説明

ポリエーテルエステルブロック共重合体組成物

【課題】弾性回復性及び耐熱性にともに優れ、且つ、結晶化速度にも優れたポリエーテルエステルブロック共重合体組成物を提供する。
【解決手段】(a)芳香族ジカルボン酸単位、(b)エチレングリコール単位、及び、(c)ポリオキシトリメチレングリコール単位を有するポリエーテルエステルブロック共重合体と、結晶核剤とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテルエステルブロック共重合体組成物に関する。
なお、本発明では特定の樹脂を主成分として含有する樹脂組成物を、その主成分となる樹脂の名前を冠して呼ぶ場合がある。ここで「主成分」とは、組成物の30重量%以上を占める成分を言うものとする。即ち、「ポリエーテルエステルブロック共重合体組成物」とは、ポリエーテルエステルブロック共重合体を主成分とする樹脂組成物を言う。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテルエステルブロック共重合体は、通常は、短鎖ジオール及び芳香族ジカルボン酸成分(芳香族ジカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸ジエステル)からなるポリエステル単位(ハードセグメント)と、ポリオキシアルキレングリコール(長鎖グリコール)及び芳香族ジカルボン酸成分からなるポリエステル単位(ソフトセグメント)とから構成されている。このようなポリエーテルエステルブロック共重合体は、機械的物性、柔軟性、弾性回復性に優れ、更に熱可塑性で成形加工が容易であるため、繊維、フィルム、シート、チューブ、自動車部品、電気電子部品等、多方面で利用されている。
【0003】
ポリオキシアルキレンエーテルグリコールとしては、従来、ポリオキシテトラメチレングリコール(polyoxytetramethylene glycol:以下「PO4G」と呼ぶ場合がある。)が主に使用されてきたが、近年ではこれに代えて、ポリオキシトリメチレングリコール(polyoxytrimethylene glycol:以下「PO3G」と呼ぶ場合がある。)の使用が検討されている(特許文献1,2等参照)。PO3Gを用いたポリエーテルエステルブロック共重合体は、PO4Gを用いたポリエーテルエステルブロック共重合体に比べて、エラストマーとしての性能(弾性回復力等)に優れる等の利点を有する。
【0004】
また、ポリエーテルエステルブロック共重合体を繊維に用いる場合、短鎖ジオールとしては、主に1,4−ブタンジオール又は1,3−プロパンジオールが用いられ、芳香族ジカルボン酸成分としては主にテレフタル酸等が使用されてきた。即ち、ハードセグメントとしては、ポリブチレンテレフタレート(Polybutylene terephthalate:以下「PBT」と呼ぶ場合がある。)等のブチレンエステル系ハードセグメントや、ポリプロピレンテレフタレート(Polypropylene terephthalate:以下「PPT」と呼ぶ場合がある。)等のプロピレンエステル系ハードセグメントが主流であった(特許文献1,2等参照)。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6562457号明細書
【特許文献2】米国特許第6599625号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,2記載の技術の様に、短鎖ジオールとして1,4−ブタンジオール又は1,3−プロパンジオールを使用し、ポリオキシアルキレングリコールとしてPO3Gを使用したポリエーテルエステルブロック共重合体の場合、十分な弾性回復性を保持しようとすると、耐熱性が低下するという課題があった。
【0007】
これに対し、ポリオキシアルキレングリコールとしてPO3Gを使用し、短鎖ジオールとしてエチレングリコールを使用すれば、弾性回復性及び耐熱性に優れたポリエーテルエステルブロック共重合体を得ることが可能であると考えられる。
【0008】
しかしながら、本発明者等の検討によれば、こうして得られたポリエーテルエステルブロック共重合体は、その結晶化速度が遅いという課題がある。また、これによって、ストランドが融着してカッティングができなかったり、カッティング後にペレットが融着したり、得られたペレットを射出成形等により成形加工する時に支障を来たしたりする場合がある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の目的は、弾性回復性及び耐熱性にともに優れ、且つ、結晶化速度にも優れたポリエーテルエステルブロック共重合体組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、ポリオキシアルキレングリコールとしてPO3Gを使用し、短鎖ジオールとしてエチレングリコールを使用したポリエーテルエステルブロック共重合体に、結晶核剤を配合することにより、弾性回復性及び耐熱性にともに優れ、且つ、結晶化速度にも優れたポリエーテルエステルブロック共重合体組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明の要旨は、(a)芳香族ジカルボン酸単位、(b)エチレングリコール単位、及び、(c)ポリオキシトリメチレングリコール単位を有するポリエーテルエステルブロック共重合体と、結晶核剤とを含有することを特徴とする、ポリエーテルエステルブロック共重合体組成物に存する(請求項1)。
【0012】
ここで、前記結晶核剤が、金属塩であることが好ましい(請求項2)。
【0013】
また、前記金属塩が、ナトリウム塩であることが好ましい(請求項3)。
【0014】
また、前記ポリエーテルエステルブロック共重合体100重量%に対する、前記結晶核剤の比率が、0.01重量%以上、20重量%以下であることが好ましい(請求項4)。
【0015】
また、滑剤を更に含有することが好ましい(請求項5)。
【0016】
また、前記滑剤が、炭化水素系化合物であることが好ましい(請求項6)。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、弾性回復性及び耐熱性にともに優れ、且つ、結晶化速度にも優れたポリエーテルエステルブロック共重合体組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について実施の形態を挙げて詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨を超えない範囲において種々に変更して実施することができる。
【0019】
なお、以下の記載では、ある単量体に由来する共重合体の部分構造単位を、その単量体の名称に「単位」という言葉を付して表わす。例えば、ポリオキシトリメチレングリコールに由来する部分構造単位は、「ポリオキシトリメチレングリコール単位」という名称で表わされる。
【0020】
また、同一の部分構造単位を与える単量体を、その部分構造単位の名称の「単位」を「成分」に換えた名称で総称する。例えば、直接重合法では芳香族ジカルボン酸が芳香族ジカルボン酸単位を形成し、エステル交換法では芳香族ジカルボン酸ジエステルが芳香族ジカルボン酸単位を形成する。よって、これらの芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸ジエステルを、「芳香族ジカルボン酸成分」という名で総称する。
【0021】
本発明のポリエーテルエステルブロック共重合体組成物(以下、単に「本発明の共重合体組成物」という場合がある。)は、以下に説明するポリエーテルエステルブロック共重合体と、結晶核剤とを含有する。また、好ましくは、更に滑剤を含有する。
【0022】
[I.ポリエーテルエステルブロック共重合体]
〔I−1.ポリエーテルエステルブロック共重合体の構造〕
本発明の共重合体組成物が含有するポリエーテルエステルブロック共重合体(以下「本発明のポリエーテルエステルブロック共重合体」或いは単に「本発明の共重合体」という。)は、(a)芳香族ジカルボン酸単位、(b)エチレングリコール単位、及び、(c)ポリオキシトリメチレングリコール単位から主に構成される。
【0023】
〔I−1−1.ソフトセグメントとハードセグメント〕
ポリエーテルエステルブロック共重合体は、一般に、結晶性を有するハードセグメントと、ハードセグメントに比べて分子運動性に富むソフトセグメントとから構成される。本明細書では、これらのハードセグメントとソフトセグメントとをより明確に区別する意味で、本発明の共重合体のうち、下記式(1)で表わされる単位をハードセグメントといい、下記式(2)で表わされる単位をソフトセグメントというものとする。
【0024】
【化1】

【0025】
【化2】

【0026】
上記の式(1)及び式(2)において、R1は各々独立に、ベンゼン核を持つ炭素環式化合物及び/又は非ベンゼノイド芳香族化合物由来の化学構造を表わす。
なお、ここで「ベンゼン核」とは、芳香族性を持つ炭素六員環を表わし、「非ベンゼノイド芳香族化合物」とは、アズレンや芳香族性を示す複素環式化合物等の、ベンゼン核を持たないが芳香族性を示す化合物を表わす。
【0027】
上記式(1)において、R2は、エチレン基を表わす。
【0028】
上記式(2)において、nは、R3の繰り返し数を表わす整数である。
上記式(2)において、R3は、アルキレン基を表わす。但し、その通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上が、下記式(3)で表わされるオキシトリメチレン単位である。
【0029】
【化3】

【0030】
上記式(1)で表わされるハードセグメントは、(a)芳香族ジカルボン酸単位と(b)エチレングリコール単位とからなるポリエステルである。
また、上記式(2)で表わされるソフトセグメントは(a)芳香族ジカルボン酸単位と(c)ポリオキシトリメチレングリコール単位とからなるポリエーテルエステルである。
なお、公知文献の中には、ソフトセグメントをその主構成成分となる長鎖ジオール単位のみで表わしたものもある。
【0031】
〔I−1−2.(a)芳香族ジカルボン酸単位〕
本発明の共重合体が有する(a)芳香族ジカルボン酸単位(以下「単位(a)」と略称する場合がある。)は、下記式(4)で表わされる構造単位である。
【0032】
【化4】

【0033】
上記式(4)中、R1は、ベンゼン環を持つ炭素環式化合物及び又は非ベンゼノイド化合物由来の二価の基を表わす。
【0034】
(a)芳香族ジカルボン酸単位の原料(これを「芳香族ジカルボン酸成分」或いは単に「成分(a)」という場合がある。)としては、ポリエステルの原料、特にポリエーテルエステルブロック共重合体の原料として一般に用いられているものが使用できる。
【0035】
成分(a)の例としては、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸エステル等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸は、後述の直接重合法に用いられ、芳香族ジカルボン酸エステルは、後述のエステル交換法に用いられる。
【0036】
成分(a)として用いられる芳香族ジカルボン酸の具体例としては、
テレフタル酸、
イソフタル酸、
フタル酸、
ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、
ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、
ジフェニル−4,4−ジカルボン酸、
ジフェノキシジカルボン酸、
5−スルホイソフタル酸
等が挙げられる。
中でも、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸が特に好ましい。
【0037】
成分(a)として用いられる芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルの具体例としては、上記芳香族ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル等が挙げられる。
【0038】
これらの芳香族ジカルボン酸成分は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
【0039】
〔I−1−3.(b)エチレングリコール単位〕
本発明の共重合体が有する(b)エチレングリコール単位(以下「単位(b)」と略称する場合がある。)は、下記式(5)で表わされる構造単位である。
【0040】
【化5】

【0041】
(b)エチレングリコール単位の原料(これを「エチレングリコール成分」或いは単に「成分(b)」という場合がある。)としては、エチレングリコールが使用される。
【0042】
〔I−1−4.(c)ポリオキシトリメチレングリコール単位〕
本発明の共重合体が有する(c)ポリオキシトリメチレングリコール単位(以下「単位(c)」と略称する場合がある。)は、下記式(6)で表わされる構造単位である。
【0043】
【化6】

【0044】
なお、上記式(6)において、nは、R3の繰り返し数を表わす整数である。
また、上記式(6)において、R3は、アルキレン基を表わす。但し、その通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上が、下記式(3)で表わされるオキシトリメチレン単位である。
【0045】
【化7】

【0046】
また、(c)ポリオキシトリメチレングリコール単位の原料(これを「ポリオキシトリメチレングリコール成分」或いは単に「成分(c)」という場合がある。)としては、下記式(7)で表わされる構造のポリオキシトリメチレングリコール(PO3G)が使用される。
【0047】
【化8】

【0048】
なお、上記式(7)において、n及びR3は、上記式(6)における同じ符号と同じ定義を表わす。
【0049】
上記式(7)において、R3がトリメチレン基(即ち、上記式(3)で表わされる繰り返し単位)のみからなるPO3Gは、1,3−プロパンジオールを脱水縮合反応させて得ることができる。
【0050】
上記式(7)において、R3としてトリメチレン基(即ち、上記式(3)で表わされる繰り返し単位)以外の繰り返し単位を併有するPO3Gは、例えば、1,3−プロパンジオールに加えてその他のグリコールを併用し、重縮合反応により共重合させることにより、合成することが可能である。
【0051】
この場合、1,3−プロパンジオールと併用可能な他のグリコールの例としては、アルキレングリコール、3官能以上のグリコール等のグリコールが挙げられる。
【0052】
アルキレングリコールの具体例としては、
エチレングリコール、
2−メチル−1,3−プロパンジオール、
2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、
1,4−ブタンジオール、
1,5−ペンタンジオール、
1,6−へキサンジオール、
1,7−ヘプタンジオール、
1,8−オクタンジオール、
1,9−ノナンジオール、
1,10−デカンジオール、
1,4−シクロヘキサンジオール
等が挙げられる。
【0053】
また、3官能以上のグリコールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0054】
また、上に例示した各種グリコールのオリゴマーを、1,3−プロパンジオールと併用することも出来る。
【0055】
中でも、1,3−プロパンジオールと併用するグリコールとしては、2−メチル−1,3−プロパンジオール、又は2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールが好ましい。
【0056】
1,3−プロパンジオールに加えてその他のグリコールを併用する場合、他のグリコールは、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。但し、グリコールの総量に対する1,3−プロパンジオールの割合を、通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上とすることが好ましい。このように他のグリコールを併用した場合、弾性体の性質として柔軟な感触を付与することができる場合がある。
【0057】
なお、本発明の共重合体に用いられる成分(c)(PO3G)の数平均分子量(Mn)は、通常600以上、中でも1000以上、また、通常6000以下、中でも5000以下、更には4000以下であることが好ましい。成分(c)(PO3G)の数平均分子量(Mn)が低過ぎると、得られるポリエーテルエステルブロック共重合体の融点降下が激しくなって、耐熱性等に悪影響を及ぼす場合がある。一方、成分(c)(PO3G)の数平均分子量(Mn)が高過ぎると、PO3Gの粘度が上がるため、得られる共重合体中の相分離が顕著となり、その共重合体を用いた製品の物性が低下する場合がある。
【0058】
なお、ここでいう「数平均分子量(Mn)」は、成分(c)(PO3G)の末端水酸基を無水フタル酸でエステル化させ、未反応の無水フタル酸をフタル酸に分解後、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリで逆滴定(末端基滴定法)することにより、水酸基価を求め、その値から算出したものである。
【0059】
なお、本発明の共重合体における(c)ポリオキシトリメチレングリコール単位の数平均分子量の好ましい範囲は、その原料となる成分(c)の数平均分子量の好ましい範囲と実質的に同一である。
【0060】
〔I−1−5.各成分の使用量〕
成分(c)(PO3G)の使用量は、得られる共重合体に対する重量比の値で、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、更に好ましくは20重量%以上、また、通常90重量%以下、好ましくは88重量%以下、更に好ましくは85重量%以下の範囲である。成分(c)の使用量が少な過ぎると、得られる共重合体のソフトセグメントに由来する弾性体としての性質が小さくなる場合がある。一方、成分(c)の使用量が多過ぎると、得られる共重合体が軟らかくなり過ぎるため、ポリマーとしての利用が困難となる場合がある。
【0061】
また、本発明の共重合体における成分(a)及び成分(c)の合計の含有率、即ち、ソフトセグメントの含有率は、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、更に好ましくは20重量%以上で、通常95重量%以下、好ましくは93重量%以下、より好ましくは90重量%以下の範囲である。ソフトセグメントの含有率が低過ぎると、共重合体のソフトセグメントに由来する弾性体としての性質が小さくなる場合がある。一方、ソフトセグメントの含有率が高過ぎると、共重合体が軟らかくなり過ぎるため、利用が困難となる場合がある。
【0062】
なお、本発明の共重合体における(a)芳香族ジカルボン酸単位、(b)エチレングリコール単位、及び(c)ポリオキシトリメチレングリコール単位の含有率は、各単位の原料となる成分(a)、成分(b)、成分(c)の仕込み比率と実質的に同一となる。
また、共重合体中におけるソフトセグメントの含有率は、通常は原料となる単量体の仕込み重量比から算出することができる。
【0063】
〔I−1−6.その他の成分〕
本発明の共重合体は、上述の単位(a)〜(c)に加えて、他の単量体成分に由来する部分構造単位を併用してもよい。但し、その場合でも、本発明の共重合体は、主に上述の単位(a)〜(c)から構成される。具体的には、本発明の共重合体に対する、上述の単位(a)〜(c)の合計の量比(即ち、本発明の共重合体の製造時に使用される全単量体成分の合計量に対する、成分(a)〜(c)の合計量の比)が、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上である。
【0064】
本発明の共重合体が、上述の成分(a)〜(c)に加えて、他に併用していてもよい共重合成分としては、例えば以下の成分が挙げられる。
【0065】
・I−1−6−1.他のポリオキシアルキレングリコール:
例えば、成分(c)(PO3G)に加えて、その他のポリオキシアルキレングリコールを併用することも可能である。
【0066】
成分(c)(PO3G)以外のポリオキシアルキレングリコール(以下適宜「他のポリオキシアルキレングリコール」と略称する。)の具体例としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシネオペンチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック又はランダム共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran:THF)とのブロック又はランダム共重合体等が挙げられる。
【0067】
他のポリオキシアルキレングリコールは、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
【0068】
但し、他のポリオキシアルキレングリコールを使用する場合でも、ポリオキシアルキレングリコールの合計量(成分(c)と他のポリオキシアルキレングリコールとの合計量)に対する他のポリオキシアルキレングリコールの割合を、通常50モル%未満、中でも30モル%以下の範囲とすることが好ましい。他のポリオキシアルキレングリコールの割合が多過ぎると、弾性回復性が低下する場合がある。
【0069】
・I−1−6−2.他の短鎖ジオール:
また、成分(b)(エチレングリコール)に加えて、他の短鎖ジオールを使用することも可能である。
【0070】
エチレングリコール以外の短鎖ジオール(以下適宜「他の短鎖ジオール」と略称する。)としては、制限されるものではないが、通常は炭素数3〜10の鎖状又は環状のジオールが挙げられる。
【0071】
炭素数3〜10の鎖状又は環状のジオールの具体例としては、
1,3−プロパンジオール、
1,4−ブタンジオール、
ペンタメチレングリコール、
ネオペンチルグリコール、
1,6−へキサンジオール、
デカメチレングリコール、
1,4−シクロヘキサンジメタノール、
1,3−シクロヘキサンジメタノール、
トリシクロデカンジメタノール、
ジエチレングリコール、
トリエチレングリコール
等が挙げられる。
【0072】
中でも、他の短鎖ジオールとしては、炭素数3〜6の鎖状ジオールが好ましい。
炭素数3〜6の鎖状ジオールの具体例としては、
1,3−プロパンジオール、
1,4−ブタンジオール、
ペンタメチレングリコール、
ネオペンチルグリコール、
1,6−へキサンジオール
等が挙げられる。
【0073】
成分(b)(エチレングリコール)に加えて他の短鎖ジオールを併用する場合、他の短鎖ジオールは何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
【0074】
但し、他の短鎖ジオールを使用する場合でも、短鎖ジオールの合計量(エチレングリコールと他の短鎖ジオールとの合計量)に対する他の短鎖ジオールの割合を、通常40モル%未満、中でも30モル%以下の範囲とすることが好ましい。他の短鎖ジオールの割合が多過ぎると、共重合体の融点降下が大きくなって耐熱性が低下する場合がある。
【0075】
・I−1−6−3.その他:
また、その他のカルボン酸成分やアルコール成分を併用してもよい。その他のカルボン酸成分としては、コハク酸、アジピン酸、シュウ酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸等の3官能以上の多価カルボン酸;無水トリメリット酸等の多価カルボン酸無水物;トリメチロールプロパン、グリセリン等の多価アルコール成分;等が挙げられる。これらは何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
【0076】
脂肪族ジカルボン酸を使用する場合、その使用量は、成分(a)を含めたカルボン酸成分の総量に対して、50モル%未満とすることが好ましく、30モル%以下とすることが更に好ましい。脂肪族ジカルボン酸の使用量が多過ぎる場合、ブロック共重合体の耐熱性を損ない、品質が低下することがある。
【0077】
多価カルボン酸及び/又はその無水物を使用する場合、その使用量は、成分(a)を含めた全カルボン酸成分の総量に対して、ジカルボン酸成分の20モル%以下、好ましくは10モル%以下とすることが望ましい。また、多価アルコール成分を使用する場合も、その使用量は、成分(b)及び成分(c)を含めた全グリコール成分の総量に対して、20モル%以下、好ましくは10モル%以下とすることが望ましい。これらの多価化合物を上記の範囲を超えて使用すると、粘度が上がり過ぎて製造時の抜き出しが困難になる、成形性が悪化する、成形物にブツが発生して表面外観が悪化する等の傾向がある。
【0078】
〔I−2.ポリエーテルエステルブロック共重合体の製法〕
〔I−2−1.製法の概要〕
本発明の共重合体を製造する方法は制限されず、従来公知の任意のポリエーテルエステルブロック共重合体の製造方法を採用することができる。
具体例としては、以下の方法が挙げられる。
【0079】
・成分(a)(芳香族ジカルボン酸成分)として芳香族ジカルボン酸を用い、これを成分(b)(エチレングリコール成分)及び成分(c)(PO3G)、並びに必要に応じて用いられる他の単量体成分とエステル化反応させ、続いて得られた反応生成物を減圧下で共重合(重縮合)する方法(これを以下「直接重合法」という場合がある。)。
【0080】
・成分(a)(芳香族ジカルボン酸成分)として芳香族ジカルボン酸エステルを用い、これを過剰量の成分(b)(エチレングリコール成分)及び成分(c)(PO3G)、並びに必要に応じて用いられる他の単量体成分とエステル交換反応させ、続いて得られた反応生成物を減圧下で共重合(重縮合)する方法(これを以下「エステル交換法」という場合がある。)。
【0081】
その他にも、予め短鎖ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート)を作っておき、これに他の芳香族ジカルボン酸成分と成分(c)を加えて重縮合する方法、二軸押出機等を用いて、他の共重合ポリエステルを加えてエステル交換する方法等が挙げられる。
以上挙げた方法のうち、本発明では、何れの方法を選択してもよい。
【0082】
〔I−2−2.触媒〕
本発明の共重合体の合成時には触媒を使用してもよい。触媒を使用する場合、直接重合法ではエステル化反応時及び/又は重縮合反応時、エステル交換法ではエステル化反応時及び/又は重縮合反応時に使用することができる。何れの反応に使用するかは任意であるが、直接重合法及びエステル交換法ともに、少なくとも重縮合反応時に触媒を用いることが好ましい。
【0083】
エステル交換反応又はエステル化反応と共重合反応に共通の触媒としては、Ti、Sn、Sb、Mn、Mg、Pb、Zr、Zn、Ge、Co、P等の金属化合物が有用である。中でも、チタン化合物、スズ化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、マグネシウム化合物が好ましい。
【0084】
チタン化合物(チタン系触媒)の例としては、テトラ(イソプロポキシ)チタネート、テトラ(n−ブトキシ)チタネート等のテトラアルキルチタネート、これらテトラアルキルチタネートとアルキレングリコールとの反応生成物、テトラアルキルチタネートの部分加水分解物、チタニウムヘキサアルコキサイドの金属塩、チタンのカルボン酸塩、チタニル化合物等が挙げられる。
【0085】
スズ化合物(スズ系触媒)の例としては、モノ−n−ブチルモノヒドロキシスズオキサイド、モノ−n−ブチルスズトリアセテート、モノ−n−ブチルスズモノオクチレート、モノ−n−ブチルスズモノアセテート等のモノアルキルスズ化合物、ジ−n−ブチルスズオキサイド、ジ−n−ブチルスズジアセテート、ジフェニルスズオキサイド、ジフェニルスズジアセテート、ジ−n−ブチルスズジオクチレート等のジアルキル(又はジアリール)スズ化合物等が挙げられる。
【0086】
アンチモン化合物(アンチモン系触媒)の例としては、三酸化アンチモン等が挙げられ、マンガン化合物(マンガン系触媒)の例としては、酢酸マンガン等が挙げられ、マグネシウム化合物(マグネシウム系触媒)の例としては、酢酸マグネシウム等が挙げられる。
【0087】
これらの触媒は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0088】
触媒の使用量は、生成するポリエーテルエステルブロック共重合体に対する比率で、通常0.0001重量%以上、好ましくは0.0003重量%以上、また、通常0.5重量%以下、好ましくは0.2重量%以下とすることが望ましい。触媒の使用量が少な過ぎると、反応が進行し難く、生産性が悪くなる場合がある。一方、触媒の使用量が多過ぎると、生成するポリエーテルエステルブロック共重合体が着色したり、共重合体成形品の表面外観がブツ等により悪化する場合がある。
【0089】
〔I−2−3.酸化防止剤〕
また、本発明の共重合体を製造する際には、酸化防止剤を使用してもよい。
酸化防止剤は、ポリエーテルエステルブロック共重合体の製造中又は製造後の任意の時期に加えることが出来る。特に、ポリオキシトリメチレングリコールが高温に曝される時点、例えば共重合反応に入る時点で、ポリオキシトリメチレングリコールの酸化劣化を防止するために、共重合反応を阻害せず、また触媒の機能を損なわない限りにおいて、酸化防止剤を加えることが望ましい。
【0090】
酸化防止剤の例としては、燐酸、亜燐酸の脂肪族、芳香族又はアルキル基置換芳香族エステルや、次亜燐酸誘導体、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイト、ジアルキルビスフェノールAジホスファイト等のリン化合物、ヒンダードフェノール化合物等のフェノール系誘導体、チオエーテル系、ジチオ酸塩系、メルカプトベンズイミダゾール系、チオカルバニリド系、チオジプロピオン酸エステル等のイオウを含む化合物、スズマレート、ジブチルスズモノオキシド等のスズ系化合物等を用いることができる。
【0091】
これらの酸化防止剤は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても構わない。
【0092】
酸化防止剤の使用量は、ポリエーテルエステルブロック共重合体100重量%に対して、通常0.001重量%以上、好ましくは0.01重量%以上、また、通常3重量%以下、好ましくは2重量%以下の範囲である。酸化防止剤の使用量が少な過ぎると、酸化防止剤の効果が発現し難くなる場合がある。一方、酸化防止剤の使用量が多過ぎると、生成するポリエーテルエステルブロック共重合体が着色したり、共重合体成形品の表面外観がブツ等により悪化する場合がある。
【0093】
〔I−2−4.製造時の反応条件〕
本発明の共重合体を製造する際の反応条件としては、公知の常用条件を用いることができる。例えば、直接重合法やエステル交換法においては、以下の通りである。
【0094】
即ち、前段のエステル交換反応又はエステル化反応は、通常120℃以上、好ましくは140℃以上、また、通常280℃以下、好ましくは270℃以下の反応温度で、通常1時間以上、10時間以下に亘って行なわれる。反応温度が低過ぎると、反応が進行し難く生産性が悪くなる場合があり、反応温度が高過ぎると、生成するポリエーテルエステルブロック共重合体が着色する場合がある。また、反応時間が短過ぎると、エステル交換反応又はエステル化反応が十分に進行していないために後続の重縮合反応が進行しない場合があり、反応時間が長過ぎると、それまでの間にエステル交換反応又はエステル化反応が十分に進行しているために生産効率が悪くなる場合がある。
【0095】
また、後段の重縮合反応は、通常1.3kPa以下の減圧下、通常200℃以上、好ましくは220℃以上、また、通常280℃以下、好ましくは270℃以下の反応温度で、通常1時間以上、10時間以下に亘って行なわれる。反応温度が低過ぎると、反応が進行し難く生産性が悪くなる場合があり、反応温度が高過ぎると、生成するポリエーテルエステルブロック共重合体が着色する場合がある。また、反応時間が短過ぎると、重縮合反応が十分に進行していないために生成する共重合体の重合度が極めて低くなる場合があり、反応時間が長過ぎると、生成する共重合体が着色したり、解重合反応が起こり共重合体の重合度が低下する場合がある。
【0096】
〔I−2−5.その他〕
通常、上記のように溶融縮重合して得られた本発明の共重合体は、その融点以上の温度で保持され、順次、反応缶等の反応器から吐出、ペレタイジング等の成形が行なわれる。なお、ここで得られたペレットは、必要に応じて、更に固相重合してもよい。
【0097】
なお、得られた本発明の共重合体に対し、必要に応じて、本発明の目的、効果を損なわない範囲で、任意の成分を配合することができる。
具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維等の充填剤や補強材;着色の為のカーボンブラック、群青、酸化チタン、亜鉛華、べんがら、紺青、アゾ顔料、ニトロ顔料、レーキ顔料、フタロシアニン顔料等の染顔料;オクタブロモジフェニル、テトラブロモビスフェノールポリカーボネート等の難燃化剤;ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤;ベンゾトリアゾール化合物等の紫外線吸収剤;炭酸ナトリウム等の無機塩やクエン酸ナトリウム等の有機塩等の発泡剤;エポキシ化合物やイソシアネート化合物等の架橋剤;鉱物油、植物油、シリコーンオイル、シリコーン樹脂等の粘度調整剤;置換アミド化合物、脂肪酸アミド化合物等の摺動性改良剤;導電性付与のための各種導電材等、公知の各種の添加剤が挙げられる。
これらの成分は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても構わない。
【0098】
〔I−3.ポリエーテルエステルブロック共重合体の物性〕
上記手順により得られる本発明のポリエーテルエステルブロック共重合体は、以下の物性を有する。
【0099】
〔I−3−1.弾性回復性〕
繊維やフィルムや自動車部品等の成形品としての弾性回復性は、共重合体中における単位(c)(ポリオキシトリメチレングリコール単位)の含有量によって変化する。共重合体中における単位(c)の比率が多いほど、弾性回復性は良好になる傾向がある。
【0100】
具体的に、本発明の共重合体中における単位(c)(ポリオキシトリメチレングリコール単位)の好ましい割合は、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、更に好ましくは20重量%以上、また、通常90重量%以下、好ましくは88重量%以下、更に好ましくは85重量%以下の範囲である。単位(c)の割合が低過ぎると、弾性回復性が十分確保できない場合がある。一方、単位(c)の割合が高過ぎると、共重合体が軟化し過ぎて成形が困難になる場合がある。
【0101】
〔I−3−2.耐熱性〕
十分な弾性回復性を確保しようとすると、共重合体中における単位(c)(ポリオキシトリメチレングリコール単位)の含有量をある程度大きくしなければならないが、耐熱性という観点からは不利な方向になる。しかしながら、本発明の共重合体は、耐熱性を十分確保することが可能である。
【0102】
例えば、本発明の共重合体を繊維に用い、ポリエステルとの混紡を行なう場合には、通常、織編物の製造過程で乾熱処理が行なわれる。この乾熱処理の過程では、繊維が160℃〜180℃程度の高温環境に晒されることになる。従来のブチレングリコールを使用したポリエーテルエステルブロック共重合体では、十分な弾性回復性を保ったままこの乾熱処理の温度に耐えることができず、寸法が変化して皺の原因になったり、弾性回復性等の物性が低下する等の不具合があった。しかし、本発明の共重合体を用いた繊維であれば、これらの温度に十分耐えることが可能である。
【0103】
また、本発明の共重合体を用いた繊維は、高耐熱性であるため、上記の乾熱処理工程のみならず、染色工程やアルカリ減量工程等における物性の低下も小さく抑えることができる。
【0104】
また、例えば、本発明の共重合体を自動車部品等の成形品として用いた場合には、高耐熱性であるため、100℃以上の高温においても、分子量低下やインヘレント粘度の低下が起き難く、弾性体としての性質も失われ難い。
【0105】
〔I−3−3.インヘレント粘度(inherent viscosity:ηinh)〕
本発明の共重合体のインヘレント粘度(ηinh)は、成分(c)(ポリオキシトリメチレングリコール単位)の含有量によって最適範囲が変わってくるので一概には言えないが、通常0.30以上、好ましくは0.40以上、また、通常4.00以下、好ましくは3.00以下の範囲であることが望ましい。共重合体のインヘレント粘度が低過ぎると、溶融成形が困難になったり、強度・伸度・弾性回復性等の物性、或いは耐熱性が損なわれる場合がある。一方、共重合体のインヘレント粘度が高過ぎると、溶融成形が困難となる場合がある。
なお、共重合体のインヘレント粘度は、例えば、後述の[実施例]の欄に記載の手順で求めることができる。
【0106】
[II.結晶核剤]
本発明の共重合体組成物は、上述の共重合体に加えて、結晶核剤を含有する。
本発明において「結晶核剤」とは、結晶の核となって結晶を成長させる効果を有する物質をいう。
本発明の共重合体は、その結晶化速度が遅いために、ストランドが融着してカッティングができなかったり、カッティング後にペレットが融着したり、共重合体組成物の成形加工時に支障を来たしたりする場合がある。結晶核剤の配合は、こうした弊害を防止する上で極めて有効である。
【0107】
結晶核剤の種類に制限は無いが、中でも金属塩が好ましい。
金属塩の種類に制限はなく、無機酸の金属塩でも、有機酸の金属塩でも、高分子物質の金属塩でもよいが、無機酸の金属塩であることが好ましい。
【0108】
無機酸の金属塩の例としては、ケイ酸の金属塩、無水ケイ酸(シリカ)の金属塩、炭酸の金属塩、硫酸の金属塩、リン酸の金属塩等が挙げられるが、無水ケイ酸(シリカ)の金属塩が好ましい。
【0109】
有機酸の金属塩の例としては、有機カルボン酸の金属塩、芳香族オキシスルホン酸の金属塩等が挙げられるが、有機カルボン酸の金属塩が好ましい。
有機カルボン酸の金属塩の例としては、安息香酸の金属塩、ステアリン酸の金属塩、モンタン酸の金属塩、パルミチン酸の金属塩、サルチル酸の金属塩、シュウ酸の金属塩等が挙げられるが、ステアリン酸の金属塩が好ましい。
芳香族オキシスルホン酸の金属塩の例としては、p−フェノールスルホン酸の金属塩等が挙げられる。
高分子物質の金属塩の例としては、アイオノマー、ポリエステルオリゴマーの金属塩、エチレン−(メタ)アクリル酸コポリマーの金属塩等が挙げられるが、アイオノマーが好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸」とはメタクリル酸及び/又はアクリル酸を指す。
【0110】
また、金属塩を構成する金属元素の種類にも制限はないが、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、又はマグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の塩であることが好ましく、ナトリウム塩であることが特に好ましい。
特に、結晶核剤としては、無機酸の金属塩である無水ケイ酸(シリカ)のナトリウム塩がとりわけ好ましい。
【0111】
また、金属塩以外の結晶核剤としては、以下の化合物が挙げられる。
無機系化合物としては、ケイ素化合物、無機酸化物、カーボンブラック、グラファイト、亜鉛粉末、アルミニウム粉末等が挙げられるが、ケイ素化合物、無機酸化物が好ましい。
ケイ素化合物の例としては、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、合成マイカ、クレー、ゼオライト、一酸化ケイ素、シリカ(二酸化ケイ素)等が挙げられる。
無機酸化物の例としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、窒化ホウ素等が挙げられる。
【0112】
有機系化合物及び高分子物質としては、カルボン酸アミド、ポリオレフィン系化合物、ポリエステル系化合物、糖類、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末等が挙げられる。
カルボン酸アミドの例としては、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。
ポリオレフィン系化合物の例としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、及び、これらのポリオレフィンを含有するポリオレフィンワックス等が挙げられる。
ポリエステル系化合物の例としては、全芳香族ポリエステルの微粉末、半芳香族ポリエステル(ポリブチレンテレフタレート等)、脂肪族ポリエステル等のポリエステル、並びにそれらのオリゴマー等が挙げられる。
糖類の例としては、ベンジリデンソルビトール及びそれらの誘導体等が挙げられる。
【0113】
なお、上述の結晶核剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合してもよい。
【0114】
結晶核剤の配合量としては、本発明の共重合体100重量%に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは0.3重量%以上、最も好ましくは0.5重量%以上、また、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下の範囲とすることが望ましい。結晶核剤の配合量が少な過ぎると、結晶化速度を促進する効果が得られない場合がある。一方、結晶核剤の配合量が多過ぎると、共重合体組成物を用いた成形品表面を異物として荒らしたり、機械的物性を損なう場合がある。
【0115】
結晶核剤の導入時期は任意である。例えば、共重合体の製造の際に原料とともに仕込んでもよく、また、反応の途中の段階で任意に仕込んでもよい。また、共重合体を製造してから、押出機等を利用して混練したり、また、共重合体の成形時に共重合体のペレットとともに成形機中に導入して混ぜ合わせることも可能である。
【0116】
[III.滑剤]
本発明の共重合体組成物は、上述の共重合体及び結晶核剤に加えて、滑剤を含有することが好ましい。
本発明において「滑剤」とは、共重合体組成物の製造時にペレット同士の融着を防止する効果、共重合体組成物の成形加工時に加工機への粘着を防止する効果、或いは、金型からの離型性を改善する効果を有する物質をいう。
特に、本発明の共重合体は製造直後の融着性が高いため、ペレット化することが困難となる場合がある。滑剤の配合は、こうした弊害を防止する上で極めて有効である。
【0117】
滑剤の例としては、炭化水素系化合物、脂肪酸系化合物、脂肪酸アミド系化合物、エステル系化合物、金属石鹸、脂肪族アルコール等が挙げられる。
炭化水素系化合物の例としては、ポリエチレンワックス、流動パラフィン等が挙げられる。
脂肪酸系化合物の例としては、ステアリン酸等の高級脂肪酸、12−オキシステアリン酸等のオキシ脂肪酸等が挙げられる。
脂肪酸アミド系化合物の例としては、ステアリルアミド等が挙げられる。
エステル系化合物の例としては、ステアリン酸ブチル、グリセリド等が挙げられる。
金属石鹸の例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる。
脂肪族アルコールの例としては、エチレングリコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。
これらの滑剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合してもよい。
【0118】
中でも、滑剤としては、炭化水素系化合物、脂肪酸系化合物、金属石鹸が好ましく、炭化水素系化合物が特に好ましい。
具体的には、ポリエチレンワックス、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛が特に好ましく、ポリエチレンワックスがとりわけ好ましい。
【0119】
滑剤の配合量は、本発明の共重合体100重量%に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは0.3重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上、また、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下、特に好ましくは3重量%以下とすることが望ましい。滑剤の配合量が少な過ぎると、滑剤の使用による効果が得られない場合がある。一方、滑剤の配合量が多過ぎると、共重合体組成物を用いた成形品表面を異物として荒らしたり、機械的物性を損なったりする場合がある。
【0120】
滑剤の導入時期は任意である。例えば、共重合体の製造の際に原料とともに仕込んでもよく、また、反応の途中の段階で任意に仕込んでもよい。また、共重合体を製造してから、押出機等を利用して混練したり、また、共重合体の成形時に共重合体のペレットとともに成形機中に導入して混ぜ合わせることも可能である。
【0121】
[IV.ポリエーテルエステルブロック共重合体組成物]
本発明のポリエーテルエステルブロック共重合体組成物は、上述の本発明のポリエーテルエステルブロック共重合体に対し、その製造前、製造中或いは製造後の任意の時期に、上述の結晶核剤を配合し、更に、好ましくは上述の滑剤を配合することにより、得ることができる。
【0122】
本発明の共重合体組成物は、結晶化速度が速いこと、すなわち、結晶融点(Tm)と再結晶化温度(Tc2)の差が小さいことを特徴とする。具体的に、本発明の共重合体組成物のTmとTc2の差(Tm−Tc2)が、通常80℃以下、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは50℃以下、最も好ましくは40℃以下である。共重合体組成物のTmとTc2の差が大きすぎると、結晶化速度が十分でなく、共重合体製造後にペレットにカッティングするのが困難になる等の不具合が発生する場合がある。なお、共重合体組成物のTm及びTc2の値は、示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて測定することが可能である。
【0123】
また、本発明の共重合体組成物は、共重合体組成物製造後の融着性が低いこと、すなわち共重合体組成物製造後のペレット同士の融着が少ないことを特徴とする。具体的に、本発明の共重合体組成物の融着性は、後述の[実施例]の欄に記載の手順に従って、ペレットカッティング後に融着しているペレットの数を求めることにより、評価することができる。具体的には、融着しているペレットの数が、ペレット100個中6個以下、より好ましくは4個以下、更に好ましくは2個以下であることが望ましい。
【0124】
本発明の共重合体組成物の用途としては、例えば、等速ジョイントブーツ、サスペンジョンブーツ、ラック&ピニオンブーツ、ステアリングロッドカバー、ケーブルインナーライナ、ケーブルアウタージャケット、ATスライドカバー、シートベルト部品、ドアラッチストライカー、リバンドストッパ、安全ベルトのラチェット、リーフスプリングブッシュ等の自動車部品、油圧用ホースや空圧用ホース等の各種ホース、各種シール・パッキン、フレキシブルカップリング、コンベアベルト、タイミングベルト、圧縮バネ等の工業用部品、ギヤ等の精密機械部品、携帯電話ハウジング、制震材、防震材、キーボードパット、導電性パット、OAロール、電話機カールコード、光ファイバ被覆等の電気・電子部品、ヘアーブラシ、ホットカーラー、スキー靴底、靴インナーソール等の生活用品、衣料用繊維、不織布や各種フィルター等の繊維製品、二軸延伸フィルムや導電性フィルム等のフィルム製品等として好適に使用できる。中でも、耐熱性が特に要求される自動車部品として用いるのが好ましい。
【実施例】
【0125】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0126】
なお、以下の各実施例及び各比較例において、ポリエーテルエステルブロック共重合体組成物の各種物性は、以下の手順により測定した。
【0127】
<インヘレント粘度>
ポリエーテルエステルブロック共重合体組成物0.2gをフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンを1:1で混合した溶媒40mlに、110℃で攪拌しながら15分間かけて溶解し、この溶液の30℃における相対粘度(ηrel)を、ウベローデ型粘度計(センテック製全自動粘度計DT610)を用いて測定した。そして、下記式(i)に基づいて、その溶液の相対粘度(ηrel)の自然対数を溶液濃度(C)で割った値、すなわち、その溶液のインヘレント粘度(ηinh)を計算した。
ηinh = lnηrel/C (i)
但し、ηrel:相対粘度、
C:溶液濃度(g/dL)とする。
【0128】
<末端カルボキシル基量>
試験管にポリエーテルエステルブロック共重合体組成物0.5gを採取し、ベンジルアルコール25mlを加え、150℃で15分間かけて攪拌しながら溶解させ、得られた溶液を自動滴定装置(東亜DKK製AUT−501)によって、複合pH電極を用いて、0.01N水酸化ナトリウム・ベンジルアルコール溶液で滴定した。なお、0.01N水酸化ナトリウム・ベンジルアルコール溶液は、JIS K8006に準拠して調製・標定を行い、ファクターを算出した。得られた滴定曲線の変曲点から滴定量を求め、下記式()に基づいてAVを算出した。
AV={(A−B)×0.01N×F}/W (ii)
上記式(ii)において、AVは末端カルボキシル基量(eq/ton)、Aは測定滴定量(ml)、Bはブランク滴定量(ml)、Fは0.01N水酸化ナトリウム・ベンジルアルコール溶液の力価、Wはポリエーテルエステルブロック共重合体重量(g)である。
【0129】
<デュロメータ硬さ>
ポリエーテルエステルブロック共重合体組成物の射出成形試験片を用意し、JIS K 6253に準拠し、デュロメータ硬さ(Dタイプ)を測定した。
【0130】
<貯蔵弾性率>
粘弾性スペクトロメーター(セイコー電子工業製DMS200)を用いて、昇温速度2℃/分、振動数1Hzにて、ポリエーテルエステルブロック共重合体組成物の貯蔵弾性率(E’)を測定した。なお、下記の表1には、25℃におけるE’の値を示した。
【0131】
<結晶化速度>
JIS K 7122に準じて、示差走査熱量測定装置(セイコー電子工業製DSC220)を用いて、昇温速度、降温速度共に10℃/分にて、ポリエーテルエステルブロック共重合体組成物の結晶融点(Tm)及び再結晶化温度(Tc2)を測定した。
【0132】
<融着性>
ポリエーテルエステルブロック共重合体組成物を反応器内から抜き出したストランドを水温25℃の水槽にて十分に冷却した後、ペレタイザーを用いてペレット化した直後に、そのペレット100個をビニル袋に詰めて30分間放置した。30分後にビニル袋中のペレットを取り出し、ペレット同士が融着しているペレットの個数を数え、その個数の多少により融着性の優劣を判断した。すなわち、この個数が少ないほど融着性に優れると考えられる。
【0133】
<耐熱老化性>
ポリエーテルエステルブロック共重合体組成物の射出成形試験片を用意し、JIS K 6257に準じて、その試験片を120℃において3日間放置した後にペレット化して、上記方法によりインヘレント粘度(ηinh)を測定した。基準試験片(120℃に3日間放置前の試験片)のηinhの値に対して120℃において3日間放置した後の試験片のηinhの値が減少した割合(△ηinh)をポリエーテルエステルブロック共重合体組成物の耐熱性の指標とした。すなわち、△ηinhの値が小さいほど、耐熱性に優れると考えられる。
【0134】
<圧縮永久歪み>
ポリエーテルエステルブロック共重合体組成物の射出成形試験片を用意し、JIS K 6222に準じて、その試験片を70℃において22時間、専用冶具を用いて圧縮固定した後に得られた圧縮永久歪みの値をポリエーテルエステルブロック共重合体組成物の弾性回復性の指標とした。すなわち、圧縮永久歪みの値が小さいほど、弾性回復性に優れると考えられる。
【0135】
[合成例1]
ポリエーテルエステルブロック共重合体の構成成分としてポリオキシトリメチレングリコール(A)(Mn=1163)を合成した。
蒸留精製した1,3−プロパンジオール50gを、蒸留管、窒素導入管、温度計及び攪拌機を備えた100ml四つ口フラスコに、窒素を100Nml/分で供給しながら仕込んだ。これに0.0348gの炭酸ナトリウムを仕込んだ後、攪拌しつつゆっくりと0.678gの濃硫酸(95%)を加えた。このフラスコをオイルバス中に浸し162℃に加熱した。液温を162℃±2℃に調節して11時間保持して反応させた後、フラスコをオイルバスから取り出し、室温まで放置して冷却した。反応の間に生成した水は窒素に同伴させて留去した。室温まで冷却された反応液を50gのテトラヒドロフランを用いて300mlのナス型フラスコに移し、これに50gの脱塩水を加えて1時間緩やかに還流させて硫酸エステルの加水分解を行った。室温まで放冷して冷却した後、2層に分離した下層(水槽)を除去した。上層(油層)に0.5gの水酸化カルシウムを加えて室温で1時間攪拌した後、50gのトルエンを加えて60℃に加熱して減圧下にテトラヒドロフラン、水及びトルエンを留去した。得られた油層を100gのトルエンに溶解し、0.45μmのフィルターで濾過して不溶物を除去した。濾液を60℃に加熱して6時間真空乾燥し、ポリオキシトリメチレングリコールを得た。その後、得られたポリオキシトリメチレングリコールの水酸基価を前述の末端基滴定法により求め、その値から数平均分子量(Mn)を算出した。
【0136】
[実施例1]
攪拌機、留出管及び減圧装置を装備した反応器に、テレフタル酸ビス(2−ヒドキシエチル)(東京化成製)95.3g、上記合成例1で調製したポリオキシトリメチレングリコール(A)78.0g、イルガノックス1330(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)0.27g、20重量%のシリカのナトリウム塩を水に含有させたコロイダルシリカであるスノーテックス20(日産化学工業製)7.5g(シリカのナトリウム塩としては、生成するポリエーテルエステルブロック共重合体100重量%に対して1重量%加えた計算になる)を仕込み、最後にテトラブチルチタネート(キシダ化学製)をエチレングリコールに0.05重量%にて溶解した溶液1.8g(Ti原子換算で、生成するポリエーテルエステルブロック共重合体に対して0.0006重量%の触媒量に相当)を仕込んでから窒素置換後、窒素雰囲気下225℃で適度に攪拌しながら30分かけて加熱溶融した。次いで回転数150rpmで攪拌しながら、90分間かけて245℃まで昇温させ、それと同時に90分間かけて0.3torrまで減圧し、その減圧条件下で順次、攪拌回転数を落としていきながら、所望のインヘレント粘度を有する共重合体が得られるまで重縮合反応を行なった。攪拌を止め、反応器内を窒素で常圧に復圧し、重縮合反応を停止した後、そのストランドを水温25℃の水槽にて十分に冷却した後、ペレタイザーにてペレット化し、前述の各種物性評価に供した。その結果を表1に示す。なお、生成するポリエーテルエステルブロック共重合体におけるポリオキシトリメチレングリコール(PO3G)の含有率は、原料の仕込み重量から計算すると52.0重量%となる。
【0137】
[実施例2]
実施例1記載の配合に、ポリエチレンワックスであるAcumist−B6(Honeywell製)1.5g(生成するポリエーテルエステルブロック共重合体100重量%に対して1重量%加えた計算になる)を他の原料と同時期に加えたこと以外は、実施例1記載の重合方法及びペレット化方法にて、ポリエーテルエステルブロック共重合体のペレットを得て、前述の各種物性評価に供した。その結果を表1に示す。なお、生成するポリエーテルエステルブロック共重合体におけるポリオキシトリメチレングリコール(PO3G)の含有率は、原料の仕込み重量から計算すると実施例1と同様の52.0重量%となる。
【0138】
[比較例1]
実施例1記載の配合から、シリカのナトリウム塩を水に含有させたコロイダルシリカであるスノーテックス20(日産化学工業製)を除いた以外は、実施例1記載の重合方法及びペレット化方法にて、ポリエーテルエステルブロック共重合体のペレットを得て、前述の各種物性評価に供した。その結果を表1に示す。なお、生成するポリエーテルエステルブロック共重合体におけるポリオキシトリメチレングリコール(PO3G)の含有率は、原料の仕込み重量から計算すると実施例1と同様の52.0重量%となる。
【0139】
[比較例2]
攪拌機、留出管及び減圧装置を装備した反応器に、ジメチルテレフタレート(東京化成製)68.7g、1,4−ブタンジオール(東京化成製)39.8g、上記合成例1で調製したポリオキシトリメチレングリコール(A)78.0gを仕込み、窒素置換後、窒素雰囲気下150℃で30分かけて加熱溶融した。次いでテトラブチルチタネート(キシダ化学製)を1−ブタノールに6重量%にて溶解した溶液4.4ml(Ti原子換算で、生成するポリエーテルエステルブロック共重合体に対して0.02重量%の触媒量に相当)を添加し、回転数150rpmで攪拌しながら150℃で60分間保持した後、2時間かけて230℃に昇温し、230℃で15分間保持して、エステル交換反応を行った。得られた溶融物中に、イルガノックス1330(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)を1,4−ブタンジオールに5重量%で分散したスラリー5.4gと、前記テトラブチルチタネート溶液1.1ml(Ti原子換算で、生成するポリエーテルエステルブロック共重合体に対して0.005重量%の触媒量に相当)とを加え、さらに45分間かけて245℃まで昇温させながら、85分間かけて1torrまで減圧し、その減圧条件下で順次、攪拌回転数を落としていきながら、所望のインヘレント粘度を有する共重合体が得られるまで重縮合反応を行った。攪拌を止め、反応器内を窒素で常圧に復圧し、重縮合反応を停止した後、そのストランドを水温25℃の水槽にて十分に冷却した後、ペレタイザーにてペレット化し、前述の各種物性評価に供した。その結果を表1に示す。なお、生成するポリエーテルエステルブロック共重合体におけるポリオキシトリメチレングリコール(PO3G)の含有率は、原料の仕込み重量から計算すると実施例1と同様の52.0重量%となる。
【0140】
[結果]
以上の各実施例及び比較例の結果を下記表1に示す。なお、表中、「PEEB共重合体」はポリエーテルエステルブロック共重合体を表わし、「PO3G」はポリオキシトリメチレングリコールを表わし、「PET」はポリエチレンテレフタレートを表わし、「PBT」はポリブチレンテレフタレートを表わす。
【表1】

【0141】
上記表1の結果から、以下のことが明らかである。
すなわち、実施例1と比較例1との比較において、結晶核剤であるシリカのナトリウム塩を含有させることにより、結晶化速度の指標となるTm−Tc2の値が非常に小さくなるとともに、ペレットの融着性が大幅に改善されていることがわかる。
【0142】
また、実施例2に示されたように、結晶核剤(シリカのナトリウム塩)と共に、滑剤であるポリエチレンワックスを含有させることにより、融着性が更に改善されていることがわかる。
【0143】
また、PETをハードセグメントとする実施例2とPBTをハードセグメントとする比較例2との比較において、耐熱性及び弾性回復性の指標となる測定値が共に実施例2の方が優れている。よって、耐熱性及び弾性回復性の観点から、PETをハードセグメントとする本発明のポリエーテルエステルブロック共重合体組成物は、PBTをハードセグメントとするポリエーテルエステルブロック共重合体組成物よりも優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明の共重合体組成物の用途は特に制限されないが、例えば、等速ジョイントブーツ、サスペンジョンブーツ、ラック&ピニオンブーツ、ステアリングロッドカバー、ケーブルインナーライナ、ケーブルアウタージャケット、ATスライドカバー、シートベルト部品、ドアラッチストライカー、リバンドストッパ、安全ベルトのラチェット、リーフスプリングブッシュ等の自動車部品、油圧用ホースや空圧用ホース等の各種ホース、各種シール・パッキン、フレキシブルカップリング、コンベアベルト、タイミングベルト、圧縮バネ等の工業用部品、ギヤ等の精密機械部品、携帯電話ハウジング、制震材、防震材、キーボードパット、導電性パット、OAロール、電話機カールコード、光ファイバ被覆等の電気・電子部品、ヘアーブラシ、ホットカーラー、スキー靴底、靴インナーソール等の生活用品、衣料用繊維、不織布や各種フィルター等の繊維製品、二軸延伸フィルムや導電性フィルム等のフィルム製品等として好適に使用できる。中でも、耐熱性が特に要求される自動車部品として用いるのが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)芳香族ジカルボン酸単位、(b)エチレングリコール単位、及び、(c)ポリオキシトリメチレングリコール単位を有するポリエーテルエステルブロック共重合体と、
結晶核剤とを含有する
ことを特徴とする、ポリエーテルエステルブロック共重合体組成物。
【請求項2】
前記結晶核剤が、金属塩である
ことを特徴とする、請求項1記載のポリエーテルエステルブロック共重合体組成物。
【請求項3】
前記金属塩が、ナトリウム塩である
ことを特徴とする、請求項2記載のポリエーテルエステルブロック共重合体組成物。
【請求項4】
前記ポリエーテルエステルブロック共重合体100重量%に対する、前記結晶核剤の比率が、0.01重量%以上、20重量%以下である
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のポリエーテルエステルブロック共重合体組成物。
【請求項5】
滑剤を更に含有する
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のポリエーテルエステルブロック共重合体組成物。
【請求項6】
前記滑剤が、炭化水素系化合物である
ことを特徴とする、請求項5記載のポリエーテルエステルブロック共重合体組成物。

【公開番号】特開2008−174620(P2008−174620A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8350(P2007−8350)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】