説明

ポリカーボネートよりなる嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器

【課題】環境・資源保全について少しでも改良し、同時に落下に強く、テーバー磨耗性に優れた嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器分野に適した特性を有する資材部品を提供する。
【解決手段】下記構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むポリカーボネートからなる嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器。


(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス資源であるイソソルビドを含むポリカーボネート重合体よりなる、ガラス転移温度、表面硬度が高く、機械的強度も良好な嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは比重が軽く、切断、切削などの加工も容易であることから種々の用途に使用されている。特に、各種容器として多用途に使用されているが、内容物を安全に保管する目的のため、嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器が設計される。当該容器は多方面の分野において使用され、例えば、事務用品容器、工業関係容器、食品容器、医薬品容器、化粧品容器など多岐にわたる。従来これらの用途に対しては、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネートなどが使用されてきている。これらは、透明材料であるため、内容物を確認出来ることが重要であるとともに、容器としての意匠性を求められることがもある。
【0003】
一方、これらの用途においては、使用環境温度変化に対しての寸法安定性が必要とされ、非晶性樹脂においては、樹脂のガラス転移温度(Tg)が高いこと、例えば80℃以上
、更に好ましく100℃以上であれば、広い温度範囲において寸法変化が抑制されるので、広範囲の用途に適用されるためには樹脂の耐熱性、たとえばガラス転移温度(Tg)が
重要な因子である。この点からは、ポリアクリレートのガラス転移温度は80〜90℃で、ポリスチレンの場合は、約100℃であるので、適用される用途に制約がある。ポリカーボネートのガラス転移温度は130〜150℃であるので、耐熱性の観点からは嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器のほとんどに適用可能である。
【0004】
さらに容器は紫外線(UV)抵抗性および高い表面硬度、良好な引張り強さ、高い光学的透明性および良好な衝撃強さをもっていることが望まれている。ポリアクリレートは、紫外線による変色性が少なく、表面硬度が高く、良好な透明性を有しているが、機械的強度がやや劣り、更には難燃性が自消性クラスに到達しないという問題がある。一方、ポリカーボネートは機械的強度が優れており、自消性であるが、紫外線による変色性が大きく、表面硬度が低いという問題がある。表面硬度が低いことは、特に屋外で使用する場合は、使用中に擦れ合ったり、飛び砂などに曝されることにより、表面が削られるため、透明性の低下、ひどい場合には機械的強度の低下を引き起こす虞があり、表面硬度も嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器においては重要な特性である。
【0005】
ところで、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネートは一般的に石油資源から誘導される原料を用いて製造される。しかしながら、近年、石油資源の枯渇が危惧されており、植物などのバイオマス資源から得られる原料を用いたプラスチックからの嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器の提供が求められている。また、二酸化炭素排出量の増加、蓄積による地球温暖化が、気候変動などをもたらすことが危惧されていることからも、使用後の廃棄処分をしてもカーボンニュートラルな、植物由来モノマーを原料としたプラスチックからの嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器の開発が求められている。
【0006】
従来、植物由来モノマーとしてイソソルビドを使用し、炭酸ジフェニルとのエステル交換により、ポリカーボネートを得ることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、得られたポリカーボネートは、褐色であり、満足できるものではない。ま
た、イソソルビドと他のジヒドロキシ化合物との共重合ポリカーボネートとして、ビスフェノールAを共重合したポリカーボネートが提案されており(例えば、特許文献2参照)、更に、イソソルビドと脂肪族ジオールとを共重合することにより、イソソルビドからなるホモポリカーボネートの剛直性を改善する試みがなされている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
一方、脂環式ジヒドロキシ化合物である1,4−シクロヘキサンジメタノールを重合したポリカーボネートとしては、多数提案されているが(例えば、特許文献4、5)これらのポリカーボネートの分子量は高々4000程度と低いものであり、このため、ガラス転移温度が低いものが多い。
このようにイソソルビドを用いたポリカーボネートの提案はなされているが、これらの文献にて開示されているのは、ガラス転移温度、さらには基本的な機械的特性のみで、上述の嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器にとって重要な折り曲げ特性や表面硬度などの特性について開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】英国特許第1,079,686号公報
【特許文献2】特開昭56−55425号公報
【特許文献3】国際公開第2004/111106パンフレット
【特許文献4】特開平6−145336号公報
【特許文献5】特公昭63−12896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器に現在広く使用されているポリアクリレート、ポリスチレン、および従来のポリカーボネートは、紫外線による変色性、表面硬度、透明性、機械的強度、難燃性、表面硬度のうち何らかの特性の点で劣る点があった。本発明では、機械的強度、表面硬度、耐候性、耐摩耗性、および難燃性に優れた嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器を提供する目的でなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に鑑み、本発明者らは、植物由来のモノマーであるイソソルビドなどに代表される、特定の構造を含むジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を有するポリカーボネートが、折り曲げ特性が良好で、表面硬度が高く、耐候変色性が少なく、また自消性であり、しかもガラス転移温度と耐衝撃性のバランスが良好で、これらの特性が嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器に好適であることを見出し、発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は下記[1]〜[4]に存する。
[1]下記構造式(1)で表される構造を含むジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を有するポリカーボネートからなる、嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器。
【0012】
【化1】

【0013】
(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
[2] 前記ポリカーボネートのガラス転移温度が80℃以上である請求項1に記載の嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器。
[3] 前記ポリカーボネートが、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を有する請求項1または請求項2に記載の嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器。
【0014】
[4] 前記ポリカーボネートの有する前記構造式(1)で表される構造を含むジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との比率(モル%)が100:0〜30:70の範囲である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器。
【発明の効果】
【0015】
本発明に特定の構造を含むジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を有するポリカーボネートからなる嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器によれば、折り曲げ特性が良好で、表面高度が高く、耐候変色性が小さく、自消性であり、ガラス転移温度と耐衝撃強度のバランスが良好な、多方面の分野で使用可能な高性能の嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
本発明の容器は、下記構造式(1)で表される構造を含むジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を有するポリカーボネートからなる、嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器である。但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。
【0017】
【化2】

【0018】
本発明の嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器としては、容器の少なくとも一部に嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも一部を有するものであればどのようなものであっても構わず、容器の形状や機能に特に制限は無い。代表的には、蓋を有する容器であって、当該蓋を閉じた場合に嵌め合う嵌合部を有しているものや、容器と蓋がヒンジを介して接合されているものがあげられるが、蓋は必須ではなく、容器を分割したり接合したりする機能のために、嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有していても構わない。
【0019】
より具体的に本発明の嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器としては、例えば、嵌合部を有する容器では、容器の蓋などと容器とが互いに嵌りあうような構造を有する、いわゆる印籠構造を有するもの、容器又は容器の蓋のいずれか一方に一体的に、蓋が意図せず開いたりしないように系止するための系止部を有するもの、容器と蓋との双方を係止する別体に形成されている系止部材を有するもの、等があげられ、ヒンジ部を有する容器としては、容器と蓋とを接合するヒンジ部材を有するものであれば、
容器または蓋の一部に一体的に形成されたヒンジ部を有するもの、容器および蓋に一体的に形成され、組み合わせることでヒンジとしての機能を奏するヒンジ構造部分を有するもの、等があげられる。
【0020】
本発明の容器が有する嵌合部もヒンジ部も、その一部に本発明に係るポリカーボネート以外の材料を採用していて構わないが、それらの部材の作製および組み立てを必要とすることから、全てが本発明に係るポリカーボネートのみからなることが好ましい。
更に本発明に係るポリカーボネートからなる部材または部分が、本発明に係るポリカーボネートからなる部材または部分と接触し摺動する構造を有する容器が好ましい。また、ヒンジ部は、摺動部分を有さず、本発明に係るポリカーボネートからなる折り曲げ構造体からなるものであっても構わない。
【0021】
<ポリカーボネート>
本発明に係るポリカーボネートは、前記構造式(1)で表される構造を含むジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を有するものであるが、当該ジヒドロキシ化合物の一部を他種類のジヒドロキシ化合物、例えば脂肪族、芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位、またはポリアルキレングリコールなどの共重合構成単位に置き換えた共重合体であってもよい。
【0022】
本発明において、前記構造式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、分子内に構造式(1)で表される構造を有していれば特に限定されるものではないが、より具体的には、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等で例示されるような、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]ジフェニルメタン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−1−フェニルエタン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,4−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,3−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]プロパン、2,2−ビス[(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−tert−ブチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−4−メチルペンタン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]オクタン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]デカン、2,2−ビス[3−ブロモ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−シクロ
ヘキシル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン等で例示されるような、ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)アルカン類、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[3−シクロヘキシル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロペンタン等で例示されるような、ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)シクロアルカン類、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ジフェニルエ−テル、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−3,3’−ジメチルジフェニルエ−テル等で例示されるような、ジヒドロキシアルコキシジアリールエーテル類、4,4’−ビス(2−ヒドロキエトキシフェニル)スルフィド、4,4’−ビス[4−(2−ジヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]スルフィド等で例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルフィド類、4,4’−ビス(2−ヒドロキエトキシフェニル)スルホキシド、4,4’−ビス[4−(2−ジヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]スルホキシド等で例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルホキシド類、4,4’−ビス(2−ヒドロキエトキシフェニル)スルホン、4,4’−ビス[4−(2−ジヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]スルホン等で例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルホン類、1,4−ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,3−ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,2−ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,3−ビス[2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロピル]ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、1,3−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−5,7−ジメチルアダマンタン、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコール、および下記一般式(3)で表されるスピログリコール等の環状エーテル構造を有する化合物が挙げられ、これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0023】
【化3】

【0024】
これらの中でも特に上記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物が好適であり、該ジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。上記の中でもイソソルビドが最も好ましく、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
これらのジヒドロキシ化合物のうち、資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、光学特性、成形性の面から最も好ましい。
なお、イソソルビドは酸素によって徐々に酸化されやすいので、保管や、製造時の取り
扱いの際には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤を用いたり、窒素雰囲気下にしたりすることが肝要である。イソソルビドが酸化されると、蟻酸をはじめとする分解物が発生する。例えば、これら分解物を含むイソソルビドを用いてポリカーボネートを製造すると、得られるポリカーボネートに着色が発生したり、物性を著しく劣化させる原因となる。また、重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られないこともある。また、蟻酸の発生を防止するような安定剤を添加してあるような場合、安定剤の種類によっては、得られるポリカーボネートに着色が発生したり、物性を著しく劣化させたりする。安定剤としては還元剤や制酸剤が用いられ、このうち還元剤としては、ナトリウムボロハイドライド、リチウムボロハイドライドなどが挙げられ、制酸剤としては水酸化ナトリウム等のアルカリが挙げられるが、このようなアルカリ金属塩の添加は、アルカリ金属が重合触媒ともなるので、過剰に添加し過ぎると重合反応を制御できなくなることもある。
【0026】
酸化分解物を含まないイソソルビドを得るために、必要に応じてイソソルビドを蒸留しても良い。また、イソソルビドの酸化や、分解を防止するために安定剤が配合されている場合も、必要に応じて、イソソルビドを蒸留しても良い。この場合、イソソルビドの蒸留は単蒸留であっても、連続蒸留であっても良く、特に限定されない。雰囲気はアルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気にした後、減圧下で蒸留を実施する。
【0027】
このようなイソソルビドの蒸留を行うことにより、本発明では蟻酸含有量が20ppm未満、更に10ppm以下、特に5ppm以下であるような高純度のイソソルビドを用いることが好ましい。
一方、本発明に用いるに適した共重合構成単位の由来となるジヒドロキシ化合物としては、直鎖脂肪族、環式脂肪族、芳香族系ジヒドロキシ化合物のいずれでも良い。直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物として、例えばブタンジオール−1,4,ペンタンジオール−1,5,ネオペンチルグリコール,ヘキサンジオール−1,6,ヘプタンジオール−1,7,オクタンジオール−1,8,2−エチルヘキサンジオール−1,6,2,2,4−トリメチルヘキサン
ジオール−1,6,デカンジオール−1,10,水素化ジリノレイルグリコール,水素化
ジオレイルグリコールなどを挙げることができる。
【0028】
また、本発明に使用できる環式脂肪族(脂環式)ジヒドロキシ化合物としては、例えば1,2-シクロヘキ サンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジオールなどのヘキサンジオール類、1,2-シクロ ヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノールなどのノルボルナンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、1,3−アダマンタンジオール、2,2−アダマンタンジオール類などが挙げられる。これらのうち、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0029】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。
また、共重合構成単位のポリアルキレングリコールとしては炭素数2〜4のアルコシル基を1分子あたり2〜40個含有するものが好ましく、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを挙げることができる。
【0030】
これらの共重合構成単位であるヒドロキシ化合物は1種を単独で用いても良く、2種以
上を混合して用いても良い。直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物あるいはポリアルキレングリコールを共重合成分として使用すると、ガラス転移温度の低下が激しく、土木建築資材部品としての用途に制約が生じ好ましくない。芳香族ジヒドロキシ化合物を共重合成分として使用すると、構造式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と反応性が激しく異なり、透明性などが悪化する。構造式(1)で表されるジヒドロキシ化合物単独のポリカーボネート樹脂は、一般的に高分子量のものを得るのが困難である。一方、環式脂肪族(脂環式と表記することがある)ジヒドロキシ化合物を共重合成分として使用する場合は、以下に示すように構造式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と脂環式ジヒドロキシ化合物との反応性のバランスが良好であり、且つ高分子量化も比較的容易であり、ガラス転移温度の低下も直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物よりも程度が小さく、表面硬度、機械的強度も十分高いという点で望ましい。
【0031】
上記のように本発明において好ましいポリカーボネートである、前記構造式(1)で表される構造を含むジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位とからなるポリカーボネート共重合体について、その詳細を以下に述べるが、他のジヒドロキシ化合物との共重合体についても基本的には類似であり、また上記特許文献などを参考に製造等も可能である。
【0032】
前記構造式(1)で表される構造を含むジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との含有割合については、任意の割合で選択できる。しかし、示差走査熱量測定(DSC)を行ったとき、単一のガラス転移温度を与えるが、本発明に係るポリカーボネートは、前記構造式(1)で表される構造を含むジヒドロキシ化合物と脂環式ジヒドロキシ化合物の種類や配合比を調整することで、そのガラス転移温度を、用途に応じて、45℃程度から155℃程度まで任意のガラス転移温度を持つ重合体として得ることができる。
【0033】
したがって、本発明の嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器向けには、ガラス転移温度を80℃以上にすることにより、耐熱性(使用可能温度)で70℃以上が確保できることから、構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との比率を適切に選択する必要がある。当該比率は100:0〜30:70(モル%)、特に90:10〜40:60(モル%)、さらには85:15〜45:55(モル%)であることが好ましい。上記範囲よりも構造式(1)で表わされるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が多く脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が少ないと着色しやすくなり、逆に構造式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が少なく脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が多いと分子量が上がりにくく、またガラス転移温度が低下する傾向がある。
【0034】
また、本発明に係るポリカーボネートの重合度は、溶媒としてフェノールと1,1,2,2,−テトラクロロエタンの重量比1:1の混合溶液を用い、ポリカーボネート濃度を1.00g/dlに精密に調整し、温度20.0℃±0.1℃で測定した還元粘度(以下、単に「ポリカーボネートの還元粘度」と称す。)として、0.40dl/g以上、特に0.40dl/g以上で2.0dl/g以下であるような重合度であることが好ましい。このポリカーボネートの還元粘度が極端に低いものでは、嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器等に成形した時の機械的強度が弱い。また、ポリカーボネートの還元粘度が大きくなると、成形する際の流動性が低下し、サイクル特性を低下させ、成形品のひずみが大きくなり熱により変形し易い傾向がある。従って、本発明に係るポリカーボネートの還元粘度は0.40dl/g以上2.0dl/g以下、特に0.45dl/g以上1.5dl/g以下の範囲内であることが好ましい。
【0035】
本発明に係るポリカーボネートは、一般に用いられる重合方法で製造することができ、その重合方法は、ホスゲンを用いた溶液重合法、炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法のいずれの方法でも良いが、重合触媒の存在下に、ジヒドロキシ化合物を、より環境への毒性の低い炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法が好ましい。
この溶融重合法で用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記一般式(4)で表されるものが挙げられる。
【0036】
【化4】

【0037】
(一般式(4)において、A及びA’は、置換基を有していても良い炭素数1〜18の脂肪族基又は置換基を有していても良い芳香族基であり、A及びA’は同一であっても異なっていても良い。)
上記一般式(4)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネートに代表される置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等が例示されるが、特に好ましくはジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0038】
炭酸ジエステルは、ジヒドロキシ化合物に対して、0.96〜1.10のモル比率で用いることが好ましく、さらに好ましくは、0.98〜1.04のモル比率である。このモル比が0.96より小さくなると、製造されたポリカーボネートの末端OH基が増加して、ポリマーの熱安定性が悪化し、また、モル比が1.10より大きくなると、同一条件下ではエステル交換反応の速度が低下し、所望とする分子量のポリカーボネート共重合体の製造が困難となるばかりか、製造されたポリカーボネート中の残存炭酸ジエステル量が増加し、この残存炭酸ジエステルが、成形時、または成形品の臭気の原因となり好ましくない。
【0039】
また、溶融重合における重合触媒(エステル交換触媒)としては、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が使用される。アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物と共に補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物のみを使用することが特に好ましい。なお、本明細書において、「アルカリ金属」及び「アルカリ土類金属」という用語を、それぞれ、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005)における「第1族金属」及び「第2族金属」と同義として用いる。
【0040】
重合触媒として用いられるアルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウ
ム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩等が挙げられる。
【0041】
また、アルカリ土類金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。
【0042】
これらのアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
またアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物と併用される塩基性ホウ素化合物の具体例としては、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
【0043】
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0044】
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
【0045】
これらの塩基性化合物も1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
上記重合触媒の使用量は、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いる場合、構造式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と脂環式ジヒドロキシ化合物との合計1モルに対して、金属換算量として、通常、0.1〜100μモルの範囲内で用い、好ましくは0.5〜50μモルの範囲内であり、さらに好ましくは1〜25μモルの範囲内である。重合触媒の使用量が少なすぎると、所望の分子量のポリカーボネートを製造するのに必要な重合活性が得られず、一方、重合触媒の使用量が多すぎると、得られるポリ
カーボネートの色相が悪化し、副生成物が発生したりして流動性の低下やゲルの発生が多くなり、目標とする品質のポリカーボネートの製造が困難になる。
【0046】
このような本発明に係るポリカーボネートの製造にあたり、前記構造式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物などのジヒドロキシ化合物は、固体として供給しても良いし、加熱して溶融状態として供給しても良いし、水溶液として供給しても良い。これらの原料ジヒドロキシ化合物を溶融状態や、水溶液で供給すると、工業的に製造する際、計量や搬送がしやすいという利点がある。
【0047】
本発明において、前記構造式(1)で表される構造を含むジヒドロキシ化合物あるいは共重合成分を重合触媒の存在下で炭酸ジエステルと反応させる方法は、通常、2段階以上の多段工程で実施される。具体的には、第1段目の反応は140〜220℃、好ましくは150〜200℃の温度で0.1〜10時間、好ましくは0.5〜3時間実施される。第
2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げながら反応温度を上げていき、同時に発生するフェノールを反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力が200Pa以下で、210〜280℃の温度範囲のもとで重縮合反応を行う。
【0048】
この重縮合反応における減圧において、温度と反応系内の圧力のバランスを制御することが重要である。特に、温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比を狂わせ、重合度が低下することがある。例えば、ジヒドロキシ化合物としてイソソルビドと1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いる場合は、全ジヒドロキシ化合物に対し、1,4−シクロヘキサンジメタノールのモル比が50モル%以上の場合は、1,4−シクロヘキサンジメタノールがモノマーのまま留出しやすくなるので、反応系内の圧力が13kPa程度の減圧下で、温度を1時間あたり40℃以下の昇温速度で上昇させながら反応させ、さらに、6.67kPa程度までの圧力下で、温度を1時間あたり40℃以下の昇温速度で上昇させ、最終的に200Pa以下の圧力で、200から250℃の温度で重縮合反応を行うと、十分に重合度が上昇したポリカーボネートが得られるため、好ましい。
【0049】
また、全ジヒドロキシ化合物に対し、1,4−シクロヘキサンジメタノールのモル比が50モル%より少なくなった場合、特に、モル比が30モル%以下となった場合は、1,4−シクロヘキサンジメタノールのモル比が50モル%以上の場合と比べて、急激な粘度上昇が起こるので、例えば、反応系内の圧力が13kPa程度の減圧下までは、温度を1時間あたり40℃以下の昇温速度で上昇させながら反応させ、さらに、6.67kPa程度までの圧力下で、温度を1時間あたり40℃以上の昇温速度、好ましくは1時間あたり50℃以上の昇温速度で上昇させながら反応させ、最終的に200Pa以下の減圧下、220から290℃の温度で重縮合反応を行うと、十分に重合度が上昇したポリカーボネートが得られるため、好ましい。
【0050】
反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの方法でもよい。
本発明に係るポリカーボネートを溶融重合法で製造する際に、着色を防止する目的で、リン酸化合物や亜リン酸化合物を重合時に添加することができる。
リン酸化合物としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等のリン酸トリアルキルの1種又は2種以上が好適に用いられる。これらは、全ヒドロキシ化合物成分に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下添加することが好ましく、さらに好ましくは0.0003モル%以上0.003モル%以下添加することが好ましい。リン化合物の添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、上記上限より多いと、ヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりする。
【0051】
亜リン酸化合物を添加する場合は、下記に示す熱安定剤を任意に選択して使用できる。特に、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトの1種又は2種以上が好適に使用できる。これらの亜リン酸化合物は、全ヒドロキシ化合物成分に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下添加することが好ましく、さらに好ましくは0.0003モル%以上0.003モル%以下添加することが好ましい。亜リン酸化合物の添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、上記上限より多いと、ヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりすることもある。
【0052】
リン酸化合物と亜リン酸化合物は併用して添加することができるが、その場合の添加量はリン酸化合物と亜リン酸化合物の総量で、先に記載した、全ヒドロキシ化合物成分に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは0.0003モル%以上0.003モル%以下である。この添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、上記上限より多いと、ヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりすることもある。
【0053】
また、このようにして製造された本発明に係るポリカーボネートには、成形時等における分子量の低下や色相の悪化を防止するために熱安定剤を配合することができる。
かかる熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。なかでも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましく使用される。 これらの熱安定剤は、1種を単
独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0054】
かかる熱安定剤は、溶融重合時に添加した添加量に加えて更に追加で配合することができる。即ち、適当量の亜リン酸化合物やリン酸化合物を配合して、ポリカーボネート(共)重合体を得た後に、後に記載する配合方法で、さらに亜リン酸化合物を配合すると、重合時のヘイズの上昇、着色、及び耐熱性の低下を回避して、さらに多くの熱安定剤を配合でき、色相の悪化の防止が可能となる。
【0055】
これらの熱安定剤の配合量は、ポリカーボネートを100重量部とした場合、0.00
01〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.001〜0.2重量部が更に好ましい。
また、本発明に係るポリカーボネートには、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を配合することもできる。
【0056】
かかる酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0057】
これら酸化防止剤の配合量は、ポリカーボネートを100重量部とした場合、0.0001〜0.5重量部が好ましい。
また、本発明に係るポリカーボネートには、シート成形時の冷却ロールからのロール離れ、あるいは射出成形時の金型からの離型性をより向上させるために、本発明の目的を損なわない範囲で離型剤を配合することも可能である。
【0058】
かかる離型剤としては、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸、パラフィンワックス、蜜蝋、オレフィン系ワックス、カルボキシ基および/またはカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
高級脂肪酸エステルとしては、炭素原子数1〜20の一価または多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。かかる一価または多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸モノグリセリド、ベヘニン酸ベヘニル、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート等が挙げられる。
【0059】
なかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ベヘニン酸ベヘニルが好ましく用いられる。
高級脂肪酸としては、炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸が好ましい。かかる脂肪酸としては、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などが挙げられる。
【0060】
これらの離型剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
かかる離型剤の配合量は、ポリカーボネートを100重量部とした場合、0.01〜5重量部が好ましい。
また、本発明に係るポリカーボネートは、紫外線による変色は現行のポリカーボネート樹脂に比較して著しく小さいが、さらに改良の目的で、本願発明の目的を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤を配合することができる。
【0061】
かかる紫外線吸収剤、光安定剤としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)等が挙げられる。
【0062】
これらの紫外線吸収剤、光安定剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
かかる配合量は、ポリカーボネートを100重量部とした場合、0.01〜2重量部が好ましい。
また、本発明に係るポリカーボネートには、重合体や紫外線吸収剤に基づく嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器の黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を配合することができる。ブルーイング剤としては、現行のポリカーボネート樹脂に使用されるものであれば、特に支障なく使用することができる。一般的にはアンスラキノン系染料が入手容易であり好ましい。
【0063】
具体的なブルーイング剤としては、例えば一般名Solvent Violet13[CA.No(カラーインデックスNo)60725]、一般名Solvent Viol
et31[CA.No 68210、一般名Solvent Violet33[CA.
No 60725;、一般名Solvent Blue94[CA.No 61500]

一般名Solvent Violet36[CA.No 68210]、一般名Solv
ent Blue97[バイエル社製「マクロレックスバイオレットRR」]および一
般名Solvent Blue45[CA.No 61110]が代表例として挙げられる。
【0064】
これらのブルーイング剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。

これらブルーイング剤は、通常、ポリカーボネートを100重量部とした場合、0.1
×10−4〜2×10−4重量部の割合で配合される。
【0065】
本発明に係るポリカーボネートと上述のような各種の添加剤との配合は、例えばタンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等で混合する方法、あるいは上記各成分を例えば塩化メチレンなどの共通の良溶媒に溶解させた状態で混合する溶液ブレンド方法などがあるが、これは特に限定されるものではなく、通常用いられるポリマーブレンド方法であればどのような方法を用いてもよい。
【0066】
こうして得られる本発明に係るポリカーボネート或いは、これに各種添加剤を添加してなるポリカーボネート組成物は、そのまま、または溶融押出機で一旦ペレット状にしてから、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の通常知られている方法で嵌合部およびヒン
ジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器などの成形物にすることができる。
本発明に係るポリカーボネートの混和性を高めて安定した各物性を得るためには、溶融押出において単軸押出機、二軸押出機を使用するのが好ましい。単軸押出機、二軸押出機を用いる方法は、溶剤等を用いることがなく、環境への負荷が小さく、生産性の点からも好適に用いることができる。 本発明の嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1
つを有する容器用途向けポリカーボネート(の場合は、押出機の溶融混練温度は通常200〜300℃、好ましくは220〜260℃である。溶融混練温度が200℃より低い温度であると、ポリカーボネートの溶融粘度が高く、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。300℃より高いと、ポリカーボネートの劣化が起こりやすくなり、ポリカーボネートの色が黄変したり、分子量が低下するため強度が劣化したりする。
【0067】
押出機を使用する場合、押出時にポリカーボネートの焼け、異物の混入を防止するため、フィルターを設置することが望ましい。フィルターの異物除去の大きさ(目開き)は、求められる光学的な精度依存するが、100μm以下が好ましい。特に、異物の混入を嫌う場合は、40μm以下、さらには10μm以下が好ましい。 さらに、ポリカーボネー
トの押出は、押出後の異物混入を防止するために、クリーンルーム中で実施することが望ましい。
【0068】
また、押出されたポリカーボネートを冷却しチップ化する際は、空冷、水冷等の冷却方法を使用するのが好ましい。空冷の際に使用する空気は、ヘパフィルター等で空気中の異物を事前に取り除いた空気を使用し、空気中の異物の再付着を防ぐのが望ましい。水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、さらにフィルターにて、水中の異物を取り除いた水を使用することが望ましい。用いるフィルターの大きさ(目開き)は種々あるが、10〜0.45μmのフィルターのものが好ましい。
【0069】
本発明に係るポリカーボネートは、上記の他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、周知の種々の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、耐候性付与剤、耐衝撃性改良剤、難燃剤、難燃助剤、加水分解抑制剤、帯電防止剤、発泡剤、染顔料を含有していてもよい。また、例えば、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィンなどの合成樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートなどの生分解性樹脂などと混練したポリマーアロイを嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器用材料としても用いることもできる。
【0070】
本発明に係るポリカーボネートを用いた嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器の成形には、通常ビスフェノールAタイプのポリカーボネート樹脂の成形法と同様に行うことができる。シートなどの押出成形においては、例えばダイス温度を230〜280℃に設定し、冷却ロール温度を80〜120℃にて可能である。また、射出成形の場合には金型温度は30℃〜120℃、樹脂温度は220〜290℃となるようにするのが良い。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。以下において、ポリカーボネートの物性ないし特性の評価は次の方法により行った。
(1)還元粘度
ウベローデ型粘度計を用い、溶媒としてフェノールと1,1,2,2,−テトラクロロエタンの重量比1:1の混合溶液を用い、ポリカーボネートの濃度を1.00g/dlに精密に調整し、温度20.0℃±0.1℃で測定した。この数値が高いほど分子量が大きい。
【0072】
(2)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(メトラー社製「DSC822」)に試料約10mgを用いて、10℃/minの昇温速度で加熱して測定し、JIS K 7121(1987)に準拠して、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた折線との交点の温度である、補外ガラス転移開始温度Tgを求めた。
【0073】
(3)折り曲げ試験
ポリカーボネートを、単軸押出機(いすず化工機社製、スクリュー径25mm、シリンダー設定温度:220℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:220℃)、チルロール(設定温度:120〜130℃)及び巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み100μmのフィルムを製造し、当該フィルムを、フィルムの押出方向を長さとして、幅20mm、長さ100mmの短冊状に安全かみそりを用いて切り出したものを試料とした。当該フィルムを長さ方向で端部から50mmの位置で幅方向の折り曲げ線に沿って折り曲げることを、表および裏で行うことを1回として、破断若しくは破れが生じるまで繰り返し、破断若しくは破れが生じた際の折り曲げ回数を折り曲げ試験の回数とした。
【0074】
(4)耐衝撃強度
カスタム・サイエンティフィック(Custom Scientific)社製ミニマ
ックス射出成形機「CS−183MMX」を用いて、温度240〜300℃で、長さ31.5mm、幅6.2mm、厚さ3.2mmの試験片を射出成形し、深さ1.2mmのノッチをノッチングマシンで付け、試験片とした。
この試験片について、カスタム・サイエンティフィック社製ミニマックスアイゾット衝撃試験機「CS−183TI型」を用いて、23℃におけるノッチ付きのアイゾット衝撃強度を測定した。この数値が大きいほど、耐衝撃強度が大きく、割れにくい。
【0075】
(5)テーバー磨耗試験
カスタム・サイエンティフィック(Custom Scientific)社製ミニマ
ックス射出成形機「CS−183MMX」を用いて、温度240〜300℃で、長さ31.5mm、幅6.2mm、厚さ0.8mmの試験片を射出成形し、摩耗輪CS−10F、荷重500g、回転数100サイクルの条件にて、テーバー摩耗試験(東洋精機社製Rotary Abrasion Tester)を行いて試験前後のヘーズ値の差ΔH%を測定した。
【0076】
(6)引っかき硬度(鉛筆法)試験
カスタム・サイエンティフィック(Custom Scientific)社製ミニマ
ックス射出成形機「CS−183MMX」を用いて、温度240〜300℃で、長さ31.5mm、幅6.2mm、厚さ0.8mmの試験片を射出成形し、コーテック社製引っかき硬度(鉛筆法)試験器を用いて、JIS K5600-5-4に準拠して、鉛筆硬度を6B〜6Hの範囲で測定した。6Bは表面硬度が低く、6Hは表面硬度が高いことを示す。
【0077】
(7)燃焼性試験
カスタム・サイエンティフィック(Custom Scientific)社製ミニマ
ックス射出成形機「CS−183MMX」を用いて、温度240〜300℃で、長さ31.5mm、幅6.2mm、厚さ0.8mmの試験片を射出成形し、UL−94規格 水平燃焼性試験(HB)に準拠して測定した。ただし、試験片の片方の端に試験炎を30秒間あてて取り去る方法での燃焼状況の確認を行った。試験片全体に燃え広がらずに、鎮火すれば自消性材料と判断される。
【0078】
(8)耐候変色試験
カスタム・サイエンティフィック(Custom Scientific)社製ミニマ
ックス射出成形機「CS−183MMX」を用いて、温度240〜300℃で、射出成形した長さ31.5mm、幅6.2mm、厚さ0.8mmの試験片を、三重県四日市市三菱化学(株)四日市事業所内で南面45度の傾斜面に設置して、2006年1月中旬〜10月中旬まで耐候変色試験を実施した。その試験前後の試験片に対して、日本電色工業社製分光式色差計SE−2000を用いて色差ΔEを測定した。ΔEが小さいほど、変色が小さいことを示している。
【0079】
(9)蟻酸の定量
イソソルビドを純水で100倍希釈してイオンクロマトグラフDionex社製DX−500型で測定した。
なお、実施例1で用いたイソソルビドの蟻酸含有量は5ppmであった。
【0080】
[実施例1]
イソソルビド(ロケットフルーレ社製)27.7重量部(0.516モル)に対して、1,4−シクロヘキサンジメタノール(イーストマン社製、以下「1,4−CHDM」と略記する。)13.0重量部(0.221モル)、ジフェニルカーボネート(三菱化学社製、以下「DPC」と略記する。)59.2重量部(0.752モル)、および触媒として、炭酸セシウム(和光純薬社製)2.21×10−4重量部(1.84×10−6モル)を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて攪拌しながら、原料を溶解させた(約15分)。
【0081】
次いで、圧力を常圧から13.3kPaにし、加熱槽温度を190℃まで1時間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
反応容器全体を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、反応容器内の圧力を6.67kPaとし、加熱槽温度を230℃まで、15分で上昇させ、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。攪拌機の攪拌トルクが上昇してくるので、8分で250℃まで昇温し、さらに発生するフェノールを取り除くため、反応容器内の圧力を0.200kPa以下に到達させた。所定の攪拌トルクに到達後、反応を終了し、生成した反応物を水中に押し出して、ポリカーボネートのペレットを得た。得られたポリカーボネートを用いて、MEIKI製射出成形機「NADEM2000」を用いて、温度230〜260℃で、長さ120mm、幅50mm、高さ30mmの嵌合部を有するモデルテスト容器を射出成形した。
得られたポリカーボネートについて、上記記載の評価方法により、ガラス転移温度、折り曲げ試験、アイゾット衝撃値、テーバー磨耗、鉛筆硬度、燃焼性、および耐候変色(ΔE)を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0082】
[比較例1]
ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製ノバレックス7020AD2)について、上記記載の評価方法により、ガラス転移温度、折り曲げ試験、アイゾット衝撃値、テーバー磨耗、鉛筆硬度、燃焼性、および耐候変色(ΔE)を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0083】
[比較例2]
ポリアクリル樹脂(三菱レイヨン社製 アクリペットMF)について、上記記載の評価方法により、還元粘度、ガラス転移温度、折り曲げ試験、アイゾット衝撃値、鉛筆硬度、燃焼性、および耐候変色(ΔE)を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
表1より次のことが判明する。
1)比較例1のポリカーボネート樹脂からなる容器は、嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器としてガラス転移温度、耐衝撃強度は充分な特性を有しており、また自消性材料である。しかし鉛筆硬度はBと低く、また耐候変色性が大きく劣っている。一方アクリル樹脂は鉛筆硬度は2Hと十分な性能を有しており、また変色は少ないが、ガラス転移温度、耐衝撃性に劣り、また易燃焼性である。
【0086】
2)実施例1のイソソルビドと1,4−CHDMの配合比率が68/32のポリカーボネート共重合体からなる容器は、ガラス転移温度、耐衝撃強度ともに嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器として十分優れており、しかも鉛筆硬度、耐候変色性はアクリル樹脂に近い性能を有しており、しかもアクリル樹脂の大きな欠点であった燃焼性も、自消性クラスに改善されている。結果として本発明の嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器は、極めて優れた性能を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
植物由来のモノマーを使用した本発明に係るポリカーボネートからなる嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器は、良好な環境・石油資源保全性を有し、表面高度が高く、耐候変色性が小さく、自消性であり、ガラス転移温度と耐衝撃強度のバランスが良好なので、分野としては多方面に使用され、例えば、事務用品容器、工業関係容器、食品容器、医薬品容器、化粧品容器など多方面にわたる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(1)で表される構造を含むジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を有するポリカーボネートからなる、嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器
【化1】

(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【請求項2】
前記ポリカーボネートのガラス転移温度が80℃以上である請求項1に記載の嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器。
【請求項3】
前記ポリカーボネートが、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を有する請求項1または請求項2に記載の嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器。
【請求項4】
前記ポリカーボネートの有する前記構造式(1)で表される構造を含むジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との比率(モル%)が100:0〜30:70の範囲である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の嵌合部およびヒンジ部から選ばれる少なくとも1つを有する容器。

【公開番号】特開2011−105366(P2011−105366A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264340(P2009−264340)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】