説明

ポリオレフィン系組み立て容器

【課題】板状体を折り目で曲折するのみで組み立て可能で、組み立て、解体が容易で組み立て前後の強度の低下が少なく、リサイクルも容易な組み立て容器を提供する。
【解決手段】内面側にポリオレフィン系非発泡シートを積層したポリオレフィン系押出発泡シート板状体からなり、底面板11に側面板12、13を折り曲げ自在に連設し、その両側に延長辺14、15を折り曲げ自在に連設し、延長辺14の上部に掛止突辺15を突設し、側面板13の上端に折り目を介して折返し辺17を折り曲げ自在に連設し、その上端に折畳み辺18を連設してなり、底面板11の周囲に側面板12、13を起立させ、延長辺同士14、15を折り重ねて側面板13の外面に折り重ね、折返し辺17を側面板13の外面側に折り返し、折畳み辺18で掛止突辺16を巻き込んで組み立てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な組み立て容器に関し、さらに詳しくは、ポリオレフィン系押出発泡シートを用いた組み立て容器に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、組み立て容器としては、ポリスチレン系樹脂発泡体にV字状等のヒンジ部を設け、ポリスチレン系樹脂発泡体の表面側に可撓性フィルムを積層することにより、屈曲を可能とした容器は公知である(例えば、特許文献1、特許文献2等参照。)。また、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等の合成樹脂発泡シートを用い、少なくとも片面に合成樹脂フィルムを積層した平板状シートから組立式箱体を作ることも公知である(例えば、特許文献3等参照。)。これら従来の組み立て容器においては、両面に合成樹脂フィルムを積層した場合は別として、片面に合成樹脂フィルムを積層する場合では、内面側に合成樹脂フィルムを積層することは必須となっていない。そして、平板状シートの組立は、係合用突起と係合孔との嵌め込み係合の構造が採用されている。
【特許文献1】実開平4−65727号公報
【特許文献2】実開平4−135420号公報
【特許文献3】特開平11−59656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
公知のポリスチレン系樹脂発泡体を用いた組み立て容器にあっては、素材の可撓性に制限があることから、折り曲げ部は、内面側がV字状に切れ込んだ肉薄のヒンジ部を設け、かつ少なくともヒンジ部分の容器外面側には肉薄としたヒンジ部分が破損しないために可撓性フィルムを積層する等の必要がある。よって、このポリスチレン系樹脂発泡体を用いた組み立て容器の場合には、ポリスチレン系樹脂発泡体に可撓性フィルムを積層する工程に加え、ヒンジ部を加工する工程が生じるだけでなく、折角、断熱性の良いポリスチレン系樹脂発泡体を使用していても、ヒンジ部には切り込みが存在するため、厚みが薄くなりその断熱性が低下するといった欠点も有する。
【0004】
一方、ポリプロピレン系樹脂等の合成樹脂発泡シートの少なくとも片面に合成樹脂フィルムを積層した平板状シートから組立式箱体を作るについては、ポリプロピレン系樹脂からなる合成樹脂発泡シート自体が、可撓性に富むことから、上記したポリスチレン系樹脂発泡体のような欠点はなくなる。しかし、上記特許文献3(特開平11−59656号公報)に示される組立式箱体に使用される合成樹脂発泡シートは、両面に合成樹脂フィルムを積層した場合は別として、片面に合成樹脂フィルムを積層する場合には、内面側に合成樹脂フィルムを積層することが必須となっていない。これでは、内容物で容器が汚染されることを防止し得ない。そして、汚染の程度を小さくするには、表面が発泡シートより平滑で、汚染し難い、合成樹脂フィルムを内面に積層することが必須となる。さらに、両面に合成樹脂フィルムを積層した場合、組立の際の曲折のための折り目は、内面側の合成樹脂フィルムを残し、外面側の合成樹脂フィルムと発泡シートとに切り込みを付与している。これでは、折角積層した外面側の合成樹脂フィルムの強度を利用しないだけでなく、発泡シートの断熱性に欠陥を生じさせる結果となる。加えて、この組立式箱体の組立方法は、係合用突起と係合孔との嵌め込み係合構造が用いられている。この組立方法では、係合用突起の損傷等で係合状態が弱くなる等の問題が生ずる。
【0005】
本発明は、上記のような従来の組み立て容器の問題点に鑑み、ポリオレフィン系押出発泡シート板状体を折り目で曲折するのみで組み立て可能で、係合用突起と係合孔による嵌め込み係合構造を採用することなく、また接着剤や止着金具を使用せずに組み立て可能であり、また内容物による汚染を改善し、さらに組み立てが容易で、しかも係合用突起と係合孔との嵌め込み係合構造等を使用せず、係合用突起の損傷等も生じ得ずることなく、かつ組み立て前後の強度の低下が少なく、また接着剤や止着金具を使用しないことから解体が容易であるとともに、接着剤や止着金具といった異物質の混入がなくリサイクルも容易な組み立て容器を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る組み立て容器は、少なくとも内面側にポリオレフィン系非発泡シートを積層したポリオレフィン系押出発泡シート板状体からなり、四角形の底面板の各辺に折り目を介して側面板を折り曲げ自在に連設し、各側面板の両側に折り目を介して延長辺を折り曲げ自在に連設し、隣接する側板面から延設した延長辺の下部を折り目を介して折り曲げ自在に連結するとともに、対向する一対の側面板の上端に折り目を介して折返し辺を折り曲げ自在に連設し、さらに該折返し辺の上端略中央部に折畳み辺を連設してなり、前記底面板の周囲に各側面板を起立させ、隣接する側面板間に連設した延長辺同士を折り重ね、該折り重ねた延長辺を前記折返し辺を設けた一対の側面板の外面に折り重ね、前記折返し辺を側面板の外面側に折り返し、さらに該折返し辺の上端に設けた折畳み辺で前記側面板の外面に折り重ねた延長辺を巻き込んで組み立てるようにしたことを特徴とする。
【0007】
さらに好ましい態様は、少なくとも内面側にポリオレフィン系非発泡シートを積層したポリオレフィン系押出発泡シート板状体からなり、四角形の底面板の各辺に折り目を介して側面板を折り曲げ自在に連設し、各側面板の両側に折り目を介して延長辺を折り曲げ自在に連設し、隣接する側板面から延設した延長辺の下部を折り目を介して折り曲げ自在に連結するとともに、対向する一対の側面板両側の延長辺の上部から側方へ掛止突辺を突設し、他の対向する一対の側面板の上端に折り目を介して折返し辺を折り曲げ自在に連設し、さらに該折返し辺の上端略中央部に折畳み辺を連設してなり、前記底面板の周囲に各側面板を起立させ、隣接する側面板間に連設した延長辺同士を折り重ね、該折り重ねた延長辺を前記折返し辺を設けた一対の側面板の外面に折り重ね、前記折返し辺を側面板の外面側に折り返し、さらに該折返し辺の上端に設けた折畳み辺で前記側面板の外面に折り重ねた延長辺の掛止突辺を巻き込んで組み立てるようにしたポリオレフィン系組み立て容器である。
【0008】
前記組み立て容器における折り目は、ポリオレフィン系押出発泡シート板状体を押圧加工して設けることが好ましい。
【0009】
前記組み立て容器におけるポリオレフィン系押出発泡シートの厚さは0.8〜10mmの範囲とすることが好ましい。また、ポリオレフィン系押出発泡シートの密度は、0.5〜0.05g/cm3の範囲内であることが好ましい。さらに、ポリオレフィン系非発泡シートの厚さは200μm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の組み立て容器は、少なくとも内面側にポリオレフィン系非発泡シートを積層したポリオレフィン系押出発泡シート板状体を使用しているので、組み立てた容器に収容される内容物による汚染の程度を大巾に改善し得る。さらに、底面板周囲に各側面板を起立させ、隣接する側面板間に連設した延長辺同士を折り重ねて折返し辺を設けた側面板の外面に折り重ねたうえで、前記折返し辺を側面板の外面側に折り返して折畳み辺で側面板の外面に折り重ねた延長辺を巻き込んで、さらには該延長辺に設けた掛止突辺を巻き込んで組み立てるようにしたことから、組み立てが容易であるとともに、容器の組み立てに係合用突起と係合孔との嵌め込み係合構造等を使用していないので係合用突起の損傷等が生じ得ず、組み立て前後の強度の低下が少ない。また接着剤や止着金具を使用していないので解体も容易である。加えて、素材が、ポリオレフィン系非発泡シートとポリオレフィン系押出発泡シート板状体との組み合わせであり、かつ、接着剤や止着金具を使用していないので、異物質が混入しないことから、リサイクルが容易であり、環境にやさしい。さらに、ポリオレフィン系非発泡シートを積層したポリオレフィン系押出発泡シート板状体からなるので、容器の軽量性、断熱性、耐水性、価格性に非常に優れている。また、折り目に切り込みをいれないことから、強度や断熱性が低下することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の組み立て容器は、少なくとも内面側にポリオレフィン系非発泡シートを積層したポリオレフィン系押出発泡シート板状体からなる。本発明で使用するポリオレフィン系押出発泡シートとは、例えば、特開2000−136260号公報、特表平5−506875号公報(ポリプロピレン系樹脂に電子線を照射して長鎖分岐を導入した改質ポリプロピレンが開示されている。)等に開示されるごとき、改質ポリプロピレン系樹脂に揮発性発泡剤ないしは分解型発泡剤を使用して押出発泡した発泡シート等をいう。これらポリオレフィン系押出発泡シートの中でも、特開2000−136260号公報に開示されている、ポリプロピレン系樹脂とイソプロピレン単量体とラジカル重合開始剤とを混練して得られる改質ポリプロピレン系樹脂を押出発泡した発泡シートが、製造が容易で、溶融粘度の調整も容易であり、また、経済的に有利である点から、特に好ましい。前記の混練されるポリプロピレン系樹脂に対するイソプレン単量体の使用量(イソプレン単量体の一部をイソプレン単量体と共重合可能な他のビニル系単量体で置き換えて用いる場合には、これらの合計使用量)は、原料ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、さらには0.3〜10重量部であることが好ましい。イソプレン単量体の使用量が0.1重量部よりも少ない場合、改質ポリプロピレン系樹脂の発泡性が少なくなる傾向があり、一方、20重量部よりも多い場合、ポリプロピレン系樹脂の特徴である剛性などが損なわれる傾向がある。また、前記改質ポリプロピレン系樹脂の180℃、剪断速度122/secでの溶融粘度は、900〜3000Pa・sが好ましく、1200〜2600Pa・sであるのがより好ましい。前記改質ポリプロピレン系樹脂の溶融粘度が3000Pa・sよりも大きい場合には、押出発泡時に押出機にかかる負荷が大きすぎ、安定的に押出発泡を行うことが困難となる傾向があり、一方、900Pa・sよりも小さい場合には、得られる発泡シートの剛性などの物性が得られにくい傾向がある。
【0012】
本発明に使用されるポリオレフィン系押出発泡シートの製造方法は、特に限定されるものではない。ポリオレフィン系押出発泡シートとして、前記の改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートを使用する場合等には、たとえば、押出機内で改質ポリプロピレン系樹脂と発泡剤を溶融混練後、押出機内において発泡最適温度に調節し、環状のリップを有するサーキュラーダイスを用い、そのダイスのリップから大気圧中に押し出して円筒状の発泡体を得、次いで、その円筒状発泡体を引き取りながら、冷却筒(マンドレル)による成形加工によって、延伸・冷却後、切り開いてシート状にする方法によって製造する等が好ましく採用される。また、改質ポリプロピレン系樹脂の製造と押出発泡を同時に行なってもよいし、サーキュラーダイスを用いず、Tダイ押出法を採用するなり、公知の製造方法を適宜選択できる。
【0013】
これらポリオレフィン系押出発泡シートの厚さは、0.8〜10mm程度であるのが好ましい。また、ポリオレフィン系押出発泡シートの密度は、0.5〜0.05g/cm3が好ましく、0.3〜0.06g/cm3がより好ましく、0.2〜0.08g/cm3が最も好ましい。ポリオレフィン系押出発泡シートが厚く、また密度が大きくなるほど組み立て容器の強度は大きくなるものの、容器が嵩張ったり重量が大きくなる上に、折り目で折り曲げ難くなる傾向がある。また、同じ厚さの発泡シートの場合、密度が大きくなるほど発泡倍率は低くなり、断熱性が低下する傾向にある。
【0014】
また、ポリオレフィン系非発泡シートとは、ポリエチレン系樹脂シート、ポリプロピレン系樹脂シートであるが、ポリオレフィン系押出発泡シートと同一素材であることが望まれる。すなわち、ポリオレフィン系押出発泡シートが、ポリプロピレン系押出発泡シートであるならば、ポリオレフィン系非発泡シートは、ポリプロピレン系樹脂シートであるのが、リサイクル性が良好であるので好ましい。このポリオレフィン系非発泡シートの厚さは、200μm以下が好ましく、180μm以下がより好ましい。ポリオレフィン系非発泡シートの厚さが200μmよりも厚い場合には、重量が大きくなるとともにコストが高くなり、また、折り曲げ難くなる傾向がある。厚さの下限は、ポリオレフィン系押出発泡シートの厚さや密度により、また、ポリオレフィン系非発泡シートを片面に積層するのか、両面に積層するのかによって異なるので、一概には限定し難いが、10μmが好ましく、30μmがより好ましく、50μmがさらに好ましく、80μmが特に好ましい。ポリオレフィン系非発泡シートの厚さが10μmよりも薄い場合には、剛性が低下する傾向がある。ポリオレフィン系押出発泡シートの両面に積層する場合には、ポリオレフィン系非発泡シートの厚さは、片面に積層する場合よりも薄くすることができる。なお、ポリオレフィン系押出発泡シートの両面にポリオレフィン系非発泡シートを積層する場合には、内面側、外面側を、必ずしも、同じ組成のポリオレフィン系非発泡シートにする必要はなく、組成を少し変更させたり、さらには厚みを変化させたり、適宜、組み立て容器に要求される物性等により自由に選択することができる。
【0015】
本発明における、内面側にポリオレフィン系非発泡シートを積層したポリオレフィン系押出発泡シート板状体を形成する方法にはとくに限定はなく、ポリオレフィン系押出発泡シートを作製したのちに、別途作製したポリオレフィン系非発泡シートを加熱または接着剤を用いて積層して形成してもよく、発泡シート上に直接Tダイから非発泡シートを押し出して積層して形成してもよい。また、非発泡シートを発泡シートに積層するにあたり、積層方法としては、エクストルージョンラミネート法、サーマルラミネート法、ホットメルトなどの接着剤によるラミネート法など一般的な方法を採用することができる。
【0016】
ポリオレフィン系押出発泡シート板状体は、公知の打ち抜き加工にて展開形状に打ち抜き加工すれば良い。打ち抜き加工法の例としては、例えば、トムソン打ち抜き加工などが採用される。この際、折り目は、前記打ち抜き加工時に同時に形成するのが好ましい。この折り目は、少なくともポリオレフィン系押出発泡シート板状体の内面側にポリオレフィン系非発泡シートが存在するようにして設ける。折り目は、例えば、トムソン打ち抜き加工を用いる場合には、切断のための刃を設けていないトムソン刃を、打ち抜き加工時に折り目に押圧することで簡単に付与出来る。曲折は、この折り目が設けられることで極めて容易に行える。
【0017】
そして、本発明では、展開形状のポリオレフィン系押出発泡シート板状体は、一般に使用される止着金具や接着剤や使用することなく、また、公知技術で採用されることの多い、凹凸の嵌合構造を使用することなく、さらには、特許文献3(特開平11−59656号公報)で代表されるような係合用突起と係合孔とを用いた、嵌め込み係合構造をも使用することなく組み立てられる。すなわち、単に、折り目によるポリオレフィン系押出発泡シート板状体の曲折によって、容器を組み立てる。このことで、組み立て後の係合用突起の損傷などによる容器強度の低下が生じ難く、また、止着金具や接着剤などの異物の混入がなくリサイクル性も向上するので好ましい。
【0018】
また、本発明の組み立て容器は、組立、分解が容易であるため、段ボール箱と同様の用途、または、段ボール箱が吸湿、水濡れ等で使用が制限される傾向にある用途にいずれも用いることが出来る。例えば魚介類、農産物等の食品保管、運搬用容器、各種内容物の通箱等に好ましく用いられる。
【実施例】
【0019】
本発明のポリオレフィン系組み立て容器を、図面に示した一実施の態様に基づき具体的に説明するが、本発明は、これらの具体的な実施態様によって何ら制限されるものではない。
【0020】
図1は、本発明のポリオレフィン系組み立て容器の一例を示す斜視図であり、符号1で示すものがポリオレフィン系組み立て容器であり、符号2で示すものは、必要に応じて使用される蓋体であり、図2は組み立て容器1に蓋体2を被せた状態の縦断面図である。図3は、図1、2に例示されたポリオレフィン系組み立て容器1を分解して展開した展開図である。ポリオレフィン系組み立て容器1は、図4に概念図として示したポリオレフィン系押出発泡シート板状体3を曲折するのみで、すなわち、嵌め込み係合構造をとることなく、また接着剤や止着金具を使用することなく組み立て、かつ分解可能に構成されている。図4(a)のポリオレフィン系押出発泡シート板状体3は、ポリオレフィン系押出発泡シート4の内面側(組み立て容器1の内面に位置する側)にポリオレフィン系非発泡シート5を積層した構造である。また、図4(b)のポリオレフィン系押出発泡シート板状体3は、ポリオレフィン系押出発泡シート4の内面側および外面側にポリオレフィン系非発泡シート5を積層した構造である。このように、本発明で用いるポリオレフィン系押出発泡シート板状体3は、少なくとも内面側にポリオレフィン系非発泡シート5が積層されている必要がある。これは、ポリオレフィン系組み立て容器1中に収容される内容物で容器が汚染されることを防止するため、表面がポリオレフィン系押出発泡シート4よりもより平滑で、汚染し難い、ポリオレフィン系非発泡シート5を存在させ、汚染の程度を少しでも小さくするためである。なお、ポリオレフィン系押出発泡シート4の外面側にもポリオレフィン系非発泡シート5を積層した場合には、組み立て容器1の外面側の汚染が防止され、また容器外面がポリオレフィン系非発泡シート5により補強されるとともに、表面の平滑性が高く綺麗な表面状態を得ることができる。組み立て容器外面に印刷を施す場合などには、印刷し易いように表面処理されたポリオレフィン系非発泡シートを使用することにより、美麗な印刷面を得ることができる。
【0021】
前記のようなポリオレフィン系押出発泡シート板状体3を曲折するのみで、すなわち、嵌め込み係合構造を取ることなく、また接着剤や止着金具を使用することなく組み立て可能な本発明の組み立て容器1は、例えば図3の展開図に示されるごとき形状にポリオレフィン系押出発泡シート板状体3を形成する。この展開状の組み立て容器1は、長方形の底面板11の長辺側に折り目21、21を介して対向する一対の長辺側面板12、12を折り曲げ自在に連設し、底面板11の短辺側に折り目22、22を介して対向する一対の短辺側面板13、13を折り曲げ自在に連設してある。各側面板12,13の両側には、折り目23,24を介してそれぞれ延長辺14,15を、各側面板12、13の高さ方向のほぼ全長にわたって折り曲げ自在に連設し、隣接する長辺側板面12から延設した延長辺14と短辺側面板13から延設した延長辺15の下部は、折り目26を介して折り曲げ自在に連結してある。なお、長辺側面板12から延設した延長辺14の上端縁は、長辺側面板12の上端縁に対して、ポリオレフィン系押出発泡シート板状体3の厚さtに相当する段差19を設け、延長辺14の高さh3=(h1−t)とされている。これは、後述するように組み立て容器1を組み立てた際に、該延長辺14の上から折り重ねられる折返し辺17が、その厚みの分だけ組み立て容器1の開口縁から上方へ突出することを防止するためである。なお、同様の理由で、短辺側面板13の高さh2は、長辺側面板12の高さh1に比べてポリオレフィン系押出発泡シート板状体3の厚さt分だけ短く形成されており、短辺側面板13の高さ(短辺側面板13の延長辺15の高さ)h2=(h1−t)=長辺側面板12の延長辺14の高さh3、として、延長辺14、15を折り重ねた時に、その上端縁の位置が一致するように形成してある。また、延長辺14、15の幅yはいずれも等しく、両者の合計幅2yは、短辺側面板13の幅wよりも狭く設定してあり、延長辺14,15を短辺側面板13の外面に折り重ねたときに、短辺側面板13の両側に折り重ねた延長辺14,14間に間隔が開くように形成してある。そして、対向する一対の長辺側面板12両側の延長辺14の上部には、側方へ掛止突辺16を突設してある。この掛止突辺16の突出幅xは、前記延長辺14、15の幅yと掛止突辺16の突出幅xとの和(x+y)の2倍が短辺側面板13の幅wとほぼ等しく、延長辺14、15を短辺側面板13の外側へ折り重ねたときに、両側に位置する掛止突辺16、16の先端同士がほぼ突き合わされる大きさに形成してある。また、対向する一対の短辺側面板13の上端には、2本の折り目27a、27bを介して折返し辺17を折り曲げ自在に連設し、さらに折返し辺17の上端略中央部に2本の折り目28a、28bを介して折畳み辺18が連設してある。折返し辺17の高さ方向の幅bと折畳み辺18の高さ方向の幅cは、いずれも掛止突辺16の高さ方向の幅aとほぼ等しくなるように形成されている。また、前記折返し辺17の2本の折り目27a、27bの間隔はポリオレフィン系押出発泡シート板状体3の厚さtの2倍とし、また折畳み辺18の2本の折り目28a、28bの間隔はポリオレフィン系押出発泡シート板状体3の厚さtと同じにすることで、折返し辺17を掛止突辺16の外側に折り返し、さらに折畳み辺18で掛止突辺16を巻き込んで容器を組み立てた際に、折返し辺17及び折畳み辺18が外側に膨らむことを防止してある。
【0022】
前記のような展開状態から、ポリオレフィン系組み立て容器1を組み立てる手順について、図5、図6を参照して説明する。先ず最初に、図5(a)、(b)に示すように、底面板11の各辺にそれぞれ折り目21、22を介して連設された長辺側面板12、短辺側面板13を順次、折り目21、22に沿って、それぞれを折り曲げ(本発明では曲折とも表現)、底面板11の周囲に各側面板21、22を起立させる。このとき、長辺側面板12および短辺側面板13を底面板11の周囲に起立させる順序に特に決まりはなく、いずれを先に起立させてもよいし、また一つの側面板を起立させた後、隣接する側面板を順次起立させていってもよい。このようにして各側面板12、13を底面板11の周囲に起立させると、各側面板12、13から延設した延長辺14,15同士が、折り目26で折り曲げられて重なり合う。この折り重ねられた状態の延長辺14、15を、図5(c)に示すように、長辺側面板12の延長辺14を外側にして、短辺側面板13の外面に折り重ねたうえで、図5(d)および図6(a)、(b)に示すように、短辺側面板13上端の折返し辺17を折り目27a、27bに沿って外側に折り返し、さらに該折返し辺17の上端に設けた折畳み辺18で短辺側面板13の幅方向の中央で突き合わさせた左右の掛止突辺16、16を巻き込んで容器を組み立てる。この組み立て容器1を分解して図3に示すような板状に展開したい時には、前記の組立と逆の操作をすれば良い。
【0023】
上記のようにして組み立てられた組み立て容器1は、長辺側面板12と短辺側面板13にそれぞれ連設された延長辺14、15が、短辺側面板13の外面に2重に重なることにより、矩形容器の基本形状が作られる。なお、図示した実施の態様は、長方形の容器の場合であるので、長辺側面板12と短辺側面板13と表示して説明しているが、正方形の容器の場合には、単に側面板12と側面板13となる。そして、図例の組み立て容器1では、長辺側面板12の延長辺14には掛止突辺16が設けられており、短辺側面板13の上端には、短辺側面板13と同幅で、高さの低い、折返し部17が連設され、この折返し部17の略中央部分には、掛止突辺16の突出幅xの2倍の幅2xで、折返し部17の高さbと略同じ高さcの折畳部18がさらに連設されていることから、前記のようにして矩形容器の基本形状が作られた後は、折返し部17を外側に折り曲げることにより、折返し部17と延長辺14、15の上部とが2重に重なることになり、容器の開口部が補強される。この状態において、突き合せ状態の左右の一対の掛止突辺16の裏面側に折畳み辺18を回し込む、すなわち巻き込むことにより、本発明のポリオレフィン系組み立て容器1は、使用に耐えられる状態に強固に固定される。また、折畳み辺18を巻き込む掛止辺16を、短辺側面板13に重ね合わせた延長辺14、15の内、外側に位置する延長辺14(長辺側面板12から延設した延長辺)のみに設けたことから、掛止突辺16の裏面側に短辺側面板13外面との間で折畳み辺18を挿入可能な空間が確保でき、掛止突辺16を巻き込んだ折畳み辺18の部分で折返し辺17が外側に膨らむといったこともない。また、この掛止突辺16の裏面側に巻き込まれた折畳み辺18部分は、容器の組み立て状態を保持するだけでなく、容器1を持ち上げる時の手掛け部としても利用することができる。
【0024】
なお、上述のポリオレフィン系組み立て容器1を、蓋体2で閉鎖したい場合には、どのような素材の蓋体を使用してもよい。例えば、蓋体2として、型内成形したポリスチレン系樹脂発泡体を使用することも出来るが、ポリオレフィン系組み立て容器1と同じ、又は類似のポリオレフィン系押出発泡シート板状体で形成するのが、容器1とともに回収して、分別せずに一挙にリサイクル可能である点から好ましい。この観点から言えば、ポリオレフィン系組み立て容器1と同一のポリオレフィン系押出発泡シート板状体を用いるのが特に好ましい。一方、型内成形したポリスチレン系樹脂発泡体からなる蓋体の場合には、組み立てる手間を省くことができる。また、蓋体2の形状についても特に制限はないが、例えば図2に示すように、天面板2aの下面に側面板2bを周設したものが一般的であり、側面板2bの高さdは、少なくとも組み立て容器1の折返し辺17の高さbより高くすることが、閉蓋状態の容器の強度を確保するうえで好ましい。
【0025】
(実施例1)
ポリプロピレンホモポリマー(三井化学(株)製、F102W)100重量部およびラジカル重合開始剤(t−ブチルパーオキシベンゾエート)0.4重量部を、リボンブレンダーを用いて攪拌混合した配合物を、計量フィーダで二軸押出機に供給し、液添ポンプを用いて押出機途中からイソプレン0.6重量部を供給し、前記二軸押出機中で溶融混練し、溶融押出することにより、180℃、剪断速度122/secでの溶融粘度1450Pa・sの改質ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。前記二軸押出機は。同方向二軸タイプであり、スクリュー径が44mmφであり、最大スクリュー有効長(L/D)が38であった。この二軸押出機のシリンダー部の設定温度を、イソプレン単量体圧入までは180℃、イソプレン圧入以降は200℃とし、スクリュー回転速度を150rpmに設定した。
得られた改質ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部および気泡核形成剤(永和化成工業(株)製、セルボンSC/K)0.6重量部を、リボンブレンダーで攪拌混合した配合物を65−90mmφタンデム型押出機に供給し、シリンダー温度220℃に設定した第1段押出機(65mmφ)中にて溶融させた後、発泡剤としてイソブタンを前記改質ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対し2.0重量部圧入混合し、160℃(ダイスの樹脂流入部に設置した温度センサーによって測定)に設定した第2段押出機(90mmφ)中で冷却し、サーキュラーダイ(127mmφ)より大気圧下に吐出量75kg/hで押し出し、外径335mmおよび本体長さ800mmの冷却筒にて成形しながら、所定の坪量になるように引き取りつつ延伸・冷却し円筒型発泡体を得、これをカッターで切り開くことにより、厚さ2.89mm、密度0.12g/cm3、幅1040mmのポリプロピレン系押出発泡シートを得た。
得られたポリプロピレン系押出発泡シートの片面に、ポリプロピレンホモポリマー(三井化学(株)製、F107DV)を用いて、押出ラミネート法により、厚さ100μmのポリプロピレン系非発泡シートを積層した。なお、押出ラミネート法においては、Tダイから出た溶融樹脂の温度を230〜240℃に調整した。
【0026】
得られた厚さ約3mm、密度0.12g/cm3のポリプロピレン系押出発泡シートの片面に厚さ100μmのポリプロピレン系非発泡シートを積層したポリオレフィン系押出発泡シート板状体を用いて、図3に示される形状に打ち抜き、非発泡シート積層面が内側になるように組み立てて、長さ55cm×幅31cm×高さ34cmであるポリオレフィン系組み立て容器を形成した。なお、この組み立て容器の延長片14,15の幅yは約10.5cm、掛止突辺16の突出幅xは約5cm、掛止突辺16の高さ方向の幅a、折返し辺17の高さ方向の幅bおよび折り畳み辺18の高さ方向の幅cはそれぞれ約5cmである。
【0027】
この容器は、適度の形態保持性を有し、組み立て、分解が容易であり、耐汚染性に優れた良好な容器となった。このポリオレフィン系押出発泡シートの厚みでは、積み重ね強度が少し弱いが、これもポリオレフィン系押出発泡シートを厚くしたり、積層するポリオレフィン系非発泡シートを厚くしたり、またはポリオレフィン系非発泡シートをポリオレフィン系押出発泡シートの両面に積層する等を行えば充分対応可能であることが判明した。
【0028】
(比較例1および2)
前記実施例1で使用したポリオレフィン系押出発泡シート板状体の熱伝導率と曲げ強度を段ボールと比較して表1に示す。これから、本発明で用いたポリオレフィン系押出発泡シート板状体の断熱性能が段ボールよりも優れていることが判る。また、ポリオレフィン系押出発泡シート板状体の曲げ強度は、段ボールとほぼ同程度であり、段ボールのように異方性を有しないことが判る。
【0029】
【表1】

*1 厚み約3mm、密度0.12g/cm3のポリオレフィン系押出発泡シートの片面に厚さ100μmのポリプロピレン系非発泡シートを積層したポリオレフィン系押出発泡シート板状体
*2 熱伝導率(λ)(W/mK)の測定条件
JIS A 1412に準拠
サンプルサイズ:200×200×各シート厚み(mm)
平均温度:20℃
*3 曲げ強度の測定条件
JIS A9511(K 7221)に準拠
支点間距離:100mm
支持台、くさびの先端部の半径:5mm
サンプルサイズ:約210×75×各シート厚み(mm)
*4は、測定用サンプルを段ボールのフルートに対して平行方向に切り出した場合の曲げ強度であり、*5は、測定サンプルを段ボールのフルートに対して直交方向に切り出した場合の曲げ強度である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のポリオレフィン系組み立て容器と蓋体の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の組み立て容器に蓋体を被せた状態の縦断面図である。
【図3】図1の組み立て容器を分解した展開図である。
【図4】(a)は、ポリオレフィン系押出発泡シートの内面側にポリオレフィン系非発泡シートを積層したポリオレフィン系押出発泡シート板状体の概念図であり、(b)は、ポリオレフィン系押出発泡シートの内外両面にポリオレフィン系非発泡シートを積層したポリオレフィン系押出発泡シート板状体の概念図である。
【図5】(a)〜(d)はポリオレフィン系組み立て容器の組み立て手順を示す説明図である。
【図6】(a)、(b)は折畳み辺を掛止突辺に巻き込む様子を示す要部の縦断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ポリオレフィン系組み立て容器
2 蓋体
3 ポリオレフィン系押出発泡シート板状体
4 ポリオレフィン系押出発泡シート
5 ポリオレフィン系非発泡シート
11 底面板
12 長辺側面板
13 短辺側面板
14、15 延長辺
16 掛止突辺
17 折返し辺
18 折畳み辺
19 段差
21〜26 折り目
27a、27b、28a、28b 折り目


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも内面側にポリオレフィン系非発泡シートを積層したポリオレフィン系押出発泡シート板状体からなり、四角形の底面板の各辺に折り目を介して側面板を折り曲げ自在に連設し、各側面板の両側に折り目を介して延長辺を折り曲げ自在に連設し、隣接する側板面から延設した延長辺の下部を折り目を介して折り曲げ自在に連結するとともに、対向する一対の側面板の上端に折り目を介して折返し辺を折り曲げ自在に連設し、さらに該折返し辺の上端略中央部に折畳み辺を連設してなり、前記底面板の周囲に各側面板を起立させ、隣接する側面板間に連設した延長辺同士を折り重ね、該折り重ねた延長辺を前記折返し辺を設けた一対の側面板の外面に折り重ね、前記折返し辺を側面板の外面側に折り返し、さらに該折返し辺の上端に設けた折畳み辺で前記側面板の外面に折り重ねた延長辺を巻き込んで組み立てるようにしたことを特徴とする、ポリオレフィン系組み立て容器。
【請求項2】
対向する一対の側面板両側の延長辺の上部から側方へ掛止突辺を突設し、折返し辺の上端に設けた折畳み辺で前記掛止突辺を巻き込むようにした請求項1記載のポリオレフィン系組み立て容器。
【請求項3】
ポリオレフィン系押出発泡シート板状体を押圧加工して折り目を設けてなる請求項1または2に記載のポリオレフィン系組み立て容器。
【請求項4】
ポリオレフィン系押出発泡シートの厚さが0.8〜10mmの範囲内である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系組み立て容器。
【請求項5】
ポリオレフィン系押出発泡シートの密度が0.5〜0.05g/cm3の範囲内である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン系組み立て容器。
【請求項6】
ポリオレフィン系非発泡シートの厚さが200μm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリオレフィン系組み立て容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−99385(P2007−99385A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295715(P2005−295715)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】