説明

ポリオレフィン樹脂組成物及びポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチ

【課題】造核剤の分散性を向上させてフィッシュアイの数を減少させるとともに、機械的強度を向上させたポリオレフィン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン樹脂(A)と、変性ポリオレフィン樹脂(B)と、デヒドロアビエチン酸などの化合物と該化合物の金属塩の少なくとも一方の造核剤(C)とからなることを特徴とする樹脂組成物。また、上記組成物からなることを特徴とするポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン樹脂組成物及びポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂組成物の機械的強度向上を目的として、ポリオレフィン樹脂に無機充填剤と変性ポリオレフィン樹脂とを添加した樹脂組成物が特許文献1により既に知られている。
また、機械的特性に優れたポリオレフィン樹脂組成物として、ポリオレフィン樹脂にデヒドロアビエチン酸金属塩を添加した樹脂組成物や、ポリオレフィン樹脂に無機充填剤とデヒドロアビエチン酸金属塩とを添加した樹脂組成物が特許文献2、特許文献3により知られている。
【特許文献1】特公昭54−44696号公報
【特許文献2】特開平07−331081号公報
【特許文献3】特開平10−25362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ポリオレフィン樹脂に無機充填剤と変性ポリオレフィン樹脂とを添加した樹脂組成物は、機械的強度が未だ満足できるものではなかった。
また、ポリオレフィン樹脂にデヒドロアビエチン酸金属塩を添加した樹脂組成物や、ポリオレフィン樹脂に無機充填剤とデヒドロアビエチン酸金属塩とを添加した樹脂組成物は、機械的強度は向上するものの造核剤の分散性が悪いため、フィッシュアイと呼ばれる不具合が未だ生じていた。このフィッシュアイとは樹脂シート中に生じる微細な固まりで、この固まり周辺が延びて魚の眼のような外観を有することからこの呼び名がついている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ポリオレフィン樹脂(A)と、変性ポリオレフィン樹脂(B)と、下記一般式(1)で表される化合物と該化合物の金属塩の少なくとも一方の造核剤(C)と、からなることを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物である。
【化1】

(式中、R1、R2およびR3は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を示し、各同一であっても異なっていてもよい。)
また、前記一般式(1)で表される化合物の金属塩が、ナトリウム塩、カリウム塩またはマグネシウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属塩であることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物である(請求項2)。
無機充填剤(D)が配合されてなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリオレフィン樹脂組成物である(請求項3)。
前記(A)と、前記(B)と、前記(C)と、からなることを特徴とするポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチである(請求項4)。
前記一般式(1)で表される化合物の金属塩が、ナトリウム塩、カリウム塩またはマグネシウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属塩であることを特徴とする請求項4に記載のポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチである(請求項5)。
前記無機充填剤(D)が配合されてなることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチである(請求項6)。
請求項4から請求項6のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチが、ポリオレフィン樹脂に対し添加されてなることを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物である(請求項7)。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ポリオレフィン樹脂組成物の機械的強度を向上させるとともに、造核剤の分散性を向上させてフィッシュアイの数を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、本発明の好適実施形態について、詳細に説明する。
本発明に用いられるポリオレフィン樹脂(A)としては、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリブテン−1、ポリ−3−メチルペンテン、ポリ−4−メチルペンテン、シクロオレフィンポリマー、エチレン−プロピレン共重合体等のα−オレフィンの単重合体または共重合体などが挙げられる。
【0007】
本発明のポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチ中の(A)の量は、通常55〜99.5重量%、好ましくは70〜98重量%である。
また、本発明のポリオレフィン樹脂組成物中の(A)の量は、通常90〜99.5重量%、好ましくは95〜99.5重量%である。(A)の量が55重量%未満では樹脂組成物の機械的強度が劣る。
【0008】
本発明に用いられる変性ポリオレフィン樹脂(B)としては、たとえば不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の誘導体、または塩素で置換したポリエチレンを挙げることができ、また、変性ポリプロピレンとしてはたとえば不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の誘導体、または塩素で置換したポリプロピレンを挙げることができる。この発明においては、前記変性ポリエチレンおよび変性ポリプロピレンのいずれか一種を単独で使用することもできるし、また、変性ポリエチレンと変性ポリプロピレンとを併用することもできる。前記変性に使用する不飽和カルボン酸としては、たとえば、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、ソルビン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸等が挙げられ、前記不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩等が有り、たとえば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、アクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、マレイン酸モノエチルエステル、アクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイミド、N―ブチルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0009】
本発明のポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチ中の(B)の量は、通常0.5〜20重量%、好ましくは1〜10重量%である。
また、本発明のポリオレフィン樹脂組成物中の(B)の量は、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。(B)の量が20重量%を超えると樹脂組成物の機械的強度が劣る。
【0010】
本発明に用いられる造核剤(C)としては、前記一般式(1)で表される化合物と該化合物の金属塩の少なくとも一方からなる。
前記一般式(1)で表される化合物において、式中、R1 、R2 およびR3 は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基である。アルキル基として具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘプチル、オクチルなどの炭素数1〜8のアルキル基が挙げられ、これらの基はヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、ハロゲンなどの置換基を有していてもよい。
シクロアルキル基として具体的には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどの炭素数5〜8のシクロアルキル基が挙げられ、これらの基はヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、ハロゲンなどの置換基を有していてもよい。
アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基などの炭素数6〜10のアリール基が挙げられ、これらの基はヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、ハロゲンなどの置換基を有していてもよい。
これらのR1 、R2 およびR3 で示される基は、各同一であってもよく、また異なっていてもよい。前記一般式(1)で表される化合物のなかでは、R1 、R2 およびR3 がそれぞれ、同一または異なるアルキル基であるものが好ましく、R1 がiso-プロピル基であり、R2 およびR3 がメチル基であるものがより好ましい。これらは、特に結晶化速度の向上効果が優れる。
【0011】
前記一般式(1)で表される化合物として具体的には、例えば下記式(2)で表されるデヒドロアビエチン酸などが挙げられる。
【化2】

デヒドロアビエチン酸は、例えば天然ロジンを不均化または脱水素化し、次いで精製することにより得られる。
前記一般式(1)で表される化合物は、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0012】
前記一般式(1)で表される化合物の金属塩は、下記一般式(3)で表される。
【化3】

式中、R1 、R2 およびR3 は前記一般式(1)と同様である。Mは、1〜3価の金属イオンであり、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどの1価の金属イオン、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛などの2価の金属イオン、アルミニウムなどの3価の金属イオンが挙げられる。
これらのうち、1価または2価の金属イオンであることが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオンであることがより好ましい。nは、前記Mの価数と同一の整数であり、1〜3の整数である。
【0013】
前記一般式(3)で表される金属塩のなかでは、R1 、R2 およびR3 がそれぞれ、同一もしくは異なるアルキル基である金属塩、または、Mが1価もしくは2価の金属イオンである金属塩が好ましく、R1 がiso-プロピル基であり、R2 およびR3 がメチル基である金属塩、または、Mがナトリウムイオン、カリウムイオンもしくはマグネシウムイオンである金属塩がより好ましく、R1 がiso-プロピル基であり、R2 およびR3 がメチル基であり、かつ、Mがカリウムイオンもしくはマグネシウムイオンである金属塩が特に好ましい。このような金属塩は、特に結晶化速度の向上効果が優れる。
【0014】
前記一般式(3)で表される金属塩として具体的には、例えばデヒドロアビエチン酸リチウム、デヒドロアビエチン酸ナトリウム、デヒドロアビエチン酸カリウム、デヒドロアビエチン酸ベリリウム、デヒドロアビエチン酸マグネシウム、デヒドロアビエチン酸カルシウム、デヒドロアビエチン酸亜鉛、デヒドロアビエチン酸アルミニウムなどのデヒドロアビエチン酸金属塩などが挙げられる。
【0015】
前記一般式(3)で表される金属塩は、前記一般式(1)で表されるカルボン酸を常法により金属塩化することにより製造することができる。例えば、前記一般式(3)で表される金属塩がデヒドロアビエチン酸金属塩である場合、この金属塩は前記式(2)で表されるデヒドロアビエチン酸と、前記金属化合物とを前記方法と同様にして反応させることにより製造できる。
前記一般式(3)で表される金属塩は、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。2種以上の化合物の組み合わせとしては、たとえば、前記一般式(3)においてR1 〜R3 が同一であり、Mが異なる2種以上の金属塩を組み合わせたものや、前記一般式(3)においてR1 〜R3 の少なくとも1個が異なり、Mが同一である2種以上の金属塩を組み合わせたものなどが挙げられる。
【0016】
前記一般式(1)で表される化合物および前記一般式(1)で表される化合物の金属塩は、それぞれ単独または組み合わせて用いることができる。
【0017】
前記造核剤(C)は、具体的に以下の化合物No.1〜No.3が挙げられる。但し、以下の化合物に何ら制限を受けるものではない。

【0018】
本発明のポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチ中の造核剤(C)の量は、通常0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜5重量%である。
また、本発明のポリオレフィン樹脂組成物中の造核剤(C)の量は、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%である。造核剤(C)の量が10重量%を超えるとフィッシュアイが多く発生する。
【0019】
本発明に用いられる無機充填剤(D)としては、タルク、クレー、マイカ、シリカ、珪藻土、雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等の硫酸塩、亜硫酸カルシウム等の亜硫酸塩、アスベスト、ガラス繊維、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト等のケイ酸塩、鉄、亜鉛、アルミニウム等の金属粉、炭化ケイ素、チッ化ケイ素等のセラミックおよびこれらのウィスカ、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維等が挙げられ、これらの無機充填剤を単独で、あるいは2種以上の無機充填剤を混合して使用することができる。
【0020】
本発明のポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチ中の(D)の量は、通常3〜55重量%、好ましくは5〜30重量%である。
また、本発明のポリオレフィン樹脂組成物中の(D)の量は、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜10重量%である。(D)の量が55重量%を超えると混練作業性が劣る。
【0021】
本発明の樹脂組成物は、公知の各種混合機を用いて前記成分を混練することによって得ることができる。混合機としては例えば単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダー、ニーダーおよびバンバリーミキサーが挙げられる。
混練時の各成分の添加順序については特に限定はないが、例えば(A)〜(C)をブレンドし混練する第1の方法、少量の(A)と、(B)と、(C)とをブレンド・混練したあと残りの(A)を混練する第2の方法、(B)と、(C)とをブレンド・混練したあと(A)を混練する第3の方法等が挙げられる。前記第2、第3の方法は、マスターバッチまたはマスターペレットと言われる方法である。これらの方法のうち、分散性が良く機械的強度に優れる点で第2の方法が特に好ましい。連続式の混合機の場合、必要に応じてサイドフィーダを用いてもよい。
また、無機充填剤(D)を配合する場合は、例えば次の添加順序が挙げられる。(A)〜(D)をブレンドし混練する方法(略、前記第1の方法)、少量の(A)と(B)〜(D)をブレンド・混練したあと残りの(A)を混練する方法(略、前記第2の方法)、(B)〜(D)をブレンド・混練したあと(A)を混練する方法(略、前記第3の方法)等が挙げられる。
【0022】
ポリオレフィン樹脂にポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチを添加する方法を例示する。
まず、(A)55〜99.5重量%、好ましくは70〜98重量%と、(B)0.5〜20重量%、好ましくは1〜10重量%と、(C)とをブレンド・混練し、ポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチを作製する。(C)は、0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜5重量%とする。
そのあとポリオレフィン樹脂(A)にポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチを添加してブレンド・混練することにより本発明の樹脂組成物を得ることができる。この方法は特に、大量の(A)中に少量の(B)、(C)を均一に分散させることが出来る利点があり、本発明の樹脂組成物はポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチを添加してなることが好ましい。
また、無機充填剤(D)を配合する場合は、前記(A)〜(C)と、(D)3〜55重量%、好ましくは5〜30重量%とをブレンド・混練し、ポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチを作製する。
【実施例】
【0023】
以下に、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例中の「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0024】
(マスターバッチの調整)
本発明のポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチは、表1に示す(A)〜(C)の各成分割合をミキサーにて3分間ブレンドしたあと、二軸押出機にて、成形温度220℃、回転数250rpm、滞留時間3分の条件で溶融混練し、ポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチ(M−1)を作製した。同様の方法にて、表1に示す(A)〜(D)の各成分割合を溶融混練し、マスターバッチ(M−2)から(M−4)を作製した。
また、同様の方法にて比較のマスターバッチ(M−5)〜(M−9)を作製した。
【表1】

【0025】
(実施例1から実施例4の調整)
ポリオレフィン樹脂(A)としてポリプロピレンを採用し、当該ポリプロピレンに前記ポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチ(M−1〜M−4)を添加して本発明の樹脂組成物を作製した。
作製条件は、表2に示す割合でポリプロピレンとマスターバッチ(M−1〜M−4)をミキサーにて3分間ブレンドしたあと、単軸押出シート成形機にて、成形温度220℃、回転数250rpmの条件で溶融混練し、実施例1〜実施例4のポリオレフィン樹脂組成物(無延伸ポリプロピレンシート)を作製した。表2には、実施例1〜実施例4中の(A)〜(D)成分の最終割合を示した。
また同様の方法にて比較例1〜比較例5を作製した。
【表2】

【0026】
(実施例5から実施例8の調整)
本実施例では、前記ポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチ(M−1〜M−4)を経由せず、(A)〜(C)又は(A)〜(D)をブレンド・混練し作製した。
表3に示す(A)〜(C)又は(A)〜(D)の各成分割合をミキサーにて3分間ブレンドしたあと、単軸押出シート成形機にて、成形温度220℃、回転数250rpm、滞留時間3分の条件で溶融混練し、実施例5〜実施例8のポリオレフィン樹脂組成物(無延伸ポリプロピレンシート)を作製した。
また同様の方法にて比較例6〜比較例10を作製した。
【表3】

【0027】
(物性評価試験)
表4に、実施例1〜8及び比較例1〜10のポリオレフィン樹脂組成物(無延伸ポリプロピレンシート)について、特性評価試験結果を示す。
特性評価試験は次の方法で行った。
引張弾性率は、JISK7161に準拠して行い、1%弾性率を測定した。
分散性は、無延伸ポリプロピレンシートの表面を観察することによって評価した。評価基準は、「○」がフィッシュアイがなく良好な状態、「△」が軽微なフィッシュアイが生じている状態、「×」が分散性が悪く著しいフィッシュアイが生じている状態とした。
【表4】

【0028】
表4の結果より次のことが推測される。
ポリオレフィン樹脂組成物(無延伸ポリプロピレンシート)は、造核剤(C)の配合により機械的強度は向上するが、造核剤(C)の分散性が伴わない。その結果、樹脂組成物(無延伸ポリプロピレンシート)にフィッシュアイが発生する。
しかし、極性基と非極性部分とを有する無水変性ポリプロピレンがそこに存在すると、極性基と造核剤側、非極性部分とポリオレフィン樹脂側とが相溶するため、造核剤(C)の分散性が向上すると推測される。
また、マスターバッチをポリオレフィン樹脂に添加して作製した樹脂組成物(無延伸ポリプロピレンシート)は、マスターバッチを添加しない樹脂組成物(無延伸ポリプロピレンシート)より、造核剤(C)の分散性が向上する。
また、無機充填剤(D)を配合すると機械的強度はさらに向上する。
【0029】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施例に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施例に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うものもまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂(A)と、
変性ポリオレフィン樹脂(B)と、
下記一般式(1)で表される化合物と該化合物の金属塩の少なくとも一方の造核剤(C)と、
からなることを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1、R2およびR3は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を示し、各同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物の金属塩が、ナトリウム塩、カリウム塩またはマグネシウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属塩であることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項3】
無機充填剤(D)が配合されてなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)と、前記(B)と、前記(C)と、からなることを特徴とするポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチ。
【請求項5】
前記一般式(1)で表される化合物の金属塩が、ナトリウム塩、カリウム塩またはマグネシウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属塩であることを特徴とする請求項4に記載のポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチ。
【請求項6】
前記無機充填剤(D)が配合されてなることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチ。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂用造核剤マスターバッチが、ポリオレフィン樹脂に対し添加されてなることを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−144677(P2012−144677A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5976(P2011−5976)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(390017891)シヤチハタ株式会社 (162)
【Fターム(参考)】