説明

ポリオレフィンの製造方法およびポリオレフィン樹脂組成物

【課題】
本発明は、多段重合において活性が高く、耐衝撃性、長期特性および成型加工性に優れたポリオレフィンの製造方法を提供することを課題としている。
【解決手段】
α−オレフィンを多段重合してポリオレフィンを製造する方法であり、この多段重合が少なくとも低分子量成分と高分子量成分とを製造する重合であり、この重合に使用される触媒が固体触媒[A]と有機金属化合物[B]からなり、固体触媒[A]が、特定の有機マグネシウム化合物(a-1)と特定の塩素化剤(a-2)との反応により調製された担体(A-1)に、アルコール(A-2)を反応させ、次に特定の有機金属化合物(A-3)を反応させ、次に特定のチタン化合物(A-4)を特定の有機金属化合物(A-5)と反応させて担持することにより調製されたものであり、有機金属化合物[B]が特定の有機アルミニウム化合物および特定の有機マグネシウム化合物からなる群に属することを特徴とする、ポリオレフィンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィンの製造方法に関する。さらに詳しくは、従来公知の方法と比較して、ポリオレフィンの剛性と長期特性とのバランスに優れ、さらには成型加工性が優れたポリオレフィンの製造方法および該製造方法により製造された配管材料用ポリオレフィン樹脂組成物、および中空成形用ポリオレフィン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリエチレンはクリープ特性、耐環境応力亀裂性、耐衝撃性、および可とう性に優れているため、配管材料や中空成形体等様々な用途で使用されている。配管材料としては上下水道管、ガス管、給水管等が挙げられ、中空成形体としてはブロー成型により製造された工業薬品容器、高純度薬品容器、食用油容器、等が挙げられる。
【0003】
ポリエチレンの製造方法は大きく単段重合と多段重合とに分類できる。単段重合は、一基の重合器を使用するため、製造する際の条件の制御が比較的容易である。また、得られるポリエチレンは耐衝撃性には極めて優れるものの、クリープ特性および耐環境応力亀裂性に劣ることが知られている。一方、多段重合は、複数の重合器を使用するため、ポリエチレンを製造する際に制御する条件が多いため、条件の制御が困難である。また、得られるポリエチレンはクリープ特性および耐環境応力亀裂性に優れるものの、耐衝撃性にやや劣ることが知られている。
上記の重合方法によるポリエチレンの物性の差異により、配管材料および中空成形体用の高いクリープ特性、耐環境応力亀裂性、耐衝撃性および可とう性を有したポリエチレンは、単段重合により製造することは非常に困難であるため、一般に多段重合により製造されている。
【0004】
例えば、上下水道管として使用される場合には、パイプ内部からの水圧や埋設時の外部からの土圧などの応力がかかるため、長期間にわたる応力に耐えるために長期特性に優れたポリエチレンが必要である。一方、市場ではパイプの大口径化が求められており、このためにはポリエチレンに高い剛性が必要である。一方、上下水道管には継ぎ手が必要であり、この継ぎ手は通常射出成型により製造されるため、高い成型加工性が必要である。上下水道管と継ぎ手とは融着して使用されるため、融着性を良好にするためには上下水道管と継ぎ手とが同一のポリエチレンで製造されていることが望ましい。しかし、高い長期特性と高い剛性とを両立させ、さらに高い成型加工性を両立させることは困難であった。
【0005】
例えば、特許文献1には、2つの分子量分布を持つポリエチレンからなり、MFR5が0.35g/10分以下であるポリエチレンが開示されている。しかし、このポリエチレンは分子量が高く、こうした材料は機械特性に優れPE100である可能性はあるが、成形加工性が悪く、実際の押し出し成形及び射出成形によるパイプ及び継ぎ手の生産において、特に射出成形では生産性が非常に劣ることが予想される。
【0006】
また、特許文献2には極限粘度と密度の異なる2成分からなる組成物が開示されており、この組成物を用いてパイプ成形体を成形した際、パイプの特性として熱間内圧クリープ試験、引張クリープ試験、引張疲労試験等が従来までの材料よりも飛躍的に向上する事が提案されている。これによると低分子量、高密度のポリエチレンと高分子量、低密度のポリエチレンの2成分からなる組成物の密度及び極限粘度がそれぞれ0.945〜0.970g/cm、2.41〜6.3dyne/cmの範囲にあり、190℃におけるキャピラリーのずり応力が2.4×10dyne/cmに達するときのずり速度(FI)が350sec−1以下であることを特徴とする組成物によりパイプ成形体としたときに、成形性、パイプ疲労特性などに優れたパイプを成形する事が可能であるとしているが、このような組成物では分子量等が高くなることにより、疲労特性などのパイプ特性は確かに高くなるが、成形加工性の面では逆に悪くなり、特に継ぎ手を成形する射出成形などで悪くなる傾向にある組成物を意味している。
【0007】
また、工業薬品容器として使用される場合には、一般に、分子量分布を広くすることにより耐環境応力亀裂性を高めた、すなわち長期特性に優れたポリエチレンが使用されている。しかし、近年、環境問題への対応から省資源化の動きが強まり、中空成型体などの成型体の厚みを薄くする薄肉化への要求が高まっており、衝撃強度の高い、すなわち剛性の高いポリエチレンが望まれている。一方、市場では高い生産性も追及されており、成型加工性に優れたポリエチレンが望まれている。しかしながら、耐環境応力亀裂性と衝撃強度とを両立させ、なおかつ高い成型加工性を両立させることは困難であった。
【0008】
【特許文献1】特開平8−301933号公報
【特許文献2】特開平8−134285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであり、多段重合において活性が高く、耐衝撃性、長期特性および成型加工性に優れたポリオレフィンの製造方法およびこれらの特性に優れた配管材料用ポリオレフィン樹脂組成物および中空成形用ポリオレフィン樹脂組成物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、従来技術の欠点を改良するため鋭意研究を重ねた結果、特定の触媒を用いることにより、多段重合において活性が高く、衝撃強度、長期特性および成型加工性に優れたポリオレフィンを製造できることを見出し、本発明を成すに至った。
すなわち、本発明は以下に記載するとおりのポリオレフィンの製造方法及びポリオレフィン樹脂組成物である。
【0011】
1) α−オレフィンを多段重合してポリオレフィンを製造する方法において、該多段重合が少なくとも低分子量成分と高分子量成分とを製造する重合であり、この重合に使用される触媒が固体触媒[A]と有機金属化合物[B]からなり、固体触媒[A]が、下記一般式(1)で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物(a−1)と下記一般式(2)で表される塩素化剤(a−2)との反応により調製された担体(A−1)に、アルコール(A−2)を反応させ、次に下記一般式(3)で表される有機金属化合物(A−3)を反応させ、次に下記一般式(4)で表されるチタン化合物(A−4)を下記一般式(3)で表される有機金属化合物(A−5)と反応させて担持することにより調製されたものであり、有機金属化合物[B]が下記一般式(5)で示される有機アルミニウム化合物および下記一般式(6)で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物からなる群に属することを特徴とする、ポリオレフィンの製造方法。
(Mα(Mg)β(R(R(OR ・・・・・(1)
(式中、Mは周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属するマグネシウム以外の金属原子であり、R、RおよびRはそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、α、β、a、bおよびcは次の関係を満たす実数である。0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0<c、0<a+b、0<c/(α+β)≦2、kα+2β=a+b+c(ただし、kはMの原子価))
SiCl(4−(d+e)) ・・・・・(2)
(式中、Rは炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、dとeは次の関係を満たす数である。1≦d、1≦e、2≦d+e≦4)
(h−f) ・・・・・(3)
(式中Mは周期律表第I〜III族に属する金属原子、Rは炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、QはOR、OSiR、NR1011、SR12およびハロゲンからなる群に属する基を表し、R、R、R、R、R10、R11、R12は水素原子または炭化水素基であり、fは0より大きな実数であり、hはMの原子価である)
Ti(OR13(4−i)・・・・・(4)
(式中、iは0以上4以下の実数であり、R13は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
14(3−j)AlQ’ ・・・・・(5)
(式中、R14は炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、Q’は水素原子、ハロゲン原子、およびOR15からなる群に属する基であり、R15は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、jは0以上2以下の実数である)
(Mγ(Mg)δ(R15(R16 ・・・・・(6)
(式中、Mは周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属するマグネシウム以外の金属原子であり、R15およびR16はそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、γ、δ、mおよびnは次の関係を満たす実数である。0≦γ、0<δ、0≦m、0≦n、pγ+2δ=m+n(ただし、pはMの原子価))
2) アルコール(A−2)の担体(A−1)に含まれるマグネシウム原子に対するモル比が0.2以上0.5以下であり、有機金属化合物(A−3)のアルコール(A−2)に対するモル比が0.5以上2.5以下であることを特徴とする、上記1)に記載のポリオレフィンの製造方法。
3) 上記1)または2)に記載の製造方法により製造された、ポリオレフィン樹脂組成物。
4) 上記1)または2)に記載の製造方法により製造された、配管材料用ポリオレフィン樹脂組成物。
5) 上記1)または2)に記載の製造方法により製造された、中空成形体用ポリオレフィン樹脂組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、多段重合において活性が高く、耐衝撃性、長期特性および成型加工性に優れたポリオレフィンの製造方法およびこれらの特性に優れた配管材料用ポリオレフィン樹脂組成物および中空成形用ポリオレフィン樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明で使用されるα−オレフィンについて説明する。本発明で使用されるα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル−1.4,5.8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン及びシクロヘキサジエン等が挙げられる。なお、これらのα−オレフィンは二種類以上を併用することも可能である。
【0014】
次に、本発明における多段重合法について説明する。本発明における多段重合法とは、例えば特公昭35−15246号公報、特公昭46−11349号公報、特公昭48−42716号公報、特開昭51−47079号公報、特開昭52−19788号公報、特許2505752号公報等で報告されている公知技術であり、複数の重合器が通常は直列に連結された多段重合装置によりα−オレフィンを単独重合または共重合する方法である。
【0015】
次に、本発明における低分子量成分について説明する。本発明においては、低分子量成分の分子量については特に制限はないが、重量平均分子量(Mw)が5000以上10万以下であることが好ましく、Mwが1万以上7万以下であることがさらに好ましい。Mwが5000以上である場合には、低分子量成分がポリオレフィンの物性向上に寄与するため物性、特に衝撃強度が向上し、Mwが10万以下である場合には低分子量成分が成型加工性向上に寄与するために成型加工性が向上する。なお、本発明では、Mwはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0016】
該低分子量成分の密度については特に制限は無いが、950kg/m以上985kg/m以下であることが好ましく、960kg/m以上980kg/m以下であることがさらに好ましい。なお、本発明においては、密度はJIS K7112:1999に従って測定した。該低分子量成分の分子量分布については特に制限は無いが、GPCにより測定したMwと数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3以上20以下であることが好ましく、4以上13以下であることがさらに好ましい。
【0017】
次に、本発明における高分子量成分について説明する。本発明においては、高分子量成分の分子量には特に制限は無いが、Mwが20万以上200万以下であることが好ましく、Mwは30万以上150万以下であることがさらに好ましい。Mwが20万以上の場合には長期特性に優れ、Mwが200万以下の場合には成型加工性が優れる。該高分子量成分の密度については特に制限は無いが、890kg/m以上970kg/m以下であることが好ましく、895kg/m以上960kg/m以下であることがさらに好ましい。
【0018】
次に、本発明における重合器内の水素濃度について説明する。本発明においては、低分子量成分製造時の重合器内の水素濃度は40モル%以上90モル%以下であり、45モル%以上80モル%以下であることが好ましい。40モル%以上であれば成型加工性に優れたポリオレフィンの製造が可能であり、十分に分子量を制御することが可能であり、90モル%以下であれば衝撃強度の改善が期待できる。なお、本発明における重合器内の水素濃度とは、重合器内の気相部分をガスクロマトグラフィーを用いて分析することにより得られた水素濃度(単位はモル/リットル)とα−オレフィン濃度(単位はモル/リットル)とを用いて、下記の数式に従って算出された値のことであり、単位はモル%である。なお、濃度は気相濃度を示す。
【0019】
【数1】

【0020】
オレフィン重合においては、一般に分子量は重合器内の水素濃度(モル%)で制御されており、重合器内の水素濃度(モル%)が高いほうが、生成するポリオレフィンの分子量が低下する。従って、上述の多段重合法により低分子量成分を製造するためには、重合器内の水素濃度を高める必要がある。
【0021】
次に、本発明における固体触媒[A]について説明する。
本発明においては、固体触媒[A]は、下記一般式(1)で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物(a−1)と下記一般式(2)で表される塩素化剤(a−2)との反応により調製された担体(A−1)に、アルコール(A−2)を反応させ、次に下記一般式(3)で表される有機金属化合物(A−3)を反応させ、次に下記一般式(4)で表されるチタン化合物(A−4)を担持することにより調製される。
【0022】
(Mα(Mg)β(R(R(OR・・・・・(1)
(式中、Mは周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属するマグネシウム以外の金属原子であり、R、RおよびRはそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、α、β、a、bおよびcは次の関係を満たす実数である。0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0<c、0<a+b、0<c/(α+β)≦2、kα+2β=a+b+c(ただし、kはMの原子価))
SiCl(4−(d+e))・・・・・(2)
(式中、Rは炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、dとeは次の関係を満たす数である。1≦d、1≦e、2≦d+e≦4)
(h−f) ・・・・・(3)
(式中Mは周期律表第I〜III族に属する金属原子、Rは炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、QはOR、OSiR、NR1011、SR12およびハロゲンからなる群に属する基を表し、R、R、R、R、R10、R11、R12は水素原子または炭化水素基であり、fは0より大きな実数であり、hはMの原子価である)
Ti(OR13(4−i)・・・・・(4)
(式中、iは0以上4以下の実数であり、R13は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
【0023】
次に、本発明における不活性炭化水素溶媒について説明する。本発明における不活性炭化水素溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素化合物ないしシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素化合物のことであり、脂肪族炭化水素であることが好ましい。
【0024】
次に、本発明における上記一般式(1)で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物について説明する。この有機マグネシウム化合物は、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、ジヒドロカルビルマグネシウム化合物およびこの化合物と他の金属化合物との錯体のすべてを包含するものである。記号α、β、a、b、cの関係式kα+2β=a+b+cは金属原子の原子価と置換基との化学量論性を示している。
【0025】
上記一般式(1)において、RないしRで表される炭化水素基は、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、プロピル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられ、好ましくはRないしRはアルキル基である。α>0の場合、金属原子Mとしては、周期律表第I族ないし第III族に属する金属元素が使用でき、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウム等が挙げられるが、アルミニウム、ホウ素、ベリリウム、亜鉛が特に好ましい。
【0026】
金属原子Mに対するマグネシウムの比β/αは、任意に設定可能であるが、好ましくは0.1〜30、特に0.5〜10の範囲が好ましい。また、α=0である或る種の有機マグネシウム化合物を用いる場合、例えば、Rが1−メチルプロピル等の場合には不活性炭化水素溶媒に可溶であり、このような化合物も本発明に好ましい結果を与える。
一般式(Mα(Mg)β(R(R(ORにおいて、α=0の場合のR、Rは次に示す三つの群(1)、(2)、(3)のいずれか一つであることが推奨される。
【0027】
(1)R、Rの少なくとも一方が炭素原子数4〜6である二級または三級のアルキル基であること、好ましくはR、Rがともに炭素原子数4〜6であり、少なくとも一方が二級または三級のアルキル基であること。
(2)RとRとが炭素原子数の互いに相異なるアルキル基であること、好ましくはRが炭素原子数2または3のアルキル基であり、Rが炭素原子数4以上のアルキル基であること。
(3)R、Rの少なくとも一方が炭素原子数6以上の炭化水素基であること、好ましくはR、Rに含まれる炭素原子数を加算すると12以上になるアルキル基であること。
【0028】
以下これらの基を具体的に示す。
(1)において炭素原子数4〜6である二級または三級のアルキル基としては、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、2−メチルブチル、2−エチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2−メチル−2−エチルプロピル基等が用いられ、1−メチルプロピル基が特に好ましい。次に(2)において炭素原子数2または3のアルキル基としてはエチル、1−メチルエチル、プロピル基等が挙げられ、エチル基が特に好ましい。また炭素原子数4以上のアルキル基としては、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル基等が挙げられ、ブチル、ヘキシル基が特に好ましい。
【0029】
さらに、(3)において炭素原子数6以上の炭化水素基としては、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、フェニル、2−ナフチル基等が挙げられる。炭化水素基の中ではアルキル基が好ましく、アルキル基の中でもヘキシル、オクチル基が特に好ましい。一般に、アルキル基に含まれる炭素原子数が増えると不活性炭化水素溶媒に溶けやすくなるが、溶液の粘度が高くなるために必要以上に長鎖のアルキル基を用いることは取り扱い上好ましくない。なお、上記有機マグネシウム化合物は不活性炭化水素溶液として使用されるが、該溶液中に微量のエーテル、エステル、アミン等のルイス塩基性化合物が含有され、あるいは残存していても差し支えなく使用できる。
【0030】
次にアルコキシ基(OR)について説明する。Rで表される炭化水素基としては、炭素原子数1以上12以下のアルキル基またはアリール基が好ましく、3以上10以下のアルキル基またはアリール基が特に好ましい。具体的には、たとえば、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、ヘキシル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−エチル−4−メチルペンチル、2−プロピルヘプチル、2−エチル−5−メチルオクチル、オクチル、ノニル、デシル、フェニル、ナフチル基等が挙げられ、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルペンチルおよび2−エチルヘキシル基が特に好ましい。
【0031】
これらの有機マグネシウム化合物は、一般式RMgXおよびRMg(Rは前述の意味であり、Xはハロゲンである)からなる群に属する有機マグネシウム化合物と、一般式MおよびM(k−1)H(M、R、kは前述の意味である)からなる群に属する有機金属化合物とを不活性炭化水素溶媒中、室温〜150℃の間で反応させ、必要な場合には続いてRで表される炭化水素基を有するアルコールまたは不活性炭化水素溶媒に可溶な上記Rで表される炭化水素基を有するアルコキシマグネシウム化合物、等と反応させる方法により合成される。
【0032】
このうち、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物とアルコールとを反応させる場合、反応の順序については、有機マグネシウム化合物中にアルコールを加えていく方法、アルコール中に有機マグネシウム化合物を加えていく方法、または両者を同時に加えていく方法のいずれの方法も用いることができる。本発明において不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物とアルコールとの反応比率については特に制限はないが、反応の結果、得られるアルコキシ基含有有機マグネシウム化合物における、全金属原子に対するアルコキシ基のモル組成比c/(α+β)の範囲は0≦c/(α+β)≦2であり、0≦c/(α+β)<1が特に好ましい。
【0033】
次に、本発明における塩素化剤について説明する。本発明において、(A−1)を合成する際に使用される塩素化剤が下記の一般式(2)で示される、少なくとも一つはSi−H結合を有する塩化珪素化合物である。
SiCl(4−(d+e)) ・・・・・(2)
(式中、Rは炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、dとeは次の関係を満たす数である。1≦d、1≦e、2≦d+e≦4)
上記の一般式(2)において、Rで表される炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基であり、たとえば、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられ、炭素数1以上10以下のアルキル基が好ましく、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル基等の炭素数1〜3のアルキル基が特に好ましい。また、dおよびeは2≦d+e≦4の関係を満たす1以上の実数であり、eが2以上であることが特に好ましい。
【0034】
これらの化合物としては、HSiCl、HSiClCH、HSiCl、HSiCl、HSiCl(1−CH)、HSiCl、HSiCl、HSiCl(4−Cl−C)、HSiClCH=CH、HSiClCH、HSiCl(1−C10)、HSiClCHCH=CH、HSiClCH、HSiClC、HSiCl(CH、HSiCl(C、HSiClCH(1−CH)、HSiClCH(C)、HSiCl(C等が挙げられ、これらの化合物またはこれらの化合物から選ばれた二種類以上の混合物からなる塩化珪素化合物が使用される。塩化珪素化合物としては、トリクロロシラン、モノメチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、エチルジクロロシランが好ましく、トリクロロシラン、モノメチルジクロロシランが特に好ましい。
【0035】
次に、本発明における有機マグネシウム化合物と塩素化剤との反応について説明する。本発明においては、有機マグネシウム化合物と塩素化剤との反応に際しては塩素化剤を予め反応溶媒体、たとえば、不活性炭化水素溶媒、1,2−ジクロルエタン、o−ジクロルベンゼン、ジクロルメタン等の塩素化炭化水素、もしくはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系媒体、あるいはこれらの混合媒体を用いて希釈した後利用することが好ましい。特に、触媒の性能上、不活性炭化水素溶媒が好ましい。本発明においては、反応の温度については特に制限はないが、反応の進行上、好ましくは塩素化剤として使用する塩化珪素化合物の沸点以上もしくは40℃以上で実施される。有機マグネシウム化合物と塩化珪素化合物との反応比率にも特に制限はないが、通常有機マグネシウム化合物1モルに対し、塩化珪素化合物0.01〜100モルであり、好ましくは有機マグネシウム化合物1モルに対し、塩化珪素化合物0.1〜10モルの範囲である。
【0036】
本発明における反応方法については、有機マグネシウム化合物と塩化珪素化合物とを同時に反応器に導入しつつ反応させる同時添加の方法、塩化珪素化合物を事前に反応器に仕込んだ後に有機マグネシウム化合物を反応器に導入させる方法、もしくは有機マグネシウム化合物を事前に反応器に仕込んだ後に塩化珪素化合物を反応器に導入させる方法等があるが、塩化珪素化合物を事前に反応器に仕込んだ後に有機マグネシウム化合物を反応器に導入させる方法が好ましい。上記反応により得られる固体成分はろ過あるいはデカンテーション法により分離した後、不活性炭化水素溶媒を用いて充分に洗浄し、未反応物あるいは副生成物等を除去することが好ましい。
【0037】
本発明においては、有機マグネシウム化合物と塩化珪素化合物との反応を固体の存在下に行うこともできる。この固体は無機固体、有機固体のいずれでもよいが、無機固体を用いるほうが好ましい。無機固体として、下記のものが挙げられる。
(i)無機酸化物
(ii)無機炭酸塩、珪酸塩、硫酸塩
(iii)無機水酸化物
(iv)無機ハロゲン化物
(v)(i)〜(iv)なる複塩、固溶体ないし混合物
【0038】
無機固体の具体例としては、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、水和アルミナ、マグネシア、トリア、チタニア、ジルコニア、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、珪酸マグネシウム、マグネシウム・カルシウム、アルミニウムシリケート[(Mg・Ca)O・Al・5SiO・nHO]、珪酸カリウム・アルミニウム[KO・3Al・6SiO・2HO]、珪酸マグネシウム鉄[(Mg・Fe)SiO]、珪酸アルミニウム[Al・SiO]、炭酸カルシウム、塩化マグネシウム、よう化マグネシウム等が挙げられるが、特に好ましくは、シリカ、シリカ・アルミナないし塩化マグネシウムが好ましい。無機固体の比表面積は、好ましくは20m/g以上特に好ましくは90m/g以上である。
【0039】
次に、本発明におけるアルコール(A−2)について説明する。本発明においては、アルコール(A−2)として、炭素数1以上20以下の飽和又は不飽和のアルコールが好ましい。このようなアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、フェノール、クレゾール等が挙げられ、炭素数3〜8の直鎖アルコールが特に好ましい。これらのアルコールを混合して使用することも可能である。
【0040】
本発明においては、アルコール(A−2)の使用量には特に制限はないが、担体(A−1)中に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0.05より大きく10以下であることが好ましく、0.1以上1以下がさらに好ましく、0.2以上0.5以下がさらに好ましい。アルコール(A−2)の使用量が、担体(A−1)中に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0.05より大きい場合には、触媒担体に含まれるSiを含む成分を効率的に除去することができるために触媒特性が向上するために好ましい。また、アルコール(A−2)の使用量が、担体(A−1)中に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で10以下である場合には、過剰なアルコールが触媒に残存することにより触媒特性を低下させる現象を抑制できるために好ましい。さらには、アルコール(A−2)の使用量が、担体(A−1)中に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0.2以上0.5以下である場合には、触媒特性を向上させるために必要なアルコールが適当量触媒に残存するために好ましい。担体(A−1)とアルコール(A−2)との反応は、不活性炭化水素溶媒の存在下または非存在下において行うことができる。反応時の温度には特に制限はないが、25℃以上200℃以下の範囲で実施されることが好ましい。
【0041】
次に、本発明における有機金属化合物(A−3)について説明する。本発明においては、この有機金属化合物(A−3)は下記の一般式(3)で表される。
(h−f) ・・・・・(3)
(式中Mは周期律表第I〜III族に属する金属原子、Rは炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、QはOR、OSiR、NR1011、SR12およびハロゲンからなる群に属する基を表し、R、R、R、R、R10、R11、R12は水素原子または炭化水素基であり、fは0より大きな実数であり、hはMの原子価である)
【0042】
本発明においては、Mは周期律表第I〜III族に属する金属原子であり、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、マグネシウム、ホウ素、アルミニウム等が挙げられるが、マグネシウム、ホウ素、アルミニウムが特に好ましい。Rで表される炭化水素基はアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基である。
QはOR、OSiR、NR1011、SR12およびハロゲンからなる群に属する基を表し、R、R、R、R、R10、R11、R12は水素原子または炭化水素基であり、Qがハロゲンであることが特に好ましい。
【0043】
本発明における有機金属化合物(A−3)の例としては、メチルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムアイオダイド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムアイオダイド、ブチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムアイオダイド、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、トリエチルホウ素、トリメチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムメトキシド、メチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリ(2−メチルプロピル)アルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等が挙げられ、有機アルミニウム化合物が特に好ましい。
これらの化合物を混合して使用することも可能である。
【0044】
本発明においては、有機金属化合物(A−3)の使用量には特に制限はないが、アルコール(A−2)に対するモル比で、0.01以上20以下であることが好ましく、0.1以上10以下であることがさらに好ましく、0.5以上2.5以下であることがさらに好ましい。有機金属化合物(A−3)の使用量が、アルコール(A−2)に対するモル比で0.01以上であれば、過剰なアルコールを効率的に除去することが可能であり、また、有機金属化合物(A−3)の使用量が、アルコール(A−2)に対するモル比で20以下であれば、有機金属化合物(A−3)が触媒製造工程における有機金属化合物(A−3)反応の後の工程に悪影響をおよぼさない。さらには、有機金属化合物(A−3)の使用量が、アルコール(A−2)に対するモル比で0.5以上2.5以下であれば、触媒特性を改善するために必要なアルコールを触媒に残すことが可能である。また、本発明においては、担体(A−1)に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0.01以上20以下であることが好ましく、0.1以上10以下であることがさらに好ましい。反応の温度については特に制限はないが、25℃以上200℃以下であり、かつ反応媒体の沸点未満の範囲が好ましい。
【0045】
次に、本発明におけるチタン化合物(A−4)について説明する。本発明においては、チタン化合物(A−4)として下記の一般式(4)で表されるチタン化合物が使用される。
Ti(OR13(4−i)・・・・・(4)
(式中、iは0以上4以下の実数であり、R13は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
13で表される炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、アリル基等の脂肪族炭化水素基、シクロヘキシル、2−メチルシクロヘキシル、シクロペンチル基等の脂環式炭化水素基、フェニル、ナフチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられるが、脂肪族炭化水素基が好ましい。Xで表されるハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられるが、塩素が好ましい。具体的には、四塩化チタンが好ましい。上記から選ばれたチタン化合物(A−4)を、2種以上混合して使用することが可能である。
【0046】
本発明においては、チタン化合物(A−4)の使用量には特に制限はないが、担体(A−1)に対する担持量については、担体(A−1)に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0.01以上20以下が好ましく、0.05以上10以下が特に好ましい。チタン化合物(A−4)の担体(A−1)に対する担持量は、少なすぎれば触媒あたりの重合活性が低く、多すぎればチタンあたりの重合活性が低くなる傾向にある。チタン化合物(A−4)の担体(A−1)に対する担持量が、担体(A−1)に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0.01以上であれば、触媒あたりの重合活性が充分に高く、20以下であればチタンあたりの重合活性が充分に高い。本発明においては、担持の際の反応温度については特に制限はないが、25℃以上150℃以下の範囲で行うことが好ましい。
【0047】
本発明においては、チタン化合物(A−4)を担持する際、チタン化合物(A−4)と有機金属化合物(A−5)とを反応させることにより担持する。この有機金属化合物(A−5)は前述の一般式(3)で表される化合物であり、前述の有機金属化合物(A−3)と同一であっても良く、異なっていても良い。
【0048】
(A−4)と(A−5)との反応の順序には特に制限は無く、(A−4)に続いて(A−5)を加える、(A−5)に続いて(A−4)を加える、(A−4)と(A−5)とを同時に添加するのいずれの方法も可能であり、(A−4)に続いて(A−5)を加えることが好ましい。(A−4)に対する(A−5)のモル比は、好ましくは0.1〜10、特に好ましくは0.5〜5である。(A−2)と(A−5)との反応は不活性炭化水素溶媒中で行われるが、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒を用いることが好ましい。反応の温度については特に制限はないが、25℃以上200℃以下であり、かつ反応媒体の沸点未満の範囲が好ましい。
【0049】
次に、本発明における有機金属化合物[B]について説明する。有機金属化合物[B]が下記一般式(5)で示される有機アルミニウム化合物および下記一般式(6)で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物からなる群に属する。本発明における有機アルミニウム化合物は下記の一般式(5)で表される。
14(3−j)AlQ’・・・・・(5)
(式中、R14は炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、Q’は水素原子、ハロゲン原子、およびOR15からなる群に属する基であり、R15は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、jは0以上2以下の実数である)
14の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−メチルプロピル基、ペンチル基、3−メチルブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、トリル基等が挙げられ、中でもエチル基、2−メチルプロピル基が特に好ましい。これらの炭化水素基は二種類以上含まれていても良い。jは0.05以上1.5以下であることが好ましく、0.1以上1.2以下であることが特に好ましい。
【0050】
次に、本発明における有機マグネシウム化合物は下記の一般式(6)で表される。
(Mγ(Mg)δ(R15(R16・・・・・(6)
(式中、Mは周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属するマグネシウム以外の金属原子であり、R15およびR16はそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、γ、δ、mおよびnは次の関係を満たす実数である。0≦γ、0<δ、0≦m、0≦n、pγ+2δ=m+n(ただし、pはMの原子価))
この有機マグネシウム化合物は、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、ジヒドロカルビルマグネシウム化合物およびこの化合物と他の金属化合物との錯体のすべてを包含するものである。記号γ、δ、m、nの関係pγ+2δ=m+nは金属原子の原子価と置換基との化学量論性を示している。
【0051】
上記一般式(6)において、R15およびR16で表される炭化水素基は、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、プロピル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられ、好ましくはR15およびR16はアルキル基である。γ>0の場合、金属原子Mとしては、周期律表第I族ないし第III族に属する金属元素が使用でき、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウム等が挙げられるが、アルミニウム、ホウ素、ベリリウム、亜鉛が特に好ましい。
【0052】
本発明においては、金属原子Mに対するマグネシウムの比δ/γには特に制限はないが、0.1以上30以下であることが好ましく、0.5以上10以下であることがさらに好ましい。また、γ=0である有機マグネシウム化合物を用いる場合、例えば、R15が1−メチルプロピル等の場合には不活性炭化水素溶媒に可溶であり、このような化合物も本発明に好ましい結果を与える。上記一般式(6)において、γ=0の場合のR15、R16は次に示す三つの群(1)、(2)、(3)のいずれか一つであることが推奨される。
【0053】
(1)R15、R16の少なくとも一方が炭素原子数4以上6以下である二級または三級のアルキル基であること、好ましくはR15、R16がともに炭素原子数4以上6以下であり、少なくとも一方が二級または三級のアルキル基であること。
(2)R15とR16とが炭素原子数の互いに相異なるアルキル基であること、好ましくはR15が炭素原子数2または3のアルキル基であり、R16が炭素原子数4以上のアルキル基であること。
(3)R15、R16の少なくとも一方が炭素原子数6以上の炭化水素基であること、好ましくはR15、R16に含まれる炭素原子数を加算すると12以上になるアルキル基であること。
【0054】
以下これらの基を具体的に示す。(1)において炭素原子数4以上6以下である二級または三級のアルキル基としては、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、2−メチルブチル、2−エチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2−メチル−2−エチルプロピル基等が用いられ、1−メチルプロピル基が特に好ましい。
次に、(2)において炭素原子数2または3のアルキル基としてはエチル、1−メチルエチル、プロピル基等が挙げられ、エチル基が特に好ましい。また炭素原子数4以上のアルキル基としては、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル基等が挙げられ、ブチル、ヘキシル基が特に好ましい。
さらに、(3)において炭素原子数6以上の炭化水素基としては、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、フェニル、2−ナフチル基等が挙げられる。炭化水素基の中ではアルキル基が好ましく、アルキル基の中でもヘキシル、オクチル基が特に好ましい。一般に、アルキル基に含まれる炭素原子数が増えると不活性炭化水素溶媒に溶けやすくなるが、溶液の粘度が高くなるために必要以上に長鎖のアルキル基を用いることは取り扱い上好ましくない。なお、上記有機マグネシウム化合物は不活性炭化水素溶液として使用されるが、該溶液中に微量のエーテル、エステル、アミン等のルイス塩基性化合物が含有され、あるいは残存していても差し支えなく使用できる。
【0055】
これらの有機マグネシウム化合物は、一般式R15MgXおよびR15Mg(R15は前述の意味であり、Xはハロゲンである)からなる群に属する有機マグネシウム化合物と、一般式M16およびM16(p−1)H(M、R16、pは前述の意味である)からなる群に属する有機金属化合物とを不活性炭化水素溶媒中、25℃以上150℃以下の間で反応させる方法により合成される。
【0056】
本発明において、ポリオレフィンの製造方法に特に制限はなく、一般に用いられている溶液法、高圧法、高圧バルク法、ガス法、スラリー法のいずれの製造方法にも適用できる。
例えば、重合圧力はゲージ圧として0.1MPa以上200MPa以下であり、重合温度は25℃以上250℃以下であり、溶媒としてプロパン、ブタン、イソブタン、ヘキサン、シクロヘキサン等を用いるものも含まれる。
【0057】
本発明においては、前述の触媒を用いて下記のポリオレフィンを製造することが好ましい。
・製造された低分子量成分のMFR2.16が100〜400g/10分以下であり、
・低分子量成分の密度(JIS K7112−1999)が967〜977kg/mであり、
・多段重合により製造されたポリオレフィンのMFR5が0.25〜0.50g/10分であり、
・密度(JIS K7112−1999)が943〜957kg/mであり、
・Mw/Mnが25〜40であり、
・該低分子量成分量と該高分子量成分量との和に対する該高分子成分量(B)の質量割合が0.43〜0.48、
であるポリオレフィン。
【0058】
低分子量成分のMFR2.16が100g/10分以上であれば成型加工性に優れ、300以下であれば良好な耐衝撃性を示す。また、低分子量成分の密度が967kg/m以上であれば、長期特性の指標のひとつである引張りクリープ性が良好であり、977kg/mはポリオレフィンの高密度化の限界である。多段重合により製造されたポリオレフィンのMFR5が0.25g/10分以上であれば成型加工性に優れており、0.50g/10分以下であれば、長期特性の指標である熱管内圧クリープ性および高い耐疲労性が良好である。多段重合により製造されたポリオレフィンの密度が943kg/m以上であれば、長期特性の指標のひとつである高応力化での熱管内圧クリープ性が良好であり、957kg/m以下であれば、長期特性の指標のひとつである低応力化での熱管内圧クリープ性が良好である。多段重合により製造されたポリオレフィンのMw/Mnが25以上であれば成型加工性に優れ、40以下であれば、長期特性の指標のひとつである耐引張疲労特性が良好である。該低分子量成分量と該高分子量成分量との和に対する該高分子成分量(B)の質量割合が0.43以上であれば、長期特性の指標のひとつである耐引張疲労特性が良好であり、0.48以下であれば、長期特性の指標のひとつである熱管内圧クリープ性が良好である。
【0059】
本発明のポリオレフィンの製造方法の概略を説明するフローシート図を図1として示す。
本発明により得られたポリオレフィンは、剛性が高く、長期特性に優れ、さらには成型加工性に優れるため、水道パイプに好適に使用される。
次に、実施例および参考例などに基づき、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0060】
まず、実施例において用いた測定方法について述べる。
[重合活性の測定]
実施例における重合活性は、重合器への触媒の導入量・ポリマーの生成量・平均滞留時間および重合器内の圧力から算出されたものであり、固体触媒成分1g、平均滞留時間1時間、重合器内の圧力1MPa当たりのポリマー生成量(g)を表す。
[MFRの測定]
MFR2.16はJIS K7210−1999、コードDに準拠して測定を行った。MFR5はJIS K7210−1999、コードTに準拠して測定を行った。
【0061】
[分子量分布(Mw/Mn)の測定]
測定に使用した装置はWaters社製150−C ALC/GPCであった。使用したカラムは、1本の昭和電工社製Shodex AT−807Sと2本の東ソー社製TSK−gelGMH−H6であり、まず1本のShodex AT−807Sを通り、次に2本のTSK−gelGMH−H6を通るように直列に接続して使用した。移動相溶媒として、10質量ppmのペンタエリスリチル テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を含む1,2,4−トリクロロベンゼンを使用した。測定温度は140℃であった。移動相溶媒の流速は1.0ml/分であった。測定試料は、20mgのポリマーを0.1質量%の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを含む1,2,4−トリクロロベンゼン20mlに溶解させることにより調製した。検出器はパーキンエルマー社製FT−IR 1760Xであった。数平均分子量(Mn)は、標準物質として東ソー社製の単分散のポリスチレンを用いて作成した検量線を用いて、ポリスチレン換算の数平均分子量に0.43(ポリエチレンのQファクター/ポリスチレンのQファクター=17.7/41.3)を乗ずることにより算出した。重量平均分子量(Mw)は、標準物質として東ソー社製の単分散のポリスチレンを用いて作成した検量線を用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量に0.43(ポリエチレンのQファクター/ポリスチレンのQファクター=17.7/41.3)を乗ずることにより算出した。分子量分布の尺度であるMw/Mnの値は、上記方法により算出されたMwの値をMnの値で除することにより算出した。
【0062】
[密度の測定]
ポリオレフィンの密度はJIS K7112−1999に準拠し、密度勾配管法(23℃)で測定した。
[試験片の作成]
シャルピー衝撃強度の測定およびESCRの測定に使用する試験片は、JIS K6922−2−1997に準拠して行った。
[シャルピー衝撃強度の測定]
耐衝撃性の尺度として、シャルピー衝撃強度を測定した。測定は、JIS K7111−1996に準拠して行った。
[b−ESCRの測定]
長期特性の尺度として、b−ESCRを測定した。測定は、JIS K6922−2付属書に準拠して行った。試験液として、ライオン(株)社製リポノックスNC−140(登録商標)の10重量%水溶液を使用した。
【0063】
[参考例1]
固体触媒[A−1]の調製
(1)担体{(A−1)−1}の合成
充分に窒素置換された8lステンレス製オートクレーブに1モル/lのトリクロロシランヘキサン溶液1460mlを仕込み、50℃で攪拌しながら組成式AlMg(C11(OCで表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液1864ml(マグネシウム1336ミリモル相当)を4hかけて滴下し、さらに50℃で1h攪拌しながら反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、1800mlのヘキサンで4回洗浄した。この担体を分析した結果、担体1g当たりに含まれるマグネシウムが8.72ミリモルであった。
【0064】
(2)固体触媒[A−1]の調製
上記担体160gを含有するヘキサンスラリー3500mlに50℃で攪拌しながら1モル/lの2−ブタノールヘキサン溶液140mlを20分かけて添加した。担体{(A−1)−1}に含まれるマグネシウム原子に対する2−ブタノールのモル比は0.10であった。添加後、50℃で1時間反応を継続した。反応終了後、上澄み液1800mlを除去し、ヘキサンを1128ml添加し、温度を65℃にして1モル/lのジエチルアルミニウムクロリドヘキサン溶液700mlを1時間30分かけて添加した。担体{(A−1)−1}に含まれるマグネシウム原子に対するジエチルアルミニウムクロリドのモル比は0.50であり、2−ブタノールに対するジエチルアルミニウムクロリドのモル比は5.0であった。添加後、65℃で1時間反応を継続した。反応終了後、上澄み液1800mlを除去し、ヘキサン1800mlで4回洗浄した。洗浄後のスラリーの上澄み168mlを除去し、50℃で攪拌しながら1モル/lのジエチルアルミニウムクロリドヘキサン溶液86mlを5分かけて添加し、引き続き1モル/lの四塩化チタンヘキサン溶液86mlを5分かけて添加した。添加後、50℃で2時間反応を継続した。反応終了後、1800mlの上澄み液を除去し、1800mlのヘキサンで4回洗浄することにより、固体触媒成分[C]を調製した。この固体触媒成分1g中に含まれるチタン量は0.52ミリモルであった。
【0065】
[参考例2]
固体触媒[A−2]の調製
担体として、前記の担体{(A−1)−1}を使用した。使用した2−ブタノールヘキサン溶液を350mlとし、2−ブタノールヘキサン溶液の直後に使用するジエチルアルミニウムクロリド溶液を490mlにした以外は参考例1と同様に触媒を調製した。担体{(A−1)−1}に含まれるマグネシウム原子に対する2−ブタノールのモル比は0.25であった。また、担体{(A−1)−1}に含まれるマグネシウム原子に対するジエチルアルミニウムクロリドのモル比は0.35であり、2−ブタノールに対するジエチルアルミニウムクロリドのモル比は1.4であった。この固体触媒成分1g中に含まれるチタン量は0.50ミリモルであった。
【0066】
[参考例3]
固体触媒[A−3]の調製
充分に窒素置換された8lステンレス製オートクレーブ中で、0.64モル/lのブチルエチルマグネシウムのヘキサン溶液3910mlと1.0モル/lのトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液830mlとを混合した。この溶液を3倍に濃縮し、マグネシウム原子とアルミニウム原子との和に換算して1.0モル/lになるように溶液の濃度を調節した。
30ミリモルのマグネシウム原子を含む上記溶液400mlに1−ブタノール82mlをヘキサン82mlと共に、反応温度を35℃に調節しながら添加し、添加終了後に50℃で1時間熟成した。さらに、1モル/lのテトラ−n−ブトキシチタン30mlを滴下した。この反応により得られた溶液は均一で無色透明であり、溶液中のマグネシウム濃度は0.5モル/lであった。
上記反応により得られたチタン含有マグネシウム溶液に1.7モル/lのエチルアルミニウムジクロリド710mlを、反応温度を25℃に調節しながら添加し、添加後50℃で2時間熟成することにより、褐色のスラリーを得た。得られたスラリーをデカンテーションにより液相のアルミニウム成分を1/64になるまでヘキサンで洗浄した。この固体触媒成分1g中に含まれるチタン量は0.71ミリモルであった。
【0067】
[実施例1]
(1)重合
最初に、1段目の重合では低分子量成分を製造するために、反応容積300リットルのステンレス製重合器1を用いた。γ線を使用した液面計により測定された重合器内の溶媒の体積とポリオレフィンの体積との和は170Lであり、重合器から溶媒とポリオレフィンとが定常的に抜き取られる体積あたりの速度は51リットル/hであった。従って、一段目の平均滞留時間は3.3時間であった。重合器1から低分子量成分は10kg/hの速度で抜き取られた。重合温度83℃、重合圧力1MPaの条件で、触媒は上記の固体触媒[A−1]をTi原子換算で1.4ミリモル/h、有機金属化合物[B]としてトリイソブチルアルミニウムをAl原子換算で20ミリモル/h、またヘキサンは40リットル/hの速度で導入した。分子量調整剤としては水素を用い、エチレンおよび水素を、水素の気相濃度が78モル%になるように供給し重合を行った。また、水素の気相濃度は、ガスクロマトグラフィーを用いた気相の分析により得られた値を用いて、下記の式により算出された値である。なお、下記の式中の濃度は気相濃度を示す。
【0068】
【数2】

【0069】
重合器1における重合活性は、3100g/g/hであった。重合器1で製造された低分子量成分のMFR2.16は300g/10分、密度は976kg/mであった。
ポリマースラリー中の水素を除去するため、重合器1内のポリマースラリー溶液を51リットル/hの速度で圧力0.1MPa、温度75℃のフラッシュドラムに導き、未反応のエチレン、水素を分離した後、次段の重合器2にスラリーポンプで、ポリマースラリー溶液は51リットル/hの速度で、ヘキサンは95リットル/hの速度で、混合し昇圧して導入した。
【0070】
次に、2段目の重合では高分子量成分を製造するために、反応容積300リットルのステンレス製重合器2を用いた。ポリマースラリー溶液とヘキサンとが合わせて146リットル/hの速度で重合器2に導入された。γ線を使用した液面計により測定された重合器内の溶媒の体積とポリオレフィンの体積との和は146リットルであり、重合器から溶媒とポリオレフィンとが定常的に抜き取られる体積あたりの速度は157リットル/hであった。従って、二段目の平均滞留時間は0.93時間であった。
重合器2では、温度70℃、圧力0.5MPaの条件下で、有機金属化合物[B]としてトリイソブチルアルミニウムをAl原子換算で47ミリモル/hで導入した。これに、エチレン、水素、1−ブテンを、水素の気相濃度が3.2モル%、1−ブテンの気相濃度が12モル%になるように導入して、重合器1で生成した低分子量成分と、重合器2で生成した高分子量成分との和に対する重合器2で生成した高分子量成分の質量割合が0.45となるように高分子量成分を重合した。なお、水素の気相濃度は前記の数式(2)を用いて算出した。また、1−ブテンの気相濃度は下記の数式(3)により算出された値である。なお、下記の式中の濃度は気相濃度を示す。
重合器2から、低分子量成分および高分子量成分からなるポリオレフィン組成物は20kg/hの速度で抜き取られた。重合器2における重合活性は9300g/g/hであった。得られたスラリーを乾燥することによりポリオレフィンパウダーを得た。
【0071】
【数3】

【0072】
(2)物性測定
上記重合により得られたポリオレフィンパウダーを造粒することによりペレットを得た。このペレットを用いて物性測定を行った。その結果を表1に示す。
【0073】
[実施例2]
(1)重合
触媒として、固体触媒[A−2]を用い、1段目の重合器における水素の気相濃度を75モル%にし、2段目の重合器における水素の気相濃度を3.9モル%、1−ブテンの気相濃度を11.5モル%にした以外は、実施例1と同様に重合を行った。重合器1および重合器2における重合活性は、それぞれ3000g/g/hおよび9100g/g/hであった。
(2)物性測定
実施例1と同様の操作により物性測定を行った。その結果を表1に示す。
【0074】
[比較例3]
(1)重合
固体触媒として、固体触媒[A−3]を用い、1段目の重合器における水素の気相濃度を85モル%にし、2段目の重合器における水素の気相濃度を4.3モル%、1−ブテンの気相濃度を13.9モル%にした以外は、実施例1と同様に重合を行った。重合器1における重合活性は3400g/g/hであり、重合器2における重合活性は10200g/g/hであった。
(2)物性測定
実施例1と同様の操作により物性測定を行った。その結果を表1に示す。
【0075】
この表1より、いずれのポリオレフィンもMFR5が0.25g/10分以上であることから成型加工性は良好であり、b−ESCRも50時間以上であることから長期特性も高いレベルにあるが、比較例のポリオレフィンはシャルピー衝撃強度が10kg・cm/cmと非常に低く耐衝撃性に劣ることが確認された。
【0076】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、多段重合において活性が高く、耐衝撃性、長期特性および成型加工性に優れたポリオレフィンの製造方法を提供することができ、特にパイプに好適なポリオレフィンの製造に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明のポリオレフィンの製造方法の概略を説明するフローシート図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−オレフィンを多段重合してポリオレフィンを製造する方法において、該多段重合が少なくとも低分子量成分と高分子量成分とを製造する重合であり、この重合に使用される触媒が固体触媒[A]と有機金属化合物[B]からなり、固体触媒[A]が、下記一般式(1)で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物(a−1)と下記一般式(2)で表される塩素化剤(a−2)との反応により調製された担体(A−1)に、アルコール(A−2)を反応させ、次に下記一般式(3)で表される有機金属化合物(A−3)を反応させ、次に下記一般式(4)で表されるチタン化合物(A−4)を下記一般式(3)で表される有機金属化合物(A−5)と反応させて担持することにより調製されたものであり、有機金属化合物[B]が下記一般式(5)で示される有機アルミニウム化合物および下記一般式(6)で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物からなる群に属することを特徴とする、ポリオレフィンの製造方法。
(Mα(Mg)β(R(R(OR ・・・・・(1)
(式中、Mは周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属するマグネシウム以外の金属原子であり、R、RおよびRはそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、α、β、a、bおよびcは次の関係を満たす実数である。0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0<c、0<a+b、0<c/(α+β)≦2、kα+2β=a+b+c(ただし、kはMの原子価))
SiCl(4−(d+e)) ・・・・・(2)
(式中、Rは炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、dとeは次の関係を満たす実数である。1≦d、1≦e、2≦d+e≦4)
(h−f) ・・・・・(3)
(式中Mは周期律表第I〜III族に属する金属原子、Rは炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、QはOR、OSiR、NR1011、SR12およびハロゲンからなる群に属する基を表し、R、R、R、R、R10、R11、R12は水素原子または炭化水素基であり、fは0より大きな実数であり、hはMの原子価である)
Ti(OR13(4−i)・・・・・(4)
(式中、iは0以上4以下の実数であり、R13は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
14(3−j)AlQ’ ・・・・・(5)
(式中、R14は炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、Q’は水素原子、ハロゲン原子、およびOR15からなる群に属する基であり、R15は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、jは0以上2以下の実数である)
(Mγ(Mg)δ(R15(R16 ・・・・・(6)
(式中、Mは周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属するマグネシウム以外の金属原子であり、R15およびR16はそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、γ、δ、mおよびnは次の関係を満たす実数である。0≦γ、0<δ、0≦m、0≦n、pγ+2δ=m+n(ただし、pはMの原子価))
【請求項2】
アルコール(A−2)の担体(A−1)に含まれるマグネシウム原子に対するモル比が0.2以上0.5以下であり、有機金属化合物(A−3)のアルコール(A−2)に対するモル比が0.5以上2.5以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリオレフィンの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法により製造された、ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の製造方法により製造された、配管材料用ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1または2に記載の製造方法により製造された、中空成形体用ポリオレフィン樹脂組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−38065(P2008−38065A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−216429(P2006−216429)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】