説明

ポリカルボシランの製造方法

【課題】高い分子量のポリカルボシランを収率良く得ることができるポリカルボシランの製造方法の提供。
【解決手段】式2のポリカルボシランの製造方法は、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属と、ハロゲン化アルカリ金属との存在下、式1で表されるシラン化合物を反応させる工程を含む。SiR4−m(R−X)(1)(式中、Rは同一又は異なり、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホキシ基、メタンスルホキシ基、トリフルオロメタンスルホキシ基、C数1〜10個のアルキル基、ビニル基、アリール基、アリル基及びグリシジル基から選ばれる基を示し、Rは同一又は異なり、置換又は非置換のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、又はアリーレン基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは1〜2の整数を示す。)−(Si(R)(R)−R−(2)、nは1〜10,000の数を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカルボシランの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、開発が積極的に行なわれている無機高分子は、セラミックスの前駆体をはじめとして、接着剤、光磁気ディスク、半導体材料等の幅広い用途が期待されている。中でも、SiC材料は、次世代高温構造材料および無機−有機ハイブリッド材料として期待されている。このSiC材料の前駆体であるポリカルボシランは、その優れた耐熱性から、耐熱材料、光機能材料、導電材料などの機能性材料への利用に関する研究が活発に行なわれている。
【0003】
一方、ポリカルボシランをはじめとする無機高分子は通常、一般的な有機高分子と比較して分子量のコントロールが難しく、分子量にばらつきが生じ、低分子量体が多く生じることがある。低分子量体の発生は材料の緻密度低下にも繋がり兼ねない。このため、ポリカルボシランの高分子量化には様々な方法の開発が試みられている。
【0004】
しかし、ポリカルボシランは基本的に熱的に安定であるため、セラミックス材料として高分子量化するためには、加熱による酸素原子や不飽和炭化水素での架橋、あるいは、電子線照射による架橋などの過酷な条件が必要である。そのほか、−Si−C−結合を有する環状モノマーを遷移金属によって開環重合させてポリカルボシランを高分子化する方法があるが、この方法では高価なSiモノマーや遷移金属触媒を用いるため、コストが高く実用化が難しいという問題がある。
【0005】
また、低コストのポリカルボシランの合成方法として、例えば、グリニャール試薬を用いる方法が挙げられる(国際公開番号第2005/068539号公報)。
【特許文献1】国際公開番号第2005/068539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この方法では、重合が進行するとともにモノマーの反応活性が低下するうえ、安定な環状低分子量化合物が生成することがあり、一定以上の分子量を有する重合体を得ることが困難である場合がある。
【0007】
本発明は、公知の方法と比較して高い分子量のポリカルボシランを収率良く得ることができるポリカルボシランの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様にかかる下記一般式(2)で表されるポリカルボシランの製造方法は、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属と、ハロゲン化アルカリ金属との存在下、下記一般式(1)で表されるシラン化合物を反応させる工程を含む。
SiR4−m(R−X) ・・・・・(1)
(式中、Rは同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホキシ基、メタンスルホキシ基、トリフルオロメタンスルホキシ基、炭素原子数1〜10個のアルキル基、ビニル基、アリール基、アリル基およびグリシジル基からなる群より選ばれる基を示し(ただし、Rの少なくとも1つが水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホキシ基、メタンスルホキシ基、またはトリフルオロメタンスルホキシ基である。)、Rは同一または異なり、置換または非置換のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは1または2の整数を示す。)


−(Si−R


・・・・・(2)
(式中、Rは上記一般式(1)で定義された通りであり、RおよびRは同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホキシ基、メタンスルホキシ基、トリフルオロメタンスルホキシ基、炭素原子数1〜10個のアルキル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、置換または非置換のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、およびアリーレン基からなる群より選ばれる基を示し、nは1〜10,000の数を示す(ここで、R,R,Rの各官能基同士が結合している構造も含む。))
上記方法において、前記シラン化合物は、上記一般式(1)においてm=1であることができる。
【0009】
上記方法において、前記ハロゲン化アルカリ金属の使用量は、前記シラン化合物1モルに対して0.1〜20倍当量であることができる。
【0010】
上記方法において、前記反応させる工程は、前記ハロゲン化アルカリ金属を含む液の温度を25℃以上に保ちながら、前記シラン化合物を該液中に添加する工程を含むことができる。この場合、前記シラン化合物の1分間あたりの添加量が、前記シラン化合物の総使用量に対して5質量%以下であることができる。
【0011】
上記方法において、前記ハロゲン化アルカリ金属がハロゲン化リチウムであることができる。
【0012】
本発明の他の一態様にかかるポリカルボシランは、上記方法により得られる。この場合、上記ポリカルボシランは、重量平均分子量が700〜3,000であり、かつ、ポリスチレン換算分子量が700以上の成分の割合が40モル%以上であることができる。
【発明の効果】
【0013】
上記ポリカルボシランの製造方法によれば、前記シラン化合物の反応活性を高めることができるため、副生成物である環状低分子量化合物の発生を抑えることができる。これにより、公知の方法と比較して高い分子量のポリカルボシランを収率良く得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態にかかるポリカルボシランおよびその製造方法について具体的に説明する。
【0015】
1.ポリカルボシランおよびその製造方法
本発明の一実施形態にかかるポリカルボシランの製造方法は、下記一般式(2)で表されるポリカルボシラン(以下、「化合物2」ともいう。)の製造方法であり、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属と、ハロゲン化アルカリ金属の存在下で、下記一般式(1)で表されるシラン化合物(以下、「化合物1」ともいう。)を反応させる工程を含む。
SiR4−m(R−X) ・・・・・(1)
(式中、Rは同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホキシ基、メタンスルホキシ基、トリフルオロメタンスルホキシ基、炭素原子数1〜10個のアルキル基、ビニル基、アリール基、アリル基およびグリシジル基からなる群より選ばれる基を示し(ただし、Rの少なくとも1つが水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホキシ基、メタンスルホキシ基、またはトリフルオロメタンスルホキシ基である。)、Rは同一または異なり、置換または非置換のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは1または2の整数を示す。)


−(Si−R


・・・・・(2)
(式中、Rは上記一般式(1)で定義された通りであり、RおよびRは同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホキシ基、メタンスルホキシ基、トリフルオロメタンスルホキシ基、炭素原子数1〜10個のアルキル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、置換または非置換のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、およびアリーレン基からなる群より選ばれる基を示し、nは1〜10,000の数を示す(ここで、R,R,Rの各官能基同士が結合している構造も含む。))
上記一般式(1)において、Rで示されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、アルコキシ基としては、炭素原子数1〜10個のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられ、アシロキシ基としては、例えば、アセチルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基が挙げられ、炭素原子数1〜10個のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が挙げられる。
【0016】
また、上記一般式(1)において、Rで示されるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基が挙げられ、アルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、1−メチルビニレン基、プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基が挙げられ、アルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、2−ブチニレン基が挙げられ、アリーレン基としては、例えば、炭素原子数6〜12個を有するアリーレン基が挙げられる。
【0017】
また、上記一般式(1)において、Xで示されるハロゲン原子はそれぞれ、上記のRとして例示したものが挙げられる。
【0018】
さらに、上記一般式(2)において、RおよびRで示されるハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、炭素原子数1〜10個のアルキル基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、およびアリーレン基はそれぞれ、上記のRとして例示したものが挙げられる。
【0019】
上記一般式(1)において、Rは、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、メチル基、エチル基、およびn−プロピル基から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基、メチル基、およびエチル基から選ばれる少なくとも1種であることがさらに好ましく、Rは、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、およびビニレン基から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、Xとしては、塩素原子がより好ましく、mは1がより好ましい。
【0020】
また、上記一般式(2)において、RおよびRは、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、メチル基、エチル基、およびn−プロピル基から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基、メチル基、およびエチル基から選ばれる少なくとも1種であることがさらに好ましく、nは、1〜1,000が好ましい。
【0021】
1.1.化合物1
化合物1は加水分解性基を有する。ここで、「加水分解性基」とは、本実施形態にかかるポリカルボシラン(化合物2)の製造時に加水分解されうる基をいう。加水分解性基としては、例えば、ケイ素原子に結合した水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホキシ基、メタンスルホキシ基、およびトリフルオロメタンスルホキシ基が挙げられる。
【0022】
化合物1としては、クロロメチルトリクロロシラン、ブロモメチルトリクロロシラン、ヨードメチルトリクロロシラン、クロロメチルメチルジクロロシラン、クロロメチルエチルジクロロシラン、クロロメチル−n−プロピルジクロロシラン、クロロメチルイソプロピルジクロロシラン、クロロメチル−n−ブチルジクロロシラン、クロロメチル−t−ブチルジクロロシラン、クロロメチルシクロヘキシルジクロロシラン、クロロメチルフェネチルジクロロシラン、クロロメチルビニルジクロロシラン、クロロメチルフェニルジクロロシラン、ブロモメチルメチルジクロロシラン、ブロモメチルエチルジクロロシラン、ブロモメチル−n−プロピルジクロロシラン、ブロモメチルイソプロピルジクロロシラン、ブロモメチル−n−ブチルジクロロシラン、ブロモメチル−t−ブチルジクロロシラン、ブロモメチルシクロヘキシルジクロロシラン、ブロモメチルフェネチルジクロロシラン、ブロモメチルビニルジクロロシラン、ブロモメチルフェニルジクロロシラン、ヨードメチルメチルジクロロシラン、ヨードメチルエチルジクロロシラン、ヨードメチル−n−プロピルジクロロシラン、ヨードメチルイソプロピルジクロロシラン、ヨードメチル−n−ブチルジクロロシラン、ヨードメチル−t−ブチルジクロロシラン、ヨードメチルシクロヘキシルジクロロシラン、ヨードメチルフェネチルジクロロシラン、ヨードメチルビニルジクロロシラン、ヨードメチルフェニルジクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、クロロメチルジエチルクロロシラン、クロロメチルジ−n−プロピルクロロシラン、クロロメチルジイソプロピルクロロシラン、クロロメチル−n−ジブチルクロロシラン、クロロメチルジ−t−ブチルクロロシラン、クロロメチルジシクロヘキシルクロロシラン、クロロメチルジフェネチルクロロシラン、クロロメチルジビニルクロロシラン、クロロメチルジフェニルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジエチルクロロシラン、ブロモメチルジ−n−プロピルクロロシラン、ブロモメチルジイソプロピルクロロシラン、ブロモメチルジ−n−ブチルクロロシラン、ブロモメチルジ−t−ブチルクロロシラン、ブロモメチルジシクロヘキシルクロロシラン、ブロモメチルジフェネチルクロロシラン、ブロモメチルジビニルクロロシラン、ブロモメチルジフェニルクロロシラン、ヨードメチルジメチルクロロシラン、ヨードメチルジエチルクロロシラン、ヨードメチルジ−n−プロピルクロロシラン、ヨードメチルジイソプロピルクロロシラン、ヨードメチルジ−n−ブチルクロロシラン、ヨードメチルジ−t−ブチルクロロシラン、ヨードメチルジシクロヘキシルクロロシラン、ヨードメチルジフェネチルクロロシラン、ヨードメチルジビニルクロロシラン、ヨードメチルジフェニルクロロシランなど;
(1−クロロエチル)トリクロロシラン、(1−クロロプロピル)トリクロロシラン、(2−クロロ−2−プロピル)トリクロロシラン、(1−クロロブチル)トリクロロシラン、(2−クロロ−2−ブチル)トリクロロシラン、(3−クロロ−3−ペンチル)トリクロロシラン、(1−クロロ−2−プロペニル)トリクロロシラン、(α−クロロベンジル)トリクロロシラン、ジクロロメチルトリクロロシラン、トリクロロメチルトリクロロシラン、(1−クロロエチル)メチルジクロロシラン、(1−クロロプロピル)メチルジクロロシラン、(2−クロロ−2−プロピル)メチルジクロロシラン、(1−クロロブチル)メチルジクロロシラン、(2−クロロ−2−ブチル)メチルジクロロシラン、(3−クロロ−3−ペンチル)メチルジクロロシラン、(1−クロロ−2−プロペニル)メチルジクロロシラン、(α−クロロベンジル)メチルジクロロシラン、ジクロロメチルメチルジクロロシラン、トリクロロメチルメチルジクロロシラン、(1−クロロエチル)ジメチルクロロシラン、(1−クロロプロピル)ジメチルクロロシラン、(2−クロロ−2−プロピル)ジメチルクロロシラン、(1−クロロブチル)ジメチルクロロシラン、(2−クロロ−2−ブチル)ジメチルクロロシラン、(3−クロロ−3−ペンチル)ジメチルクロロシラン、(1−クロロ−2−プロペニル)ジメチルクロロシラン、(α−クロロベンジル)ジメチルクロロシラン、ジクロロメチルジメチルクロロシラン、トリクロロメチルジメチルクロロシランなど;
クロロメチルトリメトキシシラン、ブロモメチルトリメトキシシラン、ヨードメチルトリメトキシシラン、クロロメチルメチルジメトキシシラン、クロロメチルエチルジメトキシシラン、クロロメチル−n−プロピルジメトキシシラン、クロロメチルイソプロピルジメトキシシラン、クロロメチル−n−ブチルジメトキシシラン、クロロメチル−t−ブチルジメトキシシラン、クロロメチルシクロヘキシルジメトキシシラン、クロロメチルフェネチルジメトキシシラン、クロロメチルビニルジメトキシシラン、クロロメチルフェニルジメトキシシラン、ブロモメチルメチルジメトキシシラン、ブロモメチルエチルジメトキシシラン、ブロモメチル−n−プロピルジメトキシシラン、ブロモメチルイソプロピルジメトキシシラン、ブロモメチル−n−ブチルジメトキシシラン、ブロモメチル−t−ブチルジメトキシシラン、ブロモメチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ブロモメチルフェネチルジメトキシシラン、ブロモメチルビニルジメトキシシラン、ブロモメチルフェニルジメトキシシラン、ヨードメチルメチルジメトキシシラン、ヨードメチルエチルジメトキシシラン、ヨードメチル−n−プロピルジメトキシシラン、ヨードメチルイソプロピルジメトキシシラン、ヨードメチル−n−ブチルジメトキシシラン、ヨードメチル−t−ブチルジメトキシシラン、ヨードメチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ヨードメチルフェネチルジメトキシシラン、ヨードメチルビニルジメトキシシラン、ヨードメチルフェニルジメトキシシラン、クロロメチルジメチルメトキシシラン、クロロメチルジエチルメトキシシラン、クロロメチルジ−n−プロピルメトキシシラン、クロロメチルジイソプロピルメトキシシラン、クロロメチル−n−ジブチルメトキシシラン、クロロメチルジ−t−ブチルメトキシシラン、クロロメチルジシクロヘキシルメトキシシラン、クロロメチルジフェネチルメトキシシラン、クロロメチルジビニルメトキシシラン、クロロメチルジフェニルメトキシシラン、ブロモメチルジメチルメトキシシラン、ブロモメチルジエチルメトキシシラン、ブロモメチルジ−n−プロピルメトキシシラン、ブロモメチルジイソプロピルメトキシシラン、ブロモメチルジ−n−ブチルメトキシシラン、ブロモメチルジ−t−ブチルメトキシシラン、ブロモメチルジシクロヘキシルメトキシシラン、ブロモメチルジフェネチルメトキシシラン、ブロモメチルジビニルメトキシシラン、ブロモメチルジフェニルメトキシシラン、ヨードメチルジメチルメトキシシラン、ヨードメチルジエチルメトキシシラン、ヨードメチルジ−n−プロピルメトキシシラン、ヨードメチルジイソプロピルメトキシシラン、ヨードメチルジ−n−ブチルメトキシシラン、ヨードメチルジ−t−ブチルメトキシシラン、ヨードメチルジシクロヘキシルメトキシシラン、ヨードメチルジフェネチルメトキシシラン、ヨードメチルジビニルメトキシシラン、ヨードメチルジフェニルメトキシシランなど;
クロロメチルトリエトキシシラン、ブロモメチルトリエトキシシラン、ヨードメチルトリエトキシシラン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、クロロメチルエチルジエトキシシラン、クロロメチル−n−プロピルジエトキシシラン、クロロメチルイソプロピルジエトキシシラン、クロロメチル−n−ブチルジエトキシシラン、クロロメチル−t−ブチルジエトキシシラン、クロロメチルシクロヘキシルジエトキシシラン、クロロメチルフェネチルジエトキシシラン、クロロメチルビニルジエトキシシラン、クロロメチルフェニルジエトキシシラン、ブロモメチルメチルジエトキシシラン、ブロモメチルエチルジエトキシシラン、ブロモメチル−n−プロピルジエトキシシラン、ブロモメチルイソプロピルジエトキシシラン、ブロモメチル−n−ブチルジエトキシシラン、ブロモメチル−t−ブチルジエトキシシラン、ブロモメチルシクロヘキシルジエトキシシラン、ブロモメチルフェネチルジエトキシシラン、ブロモメチルビニルジエトキシシラン、ブロモメチルフェニルジエトキシシラン、ヨードメチルメチルジエトキシシラン、ヨードメチルエチルジエトキシシラン、ヨードメチル−n−プロピルジエトキシシラン、ヨードメチルイソプロピルジエトキシシラン、ヨードメチル−n−ブチルジエトキシシラン、ヨードメチル−t−ブチルジエトキシシラン、ヨードメチルシクロヘキシルジエトキシシラン、ヨードメチルフェネチルジエトキシシラン、ヨードメチルビニルジエトキシシラン、ヨードメチルフェニルジエトキシシラン、クロロメチルジメチルエトキシシラン、クロロメチルジエチルエトキシシラン、クロロメチルジ−n−プロピルエトキシシラン、クロロメチルジイソプロピルエトキシシラン、クロロメチル−n−ジブチルエトキシシラン、クロロメチルジ−t−ブチルエトキシシラン、クロロメチルジシクロヘキシルエトキシシラン、クロロメチルジフェネチルエトキシシラン、クロロメチルジビニルエトキシシラン、クロロメチルジフェニルエトキシシラン、ブロモメチルジメチルエトキシシラン、ブロモメチルジエチルエトキシシラン、ブロモメチルジ−n−プロピルエトキシシラン、ブロモメチルジイソプロピルエトキシシラン、ブロモメチルジ−n−ブチルエトキシシラン、ブロモメチルジ−t−ブチルエトキシシラン、ブロモメチルジシクロヘキシルエトキシシラン、ブロモメチルジフェネチルエトキシシラン、ブロモメチルジビニルエトキシシラン、ブロモメチルジフェニルエトキシシラン、ヨードメチルジメチルエトキシシラン、ヨードメチルジエチルエトキシシラン、ヨードメチルジ−n−プロピルエトキシシラン、ヨードメチルジイソプロピルエトキシシラン、ヨードメチルジ−n−ブチルエトキシシラン、ヨードメチルジ−t−ブチルエトキシシラン、ヨードメチルジシクロヘキシルエトキシシラン、ヨードメチルジフェネチルエトキシシラン、ヨードメチルジビニルエトキシシラン、ヨードメチルジフェニルエトキシシランなど;
クロロメチルトリ−n−プロポキシシラン、ブロモメチルトリ−n−プロポキシシラン、ヨードメチルトリ−n−プロポキシシラン、クロロメチルメチルジ−n−プロポキシシラン、クロロメチルエチルジ−n−プロポキシシラン、クロロメチル−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、クロロメチルイソプロピルジ−n−プロポキシシラン、クロロメチル−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、クロロメチル−t−ブチルジ−n−プロポキシシラン、クロロメチルシクロヘキシルジ−n−プロポキシシラン、クロロメチルフェネチルジ−n−プロポキシシラン、クロロメチルビニルジ−n−プロポキシシラン、クロロメチルフェニルジ−n−プロポキシシラン、ブロモメチルメチルジ−n−プロポキシシラン、ブロモメチルエチルジ−n−プロポキシシラン、ブロモメチル−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ブロモメチルイソプロピルジ−n−プロポキシシラン、ブロモメチル−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ブロモメチル−t−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ブロモメチルシクロヘキシルジ−n−プロポキシシラン、ブロモメチルフェネチルジ−n−プロポキシシラン、ブロモメチルビニルジ−n−プロポキシシラン、ブロモメチルフェニルジ−n−プロポキシシラン、ヨードメチルメチルジ−n−プロポキシシラン、ヨードメチルエチルジ−n−プロポキシシラン、ヨードメチル−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ヨードメチルイソプロピルジ−n−プロポキシシラン、ヨードメチル−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ヨードメチル−t−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ヨードメチルシクロヘキシルジ−n−プロポキシシラン、ヨードメチルフェネチルジ−n−プロポキシシラン、ヨードメチルビニルジ−n−プロポキシシラン、ヨードメチルフェニルジ−n−プロポキシシラン、クロロメチルジメチル−n−プロポキシシラン、クロロメチルジエチル−n−プロポキシシラン、クロロメチルジ−n−プロピル−n−プロポキシシラン、クロロメチルジイソプロピル−n−プロポキシシラン、クロロメチル−n−ジブチル−n−プロポキシシラン、クロロメチルジ−t−ブチル−n−プロポキシシラン、クロロメチルジシクロヘキシル−n−プロポキシシラン、クロロメチルジフェネチル−n−プロポキシシラン、クロロメチルジビニル−n−プロポキシシラン、クロロメチルジフェニル−n−プロポキシシラン、ブロモメチルジメチル−n−プロポキシシラン、ブロモメチルジエチル−n−プロポキシシラン、ブロモメチルジ−n−プロピル−n−プロポキシシラン、ブロモメチルジイソプロピル−n−プロポキシシラン、ブロモメチルジ−n−ブチル−n−プロポキシシラン、ブロモメチルジ−t−ブチル−n−プロポキシシラン、ブロモメチルジシクロヘキシル−n−プロポキシシラン、ブロモメチルジフェネチル−n−プロポキシシラン、ブロモメチルジビニル−n−プロポキシシラン、ブロモメチルジフェニル−n−プロポキシシラン、ヨードメチルジメチル−n−プロポキシシラン、ヨードメチルジエチル−n−プロポキシシラン、ヨードメチルジ−n−プロピル−n−プロポキシシラン、ヨードメチルジイソプロピル−n−プロポキシシラン、ヨードメチルジ−n−ブチル−n−プロポキシシラン、ヨードメチルジ−t−ブチル−n−プロポキシシラン、ヨードメチルジシクロヘキシル−n−プロポキシシラン、ヨードメチルジフェネチル−n−プロポキシシラン、ヨードメチルジビニル−n−プロポキシシラン、ヨードメチルジフェニル−n−プロポキシシランなど;
クロロメチルトリイソプロポキシシラン、ブロモメチルトリイソプロポキシシラン、ヨードメチルトリイソプロポキシシラン、クロロメチルメチルジイソプロポキシシラン、クロロメチルエチルジイソプロポキシシラン、クロロメチル−n−プロピルジイソプロポキシシラン、クロロメチルイソプロピルジイソプロポキシシラン、クロロメチル−n−ブチルジイソプロポキシシラン、クロロメチル−t−ブチルジイソプロポキシシラン、クロロメチルシクロヘキシルジイソプロポキシシラン、クロロメチルフェネチルジイソプロポキシシラン、クロロメチルビニルジイソプロポキシシラン、クロロメチルフェニルジイソプロポキシシラン、ブロモメチルメチルジイソプロポキシシラン、ブロモメチルエチルジイソプロポキシシラン、ブロモメチル−n−プロピルジイソプロポキシシラン、ブロモメチルイソプロピルジイソプロポキシシラン、ブロモメチル−n−ブチルジイソプロポキシシラン、ブロモメチル−t−ブチルジイソプロポキシシラン、ブロモメチルシクロヘキシルジイソプロポキシシラン、ブロモメチルフェネチルジイソプロポキシシラン、ブロモメチルビニルジイソプロポキシシラン、ブロモメチルフェニルジイソプロポキシシラン、ヨードメチルメチルジイソプロポキシシラン、ヨードメチルエチルジイソプロポキシシラン、ヨードメチル−n−プロピルジイソプロポキシシラン、ヨードメチルイソプロピルジイソプロポキシシラン、ヨードメチル−n−ブチルジイソプロポキシシラン、ヨードメチル−t−ブチルジイソプロポキシシラン、ヨードメチルシクロヘキシルジイソプロポキシシラン、ヨードメチルフェネチルジイソプロポキシシラン、ヨードメチルビニルジイソプロポキシシラン、ヨードメチルフェニルジイソプロポキシシラン、クロロメチルジメチルイソプロポキシシラン、クロロメチルジエチルイソプロポキシシラン、クロロメチルジ−n−プロピルイソプロポキシシラン、クロロメチルジイソプロピルイソプロポキシシラン、クロロメチル−n−ジブチルイソプロポキシシラン、クロロメチルジ−t−ブチルイソプロポキシシラン、クロロメチルジシクロヘキシルイソプロポキシシラン、クロロメチルジフェネチルイソプロポキシシラン、クロロメチルジビニルイソプロポキシシラン、クロロメチルジフェニルイソプロポキシシラン、ブロモメチルジメチルイソプロポキシシラン、ブロモメチルジエチルイソプロポキシシラン、ブロモメチルジ−n−プロピルイソプロポキシシラン、ブロモメチルジイソプロピルイソプロポキシシラン、ブロモメチルジ−n−ブチルイソプロポキシシラン、ブロモメチルジ−t−ブチルイソプロポキシシラン、ブロモメチルジシクロヘキシルイソプロポキシシラン、ブロモメチルジフェネチルイソプロポキシシラン、ブロモメチルジビニルイソプロポキシシラン、ブロモメチルジフェニルイソプロポキシシラン、ヨードメチルジメチルイソプロポキシシラン、ヨードメチルジエチルイソプロポキシシラン、ヨードメチルジ−n−プロピルイソプロポキシシラン、ヨードメチルジイソプロピルイソプロポキシシラン、ヨードメチルジ−n−ブチルイソプロポキシシラン、ヨードメチルジ−t−ブチルイソプロポキシシラン、ヨードメチルジシクロヘキシルイソプロポキシシラン、ヨードメチルジフェネチルイソプロポキシシラン、ヨードメチルジビニルイソプロポキシシラン、ヨードメチルジフェニルイソプロポキシシランなどのケイ素化合物を挙げることができる。
【0023】
これらの化合物1のうち、クロロメチルトリクロロシラン、ブロモメチルトリクロロシラン、クロロメチルメチルジクロロシラン、クロロメチルエチルジクロロシラン、クロロメチルビニルジクロロシラン、クロロメチルフェニルジクロロシラン、ブロモメチルメチルジクロロシラン、ブロモメチルビニルジクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、クロロメチルジビニルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、(1−クロロエチル)トリクロロシラン、(1−クロロプロピル)トリクロロシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、ブロモメチルトリメトキシシラン、クロロメチルメチルジメトキシシラン、クロロメチルビニルジメトキシシラン、クロロメチルフェニルジメトキシシラン、ブロモメチルメチルジメトキシシラン、ブロモメチルビニルジメトキシシラン、ブロモメチルフェニルジメトキシシラン、クロロメチルジメチルメトキシシラン、クロロメチルジビニルメトキシシラン、クロロメチルジフェニルメトキシシラン、ブロモメチルジメチルメトキシシラン、ブロモメチルジイソプロピルメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、ブロモメチルトリエトキシシラン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、クロロメチルエチルジエトキシシラン、クロロメチルビニルジエトキシシラン、クロロメチルフェニルジエトキシシラン、ブロモメチルメチルジエトキシシラン、ブロモメチルビニルジエトキシシラン、ブロモメチルフェニルジエトキシシラン、クロロメチルジメチルエトキシシラン、クロロメチルジエチルエトキシシラン、ブロモメチルジビニルエトキシシラン、クロロメチルトリイソプロポキシシラン、ブロモメチルトリイソプロポキシシラン等を好ましい化合物として挙げることができる。
【0024】
化合物1は1種単独でも使用できるし、2種以上を混合して使用することもできる。
【0025】
1.2.化合物2の製造
化合物2の製造において使用できるアルカリ金属としては、例えば、リチウム、カリウム、ナトリウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては例えば、マグネシウムが挙げられる。
【0026】
また、ハロゲン化アルカリ金属としては、例えば、ハロゲン化リチウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化ナトリウムが挙げられ、このうち、ハロゲン化リチウムがより好ましく、塩化リチウムであることが特に好ましい。
【0027】
なお、化合物2の製造において、ハロゲン化アルカリ金属の使用量は、化合物1に対して0.1〜20当量であることが好ましく、0.5〜10当量であることがより好ましい。ここで、前記使用量が、化合物1に対して0.1未満であると、高分子量の重合体が得られない場合があり、一方、20当量を超えると、マグネシウムの活性化が起こりにくくなる場合がある。加えて、ハロゲン化アルカリ金属の使用量は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の総量に対して0.1〜20当量であることが好ましく、0.5〜10当量であることがより好ましい。
【0028】
さらに、化合物1を反応させる工程は、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属と、ハロゲン化アルカリ金属を含む液の温度を25℃以上に保ちながら、化合物1を該液中に添加する工程を含むことができる。この場合、化合物1の1分間あたりの添加量が、化合物1の総使用量に対して5質量%以下であることが好ましくさらに好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下である。前記添加量が5質量%を超えると、環状低分子量化合物が多く生成するため、得られるポリカルボシランの分子量が小さくなる場合がある。
【0029】
また、化合物1を反応させる際には、溶媒を添加することが好ましく、溶媒の1分間あたりの添加量は化合物1の1分間あたりの添加量に対して、好ましくは0.1〜100質量部であり、より好ましくは0.5〜10質量部である。
また、化合物1の一部を予め、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属と、ハロゲン化アルカリ金属の存在下で反応させておくことが好ましい。この場合、予め反応させる化合物1の量は、化合物1の総使用量に応じて適宜設定することができるが、通常、化合物1の総使用量に対して0.1〜70質量%であり、0.5〜50質量である。また、化合物1を予め反応させる際には、溶媒を添加することが好ましく、溶媒の使用量は予め反応させる化合物1の量に対して、通常0.5〜500質量部であり、1〜100質量部であることが好ましい、
化合物2を製造する際の反応液の反応温度は、好ましくは30〜150℃、より好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは50〜70℃である。反応温度が30℃未満では反応速度が遅く生産性が上がらず、また、反応温度が150℃より高い場合には、反応が複雑になり、得られるポリマーの溶解性が低下し易くなる。さらに、反応は通常、アルゴンや窒素などの不活性ガス中で行なうことが好ましい。
【0030】
また、化合物2を製造する際の反応時間は10分〜24時間であることが好ましく、30分〜6時間であることがより好ましい。反応時間が10分未満であると、自己縮合が不十分となり、環状低分子量化合物の発生を促してしまう場合がある。
【0031】
化合物2の製造では、エーテル系溶媒を使用するのが好ましい。エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−イソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、アニソール、フェネトール、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどを挙げることができる。これらのうち、化合物1の溶解性に優れている点で、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルが好ましい。
【0032】
本実施形態にかかるポリカルボシランの製造方法によれば、ポリスチレン換算重量平均分子量が700〜3,000、好ましくは700〜1,500であるポリカルボシラン(化合物2)を得ることができる。また、ポリカルボシラン(化合物2)は、ポリスチレン換算分子量が700以上の成分の割合が40モル%以上(通常、40〜100モル%)である点で、より低分子量の成分の含有量が少ないため、緻密度が高い材料を形成できる点で好ましい。
【0033】
1.3.作用効果
本実施形態にかかるポリカルボシランの製造方法によれば、化合物1の反応活性を高めることができるため、副生成物である環状低分子量化合物の発生を抑えることができる。これにより、公知の方法(国際公開番号第2005/068539号公報に記載の方法)と比較して高い分子量のポリカルボシラン(化合物2)を収率良く得ることができる。
【0034】
2.実施例
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の「部」および「%」は、特記しない限り、それぞれ重量部および質量%であることを示している。
【0035】
2.1.評価方法
各種の評価は、次のようにして行なった。
【0036】
2.1.1.重合体の重量平均分子量(Mw)
重合体の重量平均分子量(Mw)はポリスチレン換算の重量平均分子量であり、下記条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した。
【0037】
試料:クロロホルムを溶媒として使用し、重合体1gを100ccのクロロホルムに溶解して調製した。
【0038】
標準ポリスチレン:ポリマーラボラトリーズ(Polymer Laboratories)社製の標準ポリスチレンを使用した。
【0039】
装置:東ソー社製、HLC−8220(型名)を使用した。
【0040】
カラム:東ソー社製、Super HZM−M x4(型名)を使用した。
【0041】
測定温度:40℃
流速:0.35cc/分
【0042】
2.1.2.重合体における分子量700以上の成分の割合(モル%)
重合体における分子量(ポリスチレン換算分子量)700以上の成分の割合(モル%)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。
【0043】
2.2.ポリカルボシランの合成
2.2.1.実施例1
冷却コンデンサーおよび滴下ロートを備えた3つ口フラスコを50℃で減圧乾燥した後、窒素充填した。次に、フラスコ内にマグネシウム12.9gおよび塩化リチウム2.0gを入れて、10分間攪拌した。次いで、前記フラスコにテトラヒドロフラン96gを加え、室温で撹拌しながら(クロロメチル)トリメトキシシラン(Gelest社製)2.0gを前記フラスコに投入した。5分後に反応が開始し、反応液の温度が50℃に上昇した。その後、(クロロメチル)トリメトキシシラン(Gelest社製)73.3gをテトラヒドロフラン120gに溶解させた溶液を、0.54g/分((クロロメチル)トリメトキシシランの1分間あたりの添加量は、(クロロメチル)トリメトキシシランの総使用量に対して0.27質量%に相当)の流量で360分かけて滴下した。反応液はこげ茶色の溶液となり、粘性を増した。滴下終了後、70℃で1時間加熱還流させて、ジメトキシポリカルボシランを得た。
【0044】
2.2.2.実施例2
冷却コンデンサーおよび滴下ロートを備えた3つ口フラスコを50℃で減圧乾燥した後、窒素充填した。次に、前記フラスコ内にマグネシウム12.9gおよび塩化リチウム2.0gを入れて、10分間攪拌した。次いで、前記フラスコにテトラヒドロフラン96gを加え、室温で撹拌しながら(クロロメチル)トリメトキシシラン(Gelest社製)2.0gを前記フラスコに投入した。5分後に反応が開始し、反応液の温度が50℃に上昇した。その後、(クロロメチル)トリメトキシシラン(Gelest社製)73.3gをテトラヒドロフラン120gに溶解させた溶液を、0.36g/分((クロロメチル)トリメトキシシランの1分間あたりの添加量は、クロロメチル)トリメトキシシランの総使用量に対して0.18質量%に相当)の流量で540分かけて滴下した。反応液はこげ茶色の溶液となり、粘性を増した。滴下終了後、70℃で1時間加熱還流させて、ジメトキシポリカルボシランを得た。
【0045】
2.2.3.実施例3
冷却コンデンサーおよび滴下ロートを備えた3つ口フラスコを50℃で減圧乾燥した後、窒素充填した。次に、前記フラスコ内にマグネシウム12.9gおよび塩化リチウム2.0gを入れて、10分間攪拌した。次いで、前記フラスコにテトラヒドロフラン96gを加え、室温で撹拌しながら(クロロメチル)トリメトキシシラン(Gelest社製)2.0gをフラスコに投入した。5分後に反応が開始し、反応液の温度が50℃に上昇した。その後、(クロロメチル)トリメトキシシラン(Gelest社製)73.3gをテトラヒドロフラン120gに溶解させた溶液を、0.36g/分(((クロロメチル)トリメトキシシランの1分間あたりの添加量は、クロロメチル)トリメトキシシランの総使用量に対して0.18質量%に相当)の流量で540分かけて滴下した。この時、バスの水温を70℃の状態に保ちながら、還流下で滴下を行なった。反応液は20分後にはこげ茶色の溶液となり、粘性を増した。滴下終了後、常温まで冷却して、ジメトキシポリカルボシランを得た。
【0046】
2.2.4.比較例1
冷却コンデンサーおよび滴下ロートを備えた3つ口フラスコを50℃で減圧乾燥した後、窒素充填した。次に、前記フラスコ内にマグネシウム12.9gおよびテトラヒドロフラン96gを加え、室温で撹拌しながら、滴下ロートから(クロロメチル)トリメトキシシラン(Gelest社製)25.1gを60分かけて滴下した。この時、滴下開始から5分で反応液の温度が50℃に上昇した。10分ほど攪拌した後、溶液は粘性を増した。液は灰色を呈していた。滴下終了後、テトラヒドロフラン100g添加し、70℃で1時間加熱還流させて、ジメトキシポリカルボシランを得た。
【0047】
2.2.5.比較例2
冷却コンデンサーおよび滴下ロートを備えた3つ口フラスコを50℃で減圧乾燥した後、窒素充填した。次に、前記フラスコ内にマグネシウム12.9gおよびテトラヒドロフラン96gを加え、室温で撹拌しながら(クロロメチル)トリメトキシシラン(Gelest社製)2.0gを前記フラスコに投入した。5分後に反応が開始し、反応液の温度が50℃に上昇した。その後、(クロロメチル)トリメトキシシラン(Gelest社製)73.3gをテトラヒドロフラン120gに溶解させた溶液を、0.54g/分((クロロメチル)トリメトキシシランの1分間あたりの添加量は、(クロロメチル)トリメトキシシランの総使用量に対して0.27質量%に相当)の流量で360分かけて滴下した。反応液は灰色の溶液となり、粘性を増した。滴下終了後、70℃で1時間加熱還流させて、ジメトキシポリカルボシランを得た。
【0048】
2.2.6.実施例1〜3および比較例1〜2
実施例1〜3および比較合成例1〜2で得られたポリマーについて重量平均分子量を測定した結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1によれば、塩化リチウムを用いた実施例1と塩化リチウムを用いなかった比較例2を比べた場合、処理時間は同じであっても塩化リチウムの使用により、実施例1のポリマーの分子量が比較例2のポリマーの分子量よりも大きくなったことがわかる。
【0051】
より具体的には、実施例1〜3(塩化リチウムを用いた場合)では、比較例1および2(ハロゲン化アルカリ金属を用いなかった場合)と比較して、重量平均分子量700以上のポリマーの割合が多い(40モル%以上)ことがわかる。
【0052】
また、シラン化合物の添加時間を9時間に延ばした実施例2や、反応時に反応液の加熱を行なった実施例3では、実施例1よりもさらに高い分子量のポリマーが得られたことがわかる。一方、実施例1よりも処理時間が短い比較例1では、より小さい分子量のポリマーが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属と、ハロゲン化アルカリ金属との存在下、下記一般式(1)で表されるシラン化合物を反応させる工程を含む、下記一般式(2)で表されるポリカルボシランの製造方法。
SiR4−m(R−X) ・・・・・(1)
(式中、Rは同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホキシ基、メタンスルホキシ基、トリフルオロメタンスルホキシ基、炭素原子数1〜10個のアルキル基、ビニル基、アリール基、アリル基およびグリシジル基からなる群より選ばれる基を示し(ただし、Rの少なくとも1つが水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホキシ基、メタンスルホキシ基、またはトリフルオロメタンスルホキシ基である。)、Rは同一または異なり、置換または非置換のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは1または2の整数を示す。)


−(Si−R


・・・・・(2)
(式中、Rは上記一般式(1)で定義された通りであり、RおよびRは同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホキシ基、メタンスルホキシ基、トリフルオロメタンスルホキシ基、炭素原子数1〜10個のアルキル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、置換または非置換のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、およびアリーレン基からなる群より選ばれる基を示し、nは1〜10,000の数を示す(ここで、R,R,Rの各官能基同士が結合している構造も含む。))
【請求項2】
前記シラン化合物は、上記一般式(1)においてm=1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハロゲン化アルカリ金属の使用量は、前記シラン化合物に対して0.1〜20当量である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応させる工程は、前記ハロゲン化アルカリ金属を含む液の温度を25℃以上に保ちながら、前記シラン化合物を該液中に添加する工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記シラン化合物の1分間あたりの添加量が、前記シラン化合物の総使用量に対して5質量%以下である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ハロゲン化アルカリ金属がハロゲン化リチウムである、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法により得られるポリカルボシラン。
【請求項8】
ポリスチレン換算重量平均分子量が700〜3,000であり、かつ、ポリスチレン換算分子量が700以上の成分の割合が40モル%以上である、請求項7に記載のポリカルボシラン。

【公開番号】特開2009−286891(P2009−286891A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140566(P2008−140566)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】