説明

ポリエーテル類、その製造方法、非イオン性界面活性剤、乳化剤およびシリコーンオイルエマルジョン組成物

【課題】既存のポリオキシアルキレン系の非イオン性界面活性剤や乳化剤に比べて、空気存在下で酸化され難く、保存中にアレルギー抗原性酸化生成物生成し難く、高重合度であっても液状を呈し、生産性・作業性に優れたポリエーテル類、非イオン性界面活性剤、乳化剤およびシリコーンオイルエマルジョン組成物を提供する。
【解決手段】片末端が炭素原子数7〜20のアルキル基または炭素原子数7〜20のアルキル置換アリール基で封鎖された、ポリ(メチルグリシジルエーテル)類もしくはポリ(エチルグリシジルエーテル)類、および、片末端が炭素原子数7〜20のアルキル基または炭素原子数7〜20のアルキル置換アリール基で封鎖されたメチルグリシジルエーテルもしくはエチルグリシジルエーテルとエチレンオキシドとの共重合体、ならびに、かかるポリグリシジルエーテル類あるいは共重合体からなる非イオン性界面活性剤、乳化剤、該乳化剤を使用したシリコーンオイルエマルジョン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリグリシジルエーテル類またはグリシジルエーテルとアルキレンオキシドの共重合体類、それらの製造方法、ポリグリシジルエーテル類またはグリシジルエーテルとエチレンオキシドの共重合体類からなる非イオン界面活性剤と乳化剤、およびシリコーンオイルエマルジョン組成物に関する。特に既存のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルからなる非イオン界面活性剤や乳化剤と比較して、ホルムアルデヒドに代表されるカルボニル官能性アレルギー抗原性化合物を発生し難い新規な非イオン界面活性剤および乳化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭素原子数7〜20のアルキルフェノールにエチレンオキサイドを付加重合させて得られるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルは、非常に優れた界面活性能を発揮する非イオン界面活性剤であり、洗浄剤、乳化剤,分散剤、可溶化剤、湿潤・浸透剤、消泡剤、表面処理剤などとして広範な用途分野で幅広く使用されてきた。しかし、近年、該非イオン界面活性剤の環境や生態系への悪影響を懸念する動きから、例えば洗浄剤のように環境や生態系への配慮が必要な用途分野において、高級アルコールにエチレンオキサイドを付加重合させて得られるポリオキシエチレンアルキルエーテルという非アルキルフェノール型の非イオン界面活性剤への転換が進められている。
【0003】
高級アルコールにエチレンオキシドを塩基性触媒又は酸性触媒の存在下で開環付加重合して得られるポリオキシエチレンアルキルエーテルや、高級アルコールにエチレンオキシドとプロピレンオキシド、プロピレンオキシドのみ、またはブチレンオキシドのみを、アルカリ触媒又は酸触媒の存在下で付加重合して得られるポリオキシアルキレンアルキルエーテルが、各種洗浄剤、乳化剤、乳化重合用乳化剤、分散剤、可溶化剤、湿潤・浸透剤、消泡剤、化粧料成分、表面処理剤などとして既に種々の用途分野で使用され、また提案されている[特開平8−332050(特許文献1)、特開2002−29915(特許文献2)、特開2002−210873(特許文献3)参照]。
【0004】
さらには、特開平7−126690号公報(特許文献4)には、脂肪族アルコールを出発物質として、(1)エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム付加体に、さらにエチレンオキサイドを導入したアルキレンオキサイド付加体が開示され、特開平10−46189号公報(特許文献5)には、脂肪族アルコールを出発物質として、(2)エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム付加体に、さらにプロピレンオキサイドを導入したアルキレンオキサイド付加体など種々のアルキレンオキサイド付加体が開示されている。
【0005】
一方、特許第2820692号公報(特許文献6)には、5〜95重量%の範囲のエチレンオキシドと95〜5重量%の範囲のn-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテルまたはアリルグリシジルエーテルとの共重合体が帯電防止剤として開示されている。特開平8−239467号公報(特許文献7)には、片末端がROで封鎖され、他末端が水酸基であり、オキシプロピレン単位8〜35とアルキルグリシジルエーテルに由来する単位0〜3からなる共重合体(式中、RがC14〜C20アルキル又はC9〜C12アルキルフェニルであり、グリシジルエーテル対RO単位の平均モル比が0.4:1〜1.5:1である)からなる油溶性ポリエーテル組成物が開示されている。油溶性ポリエーテル組成物自体、鉱油や合成油との混合物、および、ポリエーテルとの混合物が工業用潤滑剤として有用であると記載されている。また、特開2005−330494号公報(特許文献8)には、無機固体表面改質剤であるアルキルグリシジルエーテルとアルキレンオキシドとの共重合体およびポリステアリルグリシジルエーテルが開示されている。
Chemistry Letters 2002, 1128(非特許文献1)には、フェノキシ基で封鎖されたポリ(グリシジルエーテル)類が報告されている。
【0006】
【特許文献1】特開平8−332050号公報
【特許文献2】特開2002−29915号公報
【特許文献3】特開2002−210873号公報
【特許文献4】特開平7−126690号公報
【特許文献5】特開平10−46189号公報
【特許文献6】特許第2820692号公報
【特許文献7】特開平8−239467号公報
【特許文献8】特開2005−330494号公報
【非特許文献1】Chemistry Letters 2002, 1128
【0007】
しかしながら、上記既存のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステルのような非イオン界面活性剤は、特に分子中のオキシアルキレン基が空気存在下で酸化され易く、保存中にホルムアルデヒドやその他のアルデヒド類、ギ酸エステル類などのアレルギー抗原性酸化生成物を与えることが報告されており(例えば、Acta Dermato-Venereologica, 79, 5-26 (1999); J Pharm Sci, 87, 276 (1998); Contact Dermatitis, 44, 207 (2001); Contact Dermatitis, 39, 14 (1998); J Pharm Sci, 88, 4 (1999); Contact Dermatitis 44, 207-212, 2001等)問題である。
【0008】
また、高重合度のポリオキシエチレン系非イオン界面活性剤は一般に固体であるため生産性・作業性に劣るという問題がある。
【0009】
一方、特許文献6に開示されたエチレンオキシド共重合体は、n-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテルという炭素原子数が大きいアルキル基のグリシジルエーテルを共重合単位としているが、末端封鎖基について何も記載されておらず、不明である。また、高分子材料に内添する帯電防止剤であり、界面活性能や乳化能を有するとは記載されていない。
特許文献7に開示された油溶性ポリエーテル組成物は、プロピレンオキシド単位:アルキルグリシジルエーテルに由来する単位はモル比で(8〜35):(0〜3)であるので、空気存在下で酸化されやすく、保存中にホルムアルデヒドやその他のアルデヒド類、ギ酸エステル類などのアレルギー抗原性酸化生成物が生成しやすい。また、アルキル基の炭素原子数は8〜14であるので油溶性に富んでおり、親水性を有しない。
特許文献8にはアルキルグリシジルエーテルとアルキレンオキシドとの共重合体およびポリステアリルグリシジルエーテルが開示されているが、末端封鎖基について何も記載されておらず、不明である。
非特許文献1には、フェノキシ基で封鎖されたポリ(グリシジルエーテル)類が報告されているが、これらが界面活性剤として使用できるとは報告されていない。また、末端にフェノキシ基より炭素原子数が多い疎水性基を有するポリ(グリシジルエーテル)類については報告されておらず、それらが界面活性剤として使用できるとも報告されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、既存のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルなどや、それらポリオキシアルキレン系の非イオン性界面活性剤や乳化剤に比べて、空気存在下で酸化され難く、保存中にホルムアルデヒドやその他のアルデヒド類、ギ酸エステル類などのアレルギー抗原性酸化生成物生成し難く、また、高重合度であっても液状を呈し、生産性・作業性に優れたポリエーテル類、非イオン性界面活性剤、乳化剤、および該乳化剤を使用したシリコーンオイルエマルジョン組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は鋭意検討した結果、上記課題は片末端が炭素原子数7〜20のアルキル基または炭素原子数7〜20のアルキル置換アリール基で封鎖されたポリ(メチルグリシジルエーテル)類もしくはポリ(エチルグリシジルエーテル)類、および、片末端が炭素原子数7〜20のアルキル基または炭素原子数7〜20のアルキル置換アリール基で封鎖されたメチルグリシジルエーテル類もしくはエチルグリシジルエーテルとエチレンオキシドの共重合体類、ならびに、かかるポリグリシジルエーテル類あるいは共重合体からなる非イオン性界面活性剤、乳化剤などにより解決されることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
即ち、本発明は、
[1] 一般式(1): R―O―X―Z―Y (1)
{式中、Rは炭素原子数7〜20の一価アルキル基または一価アルキル置換アリール基であり、Xは、下記一般式(2):
【化1】

または下記一般式(3):
【化2】

(式中、R1はメチル基またはエチル基である。)であり、Zはエチレンオキシ基であり、Yは水素原子、または炭素原子数20以下のアルキル基、炭素原子数20以下の飽和脂肪族アシル基およびグリシジル基からなる群から選択される有機基であり、nは1〜100の数であり、mは0〜100の数であり(ただし、1≦n+m≦200、0.5<n/(n+m)≦1である)、分子中のX基とZ基の配列はランダム、交互およびブロックのいずれか、またはそれらの組合せである。}で示されるポリエーテル類。
[2] 0.9≦n/(n+m)≦1であることを特徴とする[1]記載の疎水性基置換ポリエーテル類
[3] m=0、n/(n+m)=1であることを特徴とする[2]記載のポリエーテル類。
[4] Yが水素原子であることを特徴とする[2]または[3]記載のポリエーテル類。
[5] 標準ポリスチレン換算の分子量分布多分散度が1.25〜1.00であることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれか記載のポリエーテル類。
[6] (1) 一般式(4):ROH(式中、Rは前記のとおり)で示されるアルコール類またはアルキル置換アリールアルコール類の存在下で、一般式(5):
【化3】

(式中、R1はメチル基またはエチル基である。)で示されるグリシジルエーテル類のみを、または該グリシジルエーテル類とエチレンオキシドとを、酸性開環重合触媒または塩基性開環重合触媒の存在下で重合または共重合し、ついで、
(2) 塩基性物質または酸性物質を添加して重合または共重合を停止することを特徴とする、前記一般式(1)(ただし、式中Yは水素原子である)で示されるポリエーテル類の製造方法。
[7] 塩基性開環重合触媒がアルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属アルコラートであり、酸性物質が有機酸または無機酸であることを特徴とする、[6]記載のポリエーテル類の製造方法。
[8] [6]記載の製造方法により得られた前記一般式(1)(式中、Yは水素原子である)で示されるポリエーテル類とアルカリ金属水酸化物を反応させることによりYをアルカリ金属に置換し、ついで炭素原子数20以下のアルキルモノハライド、炭素原子数20以下の飽和脂肪族アシルハライドまたはエピクロルヒドリンと反応させることを特徴とする、前記一般式(1)(式中、Yは炭素原子数20以下のアルキル基、炭素原子数20以下の飽和脂肪族アシル基およびグリシジル基からなる群から選択される有機基である)で示されるポリエーテル類の製造方法。
[9] アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムであり、アルキルモノハライドがアルキルモノクロライドであり、アシルハライドがアシルクロライドである[8]記載の製造方法。
[10] 一般式(1): R―O―X―Z―Y (1)
{式中、Rは炭素原子数7〜20の一価アルキル基または一価アルキル置換アリール基であり、Xは、下記一般式(2):
【化4】

または下記一般式(3):
【化5】

(式中、R1はメチル基またはエチル基である。)であり、Zはエチレンオキシ基であり、Yは水素原子であり、nは1〜100の数であり、mは0〜100の数であり(ただし、1≦n+m≦200、0.5<n/(n+m)≦1である)、分子中のX基とZ基の配列はランダム、交互およびブロックのいずれか、またはそれらの組合せである。}で示されるポリエーテル類からなることを特徴とする、非イオン性界面活性剤。
[11] 0.9≦n/(n+m)≦1であることを特徴とする[10]記載の非イオン性界面活性剤。
[12] m=0、n/(n+m)=1であることを特徴とする[11]記載の非イオン性界面活性剤。
[13] ポリエーテルの標準ポリスチレン換算の分子量分布多分散度が1.25〜1.00であることを特徴とする、[10]〜[12]のいずれかに記載の非イオン性界面活性剤。
[14] [13]記載の非イオン性界面活性剤からなることを特徴とする、乳化剤。
[15] (A) 疎水性シリコーンオイルと(B) [14]記載の乳化剤と(C) 水からなることを特徴とする、シリコーンオイルエマルジョン組成物。;に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一般式(1)で示されるポリエーテル類、特には0.9≦n/(n+m)≦1であるポリエーテル類、特にはm=0、n/(n+m)=1であるポリエーテル類は、空気存在下で酸化され難く、保存中にホルムアルデヒドやその他のアルデヒド類、ギ酸エステル類などのアレルギー抗原性酸化生成物生成し難く、また、高重合度であっても液状を呈し、生産性・作業性に優れている。本発明の非イオン界面活性剤および乳化剤、特には0.9≦n/(n+m)≦1である非イオン界面活性剤および乳化剤、とりわけm=0、n/(n+m)=1である非イオン界面活性剤および乳化剤は、空気存在下で酸化され難く、保存中にホルムアルデヒドやその他のアルデヒド類、ギ酸エステル類などのアレルギー抗原性酸化生成物生成し難く、また、対応する既存のポリエチレンオキシド系非イオン界面活性剤が固体状となる高重合度であっても液状を呈し、生産性・作業性に優れている。本発明の乳化剤は、環状ジメチルポリシロキサンなどの疎水性シリコーンオイルの乳化能に優れている。本発明のシリコーンオイルエマルション、特には上記乳化剤により疎水性シリコーンオイルがエマルジョン化されたシリコーンオイルエマルションは、空気存在下で酸化され難く、保存中にホルムアルデヒドやその他のアルデヒド類、ギ酸エステル類などのアレルギー抗原性酸化生成物生成し難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のポリエーテル類は、一般式(1): R―O―X―Z―Y (1)
{式中、Rは炭素原子数7〜20の一価アルキル基または一価アルキル置換アリール基であり、Xは、下記一般式(2):
【化6】

または下記一般式(3):
【化7】

(式中、R1はメチル基またはエチル基である。)であり、Zはエチレンオキシ基であり、Yは水素原子、または炭素原子数20以下のアルキル基、炭素原子数20以下の飽和脂肪族アシル基およびグリシジル基からなる群から選択される有機基であり、nは1〜100の数であり、mは0〜100の数であり(ただし、1≦n+m≦200、0.5<n/(n+m)≦1である)、分子中のX基とZ基の配列はランダム、交互およびブロックのいずれか、またはそれらの組合せである。}で示されることを特徴とする。
【0015】
前記ポリエーテル類の主鎖は、ポリ(メチルグリシジルエーテル)、ポリ(エチルグリシジルエーテル)、メチルグリシジルエーテルとエチルグリシジルエーテルの共重合体、メチルグリシジルエーテルとエチレンオキシドとの共重合体、エチルグリシジルエーテルとエチレンオキシドとの共重合体、および、メチルグリシジルエーテルとエチルグリシジルエーテルとエチレンオキシドとの共重合体がある;末端基は、片末端のRが炭素原子数7〜20のアルキル基であり、他末端のYが水素原子であるもの;片末端のRが炭素原子数7〜20のアルキル基であり、他末端のYが炭素原子数20以下のアルキル基であるもの;片末端のRが炭素原子数7〜20のアルキル基であり、他末端のYが炭素原子数20以下の飽和脂肪族アシル基であるもの;片末端のRが炭素原子数7〜20のアルキル基であり、他末端のYがグリシジル基であるもの;片末端のRが炭素原子数7〜20のアルキル置換アリール基であり、他末端のYが水素原子であるもの;片末端のRが炭素原子数7〜20のアルキル基であり、他末端のYが炭素原子数20以下のアルキル基であるもの;片末端のRが炭素原子数7〜20のアルキル置換アリール基であり、他末端のYがグリシジル基であるものがある。
【0016】
上記メチルグリシジルエーテルとエチレンオキシドとの共重合体、エチルグリシジルエーテルとエチレンオキシドとの共重合体、メチルグリシジルエーテルとエチルグリシジルエーテルとエチレンオキシドとの共重合体は、メチルグリシジルエーテルに由来する単位、エチルグリシジルエーテルに由来する単位、あるいはメチルグリシジルエーテルとエチルグリシジルエーテルに由来する単位が全単位の50モル%より大であることを特徴とし、好ましくは90モル%以上であり、最も好ましくは100モル%である。
【0017】
前記一般式(1)中、Rは炭素原子数7〜20の一価アルキル基または一価アルキル置換アリール基である。一価アルキル基としては、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコサニル基が例示され、これらの一価アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。一価アルキル置換アリール基としてはトリル基、キシリル基、メシチル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基が例示され、該一価アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。分子中のこれらRは単一の基であっても、複数の基の混合物であってもよい。環境や生態系への影響を考慮するとRは一価アルキル基、とりわけ直鎖状の一価アルキル基が好ましい。
【0018】
一般式(1)中の一般式(2)もしくは一般式(3)で示されるXは、重合原料であるメチルグリシジルエーテルもしくはエチルグリシジルエーテルに由来する構成単位である。同一分子中に一般式(2)で示される基と一般式(3)で示される基が並存することがあり得る。
はメチル基もしくはエチル基である。分子鎖片末端に疎水性の一価アルキル基または一価アルキル置換アリール基が存在するため、Xは極性の高いものの方が優れた界面活性能を示す。従ってR1としては炭素原子数が小さいものの方が好ましく、エチル基よりメチル基の方が好ましい。
【0019】
nはX基の数、すなわち、ポリ(メチルグリシジルエーテル)の平均重合度、ポリ(エチルグリシジルエーテル)の平均重合度、または、メチルグリシジルエーテルとエチルグリシジルエーテルとの共重合体の平均重合度を示し、1〜100である。表面張力低下能、浸透力、また、洗浄力や乳化力、可溶化力、さらには相溶性などの物性のバランスに優れているという点で、2〜50が好ましい。
Zはエチレンオキシ基である。
mはポリエチレンオキシ基の平均重合度を示し、0〜100である。表面張力低下能、浸透力、また、洗浄力や乳化力、可溶化力、さらには相溶性などの物性のバランスに優れているという点で、0〜50が好ましい。
n+mは、メチルグリシジルエーテルとエチレンオキシドとの共重合体の平均重合度、エチルグリシジルエーテルとエチレンオキシドとの共重合体の平均重合度、または、メチルグリシジルエーテルとエチルグリシジルエーテルとエチレンオキシドとの共重合体の平均重合度を示す。ただし、1≦n+m≦200であり、0.5<n/(n+m)≦1である。
n/(n+m)は全ポリエーテル主鎖中に占めるX基の割合であり、0.5より大きく1.0以下である。好ましくは0.9≦n/(n+m)≦1である。n/(n+m)の値が1に近いほどエチレンオキシ基の割合が少なくなり、耐酸化性が向上する。したがって、m=0、n/(n+m)=1がベストである。上記ポリエーテルは、実施例の冒頭に記載された標準ポリスチレン換算の分子量分布多分散度が1.25〜1.00であることが好ましく、1.10〜1.00であることがより好ましい。
【0020】
Yは水素原子、または炭素原子数20以下のアルキル基、飽和脂肪族アシル基およびグリシジル基からなる群から選択される基であり、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、炭素原子数7〜20のアルキル基が例示される;飽和脂肪族アシル基としてはアセチル基、プロピオニル基が例示されるが、合成のしやすさと界面活性剤としての性能を考えると水素原子が最も好ましい。
【0021】
本発明のポリエーテル類のうち、Yが水素原子であるものは、(1) 一般式(4):ROH(式中、Rは前記のとおり)で示されるアルコール類またはアルキル置換アリールアルコール類の存在下で、一般式(5):
【化8】

(式中、R1はメチル基またはエチル基である。)で示されるグリシジルエーテル類のみを、または該グリシジルエーテル類とエチレンオキシドとを、酸性開環重合触媒または塩基性開環重合触媒の存在下で重合または共重合し、ついで、
(2) 塩基性物質または酸性物質を添加して重合または共重合を停止することにより製造することができる。
【0022】
本発明のポリエーテル類のうち、Yが炭素原子数20以下のアルキル基、炭素原子数20以下の飽和脂肪族アシル基およびグリシジル基からなる群から選択される有機基であるものは、
前記製造方法により得られた前記一般式(1)(ただし、式中Yは水素原子である)で示されるポリエーテル類とアルカリ金属水酸化物を反応させることによりYをアルカリ金属に置換し、ついで炭素原子数20以下のアルキルハライド、炭素原子数20以下の飽和脂肪族アシルハライドまたはエピクロルヒドリンと縮合反応させることにより製造することができる。
【0023】
原料である一価アルコールとして、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコサニルアルコールが例示され、これらは直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、乳化力、可溶化力、洗浄力等の点から直鎖状が好ましい。一価アルキル置換アリールアルコール類として、メチルフェノール、ジメチルフェノール、トリメチルフェノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、ヘプチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、デシルフェノール、ウンデシルフェノール、ドデシルフェノールが例示され、当該一価アルキル基は直鎖状、分岐状、環状が例示される。またこれらは単一であっても、複数の異性体の混合物であってもよい。
【0024】
本発明の一般式(1)で示されるポリエーテル類を製造するのに使用される一般式(5) で示されるグリシジルエーテル類中のR1はメチル基またはエチル基である。グリシジルエーテル類はメチルグリシジルエーテルまたはエチルグリシジルエーテルであり、この2種の混合物であってもよい。
【0025】
一般式(1)で示されるポリエーテル類を製造するための、一般式(5) で示されるグリシジルエーテル類の開環重合反応用の触媒、および、一般式(5) で示されるグリシジルエーテル類とエチレンオキシドの開環共重合反応用の触媒は、公知の塩基性開環重合触媒及び酸性開環重合触媒のいずれでも使用できるが、塩基性開環重合触媒を用いることが好ましい。塩基性触媒を用いると、重合がリビング的に進行し、副反応生成物が少なく、分子量分布の狭い、すなわち、標準ポリスチレン換算の分子量分布多分散度が1.25〜1.00、特には1.15〜1.00であるポリ(メチルグリシジルエーテル)、ポリ(エチルグリシジルエーテル)、メチルグリシジルエーテルとエチレンオキシドとの共重合体、エチルグリシジルエーテルとエチレンオキシドと共重合体等を与える。使用できる塩基性触媒としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウム-t-ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコラート及びトリエチルアミンをはじめとする各種アミン化合物などが挙げられる。また、これら触媒は、反応速度、製造コスト、副生物生成量などの観点から商業生産上有利である。これらのうちでもアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコラートが好ましく、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、カリウム-t-ブトキシドが好適である。好適な重合触媒量は重合用原料(全仕込量)当たり0.005〜2重量%(固形分換算)、より好ましくは0.03〜1重量%(固形分換算)の範囲である。
【0026】
酸性開環重合触媒として、三弗化ホウ素、四塩化錫、三弗化ホウ素エーテル錯化合物、HMF(式中、MはP、AsまたはSbである)で示される弗化金属酸、該弗化金属酸のオキソニウム塩、四弗化ホウ素のオキソニウム塩、六弗化アンチモンのオキソニウム塩、ヘキサフルオロ燐酸トリエチルオキソニウムが例示される。
【0027】
重合触媒が塩基性触媒の場合、好ましい重合反応温度は50〜200℃である。重合反応釜に原料を投入し、この温度で撹拌を行い、原料である一般式(5) で示されるグリシジルエーテル類のみ、または一般式(5) で示されるグリシジルエーテル類とエチレンオキシドの消費状況をガスクロマトグラフィー(GLC)、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、核磁気共鳴分析(NMR)等によりモニターする。一般式(5) で示されるグリシジルエーテル類とエチレンオキシドを共重合させる際は、両者の混合物を共重合させることによりランダムコポリマーが得られる。一般式(5) で示されるグリシジルエーテル類とエチレンオキシドのいずれかを開環重合し、そのモノマーが消費されたことを確認してから、別のモノマーを添加し、開環重合を行うことによってブロックコポリマーが得られる。これらの重合反応において、一般式(5) で示されるグリシジルエーテル類のみ、または一般式(5) で示されるグリシジルエーテル類とエチレンオキシドが消費されたことを確認した後、使用した塩基性触媒を中和するに足る有機酸または無機酸を添加して重合反応を停止させると、分子鎖末端のYが水素原子であるポリエーテル類が得られる。なお、酸性開環重合触媒を使用して重合する場合は、重合温度は25〜50℃、あるいは90℃以上の温度が例示される。塩基性物質により中和して重合反応を停止する。
【0028】
また、使用した一価飽和アルコールまたは一価アルキル置換アリールアルコール類中の水酸基モル数より過剰モルのアルカリ金属水酸化物を投入して分子鎖他末端をアルカリアルコラート化してから、炭素原子数20以下のアルキルハライド、炭素原子数20以下の飽和脂肪族アシルハライドまたはエピクロルヒドリンと縮合反応させ、副生した塩類をろ過、吸着剤による吸着除去などの方法で除くことにより、分子鎖末端のYが炭素原子数20以下のアルキル基、炭素原子数20以下の飽和脂肪族アシル基およびグリシジル基からなる群から選択される有機基である本発明のポリエーテル類が製造できる。
【0029】
例えば、片末端のRがドデシル基であり、他末端のYが水素原子であるポリメチルグリシジルエーテルは、実施例1に記載した方法により製造することができるが、片末端のRがドデシル基であり、他末端のYが水素原子であるポリ(エチルグリシジルエーテル)は、メチルグリシジルエーテルの代わりにエチルグリシジルエーテルを使用して重合することにより製造することができる。片末端のRがドデシル基以外の炭素原子数7〜20の一価アルキル基であり、他末端のYが水素原子であるポリメチルグリシジルエーテルは、ドデシルアルコールの代わりに炭素原子数7〜20の一価アルコールを使用して重合することにより容易に製造することができる。
【0030】
片末端のRがドデシル基であり、他末端のYが水素原子であるメチルグリシジルエーテルとエチレンオキシドの共重合体は、実施例1に記載した製造方法において、メチルグリシジルエーテルの代わりに、メチルグリシジルエーテルとエチレンオキシドを併用して重合することにより容易に製造することができる
【0031】
例えば、片末端のRがドデシル基であり、Yが水素原子であり、標準ポリスチレン換算数平均分子量が1656であり、分散度が1.06であり、平均重合度が12であり、下記の平均構造式(6)
【化9】

を有するメチルグリシジルエーテルとエチレンオキシドの共重合体は、例えば下記の方法により製造することができる。
参考例の精製メチルグリシジルエーテル76グラム(863ミリモル)とエチレンオキシド1.98グラム(45ミリモル)、ドデシルアルコール14.1グラム(75.7ミリモル)、粒子状水酸化カリウム0.21グラム(3.79ミリモル)を肉厚ガラス管に投入し、乾燥窒素ガス雰囲気下で封管し、120℃で3時間振盪して重合を行う。室温まで冷却し、開封し、0.24グラム(3.98ミリモル)の酢酸を投入し撹拌して重合を停止させる。液状重合物にトルエン10グラムとハイドロタルサイト系の吸着剤1グラムを添加し撹拌して過剰の酢酸を吸着させ、ろ過することにより副生した酢酸カリウムと吸着剤を除去し、透明な濾液を得る。該濾液を加熱しつつ減圧することにより低沸点物を留去して、透明な液体を得る。この透明な液体をGPC分析して標準ポリスチレン換算数平均分子量と分散度を求める。
この透明な液体を13C核磁気共鳴(NMR)分析して平均構造式と平均重合度を求める。
【0032】
また、片末端のRが炭素原子数7〜20のアルキル基であり、他末端のYがアルキル基であり、分散度が1.10〜1.00であるポリ(メチルグリシジルエーテル)またはポリ(エチルグリシジルエーテル)は、例えば、カリウムアルコキシド触媒を使用して、精製メチルグリシジルエーテルまたはエチルグリシジルエーテルを加熱下重合し、重合生成物[片末端がカリウムアルコキシドに由来するアルコキシ基で封鎖され、他末端がカリウムアルコキシドに由来するカリウムオキシ基で封鎖されたポリ(メチルグリシジルエーテル)]に塩化アルキル(炭素原子数7〜20)を投入し加熱して他末端封止反応、すなわち、他末端のカリウムオキシ基をアルコキシ基に変換する反応を行うことにより、容易に製造することができる。
【0033】
例えば、片末端のRがドデシル基であり、他末端のYがメチル基であり、標準ポリスチレン換算数平均分子量が1698であり、分散度が1.08であり、平均重合度が12であり、下記の平均構造式(7)を有する
【化10】

ポリメチルグリシジルエーテルは、例えば下記の方法により製造することができる。
上記精製メチルグリシジルエーテル80グラム(908ミリモル)、カリウムメトキシド5.31グラム(75.7ミリモル)を撹拌装置付き4つ口フラスコ投入し、窒素ガス雰囲気下、120〜130℃で3時間撹拌して重合する。重合により片末端がカリウムメトキシドに由来するメトキシ基で封鎖され、他末端がカリウムメトキシドに由来するカリウムオキシ基で封鎖されたポリ(メチルグリシジルエーテル)が生成する。重合生成物を室温まで冷却し、塩化ドデシル15.8グラム(77.2ミリモル)を投入し120℃で3時間撹拌して他末端のカリウムオキシ基の封止反応、すなわち、他末端のカリウムオキシ基をドデシルオキシ基に変換する反応を行う。液状重合物にトルエン50グラムを添加し、濾過することにより副生した塩化カリウムを除去し、透明な濾液を得る。該濾液を加熱しつつ減圧することにより低沸点物を留去して、透明な液体を得る。この透明な液体をGPC分析して標準ポリスチレン換算数平均分子量と分散度を求める。この透明な液体を13C核磁気共鳴(NMR)分析して平均構造式と平均重合度を求める。
【0034】
本発明のポリエーテル類のうち一般式(1)においてYが水素原子であるものは、片末端に疎水性基があり、主鎖が親水性に富み、他末端が水酸基であるので、界面活性が優れており、非イオン性であるので非イオン界面活性剤として有用である。
【0035】
本発明の非イオン界面活性剤は、
一般式(1): R―O―X―Z―Y (1)
{式中、Rは炭素原子数7〜20の一価アルキル基または一価アルキル置換アリール基であり、Xは、前記一般式(2)または前記一般式(3)で示され、Zはエチレンオキシ基であり、Yは水素原子であり、nは1〜100の数であり、mは0〜100の数であり(ただし、1≦n+m≦200、0.5<n/(n+m)≦1である)、分子中のX基とZ基の配列はランダム、交互およびブロックのいずれか、またはそれらの組合せである。}で示されるポリエーテル類からなることを特徴とする。
R、X、R、Z、n、m、Y、XとZの配列の意義、好ましい実施態様、例示は、一般式(1)で示されるポリエーテル類について説明したとおりである。
耐酸化性の点で、0.9≦n/(n+m)≦1であることが好ましく、m=0、n/(n+m)=1であることが最も好ましい。
上記非イオン性界面活性剤は、実施例の冒頭に記載された標準ポリスチレン換算の分子量分布多分散度が1.25〜1.00であることが好ましく、1.10〜1.00であることがより好ましい。
本発明の乳化剤は、上記非イオン性界面活性剤からなることを特徴とする。
【0036】
既存のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのような非イオン性界面活性剤と同様に、種々の油類、有機溶剤類、油溶性化合物、親油性化合物等を水に乳化するための乳化剤として非常に優れた性能を示す。特には、各種の鉱物油類、動植物油類、脂肪族炭化水素系溶剤類、脂環族炭化水素系溶剤類、芳香族炭化水素系溶剤類、疎水性シリコーンオイル類、疎水性変性シリコーン類、液状パラフィン類;液状ポリオレフィン類、液状ポリエステル類、さらに液状ポリブタジエンをはじめとするジエン系ポリマー類などの各種液状ポリマー類の乳化剤、分散剤として、また、油溶性ビタミン、精油類、液状香料類等の乳化剤、可溶化剤として好適である。
【0037】
本発明のポリエーテル類のうち、Yが炭素原子数20以下のアルキル基、炭素原子数20以下の飽和脂肪族アシル基およびグリシジル基からなる群から選択される有機基であるものは、片末端に疎水性基があり、主鎖が親水性に富み、他末端に疎水性基があるので、界面活性が良好であり、非イオン性であるので非イオン性界面活性剤、特に乳化剤、可溶化剤として有用である。
【0038】
本発明の非イオン性界面活性剤は、水との混合物にしておくと、使い勝手が向上する。この場合の配合割合は、好ましくは非イオン性界面活性剤 70〜95重量%及び水5〜30重量%である。
【0039】
本発明のシリコーンオイルエマルジョン組成物は、(A)疎水性シリコーンオイル、(B)請求項14記載の乳化剤、および(C)水からなる。
(A)疎水性シリコーンオイルは、非反応性のもの、反応性のもののいずれでもよい。25℃における粘度は、乳化性の点で1〜1,000,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、2〜100,000mPa・sの範囲内であることがより好ましい。
【0040】
(A)疎水性シリコーンオイルの分子構造は、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、環状、分岐鎖状が例示されるが、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、環状であることが好ましい。このような疎水性シリコーンオイルとしては、環状ジメチルシロキサンオリゴマー;分岐状メチルシロキサンオリゴマー;分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー:分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルアルキルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン共重合体等の非官能性のシリコーンオイル;上記ポリシロキサンにおいて分子鎖両末端トリメチルシロキシ基中の一メチル基の代わりにケイ素原子結合加水分解性基を有するシリコーンオイル;上記ポリシロキサンにおいて、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基中の一メチル基の代わりにシラノール基を有する疎水性シリコーンオイル;分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンにおいて、メチル基の一部が、グリシドキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、ヒドロキシアルキル基もしくはメルカプトアルキル基で置換された変性シリコーンオイル;前記環状ジメチルシロキサンオリゴマー、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン等において、メチル基の一部が水素原子で置換されたシリコーンオイルが例示される。
【0041】
本発明のシリコーンオイルエマルジョン組成物は、(A)疎水性シリコーンオイルと、これを水中に乳化させるのに充分な量の(B)請求項14記載の乳化剤と、(C)水からなればよく、各成分の配合比は特に限定されない。目安として成分(A)100重量部当り、成分(B)0.1〜20重量部および成分(C)10〜1000重量部である。
【0042】
本発明のシリコーンオイルエマルジョン組成物において、水中に分散している(A)疎水性シリコーンオイルの平均粒子径は、0.01〜200μmの範囲内であることが好ましく、特には、0.1〜20μmの範囲内であることが好ましい。
【0043】
本発明のシリコーンオイルエマルジョン組成物には、その他に保護コロイド剤ないし増粘剤としてポリビニールアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カラギーナン、ポリアクリル酸ナトリウムなどの水溶性ポリマー;抗菌剤ないし防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、防錆剤、染料、無機系増粘剤、硬化触媒などを配合してもよい。
【0044】
本発明のシリコーンオイルエマルジョン組成物は、(A)疎水性シリコーンオイル、(B)請求項14記載の乳化剤および(C)水を乳化機により高速で撹拌して製造することができる。また、疎水性シリコーンオイル重合用のオリゴマーを成分(B)により水中に乳化しておき、重合触媒を添加して乳化重合することにより製造することができる。
【0045】
本発明のシリコーンオイルエマルジョン組成物は、撥水剤、離型剤、潤滑剤、繊維処理剤、皮革処理剤、人工皮革処理剤、粉末処理剤、化粧品添加剤、艶出し剤、消泡剤、表面処理剤、コーテイング剤等として有用である。
【実施例】
【0046】
以下参考例と実施例によって本発明を説明する。
参考例と実施例中、原料および生成物の分析条件は下記のとおりである。
[ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)]
GPC装置として、東ソー株式会社製のHLC-8020 ゲルパーミエーション(GPC)に屈折検出器と東ソー株式会社製のTSKgel GMHXL-L カラム2個を取り付けたものを使用した。試料は1重量%クロロホルム溶液として測定に供した。検量線は数平均分子量、重量平均分子量既知の標準ポリスチレンを用いて作成した。数平均分子量、重量平均分子量は標準ポリスチレン換算して求めた。数平均分子量と重量平均分子量から分子量分布多分散度を計算した。
[13C核磁気共鳴(NMR)分析]
日本電子JNM-EX400型フーリエ変換核磁気装置により測定した。試料を重クロロホルムまたは重メタノールに溶解し、緩和試薬としてトリス(アセチルアセトナト)クロム(III)を添加して測定した。
[赤外吸光分析]
サーモニコレーNEXUS670フーリエ変換型赤外分光分析装置により測定した。試料を2枚のKBr板に挟み、サンドイッチ法にて測定した。
【0047】
[参考例]
市販のメチルグリシジルエーテルを13C核磁気共鳴(NMR)分析した結果、エピクリルヒドリン相当で3.4モル%(13700ppmの塩素)を含有していることがわかった。温度計と還流冷却管と撹拌機付きの4つ口フラスコに、このメチルグリシジルエーテル500グラムと、塊状水酸化ナトリウムをハンマーで砕いて作った粒子状水酸化ナトリウム(平均粒径300μm以上)25グラムを投入し、窒素ガス雰囲気下に80℃で3時間撹拌した。ついで、40〜50mmHgの減圧度で単蒸留を行って360グラムの留分を得た。この留分をNMR分析して、純度99.9%のメチルグリシジルエーテルであることがわかった。NMR分析チャートには不純物に由来するシグナルは観察されなかった。この留分であるメチルグリシジルエーテルに5重量%のモレキュラーシーブス4Aを添加し脱水して精製メチルグリシジルエーテルを得た。
【0048】
[実施例1]
還流冷却管と撹拌機付きの4つ口フラスコに、上記精製メチルグリシジルエーテル80グラム(908ミリモル)、ドデシルアルコール14.1グラム(75.7ミリモル)、粒子状水酸化カリウム0.21グラム(3.79ミリモル)を投入し、窒素ガス雰囲気下で115〜130℃で3時間攪拌して重合を行った。室温まで冷却し、0.24グラム(3.98ミリモル)の酢酸を投入し撹拌して重合を停止させた。液状重合物にトルエン10グラムとハイドロタルサイト系の吸着剤1グラムを添加し撹拌して過剰の酢酸を吸着させ、濾過することにより副生した酢酸カリウムと吸着剤を除去し、透明な濾液を得た。該濾液を加熱しつつ減圧することにより低沸点物を留去して、透明な液体を得た。この透明な液体をGPC分析したところ標準ポリスチレン換算数平均分子量が1683、分散度1.06と判明した。また、この透明な液体を13C核磁気共鳴(NMR)分析したところ、下記の平均構造式(8)で示される片末端ドデシル基封鎖ポリ(メチルグリシジルエーテル)であり、平均重合度は12と判明した。
【化11】

【0049】
実施例1で調製した片末端ドデシル基封鎖ポリ(メチルグリシジルエーテル)11.0グラムを30ミリリットルガラスびんに入れ、空気存在下で密封し、50℃のオーブンに入れて3週間静置した。室温に戻し、ホルムアルデヒドを選択的に検出する試験紙である関東化学製ホルムアルデヒドテストストリップ(TR)を浸したが、変色は見られず、ホルムアルデヒドが検出されなかった。また、50℃で3週間静置前後の試料を赤外吸光分析したが、50℃で3週間静置前後で赤外吸光チャートにほとんど変化は見られなかった。
【0050】
[比較例1]
市販の重合度25の片末端ドデシル基封鎖ポリエチレンオキシド(日光ケミカルズ株式会社製)は、実施例1で調製した片末端ドデシル基封鎖ポリ(メチルグリシジルエーテル)の異性体であるが、室温では固体状であった。この片末端ドデシル基封鎖ポリエチレンオキシドを実施例1と同様に密封して50℃で3週間静置した。実施例1と同様に室温に戻し、ホルムアルデヒドテストストリップを浸したところ、黄色に変色したので、ホルムアルデヒドの生成が確認された。また50℃で3週間静置後の試料を赤外吸光分析したところ、劣化生成物に由来するカルボニル基の大きな吸収が1720cm-1に観察された。
【0051】
[実施例2]
無色透明のガラスビン中で、実施例1で調製した片末端ドデシル基封鎖ポリ(メチルグリシジルエーテル)0.028グラムをドデカメチルシクロペンタシロキサン10グラムおよび水10グラムと混合し、蓋をして30秒間激しく振盪したところ、乳白色半透明のエマルジョンになった。30分間放置して分離の程度を調べ、表1に示した。
【0052】
[比較例2]
無色透明のガラスビン中で、比較例1の市販片末端ドデシル基封鎖ポリエチレンオキシド0.028グラムをドデカメチルシクロペンタシロキサン10グラムおよび水10グラムと混合し、蓋をして30秒間激しく振盪したところ、乳白色半透明のエマルジョンになった。30分間放置して分離の程度を調べ、表1に示した。
【0053】
[比較例3]
ドデカメチルシクロペンタシロキサン10グラムおよび水10グラムのみを比較例2と同様に混合し振盪して同様に評価した。放置後すぐに2層に分離し始め、30分間放置後の分離の程度を表1に示した。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のポリエーテル類、特には、一般式(1)においてYが水素原子であるものは、非イオン性界面活性剤、特には種々の油類、有機溶剤類、油溶性化合物、親油性化合物等を水に乳化するための乳化剤として有用である。
本発明のシリコーンオイルエマルジョン組成物は、撥水剤、離型剤、潤滑剤、繊維処理剤、皮革処理剤、人工皮革処理剤、化粧品添加剤、艶出し剤、消泡剤、表面処理剤、コーテイング剤等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1の片末端ドデシル基封鎖ポリ(メチルグリシジルエーテル)の加熱劣化試験前のIRチャートである。
【図2】実施例1の片末端ドデシル基封鎖ポリ(メチルグリシジルエーテル)の加熱劣化試験後のIRチャートである。IRチャートの吸収は図1のIRチャートと実質的に同一である。
【図3】比較例1の片末端ドデシル基封鎖ポリエチレンオキシドの加熱劣化試験前のIRチャートである。
【図4】比較例1の片末端ドデシル基封鎖ポリエチレンオキシドの加熱劣化試験後のIRチャートである。図3のIRチャートに較べ1650cm-1の吸収と3180 cm-1の吸収が深くなり、1720 cm-1 に新たな吸収が生じている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1): R―O―X―Z―Y (1)
{式中、Rは炭素原子数7〜20の一価アルキル基または一価アルキル置換アリール基であり、Xは、下記一般式(2):
【化1】

または下記一般式(3):
【化2】

(式中、R1はメチル基またはエチル基である。)であり、Zはエチレンオキシ基であり、Yは水素原子、または炭素原子数20以下のアルキル基、炭素原子数20以下の飽和脂肪族アシル基およびグリシジル基からなる群から選択される有機基であり、nは1〜100の数であり、mは0〜100の数であり(ただし、1≦n+m≦200、0.5<n/(n+m)≦1である)、分子中のX基とZ基の配列はランダム、交互およびブロックのいずれか、またはそれらの組合せである。}で示されるポリエーテル類。
【請求項2】
0.9≦n/(n+m)≦1であることを特徴とする請求項1記載の疎水性基置換ポリエーテル類
【請求項3】
m=0、n/(n+m)=1であることを特徴とする請求項2記載のポリエーテル類。
【請求項4】
Yが水素原子であることを特徴とする請求項2または請求項3記載のポリエーテル類。
【請求項5】
標準ポリスチレン換算の分子量分布多分散度が1.25〜1.00であることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のポリエーテル類。
【請求項6】
(1) 一般式(4):ROH(式中、Rは前記のとおり)で示されるアルコール類またはアルキル置換アリールアルコール類の存在下で、一般式(5):
【化3】

(式中、R1はメチル基またはエチル基である。)で示されるグリシジルエーテル類のみを、または該グリシジルエーテル類とエチレンオキシドとを、酸性開環重合触媒または塩基性開環重合触媒の存在下で重合または共重合し、ついで、
(2) 塩基性物質または酸性物質を添加して重合または共重合を停止することを特徴とする、前記一般式(1)(ただし、式中Yは水素原子である)で示されるポリエーテル類の製造方法。
【請求項7】
塩基性開環重合触媒がアルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属アルコラートであり、酸性物質が有機酸または無機酸であることを特徴とする、請求項6記載のポリエーテル類の製造方法。
【請求項8】
請求項6記載の製造方法により得られた前記一般式(1)(式中、Yは水素原子である)で示されるポリエーテル類とアルカリ金属水酸化物を反応させることによりYをアルカリ金属に置換し、ついで炭素原子数20以下のアルキルモノハライド、炭素原子数20以下の飽和脂肪族アシルハライドまたはエピクロルヒドリンと反応させることを特徴とする、前記一般式(1)(式中、Yは炭素原子数20以下のアルキル基、炭素原子数20以下の飽和脂肪族アシル基およびグリシジル基からなる群から選択される有機基である)で示されるポリエーテル類の製造方法。
【請求項9】
アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムであり、アルキルモノハライドがアルキルモノクロライドであり、アシルハライドがアシルクロライドである請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
一般式(1): R―O―X―Z―Y (1)
{式中、Rは炭素原子数7〜20の一価アルキル基または一価アルキル置換アリール基であり、Xは、下記一般式(2):
【化4】

または下記一般式(3):
【化5】

(式中、R1はメチル基またはエチル基である。)であり、Zはエチレンオキシ基であり、Yは水素原子であり、nは1〜100の数であり、mは0〜100の数であり(ただし、1≦n+m≦200、0.5<n/(n+m)≦1である)、分子中のX基とZ基の配列はランダム、交互およびブロックのいずれか、またはそれらの組合せである。}で示されるポリエーテル類からなることを特徴とする、非イオン性界面活性剤。
【請求項11】
9≦n/(n+m)≦1であることを特徴とする請求項10記載の非イオン性界面活性剤。
【請求項12】
m=0、n/(n+m)=1であることを特徴とする請求項11記載の非イオン性界面活性剤。
【請求項13】
ポリエーテルの標準ポリスチレン換算の分子量分布多分散度が1.25〜1.00であることを特徴とする、請求項10〜請求項12のいずれか1項記載の非イオン性界面活性剤。
【請求項14】
請求項13記載の非イオン性界面活性剤からなることを特徴とする、乳化剤。
【請求項15】
(A) 疎水性シリコーンオイルと(B) 請求項14記載の乳化剤と(C) 水からなることを特徴とする、シリコーンオイルエマルジョン組成物。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−308615(P2007−308615A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139828(P2006−139828)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】