説明

ポリオレフィン系樹脂組成物

【課題】LLDPE、VLDPEやエチレン−α−オレフィン共重合体を表面層に配した単層あるいは多層の収縮性フィルムにおいて、低温防曇性、透明性、光沢、滑り性に優れたフィルムを得ることができる樹脂組成物の提供を目的とする。
【解決手段】エチレン−α−オレフィン共重合体を40重量%以上含むポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、防曇剤を0.3〜5.0重量部混合してなるポリオレフィン系樹脂組成物であって、前記防曇剤が(A)3価以上の多価アルコールの脂肪酸エステルが50〜94重量%、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルが3〜47重量%、(C)ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルが3〜47重量%からなることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装用途に好適なフィルムを成形するのに適した、ポリオフィレン系樹脂組成物に関する。特に、低温防曇性、透明性、光沢、滑り性に優れ、冷凍温度に近い冷蔵温度で流通・保存・販売される食品の包装に好適な、収縮性フィルムを提供できるポリオレフィン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肉類、魚介類、青果、惣菜等の食品包装等の用途に使用されるフィルムとしては、ポリオレフィン系樹脂ストレッチフィルムが、塩化ビニル系樹脂組成物からなるストレッチフィルムに替わり、食品包装用として需要が伸びてきている。ポリオレフィン系樹脂フィルムの中でも、特にメタロセン系触媒を用いて重合したエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂からなるフィルムは、透明性、耐衝撃強度、低温ヒートシール性、柔軟性等に優れている。
食品包装用フィルムに要求される性能としては、防曇性、透明性、機械包装適性、製膜時における巻取工程時の膜間隔離性等がある。防曇性は、食品から蒸発した水分がフィルム内面に付着してフィルムが曇るのを防止(これを防曇性と呼ぶ)することを意味する。防曇性が不足している場合、フィルム表面に付着する水滴によって「曇りガラス状」になり、包装体の外から内容物が見えにくくなると、店頭におけるディスプレイ効果が低下し、商品価値が著しく低下するために、防曇性は食品包装フィルムにとって極めて重要な物性の一つとなっている。
【0003】
一方、ストレッチフィルムによる包装は、包装物をタイトに仕上げ商品価値を高めるという点では不十分であり、収縮性フィルムによるタイトな包装の需要も高まってきている。収縮性フィルムによる代表的な包装としては、ピローシュリンク包装とストレッチシュリンク包装がある。
ピローシュリンク包装の方法は、幅方向の長さに対して、5〜50%程度の余裕率を持たせて、容器やトレーに収容された食品等の被包装物を筒状に覆い、次に、回転ローラー式等のセンターシール装置にて、被包装物の裏面にシール線がくるように合掌ヒートシールし、続いて、被包装物の流れ方向の長さに対して、5〜50%程度の余裕率のところで筒状体の両端を閉じるように、被包装物の流れ方向の前後部でヒートシールを行う。それと同時に、カッター刃でカットを行う、エンドシール装置を用いて、一つ一つの包装体を得る。次に、これらを予め90〜160℃程度の所定の温度に調節されている熱風シュリンクトンネルで、包装フィルムを熱収縮させることでタイトに仕上がった包装体を得る。連続包装機の包装スピードは、従来1分間に約20〜40個包装する速度であったが、近年の高速の連続包装機では、1分間に約60〜100個包装される。そのため、包装フィルムには、その包装スピードに対応できる適性、例えば、滑り性、ホットタックシール性、熱収縮特性が強く求められる。
【0004】
ストレッチシュリンク包装の方法は、従来のストレッチ包装のように、フィルムをある程度緊張状態で包装し、フィルムの端を被包装物の底面に折り込んで、折り込み部をフィルム同士の自己密着力、または熱融着により一次包装した後、同様に加熱収縮処理を施して局部的なフィルムのタルミやシワを除去する方法で、タイトで美しい仕上りが得られる。
収縮性フィルムによるタイトな包装を行い、包装体の外観を良くしても、店頭に陳列するときに、包装体のフィルム内面に結露を生じ、その水滴が「曇りガラス状」になり、包装体の外から内容物が見えにくくなれば、商品価値が著しく低下するという問題が生じる。そのため、従来よりも防曇性に優れた包装フィルムの提供が種々検討されてきた。
【0005】
特許文献1には、(1)グリセリン脂肪酸エステルとソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選ばれた防曇剤、及び(2)ポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる防曇剤を、1.0〜5.0重量部混合してなるポリオレフィン系樹脂組成物が開示されている。この防曇剤では、特にエチレン−α−オレフィン共重合体100重量%からなるポリオレフィン系樹脂において、押出機注入法を用いて添加する場合、樹脂と防曇剤との混練の安定性に欠け、低温防曇性も不十分であった。
特許文献2には、両外層がエチレンとα−オレフィンとの共重合体90重量%/低密度ポリエチレン10重量%の混合物からなり、エチレン系重合体樹脂にグリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤を添加した包装フィルムが開示されている。
【0006】
特許文献3には、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂100重量部に対し、(A)ジグリセリン混合脂肪酸エステルを0.04〜3.8重量部、(B)炭素数8〜22の脂肪酸のエチレンオキサイド1〜100モル付加物を0.005〜0.7重量部、(C)ポリグリセリンの平均重合度3〜10で脂肪酸との部分エステル化合物からなるポリグリセリン脂肪酸エステルを0.003〜0.7重量部、(A)〜(C)合計添加量は0.1〜4重量部とからなる食品包装用フィルムが開示されている。
特許文献4には、ビニルエステル単量体、脂肪族不飽和モノカルボン酸、該モノカルボン酸アルキルエステルより選ばれる少なくとも1種の単量体とエチレンとの共重合体、又はこれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種の共重合体とエチレン−α−オレフィン共重合体の混合樹脂から成る表層を有し、グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、テトラグリセリン脂肪酸エステルとポリエチレングリコール脂肪酸エステルからなる界面活性剤組成物を、全層の合計質量(100質量部)に対して0.1〜5質量部含有したポリオレフィン系樹脂防曇・熱収縮性多層フィルムが開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献2〜4に記載されている防曇剤では、特にエチレン−α−オレフィン共重合体100重量%からなるポリオレフィン系樹脂において、同様に押出機注入法を用いる場合、低温防曇性や光沢が不十分であった。
特許文献5には、ポリオレフィン系樹脂(A)100重量部に対し、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル及びポリオキシエチレン脂肪酸エステルから選ばれた少なくとも1種の化合物である界面活性剤(B)を0.1〜20重量部、及び溶解性パラメーターが8〜11、分子量が100〜10000である相溶化剤(C)0.05〜3重量部を含むポリオレフィン樹脂組成物が開示されている。しかし、相溶化剤(C)は、事前にマスターバッチを作成して添加する必要があり、工程が煩雑でコストアップにつながる他、低温防曇性が不十分な場合があり、特にフィルム厚みが11μm以下では防曇性が劣る。
【0008】
このように、上記の組成の防曇剤を使用した場合や、上記の樹脂組成物を使用した場合、LLDPE、VLDPE等やエチレン−α−オレフィン共重合体を表面層に配した、単層あるいは多層の収縮性フィルムにおいて、低温防曇性、特に冷凍温度に極めて近い冷蔵温度での防曇性を安定して発現させることは困難であった。
エチレン−α−オレフィン共重合体を表面層に配した収縮性フィルムの防曇性が、表面層を構成する樹脂がEVAからなるフィルムに比べて劣る原因として、エチレン−α−オレフィン共重合体への防曇剤の練り込み性が悪いことや、それらの樹脂のブリード特性がEVAに比べて劣ることが考えられる。
【0009】
また、防曇剤を多量に練り込むと、収縮性フィルムを得るために必要な延伸配向処理を行う工程で、フィルム切れが生じやすく、得られたフィルムも、防曇性が向上するものの、動摩擦係数が増大して、滑り等の包装機械適性が低下したり、ヒートシール性を阻害するといった問題も発生する。
そのため、エチレン−α−オレフィン共重合体を表面層に配した、単層あるいは多層の収縮性フィルムにおいて、市場の要求する防曇性、透明性、光沢、滑り、及びヒートシール性等の包装機械適性を全て満足することが困難であった。
一方で、エチレン−α−オレフィン共重合体を表面層に配した単層あるいは多層収縮性フィルムは、表面層にEVAのみを配した多層フィルムと比べて、ヒートシール可能温度範囲が広いこと、ホットタックシール強度が向上し、ピローシュリンク包装に適することや光学特性が向上する点で優れているところがあり、滑り性等の包装機械適性を低下させることなく、良好な低温防曇性、透明性・光沢を付与したエチレン−α−オレフィン共重合体を表面層に配し、安定した延伸製膜可能な単層あるいは多層の収縮性フィルムの開発が望まれている。
【0010】
さらに、近年では、市場において、より低温下での防曇性が要求されており、店頭の冷蔵ショーケースでは、0℃に近い温度(0〜3℃)で包装体が陳列されていることもあるのが実状である。しかし、特許文献1〜5に開示されているフィルム、樹脂組成物から得られるエチレン−α−オレフィン共重合体を表面層に配した単層あるいは多層の収縮性フィルムでは、0℃に近い温度(0〜3℃)で包装体を保存した場合、防曇性が不十分であり、特に保存してから数時間後の内容物の視認性が良好ではなかった。従来の技術で得られるLLDPE、VLDPEや、エチレン−α−オレフィン共重合体を表面層に配した単層あるいは多層収縮性フィルムは、グリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤等の界面活性剤を有し、表層がエチレン−酢酸ビニル共重合体(以後、EVA)を含む樹脂からなる収縮性フィルムに比べて0℃に近い低い温度(0〜3℃)での防曇性が劣る欠点を有している。
【特許文献1】特開2002−20553号公報
【特許文献2】特開2002−200672号公報
【特許文献3】特開2004−210967号公報
【特許文献4】特開2004−216825号公報
【特許文献5】特開2005−146184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、低温防曇性、透明性、光沢、滑り性、ホットタックシール強度に優れたフィルムを得ることができる樹脂組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を達成する為に鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
(1)エチレン−α−オレフィン共重合体を40重量%以上含むポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、防曇剤を0.3〜5.0重量部混合してなるポリオレフィン系樹脂組成物であって、前記防曇剤が(A)3価以上の多価アルコールの脂肪酸エステルが50〜94重量%、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルが3〜47重量%、(C)ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルが3〜47重量%からなることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。
(2)(A)3価以上の多価アルコールの脂肪酸エステルの多価アルコールが、グリセリン又はポリグリセリンであることを特徴とする(1)に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
(3)エチレン−α−オレフィン共重合体を40重量%以上含むポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、防曇剤を0.3〜5.0重量部混合してなるポリオレフィン系樹脂組成物層を少なくとも表層の一つとして含み、前記防曇剤が(A)3価以上の多価アルコールの脂肪酸エステルが50〜94重量%、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルが3〜47重量%、(C)ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルが3〜47重量%からなることを特徴とする収縮性フィルム。
(4)(A)3価以上の多価アルコールの脂肪酸エステルの多価アルコールが、グリセリン又はポリグリセリンであることを特徴とする(3)に記載の収縮性フィルム。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、低温防曇性、透明性、光沢、滑り性、ホットタックシール強度に優れたフィルムを得ることができる樹脂組成物を提供できる。
本発明が従来技術と最も相違するところは、LLDPE、VLDPE等のエチレン−α−オレフィン共重合体を40重量%以上含むポリオレフィン系樹脂組成物を少なくとも表面層の一つに配した単層あるいは多層の収縮性フィルムにおいて、相溶化剤を用いなくても樹脂と防曇剤は良好な相溶性を有し、防曇剤の樹脂への添加方法としてマスターバッチだけでなく工程が簡単な液体注入による添加も出来、延伸安定性を損なうことなく、低温防曇性、透明性・光沢、滑り性に優れた収縮性フィルム、特に30μm以下の薄肉の収縮性フィルムを提供出来ることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明によって得られるポリオレフィン系樹脂組成物を使用した収縮性フィルムは、その延伸製膜が安定して可能であり、また得られたフィルムは良好な低温防曇性、透明性、光沢、滑り性、ホットタックシール強度を有するものである。
本発明の樹脂組成物は、エチレン−α−オレフィン共重合体を40重量%以上含むポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、防曇剤を0.3〜5.0重量部混合してなることが必要であり、好ましくは0.5〜4.0重量部であり、より好ましくは1.0〜3.0重量部である。防曇剤の量が0.3重量部以上であると、低温防曇性、及び滑り性が良好なフィルムが得られ、5.0重量部以下であれば、良好な光学特性、及び滑り性が保てる。
【0015】
本発明に用いるポリオレフィン系樹脂は、エチレン−α−オレフィン共重合体を40重量%以上含むものである。ポリオレフィン系樹脂に含まれるエチレン−α−オレフィン共重合体が40重量%以上の場合、ホットタックシール強度が向上する。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂に含まれるエチレン−α−オレフィン共重合体の比率は50重量%以上であり、より好ましくは60重量%以上であり、上限は100重量%である。
本発明に用いるエチレン−α−オレフィン共重合体とは、エチレンと炭素数が3〜18のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種類の単量体との共重合体で、α−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、ドデセン−1等が挙げられる。これに、ポリエン構造を有する炭化水素等を共重合してもよく、共重合させるポリエン構造を有する炭化水素としては、例えばジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、ノルボルネン系単量体(例えば、エチリデンノルボルネン)等が挙げられる。共重合体中のエチレン含量は、好ましくは40〜95重量%、より好ましくは50〜90重量%、さらに好ましくは60〜85重量%である。
エチレン−α−オレフィン共重合体は、マルチサイト触媒あるいはシングルサイト触媒のいずれで重合されたものでもよい。この中でもメタロセン系触媒を用いて重合したエチレン−α−オレフィン共重合体は、透明性、耐衝撃強度等に優れており、使用する樹脂として好ましい。
【0016】
本発明は、防曇剤が(A)多価アルコールの脂肪酸エステルが50〜94重量%、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルが3〜47重量%、(C)ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルが3〜47重量%からなることが必要であり、好ましくは、(A)多価アルコールの脂肪酸エステルが60〜90重量%、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルが5〜35重量%、(C)ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルが5〜35重量%である。本発明の防曇剤は、ポリオレフィン系樹脂と良好な相溶性を有するため、相溶化剤を用いなくても、相溶性が良好となるが、必要に応じて相溶化剤を添加することもできる。(A)多価アルコールの脂肪酸エステルが50重量%以上であると、防曇剤の樹脂への練り込み性が向上し、94重量%以下であると低温防曇性が向上する。(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルが3重量%以上であると低温防曇性及び透明性が向上し、47重量%以下であると防曇剤の樹脂への練り込み性が向上する。(C)ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルが3重量%以上であると低温防曇性が向上し、47重量%以下だと防曇剤の樹脂への練り込み性が向上する。
本発明の防曇剤の(A)多価アルコールの脂肪酸エステルは、炭素原子数が8〜18の飽和又は不飽和脂肪酸のモノグリセリンエステル、ジグリセリンエステル、トリグリセリンエステル、テトラグリセリンエステル、ソルビタンエステルが好ましく、炭素原子数が12〜18の飽和又は不飽和脂肪酸のモノグリセリンエステル、ジグリセリンエステル、トリグリセリンエステル、テトラグリセリンエステル、ソルビタンエステルがより好ましい。
【0017】
多価アルコールの脂肪酸エステルとして、具体的には、モノグリセリンラウレート、モノグリセリンミリステート、モノグリセリンパルミテート、モノグリセリンステアレート、モノグリセリンオレート、モノグリセリンリノレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンミリステート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレート、ソルビタンリノレート、ジグリセリンラウレート、ジグリセリンミリステート、ジグリセリンパルミテート、ジグリセリンステアレート、ジグリセリンオレート、ジグリセリンリノレート、トリグリセリンラウレート、トリグリセリンオレート、トリグリセリンステアレート、テトラグリセリントリグリセリンラウレート、テトラグリセリンオレート、テトラグリセリントリグリセリンステアレート等が挙げられるが、特にラウリン酸、オレイン酸のモノエステル、ジエステルが好ましい。
【0018】
本発明の防曇剤の(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、炭素原子数が8〜18の飽和アルコールの、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであることが好ましく、エチレンオキサイドの付加モル数としては1〜13であることが好ましい。更に好ましくはエチレンオキサイドの付加モル数が3〜7のいずれかのものが主体をなし、炭素原子数が12〜14の飽和アルコールを主体としたポリオキシエチレンアルキルエーテルである。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとして、具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンパルミチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等が挙げられ、これらの中では、特にポリオキシエチレンラウリルエーテルが好ましい。
【0019】
本発明の防曇剤の(C)ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルは、炭素原子数が8〜22の飽和又は不飽和の脂肪酸とポリアルキレングリコールとから成ることが好ましく、ポリアルキレングリコールとしてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールの平均重合度は5〜15が好ましく、炭素原子数が8〜18の飽和又は不飽和脂肪酸のポリアルキレングリコール脂肪酸エステルであることが好ましい。より好ましくは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールの平均重合度は7〜12であり、炭素原子数が12〜18の飽和又は不飽和脂肪酸のポリアルキレングリコール脂肪酸エステルである。
【0020】
本発明の樹脂組成物から成形されたフィルムの防曇性が、防曇剤が添加されていないフィルムより低下しない範囲で、任意の添加剤を本発明の樹脂組成物に添加しても良い。添加剤として、(A)多価アルコールの脂肪酸エステル、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、(C)ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル以外の界面活性剤、酸化防止剤、帯電防止剤、石油樹脂、ミネラルオイル等が挙げられる。
本発明のフィルムの厚みは5〜30μmが好ましく、5〜30μmであれば、熱収縮後の光学特性やホットタックシール強度が良くなる。8〜15μmの厚みのものが光学特性も良くコスト的に安価に生産できるのでより好ましい。
【0021】
次に、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を使用した収縮性フィルムの製造方法の一例として、本発明の樹脂組成物を少なくとも一つの表層に用いたフィルムについて説明する。
まず、各層を構成する樹脂をそれぞれの押出機で溶融して、単層あるいは多層ダイで共押出し急冷固化して、単層あるいは多層フィルム原反を得る。押出法は、Tダイ法、サーキュラー法等が用いることができるが、好ましくは後者がよい。このようにして得たフィルム原反を加熱して、配向を付与するのに適当な温度条件下で延伸を行う。
延伸方法としては、ロール延伸法、テンター法、インフレ法(ダブルバブル法を含む)等があるが、同時二軸延伸で製膜される方法が延伸性(意味が不明確なので削除しました)等より好ましい。また、延伸は少なくとも1方向に面積延伸倍率で3〜50倍が好ましく、さらに好ましくは4〜40倍で延伸し、用途により必要な熱収縮率等に応じて適宜選択される。必要に応じ、後処理、例えば寸法安定性のためのヒートセット、他種フィルム等とのラミネーションを行ってもよい。
【0022】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を使用した収縮性フィルムは、その少なくとも1つの層が架橋されていてもよく、その場合、厚み方向における架橋度がほぼ均一であっても、特定の層が主に架橋されていても、一方の表層が主で厚み方向に漸次変化するケース、両表層が主であっても、厚み方向に適時分布を有していてもよい。この架橋処理は、延伸製膜を行う前後を問わずに、電子線(例えば、50〜1000kVのエネルギーで透過深度を所定にコントロールして)、紫外線、X線、α線、γ線等のエネルギー線により片面、又は両面に照射、また厚み方向に架橋分布、同傾斜(例えば、片側の表層が架橋)が生ずるような照射を行う等の方法、パーオキサイド等(場合により、特定層に架橋助剤、特定層に架橋遅延剤等の併用もよい)の添加後に加熱処理を行う方法、両方法の併用等の他、公知の方法により改質処理を行ってもよい。
【0023】
架橋処理により、耐熱性、ヒートシール性、特に高速包装におけるシール性の向上、及び延伸製膜安定性(ネッキングの抑制、厚みの均一性、延伸倍率の向上、延伸温度条件幅の拡大等)を向上させることも可能であって、必要に応じて用いられる。
次に、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を使用した収縮性フィルムがピローシュリンク包装で使用される場合について説明する。
ピローシュリンク包装では、加熱収縮処理をする前の一次包装段階において、フィルムが緊張しておらず、たるんでいるため、被包装物をタイトに包装するにはフィルムに高い熱収縮特性が求められる。また、加熱収縮処理時に被包装物である容器を変形させないために、低い収縮応力がフィルムに求められる。
【0024】
ピローシュリンク包装用途の収縮性フィルムとして好ましいのは、エチレン系重合体樹脂よりなる架橋フィルムである。適度に架橋されていると、フィルムを構成している樹脂の融点以上の温度でも安定した延伸を行うことができ、熱収縮率の高い包装フィルムが得られる。すなわち、架橋することによって延伸温度と延伸倍率の調節が容易になり、高熱収縮性を持ちながら、熱収縮応力が低いフィルムを製造でき、シュリンク包装に最適な熱収縮率、熱収縮応力を持たせることが可能になる。
ピローシュリンク包装用途の収縮性フィルムに高熱収縮性を持たせるための延伸倍率は、縦方向及び横方向ともに一般に5〜10倍が好ましく、さらに好ましくは5〜8倍である。
【0025】
収縮性フィルムのゲル分率は5〜40%が好ましい。ゲル分率はフィルムが架橋されている量の目安となる。ゲル分率が5%以上であると高温延伸する際、安定に成膜することができ、40%以下だと熱収縮応力が適度であり、軟弱な被包装物でも変形しない。その範囲の中でも、10〜40%がより好ましく、15〜35%の場合、延伸が安定化するのと、好適な熱収縮応力が得られるので更に好ましい。
収縮性フィルムの熱収縮率は、流れ方向及び幅方向ともに、50%〜80%が好ましい。熱収縮率が、流れ方向及び幅方向ともに熱収縮率が50%〜80%である包装フィルムでシュリンク包装すると、包装体はタイトに美麗に仕上がる。熱収縮率が55〜80%の範囲のものは、丸型及び円形の被包装体であっても美麗に包装できるのでより好ましい。
【0026】
収縮性フィルムの熱収縮応力は、流れ方向及び幅方向ともに、1.2〜2.2N/mm2が好ましく、1.5〜2.0N/mm2がより好ましい。熱収縮応力が1.2N/mm2以上では、シールした後、熱風シュリンクトンネル通過中に、小孔から空気が抜ける熱収縮不良でしわが発生することがない。2.2N/mm2以下だと、容器を変形させてしまうことがない。
収縮性フィルムの曇り度は、0〜3.0%が好ましく、0〜2.5%がより好ましい。曇り度が3.0%以下の場合、透明感に優れ被包装物が美麗に見える。
収縮性フィルムの光沢度は、130〜180%が好ましい。本発明の包装フィルムが架橋されている場合、フィルムを構成する樹脂の融点以上に収縮温度を上げても溶融することなく使用でき、収縮後に冷却しても光学特性の低下が小さい。フィルムの光沢度も商品性を決める重要な特性であり、美観性の観点から130〜180%が好ましく、140〜170%であると艶が出て被包装物に高級感がでるのでより好ましい。
【0027】
収縮性フィルムの動摩擦係数は、包装フィルムの滑り性に関与する物性である。その動摩擦係数は0.15〜0.30が好ましい。0.30以下だと、連続包装機にフィルムが供給される際、滑り不良で引っ掛かり、フィルムが破けてトラブルが発生することが少ない。また、0.15以上のものは、原反が独りでに巻きほどけてきたり、フィルム生産の際の巻取機での原反ズレが発生しにくくなったりして、原反の取扱いが容易になる。動摩擦係数が0.15〜0.25であると、高速の連続包装機に好適に使用できるのでより好ましい。
収縮性フィルムのホットタックシール強度は2.0〜10.0Nが好ましい。ホットタックシール強度が2.0N以上であると熱風シュリンクトンネル内のフィルムの熱収縮力でシール部が剥離せず、パンクが発生しにくく、10.0N以下では、シール線が他の包装体と接触したときに、フィルムを破ったり傷つける可能性が少ないため好ましい。3.0〜5.0Nであると、シュリンクトンネルの温度設定が広くできたり、通過速度を早くできたりするのでより好ましい。
【0028】
次に、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を使用した収縮性フィルムが、ストレッチシュリンク包装に使用される場合について説明する。
ストレッチシュリンク包装用途の収縮性フィルムにおける構成としては、両表面層、芯層、さらに各表面層と芯層との間に存在する両中間層を有する、5層構成でなる多層フィルムであることが好ましい。さらに、芯層が、エチレン含量が2〜10%である結晶性ポリプロピレン系樹脂を、55〜90重量%を含有しており、非晶性ポリプロピレン系共重合体45〜10重量%と、シングルサイト系触媒により重合され、密度が0.865〜0.910g/cmであるエチレン−α−オレフィン系樹脂45〜10重量%、又はポリブテン−1系樹脂45〜10重量%との混合体であることが好ましい。
【0029】
ストレッチシュリンク包装用途の収縮性フィルムには、連続包装機の包装スピードに対応できる適性、例えば、引裂強度、滑り性、底シール性、熱収縮特性が強く求められる。
収縮性フィルムの引裂強度は、流れ方向(MD)の引裂強度が、幅方向(TD)の引裂強度よりも高いことが重要となる。フィルムの好ましい引裂強度は、0.05〜2.00Nであり、且つ、フィルムの流れ方向(MD)の引裂強度が、幅方向(TD)の引裂強度より1.5〜20倍強いと、高速化された連続包装機でも好適に使用が可能である。包装品を容易に開封することや、製造し易さ等を考慮すると、引裂強度は0.1〜1.00Nであり、且つフィルムの流れ方向(MD)の引裂強度が、幅方向(TD)の引裂強度より2〜5倍強いことがより好ましい。
【0030】
良好な底シール性、かつ光学性を得るためには、表層にエチレン−α−オレフィン共重合体以外の樹脂として、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を20〜60重量%使用することが好ましく、30〜60重量%使用することがより好ましい。その酢酸ビニル成分は5〜25%が好ましく、防曇剤を混練し易く、層状にブリード形成し易い点で10〜20%がより好ましい。酢酸ビニル成分が5%以上だとシール性が向上し、25%以下だとフィルムの臭いもなく、樹脂組成物をリサイクルした場合に、熱安定性が向上する。
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂のJIS−K−7210に準じて測定されたメルトインデックスの値(190℃、2.16kgf(21.18N):以下エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂については同条件)としては、0.5〜15のものが好ましく、透明性、底シール性が良好である為、1.0〜5.0のものがより好ましい。
【0031】
熱収縮特性については、80℃における熱収縮率が、流れ方向(MD)と幅方向(TD)の少なくとも1方向において15%以上が好ましく、該フイルムの流れ方向(MD)と幅方向(TD)の平均熱収縮率の、80℃と100℃における値の差は30%以下が好ましい。
収縮性フィルムの80℃における流れ方向(MD)と幅方向(TD)の少なくとも1方向の熱収縮率が、15%以上では低温収縮性に優れ、収縮包装時の包装後のフィット性が十分になる。また、このフィルムを用いてトレーや容器を包装した時には、角の部分に収縮不良がなく、商品性を向上させる。フィルムの80℃におけるより好ましい収縮率としては、流れ方向(MD)と幅方向(TD)の少なくとも1方向において、20%以上である。その上限は、保管、流通過程における寸法変化(ロール状の巻物の場合、巻き芯と外側での幅寸法の差が問題となる。)に悪影響が生じない範囲でほぼ決まり、通常は60%以下が好ましく、より好ましくは50%以下である。
【実施例】
【0032】
以下に本発明に使用される測定方法をまとめて記す。
《ゲル分率》
沸騰p−キシレン中で試料を12時間抽出し、不溶解部分の割合を次式により表示したもので、フィルムの架橋度の尺度として用いた。
ゲル分率(重量%)=(抽出後の試料重量/抽出前の試料重量)×100
《エチレン系重合体の密度の測定》
ASTMD−1505に準拠して測定した。
《延伸温度》
市販の接触式温度計にて測定した値を用いた。
《延伸倍率》
流れ方向(MD)の延伸倍率については、延伸前後の速度比を倍率として用いた。
幅方向(TD)の延伸倍率については、延伸前パリソンの巾と延伸後フィルムの巾との比を倍率として用いた。
【0033】
《引裂強度縦横バランスの評価》
ASTM−D−1992に準拠して測定した。
軽荷重引き裂き試験器(東洋精機製)を用いて、流れ方向(MD)と幅方向(TD)、それぞれについて測定した。更にその比率よりMD/TDのバランスを評価した。例えばMD向が0.5NでTD方向が0.1Nの場合、5倍という表現を用いた。
《熱収縮率》
ASTMD−2732に準拠して測定し、120℃の温度で収縮させた。
[評価基準]
◎:55%以上80%以下:美麗にピローシュリンク包装体が得られる更に好ましいレベル
○:50%以上55%未満:ピローシュリンク包装体が得られる好ましいレベル
△:30%以上50%未満:小じわが出たりしてピローシュリンク包装のフィルムとしての使用がかなり困難なレベル
×:30%未満:ピローシュリンク包装のフィルムとしての使用が使用できないレベル
【0034】
《熱収縮応力の評価》
ASTMD−2838に準拠して測定し、温度が120℃の時の最大熱収縮応力の値を用いた。
[評価基準]
◎:1.5N/mm2以上2.0N/mm2以下:被包装物 を変形させず、且つ美麗にピローシュリンク包装体を得られるレベル
○:1.2N/mm2以上1.5N/mm2未満、或いは2.0N/mm2を越えて2.2N/mm2以下:被包装物を変形させず、且つピローシュリンク包装体を得られるレベル
△:0.8N/mm2以上1.2N/mm2未満、或いは、2.2N/mm2を越えて2.5N/mm2以下:ピローシュリンク包装のフィルムとしての使用がかなり困難なレベル
×:0.8N/mm2未満、或いは、2.5N/mm2を越える:ピローシュリンク包装のフィルムとして実用レベルでない
【0035】
《曇り度の評価》
(ピローシュリンク包装用途の収縮性フィルム:実施例1〜5、比較例1〜10)
熱風温度140℃、通過時間3秒の条件で熱風トンネルを通過させたフィルムで、面積で30%収縮させたものを用いて、ASTMD−1003に準拠して測定した。
(ストレッチシュリンク包装用途の収縮性フィルム:実施例6〜10、比較例11〜14)
熱風温度90℃、通過時間3秒の条件で熱風トンネルを通過させたフィルムで、面積収縮させていないものを用いて、ASTMD−1003に準拠して測定した。
[評価基準]
◎:2.5%以下:被包装物に曇りが感じられず、美麗に仕上がるレベル
○:2.5%を越えて3%以下:少し曇りを感じるが、 美麗に仕上がるレベル
△:3%を越えて5%以下:曇りを感じるので使用がかなり困難なレベル
×:5%を越える:白っぽく感じるので実用レベルでない
【0036】
《光沢度の評価》
(ピローシュリンク包装用途の収縮性フィルム:実施例1〜5、比較例1〜10)
熱風温度140℃、通過時間3秒の条件で熱風トンネルを通過させたフィルムを面積で30%収縮させたものを用いて、ASTMD−D−2457に準拠して測定した。
(ストレッチシュリンク包装用途の収縮性フィルム:実施例6〜10、比較例11〜14)
熱風温度90℃、通過時間3秒の条件で熱風トンネルを通過させたフィルムで、面積収縮させていないものを用いて、ASTMD−D−2457に準拠して測定した。
[評価基準]
◎:140%以上180%以下:高級感がでるレベル
○:130%以上140%未満:美麗に仕上がるレベル
△:110%以上130%未満:使用がかなり困難なレベル
×:110%未満:実用レベルでない
【0037】
《滑り性の評価》
ASTMD−1894に基づいて測定し、その測定に用いるライダーを500gの梨地金属製のものにして測定した場合の動摩擦係数にて評価を行った。
(ピローシュリンク包装用途の収縮性フィルム:実施例1〜5、比較例1〜10)
[評価基準]
◎:0.15以上0.25以下:滑り起因の包装機トラブルが発生しない、良好なレベル
○:0.25を越えて0.30以下:実用レベル
△:0.15未満及び、0.30を越えて0.35以下:使用がかなり困難なレベル
×:0.35を越える:フィルム破れが多発する場合があり、実用レベルでない
(ストレッチシュリンク包装用途の収縮性フィルム:実施例6〜10、比較例11〜14)
[評価基準]
◎:0.35以下:滑り起因の包装機トラブルが発生しない、良好なレベル
○:0.35を越えて0.40以下:実用レベル
△:0.40を越えて0.50以下:フィルム破れが多発する場合があり、使用が困難なレベル
×:0.50を越える:フィルム破れが多発する場合があり、実用レベルでない
【0038】
《ホットタックシール強度の評価》
ASTMF−1921−98に基づき、Theller社HotTack測定器を用いて測定した。V字型ヒートシールダイを使用し、130℃で行い、試験片の巾は25mmとした。剥離させて時間とともに変化していくホットタックシール強度を1/1000秒のオーダーでプロットし、剥離開始後0.25秒のシール強度にて評価を行った。
[評価基準]
◎:3.0N以上5.0N以下:実用レベル
○:2.0N以上3.0N未満、或いは5.0Nを越えて10.0N以下:実用レベル
△:1.6N以上2.0N未満である:シール剥離する場合があり、使用がかなり困難なレベル
×:1.6N未満である:シール剥離が多発する場合があり、実用レベルでない
【0039】
《防曇性の評価》防曇性の評価として以下のように行った。
500mlのビーカーに20℃に調節した水を入れ、ビーカーの口をフィルムで密閉する。そのビーカーを2℃に調整した冷蔵ショーケースに保管し、120分後フィルムについた水滴の状態や視認性にて5点が良好満点として防曇性の評価を行った。
[評価基準]
◎:5点:水滴の斑が無くすっきりして視認性が良く実用レベルである
○:4点:大きい水滴が少しあるが、視認性は良く実用レベルである
△:2〜3点:小さい水滴がかなりあり、視認性が悪く使用がかなり困難である。
×:1 点:多数の小さい水滴で曇っており、視認性が非常に悪く実用レベルでない。
【0040】
《底ヒートシール型高速包装機適性》
市販の底シール型であり、オーバーラップシュリンクタイプの包装機である直線型ストレッチシュリンク包装機(大森機械社製STN−8600等)にて、1分間に80個の速度で100個連続包装を行い、非常に高速で過酷な評価包装機での不良個数%と包装仕上りを、以下のように評価した。その時のトレーはPSPトレーを用い、内容物は角がある約200gの直方体の樹脂の塊を用いた。包装機での不良とは、例えば、破れ、シール不良等であり、再包装が必要となるものは特に市場では問題になる。特に引裂強度のバランスが、流れ方向の引裂強度の方が弱い場合には縦裂き伝播が発生し、連続的に不良となった。この実験では樹脂の塊の角で破れるものもあった。
包装品の仕上り評価とは、白化、艶、容器変形、フィルム弛み等の美麗を損なう要因について評価を行った。これらはシュリンクトンネル等の条件による影響が大きく、それぞれのフィルムにおいて、一番仕上り状態の良い最適条件にて評価を行った。
◎:包装機での不良個数%が0%であり高速包装機適性良好であるレベル:包装仕上りも高品質レベル
○:包装機での不良個数%が1%以上10%以下であり高速包装機適性があるレベル:包装仕上りも問題無いレベル
△:包装機での不良個数%が11%以上50%以下であり、高速包装機にはかかるが、ロスが多く問題が残るレベル:或いは、白化、艶等光学特性を損なっていたり、容器変形していたり、フィルムが弛んでいたりしており、仕上りが満足され難いレベル
×:包装機での不良個数%が50%を越えており、高速包装機適性が無いレベル
【0041】
《ヒートシール&カット型高速包装機適性》
高速型のピローシュリンク包装機である茨木精機製の包装機「VSP-2000」(商品名)を用いてフィルム包装を行った。
◎:包装機での不良個数%が0%であり高速包装機適性良好であるレベル:包装仕上りも高品質レベル
○:包装機での不良個数%が1%以上10%以下であり高速包装機適性があるレベル:包装仕上りも問題無いレベル
△:包装機での不良個数%が11%以上50%以下であり、高速包装機にはかかるが、ロスが多く問題が残るレベル
×:包装機での不良個数%が50%を越えており、高速包装機適性が無いレベル
《総合評価》
[評価基準]
◎:全てが◎であり、好適に使用できるレベル
○:全てが○か◎の評価であり、実用レベル
△:△があり、使用が困難なレベル
×:×があり、実用レベルでない
【0042】
実施例実施例及び比較例において使用した防曇剤は次のとおりである。
(a)グリセリンモノオレート(理研ビタミン社製、商品名「リケマールOL−100E」)、
(b)ジグリセリンラウレート(理研ビタミン社製、商品名「リケマールL−71−D」)、
(c)ジグリセリンオレート(理研ビタミン社製、商品名「リケマールO71」)、
(d)ポリエチレングリコールオレート(理研ビタミン社製、商品名「リケマールOE−809」)、
(e)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(理研ビタミン社製、商品名「リケマールB−205」)、
(f)オレイルジエタノールアミン、
(g)ロジンエステル(荒川化学(株)製、商品名:A−100)
【0043】
実施例及び比較例において使用した樹脂は次のとおりである。
(A)エチレン−α−オレフィン系共重合体(シングルサイト触媒で重合されたもの、α−オレフィン=ヘキセン−1、密度=0.914g/cm、MI=1.0g/10分)
(B)低密度ポリエチレン(密度=0.922g/cm、MI=0.5g/10分)
(C)エチレン-α-オレフィン系共重合体(α−オレフィン=オクテン−1、密度=0.926g/cm、MI=2.0g/10分)
(D)エチレン-α-オレフィン系共重合体エチレン-α-オレフィン系共重合体(シングルサイト触媒で重合されたもの、α−オレフィン=ヘキセン−1、密度=0.904g/cm、MI=4.0g/10分)
(E)エチレン-α-オレフィン系共重合体エチレン-α-オレフィン系共重合体(シングルサイト触媒で重合されたもの、α−オレフィン=オクテン−1、密度=0.918g/cm、MI=4.0g/10分)
(F)直鎖状低密度ポリエチレン(密度=0.920g/cm、MI=2.3g/10分)
(G)エチレン-α-オレフィン系共重合体(シングルサイト触媒で重合されたもの、α−オレフィン=オクテン−1、密度=0.868g/cm、MI=0.5g/10分)
(H)エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量=15質量%、MI=2.2g/10分)
(I)エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量=15質量%、MI=1.0g/10分)
(J)結晶性ポリプロピレン系樹脂(エチレン含量約4%、融点162℃)
(K)非晶性ポリプロピレン系樹脂(ホモ アタクチック)
(L)ポリブテン−1系樹脂(プロピレンをコモノマーとする共重合体)密度=0.890g/cm、MI=2.0g/10分)
(M)非晶性ポリプロピレン系樹脂(プロピレン−エチレンランダム アタクチック)
【0044】
[実施例1〜5]
表1の実施例1〜5に示すような樹脂及び防曇剤を用いて、2台の押出機を使用し、2種3層の環状ダイスより両外層と内層からなる3層構成のチューブを溶融押出し、そのチューブを水冷リングを用いて急冷し、約500μmの厚みの未延伸チューブを得た。防曇剤の添加方法は、実施例1〜5に示す防曇剤を押出機のスクリューの圧縮部手前に高圧ポンプにて注入する方法を用いた。チューブの両外層と内層の層比率は、外層が15%と15%で合計30%であり、内層が70%であった。防曇剤の添加手段としては液体注入法で行った。 未延伸チューブ成形用の押出機は一軸のものを用い、スクリューはダルメージスクリューを用いた。
押出機の温度設定は長手方向で6つの温度調節ブロックにおいて、樹脂供給ホッパーから、200℃、230℃、250℃、260℃、260℃、260℃で行った。得られた未延伸チューブに500kVの加速電圧で加速した電子線を4メガラッド照射して架橋処理を行い、引き続きインフラヒーターによる輻射加熱で、未延伸チューブを140℃まで加熱しつつ、2組のニップロール間の速度比により流れ方向に7倍、チューブ内にエアーを注入することにより機械の流れ方向と直角方向に7倍延伸し、エアーリングによりバブルの最大径の部分に冷風を当てて冷却する。その後折りたたんで、それぞれ厚み約10μmの実施例1〜5の収縮性フィルムを得て、評価を行った。表6に評価結果を示す。
【0045】
[比較例1〜10]
防曇剤の構成を表2、表3に示すものに変更し、実施例1と同様にして収縮性フィルムを得て、評価を行った。表7、表8に評価結果を示す。
【0046】
[実施例6〜8]
表4の実施例6〜9に示すような樹脂及び防曇剤を用いて、3台の押出機を使用し、3種5層の環状ダイスより両表面層、芯層、中間層からなる5層構成のチューブを溶融押出し、水冷リングを用いて急冷却して未延伸チューブ(パリソン)を得た。
各層所定の比率となるように、各押出量を設定し、断面観察にて層構成を確認した。
添加剤の添加方法は、実施例6〜8に示す添加剤を押出機のスクリューの圧縮部手前に高圧ポンプにて注入する方法を用いた。得られた未延伸チューブを延伸部に送り、赤外加熱ヒーター、熱風加熱にて50℃となるように加熱し、そのゾーンでは縦方向に延伸されており、その延伸倍率は、加熱入りのピンチローラーの速度と巻取機の速度との速比で調整した。空冷リングで冷却させながらエアーを注入してバブルを形成する。デフレーター部で折りたたみダブルのフィルムとなり、若干ヒートセットを50℃で行い巻取機にて巻き取った。延伸倍率についてはMD方向で3倍、TD方向で3.5倍とし、厚み11μmとなるようにし、押出量を調整した。スリッターにて、ダブルのフィルム原反よりシングルに剥ぎながらスリットを行い、実施例6〜8の収縮性フィルムを得て、評価を行った。表9に評価結果を示す。
【0047】
[実施例9、10]
樹脂、防曇剤の構成を表4に示すものを用い、未延伸チューブの加熱温度を90℃、延伸倍率についてはMD方向で4倍、TD方向で4倍にし、最終のフィルム厚みを実施例9は12μmにし、実施例10は13μmにした他は実施例6〜8と同様にして収縮性フィルムを得て、評価を行った。表9に評価結果を示す。
【0048】
[比較例11〜14]
樹脂、防曇剤の構成を表5に示すものに変更し、実施例6〜8と同様にして収縮性フィルムを得て、評価を行った。表9に評価結果を示す。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
【表5】

【0054】
【表6】

【0055】
【表7】

【0056】
【表8】

【0057】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によって得られるポリオレフィン系樹脂組成物、及び該組成物を使用した収縮性フィルムは良好な低温防曇性、透明性、光沢、滑り性、ホットタックシール強度を有するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−α−オレフィン共重合体を40重量%以上含むポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、防曇剤を0.3〜5.0重量部混合してなるポリオレフィン系樹脂組成物であって、前記防曇剤が(A)3価以上の多価アルコールの脂肪酸エステルが50〜94重量%、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルが3〜47重量%、(C)ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルが3〜47重量%からなることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項2】
(A)3価以上の多価アルコールの脂肪酸エステルの多価アルコールが、グリセリン又はポリグリセリンであることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項3】
エチレン−α−オレフィン共重合体を40重量%以上含むポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、防曇剤を0.3〜5.0重量部混合してなるポリオレフィン系樹脂組成物層を少なくとも表層の一つとして含み、前記防曇剤が(A)3価以上の多価アルコールの脂肪酸エステルが50〜94重量%、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルが3〜47重量%、(C)ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルが3〜47重量%からなることを特徴とする収縮性フィルム。
【請求項4】
(A)3価以上の多価アルコールの脂肪酸エステルの多価アルコールが、グリセリン又はポリグリセリンであることを特徴とする請求項3に記載の収縮性フィルム。

【公開番号】特開2007−45855(P2007−45855A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228630(P2005−228630)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(303046266)旭化成ライフ&リビング株式会社 (64)
【Fターム(参考)】