリエチレン系樹脂製フィルム。
成分(A):脂肪族ポリエステル
成分(B):流動の活性化エネルギー(Ea)が45〜100kJ/molであるエチレン−α−オレフィン共重合体
成分(C):前記成分(A)と前記成分(B)との相容化剤
【請求項2】
前記成分(A)が、ポリ乳酸、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸エステル又はそれらの混合物である請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記エチレン−α−オレフィン共重合体の密度が905〜950kg/mであり、メルトフローレートが0.1〜10g/10分である請求項1又は2に記載のポリエチレン系樹脂製フィルム。
【請求項4】
厚さが5〜300μmである請求項1〜3のいずれかに記載のポリエチレン系樹脂製フィルム。
【請求項5】
HAZEが20〜90%であり、1%正割弾性率が500〜1200MPaであり、衝撃強度が13kJ/m以上であり、引裂き強度が20kN/m以下であるポリエチレン系樹脂製フィルム。

【公開番号】特開2011−162763(P2011−162763A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255643(P2010−255643)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】