説明

ポリカルバゾリル(メタ)アクリレート発光組成物

本発明は、1種以上のりん光性有機金属化合物及び次式(I)のモノマーの1種以上から導かれる構造単位を含むポリマーを含んでなる組成物を提供する。式中、R1はH又はCH3であり、R2はH又はC1〜C5アルキルであり、R3はH又はCH3であり、R4及びR5は独立にH、CH3、t−ブチル、トリアリールシリル、トリアルキルシリル、ジフェニルホスフィンオキシド又はジフェニルホスフィンスルフィドであり、mは約1〜約20であり、nは約1〜約20である。本発明の組成物は、発光デバイス中の発光層として有用である。したがって本発明は、1種以上のりん光性有機金属化合物及び式(I)のモノマーの1種以上から導かれる構造単位を含むポリマーを含む発光層を含んでなる有機発光デバイスも提供する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカルバゾリル(メタ)アクリレート発光組成物及びそれを用いた有機発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電圧バイアスを受けると発光する薄膜材料を用いた有機発光デバイス(OLED)は、ますますポピュラーな形態のフラットパネルディスプレイ技術になるものと予想される。これは、OLEDが携帯電話、パーソナル・ディジタル・アシスタント(PDA)、コンピューターディスプレイ、車両用情報ディスプレイ、テレビジョンモニター並びに一般照明用光源を含む多種多様の潜在的用途を有するからである。鮮明な色、広い視角、フルモーションビデオとの適合性、広い温度範囲、薄くてコンフォーマブルな形状因子、低い所要電力、及び低コスト製造プロセスの実現可能性を有するので、OLEDは陰極線管(CRT)及び液晶ディスプレイ(LCD)に対する未来の代替技術と見られている。また、高い視感度効率のため、OLEDはある種の用途のための白熱灯及び恐らくは蛍光灯にさえ取って代わる可能性を有すると見られている。
【0003】
フルカラーOLEDを達成するための1つのアプローチは、ホストから発光ゲスト分子へのエネルギー移行を含んでいる。これを実現するためには、ホストの三重項エネルギー状態がゲスト分子より高くなければならない。カルバゾール誘導体は、金属含有発光ゲスト分子の存在下でホスト分子としてうまく働く見込みがあることが判明している。この点では、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)が多用される。しかし、PVKはその三重項エネルギーギャップが約2.5eVであるので理想的なホスト候補ではない。イリジウム(III)ビス(4,6−ジフルオロフェニル−ピリジナト−N,C2−ピコリナト)(FIrpic)は、OLEDに使用すると高い量子効率を示す青色りん光色素である。FIrpicの三重項エネルギーギャップは2.7eVであり、これはPVKの三重項エネルギーギャップより大きく、デバイス中で量子効率の低下をもたらす。したがって、分子が赤色、緑色及び青色発光錯体のホストとして働く可能性をなお維持しながら、高い三重項エネルギーギャップを有するポリマーを有するOLEDを開発することが当技術分野で要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0385377号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sergey Lamansky, Peter Djurovich, Drew Murphy, Feras Abdel-Razzaq, Hae-Eun Lee: "Highly Phosphorescent Bis-Cyclometalated Iridium Complexes: Synthesis, Photophysical Characterization, and Use in Organic Light Emitting Dioes", J.Am.Chem.Soc., vol.123, no.18, 2001, pages 4304-4312
【非特許文献2】Atsushi Aoki, Yuri Tamagawa, and Tokuji Miyashita: "Effect of Hole-Transporting Film Thichness on the Performance of Electroluminescent Devices Using Polymer Langmuir?Blodgett Films Containing Carbazole", Macromolecules, vol.35, no.9, 2002, pages 3686-3689
【発明の概要】
【0006】
一実施形態では、本発明は、1種以上のりん光性有機金属化合物及び次の式Iのモノマーの1種以上から導かれる構造単位を含むポリマーを含んでなる組成物に関する。
【0007】
【化1】

【0008】
式中、R1はH又はCH3であり、R2はH又はC1〜C5アルキルであり、R3はH又はCH3であり、R4及びR5は独立にH、CH3、t−ブチル、トリアリールシリル、トリアルキルシリル、ジフェニルホスフィンオキシド又はジフェニルホスフィンスルフィドであり、mは1〜約20であり、nは1〜約20である。
【0009】
別の態様では、本発明は、1以上の電極と、1以上の電荷注入層と、1種以上のりん光性有機金属化合物及び式Iのモノマーの1種以上から導かれる構造単位を含むポリマーを含む1以上の発光層とを含んでなる有機発光デバイスに関する。
【0010】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点は、添付の図面を参照しながら以下の詳しい説明を読んだ場合に一層よく理解されよう。添付の図面中では、図面全体を通じて類似の部分は同一の符号で表されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、ポリ(2−(9−カルバゾリル)−エチルメタクリレート)(点線)及びポリスチレン(PS)中に分散したFIrpic(1wt%)(実線)のりん光スペクトルを示す。
【図2】図2は、ポリ(2−(9−カルバゾリル)−エチルメタクリレート)である試料1(実線)の時間分解PLプロファイルを、PS対照品である試料3(点線)に対して示す。
【図3】図3は、ポリ(2−(9−カルバゾリル)−エチルアクリレート)である試料2(実線)の時間分解PLプロファイルを、PS対照品である試料3(点線)に対して示す。
【図4】図4は、PVKからなる比較試料(実線)の時間分解PLプロファイルを、PSからなる対照品(点線)に対して示す。
【図5】図5は、ホストとしてPVK(実線)及びポリ(2−(9−カルバゾリル)−エチルメタクリレート)(点線)をそれぞれ有する青色りん光OLEDのエレクトロルミネセンススペクトルを示す。
【図6】図6は、ホストとしてPVK(ひし形)及びポリ(2−(9−カルバゾリル)−エチルメタクリレート)(三角形)をそれぞれ有する青色りん光OLEDの効率を輝度に対して示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の組成物及びデバイスで使用するためのポリマーは、ペンダントカルバゾリル基を有するメタクリレートモノマーである式Iのモノマーから導かれる構造単位を含んでいる。場合によっては、カルバゾール単位の3,6位は酸化カップリング反応を受けやすいことがあり、これらの位置の1以上を保護するのが有利なことがある。したがって、ある実施形態では、R4及びR5はt−ブチル基であり、他の実施形態では、R4及びR5はトリアルキルシリル基及びトリアリールシリル基であり、さらに他の実施形態では、これらはジフェニルホスフィンオキシド又はジフェニルホスフィンスルフィドである。カルバゾールの3位及び6位を保護するためにはその他多種多様の基を使用することもでき、特に限定されないが、メチル、エチル、メトキシ、トリル、メチルシクロヘキシル及びハロメチルが挙げられる。他の実施形態では、R4及びR5は水素であり、カルバゾール単位の3位及び6位は保護されていない。
【0013】
式Iのモノマーは、当技術分野で公知の合成手順に従うことによって高い収率で得ることができる。式Iのモノマーは(メタ)アクリル酸のエステルであり、例えば、(メタ)アクリロイルクロリドとN−(2−ヒドロキシエチル)カルバゾールとのエステル化反応によって合成できる。かかるモノマーは、Aldrich Chemical社(米国ウィスコンシン州ミルウォーキー)のような供給源から商業的に入手することもできる。当業者には容易に理解される通り、使用する合成方法に応じ、n及びmの値は特定の値を有する整数であることがあり、或いは一定の分布を有するために平均値として表されることもある。
【0014】
特定の一態様では、n及びmの値は1であり、モノマーは次式を有する。
【0015】
【化2】

【0016】
式中、R1はH又はCH3である。特定の一実施形態では、R1はCH3であり、モノマーは次式のメタクリレートエステルである。
【0017】
【化3】

【0018】
別の特定の実施形態では、R1はHであり、モノマーは次式のアクリレートエステルである。
【0019】
【化4】

【0020】
モノマーとしての2−(9−カルバゾリル)−エチルメタクリレート及び2−(9−カルバゾリル)−エチルアクリレート、並びにポリマーとしてのポリ(2−(9−カルバゾリル)−エチルアクリレート)及びポリ(2−(9−カルバゾリル)−エチルメタクリレート)もまた、Aldrich Chemical社(米国ウィスコンシン州ミルウォーキー)のような様々な供給源から商業的に入手できる。
【0021】
ある実施形態では、本発明で有用なポリマーはホモポリマーである。他の実施形態では、ポリマーはコポリマーであり、さらに(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミド、ビニル芳香族モノマー、置換エチレンモノマー及びこれらの組合せから導かれる構造単位を含んでいる。コポリマーはブロックコポリマー、ランダムコポリマー、交互コポリマー又はグラフトコポリマーである。モノマー並びに開始剤、温度及び/又は溶媒のような反応条件を適切に選択することで、様々な種類のコポリマーを得ることができる。
【0022】
本発明で有用なポリマーは、遊離基開始剤、カチオン開始剤、アニオン開始剤などを含む開始剤によって生起されるモノマーの重合によって製造できる。重合は、バルク状態で、適当な溶媒を用いた溶解状態で、或いは適切な懸濁又は乳濁状態で実施できる。特定の一実施形態では、重合はベンゼン又はトルエンのような無極性溶媒中でアゾビスイソブチロニトリルのような遊離基開始剤を用いて実施される。
【0023】
(メタ)アクリレートモノマーを重合させるための方法は、当技術分野で公知である。ある実施形態では、重合反応は約−78〜約100℃の温度で実施できる。重合はまた、大気圧、大気圧未満の圧力、又は大気圧を超える圧力で実施できる。重合反応は、適当な分子量のポリマーを得るために必要な時間にわたって実施される。ポリマーの分子量は当業者にとって公知の技法のいずれかによって決定され、粘度測定法、光散乱法、浸透圧法などがある。ポリマーの分子量は、通例、数平均分子量(Mn)又は重量平均分子量(Mw)として表される。分子量平均値を決定するための特に有用な技法は、数平均分子量及び重量平均分子量の両方が得られるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)である。ある実施形態では、ポリマーのMwは皮膜形成を可能にするのに十分な程度に高いことが望ましく、通例は約5000g/molを超えることが望ましい。他の実施形態では、30000g/molを超えるMwのポリマーが望ましく、さらに他の実施形態では、70000g/molを超えるMwのポリマーが望ましい。Mwは、ポリスチレンを標準として用いて決定される。
【0024】
本発明の組成物及びデバイスで使用するためのりん光性有機金属化合物は、式L2MZを有している。式中、L及びZは独立に二座配位子であり、MはGa、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Ga、Ge、In、Sn、Sb、Tl、Pb、Bi、Eu、Tb、La、Po又はこれらの組合せである。
【0025】
一実施形態では、Mはイリジウムであり、りん光性有機金属化合物は有機イリジウム組成物である。
【0026】
ある実施形態では、Lはシクロメタレート化配位子である。ある特定の実施形態では、L及びZは独立に、フェニルピリジン、トリルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、フェニルイソキノリン、ジベンゾキノザリン、フルオレニルピリジン、ケトピロール、ピコリネート、アセチルアセトネート、ヘキサフルオロアセチルアセトネート、サリチリデン、8−ヒドロキシキノリネート、アミノ酸、サリチルアルデヒド、イミノアセトネート、2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾール、2−フェニルベンゾオキサゾール、2−フェニルベンゾチアゾール、クマリン、チエニルピリジン、フェニルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、3−メトキシ−2−フェニルピリジン、チエニルピリジン、フェニルイミン、ビニルピリジン、ピリジルナフタレン、ピリジルピロール、ピリジルイミダゾール、フェニルインドール、これらの誘導体又はこれらの組合せから導かれる。
【0027】
ある実施形態では、1種以上のりん光性有機金属化合物は次式の化合物である。
【0028】
【化5】

【0029】
式中、R11及びR12は一緒に置換又は非置換の単環式又は二環式ヘテロ芳香環を形成し、R13及びR14は各々独立にハロ、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、置換アルキル、置換アリール又は置換アリールアルキルであり、p及びqは独立に0又は1〜4の整数である。特定の実施形態では、Lはフェニルピリジンから導かれ、及び/又はZはピコリネートから導かれる。特定の一実施形態では、Mはイリジウムであり、Lは2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジンから導かれ、Zはピコリン酸から導かれ、りん光性有機金属化合物は次式を有する。
【0030】
【化6】

【0031】
この有機イリジウム化合物(FIrpic)は公知の青色りん光色素である。この有機イリジウム組成物は、American Dye Sources社(カナダ、ケベック)のような様々な供給源から商業的に入手できる。別法として、それは合成することもできる。そのためには、まず適当な反応条件下でシクロメタレート化用配位子2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジンを塩化イリジウム(III)と反応させてクロリド架橋シクロメタレート化イリジウムダイマー中間体を得、次いで適当な反応条件下で中間体をピコリン酸と反応させて有機イリジウム組成物を得る。
【0032】
他の実施形態では、りん光色素は赤色りん光色素、緑色りん光色素、青色りん光色素又はこれらの組合せである。
【0033】
例示的な青色りん光色素には、特に限定されないが、以下のものがある。
【0034】
【化7】

【0035】
例示的な緑色りん光色素には、特に限定されないが、以下のものがある。
【0036】
【化8】

【0037】
例示的な赤色りん光色素には、特に限定されないが、以下のものがある。
【0038】
【化9】

【0039】
本明細書に記載されるりん光性有機金属化合物は、前述したような標準技法又は当技術分野で公知の他の技法によって合成できる。別法として、本発明のりん光性有機金属化合物は、American Dye Sources社(カナダ、ケベック)のような商業的供給源から入手できる。
【0040】
一実施形態では、1種以上のりん光性有機金属化合物は、式Iのモノマーから導かれる構造単位のモル数に対して約0.01〜約25モル%の量で存在する。別の実施形態では、1種以上のりん光性有機金属化合物は約0.1〜約10モル%の量で存在する。別法として、有機金属化合物の量はポリマーの総重量に対する重量%として表すことができる。このような場合、有機金属化合物の量は約0.1〜約40重量%である。
【0041】
別の態様では、本発明は、式Iのモノマー及び式L′2MZ′の重合可能なりん光性有機金属化合物から導かれる構造単位を含むポリマーに関する。式中、L′及びZ′は独立に二座配位子であり、L′及びZ′の少なくとも一方はC2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C2-20置換アルケニル、C2-20置換アルキニル、C2-20アルケニルオキシ、C2-20アルキニルオキシ、スチリル、アクリロイル及びメタクリロイルから選択される1以上の置換基を含み、MはGa、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Ga、Ge、In、Sn、Sb、Tl、Pb、Bi、Eu、Tb、La、Po又はこれらの組合せである。
【0042】
ある実施形態では、MはTc、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt又はこれらの組合せである。他の実施形態では、MはRu、Pd、Os、Ir、Pt又はこれらの組合せである。特定の一実施形態では、MはIrであり、重合可能なりん光性有機金属化合物は有機イリジウム組成物である。
【0043】
一実施形態では、L′はシクロメタレート化配位子である。ある実施形態では、L′及びZ′は独立に、フェニルピリジン、トリルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、フェニルイソキノリン、ジベンゾキノザリン、フルオレニルピリジン、ケトピロール、ピコリネート、アセチルアセトネート、ヘキサフルオロアセチルアセトネート、サリチリデン、8−ヒドロキシキノリネート、アミノ酸、サリチルアルデヒド、イミノアセトネート、2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾール、2−フェニルベンゾオキサゾール、2−フェニルベンゾチアゾール、クマリン、チエニルピリジン、フェニルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、3−メトキシ−2−フェニルピリジン、チエニルピリジン、フェニルイミン、ビニルピリジン、ピリジルナフタレン、ピリジルピロール、ピリジルイミダゾール、フェニルインドール、これらの誘導体又はこれらの組合せから導かれる。他の特定の実施形態では、L′は1−フェニルイソキノリン、2−フェニルピリジン、これらの誘導体又はこれらの組合せから導かれる。
【0044】
ある特定の実施形態では、重合可能な有機金属化合物は次式の化合物である。
【0045】
【化10】

【0046】
式中、R10はC2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C2-20置換アルケニル、C2-20置換アルキニル、C2-20アルキニルオキシ、スチリル、アクリロイル、メタクリロイル又はこれらの組合せであり、R11及びR12は一緒に置換又は非置換の単環式又は二環式ヘテロ芳香環を形成し、R13は各々独立にハロ、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、置換アルキル、置換アリール又は置換アリールアルキルであり、pは0又は1〜4の整数である。基R10は有機金属化合物上の重合性基であり、一実施形態ではスチリル基、別の実施形態ではメタクリロイル基、さらに別の実施形態ではアクリロイル基である。
【0047】
特定の実施形態では、L′はフェニルピリジンから導かれ、及び/又はZ′はピコリネートから導かれると共に、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C2-20置換アルケニル、C2-20置換アルキニル、C2-20アルケニルオキシ、C2-20アルキニルオキシ、スチリル、アクリロイル及びメタクリロイルから選択される1以上の置換基を含む。特定の一実施形態では、Mはイリジウムであり、Lは2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジンから導かれ、Zはヒドロキシピコリン酸から導かれ、重合可能なりん光性有機金属化合物は次式を有する。
【0048】
【化11】

【0049】
式中、R10はC2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C2-20置換アルケニル、C2-20置換アルキニル、C2-20アルキニルオキシ、スチリル、アクリロイル、メタクリロイル又はこれらの組合せである。
【0050】
本発明の重合可能なりん光性有機金属化合物は多段階プロセスで製造できる。即ち、一実施形態では、水性2−メトキシエタノールのような溶媒の存在下で2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジンのような配位子前駆体をIrCl3のような金属ハロゲン化物と共に加熱してクロリド架橋シクロメタレート化イリジウムダイマー中間体(例えば、{(Fppy)2Ir(μ−Cl)}2)を得ることで第1の中間体を製造できる。クロリド架橋シクロメタレート化イリジウムダイマー中間体を塩基の存在下で4−ヒドロキシピコリン酸のような官能化補助配位子と反応させて対応する官能化有機イリジウム錯体を得ることができる。続いて、有機イリジウム錯体を、ビニル基を含む適当な有機反応体及び官能化有機イリジウム錯体と反応し得る官能基と反応させることで重合可能なりん光性有機金属化合物を得る。本明細書に記載する中間体の一部は、Aldrich Chemical社(米国ウィスコンシン州ミルウォーキー)又はAmerican Dye Sources社(カナダ、ケベック)のような商業的供給源から入手することもできる。
【0051】
一実施形態では、1種以上の重合可能なりん光性有機金属化合物は、式Iを有するモノマーの総モル数に対して約0.1〜約25モル%の量で存在する。別の実施形態では、1種以上のりん光性有機金属化合物は、式Iを有するモノマーの総モル数に対して約1〜約10モル%の量で存在する。
【0052】
本発明によって提供される組成物及びポリマーは、特に限定されないが、発光電気化学セル、光検出器、光伝導セル、フォトスイッチ、フォトトランジスター、ディスプレイデバイスなどを含む多種多様の用途で使用できる。かくして一態様では、本発明は、1以上の電極と、1以上の正孔注入層と、1種以上のりん光性有機金属化合物及び式Iのモノマーの1種以上から導かれる構造単位を有する1種以上のポリマーを含む組成物を含む1以上の発光層とを含んでなる発光デバイスを提供する。別の態様では、本発明は、1以上の電極と、1以上の正孔注入層と、式Iのモノマーの1種以上から導かれる構造単位及び重合可能なりん光性有機金属化合物から導かれる構造単位を有する1種以上のポリマーを含む組成物を含む1以上の発光層とを含んでなる発光デバイスを提供する。
【0053】
本発明の組成物は、有機発光デバイス中の電気活性層で使用するのに特によく適している。一実施形態では、本発明は、本発明の組成物又はポリマーから本質的になる電気活性層を含む有機発光デバイスを提供する。別の実施形態では、本発明は、本発明の組成物又はポリマーを有機発光デバイスの電気活性層の一成分として含む有機発光デバイスを提供する。一実施形態では、本発明は、本発明の組成物又はポリマーを有機発光デバイスの発光電気活性層の一成分として含む有機発光デバイスを提供する。
【0054】
有機発光デバイスは、通例、複数の層を含んでいる。かかる層には、最も簡単な場合、陽極層、対応する陰極層、及び前記陽極と前記陰極との間に配設された有機エレクトロホスホレセント層がある。電極間に電圧バイアスを印加した場合、陰極からエレクトロホスホレセント層中に電子が注入されると共に、エレクトロルミネセント層から陽極に電子が除去される(又は陽極からエレクトロルミネセント層中に「正孔」が「注入」される)。エレクトロホスホレセント層中で正孔が電子と結合して一重項又は三重項励起子を形成する際に発光が起こると共に、一重項励起子が放射崩壊によってエネルギーを環境に移送する際にも発光が起こる。
【0055】
陽極、陰極及び発光材料に加えて有機発光デバイス中に存在し得る他の構成要素には、正孔注入層、電子注入層及び電子輸送層がある。電子輸送層は陰極に接触している必要はなく、多くの場合に電子輸送層は効率的な正孔輸送体でなく、したがってそれは陰極に向かって移動する正孔をブロックするために役立つ。電子輸送層を含む有機発光デバイスの動作中には、電子輸送層中に存在する電荷キャリヤー(即ち、正孔及び電子)の大部分は電子であり、電子輸送層中に存在する正孔及び電子の再結合を通じて発光が起こり得る。有機発光デバイス中に存在し得る追加の構成要素には、正孔輸送層、正孔輸送発光層及び電子輸送発光層がある。
【0056】
式Iのモノマーから導かれる構造単位を含むポリマーは、極めて効率的なデバイスを与え得るために有機発光デバイス(OLED)のような用途で有用な三重項エネルギー状態を有する。さらに、これらのポリマーの三重項エネルギーはデバイス中に使用されるりん光色素の三重項エネルギーより大きくなり得る程度に高いものであり、したがってホスト分子として役立つことができる。
【0057】
有機エレクトロルミネセント層は、動作時に電子及び正孔の両方を実質的な濃度で含み、励起子形成及び発光のための部位を提供する有機発光デバイス中の層である。正孔注入層は、陽極に接触していて陽極からOLEDの内層への正孔注入を促進する層であり、電子注入層は、陰極に接触していて陰極からOLED中への電子注入を促進する層であり、電子輸送層は、陰極から電荷再結合部位への電子伝導を容易にする層である。電子輸送層は陰極に接触している必要はなく、多くの場合に電子輸送層は効率的な正孔輸送体でなく、したがってそれは陰極に向かって移動する正孔をブロックするために役立つ。電子輸送層を含む有機発光デバイスの動作中には、電子輸送層中に存在する電荷キャリヤー(即ち、正孔及び電子)の大部分は電子であり、電子輸送層中に存在する正孔及び電子の再結合を通じて発光が起こり得る。正孔輸送層は、OLEDの動作時に陽極から電荷再結合部位への正孔伝導を容易にすると共に、陽極に接触している必要はない層である。正孔輸送発光層は、OLEDの動作時に電荷再結合部位への正孔伝導を容易にすると共に、電荷キャリヤーの大部分が正孔であり、残留電子との再結合によってばかりでなくデバイス中の他の場所にある電荷再結合ゾーンからのエネルギー移行によっても発光が起こる層である。電子輸送発光層は、OLEDの動作時に電荷再結合部位への電子伝導を容易にすると共に、電荷キャリヤーの大部分が電子であり、残留正孔との再結合によってばかりでなくデバイス中の他の場所にある電荷再結合ゾーンからのエネルギー移行によっても発光が起こる層である。
【0058】
陽極として使用するのに適した材料には、四点プローブ技法で測定して約100オーム/平方以上のバルク導電率を有する材料がある。陽極としては、酸化インジウムスズ(ITO)が多用される。これは、ITOが光の透過に対して実質的に透明であり、したがって電気活性有機層から放出された光の脱出を容易にするからである。陽極層として使用できる他の材料には、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛、酸化亜鉛インジウムスズ、酸化アンチモン及びこれらの混合物がある。
【0059】
陰極として使用するのに適した材料には、負電荷キャリヤー(電子)をOLEDの内層に注入できるゼロ原子価金属がある。陰極として使用するのに適した各種のゼロ原子価金属には、K、Li、Na、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、Au、In、Sn、Zn、Zr、Sc、Y、ランタニド系列の元素、これらの合金及びこれらの混合物がある。陰極層として使用するのに適した合金材料には、Ag−Mg、Al−Li、In−Mg、Al−Ca及びAl−Au合金がある。層状の非合金構造体、例えば金属(例えば、カルシウム)又は金属フッ化物(例えば、LiF)の薄層をゼロ原子価金属(例えば、アルミニウム又は銀)の厚い層で覆ったものも、陰極として使用できる。特に、陰極はただ1種のゼロ原子価金属(とりわけ、アルミニウム金属)からなり得る。
【0060】
正孔輸送層で使用するのに適した材料には、1,1−ビス((ジ−4−トリルアミノ)フェニル)シクロヘキサン、N,N′−ビス(4−メチルフェニル)−N,N′−ビス(4−エチルフェニル)−(1,1′−(3,3′−ジメチル)ビフェニル)−4,4′−ジアミン、テトラキス(3−メチルフェニル)−N,N,N′,N′−2,5−フェニレンジアミン、フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン、p−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン、トリフェニルアミン、1−フェニル−3−(p−(ジエチルアミノ)スチリル)−5−(p−(ジエチルアミノ)フェニル)ピラゾリン、1,2−trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン、N,N,N′,N′−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1′−ビフェニル)−4,4′−ジアミン、銅フタロシアニン、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリアニリン、ポリビニルカルバゾール、トリアリールジアミン、テトラフェニルジアミン、芳香族第三アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、及び米国特許第6,023,371号に開示されているようなポリチオフェンがある。
【0061】
電子輸送層として使用するのに適した材料には、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,1−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール、1,3,4−オキサジアゾール含有ポリマー、1,3,4−トリアゾール含有ポリマー、キノキサリン含有ポリマー及びシアノPPVがある。
【0062】
定義
本発明の文脈中では、アルキルは、線状、枝分れ又は環状の炭化水素構造及びこれらの組合せを含むものであり、低級アルキル及び高級アルキルを包含する。好ましいアルキル基はC20以下のものである。低級アルキルは、炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基をいい、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル及びt−ブチルが挙げられる。高級アルキルは、炭素原子数7以上、好ましくは炭素原子数7〜20のアルキル基をいい、n−ヘプチル、s−ヘプチル、t−ヘプチル、オクチル及びドデシルが挙げられる。シクロアルキルはアルキルの部分集合であって、炭素原子数3〜8の環状炭化水素基を包含する。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びノルボルニルが挙げられる。アルケニル及びアルキニルは、2以上の水素原子がそれぞれ二重結合又は三重結合で置き換えられたアルキル基をいう。
【0063】
アリール及びヘテロアリールは、五員若しくは六員芳香環又はヘテロ芳香環であって窒素、酸素及び硫黄から選択される0〜3個のヘテロ原子を含むもの、二環式九員若しくは十員芳香環系又はヘテロ芳香環系であって窒素、酸素及び硫黄から選択される0〜3個のヘテロ原子を含むもの、或いは三環式十三員若しくは十四員芳香環系又はヘテロ芳香環系であって窒素、酸素及び硫黄から選択される0〜3個のヘテロ原子を含むものを意味する。六員乃至十四員芳香族炭素環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、インダン、テトラリン及びフルオレンがあり、五員乃至十員芳香族複素環としては、例えば、イミダゾール、ピリジン、インドール、チオフェン、ベンゾピラノン、チアゾール、フラン、ベンゾイミダゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ピリミジン、ピラジン、テトラゾール及びピラゾールがある。
【0064】
アリールアルキルとは、アリール環に結合したアルキル残基を意味する。その具体例はベンジル及びフェネチルである。ヘテロアリールアルキルとは、ヘテロアリール環に結合したアルキル残基を意味する。その具体例はピリジニルメチル及びピリミジニルエチルである。アルキルアリールとは、1以上のアルキル基が結合したアリール残基を意味する。その具体例はトリル及びメシチルである。
【0065】
アルコキシ又はアルコキシルとは、酸素を介して親構造に結合した、直鎖、枝分れ又は環状構造或いはこれらの組合せを有する炭素原子数1〜8の基をいう。その具体例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロピルオキシ及びシクロヘキシルオキシがある。低級アルコキシとは、炭素原子数1〜4の基をいう。
【0066】
アシルとは、カルボニル官能基を介して親構造に結合した、直鎖、枝分れ又は環状構造、飽和、不飽和又は芳香族構造或いはこれらの組合せを有する炭素原子数1〜8の基をいう。アシル残基中の1以上の炭素は、親構造への結合点がカルボニルに保たれる限り、窒素、酸素又は硫黄で置き換えることができる。その具体例としては、アセチル、ベンゾイル、プロピオニル、イソブチリル、t−ブトキシカルボニル及びベンジルオキシカルボニルがある。低級アシルとは、炭素原子数1〜4の基をいう。
【0067】
複素環とは、1〜3個の炭素が酸素、窒素又は硫黄のようなヘテロ原子で置き換えられたシクロアルキル又はアリール残基を意味する。本発明の技術的範囲に属する複素環の例には、ピロリジン、ピラゾール、ピロール、インドール、キノリン、イソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ベンゾフラン、ベンゾジオキサン、ベンゾジオキソール(置換基として存在する場合には一般にメチレンジオキシフェニルと呼ばれる。)、テトラゾール、モルホリン、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、チオフェン、フラン、オキサゾール、オキサゾリン、イソキサゾール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、トリアゾール、ベンゾトリアゾール及びトリアジンがある。
【0068】
置換とは、特に限定されないがアルキル、アルキルアリール、アリール、アリールアルキル及びヘテロアリールを含む構造単位において、その残基の3個以下のH原子が低級アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ハロアルキル、アルコキシ、カルボニル、カルボキシ、カルボキシアルコキシ、カルボキサミド、アシルオキシ、アミジノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、OCH(COOH)2、シアノ、第一アミノ、第二アミノ、アシルアミノ、アルキルチオ、スルホキシド、スルホン、フェニル、ベンジル、フェノキシ、ベンジルオキシ、ヘテロアリール又はヘテロアリールオキシで置き換えられたものをいう。前記フェニル、ベンジル、フェノキシ、ベンジルオキシ、ヘテロアリール及びヘテロアリールオキシの各々は、低級アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、ハロアルキル、アルコキシ、シアノ、フェニル、ベンジル、ベンジルオキシ、カルボキサミド、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ニトロ及び−NRR(式中、Rは独立にH、低級アルキル又はシクロアルキルであり、−RRは縮合して窒素を含む環を形成し得る。)から選択される1〜3個の置換基で任意に置換される。
【0069】
ハロアルキルとは、1以上のH原子がハロゲン原子で置き換えられたアルキル残基をいう。ハロアルキルという用語はペルハロアルキルを包含する。本発明の技術的範囲に属するハロアルキル基の例には、CH2F、CHF2及びCF3がある。
【0070】
シリルとは、1〜3個の炭素が四価ケイ素で置き換えられかつケイ素原子を介して親構造に結合したアルキル残基を意味する。シロキシとは、2つの炭素がアルキル残基で末端封鎖された四価ケイ素で置き換えられかつ酸素原子を介して親構造に結合したアルコキシ残基である。
【0071】
二座配位子とは、2つの部位を介して金属に結合できる配位子である。同様に、三座配位子とは、3つの部位を介して金属に結合できる配位子である。シクロメタレート化配位子とは、炭素−金属単結合及び1つ又は2つの金属−ヘテロ原子結合により金属原子に結合して環状構造を形成している二座又は三座配位子を意味し、ヘテロ原子はN、S、P、As又はOである。
【0072】
本明細書に記載される任意の数値は、低い値と高い値との間に2単位以上の開きがあるときは、低い値から高い値まで1単位ずつ増分する値をすべて含む。例えば、成分の量又は例えば温度、圧力、時間などのプロセス変量の値が1〜90、好ましくは20〜80、さらに好ましくは30〜70であると記載されている場合、本明細書には15〜85、22〜68、43〜51及び30〜32などの値が明示されているものとする。1未満の値については、1単位は場合に応じて0.0001、0.001、0.01又は0.1であると考えられる。これらは明確に意図しているものの例示に過ぎず、記載された最低値と最高値の間の数値の可能な組合せはすべて、本出願において同様に明記されていると考えるべきである。
【実施例】
【0073】
一般手順:分子量データは、UV/VIS検出器を備えたPerkin Elmer GPC Series 2000、Polymer Laboratories PLGel 5mmカラム、溶離剤としてのクロロホルム、及び較正標準としてのポリスチレン標準を用いて求めた。NMR分光法はBruker 400MHz測定器上で実施した。酸化インジウムスズ(ITO)でプレコートしたガラスはApplied Films社から入手した。ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)は、H.C.Starck社(ドイツ、レーバークーゼン)から購入した。2−(9−カルバゾリル)−エチルメタクリレート及び2−(9−カルバゾリル)−エチルアクリレートはAldrich Chemical社から入手し、受け入れたままで使用した。American Dye Source社(カナダ、ケベック)から購入したイリジウム(III)ビス(2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2)(FIrpic)をエレクトロホスホレセント色素として使用した。H.W.Sands社から購入した1,3−ビス[5−(4−(1,1−ジメチルエチル)フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(OXD−7)を電子輸送材料として使用した。Aldrich社から購入したポリビニルカルバゾール(PVK)を対照ホストとして使用した。
【実施例1】
【0074】
実施例1:ポリ(2−(9−カルバゾリル)−エチルアクリレート)の合成
【0075】
【化12】

【0076】
丸底フラスコ内において、2−(9−カルバゾリル)−エチルメタクリレート(2g)を4mLのN−メチルピロリドン(NMP)に溶解した。この溶液に、20μlのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のNMP溶液(0.1g/mL)を添加した。フラスコを凍結融解サイクル(×3)によって脱気し、重合を65℃で一晩進行させた。次いで、反応混合物を室温に冷却した。続いて、30mLの塩化メチレンを反応混合物に添加して溶液を希釈した。次に、この混合物をブレンダー内で300mLのメタノールに滴下したところ、その間に溶液から白色粉末が沈殿した。沈殿したポリマーを真空濾過で集めた。次に、ポリマーを40mLのクロロホルムに溶解し、300mLのアセトンから再沈殿させた。再び真空濾過を用いてポリマーを集め、次いで一晩真空乾燥した。ポリマーをGPC分析したところ、それは141500の重量平均分子量Mw及び2.12の多分散性指数PDIを有することがわかった。
【実施例2】
【0077】
実施例2:ポリ(2−(9−カルバゾリル)−エチルアクリレート)の合成
【0078】
【化13】

【0079】
丸底フラスコ内において、2−(9−カルバゾリル)−エチルアクリレート(0.4g)を2mLのNMPに溶解した。この溶液に、5μlのAIBNのNMP溶液(0.1g/mL)を添加した。フラスコを凍結融解サイクル(×3)によって脱気し、重合を65℃で一晩進行させた。次いで、反応混合物を室温に冷却した。続いて、3mLの塩化メチレンを反応混合物に添加して溶液を希釈した。次に、この混合物をブレンダー内で200mLのメタノールに滴下することでポリマーを白色粉末として沈殿させ、次いでこれを真空濾過で集めた。集めたポリマーを5mLのクロロホルムに再溶解し、100mLのメタノールから再沈殿させた。次に、真空濾過を用いてポリマーを集め、次いで室温で一晩真空乾燥して0.36gのポリマーを得た。ポリマーをGPC分析したところ、それは13000のMw及び1.5のPDIを有することがわかった。DSC分析は、ポリマーが101℃のガラス転移温度Tgを有することを示した。
【実施例3】
【0080】
りん光スペクトルを得るための一般手順
非冷却R928赤色感受性光電子増倍管を備えたPerkin Elmer LS55分光蛍光計を用いてりん光スペクトルを得た。典型的な手順は、ポリマーの試料を清浄な実験室用乳鉢内に配置し、熱的平衡を確保するため、測定前に試料を液体窒素中に2分間以上浸漬することを含んでいた。次に、試料を光学的に励起した。検出ゲートを初期の20マイクロ秒(μs)励起パルスから遅れた時刻に設定したLS55の遅延収集特性を用いることで発光スペクトルを得た。ポリ(2−(9−カルバゾリル)−エチルメタクリレート)及びポリスチレン(PS)中に分散したFIrpic(1wt%)のりん光スペクトルを図1に示す。
【0081】
FIrpicの三重項励起状態の寿命を測定するための一般手順
冷却R928光電子増倍管を備えたEdinburgh CD920分光計を用いて三重項励起状態の寿命を測定した。典型的な手順では、真空ジュワー瓶内において試料を4×10-5トルの真空下に配置した。次に、パルスダイオードレーザー(パルス幅55ps、繰返し速度10〜40kHz、1〜50nJ/パルス)を用いて試料を394nmで光学的に励起した。時間分解発光スペクトルを470nmで測定した。
【0082】
三重項励起状態の寿命を測定するための試料は次のようにして調製した。
【0083】
試料1:実施例1からのポリ(2−(9−カルバゾリル)−エチルメタクリレート)中に1重量%(wt%)(0.39モル%)のFIrpicを含む混合物を、1wt%FIrpic(1mlのテトラヒドロフラン(THF)中に10mgのFIrpic)0.010mL(0.1mg(0.0014mmol)のFIrpic)をTHF中の1wt%ポリ(9−カルバゾリル)−エチルメタクリレート1.0mL(0.01g(0.036mmol)の(9−カルバゾリル)−エチルメタクリレート構造単位)と混合することで調製した。次いで、溶液を予備清浄した石英基板上にスピンコートした。
【0084】
試料2:実施例2からのポリ(2−(9−カルバゾリル)−エチルアクリレート)中に1wt%のFIrpicを含む混合物を、1wt%FIrpic(1mlのTHF中に10mgのFIrpic)0.010mLをTHF中の1wt%ポリ(2−(9−カルバゾリル)−エチルアクリレート)1.0mLと混合することで調製した。次いで、溶液を予備清浄した石英基板上にスピンコートした。
【0085】
試料3:PS中に1wt%のFIrpicを含む混合物を、1wt%FIrpic(1mlのTHF中に10mgのFIrpic)0.010mLをTHF中の1wt%PS 1.0mLと混合することで調製した。溶液を予備清浄した石英基板上にスピンコートした。
【0086】
試料4:ポリ(ビニルカルバゾール)(PVK)中に1wt%のFIrpicを含む混合物を、1wt%FIrpic(1mlのTHF中に10mgのFIrpic)0.010mLをTHF中の1wt%PVK 1.0mlと混合することで調製した。溶液を予備清浄した石英基板上にスピンコートした。
【0087】
図2〜4からわかる通り、りん光色素(FIrpic)は、ポリ(2−(9−カルバゾリル)−エチルメタクリレート)及びポリ(2−(9−カルバゾリル)−エチルアクリレート)中に分散した場合、絶縁性PSマトリックスに比べて同等な三重項崩壊プロファイル(同等な寿命)を有している。かかるデータは、三重項エネルギー測定の結果(即ち、FIrpic色素からホスト材料への測定可能なエネルギー逆移行が存在しないこと)と合致している。FIrpicからPVKへのエネルギー逆移行は、PS:FIrpic混合物に比べてPVK:FIrpic混合物のフォトルミネセント(PL)崩壊が速いこと(図4)によって証明される点に注意されたい。これらの結果は、ポリ(2−(9−カルバゾリル)−エチルメタクリレート)及びポリ(2−(9−カルバゾリル)−エチルアクリレート)が共にFIrpic用のホスト材料として優れた選択物であることを明確に示している。
【実施例4】
【0088】
実施例4:青色りん光性有機発光デバイス(OLED)
2つのりん光性OLEDを作製したが、一方はITO/PEDOT:PSS/PVK:FIrpic:OXD−7/CsF/Alの構造を有する対照品であり、他方はPVKの代わりにポリ(2−(9−カルバゾリル)−エチルメタクリレート)を用いた例示的なデバイスである。クロロベンゼン中の2.0wt%ポリ(2−(9−カルバゾリル)−エチルメタクリレート)1.0mL、クロロベンゼン中の1.0wt%FIrpic 0.20mL、及びクロロベンゼン中の2.0wt%OXD−7 0.30mLを混合することで、ポリ(2−(9−カルバゾリル)−エチルメタクリレート):FIrpic:OXD−7(100:10:30)の溶液を調製した。同様に、PVK溶液、FIrpic溶液及びOXD−7溶液を混合することでPVK:FIrpic:OXD−7(100:10:30)の溶液を調製した。
【0089】
OLEDは次のようにして作製した。陽極として使用する予備パターン化ITO被覆ガラスをUV−オゾンで10分間清浄処理した。次に、スピンコーティングによって60nmのPEDOT:PSS層をITO上に堆積させ、次いで空気中において180℃で1時間ベークした。次いで、アルゴン(水分及び酸素は共に1ppm未満であった)を満たしたグローブボックス内に試料を移した。次いで、PEDOT:PSS層上に溶液をスピンコートし、(80℃に予熱した)ホットプレート上で10分間ベークした。次に、混合物層上にCsF(4nm)/Al(130nm)二層陰極を熱蒸着した。金属被覆後、Norland Products社(米国ニュージャージー州クランベリー)から入手したNorland 68光学接着剤でシールしたカバーガラスを用いてデバイスを封入した。活性面積は約0.2cm2である。
【0090】
OLEDは同様な青色光を発生する(図5)。かかるOLEDの性能を図6に示す。ホストとしてポリ(2−(9−カルバゾリル)−エチルメタクリレート)を用いた例示的なデバイスは、ホストとしてPVKを用いた対照品に対して高い効率を示すことがわかる。
【0091】
以上、本明細書には本発明の幾つかの特徴のみを例示し説明してきたが、当業者には数多くの修正及び変更が想起されるであろう。したがって、以下の特許請求の範囲は本発明の真の技術思想に含まれるこのような修正及び変更のすべてを包含することを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のりん光性有機金属化合物及び下記式Iのモノマーの1種以上から導かれる構造単位を含むポリマーを含んでなる組成物。
【化1】

式中、
1はH又はCH3であり、
2はH又はC1〜C5アルキルであり、
3はH又はCH3であり、
4及びR5は独立にH、CH3、t−ブチル、トリアリールシリル、トリアルキルシリル、ジフェニルホスフィンオキシド又はジフェニルホスフィンスルフィドであり、
mは1〜約20であり、
nは1〜約20である。
【請求項2】
ポリマーが次式のモノマーの1種以上から導かれる構造単位を含む、請求項1記載の組成物。
【化2】

式中、R1はH又はCH3である。
【請求項3】
1がHである、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
1がCH3である、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
ポリマーがさらに、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル酸アミド、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、メタクリル酸アミド又はこれらの組合せから導かれる構造単位を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
1種以上のりん光性有機金属化合物が式L2MZを有し、L及びZは独立に二座配位子であり、MはGa、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Ga、Ge、In、Sn、Sb、Tl、Pb、Bi、Eu、Tb、La、Po又はこれらの組合せである、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
MがIrである、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
Lがシクロメタレート化配位子である、請求項6記載の組成物。
【請求項9】
L及びZが独立に、フェニルピリジン、トリルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、フェニルイソキノリン、ジベンゾキノザリン、フルオレニルピリジン、ケトピロール、ピコリネート、アセチルアセトネート、ヘキサフルオロアセチルアセトネート、サリチリデン、8−ヒドロキシキノリネート、サリチルアルデヒド、イミノアセトネート、2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾール、2−フェニルベンゾオキサゾール、2−フェニルベンゾチアゾール、クマリン、チエニルピリジン、フェニルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、3−メトキシ−2−フェニルピリジン、チエニルピリジン、フェニルイミン、ビニルピリジン、ピリジルナフタレン、ピリジルピロール、ピリジルイミダゾール、フェニルインドール、これらの誘導体又はこれらの組合せから導かれる、請求項6記載の組成物。
【請求項10】
Lが2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジンから導かれる、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
Zがピコリネートから導かれる、請求項6記載の組成物。
【請求項12】
1種以上のりん光性有機金属化合物が次式の化合物である、請求項1記載の組成物。
【化3】

式中、
11及びR12は一緒に置換又は非置換の単環式又は二環式ヘテロ芳香環を形成し、
13及びR14は各々独立にハロ、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、置換アルキル、置換アリール又は置換アリールアルキルであり、
p及びqは独立に0又は1〜4の整数である。
【請求項13】
1種以上のりん光性有機金属化合物が次式の化合物である、請求項1記載の組成物。
【化4】

【請求項14】
1種以上のりん光性有機金属化合物が青色りん光色素である、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
1種以上のりん光性有機金属化合物が緑色りん光色素である、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
1種以上のりん光性有機金属化合物が赤色りん光色素である、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
りん光性有機金属化合物が次式の化合物であり、
【化5】

ポリマーが次式のモノマーから導かれる構造単位を含む、請求項1記載の組成物。
【化6】

【請求項18】
りん光性有機金属化合物が次式の化合物であり、
【化7】

ポリマーが次式のモノマーから導かれる構造単位を含む、請求項1記載の組成物。
【化8】

【請求項19】
1以上の電極と、
1以上の電荷注入層と、
1種以上のりん光性有機金属化合物及び下記式Iのモノマーの1種以上から導かれる構造単位を含むポリマーを含む1以上の発光層と
を含んでなる有機発光デバイス。
【化9】

式中、
1はH又はCH3であり、
2はH又はC1〜C5アルキルであり、
3はH又はCH3であり、
4及びR5は独立にH、CH3、t−ブチル、トリアリールシリル、トリアルキルシリル、ジフェニルホスフィンオキシド又はジフェニルホスフィンスルフィドであり、
mは1〜約20であり、
nは1〜約20である。
【請求項20】
ポリマーが次式のモノマーの1種以上から導かれる構造単位を含む、請求項19記載のデバイス。
【化10】

式中、R1はH又はCH3である。
【請求項21】
1がHである、請求項20記載のデバイス。
【請求項22】
1がCH3である、請求項20記載のデバイス。
【請求項23】
ポリマーがさらに、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル酸アミド、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、メタクリル酸アミド、ビニル芳香族モノマー、置換エチレンモノマー又はこれらの組合せから導かれる構造単位を含む、請求項19記載のデバイス。
【請求項24】
1種以上のりん光性有機金属化合物が式L2MZの化合物であり、L及びZは独立に二座配位子であり、MはGa、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Ga、Ge、In、Sn、Sb、Tl、Pb、Bi、Eu、Tb、La、Po又はこれらの組合せである、請求項19記載のデバイス。
【請求項25】
MがIrである、請求項24記載のデバイス。
【請求項26】
Lがシクロメタレート化配位子である、請求項24記載のデバイス。
【請求項27】
L及びZが独立に、フェニルピリジン、トリルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、フェニルイソキノリン、ジベンゾキノザリン、フルオレニルピリジン、ケトピロール、ピコリネート、アセチルアセトネート、ヘキサフルオロアセチルアセトネート、サリチリデン、8−ヒドロキシキノリネート、サリチルアルデヒド、イミノアセトネート、2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾール、2−フェニルベンゾオキサゾール、2−フェニルベンゾチアゾール、クマリン、チエニルピリジン、フェニルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、3−メトキシ−2−フェニルピリジン、チエニルピリジン、フェニルイミン、ビニルピリジン、ピリジルナフタレン、ピリジルピロール、ピリジルイミダゾール、フェニルインドール、これらの誘導体又はこれらの組合せから導かれる、請求項24記載のデバイス。
【請求項28】
Lが2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジンから導かれる、請求項27記載のデバイス。
【請求項29】
Zがピコリネートから導かれる、請求項27記載のデバイス。
【請求項30】
1種以上のりん光性有機金属化合物が次式の化合物である、請求項19記載のデバイス。
【化11】

式中、
11及びR12は一緒に置換又は非置換の単環式又は二環式ヘテロ芳香環を形成し、
13及びR14は各々独立にハロ、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、置換アルキル、置換アリール又は置換アリールアルキルであり、
p及びqは独立に0又は1〜4の整数である。
【請求項31】
1種以上のりん光性有機金属化合物が次式の化合物である、請求項19記載のデバイス。
【化12】

【請求項32】
1種以上のりん光性有機金属化合物が青色りん光色素である、請求項19記載のデバイス。
【請求項33】
1種以上のりん光性有機金属化合物が緑色りん光色素である、請求項19記載のデバイス。
【請求項34】
1種以上のりん光性有機金属化合物が赤色りん光色素である、請求項19記載のデバイス。
【請求項35】
りん光性有機金属化合物が次式の化合物であり、
【化13】

ポリマーが次式のモノマーから導かれる構造単位を含む、請求項19記載の有機発光デバイス。
【化14】

【請求項36】
りん光性有機金属化合物が次式の化合物であり、
【化15】

ポリマーが次式のモノマーから導かれる構造単位を含む、請求項19記載の有機発光デバイス。
【化16】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−525111(P2010−525111A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504151(P2010−504151)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/059106
【国際公開番号】WO2008/130805
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】