説明

ポリオール−IFN−ベータ複体

【課題】大多数のサイトカイン、並びに他の蛋白質は、特定のPEG連結部位を所有せず、そして上記の例とは異なり、ペグ化反応を通して生じたアイソマーのいくつかが一部または全体に不活性である可能性が極めて高く、即ち、最終混合物の活性の損失を引き起こす。部位特異的モノ−ペグ化は、即ち、そのような蛋白質複合体の製造における所望の到達点である。このような部位特異的モノ−ペグ化の方法を提供することが課題である。
【解決手段】PEG部分がヒトIFN−βのCys17に共有結合したPEG−IFNβ複合体が、チオール反応性ペグ化試薬を用いた特異的ペグ化の方法により製造される。本発明は、さらに、ポリペプチド、より特定すればIFN−βに、連続したPEG部分を段階的に連結する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は、引用によりその全内容を編入する米国仮出願番号60/083,339からの35U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ポリオール−IFN−β複合体(conjugates)に関し、ポリオールユニットがCys17に共有結合している。本発明のさらなる目的は、それらの部位特異的生産のためのプロセス並びに細菌感染、ウイルス感染、自己免疫疾患および炎症性疾患の治療、予防または診断におけるそれらの使用である。本発明は、さらに、ポリペプチドへの2または複数のPEG部分(moieties)の段階的連結方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒト繊維芽細胞インターフェロン(IFN−β)は抗ウイルス活性を有し、且つ新生物細胞に対してナチュラルキラー細胞を刺激することもできる。それは、ウイルスおよび二本鎖RNAsにより誘導される約20,000Daのポリペプチドである。組換えDNA技術によりクローン化された、繊維芽細胞インターフェロン遺伝子のヌクレオチド配列から、Derynkら(Nature,285:542−547,1980)は該蛋白質の完全アミノ酸配列を推定した。それは166アミノ酸長である。
【0004】
Shepardら(Nature,294:563−565,1981)は、その抗ウイルス活性を破壊する塩基842における変異(141位においてCys→Tyr)、およびヌクレオチド1119−1121の欠損を伴う変異クローンを記載した。
【0005】
Markら(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,81(18):5662−5666、1984)は、塩基469(T)を(A)に代えて17位においてCys→Serへのアミノ酸スイッチを生じさせることにより、人工的変異を挿入した。その結果のIFN−βは「天然」IFN−βとして活性であり、且つ長期保存(−70℃)の間、安定であったと報告された。
【0006】
ポリエチレンオキシド(PEO)としても知られている、親水性ポリマーのポリエチレングリコール(PEG)の分子に対する共有結合は、バイオテクノロジーおよび医薬における重要な応用を有する。そのもっとも共通の形態において、PEGは各末端にヒドロキシル基を有する直鎖状ポリマー:
【0007】
【化1】

【0008】
である。
この式は、簡単にHO−PEG−OHとして表すことができ、式中、−PEG−は末端基を有さないポリマーバックボーンを表すことを意味し、「−PEG−」は、
【0009】
【化2】

【0010】
を意味する。
PEGはメトキシ−PEG−OH(m−PEG)として共通に使用され、一方の末端は相対的に不活性なメトキシ基であり、他方の末端は化学修飾に供するヒドロキシル基である。
【0011】
【化3】

【0012】
分枝PEGsも共通に使用される。分枝PEGsはR(−PEG−OH)として表され、式中Rは中心のコア部分、例えばペンタエリスリトールまたはグリセロールを表し、そしてmは分枝の腕の数を表す。分枝の腕の数(m)は3から100またはそれ以上の範囲でありうる。ヒドロキシル基は化学修飾に供される。
【0013】
他の分枝形態、例えばPCT特許出願WO 96/21469に記載された形態は、化学修飾に供される単一の末端を有する。この種のPEGは(CHO−PEG−)R−Xとして表され、式中、pは2または3に等しく、Rは中心コア、例えばリジンまたはグリセロールを表し、そしてXは官能基、例えば化学修飾に供されるカルボキシルを表す。さらに別の分枝形態、「ペンダントPEG」は、反応性基、例えばカルボキシルを、PEG鎖の末端よりむしろPEGバックボーンに沿って有する。
【0014】
PEGのこれらの形態に加えて、バックボーン中の弱いかまたは分解可能な結合を伴ってポリマーを製造することもできる。例えば、Harrisは、米国特許出願06/026,716において、加水分解に供されるポリマーバックボーン中のエステル結合を伴うPEGが製造できることを示した。この加水分解は、反応スキム:
【0015】
【化4】

【0016】
に従い、ポリマーの分割をもたらして、低分子量の断片にする。
本発明によれば、用語ポリエチレングリコールまたはPEGは上記誘導体全てを含むことを意図する。
【0017】
エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマーはそれらの化学においてPEGと密接に関連しており、それらはその多くの応用においてPEGに代えて使用できる。それらは以下の一般式:
【0018】
【化5】

【0019】
を有し、式中、RはHまたはCHである。
PEGは高い水溶性並びに多くの有機溶媒中での高い溶解性を有する有用なポリマーである。PEGは無毒であり且つ非免疫原性である。PEGを化学的に水溶性化合物に連結する場合(ペグ化(PEGylation))、その結果の複合体は一般に水溶性であり並びに多くの有機溶媒に溶解性である。
【0020】
PEG−蛋白質複合体は現在蛋白質置換治療においておよび他の治療用途のために使用されつつある。例えば、ペグ化アデノシンデアミナーゼ(ADAGEN)は重篤な複合性免疫不全疾患(SCIDS)の治療に使用されつつあり、ペグ化L−アスパラギナーゼ(ONCAPSPAR)は急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療に使用されつつあり、そしてペグ化インターフェロン−α(INTRON(R)A)はC型肝炎治療のためのIII期のトライアルにおいて使用される。
【0021】
臨床上の効能を有するPEG−蛋白質複合体の一般的な総説に関しては、N.L.Burnham,Am.J.Hosp.Pharm.,15:210−218,1994を参照されたい。
【0022】
蛋白質をペグ化するための様々な方法が開発されてきた。蛋白質上に見いだされた反応性基へのPEGの結合は、典型的には、求電子的活性化PEG誘導体を利用して行われる。リジン残基およびN−末端上に見いだされたα−およびε−アミノ基へのPEGの連結は、生成物の混合物からなる複合体をもたらす。
【0023】
一般に、そのような複合体は、蛋白質分子あたり連結されたいくつかのPEG分子の集団からなり(「PEGマー(PEGmers)」)、0から蛋白質中のアミノ基の数までの範囲に及ぶ。一カ所修飾された蛋白質分子に関しては、PEGユニットを多くの異なるアミン部位に連結してよい。
【0024】
この種の非特異的ペグ化は、ほとんど不活性になる多くの複合体をもたらした。活性の低下は、多くのサイトカインおよび抗体の場合のように、蛋白質の活性な結合ドメインを遮蔽することにより引き起こされるのが典型的である。例えば、Katreらは米国特許4,766,106および米国特許4,917,888において、大過剰のメトキシ−ポリエチレングリコールN−サクシニミジルグルタレートおよびメトキシ−ポリエチレングリコールN−サクシニミジルスクシネートによるIFN−βおよびIL−2のペグ化を記載する。両蛋白質は微生物宿主細胞中で生産され、遊離システインからセリンへの部位特異的変異を可能にした。該変異は蛋白質フォールディングを促進するためにIFN−βの微生物発現において必要であった。特に、この実験において使用されたIFN−βは市販製品Betaseronであり、Cys17残基がセリンに置換されている。さらに、グリコシレーションの不在はその水溶液中での溶解性を低下させた。非特異的ペグ化は増大した溶解性をもたらしたが、主要な問題は活性および収量のレベルの低下であった。
【0025】
「PEG−インターフェロン複合体」と題された欧州特許出願EP 593 868は、PEG−IFN−α複合体の製造を記載する。しかしながら、ペグ化反応は部位特異的ではなく、よってPEG−IFN−α複合体の位置的アイソマーの混合物が得られる(Monkarshら、ACS Symp.Ser.,680:207−216,1997を参照されたい)。
【0026】
Kinstlerらは、欧州特許出願EP 675 201において、巨核球の成長および発生因子(MGDF)のN末端残基の、mPEG−プロピオンアルデヒドを用いた選択的修飾を例示した。これは、ロットごとの再生可能なペグ化および薬物速度論を可能にした。Gilbertらは、米国特許5,711,944において、IFN−αの最適レベルの活性を伴うペグ化が生じ得たことを例示した。この例においては、最適な複合体を得るために、ほねをおる精製工程が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】PCT特許出願WO 96/21469
【特許文献2】米国特許出願06/026,716
【特許文献3】米国特許4,766,106
【特許文献4】米国特許4,917,888
【特許文献5】欧州特許出願EP 593 868
【特許文献6】欧州特許出願EP 675 201
【特許文献7】米国特許5,711,944
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】Nature,285:542−547,1980
【非特許文献2】Nature,294:563−565,1981
【非特許文献3】Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,81(18):5662−5666、1984
【非特許文献4】Am.J.Hosp.Pharm.,15:210−218,1994
【非特許文献5】ACS Symp.Ser.,680:207−216,1997
【非特許文献6】Bioconjugate Chem.,4(5):314−318,1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
大多数のサイトカイン、並びに他の蛋白質は、特定のPEG連結部位を所有せず、そして上記の例とは異なり、ペグ化反応を通して生じたアイソマーのいくつかが一部または全体に不活性である可能性が極めて高く、即ち、最終混合物の活性の損失を引き起こす。
【0030】
部位特異的モノ−ペグ化は、即ち、そのような蛋白質複合体の製造における所望の到達点である。
Woghirenらは、Bioconjugate Chem.,4(5):314−318,1993において、そのような部位特異的ペグ化のためのチオール−選択的PEG誘導体を合成した。オルトピリジルジスルフィド反応性基の形態の安定なチオール−保護されたPEG誘導体が、蛋白質パパイン中の遊離システインに特異的に複合したことを示した。パパインとPEGの間に新たに形成されたジスルフィド結合は、マイルドな還元条件下において分割されることにより天然蛋白質を再生できた。
【0031】
本明細書中のあらゆる書類の引用文献は、そのような書類が関係のある先行技術であるとの承認としては意図されず、あるいは本出願のあらゆる請求項の特許性に対しての材料であると考えられる。あらゆる書類の内容または日付に関するあらゆる陳述は出願時における出願人にとって利用可能な情報に基づき、そしてそのような陳述の正確さに関する承認を構成しない。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明においては、ポリオール−IFN−β複合体、および特にPEG−IFN−β複合体が提供され、ポリオールユニットはCys17に共有結合される。特定の複合はチオール反応性ポリオール薬剤をIFN−β中のCys17残基に反応させることにより得られる。そのような複合体はインビボにおける増加した効能を示すことが予測される。この目的は、中性pHにおける増加した溶解性、増加した安定性(低下した凝集性)、低下した免疫原性、および「天然」IFN−βに関する活性の不損失を得ることである。そのような複合の結果は、意図された効果のための投薬数を減少させ、薬剤組成物の製剤化を単純化および安定化させ、そしておそらくは長期間の効果を増加させるはずである。
【0033】
本発明は、さらに、一連のPEG部分のポリペプチドに対しての段階的な連結のための方法を提供する。
本発明は、ポリオール部分、より特定すればPEG部分のヒトIFN−βのCys17残基への連結が、天然ヒトインターフェロン−βのよりもIFN−βの生物活性を予想以上に増加させた(または少なくとも保持し、そして低下はさせなかった)との発見に基づく。即ち、Cys17残基に連結したポリオール部分を有するIFN−βが同じかまたは増大したIFN−β生物活性を呈するばかりでなく、このポリオール−IFN−β複合体はポリオール部分により授けられた所望の特性、例えば増大した溶解性も提供する。
【0034】
本明細書で使用される「IFN−β」は、生物学上の流体からの単離により得られるか、または原核または真核宿主細胞からDNA組換え技術により得られるヒト繊維芽細胞インターフェロン並びに天然に生じる形態において17位に出現するシステイン残基を含む限り、その塩、機能的誘導体、前駆体および活性画分を意味する。
【0035】
本発明によるポリオール−IFN−β複合体中のポリオール部分は、直鎖または分枝鎖を有するあらゆる水溶性の単官能性または二官能性ポリ(アルキレンオキシド)でありうる。典型的には、上記ポリオールはポリ(アルキレングリコール)、例えばポリ(エチレングリコール)(PEG)である。しかしながら、当業者は、他のポリオール、例えばポリ(プロピレングリコール)およびポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのコポリマーが適切に使用されうることを認識することになる。
【0036】
本明細書にて使用するとおり、用語「PEG部分(moiety)」は、限定されないが、直鎖または分枝PEG、メトキシPEG、加水分解によるかまたは酵素により分解可能なPEG、ペンダントPEG、枝状PEG、PEGと一つまたは複数のポリオールのコポリマー、およびPEGとPLGA(ポリ(乳酸/グリコール酸))のコポリマーを含むことを意図する。
【0037】
本明細書にて使用される定義「塩」は、公知の方法を通して得ることができる化合物のカルボキシル基の塩とアミノ官能基の塩の両方を意味する。カルボキシル基の塩は、無機塩、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム塩および有機塩基の塩、例えばトリエタノールアミン、アルギニンまたはリジンのようなアミンを用いて形成されるものを含む。アミノ基の塩は、例えば塩酸のような無機酸および酢酸のような有機酸との塩を含む。
【0038】
本明細書において使用される定義「官能性(functional)誘導体」は、アミノ酸部分の側鎖上または末端のN−またはC−基上に存在する官能基から公知の方法に従って製造することができる誘導体を意味し、そしてそれらが薬学上受容可能である場合、即ち、それらが蛋白質の活性を破壊しないかまたはそれらを含む薬剤組成物に毒性を付与しない場合に、本発明に包含される。そのような誘導体は、例えば、カルボキシル基のエステルまたは脂肪族アミドおよび遊離アミノ基のN−アシル誘導体または遊離ヒドロキシル基のO−アシル誘導体を含み、そしてアルカノイル−またはアロイル−基のようなアシル−基で形成される。
【0039】
「前駆体」は、ヒトまたは動物の体内でIFN−βに変換される化合物である。
蛋白質の「活性画分」として、本発明は、単独でまたは関連分子あるいはそれに結合した残基、例えば糖またはリン酸の残基との組み合わせにおける、化合物自体のポリペプチド鎖のあらゆる断片または前駆体、あるいはそのような断片または前駆体が医薬としてIFN−βと同じ活性を示す場合には該ポリペプチド分子の集合体を意味する。
【0040】
本発明の複合体は当業界のあらゆる手法を用いて製造することができる。本発明の態様によれば、IFN−βを適切な溶剤中でペグ化試薬と反応させ、そして所望の複合体を単離し、そして例えば一つまたは複数のクロマトグラフィー法を適用することにより精製する。
【0041】
「クロマトグラフィー法」は、溶剤(移動相)が流れて通る支持体(定常相)の上にそれらが適用されることにより、混合物の成分を分離するために使用されるあらゆる技術を意味する。クロマトグラフィーの分離の原理は定常相と移動相の物理的性質の違いに基づく。
【0042】
いくつかの特定の種類のクロマトグラフィー法は文献においてよく知られており、液体、高圧液体、イオン交換、吸着、親和性、分配、疎水性、逆相、ゲル濾過、限外濾過または薄相クロマトグラフィーを含む。
【0043】
本出願において使用される「チオール−反応性ペグ化試薬」は、システイン残基のチオール基と反応可能なあらゆるペグ化試薬を意味する。それは、官能基、例えばオルトピリジルジスルフィド、ビニルスルフォン、マレイミド、ヨードアセトアミドおよびその他を含むPEGでありうる。本発明の好ましい態様によれば、チオール反応性ペグ化試薬は、PEGのオルトピリジルジスルフィド(OPSS)誘導体である。
【0044】
ペグ化試薬は、一方の末端のみが複合に利用可能である、そのモノ−メトキシル化形態、または両末端が複合に利用可能な二官能価の形態において、例えば単一のPEG部分に共有結合した2つのIFN−βで複合体を形成することにおいて、使用される。それは、500から100,000の間の分子量を有することが好ましい。
【0045】
本発明の複合体の製造のための典型的な反応スキムを以下に示す。
【0046】
【化6】

【0047】
上記スキムの第2の行は、PEG−蛋白質結合を分解する方法を公表する。mPEG−OPSS誘導体は、遊離のスルフィドリル基に関して高度に選択的であり、そしてIFN−βが安定な酸性pH条件下で迅速に反応する。高い選択性は、複合体の、天然形態のIFN−βおよびPEGへの変形(reduction)から証明することができる。
【0048】
蛋白質とPEG部分の間に生じたジスルフィド結合は循環(circulation)においては安定であることが示されたが、細胞環境内に入る際に還元されうる。よって、細胞内に入らないこの複合体は消えるまで循環内で安定であることが期待される。
【0049】
天然に生じる形態のヒトIFN−β中の31および141位に出現する他の2つのCys残基はジスルフィドブリッジを形成するため、チオール−反応性ペグ化試薬と反応しないので、上記の反応は部位特異的であることに注目するべきである。
【0050】
本発明は、2つまたは複数のPEG部分をポリペプチドに段階的に連結する方法にも向けられる。この方法は、低分子量活性化PEGが高分子量活性化PEGよりも蛋白質上の立体障害反応部位と、より競合的に反応するとの認識に基づく。高価な治療用蛋白質のPEG−修飾は、PEG複合体の製造を実用的にするためにはコスト上効果的にちがいない。さらに、糸球体濾過を減じてPEG−蛋白質複合体の薬学上の特性を最適化するためには、複合体は70kDaの分子量を有する蛋白質と均等な効果的サイズを有するべきである。これは、一つのPEGが連結される場合の部位特異的修飾に関して、20kDaよりも大きい分子量を有するPEG誘導体が好ましく連結されることを意味する。修飾の部位が立体的に混雑している(crowded)なら、大きなPEG部分上の反応基は、修飾部位に到達する困難を有するかもしれず、即ち、低収量をもたらすことになる。本発明によりポリペプチドをペグ化する好ましい方法は、その相対的に小さなサイズのために立体的に混雑した部位と反応できる小さなヘテロまたはホモの二官能性PEG部分を最初に連結することにより、部位特異的ペグ化の収量を増加させる。高分子量PEG誘導体の小さいPEGへの続く連結は、所望のペグ化蛋白質の高い収量をもたらす。
【0051】
本発明による2つまたは複数の連続したPEG部分のポリペプチドへの段階的連結方法は、低分子量のヘテロ二官能性またはホモ二官能性PEG部分を最初にポリペプチドに連結して、次に該ポリペプチドに連結した低分子量PEG部分の遊離末端に単官能性または二官能性PEG部分を連結することを含む。好ましくは、IFN−βであって立体的に混雑している部位に位置するCys17がPEG連結の好ましい部位であるポリペプチドへの、2つまたは複数の連続したPEG部分の段階的連結の次に、該PEG−ポリペプチド複合体を一つまたは複数の精製技術、例えばイオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、および逆相クロマトグラフィーを用いて精製することができる。
【0052】
低分子量PEG部分は式:
【0053】
【化7】

【0054】
を有し、式中、WおよびXはアミン、スルフィドリル、カルボキシルまたはヒドロキシル官能基と個別に反応することにより低分子量PEG部分をポリペプチドに連結する基である。WおよびXは、好ましくは、オルトピリジルジスルフィド、マレイミド類、ビニルスルフォン類、ヨードアセトアミド類、アミン類、チオール類、カルボキシル類、活性エステル類、ベンゾトリアゾールカーボネート類、p−ニトロフェノールカーボネート類、イソシアネート類、およびビオチンからなる群から選択される。低分子量PEG部分は、好ましくは、約100から5,000ドルトンの範囲の分子量を有する。
【0055】
ポリペプチドに連結する低分子量PEGの遊離末端への連結のための単官能性または二官能性PEG部分は、好ましくは、約100ドルトンから200kDaの範囲の分子量を有し、そして好ましくはメトキシPEG、分枝PEG、加水分解あるいは酵素により分解可能なPEG、ペンダントPEG、または枝状PEGである。単官能性または二官能性PEGは、さらに、式:
【0056】
【化8】

【0057】
を有し、式中、Yはポリペプチドに連結する低分子量PEG部分の遊離末端上の末端基に反応し、そしてZは−OCHであるかまたは反応性の基であることにより二官能性複合体を形成する。
【0058】
2つまたは複数のPEG部分の段階的連結のための上記方法により生成されたPEG−蛋白質複合体は、ポリペプチドが活性成分として有効な疾患または障害を治療するための医薬または薬剤組成物を製造するのに使用することができる。
【0059】
本発明の別の目的は、細菌またはウイルスの感染並びに自己免疫疾患、炎症性疾患および腫瘍の治療、診断または予後のための活性成分として、実質的に精製された形態の上記複合体を、薬剤組成物中の使用のために適切なものとするために提供することである。そのような薬剤組成物は本発明のさらなる目的を代表する。
【0060】
上記疾患の非限定例は、敗血症ショック、AIDS、リウマチ様関節炎、エリテマトーデス、および多発性硬化症を含む。
本発明のさらなる態様および利点は以下の記載において明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、精製前のPEG−IFN−β複合体の毛細管電気泳動(CE)グラフを示す。
【図2】図2A−Cは、サイズ排除クロマトグラフィー(Superose 12)により実施されたPEG−IFN−β複合体の精製を示し:図2Aは1回目の通過;図2Bは2回目の通過;図2Cは3回目の通過である。
【図3】図3は、クロマトグラフィーの3回目の通過からの、精製されたPEG−IFN−β複合体のSDS−PAGEクロマトグラフィーを示す。レーン1および4は蛋白質分子量標準物であり、レーン2は「天然」IFN−βであり、そしてレーン3はPEG−IFN−β複合体である。
【図4】図4は、IFN−βがmPEG−OPSS5kでペグ化された、精製PEG−IFN−βの毛細管電気泳動(CE)グラフを報告する。
【図5】図5は、精製されたPEG−IFN−β複合体のMALDI MSスペクトラムを報告する。
【図6】図6は、「天然」IFN−βの抗ウイルス活性とPEG−IFN−β複合体の抗ウイルス活性の比較を示す。細胞変性投薬量の水泡性口内炎ウイルスによるチャレンジの前に、WISH細胞を示された濃度のIFN−βサンプルと共に24時間インキュベートした。細胞変性効果はMTT変換による追加の48時間後に測定された。
【図7】図7は、Daudi細胞中におけるIFN−βとPEG−IFNの結合プロフィールを示す。
【図8】図8は、静脈内投与後のマウスにおけるIFN−βおよびPEG−IFNの薬物速度論プロフィールを示す。点線は各標準曲線に関するアッセイLOQを示す。
【図9】図9は、皮下投与後のマウスにおけるIFN−βおよびPEG−IFNの薬物速度論プロフィールを示す。点線は各標準曲線に関するアッセイLOQを示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明の一つの態様は、上記の疾患の一つを発症する危険のある対象またはそのような病理を既に示す対象への、薬学上活性量の本発明の複合体の投与である。
即効性の(active)法則に匹敵するあらゆる投与経路を使用することができる。非経口投与、例えば皮下、筋肉内または静脈内注射が好ましい。投与される活性成分の投薬量は、患者の年齢、体重および個々の応答性による医薬処方の基礎に依存する。
【0063】
投薬量は75kgの平均体重に関して日に10μgと1mgの間であることができ、好ましくは1日の投薬量は20μgと200μgの間である。
非経口投与のための薬剤組成物は、即効性の法則および適切な媒体を含む注射可能な形態で製造することができる。非経口投与のための媒体は当業界において公知であり、例えば、水、塩溶液、リンゲル液および/またはデキストロースを含む。媒体が少量の賦形剤を含むことにより、薬剤調製物の安定性および等張性を保持することができる。溶液の製造は通常の条件に従い実施することができる。
【0064】
本発明は特定の態様を参照して記載されてきたが、記載の内容は請求の範囲の意味および目的を超えて拡張することなしに当業者によりもたらされることが可能な全ての修飾および置換を含む。
【0065】
本発明は、以下の実施例により今記載されるが、実施例は何れの意味においても本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0066】
実施例1:PEG−IFN−β複合体の製造
mPEG5k−OPSSによるIFN−βの修飾
50mMの酢酸ナトリウムバッファー、pH3.6中の0.37mg/mlの濃度において安定な組換えヒトIFN−βをPEG−IFN−β複合体の製造に用いた。約1.0mlの6M尿素を0.37mg/mlの濃度(0.74mg,3.7X10−8moles)で2mlのIFN−βに加えた。mPEG5k−OPSSをIFN−β 1モルに対して50モルのモル過剰にて加え、そして両者をポリプロピレンバイアル中で37℃において2時間または50℃において1時間の何れかにおいて反応させた。反応混合物は毛細管電気泳動(CE)を用いて分析することにより、あらゆる精製前のペグ化反応によるPEG−IFN−β複合体形成の程度を測定した(図1)。この反応の典型的な収量は50% PEG−IFN−βである。反応生成物を0.22mmシリンジフィルターにより反応混合物から濾過して、そして濾過された溶液を次にサイズ排除カラムに負荷して(Superose12またはSuperdex75の何れか、ファルマシア)、50mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl,pH7.0バッファーを用いて溶出した。図2AはSuperose12サイズ排除クロマトグラフィーカラム上のPEG−IFN−β複合体の精製からの溶出プロフィールを示す。ピークを回収してSDS−PAGEにより分析した(図3)。PEG−IFN−β複合体を含む画分を一緒に保存して、濃縮物を次に再び同じサイズ排除カラムに負荷することにより、「天然」IFN−βピークの近接性により、さらにPEG−IFN−β複合体を精製した(図2B)。この手法を繰り返すことにより(3回通過)、精製度を確実にした(図2C)。図4および図5は、精製されたPEG−IFN−β複合体の、それぞれ毛細管電気泳動グラフおよびMALDI MSスペクトルを示す。
mPEG30k−OPSSによるIFN−βの修飾
50mMの酢酸ナトリウムバッファー、pH3.6中の0.36mg/mlの濃度において安定な組換えヒトIFN−βが提供された。3mlの脱イオン水中の約36mgのmPEG30k−OPSSを3mlのIFN−βに0.36mg/mlにて加え(1.08mg,4.9X10−8moles)、そして両者をポリプロピレンバイアル中で37℃にて2時間において反応させた。反応混合物は修飾の程度に関して毛細管電気泳動を用いて分析された。この反応の典型的な収量は<30%である。該溶液は次にサイズ排除カラムに負荷して(Superose12、ファルマシア)、50mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl,pH7.0バッファーを用いて溶出した。ピークを回収して、その内容物に関してSDS−PAGEにより分析した。
実施例2:PEG−IFN−β複合体の生物活性
ヒト組換えIFN−βの抗ウイルス活性に対するペグ化の効果を評価するために、ヒトWISH羊膜細胞を、新たに調製したIFN−β(ペグ化のために使用したのと同じロット)またはPEG−IFN−β複合体とプレインキュベートした。WISH−VSV細胞変性性アッセイにより測定されたIFN−β−媒介抗ウイルス活性を、Novickら、J.Immunol.,129:2244−2247(1982)のプロトコルに基づいて開発された抗ウイルスWISHバイオアッセイにより測定した。このWISHアッセイにおいて使用された材料は以下のとおりである:
WISH細胞(ATCC CCL 25)
−70℃に保存された、水泡性口内炎ウイルスストック(ATCC V−520−001−522)
IFN−β、ヒト組換え体、InterPharm Laboratories LTD(32,075−タイプ、バッチ#205035)、82 x 10IU/ml,比活性:222 x 10IU/mg
実施例1において製造されたとおりのpBS,pH7.4中で保持されたPEG−IFN−β複合体
WISH生育媒体(MEM高グルコース並びにイーグル塩+10% FBS+1.0% L−グルタミン+ペニシリン/ストレプトマイシン(100U/ml,100μg/ml)
PBS中5mg/mlにてマイナス70℃にて保存されたMTT。
【0067】
WISHアッセイのためのプロトコルは以下のとおりである:
IFN−βサンプルをWISHアッセイ媒体で2X出発濃度に希釈する。
平底96−ウエルプレート中のWISHアッセイ媒体中のIFN−βサンプルの3倍希釈を行い、各ウエルは50μlの希釈されたIFN−βサンプルを含む(いくつかの対照ウエルは50μlのWISHアッセイ媒体のみを含む)。
【0068】
トリプシン/EDTA溶液で対数増殖相のWISH細胞を採集し、WISHアッセイ媒体中で洗浄し、そして0.8 x 10細胞/mlの最終濃度にする。
50μlのWISH細胞懸濁液(ウエルあたり4 x 10細胞)を各ウエルに加える。細胞に暴露されるIFN−βの最終濃度は今1Xである。
【0069】
5%CO湿性インキュベーター中で24時間インキュベート後に、VSVストックの1:10希釈液(WISHアッセイ媒体中)50μl(48時間以内に100パーセントのWISH細胞を溶解することが予め測定された投薬量)を全てのウエルに加えるが、但しウイルスを含まない対照ウエルは除く(これらは等量のアッセイ媒体のみを受容する)。追加の48時間後に、25μlのMTT溶液を全てのウエルに加え、その後、プレートをインキュベーター中でさらに2時間インキュベートする。
【0070】
ウエルの含有物はプレートの倒置により除去し、そして200μlの100%エタノールをウエルに加える。
1時間後に、プレートはSoft max ProソフトウエアおよびSpectramax分光光度計システム(Molecular Devices)を用いて595nmにおいて読む。
【0071】
【表1】

【0072】
図6および上記表1において例示したとおり、PEG−IFN−β複合体は、IFN−βの新たに調製された親ロットのレベルより優れた抗ウイルス活性レベルを保持した。PEG−IFN−β複合体が新たに調製されたIFN−βよりも約4倍高い生物活性を有するとの観察も、WISH細胞アッセイ媒体の追加後の「天然」IFN−βに関してのPEG−IFN−β複合体の増大した安定性の結果であるかもしれない。
実施例3:PEG−IFNサンプルの相対活性のインビトロアッセイ
PEG[30kD]−IFN−βおよびPEG[2X20kD]−IFN−βの相対的生物活性を、実施例2に記載した標準プロトコルを用いたWISHアッセイにより測定した(表2)。3つの個別のアッセイを、別々の時間に3人の別の人により実施した。
【0073】
【表2】

【0074】
PEG−IFN−βの細胞上のその受容体への結合を、固定された量の125I−IFN−α2aの存在下で評価した。IFN−α2aはクロラミンT法を用いて125Iで放射性標識した。SephadexG25カラムに反応物を通し、そして蛋白質を含む画分を保存することにより(Pharmacia)、125I結合IFNα2aを遊離ヨウ素から分離した。125I−IFN−α2aをIFN−α2a ELISAアッセイ(Biosource,米国)により定量して、比活性を測定した。対数成長相で成長するDaudi細胞を採集して、2X10細胞を0.5nMの125I−IFN−α2aと共に3時間室温において、2%胎仔ウシ血清および0.1%アジ化ナトリウムを含むRPMI1640であるアッセイバッファーで希釈した、異なる濃度のPEG−IFN−βまたはIFN−α2a存在下でインキュベートした。インキュベーションの終わりに、フタレートオイルの層に細胞を回転して通過させ、そして細胞結合放射活性をガンマカウンターにより計数した。さらに、PEG[30kD]−IFN−βおよびPEG[2x20kD]−IFN−βの受容体への結合は、図7に示すとおり、IFN−βの結合活性に極めて類似または近似していた。
【0075】
さらに、Daudi細胞(ヒトB細胞リンパ腫)抗−増殖アッセイにおいて相対活性を測定した(表3)。全てのIFNsは200ng/mlの2x濃度において作成した。サンプルは、100μlの最終体積にてプレートの長さに沿って3倍希釈した。1x10細胞/ウエル(100μls)を各ウエルに加えて、CO湿性インキュベーター中で37℃において全部で72時間インキュベートした。48時間後に、トリチウム(H)チミジンを1μCi/ウエルにて20μlで加えた。72時間のインキュベート後に、Tomtek Plate Harvesterを用いてプレートを回収した。表3に示す結果は、ペグ化による検出可能なIFN活性の損失は観察されなかったことを示す。事実、活性は遊離IFN−βよりもいくらか高かったことがわかった。これは、遊離IFN中の不活性凝集物の形成によるかまたは定量方法の違いによるかもしれない(PEG−IFNに関してはアミノ酸分析で、IFN−βに関してはRP−HPLC)。
【0076】
【表3】

【0077】
実施例4:マウス静脈内投与における薬物速度論研究
静脈内投与
マウスに100ngのPEG[30kD]−IFN−βまたはPEG[2X20kD]−IFN−βを注射して、以後に示された時間において採血した。IFN−βの血清濃度は、IFN−β特異的ELISA(Toray Industries)により決定し、結果を図8に示す。28匹のメスB6D2F1株マウス(6−8週齢)(各約20g)を以下の4群に分けた:グループ1は500ng/mlのヒトIFN−βの200μlの単一巨丸剤を注射した9匹のマウスを含んだ(最終投薬量は100ng/マウス);グループ2(9匹のマウス)は等量のPEG30kD−IFN−βを200μl受けた;グループ3は等量のPEG(2X20kD)−IFN−βを200μl受けた;そしてグループ4は陰性対照として機能する3匹の未注射マウスのグループである。血液サンプル(約200μl/サンプル)を、9回の示された時間において毛細管チューブを伴うレトロ眼窩静脈叢の破壊により回収した。血液サンプルは1時間室温においてクロット形成させて、リム化してミクロ遠心分離した。そこから取り出した血清は、全部のサンプルが回収されるまで−70℃において保存した。血清は、Torayアッセイを用いて生物学上活性なヒトIFN−βの存在に関してアッセイした。結果は、曲線下のエリア(AUC)がPEG−IFNサンプル対遊離IFN−ベータにおいて顕著に増強されること、およびPEG−IFNサンプル対遊離IFN−ベータおよびPEG[2X20kD]−IFN−βがPEG[30kD]−IFN−βよりも優れていることを示唆する。
皮下投与
マウスにIFN−βおよびPEG−IFN(100ng/マウス)を皮下注射した。図9は、曲線下のエリア(AUC)の全部は、遊離IFN−βに比してPEG−IFNサンプルに関して劇的に増強されることを示す。薬物速度論の研究は、より長い寿命および増加したAUCを有するPEG−IFNサンプルと一致する。
実施例5:低分子量PEG部分のポリペプチドへの連結
OPSS−PEG2k−ヒドラジドによるインターフェロン−ベータのタッギング
【0078】
【化9】

【0079】
組換えヒトインターフェロン−βを50mM酢酸ナトリウムバッファーpH3.8中で0.33mg/mlにて溶液中に用意した。約3.6mg(蛋白質のモルに対して40モル過剰)のヘテロ二官能性PEG試薬、OPSS−PEG2k−ヒドラジドを含む2mlの脱イオン水を3mlの0.33mg/ml(0.99mg)IFN−βに加え、そして2つをポリプロピレンバイアル中で1時間45℃において反応させた。反応混合物を次に毛細管電気泳動により分析することにより、修飾の範囲を測定した。典型的な収量は90−97%の範囲であり、インターフェロンβとPEG試薬の精製度に依存した。次に、溶液をサイズ排除カラム(Superdex75,Pharmacia)に負荷して、5mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl,pH7.0バッファーで溶出した。ピークを回収してSDS−PAGEにより分析した。モノペグ化インターフェロン−β画分を一緒に保存して、高分子量PEGを用いたさらなる修飾工程において用いた。
(OPSS)−PEG3400によるインターフェロン−βのタッギング
【0080】
【化10】

【0081】
組換えヒトインターフェロン−βを50mM酢酸ナトリウムバッファーpH3.8中で0.33mg/mlにて溶液中に用意した。約6.1mg(蛋白質のモルに対して40モル過剰)のホモ二官能性PEG試薬、(OPSS)−PEG3400を含む2mlの脱イオン水を3mlの0.33mg/ml(0.99mg)IFN−βに加え、そして2つをポリプロピレンバイアル中で2時間50℃において反応させた。反応を非還元SDS−PAGEにて監視して、最終反応混合物を毛細管電気泳動により分析することにより、修飾の範囲を測定した。インターフェロン−βを用いたこの反応の典型的な修飾は>95%であった。次に、溶液をサイズ排除カラム(Superdex75,Pharmacia)に負荷して、50mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl,pH7.0バッファーで溶出した。ピークを回収して、それらの含有物に関してSDS−PAGEにより分析した。モノペグ化インターフェロン−β画分を混合した。
実施例6:低分子量ペグ化ポリペプチドへの第2PEG部分の連結
mPEG30k−アルデヒドによるIFN−S−S−PEG2k−ヒドラジドの修飾
【0082】
【化11】

【0083】
実施例5のIFN−S−S−PEG2k−ヒドラジドの混合した画分に、蛋白質に対して20倍過剰のmPEG30k−ALDを加えた。反応は室温において(25℃)4時間実施し、そしてサンプルをサイズ排除カラム(Superose6,Pharmacia)に加えることにより、修飾収量を測定した。この反応の修飾の収量は典型的には>80%であり、PEG試薬の精製度と反応条件に依存した。
【0084】
この発明を今完全に記載するため、発明の精神および範囲から逸脱することなく且つ過度な実験を要することなく、広範囲の均等なパラメーター、濃度、および条件内で同等のことが実施できることは、当業者により認識されることになる。
【0085】
本発明は特定の態様に関連して記載されてきたが、さらに修飾可能であることは認識されることになる。本出願は、一般に本発明の原理に従う本発明のあらゆるバリエーション、使用または適合を包含するように意図され、そしてそのような本発明からの逸脱を本発明の属する業界の範囲で公知または慣習のしきたりの範囲内とし、請求の範囲に従う前記の本質的特徴に適用してよいものとしてよい。
【0086】
定期刊行物またはアブストラクト、公表されたかまたは未公表の米国または外国の特許出願、発行されたU.S.または外国の特許、またはあらゆる他の文献を含む、本明細書に引用された全ての文献は引用により本明細書に全てが編入され、引用された文献に表示された全てのデータ、表、図面、およびテキストを含む。
【0087】
公知の方法の工程、慣用の方法の工程、公知の方法または慣用の方法に対する言及は、本発明のあらゆる側面、記載または態様が関連分野において開示されるか、教示されるか、または示唆される承認ではけっしてない。
【0088】
特定の態様の前記記載は、当業者の知識を適用することにより(本明細書にて引用した文献の内容を含む)、他の者が、過度な実験なしに、本発明の一般的概念から逸脱することなしに様々な応用のためにそのような特定の態様を容易に修飾および/または適合することができる発明の一般的性質をそうして完全に明らかにすることになる。よって、そのような適合および修飾は、本明細書に提示される教示およびガイダンスに基づき、開示された態様の均等の意味および範囲内であると意図される。本明細書の語法および用語法は記載の目的のためであって限定の目的のためではなく、本発明の語法および用語法は本明細書に提示の教示およびガイダンスの見地から、当業者の知識と組み合わせて当業者により理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトインターフェロン−βのCys17に共有結合したポリアルキレングリコール部分を有する、ポリオール−インターフェロン−β複合体。
【請求項2】
ポリアルキレングリコール部分がポリエチレングリコール(PEG)部分である、請求項1記載のポリオール−インターフェロン−β複合体。
【請求項3】
ポリオール−インターフェロン−β複合体が天然ヒトインターフェロン−βと同じかまたは高いインターフェロン−β活性を有する、請求項1または2記載のポリオール−インターフェロン−β複合体。
【請求項4】
工程:
ヒトインターフェロン−βのCys17に部位特異的かつ共有結合によりポリアルキレングリコール部分を連結するためのポリオール−反応性試薬をインターフェロン−βと反応させ;そして
ポリオール−インターフェロン−β複合体を回収すること
からなる、請求項1記載のポリオール−インターフェロン−β複合体を製造するための方法。
【請求項5】
ポリオール−反応性試薬がチオール−反応性ペグ化試薬である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
チオール−反応性ポリオール試薬がモノ−メトキシ化されている、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
チオール−反応性ポリオール試薬が二官能性である、請求項4または5記載の方法。
【請求項8】
チオール反応性ポリオール試薬が、オルトピリジルジスルフィド、ビニルスルフォン、マレイミド、およびヨードアセトアミドからなる群から選択される、請求項4または5記載の方法。
【請求項9】
チオール反応性ポリオール試薬が、モノメトキシ化されたポリオールのオルトピリジルジスルフィド誘導体である、請求項4または5記載の方法。
【請求項10】
インターフェロン−βの安定な酸性pHにて反応工程を実施する、請求項4記載の方法。
【請求項11】
活性成分としての請求項1ないし3の何れか1項記載のポリオール−インターフェロン−β複合体、および薬学上受容可能なキャリアー、賦形剤または補助薬剤を含む、薬剤組成物。
【請求項12】
感染、腫瘍および自己免疫および炎症性疾患を治療するために使用される、請求項1ないし3の何れか1項記載のポリオール−インターフェロン−β複合体。
【請求項13】
疾患が、敗血症ショック、AIDS、リウマチ様関節炎、エリテマトーデス、および多発性硬化症から選択される、請求項12記載のポリオール−インターフェロン−β複合体。
【請求項14】
医薬として使用するための、請求項1ないし3の何れか1項記載のポリオール−インターフェロン−β複合体。
【請求項15】
PEG−インターフェロン−β複合体の医薬としての使用であって、PEG−インターフェロン−β複合体は、以下の方法:
工程:
以下の式:
【化1】

を有する低分子量のヘテロ二官能性またはホモ二官能性PEG部分をインターフェロン−βと反応させるが、式中、WおよびXは100ないし5,000ドルトンの範囲の分子量を有する低分子量PEG部分をインターフェロン−βに連結するオルトピリジルジスルフィド基であり、
インターフェロン−βに連結した低分子量PEG部分を100ドルトンから200キロドルトンの範囲の部分を有する単官能性または二官能性PEG部分と反応させることにより、単官能性または二官能性PEG部分を低分子量PEG部分の遊離末端に連結してPEG−インターフェロン−β複合体を形成すること
からなる、インターフェロン−βにポリエチレングリコール(PEG)部分を連続して段階的に連結する方法であって、
単官能性または二官能性PEG部分が以下の式:
【化2】

を有し、式中、Yはインターフェロン−βに連結する低分子量PEG部分の遊離末端上の末端基に反応し、そしてZは−OCHであるかまたはXと反応性の基であることにより二官能性複合体を形成する、方法
により製造された、上記使用。
【請求項16】
細菌及びウイルスの感染、腫瘍および自己免疫および炎症性疾患を治療するために使用される薬剤組成物を製造するための、ポリオール−インターフェロン−β複合体の使用であって、ポリオール−インターフェロン−β複合体は、以下の方法:
工程:
以下の式:
【化3】

を有する低分子量のヘテロ二官能性またはホモ二官能性PEG部分をインターフェロン−βと反応させるが、式中、WおよびXは100ないし5,000ドルトンの範囲の分子量を有する低分子量PEG部分をインターフェロン−βに連結するオルトピリジルジスルフィド基であり、
インターフェロン−βに連結した低分子量PEG部分を100ドルトンから200キロドルトンの範囲の部分を有する単官能性または二官能性PEG部分と反応させることにより、単官能性または二官能性PEG部分を低分子量PEG部分の遊離末端に連結してPEG−インターフェロン−β複合体を形成すること
からなる、インターフェロン−βにポリエチレングリコール(PEG)部分を連続して段階的に連結する方法であって、
単官能性または二官能性PEG部分が以下の式:
【化4】

を有し、式中、Yはインターフェロン−βに連結する低分子量PEG部分の遊離末端上の末端基に反応し、そしてZは−OCHであるかまたはXと反応性の基であることにより二官能性複合体を形成する、方法
により製造された、上記使用。

【請求項17】
単官能性または二官能性PEG部分がメトキシPEG、分枝PEG、加水分解または酵素により分解可能なPEG、ペンダントPEG、または枝状PEGである、請求項15または16記載の使用。
【請求項18】
低分子量PEG部分および/または単官能性または二官能性PEG部分がポリエチレングリコールのコポリマーである、請求項15または16記載の使用。
【請求項19】
ポリエチレングリコールのコポリマーがポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールコポリマーおよびポリエチレングリコール/ポリ(乳酸/グリコール酸)コポリマーからなる群から選択される、請求項18記載の使用。
【請求項20】
インターフェロン−βに2つのPEG部分を連続して段階的に連結した後に、PEG−インターフェロン−β複合体を精製する工程をさらに含む、請求項15または16記載の使用。
【請求項21】
精製工程が、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、および逆相クロマトグラフィーからなる群から選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
疾患が、敗血症ショック、AIDS、リウマチ様関節炎、エリテマトーデス、および多発性硬化症から選択される、請求項16記載の使用。
【請求項23】
活性成分としての請求項4ないし10の何れか1項記載の方法により製造されたポリオール−インターフェロン−β複合体、および薬学上受容可能なキャリアー、賦形剤または補助薬剤を含む、薬剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−184929(P2010−184929A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100840(P2010−100840)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【分割の表示】特願2000−545574(P2000−545574)の分割
【原出願日】平成11年4月28日(1999.4.28)
【出願人】(507400516)メルク・セローノ・ソシエテ・アノニム (2)
【Fターム(参考)】