説明

ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂組成物、光学フィルム及びポリカーボネート樹脂成形品

【課題】特定の末端基を含み、耐熱性、透明性に優れたポリカーボネート樹脂及びこれを含む組成物を提供する。
【解決手段】構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの重縮合により得られるポリカーボネート樹脂であって、構造式(2)で表される末端基を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂。


(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂等に関し、より詳しくは、特定の末端基を含むポリカーボネート樹脂等に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマス資源から得られる原料を用いたポリカーボネート樹脂として、例えば、特許文献1には、植物由来モノマーとしてイソソルビドを使用し、炭酸ジフェニルとのエステル交換によりポリカーボネート樹脂を得ることが記載されている。特許文献2には、イソソルビドとビスフェノールAを共重合したポリカーボネート樹脂が記載されている。特許文献3には、イソソルビドと脂肪族ジオールとを共重合することによりポリカーボネート樹脂の剛直が改善されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】英国特許第1,079,686号明細書
【特許文献2】特開昭56−055425号公報
【特許文献3】国際公開第2004/111106号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、イソソルビド等の植物由来モノマーを用いて得られるポリカーボネート樹脂は、従来の石油原料由来の芳香族ポリカーボネートに比べ、耐熱性、透明性の点で不十分である。また、溶融成形時に黄変し、透明部材や光学部材として用いることが困難であるという問題がある。
本発明の目的は、特定の末端基を含み、耐熱性、透明性に優れたポリカーボネート樹脂及びこれを含む組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、下記請求項に係るポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂組成物、光学フィルム、ポリカーボネート樹脂成形品が提供される。
請求項1に係る発明は、下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの重縮合により得られるポリカーボネート樹脂であって、下記構造式(2)で表される末端基を含み、前記構造式(2)で表される末端基の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)が0.001%以上7%以下の範囲であることを特徴とするポリカーボネート樹脂である。
【0006】
【化1】

【0007】
(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【0008】
【化2】

【0009】
請求項2に係る発明は、下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物60ppm以下を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂である。
【0010】
【化3】

【0011】
(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【0012】
請求項3に係る発明は、下記一般式(3)で表される炭酸ジエステル60ppm以下を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂である。
【0013】
【化4】

【0014】
(一般式(3)において、A、Aは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族基または置換基を有していてもよい芳香族基であり、AとAは同一であっても異なっていてもよい。)
【0015】
請求項4に係る発明は、炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物700ppm以下を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂である。
【0016】
請求項5に係る発明は、下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂であって、炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が700ppm以下であり、且つ、前記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物の含有量が60ppm以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂である。
【0017】
【化5】

【0018】
(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【0019】
請求項6に係る発明は、下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂であって、炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が700ppm以下であり、且つ、下記一般式(3)で表される炭酸ジエステルの含有量が0.1ppm以上60ppm以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂である。
【0020】
【化6】

【0021】
(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【0022】
【化7】

【0023】
(一般式(3)において、A、Aは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族基または置換基を有していてもよい芳香族基であり、AとAは同一であっても異なっていてもよい。)
【0024】
請求項7に係る発明は、前記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物の含有量が60ppm以下であることを特徴とする請求項6に記載のポリカーボネート樹脂である。
【0025】
【化8】

【0026】
(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【0027】
請求項8に係る発明は、下記構造式(2)で表される末端基の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)が0.001%以上7%以下の範囲であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂である。
【0028】
【化9】

【0029】
請求項9に係る発明は、前記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物が、複素環基を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂である。
請求項10に係る発明は、前記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物が、下記一般式(4)で表される複素環基を有する化合物であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂である。
【0030】
【化10】

【0031】
請求項11に係る発明は、前記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と、下記一般式(3)で表される炭酸ジエステルとの重縮合により得られることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂である。
【0032】
【化11】

【0033】
(一般式(3)において、A、Aは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族基または置換基を有していてもよい芳香族基であり、AとAは同一であっても異なっていてもよい。)
【0034】
請求項12に係る発明は、さらに、下記構造式(5)で表される末端基の存在数(C)の全末端数(B)に対する割合(C/B)が20%以上の範囲であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂である。
【0035】
【化12】

【0036】
請求項13に係る発明は、ガラス転移温度が90℃以上であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂である。
請求項14に係る発明は、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール、環状アセタール構造を有するジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する構成単位をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂である。
【0037】
請求項15に係る発明は、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂100重量部と、脂肪酸0.0001重量部以上2重量部以下と、を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物である。
請求項16に係る発明は、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂100重量部と、天然物系ワックス0.0001重量部以上2重量部以下と、を含むことを特徴とする請求項15に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
請求項17に係る発明は、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂100重量部と、オレフィン系ワックス、シリコーンオイルから選ばれる少なくとも1種の化合物0.0001重量部以上2重量部以下と、を含むことを特徴とする請求項15又は16に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
請求項18に係る発明は、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂100重量部と、酸性化合物0.0001重量部以上0.1重量部以下と、を含むことを特徴とする請求項15乃至17のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
請求項19に係る発明は、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂100重量部と、リン系化合物0.001重量部以上1重量部以下と、を含むことを特徴とする請求項15乃至18のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
請求項20に係る発明は、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂100重量部と、ブルーイング剤0.000001重量部以上1重量部以下と、を含むことを特徴とする請求項15乃至19のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
請求項21に係る発明は、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂100重量部と、炭素数が5以上のアルキル基によって1つ以上置換された芳香族モノヒドロキシ化合物0.001重量部以上1重量部以下と、を含むことを特徴とする請求項15乃至20のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
【0038】
請求項22に係る発明は、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂からなることを特徴とする光学フィルムである。
【0039】
請求項23に係る発明は、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂又は請求項15乃至21のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなることを特徴とするポリカーボネート樹脂成形品である。
請求項24に係る発明は、前記ポリカーボネート樹脂成形品が、射出成形法により成形されたものであることを特徴とする請求項23に記載のポリカーボネート樹脂成形品である。
【0040】
請求項25に係る発明は、下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの重縮合により得られ、且つ、下記構造式(2)で表される末端基の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)が、0.001%以上7%以下の範囲であるポリカーボネート樹脂100重量部と、無機充填材1重量部以上100重量部以下と、を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物である。
【0041】
【化13】

【0042】
(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【0043】
【化14】

【0044】
請求項26に係る発明は、下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含み、且つ炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が700ppm以下であり、且つ、前記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物の含有量が60ppm以下であるポリカーボネート樹脂100重量部と、無機充填材1重量部以上100重量部以下と、を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物である。
【0045】
【化15】

【0046】
(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【0047】
請求項27に係る発明は、下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含み、且つ炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が700ppm以下であり、且つ、下記一般式(3)で表される炭酸ジエステルの含有量が0.1ppm以上60ppm以下であるポリカーボネート樹脂100重量部と、無機充填材1重量部以上100重量部以下と、を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物である。
【0048】
【化16】

【0049】
(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【0050】
【化17】

【0051】
(一般式(3)において、A、Aは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族基または置換基を有していてもよい芳香族基であり、AとAは同一であっても異なっていてもよい。)
【0052】
請求項28に係る発明は、下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの重縮合により得られ、且つ、下記構造式(2)で表される末端基の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)が、0.001%以上7%以下の範囲であるポリカーボネート樹脂100重量部と、難燃剤0.01重量部以上30重量部以下と、を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物である。
【0053】
【化18】

【0054】
(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【0055】
【化19】

【0056】
請求項29に係る発明は、難燃剤が、燐含有化合物系難燃剤、ハロゲン含有化合物系難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項28に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
【0057】
請求項30に係る発明は、下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含み、且つ炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が700ppm以下であり、且つ、前記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物の含有量が60ppm以下であるポリカーボネート樹脂100重量部と、難燃剤0.01重量部以上30重量部以下と、を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物である。
【0058】
【化20】

【0059】
(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
請求項31に係る発明は、難燃剤が、燐含有化合物系難燃剤、ハロゲン含有化合物系難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項30に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
【0060】
請求項32に係る発明は、下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含み、且つ炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が700ppm以下であり、且つ、下記一般式(3)で表される炭酸ジエステルの含有量が0.1ppm以上60ppm以下であるポリカーボネート樹脂100重量部と、難燃剤0.01重量部以上30重量部以下と、を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物である。
【0061】
【化21】

【0062】
(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【0063】
【化22】

【0064】
(一般式(3)において、A、Aは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族基または置換基を有していてもよい芳香族基であり、AとAは同一であっても異なっていてもよい。)
請求項33に係る発明は、難燃剤が、燐含有化合物系難燃剤、ハロゲン含有化合物系難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項32に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
【0065】
請求項34に係る発明は、下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの重縮合により得られ、且つ、下記構造式(2)で表される末端基を含むポリカーボネート樹脂100重量部と、紫外線吸収剤0.005重量部以上5重量部以下と、を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物である。
【0066】
【化23】

【0067】
(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【0068】
【化24】

【0069】
請求項35に係る発明は、前記紫外線吸収剤が、波長210nmにおけるモル吸光係数と波長250nmから波長350nmのモル吸光係数の最大値との比が1.75未満であることを特徴とする請求項34に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
請求項36に係る発明は、前記紫外線吸収剤が、トリアジン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、マロン酸エステル系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項34又は35に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
【0070】
請求項37に係る発明は、下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含み、且つ炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が700ppm以下であり、且つ、前記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物の含有量が60ppm以下であるポリカーボネート樹脂100重量部と、紫外線吸収剤0.005重量部以上5重量部以下と、を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物である。
【0071】
【化25】

【0072】
(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
請求項38に係る発明は、前記紫外線吸収剤が、波長210nmにおけるモル吸光係数と波長250nmから波長350nmのモル吸光係数の最大値との比が1.75未満であることを特徴とする請求項37に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
請求項39に係る発明は、前記紫外線吸収剤が、トリアジン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、マロン酸エステル系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項37又は38に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
【0073】
請求項40に係る発明は、下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含み、且つ炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が700ppm以下であり、且つ、下記一般式(3)で表される炭酸ジエステルの含有量が0.1ppm以上60ppm以下であるポリカーボネート樹脂100重量部と、紫外線吸収剤0.005重量部以上5重量部以下と、を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物である。
【0074】
【化26】

【0075】
(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【0076】
【化27】

【0077】
(一般式(3)において、A、Aは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族基または置換基を有していてもよい芳香族基であり、AとAは同一であっても異なっていてもよい。)
請求項41に係る発明は、前記紫外線吸収剤が、波長210nmにおけるモル吸光係数と波長250nmから波長350nmのモル吸光係数の最大値との比が1.75未満であることを特徴とする請求項40に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
請求項42に係る発明は、前記紫外線吸収剤が、トリアジン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、マロン酸エステル系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項40又は41に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
【0078】
請求項43に係る発明は、下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの重縮合により得られ、且つ、下記構造式(2)で表される末端基の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)が、0.001%以上7%以下の範囲であるポリカーボネート樹脂10質量部〜90質量部と、熱可塑性樹脂90質量部〜10質量部と、を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物である。
【0079】
【化28】

【0080】
(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【0081】
【化29】

【0082】
請求項44に係る発明は、熱可塑性樹脂が、スチレン系樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びアクリル系樹脂より選ばれた少なくとも1種類であることを特徴とする請求項43に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
【0083】
請求項45に係る発明は、下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含み、且つ炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が700ppm以下であり、且つ、前記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物の含有量が60ppm以下であるポリカーボネート樹脂10質量部〜90質量部と、熱可塑性樹脂90質量部〜10質量部と、を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物である。
【0084】
【化30】

【0085】
(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
請求項46に係る発明は、熱可塑性樹脂が、スチレン系樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びアクリル系樹脂より選ばれた少なくとも1種類であることを特徴とする請求項45に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
【0086】
請求項47に係る発明は、下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含み、且つ炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が700ppm以下であり、且つ、下記一般式(3)で表される炭酸ジエステルの含有量が0.1ppm以上60ppm以下であるポリカーボネート樹脂10質量部〜90質量部と、熱可塑性樹脂90質量部〜10質量部と、を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物である。
【0087】
【化31】

【0088】
(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【0089】
【化32】

【0090】
(一般式(3)において、A、Aは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族基または置換基を有していてもよい芳香族基であり、AとAは同一であっても異なっていてもよい。)
請求項48に係る発明は、熱可塑性樹脂が、スチレン系樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びアクリル系樹脂より選ばれた少なくとも1種類であることを特徴とする請求項47に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
【0091】
請求項49に係る発明は、請求項25乃至48のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなることを特徴とするポリカーボネート樹脂成形品である。
請求項50に係る発明は、ポリカーボネート樹脂成形品が、射出成形法により成形されたものであることを特徴とする請求項49に記載のポリカーボネート樹脂成形品である。
【発明の効果】
【0092】
本発明によれば、耐熱性、透明性に優れたポリカーボネート樹脂及びこれを含むポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】複素環含有ポリカーボネート樹脂A−1のH−NMRチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0094】
以下、発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。なお、本発明においてppmとは、特に指定しない限り対象物の基準物に対する重量比率のことを示す。
【0095】
[1]ポリカーボネート樹脂
本発明で使用するポリカーボネート樹脂は、下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの重縮合により得られるものである。
【0096】
【化33】

【0097】
(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【0098】
(ジヒドロキシ化合物)
上記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等の側鎖に芳香族基を有し主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のオキシアルキレングリコール類;ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]ジフェニルメタン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−1−フェニルエタン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,4−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,3−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]プロパン、2,2−ビス[(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−tert−ブチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−4−メチルペンタン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]オクタン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]デカン、2,2−ビス[3−ブロモ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−シクロヘキシル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン等のビス(ヒドロキシアルコキシアリール)アルカン類;1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[3−シクロヘキシル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロペンタン等のビス(ヒドロキシアルコキシアリール)シクロアルカン類;4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ジフェニルエ−テル、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−3,3’−ジメチルジフェニルエ−テル等のジヒドロキシアルコキシジアリールエーテル類;4,4’−ビス(2−ヒドロキエトキシフェニル)スルフィド、4,4’−ビス[4−(2−ジヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]スルフィド等のビスヒドロキシアルコキシアリールスルフィド類;4,4’−ビス(2−ヒドロキエトキシフェニル)スルホキシド、4,4’−ビス[4−(2−ジヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]スルホキシド等のビスヒドロキシアルコキシアリールスルホキシド類;4,4’−ビス(2−ヒドロキエトキシフェニル)スルホン、4,4’−ビス[4−(2−ジヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]スルホン等のビスヒドロキシアルコキシアリールスルホン類;1,4−ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,3−ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,2−ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,3−ビス[2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロピル]ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、1,3−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−5,7−ジメチルアダマンタン、下記一般式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される複素環基を有するジヒドロキシ化合物;および、2−(5−エチル−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−2−メチルプロパン−1−オール、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のスピログリコール類が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、下記一般式(4)で表されるジヒドロキシ化合物が好ましい。
【0099】
【化34】

【0100】
上記一般式(4)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、立体異性体の関係にあるイソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。これらのジヒドロキシ化合物のうち、資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、光学特性、成形性の面から最も好ましい。
【0101】
尚、イソソルビドは酸素によって徐々に酸化されやすい。このため、保管や、製造時の取り扱いの際には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤を用いたり、窒素雰囲気下にしたりすることが肝要である。イソソルビドが酸化されると、蟻酸をはじめとする分解物が発生する。例えば、これら分解物を含むイソソルビドを用いてポリカーボネート樹脂を製造すると、得られるポリカーボネート樹脂に着色が発生したり、物性を著しく劣化させる原因となる。また、重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られないこともあり、好ましくない。また、蟻酸の発生を防止するような安定剤を添加してあるような場合、安定剤の種類によっては、得られるポリカーボネート樹脂に着色が発生したり、物性を著しく劣化させたりする。安定剤としては還元剤や制酸剤が用いられる。このうち還元剤としては、ナトリウムボロハイドライド、リチウムボロハイドライド等が挙げられ、制酸剤としては水酸化ナトリウム等のアルカリが挙げられる。このようなアルカリ金属塩の添加は、アルカリ金属が重合触媒ともなるので、過剰に添加し過ぎると重合反応を制御できなくなり、好ましくない。
【0102】
酸化分解物を含まないイソソルビドを得るために、必要に応じてイソソルビドを蒸留しても良い。また、イソソルビドの酸化や、分解を防止するために安定剤が配合されている場合も、必要に応じて、イソソルビドを蒸留しても良い。この場合、イソソルビドの蒸留は単蒸留であっても、連続蒸留であっても良く、特に限定されない。蒸留は、アルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気下で、減圧蒸留を実施する。このようなイソソルビドの蒸留を行うことにより、蟻酸含有量が20ppm以下、特に5ppm以下である高純度のイソソルビドを用いることができる。
【0103】
尚、イソソルビド中の蟻酸含有量の測定方法は、イオンクロマトグラフを使用し、以下の手順に従い行われる。
イソソルビド約0.5gを精秤し50mlのメスフラスコに採取して純水で定容する。標準試料としてギ酸ナトリウム水溶液を用い、標準試料とリテンションタイムが一致するピークをギ酸とし、ピーク面積から絶対検量線法で定量する。
イオンクロマトグラフは、Dionex社製のDX−500型を用い、検出器には電気伝導度検出器を用いた。測定カラムとして、Dionex社製ガードカラムにAG−15、分離カラムにAS−15を用いる。測定試料を100μlのサンプルループに注入し、溶離液に10mM−NaOHを用い、流速1.2ml/min、恒温槽温度35℃で測定する。サプレッサーには、メンブランサプレッサーを用い、再生液には12.5mM−HSO水溶液を用いる。
【0104】
(脂環式ジヒドロキシ化合物)
本発明で使用するポリカーボネート樹脂は、前述した一般式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位以外に、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むことが好ましい。
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、通常、5員環構造又は6員環構造を含む化合物が挙げられる。脂環式ジヒドロキシ化合物が5員環、6員環構造であることにより、得られるポリカーボネート樹脂の耐熱性を高くすることができる。6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。
脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素原子数は通常70以下であり、好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。炭素原子数が過度に大きいと、耐熱性が高くなるが、合成が困難になったり、精製が困難になったり、コストが高価になる傾向がある。炭素原子数が小さいほど、精製しやすく、入手しやすい傾向がある。
【0105】
5員環構造又は6員環構造を含む脂環式ジヒドロキシ化合物としては、具体的には、下記一般式(II)又は(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
HOCH−R−CHOH (II)
HO−R−OH (III)
(但し、式(II),式(III)中、R,Rは、炭素数4〜20のシクロアルキレン基を表す。)
【0106】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジメタノールとしては、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIa)(式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)で示される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0107】
【化35】

【0108】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノールとしては、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIb)(式中、nは0又は1で表す。)で表される種々の異性体を包含する。
【0109】
【化36】

【0110】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるデカリンジメタノール又は、トリシクロテトラデカンジメタノールとしては、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIc)(式中、mは0、又は1を表す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール等が挙げられる。
【0111】
【化37】

【0112】
また、上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジメタノールとしては、一般式(II)において、Rが下記一般式(IId)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール等が挙げられる。
【0113】
【化38】

【0114】
一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジメタノールとしては、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIe)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,3−アダマンタンジメタノール等が挙げられる。
【0115】
【化39】

【0116】
また、上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジオールは、一般式(III)において、Rが下記一般式(IIIa)(式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基で表される。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
【0117】
【化40】

【0118】
上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジオール、ペンタシクロペンタデカンジオールとしては、一般式(III)において、Rが下記一般式(IIIb)(式中、nは0又は1で表す。)で表される種々の異性体を包含する。
【0119】
【化41】

【0120】
上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるデカリンジオール又は、トリシクロテトラデカンジオールとしては、一般式(III)において、Rが下記一般式(IIIc)(式中、mは0、又は1を表す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6−デカリンジオール、1,5−デカリンジオール、2,3−デカリンジオール等が用いられる。
【0121】
【化42】

【0122】
上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジオールとしては、一般式(III)において、Rが下記一般式(IIId)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3−ノルボルナンジオール、2,5−ノルボルナンジオール等が用いられる。
【0123】
【化43】

【0124】
上記一般式(III)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジオールとしては、一般式(III)において、Rが下記一般式(IIIe)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては具体的には、1,3−アダマンタンジオール等が用いられる。
【0125】
【化44】

【0126】
上述した脂環式ジヒドロキシ化合物の具体例のうち、特に、シクロヘキサンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール類、アダマンタンジオール類、ペンタシクロペンタデカンジメタノール類が好ましく、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさという観点から、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが好ましい。
【0127】
尚、上記例示化合物は、本発明に使用し得る脂環式ジヒドロキシ化合物の一例であって、何らこれらに限定されるものではない。これらの脂環式ジオール化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0128】
本発明で使用するポリカーボネート樹脂において、上述した一般式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との含有割合は特に限定されず、任意の割合で選択できる。
この含有割合は、通常、(一般式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位):(脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位)=(1:99)〜(99:1)(モル%)、特に、(一般式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位):(脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位)=(10:90)〜(90:10)(モル%)であることが好ましい。
上記範囲よりも一般式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が過度に多く、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が過度に少ないと、ポリカーボネート樹脂が着色しやすい傾向がある。逆に一般式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が過度に少なく、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が過度に多いと、ポリカーボネート樹脂の分子量が増大しにくくなる傾向がある。
【0129】
(その他のジヒドロキシ化合物)
尚、本発明で使用するポリカーボネート樹脂は、一般式(4)で表されるジヒドロキシ化合物と、上述した脂環式ジヒドロキシ化合物以外の他のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が含まれていても良い。
【0130】
このようなその他のジヒドロキシ化合物としては、例えば、脂肪族ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール、ビスフェノール、環状アセタール構造を有するジオール等が挙げられる。
脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0131】
ビスフェノールとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0132】
さらに、ビスフェノールとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジエトキシジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ−2−メチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレンが挙げられる。
【0133】
また、環状アセタール構造を有するジオールとしては、例えば、スピログリコール、ジオキサングリコール等が挙げられる。
これらのその他のジヒドロキシ化合物は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0134】
その他のジヒドロキシ化合物を用いることにより、柔軟性の改善、耐熱性の向上、成形性の改善等の効果を得ることもできる。尤も、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の含有割合が過度に多いと、本来の光学特性の性能を低下させることがある。
このため、本発明で使用するポリカーボネート樹脂においては、ポリカーボネート樹脂を構成する全ジヒドロキシ化合物に対する一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物と脂環式ジヒドロキシ化合物との合計の割合が90モル%以上であることが好ましい。
特に、本発明で使用するポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物として、一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物と脂環式ジヒドロキシ化合物のみで構成されることが好ましい。
【0135】
(炭酸ジエステル)
前述した構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と重縮合する炭酸ジエステルとしては、通常、下記一般式(3)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0136】
【化45】

【0137】
一般式(3)において、A、Aは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族基または置換基を有していてもよい芳香族基であり、AとAは同一であっても異なっていてもよい。
【0138】
上記一般式(3)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等が例示される。
これらの中でも、ジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートが好ましく、ジフェニルカーボネートが特に好ましい。
【0139】
(ポリカーボネート樹脂の末端基構造)
本発明で使用するポリカーボネート樹脂は、前述した通り、前記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの重縮合により、下記構造式(2)で表される末端基(以下、「二重結合末端」と称することがある。)を含むポリカーボネート樹脂として得られるものである。
【0140】
【化46】

【0141】
ここで、本発明で使用するポリカーボネート樹脂において、構造式(2)で表される末端基の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)が0.001%以上7%以下の範囲であることが好ましい。また、その割合(A/B)が0.001%以上6%以下の範囲であることがさらに好ましく、0.001%以上5%以下の範囲であることが特に好ましい。
構造式(2)で表される末端基の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)が過度に多いと、ポリカーボネート樹脂の色相が悪化する傾向がある。
【0142】
構造式(2)で表される末端基の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)を上述した範囲内に調整する方法は特に限定されないが、通常、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物に対する炭酸ジエステル量比を所望の高分子量体が得られる範囲の限りにおいて調整する方法や、重合反応時あるいは成形時において、必要以上の過剰な熱履歴、例えば280℃以上の高温状態で保持する時間を調整することが挙げられる。
【0143】
さらに、本発明で使用するポリカーボネート樹脂の製造方法において、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを使用する場合、構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物との溶融重合法により製造されるポリカーボネート樹脂の、下記構造式(5)で表される末端基(以下、「フェニル基末端」と記すことがある。)の存在数(C)の全末端数(B)に対する割合(C/B)が、20%以上の範囲であることが好ましく、25%以上の範囲であることがさらに好ましい。フェニル基末端の存在数(C)の全末端数(B)に対する割合(C/B)が、過度に少ないと、重合反応温度や射出成形温度などが高温となる条件下において、着色が大きくなる可能性がある。
【0144】
【化47】

【0145】
ポリカーボネート樹脂中のフェニル基末端の割合を上述した範囲に調整する方法は特に限定されないが、例えば、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物に対する炭酸ジエステル量比を、所望の高分子量体が得られる範囲で調整したり、重合反応後段で脱気により残存モノマーを反応系外に除去したり、重合反応後段での反応機の撹拌効率を上げるなどして反応速度を上げたりすることにより、フェニル基末端の存在数(C)の全末端数(B)に対する割合(C/B)を上述した範囲に調整することができる。
尚、ポリカーボネート樹脂の末端基の構造と割合は、NMR分光計にて、測定溶媒としてTMSを添加した重クロロホルムを使用し、H−NMRスペクトルの測定により算出することができる。
【0146】
本発明で使用するポリカーボネート樹脂の重合度は、溶媒としてフェノールと1,1,2,2,−テトラクロロエタンの重量比1:1の混合溶液を用い、ポリカーボネート樹脂濃度を1.00g/dlに精密に調整し、温度30.0℃±0.1℃で測定した還元粘度(以下、単に「ポリカーボネート樹脂の還元粘度」と称す。)として、0.40dl/g以上、特に0.40dl/g以上で2.0dl/g以下であるような重合度であることが好ましく、0.45dl/g以上1.5dl/g以下の範囲内であることがさらに好ましい。
ポリカーボネート樹脂の還元粘度が過度に低いと、レンズ等に成形した際の機械的強度が低下する傾向がある。また、ポリカーボネート樹脂の還元粘度が過度に大きいと、成形する際の流動性が低下し、サイクル特性を低下させ、成形品の複屈折率が大きくなり易い傾向がある。
【0147】
本発明で使用するポリカーボネート樹脂のアッベ数は、50以上が好ましく、特に好ましくは55以上である。この値が大きくなるほど、屈折率の波長分散が小さくなり、例えば、単レンズで使用した場合の色収差が小さくなり、より鮮明な画像が得やすくなる。アッベ数が小さくなるほど屈折率の波長分散が大きくなり、単レンズで使用した場合、色収差が大きくなり、画像のぼけの度合いが大きくなる。
【0148】
本発明で使用するポリカーボネート樹脂の5%熱減量温度は340℃以上が好ましく、特に好ましくは345℃以上である。5%熱減量温度が大きいほど、熱安定性が高くなり、より高温での使用に耐えるものとなり、小さくなるほど、熱安定性が低くなり、高温での使用がしにくくなる。また、製造時の制御許容幅が狭くなり作りにくくなる。また、製造温度も高くでき、より製造時の制御幅が広くできるので、製造し易くなる。
【0149】
本発明で使用するポリカーボネート樹脂の光弾性係数は、40×10−12Pa−1以下であることが好ましく、更に好ましくは20×10−12Pa−1以下である。光弾性係数の値が高いと、溶融押出や溶液キャスト法等で製膜したフィルムの位相差の値が大きくなり、これを延伸した場合、張力のわずかな振れにより、フィルム面内の位相差のばらつきがさらに大きくなる。またこのような位相差フィルムを貼合する場合、貼合時の張力により所望する位相差がずれてしまうばかりでなく、貼合後の偏光板の収縮等により、位相差値が変化しやすい。光弾性係数が小さいほど位相差のばらつきが小さくなる。
【0150】
本発明で使用するポリカーボネート樹脂はアイゾット衝撃強度が30J/m以上であることが好ましい。アイゾット衝撃強度が大きい程、成形体の強度が高くなり、こわれにくくなる。
【0151】
本発明で使用するポリカーボネート樹脂は、110℃での単位面積あたりのフェノール成分以外の発生ガス量(以下、単に「発生ガス量」と称す場合がある。)が5ng/cm以下であることが好ましく、また、一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物由来の発生ガス量は0.5ng/cm以下であることがより好ましい。この発生ガス量が少ない程、発生ガスの影響を嫌う用途、例えば、半導体等の電子部品を保管する用途、建物の内装材用途、家電製品等の筐体等に適用することができる。
尚、本発明で使用するポリカーボネート樹脂のアッベ数、5%熱減量温度、光弾性係数、アイゾット衝撃強度、発生ガス量の測定方法は、具体的には後述の実施例の項で示す通りである。
【0152】
本発明で使用するポリカーボネート樹脂は、示差走査熱量計(DSC)による測定では単一のガラス転移温度が観測される。本発明で使用するポリカーボネート樹脂は、一般式(4)で表されるジヒドロキシ化合物と脂環式ジヒドロキシ化合物の種類や配合比を調整することにより、そのガラス転移温度を、用途に応じて、45℃程度から155℃程度の範囲で任意のガラス転移温度を持つ重合体として得ることができる。
【0153】
例えば、柔軟性が必要とされるフィルム用途では、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が45℃以上、例えば45℃〜100℃に調整することが好ましい。
特に、耐熱性が求められるボトルやパックといった成形体用途では、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は90℃以上、例えば、90℃〜130℃に調整することが好ましい。
さらにガラス転移温度が120℃以上であると、光学部品としてのレンズ用途に好適となる。即ち、このようなガラス転移温度を有するポリカーボネート樹脂を使用することにより、温度85℃、相対湿度85%といった高温高湿度下においても、変形が起こりにくく、面精度のばらつきが少ないレンズを得ることができる。
【0154】
(ポリカーボネート樹脂の製造方法)
本発明で使用するポリカーボネート樹脂は、従来公知の重合方法により製造することができる。重合方法としては、重合触媒の存在下に、前述した構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と、必要に応じて用いられるその他のジヒドロキシ化合物とを、炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法が好ましい。
【0155】
前述した溶融重合法において、炭酸ジエステルは、反応に用いる構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物を含む全ジヒドロキシ化合物に対し、0.90〜1.10のモル比率で用いることが好ましく、0.96〜1.04のモル比率で用いることがさらに好ましい。
溶融重合法において使用する炭酸ジエステルのモル比が過度に小さいと、製造されたポリカーボネート樹脂の末端OH基が増加し、ポリマーの熱安定性が悪化し、また所望する高分子量体が得られない傾向がある。一方、使用する炭酸ジエステルのモル比が過度に大きいと、同一重合条件下ではエステル交換反応の速度が低下し、所望する分子量のポリカーボネート樹脂の製造が困難となる傾向がある。さらに、製造されたポリカーボネート樹脂中の残存する炭酸ジエステル量が増加する傾向があり、残存炭酸ジエステルが、成形時又は成形品の臭気の原因となる傾向がある。
【0156】
このような観点から、本発明で使用するポリカーボネート樹脂は、構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物の残存含有量が60ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましく、30ppm以下であることが特に好ましい。
ポリカーボネート樹脂中の、構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物の残存含有量が過度に多いと、ポリマーの熱安定性が悪化するとともに、射出成形時における金型への付着物が多くなったり、シートやフィルムを押出成形する際に、ロール付着物の量が多くなることによって表面外観が損なわれる可能性がある。
【0157】
また、本発明で使用するポリカーボネート樹脂は、炭酸ジエステルの含有量が60ppm以下であることが好ましく、0.1ppm以上60ppm以下であることがより好ましく、0.1ppm以上50ppm以下であることがさらに好ましく、0.1ppm以上30ppm以下であることが特に好ましい。
ポリカーボネート樹脂中の、一般式(4)で表される炭酸ジエステルの含有量が過度に多いと、ポリマーの熱安定性が悪化、射出成形時における金型への付着物が増大、シートやフィルムを押出成形する際にロール付着物量が増大することによる表面外観が損なわれる等の傾向がある。
【0158】
尚、構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と、脂環式ジヒドロキシ化合物と、必要に応じて用いられるその他のジヒドロキシ化合物との使用割合は、本発明で使用するポリカーボネート樹脂を構成する各ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の割合に応じ、適宜調整する。
【0159】
(重合触媒)
溶融重合における重合触媒(エステル交換触媒)としては、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が使用される。アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物と共に、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物のみを使用することが特に好ましい。
【0160】
重合触媒として用いられるアルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩等が挙げられる。
【0161】
アルカリ土類金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。これらのアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0162】
アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物と併用される塩基性ホウ素化合物の具体例としては、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
【0163】
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0164】
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0165】
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。これらの塩基性化合物も1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0166】
上記重合触媒の使用量は、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いる場合、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物1モルに対して、金属換算量として、通常、0.1μモル〜100μモルの範囲内で用い、好ましくは0.5μモル〜50μモルの範囲内であり、さらに好ましくは1〜25μモルの範囲内である。重合触媒の使用量が過度に少ないと、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性が得られない傾向がある。一方、重合触媒の使用量が過度に多いと、得られるポリカーボネート樹脂の色相が悪化し、副生成物が発生したりして流動性の低下やゲルの発生が多くなり、目標とする品質のポリカーボネート樹脂の製造が困難になる傾向がある。
【0167】
本発明で使用するポリカーボネート樹脂の製造に当たり、前述した構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物は、固体として供給しても良いし、加熱して溶融状態として供給しても良いし、水溶液として供給しても良い。
【0168】
脂環式ジヒドロキシ化合物も、固体として供給しても良いし、加熱して溶融状態として供給しても良いし、水に可溶なものであれば、水溶液として供給しても良い。その他のジヒドロキシ化合物についても同様である。これらの原料ジヒドロキシ化合物を溶融状態や、水溶液で供給すると、工業的に製造する際、計量や搬送がしやすいという利点がある。
【0169】
本発明において、構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と脂環式ジヒドロキシ化合物と必要に応じて用いられるその他のジヒドロキシ化合物とを、重合触媒の存在下で炭酸ジエステルと反応させる方法は、通常、2段階以上の多段工程で実施される。
具体的には、第1段目の反応は140〜220℃、好ましくは150〜200℃の温度で0.1〜10時間、好ましくは0.5〜3時間実施される。第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げながら反応温度を上げていき、同時に発生するフェノール等の芳香族モノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力が200Pa以下で、210〜280℃の温度範囲のもとで重縮合反応を行う。
【0170】
重縮合反応における減圧において、温度と反応系内の圧力のバランスを制御することが重要である。特に、温度、圧力のどちらか一方でも早く過度に変化すると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比が変化し、重合度が低下することがある。
例えば、ジヒドロキシ化合物としてイソソルビドと1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いる場合は、全ジヒドロキシ化合物に対し、1,4−シクロヘキサンジメタノールのモル比が50モル%以上の場合は、1,4−シクロヘキサンジメタノールがモノマーのまま留出しやすくなるので、反応系内の圧力が13kPa程度の減圧下で、温度を1時間あたり40℃以下の昇温速度で上昇させながら反応させ、さらに、6.67kPa程度までの圧力下で、温度を1時間あたり40℃以下の昇温速度で上昇させ、最終的に200Pa以下の圧力で、200から250℃の温度で重縮合反応を行うと、十分に重合度が上昇したポリカーボネート樹脂が得られるため、好ましい。
【0171】
全ジヒドロキシ化合物に対し、1,4−シクロヘキサンジメタノールのモル比が50モル%より少なくなった場合、特に、モル比が30モル%以下となった場合は、1,4−シクロヘキサンジメタノールのモル比が50モル%以上の場合と比べて、急激な粘度上昇が起こるので、例えば、反応系内の圧力が13kPa程度の減圧下までは、温度を1時間あたり40℃以下の昇温速度で上昇させながら反応させ、さらに、6.67kPa程度までの圧力下で、温度を1時間あたり40℃以上の昇温速度、好ましくは1時間あたり50℃以上の昇温速度で上昇させながら反応させ、最終的に200Pa以下の減圧下、220℃から290℃の温度で重縮合反応を行うと、十分に重合度が上昇したポリカーボネート樹脂が得られるため、好ましい。反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの方法でもよい。
【0172】
(芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量)
尚、上述したジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの重縮合反応において、炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物が副生成物として生成する。本実施の形態では、ポリカーボネート樹脂に含まれる炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が700ppm以下であることが好ましく、含有量が500ppm以下であることがさらに好ましく、含有量が300ppm以下であることが特に好ましい。
但し、本発明で使用するポリカーボネート樹脂は、不可避的に残存する量として10ppm程度の上記芳香族モノヒドロキシ化合物が含有されている。
【0173】
ここで、炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物とは、後述するように、ポリカーボネート樹脂に添加される、例えば、ヒンダードフェノール等の酸化防止剤を排除することを意味している。
炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、フェノール、クレゾール、t−ブチルフェノールフェノール、o−n−ブチルフェノール、m−n−ブチルフェノール、p−n−ブチルフェノール、o−イソブチルフェノール、m−イソブチルフェノール、p−イソブチルフェノール、o−t−ブチルフェノール、m−t−ブチルフェノール、p−t−ブチルフェノール、o−n−ペンチルフェノール、m−n−ペンチルフェノール、p−n−ペンチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、3,5−ジ−t−ブチルフェノール等が挙げられる。
【0174】
ポリカーボネート樹脂に含有される炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量を700ppm以下に調整する方法は特に限定されないが、通常、以下の方法が挙げられる。
例えば、重縮合反応においてジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの仕込み比率を1に近づける、重縮合反応を増大させる、重縮合反応が行われる反応器外に効率的に上記芳香族モノヒドロキシ化合物を排出する、重縮合反応の後半において横型反応器を用いて高粘度の反応液に所定の剪断力を与えながら脱気する、注水脱揮操作により水と上記芳香族モノヒドロキシ化合物を共沸させる等が挙げられる。
【0175】
本発明で使用するポリカーボネート樹脂において、炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が過度に多いと、色調と透明性が損なわれ、例えば、光学材料としては不適当な材料となる傾向がある。また、耐熱性が低下し、経時的に色調が悪化する傾向がある。
【0176】
[2]ポリカーボネート樹脂組成物
本発明で使用するポリカーボネート樹脂を使用し、これに酸性化合物、リン系化合物を配合したポリカーボネート樹脂組成物を調製することができる。
ここで、各配合剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、少なくとも1種の酸性化合物0.00001重量部以上0.1重量部以下、好ましくは、0.0001重量部以上0.01重量部以下、さらに好ましくは0.0002重量部以上0.001重量部以下であり、少なくとも1種のリン系化合物0.001重量部以上1重量部以下、好ましくは、0.001重量部以上0.1重量部以下、さらに好ましくは0.001重量部以上0.05重量部以下である。
酸性化合物の配合量が過度に少ないと、射出成形する際に、樹脂滞留時間が長くなった場合における着色を抑制することが充分に出来ない場合がある。また、酸性化合物の配合量が過度に多いと、樹脂の耐加水分解性が著しく低下する場合がある。
リン系化合物の配合量が過度に少ないと、射出成形する際に、樹脂滞留時間が長くなった場合における着色を抑制することが充分に出来ない場合がある。
【0177】
(酸性化合物)
酸性化合物としては、例えば、塩酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アゼライン酸、アデノシンリン酸、安息香酸、ギ酸、吉草酸、クエン酸、グリコール酸、グルタミン酸、グルタル酸、ケイ皮酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、シュウ酸、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、ピクリン酸、ピコリン酸、フタル酸、テレフタル酸、プロピオン酸、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルホン酸、マロン酸、マレイン酸等のブレンステッド酸及びそのエステル類が挙げられる。これらの酸性化合物又はその誘導体のなかでも、スルホン酸類又はそのエステル類が好ましく、中でも、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸ブチルが特に好ましい。
これらの酸性化合物は、上述したポリカーボネート樹脂の重縮合反応において使用される塩基性エステル交換触媒を中和する化合物として、ポリカーボネート樹脂の製造工程において添加することができる。
【0178】
(リン系化合物)
リン系化合物としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸及びこれらのエステル等が挙げられる。リン系化合物を添加することにより、ポリカーボネート樹脂の着色を防止することが可能となる。
具体的な化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
【0179】
これらの中でも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましく使用される。これらのリン系化合物は、1種又は2種以上を併用することができる。
【0180】
(その他の酸化防止剤)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、上述した酸性化合物、リン系化合物に加え、さらに酸化防止剤を配合することができる。
酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0181】
これらの酸化防止剤の中でも、炭素数5以上のアルキル基によって1つ以上置換された芳香族モノヒドロキシ化合物が好ましく、具体的には、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が好ましい。
ポリカーボネート樹脂組成物にさらに配合される炭素数5以上のアルキル基によって1つ以上置換された芳香族モノヒドロキシ化合物の配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、上記芳香族モノヒドロキシ化合物0.001重量部以上1重量部以下、好ましくは、0.01重量部以上0.5重量部以下、さらに好ましくは0.02重量部以上0.3重量部以下である。
酸化防止剤の配合量が過度に少ないと、成形時の着色抑制効果が不十分になることがある。また、酸化防止剤の配合量が過度に多いと、射出成形時における金型への付着物が多くなったり、押出成形によりフィルムを成形する際にロールへの付着物が多くなったりすることにより、製品の表面外観が損なわれるおそれがある。
【0182】
<離型剤>
さらに本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、溶融成形時の金型からの離型性をより向上させるために、本発明の目的を損なわない範囲で離型剤を含有することも可能である。このような離型剤としては、高級脂肪酸、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル、蜜蝋等の天然動物系ワックス、カルナバワックス等の天然植物系ワックス、パラフィンワックス等の天然石油系ワックス、モンタンワックス等の天然石炭系ワックス、オレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0183】
高級脂肪酸エステルとしては、炭素原子数1〜20の一価又は多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルが好ましい。かかる一価又は多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸モノグリセリド、ベヘニン酸ベヘニル、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート等が挙げられる。なかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ベヘニン酸ベヘニルが好ましく用いられる。
【0184】
高級脂肪酸としては、炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸が好ましい。このような飽和脂肪酸としては、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等が挙げられる。これらの離型剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。かかる離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.0001〜2質量部が好ましい。
【0185】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、帯電防止剤を含有することができる。帯電防止剤としては、例えば、ポリエーテルエステルアミド、グリセリンモノステアレート、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩、無水マレイン酸モノグリセライド、無水マレイン酸ジグリセライド等が挙げられる。
【0186】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤を含有することができる。具体的には、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)等が挙げられる。かかる安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.01〜2質量部が好ましい。
【0187】
本発明で使用するポリカーボネート樹脂には、重合体や紫外線吸収剤に基づくレンズの黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を配合することができる。ブルーイング剤としては、従来、ポリカーボネート樹脂に使用されるものであれば、特に支障なく使用することができる。一般的にはアンスラキノン系染料が入手容易であり好ましい。
【0188】
具体的なブルーイング剤としては、例えば、一般名Solvent Violet13[CA.No(カラーインデックスNo)60725]、一般名Solvent Violet31[CA.No 68210]、一般名Solvent Violet33[CA.No 60725]、一般名Solvent Blue94[CA.No 61500]、一般名Solvent Violet36[CA.No 68210]、一般名Solvent Blue97[バイエル社製「マクロレックスバイオレットRR」]、一般名Solvent Blue45[CA.No61110]等が代表例として挙げられる。これらのブルーイング剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。これらブルーイング剤は、通常、ポリカーボネート樹脂を100重量部とした場合、0.1×10−5〜2×10−4重量部の割合で配合される。
【0189】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記成分を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。更に、本発明の目的を損なわない範囲で、樹脂組成物に通常用いられる核剤、難燃剤、無機充填剤、衝撃改良剤、発泡剤、染顔料等が含まれても差し支えない。
【0190】
本実施の形態では、上述したポリカーボネート樹脂又はポリカーボネート樹脂組成物を成形してなるポリカーボネート樹脂成形品が得られる。ポリカーボネート樹脂成形品の成形方法は特に限定されないが、射出成形法が好ましい。
【0191】
[3]光学フィルム
本発明のポリカーボネート樹脂を用い、製膜することにより光学フィルムを得ることができる。また、製膜したかかる光学フィルムを延伸することにより位相差フィルムを製造することができる。製膜方法としては、従来公知の溶融押出法、溶液キャスト法等が挙げられる。
【0192】
尚、上述した光学フィルムの原料として、本発明のポリカーボネート樹脂に加え、ビスフェノールAやビスフェノールZ等から得られる他のポリカーボネート樹脂、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどにより変性されたポリカーボネート樹脂及びポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンジカルボキシレート、ポリシクロヘキサンジメチレンシクロヘキサンジカルボキシレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等の他の樹脂の1種又は2種以上との組成物であってもよい。
【0193】
光学フィルムの厚みは、通常、30μm〜200μmであり、好ましくは50μm〜150μmである。また、製膜されたフィルムの位相差値は、20nm以下が好ましく、より好ましくは10nm以下である。フィルムの位相差値が過度に大きいと、延伸して位相差フィルムとした際に位相差値のフィルム面内のばらつきが大きくなる傾向がある。
【0194】
光学フィルムの延伸方法は、公知の縦、横どちらか一方の一軸延伸、縦横にそれぞれ延伸する二軸延伸等の延伸方法を用いることができる。また、特殊な二軸延伸を施し、フィルムの三次元での屈折率を制御することも可能である。
位相差フィルム作製の延伸条件としては、フィルム原料のガラス転移温度の−20℃から+40℃の範囲で行うことが好ましい。より好ましくは、フィルム原料のガラス転移温度の−10℃から+20℃の範囲である。延伸温度がポリカーボネート樹脂のガラス転移温度より過度に低いと、延伸フィルムの位相差が大きくなり、所望の位相差を得るためには延伸倍率を低くしなければならず、フィルム面内の位相差のばらつきが大きくなる傾向がある。一方、延伸温度がガラス転移温度より過度に高いと、得られるフィルムの位相差が小さくなり、所望の位相差を得るための延伸倍率を大きくしなければならず適正な延伸条件幅が狭くなる傾向がある。
【0195】
位相差フィルムは、各種液晶表示装置用の位相差板として用いることができる。位相差フィルムをSTN液晶表示装置の色補償用に用いる場合には、その位相差値は、一般的には、400nmから2000nmまでの範囲で選択される。また、位相差フィルムを1/2波長板として用いる場合は、その位相差値は、200nmから400nmの範囲で選択される。位相差フィルムを1/4波長板として用いる場合は、その位相差値は、90nmから200nmまでの範囲で選択される。1/4波長板としてのより好ましい位相差値は、100nmから180nmまでである。位相差フィルムは単独で用いることもできるし、2枚以上を組み合わせて用いることもでき、他のフィルム等と組み合わせて用いることもできる。
【0196】
位相差フィルムは、公知のヨウ素系又は染料系の偏光板と粘着剤を介して積層貼合することができる。積層する際、用途によって偏光板の偏光軸と位相差フィルムの遅相軸とを、特定の角度に保って積層することが必要である。また、位相差フィルムを1/4波長板とし、これを偏光板と積層貼合して円偏光板として用いることができる。その場合、一般には、偏光板の偏光軸と位相差フィルムの遅相軸は実質的に45°の相対角度を保ち積層される。さらに、位相差フィルムを、偏光板を構成する偏光保護フィルムとして用いて積層してもかまわない。さらにまた、位相差フィルムをSTN液晶表示装置の色補償板とし、これを偏光板と積層貼合することにより楕円偏光板として用いることもできる。
【0197】
[4]無機充填材
また、本発明で使用するポリカーボネート樹脂を使用し、これに無機充填材を配合したポリカーボネート樹脂組成物が調製される。無機充填材の配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、1重量部以上100重量部以下であり、好ましくは3重量部以上50重量部以下である。無機充填材の配合量が過度に少ないと補強効果が少なく、また、過度に多いと外観が悪くなる傾向がある。
【0198】
無機充填材としては、例えば、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、シリカ、アルミナ、酸化チタン、硫酸カルシウム粉体、石膏、石膏ウィスカー、硫酸バリウム、タルク、マイカ、ワラストナイト等の珪酸カルシウム;カーボンブラック、グラファイト、鉄粉、銅粉、二硫化モリブデン、炭化ケイ素、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素、窒化ケイ素繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、チタン酸カリウム繊維、ウィスカー等が挙げられる。これらの中でも、ガラスの繊維状充填材、ガラスの粉状充填材、ガラスのフレーク状充填材;炭素の繊維状充填材、炭素の粉状充填材、炭素のフレーク状充填材;各種ウィスカー、マイカ、タルクが好ましい。より好ましくは、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスミルドファイバー、炭素繊維、ワラストナイト、マイカ、タルクが挙げられる。
【0199】
また、無機充填材の中でも、ガラス繊維、ガラスミルドファイバーとしては、熱可塑性樹脂に使用されているものであればいずれも使用できる。特に、無アルカリガラス(Eガラス)が好ましい。ガラス繊維の直径は、好ましくは6μm〜20μmであり、より好ましくは9μm〜14μmである。ガラス繊維の直径が過度に小さいと補強効果が不充分となる傾向がある。また、過度に大きいと、製品外観に悪影響を与えやすい。
また、ガラス繊維としては、好ましくは長さ1mm〜6mmにカットされたチョップドストランド;好ましくは長さ0.01mm〜0.5mmに粉砕されて市販されているガラスミルドファイバーが挙げられる。これらは単独または両者を混合して用いてもよい。
本発明で使用するガラス繊維は、ポリカーボネート樹脂との密着性を向上させるために、アミノシラン、エポキシシラン等のシランカップリング剤等による表面処理、あるいは取扱い性を向上させるために、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等による集束処理を施して使用してもよい。
【0200】
ガラスビーズとしては、熱可塑性樹脂に使用されているものであればいずれも使用できる。中でも、無アルカリガラス(Eガラス)が好ましい。ガラスビーズの形状は、粒径10μm〜50μmの球状が好ましい。
【0201】
ガラスフレークとしては、鱗片状のガラスフレークが挙げられる。ポリカーボネート樹脂を配合後のガラスフレークの最大径は、一般的には1000μm以下、好ましくは1μm〜500μmであり、且つアスペクト比(最大径と厚み途の比)が5以上、好ましくは10以上、さらに好ましくは30以上である。
【0202】
炭素繊維としては、特に限定されず、例えば、アクリル繊維、石油又は炭素系特殊ピッチ、セルロース繊維、リグニン等を原料として焼成によって製造されたものであって、耐炎質、炭素質、黒鉛質等の種々のものが挙げられる。炭素繊維のアスペクト比(繊維長/繊維径)の平均は、好ましくは10以上であり、より好ましくは50以上である。アスペクト比の平均が過度に小さいと、ポリカーボネート樹脂組成物の導電性、強度、剛性が低下する傾向がある。炭素繊維の径は3μm〜15μmであり、上記のアスペクト比に調整するために、チョップドストランド、ロービングストランド、ミルドファイバー等のいずれの形状も使用できる。炭素繊維は、1種または2種以上混合して用いることができる。
【0203】
炭素繊維は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の特性を損なわない限りにおいて、ポリカーボネート樹脂との親和性を増すために、例えばエポキシ処理、ウレタン処理、酸化処理等の表面処理が施されてもよい。
【0204】
本実施の形態において、ポリカーボネート樹脂に配合する無機充填材の添加時期、添加方法は特に限定されない。添加時期としては、例えば、エステル交換法でポリカーボネート樹脂を製造した場合は重合反応終了時;さらに、重合法に関わらず、ポリカーボネート樹脂と他の配合剤との混練途中等のポリカーボネート樹脂が溶融した状態;押出機等を用い、ペレットまたは粉末等の固体状態のポリカーボネート樹脂とブレンド・混練する際等が挙げられる。添加方法としては、ポリカーボネート樹脂に無機充填材を直接混合または混練する方法;少量のポリカーボネート樹脂または他の樹脂等と無機充填材を用いて作成した高濃度のマスターバッチとして添加することもできる。
【0205】
[5]難燃剤
また、本発明で使用するポリカーボネート樹脂に難燃剤を配合したポリカーボネート樹脂組成物が調製される。難燃剤の配合量は、難燃剤の種類や難燃性の程度に応じて選択される。本実施の形態では、ポリカーボネート100重量部に対し、難燃剤0.01重量部〜30重量部であり、好ましくは0.02重量部〜25重量部の範囲である。難燃剤を配合することにより、難燃性に優れたポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
【0206】
難燃剤としては、例えば、燐含有化合物系難燃剤、ハロゲン含有化合物系難燃剤、スルホン酸金属塩系難燃剤、珪素含有化合物系難燃剤等が挙げられる。本実施の形態では、これらの群より選ばれた少なくとも1種を使用することができる。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
燐含有化合物系難燃剤としては、例えば、燐酸エステル系化合物、ホスファゼン系化合物、赤燐、被覆された赤燐、ポリ燐酸塩系化合物等が挙げられる。燐含有化合物系難燃剤の配合量は、ポリカーボネート100重量部に対し、好ましくは0.1重量部〜20重量部である。配合量が過度に少ないと十分な難燃性が得られにくく、過度に多いと耐熱性が低下しやすい。
【0207】
ハロゲン含有化合物系難燃剤としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA、トリブロモフェノール、臭素化芳香族トリアジン、テトラブロモビスフェノールAエポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAエポキシポリマー、デカブロモジフェニルオキサイド、トリブロモアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAカーボネートオリゴマー、エチレンビステトラブロモフタルイミド、デカブロモジフェニルエタン、臭素化ポリスチレン、ヘキサブロモシクロドデカン等が挙げられる。
【0208】
ハロゲン含有化合物系難燃剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.1重量部〜20重量部である。ハロゲン含有化合物系難燃剤の配合量が過度に少ないと十分な難燃性が得られにくく、過度に多いと機械強度が低下し、また難燃剤のブリードによる変色の原因となる場合がある。
【0209】
スルホン酸金属塩系難燃剤としては、例えば、脂肪族スルホン酸金属塩、芳香族スルホン酸金属塩、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩等が挙げられる。これら金属塩の金属としては、好ましくは、周期表1族の金属、周期表2族の金属等が挙げられる。具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属;カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;ベリリウム、マグネシウムである。
【0210】
スルホン酸金属塩系難燃剤の中でも、難燃性と熱安定性の観点から、芳香族スルホンスルホン酸金属塩、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩等が好ましい。
芳香族スルホンスルホン酸金属塩としては、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩が好ましい。これらは重合体であってもよい。芳香族スルホンスルホン酸金属塩の具体例としては、例えば、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4,4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、4,4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホンのカリウム塩、4−クロロー4’−ニトロジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカルシウム塩、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸のジカリウム塩等が挙げられる。
【0211】
パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩としては、パーフルオロアルカン−スルホン酸のアルカリ金属塩、パーフルオロアルカン−スルホン酸のアルカリ土類金属塩等が好ましい。さらに、炭素数4〜8のパーフルオロアルカン基を有するスルホン酸アルカリ金属塩、炭素数4〜8のパーフルオロアルカン基を有するスルホン酸アルカリ土類金属塩等がより好ましい。
パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩の具体例としては、例えば、パーフルオロブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロブタン−スルホン酸のテトラエチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0212】
スルホン酸金属塩系難燃剤の配合量は、ポリカーボネート100重量部に対し、好ましくは0.01〜5重量部である。スルホン酸金属塩系難燃剤の配合量が過度に少ないと十分な難燃性が得られにくく、過度に多いと熱安定性が低下しやすい。
【0213】
珪素含有化合物系難燃剤としては、例えば、シリコーンワニス、ケイ素原子と結合する置換基が芳香族炭化水素基と炭素数2以上の脂肪族炭化水素基とからなるシリコーン樹脂、主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基中に芳香族基を持つシリコーン化合物、シリカ粉末の表面に官能基を有していてもよいポリジオルガノシロキサン重合体を担持させたシリコーン粉末、オルガノポリシロキサン−ポリカーボネート共重合体等が挙げられる。これらの中で、シリコーンワニスが好ましい。
【0214】
シリコーンワニスとしては、例えば、主として2官能型単位[R0SiO]と3官能型単位[R0SiO1.5]からなり、1官能型単位[R0SiO0.5]及び/又は4官能型単位[SiO]を含むことがある比較的低分子量の溶液状シリコーン樹脂が挙げられる。ここで、R0は、炭素数1〜12の炭化水素基又は一個以上の置換基で置換された炭素数1〜12の炭化水素基である。置換基としてはエポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基及びビニル基等が挙げられる。R0の種類を変えることにより、マトリックス樹脂との相溶性を改善することが可能である。
【0215】
シリコーンワニスとしては、無溶剤のシリコーンワニス、溶剤を含むシリコーンワニス等が挙げられる。本実施の形態では、溶剤を含まないシリコーンワニスが好ましい。シリコーンワニスは、例えば、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン等のアルキルアルコキシシランの加水分解により製造することができる。これらの原料のモル比、加水分解速度等を調整することにより分子の構造(架橋度)及び分子量のコントロールが可能である。さらに、製造条件によってはアルコキシシランが残存するが、組成物中に残存するとポリカーボネート樹脂の耐加水分解性が低下する場合が有るため、残存アルコキシシランは少量又は無いことが望ましい。
シリコーンワニスの粘度は、300センチストークス以下が好ましく、より好ましくは250センチストークス以下であり、さらに好ましくは200センチストークス以下である。シリコーンワニスの粘度が過度に大きいと、難燃性が不十分になることがある。
【0216】
珪素含有化合物系難燃剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、好ましくは0.1〜10重量部である。珪素含有化合物系難燃剤の配合量が過度に少ないと十分な難燃性が得られにくく、過度に多いと耐熱性が低下しやすい。
【0217】
本実施の形態では、より高い難燃性を達成するために、滴下防止用ポリテトラフルオロエチレンの併用が好ましい。滴下防止用ポリテトラフルオロエチレンは、重合体中に容易に分散し、かつ重合体同士を結合して繊維状材料を作る傾向を示す。滴下防止用として市販されているものは、例えば、テフロン6J、テフロン30J(三井・デュポンフロロケミカル株式会社)、ポリフロンF201L(ダイキン化学工業株式会社)等が挙げられる。
滴下防止用ポリテトラフルオロエチレンの配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、好ましくは0.01重量部〜2.0重量部である。滴下防止用ポリテトラフルオロエチレンの配合量が過度に少ないと、燃焼時の溶融滴下防止効果が不十分であり、過度に多いと、成形品外観が悪くなりやすい。
【0218】
尚、本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、その効果が発現する量の種々の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤が挙げられる。さらに、この他、各種の用途や所望の性能を得るために、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂;熱可塑性エラストマー;ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、ワラストナイト、珪酸カルシウム、硼酸アルミニウムウィスカー等の無機充填剤等を配合することもできる。
【0219】
本実施の形態で使用するポリカーボネート樹脂と上記添加剤等の混合方法、混合時期については特に制限は無い。例えば、混合時期としては、重合反応の途中又は重合反応終了時、さらにはポリカーボネート等の混練途中等のポリカーボネートが溶融した状態で添加することができる。また、ペレット又は粉末等の固体状態のポリカーボネートとブレンド後、押出機等で混練することも可能である。
【0220】
[6]紫外線吸収剤
また、本実施の形態では、本発明で使用するポリカーボネート樹脂に紫外線吸収剤を配合したポリカーボネート樹脂組成物が調製される。紫外線吸収剤の配合量は、紫外線吸収剤の種類に応じて選択される。本実施の形態では、ポリカーボネート100重量部に対し、紫外線吸収剤0.005重量部〜5重量部である。
【0221】
ここで、紫外線吸収剤としては、紫外線吸収能を有する化合物であれば特に限定されない。本実施の形態では、波長200nm〜240nmに吸収を有する化合物が好ましい。また、波長200nm〜240nmの光に対する吸光係数εが10,000mL/(g・cm)より大きく、好ましくは15,000mL/(g・cm)以上である化合物が好ましい。
紫外線吸収剤としての紫外線吸収能を表す吸光度は、JIS K0115「吸光光度分析通則」により測定できる。また、吸光係数εは、モルで濃度を表すのが困難なことから本実施の形態では、mL/(g・cm)と表記している。それ以外は、上記JIS K0115に準じる。
【0222】
<モル吸光係数の測定>
本実施の形態では、以下の方法でモル吸光係数を測定した。
JIS K0115「吸光光度分析通則」に準拠し、ガラス瓶にアセトニトリル10mlに対して紫外線吸収剤を約10mgを溶解した。その中より0.1mlを別のガラス瓶に取り、さらにアセトニトリル9.9mlを入れ溶解した。この溶液を光路長10mmの石英セルに入れ、紫外可視分光光度計(日本分光社製、V−570)を用いて、測定モードはAbs、レスポンスはMedium、測定波長190〜800nmでバンド幅2nm間隔に吸光度Aを測定した。モル吸光係数εは各波長での吸光度Aを溶液のモル濃度cとセルの光路長Lの積で除して求めた。尚、溶媒のモル濃度cは、溶液の濃度を紫外線吸収剤の分子量で除して求めた。求めた紫外線吸収剤のモル吸光係数εについて、波長210nmにおけるモル吸光係数(ε210)と、波長250nmから波長350nmの範囲でのモル吸光係数の最大値(ε250−350)との比(ε210/ε250−350)が、本発明においては1.75未満であることが好ましく、より好ましくは1.73未満であって、特に好ましくは1.72未満である。
【0223】
本実施の形態では、紫外線吸収能を有する化合物としては、有機化合物、無機化合物が挙げられる。なかでも有機化合物はポリカーボネート樹脂との親和性を確保しやすく、均一に分散しやすいので好ましい。
紫外線吸収能を有する有機化合物の分子量は特に限定されない。分子量は、通常200以上、好ましくは250以上である。また。通常600以下、好ましくは450以下、より好ましくは400以下である。分子量が過度に小さいと、長期間使用での耐紫外線性能の低下を引き起こす可能性がある。分子量が過度に大きいと、長期間使用での樹脂組成物の透明性低下を引き起こす可能性がある。
【0224】
好ましい紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ヒンダードアミン系化合物、サリチル酸フェニルエステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、マロン酸エステル系化合物、シュウ酸アニリド系化合物等が挙げられる。なかでも、トリアジン系化合物、マロン酸エステル系化合物、シュウ酸アニリド系化合物が好ましく用いられる。これらは、単独又は2種以上を併用してもよい。
【0225】
ベンゾトリアゾール系化合物のより具体的な例としては、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−ヘキシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−ヘキシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ドデシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−t−ドデシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられる。
【0226】
トリアジン系化合物としては、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソオクチルオキシフェニル)−s−トリアジン、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール(チバガイギー社製、Tinuvin1577FF)などが挙げられる。
【0227】
ヒドロキシベンゾフェノン系化合物としては、2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’、4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
シアノアクリレート系化合物としては、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2’−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
マロン酸エステル系化合物としては、2−(1−アリールアルキリデン)マロン酸エステル類等が挙げられる。なかでも、マロン酸[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−ジメチルエステル(Clariant社製、HostavinPR−25)、2−(パラメトキシベンジリデン)マロン酸ジメチルが好ましい。
シュウ酸アニリド系化合物としては、2−エチル−2’−エトキシ−オキサルアニリド(Clariant社製、SanduvorVSU)等が挙げられる。
【0228】
これらの中でも、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−ヘキシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,2’、4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンが好ましい。
【0229】
本実施の形態で使用するポリカーボネート樹脂と上記添加剤等の混合方法、混合時期については特に制限は無い。例えば、混合時期としては、重合反応の途中又は重合反応終了時、さらにはポリカーボネート等の混練途中等のポリカーボネートが溶融した状態で添加することができる。また、ペレット又は粉末等の固体状態のポリカーボネートとブレンド後、押出機等で混練することも可能である。
【0230】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記成分を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。更に、本発明の目的を損なわない範囲で、樹脂組成物に通常用いられる核剤、難燃剤、無機充填剤、衝撃改良剤、発泡剤、染顔料等が含まれても差し支えない。
【0231】
[7]熱可塑性樹脂
また、本実施の形態では、本発明で使用するポリカーボネート樹脂に熱可塑性樹脂を配合したポリカーボネート樹脂組成物が調製される。ポリカーボネート樹脂と熱可塑性樹脂の配合量は、特に限定されないが、本実施の形態では、ポリカーボネート樹脂10質量部〜90質量部と、熱可塑性樹脂90質量部〜10質量部との範囲である。
【0232】
ここで、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロへキサンジメタノールテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂;ポリ乳酸やポリブチレンサクシネートやポリシクロヘキサンジメタノールシクロヘキサンジカルボキシレート等の脂肪族ポリエステル系樹脂等の飽和ポリエステル系樹脂、ビスフェノールAやビスフェノールZ等の各種ビスフェノール類からなる芳香族ポリカーボネート系樹脂;3(4),8(9)−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン等の脂環式ジオールからなる脂環式ポリカーボネート系樹脂;3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等の複素環ジオールからなる脂肪族ポリカーボネート系樹脂等のポリカーボネート系樹脂;6、66、46、12等の脂肪族ポリアミド系樹脂;6T、6Iや9T等の半芳香族ポリアミド系樹脂等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル/スチレン系樹脂(AS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン系樹脂(ABS)、水添ABS樹脂(AES)、結晶性シンジオタクチックポリスチレン樹脂等のスチレン系樹脂;PMMAやMBS等のアクリル系樹脂;低密度、中密度や高密度ポリエチレン、エチレン/メタクリレート共重合体(EMA)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体(E/GMA)等の共重合ポリエチレン系樹脂;ポリプロピレン系樹脂、4−メチル−ペンテン−1樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)やシクロオレフィンコポリマー(COC)等のオレフィン系樹脂;ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂あるいはこれらの混合物が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂は、1種又は2種以上を混合して用いても良く、使用目的に応じて必要とされる耐熱性、耐薬品性、成形性等の特性から適宜選択して用いることができる。また、無水マレイン酸等の不飽和化合物でグラフト変性や末端修飾して用いても良い。
【0233】
本実施の形態で使用するポリカーボネート樹脂と上記添加剤等の混合方法、混合時期については特に制限は無い。例えば、混合時期としては、重合反応の途中又は重合反応終了時、さらにはポリカーボネート等の混練途中等のポリカーボネートが溶融した状態で添加することができる。また、ペレット又は粉末等の固体状態のポリカーボネートとブレンド後、押出機等で混練することも可能である。
【0234】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記成分を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。更に、本発明の目的を損なわない範囲で、樹脂組成物に通常用いられる核剤、難燃剤、無機充填剤、衝撃改良剤、発泡剤、染顔料等が含まれても差し支えない。
【実施例】
【0235】
以下、実施例により本発明をさらに詳述する。但し、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
以下において、ポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の物性、特性の評価は次の方法により行った。
【0236】
(1)還元粘度
ウベローデ型粘度計(中央理化製DT−504型自動粘度計)を用い、溶媒として、フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンの1:1混合溶媒を用い、温度30.0℃±0.1℃で測定した。濃度は1.00g/dlになるように、精密に調整した。
サンプルは120℃で撹拌しながら、30分で溶解し、冷却後測定に用いた。
溶媒の通過時間t0、溶液の通過時間tから、下記式より相対粘度ηrelを求めた。
ηrel=t/t(g・cm−1・sec−1
相対粘度ηrelから、下記式より比粘度ηspを求めた。
ηsp=(η−η)/η=ηrel−1
比粘度ηspを濃度c(g/dl)で割って、下記式より還元粘度(換算粘度)ηredを求めた。
ηred=ηsp/c
ηredの数値が高いほど分子量が大きい。
【0237】
(2)色相測定
測色色差計(日本電色工業株式会社製 ZE−2000)を使用し、C光源透過法にて色の3刺激値を測定し、黄色変色の指標として、下記式よりイエローインデックス(YI)値を算出した。
イエローインデックスYI=100×(1.28X−1.06Z)/Y
【0238】
(3)耐加水分解性
二軸押出機で混練したペレットについて、プレッシャークッカー試験;110℃(1.5×10Pa)で24Hr静置した。試験後サンプルは、100℃、1.3×10Paにて5時間乾燥して水分を除去した後、試験前後サンプルの各還元粘度について測定を行い、下記式に従って還元粘度保持率を算出した。
還元粘度保持率(%)=(試験後還元粘度/試験前還元粘度)×100
【0239】
(4)射出成形評価(通常成形ΔYI、外観不良品率、離型不良、金型付着物)
二軸押出機で混練したペレットについて、射出成形機(住友重機械工業株式会社製 MINIMAT 8/7A)を使用して240℃で100shot成形を実施し、30mm×30mm×2mmtの平板成形品を得た後、色相について上記YI(「添加剤混練品YI」と記す。)を測定した。
通常成形ΔYIは、後述するように、予め調製した4種類のポリカーボネート樹脂(PC樹脂A,PC樹脂B,PC樹脂C,PC樹脂D)に酸性化合物等を配合しないで成形した平板成形品について測定したYI(「添加剤無添加品YI」と記す。)を基準とし、下記式に従って算出した。
通常成形ΔYI≡添加剤混練品YI−添加剤無添加品YI
【0240】
ここで、4種類のポリカーボネート樹脂のそれぞれの添加剤無添加品YIは、後述するように、PC樹脂Aは実施例13のYI、PC樹脂Bは実施例14のYI、PC樹脂Dは比較例13のYIを基準にし、PC樹脂Cについては、PC樹脂C−1を用いた以外は、実施例13と同様にして測定したYIを用いた。
【0241】
外観不良品率(%)は、シルバーストリーク、ブラックストリーク等の外観不良品数について、全成形数に対する割合を以下の式によって算出した。
外観不良品率≡外観不良品数/全成形品数
離型不良および金型付着物は、二軸押出機で混練したペレットについて、80℃で4時間予備乾燥したペレットを日本製鋼所製J75EII型射出成形機で、シリンダー温度230℃、成形サイクル45秒、金型温度60℃で、60mm×60mm×3mmtの平板を各材料100shot成形し、成形中の離型不良発生の有無、および100shot成形後の固定側金型の付着物量を目視により確認した。
【0242】
(5)成形滞留評価(成形滞留ΔYI)
二軸押出機で混練したペレットについて、射出成形機(住友重機械工業株式会社製 MINIMAT 8/7A)を使用し、シリンダー温度240℃にて、常法にて7Shot成形したもの(通常成形品)と、成形機内(240℃)に樹脂が存在したまま10分間滞留させた後、成形を7Shot実施(滞留成形品)し、30×30×2mmtの平板成形品を得た後、それぞれの色相について上記YIを測定し、滞留前後の各平均値を求めた後、下記式に従って成形滞留ΔYIを算出した。
成形滞留ΔYI=滞留成形品YI−通常成形品YI
【0243】
(6)末端基構造分析
NMR分光計(Bruker社製AVANCE DRX400)にて、測定溶媒としてTMSを添加した重クロロホルムを使用し、H−NMRスペクトルを測定した。
TMS基準にて化学シフト6.6ppm〜6.7ppmに検出されるピークを前述した構造式(2)で表される末端基(「二重結合末端」と記す)に帰属することとした。同様にTMS基準にて化学シフト7.3ppm〜7.5ppmに検出されるピークを、前述した構造式(5)で表される末端基(「フェニル基末端」と記す。)に帰属することとした。その他の全末端についてそれぞれ帰属したピークの各面積比からポリマー繰り返し100ユニットあたりの各末端数を算出した後、下記式に従って、二重結合末端割合およびフェニル基末端割合を算出した。
二重結合末端割合(%)=(末端基式(2)存在数/全末端存在数)×100
フェニル基末端割合(%)=〔末端基式(5)存在数/全末端存在数〕×100
【0244】
(7)残留炭酸ジエステル量および構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物の含有量(残留モノマー量)
樹脂ペレット1.0gをクロロホルム10mlに溶解した後、さらにメタノール20mlを添加する再沈殿処理を行った。ろ液について窒素ガスを使用して濃縮乾固した後、アセトニトリル1mlにて再溶解した。GC(ガスクロマトグラフィー)にてジフェニルカーボネートおよび構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物の定量を行った後、各残留量を算出した。
【0245】
(GC/FID定量条件)
・装置:アジレントテクノロジー社株式会社製 HP6890
・分析カラム:GLサイエンス株式会社製 TC−1
・オーブン温度:100℃×1min.→10℃/min.→240℃→15℃/min.→320℃×5min.
・検出器:水素炎イオン化検出器
・検出器温度:325℃
・キャリアガス:He 1ml/min.
・試料注入量:1μl
なお、表1において10ppm以下については定量精度が低下するため、10ppmと表記した。
【0246】
(8)残留フェノール量
樹脂ペレットをクロロホルムに溶解した後、さらにメタノールを添加する再沈殿処理を行った。その上澄みを遠心分離後、フィルターろ過したのちHPLC(High Performance Liquid Chromatography)にてフェノール定量を実施したのち、残留量を算出した。
【0247】
HPLC定量条件
・装置:アジレントテクノロジー社株式会社製 アジレント1100
・分析カラム:関東化学株式会社製 マイティシル RP−18
・溶離液:0.2%酢酸水溶液/メタノール グラジエント
・検出波長:280nm
・カラム槽温度:40℃
【0248】
(9)押出フィルム評価
80℃で5時間真空乾燥をしたポリカーボネート樹脂サンプルを二軸押出機で混練して得られたペレットを先端にT−ダイを具備した1軸押出機により240℃で押出した後に95℃のキャスティングロールで急冷し、厚さ約100μmの延伸用シートを得、以下の手順で評価を行った。
【0249】
・輝点異物
二枚の偏光板を直交状態(クロスニコル)に配置して透過光を遮断し、二枚の偏光板の間に作製したフィルム試料を置く。偏光板はガラス製保護板のものを使用した。片側から光を照射し、反対側から光学顕微鏡(50倍)で1cm当たりの直径0.01mm以上の輝点の数をカウントした。
◎:輝点の数が0〜30個
○:31〜50個
△:51〜80個
×:81〜100個
××:101個以上
【0250】
・ロール汚れ性(シート成形性)
単軸押出機とシート用ダイを用いて厚さ100μmのシートを成形した際の、ロール鏡面への揮発成分の付着度合いを目視にて観察し、次の基準で評価した。
◎:揮発成分の付着が少ない
○:揮発成分の付着が普通
△:揮発成分の付着が多い
×:揮発成分の付着が非常に多い
【0251】
(10)光弾性係数
He−Neレーザ、偏光子、補償板、検光子、光検出器からなる複屈折測定装置と振動型粘弾性測定装置(レオロジー社製DVE−3)を組み合わせた装置を用いて測定した。(詳細は、日本レオロジー学会誌Vol.19,p93−97(1991)を参照。)
ロール汚れ性評価の際と同様にして、単軸押出機とシート用ダイを用いて厚さ約100μmのシートを形成し、シートから幅5mm、長さ20mmの試料を切り出し、粘弾性測定装置に固定し、25℃の室温で貯蔵弾性率E’を周波数96Hzにて測定した。同時に、出射されたレーザ光を偏光子、試料、補償板、検光子の順に通し、光検出器(フォトダイオード)で拾い、ロックインアンプを通して角周波数ω又は2ωの波形について、その振幅とひずみに対する位相差を求め、ひずみ光学係数O’を求めた。このとき、偏光子と検光子の方向は直交し、またそれぞれ、試料の伸長方向に対してπ/4の角度をなすように調整した。
光弾性係数Cは、貯蔵弾性率E’とひずみ光学係数O’を用いて次式より求めた。
C=O’/E’
【0252】
<イソソルビドの蒸留>
ここで、複素環含有ポリカーボネート樹脂A、Bの製造に用いたイソソルビドの蒸留方法は次の通りである。
イソソルビドを蒸留容器に投入した後、徐々に減圧を開始後、加温を行い、内温約100℃で溶解した。その後、内温160℃にて溜出を開始した。このときの圧力は133〜266Paであった。初溜を取った後、内温160〜170℃、塔頂温度150〜157℃、133Paで蒸留を実施した。蒸留終了後、アルゴンを入れ、常圧に戻した。得られた蒸留品をアルゴン気流下で冷却粉砕し、蒸留精製したイソソルビドを得た。これを、アルミラミネート袋に窒素気流下で、エージレス(三菱ガス化学株式会社製)を同封して室温にてシール保管した。
【0253】
(実施例1〜実施例7)
(複素環含有ポリカーボネート樹脂A−1の製造)
蒸留したイソソルビド(ISB)54,220重量部に対して、トリシクロデカンジメタノール(以下「TCDDM」と略記する。)31,260重量部、ジフェニルカーボネート(DPC)117,957重量部、及び触媒として、炭酸セシウム2.2×10−1重量部を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて撹拌しながら、原料を溶解させた(約15分間)。
次いで、圧力を常圧から13.3kPaに40分間で減圧し、加熱槽温度を190℃まで40分で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
【0254】
反応容器全体を190℃で15分間保持した後、第2段目の工程として、加熱槽温度を240℃まで、30分間で上昇させた。昇温に入ってから10分後に、反応容器内の圧力を30分間で0.200kPa以下とし、発生するフェノールを溜出させた。所定の撹拌トルクに到達後、反応を停止し、重合機出口より溶融状態のポリカーボネート樹脂を3ベントおよび注水設備を供えた二軸押出機に連続的に供給した。
二軸押出機にて、表1に示した組成となるように各添加剤を連続的に添加するとともに、各ベント部にてフェノールなどの低分子量物を注水脱揮したのち、ペレタイザーによりペレット化を行い、イソソルビド(ISB)/TCDDM=70/30(mol%比)の複素環含有ポリカーボネート樹脂A−1を得た(「PC樹脂A−1」と記す。)。
図1に、複素環含有ポリカーボネート樹脂A−1のH−NMRチャートを示す。
【0255】
(複素環含有ポリカーボネート樹脂B−1の製造)
イソソルビド(ISB)73,070重量部に対して、ジフェニルカーボネート(DPC)109,140重量部、及び触媒として、炭酸セシウム2.0×10−1重量部を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて撹拌しながら、原料を溶解させた(約15分間)。
次いで、圧力を常圧から13.3kPaに40分間で減圧し、加熱槽温度を190℃まで40分間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
【0256】
反応容器全体を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、加熱槽温度を240℃まで、30分間で上昇させた。昇温に入ってから10分後に、反応容器内の圧力を30分間で0.200kPa以下とし、発生するフェノールを溜出させた。所定の撹拌トルクに到達後、反応を停止し、重合機出口より溶融状態のポリカーボネート樹脂を3ベントおよび注水設備を供えた二軸押出機に連続的に供給した。
二軸押出機にて、表1に示した組成となるように各添加剤を連続的に添加するとともに、各ベント部にてフェノールなどの低分子量物を注水脱揮したのち、ペレタイザーにより複素環含有ポリカーボネート樹脂B−1のペレットを得た(「PC樹脂B−1」と記す。)。
【0257】
(複素環含有ポリカーボネート樹脂C−1の製造)
蒸留したイソソルビド(ISB)59,630重量部に対して、1,4−シクロヘキサンジメタノール(以下「CHDM」と略記する。)25,218重量部、ジフェニルカーボネート(DPC)124,867重量部、及び触媒として、炭酸セシウム2.4×10−1重量部を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて撹拌しながら、原料を溶解させた(約15分間)。
次いで、圧力を常圧から13.3kPaに40分間で減圧し、加熱槽温度を190℃まで40分で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
【0258】
反応容器全体を190℃で15分間保持した後、第2段目の工程として、加熱槽温度を240℃まで、30分間で上昇させた。昇温に入ってから10分後に、反応容器内の圧力を30分間で0.200kPa以下とし、発生するフェノールを溜出させた。所定の撹拌トルクに到達後、反応を停止し、重合機出口より溶融状態のポリカーボネート樹脂を3ベントおよび注水設備を供えた二軸押出機に連続的に供給した。
二軸押出機にて、表1に示した組成となるように各添加剤を連続的に添加するとともに、各ベント部にてフェノールなどの低分子量物を注水脱揮した後、ペレタイザーによりペレット化を行い、イソソルビド(ISB)/CHDM=70/30(mol%比)の複素環含有ポリカーボネート樹脂Cを得た(「PC樹脂C−1」と記す。)。
結果を表1に示す。尚、表1中に表記したモノマー、酸化防止剤、酸性化合物は以下の通りである。
【0259】
(モノマー)
ISB:イソソルビド
TCDDM:トリシクロデカンジメタノール
BPA:ビスフェノールA
CHDM:シクロヘキサンジメタノール
【0260】
(酸化防止剤)
イルガノックス259:1,6−ヘキサンジオール−ビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)
イルガノックス1010:ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)
アデカスタブPEP−4C:ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(株式会社アデカ製)
アデカスタブPEP−8:ジステアリル−ペンタエリスリトールジホスファイト(株式会社アデカ製)
アデカスタブPEP−36:ビス(2,6−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト)(株式会社アデカ製)
イルガフォス168:トリス(2,4−ジ−tertブチルフェニル)ホスファイト(株式会社アデカ製)
【0261】
(酸性化合物)
p−トルエンスルホン酸ブチル:東京化成株式会社製
【0262】
【表1】

【0263】
表1に示す結果から、イソソルビド(ISB)、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)とジフェニルカーボネート(DPC)との重縮合により得られ、前述した構造式(2)で表される末端基(二重結合末端)を7%以下の範囲で含むポリカーボネート樹脂を用いたポリカーボネート樹脂組成物は(実施例1〜実施例7)、射出成形評価における通常成形ΔYIおよび成形滞留ΔYIが小さい値を示し、外観上の着色が少なく透明性に優れた材料であることが分かる。
【0264】
(比較例1〜比較例8)
前述した複素環含有ポリカーボネート樹脂A−1、複素環含有ポリカーボネート樹脂B−1、複素環含有ポリカーボネート樹脂C−1の製造において、製造条件を変更し、二重結合末端割合が7%を超える複素環含有ポリカーボネート樹脂A−2、複素環含有ポリカーボネート樹脂B−2、複素環含有ポリカーボネート樹脂C−2をそれぞれ得た(「PC樹脂A−2」、「PC樹脂B−2」、「PC樹脂C−2」とそれぞれ記す。)。
特に、比較例2、比較例5、比較例8は、それぞれ、PC樹脂A−1、PC樹脂B−1、PC樹脂C−1のそれぞれの製造に際し、第2段目の加熱槽温度を280℃に昇温し、それ以外は同様の操作を行った後、二軸押出機にて表2に記載した配合剤を添加しそれぞれ混練した。
比較例3は、PC樹脂A−1の製造に際し、ジフェニルカーボネート(DPC)を115,688重量部に減量し、さらに第2段目の加熱槽温度を280℃に昇温し、それ以外は同様の操作を行った後、二軸押出機にて表2に記載した配合剤を添加しそれぞれ混練した。
比較例6は、PC樹脂B−1の製造に際し、ジフェニルカーボネート(DPC)を107,102重量部に減量し、さらに第2段目の加熱槽温度を280℃に昇温し、それ以外は同様の操作を行った後、二軸押出機にて表2に記載した記載した配合剤を添加しそれぞれ混練した。結果を表2に示す。
【0265】
【表2】

【0266】
表2に示す結果から、二重結合末端の割合が過度に多いポリカーボネート樹脂を用いたポリカーボネート樹脂組成物は(比較例1〜比較例8)、射出成形評価における成形滞留ΔYIが大きい値を示し、外観上の着色が多く透明性が損なわれた材料であることが分かる。
【0267】
(実施例8〜実施例14)
複素環含有ポリカーボネート樹脂A−1(PC樹脂A−1)、複素環含有ポリカーボネート樹脂B−1(PC樹脂B−1)、前述した酸化防止剤、酸性化合物を使用し、表3に示す配合により調製したポリカーボネート樹脂組成物について、各種評価を行った。結果を表3に示す。
【0268】
【表3】

【0269】
表3の結果から、ISB又はTCDDMに由来する構成単位を含み、炭酸ジエステルの含有量が0.1ppm〜60ppmであり、残留フェノール量が700ppm以下であり、残留モノマー(ISB又はTCDDM)量が60ppm以下であるポリカーボネート樹脂(実施例8〜実施例14)は、耐熱性、透明性に優れることが分かる。
【0270】
(実施例15)
実施例15については、複素環含有ポリカーボネート樹脂A−1の製造において、ジフェニルカーボネート量120,225重量部を使用したことに加え、二軸押出機にて注水せずに真空脱揮のみを行うことに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、残留炭酸ジエステルの含有量が60ppmを超え、かつ残留フェノール量が700ppmを越えるポリカーボネート樹脂A−3を得た(PC樹脂A−3)。
【0271】
(実施例16)
実施例16については、複素環含有ポリカーボネート樹脂A−1の製造において、ジフェニルカーボネート量115,688重量部を使用したことに加え、二軸押出機にて注水せずに真空脱揮のみを行うことに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、イソソルビドの含有量が60ppmを超え、かつ残留フェノール量が700ppmを越えるポリカーボネート樹脂A−4を得た(PC樹脂A−4)。
【0272】
(実施例17)
実施例17については、二軸押出機にて注水せずに真空脱揮のみを行うことに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、残留フェノール量が700ppmを越えるポリカーボネート樹脂A−5を得た(PC樹脂A−5)。
【0273】
(比較例9)
比較例9については、複素環含有ポリカーボネート樹脂A−1の製造において、ジフェニルカーボネート量115,688重量部を使用したことに加え、第2段目の加熱槽温度を280℃に昇温した以外は同様の操作を行った後、二軸押出機にて注水せずに真空脱揮のみを行うことに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、イソソルビドの含有量が60ppm、残留フェノール量が700ppmをいずれも越え、かつ二重結合末端の割合が7%を超えるポリカーボネート樹脂A−6を得た(PC樹脂A−6)。
【0274】
(比較例10〜比較例12)
(複素環を含まないポリカーボネート樹脂Dの製造)
ビスフェノールA91,200重量部に対して、ジフェニルカーボネート89,024重量部、及び触媒として、炭酸セシウム4.0×10−2重量部を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて撹拌しながら、原料を溶解させた(約15分間)。
次いで、圧力を常圧から13.3kPaに40分間で減圧し、加熱槽温度を190℃まで40分間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
【0275】
反応容器全体を190℃で15分間保持した後、第2段目の工程として、加熱槽温度を250℃まで、30分間で上昇させた。昇温に入ってから10分後に、反応容器内の圧力を30分間で0.200kPa以下とし、発生するフェノールを溜出させた。所定の撹拌トルクに到達後、反応を停止し、重合機出口より溶融状態のポリカーボネート樹脂を3ベントおよび注水設備を供えた二軸押出機に連続的に供給した。
二軸押出機にて、表4に示した組成となるように各添加剤を連続的に添加するとともに、各ベント部にてフェノールなどの低分子量物を注水脱揮したのち、ペレタイザーにより複素環を含まないポリカーボネート樹脂D−1のペレットを得た(「PC樹脂D−1」と記す。)。
尚、比較例12は、ポリカーボネート樹脂Dの製造に際し、二軸押出機にて注水せずに真空脱揮のみを行うことに変更し、それ以外は実施例1と同様な操作にてポリカーボネート樹脂D−2を得た(「PC樹脂D−2」と記す。)。結果を表4に示す。
【0276】
【表4】

【0277】
表3および表4の結果から、二重結合末端割合が7%を超える場合(比較例9)は、成形着色、外観不良率、ロール付着量、欠点数に劣ることが分かる。
また、ISB又はTCDDMに由来する構成単位を含まないポリカーボネート樹脂(比較例10〜比較例12)は、光弾性係数が大きいことが分かる。本発明のポリカーボネート樹脂に限り、光弾性係数が低く、しかも外観不良率、ロール付着量、欠点数とも良好なものとなる。
また、実施例同士を比較すれば、ISB又はTCDDMに由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂であって、残留フェノール量が700ppmを超えるもの(実施例15〜実施例17)は、残留モノマー(ISB又はTCDDM)量が60ppm以下であっても、また、炭酸ジエステルの含有量が0.1ppm〜60ppmであっても、外観不良率、ロール付着量、欠点数に劣ることが分かる。
【0278】
(実施例18〜実施例21)
複素環含有ポリカーボネート樹脂A−1(PC樹脂A−1)、酸化防止剤、下記離型剤を使用し、表5に示す配合により調製したポリカーボネート樹脂組成物について、各種評価を行った。結果を表5に示す。
【0279】
(実施例22〜実施例24)
実施例22には、前述した複素環含有ポリカーボネート樹脂A−1(PC樹脂A−1)を製造する際に用いた二軸押出機にて、注水せずに真空脱揮のみを行うことにより得られた複素環含有ポリカーボネート樹脂A−7(「PC樹脂A−7」と記す。)を用いた。
実施例23には、前述した複素環含有ポリカーボネート樹脂A−1(PC樹脂A−1)を製造する際に用いたジフェニルカーボネートの量を115,688重量部にした以外は、PC樹脂A−1の製造と同様にして得られた複素環含有ポリカーボネート樹脂A−8(「PC樹脂A−8」と記す。)を用いた。
【0280】
実施例24には、前述した複素環含有ポリカーボネート樹脂A−1(PC樹脂A−1)を製造する際の第2段目の加熱槽温度を280℃とした以外は、PC樹脂A−1の製造と同様にして得られた複素環含有ポリカーボネート樹脂A−9(「PC樹脂A−9」と記す。)を用いた。
PC樹脂A−1、PC樹脂A−7、PC樹脂A−8、PC樹脂A−9、酸化防止剤、下記離型剤を使用し、表5に示す配合により調製したポリカーボネート樹脂組成物について、各種評価を行った。結果を表5に示す。
【0281】
(離型剤)
NAA−180:ステアリン酸(日本油脂株式会社製)
ゴールデンブランドパウダー:サラシミツロウ(三木化学工業株式会社製)
パラフィンワックス155:パラフィンワックス(日本精鑞株式会社製)
【0282】
【表5】

【0283】
表5に示す結果から、実施例同士を比較しても、イソソルビド(ISB)、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)とジフェニルカーボネート(DPC)との重縮合により得られ、前述した構造式(2)で表される末端基(二重結合末端)を7%以下のものは、ΔYIが小さく、優れた材料であることが分かる。
そして、実施例同士を比較すれば、フェニル基末端の割合が20%以上の範囲であるポリカーボネート樹脂を用いたポリカーボネート樹脂組成物(実施例18〜実施例22)は、ΔYIがより小さく、優れた材料であることが分かる。さらに、離型剤を用いたポリカーボネート樹脂組成物(実施例18〜実施例20)は、離型性が良好で、金型付着物が少なく、優れた材料であることが分かる。
【0284】
<無機充填剤を配合したポリカーボネート樹脂組成物>
<ポリカーボネート樹脂の調製>
(複素環含有ポリカーボネート樹脂A−10)
蒸留したイソソルビド(ISB)54,220重量部に対して、トリシクロデカンジメタノール(以下「TCDDM」と略記する。)31,260重量部、ジフェニルカーボネート(DPC)117,957重量部、及び触媒として、炭酸セシウム2.2×10−1重量部を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて撹拌しながら、原料を溶解させた(約15分間)。
次いで、圧力を常圧から13.3kPaに40分間で減圧し、加熱槽温度を190℃まで40分で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
【0285】
反応容器全体を190℃で15分間保持した後、第2段目の工程として、加熱槽温度を240℃まで、30分間で上昇させた。昇温に入ってから10分後に、反応容器内の圧力を30分間で0.200kPa以下とし、発生するフェノールを溜出させた。所定の撹拌トルクに到達後、反応を停止し、重合機出口より溶融状態のポリカーボネート樹脂を3ベントおよび注水設備を供えた二軸押出機に連続的に供給した。
二軸押出機にて、表1に示した組成となるように各添加剤を連続的に添加するとともに、各ベント部にてフェノールなどの低分子量物を注水脱揮したのち、ペレタイザーによりペレット化を行い、イソソルビド(ISB)/TCDDM=70/30(mol%比)の複素環含有ポリカーボネート樹脂A−10を得た(「PC樹脂A−10」と記す。)。
【0286】
<ポリカーボネート樹脂組成物の物性評価>
(射出成形)
二軸押出機で混練調製したポリカーボネート樹脂のペレットを80℃で4時間予備乾燥し、次いで、このペレットと各種添加剤とを射出成形機(日本製鋼所製J75EII型)に投入し、シリンダー温度230℃、成形サイクル45秒、金型温度60℃の条件にて射出成形を行い、各種試験片を作成した。
【0287】
(曲げ弾性率)
射出成形機を用いて調製した試験片について、ISO 178に準拠した曲げ試験法に従い、3点曲げ試験を行った。
【0288】
(金型付着物)
各ポリカーボネート樹脂組成物について、上記射出成形条件にて、長さ60mm×幅60mm×厚さ3mmの平板を各100ショット成形し、成形中の離型不良発生の有無と、成形後の固定側金型の付着物量を目視により観察した。
【0289】
(成形滞留ΔYI)
各ポリカーボネート樹脂組成物について、上述した射出成形条件において成形サイクルを300秒に変更し、それ以外は同様な条件で、長さ60mm×幅60mm×厚さ3mmの平板を各10ショット成形し、試験片を調製した。
次に、調製した各試験片について、分光色差計(日本電色工業株式会社製 SE−2000)により、C光源反射法にてイエローインデックス(YI)値を測定した(300秒サイクル成形品YI)。
この300秒サイクル成形品YIと、成形サイクルを45秒にて射出成形した試験片のイエローインデックス(YI)値(45秒サイクル成形品YI)とから、下記式に従って、成形滞留ΔYIを算出した。
成形滞留ΔYI=(300秒サイクル成形品YI)−(45秒サイクル成形品YI)
【0290】
(実施例25〜実施例28)
実施例27には、前述したPC樹脂A−10の製造において、二軸押出機にて注水せずに真空脱揮のみを行うことに変更した以外は同様の操作を行って得られた複素環含有ポリカーボネート樹脂A−11(PC樹脂A−11と記す。)を用いた。
実施例28には、PC樹脂A−10の製造において、ジフェニルカーボネート量を115,688重量部に変更した以外は同様の操作を行って得られた複素環含有ポリカーボネート樹脂A−12(PC樹脂A−12と記す。)を用いた。
複素環含有ポリカーボネート樹脂A−10(PC樹脂A−10)、PC樹脂A−11、PC樹脂A−12、下記酸化防止剤、下記無機充填剤を使用し、表6に示す配合により調製したポリカーボネート樹脂組成物について、各種評価を行った。結果を表6に示す。
【0291】
(比較例13、比較例14)
比較例14には、PC樹脂A−10の製造において、第2段目の加熱槽の温度を280℃に変更した以外は同様の操作を行って得られた複素環含有ポリカーボネート樹脂A−13(PC樹脂A−13と記す。)を用いた。 前述した複素環含有ポリカーボネート樹脂A−10(PC樹脂A−10)、PC樹脂A−13、下記酸化防止剤、下記無機充填剤を使用し、表6に示す配合により調製したポリカーボネート樹脂組成物について、各種評価を行った。結果を表6に示す。
【0292】
(酸化防止剤)
(1)イルガノックス1010:ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)
(2)アデカスタブPEP−36:ビス(2,6−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト)(株式会社アデカ製)
(3)イルガフォス168:トリス(2,4−ジ−tertブチルフェニル)ホスファイト(株式会社アデカ製)
【0293】
(無機充填剤)
(1)ガラス繊維:ガラスストランド ECS03T−571(日本電気硝子株式会社製)
(2)炭素繊維:パイロフィルチョップドファイバー TR06U(三菱レイヨン株式会社製)
【0294】
【表6】

【0295】
表6に示す結果から、イソソルビド(ISB)、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)とジフェニルカーボネート(DPC)との重縮合により得られ、前述した構造式(2)で表される末端基(二重結合末端)を7%以下で、無機充填剤を1重量部以上100重量部以下含むポリカーボネート樹脂組成物は、高い曲げ弾性率を有しながら、しかも、成形滞留ΔYIが低く、着色の少ない優れた組成物であることが分かる。なかでも、実施例同士を比較すれば、フェニル基末端の割合が20%以上の範囲であるポリカーボネート樹脂を用いたポリカーボネート樹脂組成物(実施例25〜28)では、成形対流ΔYIが小さく、さらに、残留炭酸ジエステルを60ppm以下含む場合は、金型付着物も少ないものとなり、優れた材料であることが分かる。
【0296】
<難燃剤を配合したポリカーボネート樹脂組成物>
<ポリカーボネート樹脂の調製>
(複素環含有ポリカーボネート樹脂A−14)
蒸留したイソソルビド(ISB)54,220重量部に対して、トリシクロデカンジメタノール(以下「TCDDM」と略記する。)31,260重量部、ジフェニルカーボネート(DPC)117,957重量部、及び触媒として、炭酸セシウム2.2×10−1重量部を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて撹拌しながら、原料を溶解させた(約15分間)。
次いで、圧力を常圧から13.3kPaに40分間で減圧し、加熱槽温度を190℃まで40分で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
【0297】
反応容器全体を190℃で15分間保持した後、第2段目の工程として、加熱槽温度を240℃まで、30分間で上昇させた。昇温に入ってから10分後に、反応容器内の圧力を30分間で0.200kPa以下とし、発生するフェノールを溜出させた。所定の撹拌トルクに到達後、反応を停止し、重合機出口より溶融状態のポリカーボネート樹脂を3ベントおよび注水設備を供えた二軸押出機に連続的に供給した。
二軸押出機にて、表1に示した組成となるように各添加剤を連続的に添加するとともに、各ベント部にてフェノールなどの低分子量物を注水脱揮したのち、ペレタイザーによりペレット化を行い、イソソルビド(ISB)/TCDDM=70/30(mol%比)の複素環含有ポリカーボネート樹脂A−14を得た(「PC樹脂A−14」と記す。)。
【0298】
<ポリカーボネート樹脂組成物の物性評価>
(射出成形)
二軸押出機で混練調製したポリカーボネート樹脂のペレットを80℃で4時間予備乾燥し、次いで、このペレットと各種添加剤とを射出成形機(日本製鋼所製J75EII型)に投入し、シリンダー温度230℃、成形サイクル45秒、金型温度60℃の条件にて射出成形を行い、各種試験片を作成した。
【0299】
(燃焼性)
二軸押出機で混練したペレットについて、80℃で4時間予備乾燥したペレットを日本製鋼所製J75EII型射出成形機で、シリンダー温度230℃、成形サイクル45秒、金型温度60℃の条件で、UL94規格に準じて1.5mmtの燃焼試験片を成形した。得られた試験片にて、UL94規格の垂直燃焼試験を行った。
【0300】
(実施例29〜31)
実施例31には、前述したPC樹脂A−14の製造において、二軸押出機にて注水せずに真空脱揮のみを行うことに変更した以外は同様の操作を行って得られた複素環含有ポリカーボネート樹脂A−15(「PC樹脂A−15」と記す。)を用いた。
複素環含有ポリカーボネート樹脂A−14(PC樹脂A−14)、PC樹脂A−15、下記酸化防止剤、下記難燃剤を使用し、表6に示す配合により調製したポリカーボネート樹脂組成物について、各種評価を行った。結果を表7に示す。
【0301】
(比較例15、16)
比較例16には、PC樹脂A−14の製造において、第2段目の加熱槽の温度を280℃に変更した以外は同様の操作を行って得られた複素環含有ポリカーボネート樹脂A−16(「PC樹脂A−16」と記す。)を用いた。
前述した複素環含有ポリカーボネート樹脂A−1(PC樹脂A−1)、PC樹脂A−3、下記酸化防止剤、下記難燃剤を使用し、表7に示す配合により調製したポリカーボネート樹脂組成物について、各種評価を行った。結果を表7に示す。
【0302】
(酸化防止剤)
(1)イルガノックス1010:ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)
(2)アデカスタブPEP−36:ビス(2,6−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト)(株式会社アデカ製)
(3)イルガフォス168:トリス(2,4−ジ−tertブチルフェニル)ホスファイト(株式会社アデカ製)
【0303】
(難燃剤)
(1)SPS−100:ホスファゼン化合物(大塚化学株式会社製)
(2)PX−200:芳香族縮合リン酸エステル(大八化学工業株式会社製)
【0304】
【表7】

【0305】
表7に示す結果から、イソソルビド(ISB)、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)とジフェニルカーボネート(DPC)との重縮合により得られ、前述した構造式(2)で表される末端基(二重結合末端)を7%以下であり、残存物の少ないポリカーボネート樹脂を用いたポリカーボネート樹脂組成物は(実施例29〜31)、金型付着物が多くなく、ΔYIが大きくなく、難燃性に優れた材料であることが分かる。
さらに、実施例同士を比較すると、残留炭酸ジエステルを60ppm含むポリカーボネート樹脂組成物(実施例29、30)は、金型付着物が増大することもなく、より優れた材料であることが分かる。
【0306】
<紫外線吸収剤を配合したポリカーボネート樹脂組成物>
<ポリカーボネート樹脂の調製>
(製造例1:複素環含有ポリカーボネート樹脂R−1)
蒸留したイソソルビド(ISB)54,220重量部に対して、トリシクロデカンジメタノール(以下「TCDDM」と略記する。)31,260重量部、ジフェニルカーボネート(DPC)117,957重量部、及び触媒として、炭酸セシウム2.2×10−1重量部を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて撹拌しながら、原料を溶解させた(約15分間)。 次いで、圧力を常圧から13.3kPaに40分間で減圧し、加熱槽温度を190℃まで40分で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
反応容器全体を190℃で15分間保持した後、第2段目の工程として、加熱槽温度を240℃まで、30分間で上昇させた。昇温に入ってから10分後に、反応容器内の圧力を30分間で0.200kPa以下とし、発生するフェノールを溜出させた。所定の撹拌トルクに到達後、反応を停止し、重合機出口より溶融状態のポリカーボネート樹脂を得た(PC樹脂R−1)。
【0307】
(製造例2:複素環含有ポリカーボネート樹脂R−2)
製造例1の第2段目の工程として、加熱槽温度を240℃から280℃に変更した以外は、製造例1と同様に行って得たポリカーボネート樹脂(PC樹脂R−2)を用いた。
【0308】
(製造例3:複素環含有ポリカーボネート樹脂R−3)
製造例1のDPC量を117,957質量部に代えて、115,688質量部に変更し、製造例2同様に、第2段目の工程として、加熱槽温度を240℃から280℃に変更した以外は、製造例1と同様に行って得たポリカーボネート樹脂(PC樹脂R−3)を用いた。
【0309】
(製造例4:複素環含有ポリカーボネート樹脂R−4)
イソソルビド(ISB)73,070重量部に対して、ジフェニルカーボネート(DPC)109,140重量部、及び触媒として、炭酸セシウム2.0×10−1重量部を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて撹拌しながら、原料を溶解させた(約15分間)。
次いで、圧力を常圧から13.3kPaに40分間で減圧し、加熱槽温度を190℃まで40分間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
反応容器全体を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、加熱槽温度を240℃まで、30分間で上昇させた。昇温に入ってから10分後に、反応容器内の圧力を30分間で0.200kPa以下とし、発生するフェノールを溜出させた。所定の撹拌トルクに到達後、反応を停止し、重合機出口より溶融状態のポリカーボネート樹脂(PC樹脂R−4)を用いた。
【0310】
(製造例5:複素環含有ポリカーボネート樹脂R−5)
製造例4の第2段目の工程として、加熱槽温度を240℃から280℃に変更した以外は、製造例1と同様に行って得たポリカーボネート樹脂(PC樹脂R−5)を用いた。
【0311】
(製造例6:複素環含有ポリカーボネート樹脂R−6)
製造例4のDPC量を109,140質量部に代えて、107,102質量部に変更し、製造例2同様に、第2段目の工程として、加熱槽温度を240℃から280℃に変更した以外は、製造例1と同様に行って得たポリカーボネート樹脂(PC樹脂R−6)を用いた。
【0312】
<ポリカーボネート樹脂組成物の物性評価>
(射出成形)
二軸押出機で混練調製したポリカーボネート樹脂のペレットを80℃で4時間予備乾燥し、次いで、このペレットと各種添加剤とを射出成形機(日本製鋼所製J75EII型)に投入し、シリンダー温度230℃、成形サイクル45秒、金型温度60℃の条件にて射出成形を行い、各種試験片を作成した。
【0313】
(耐光性評価)
シリンダー温度240℃で射出成形し、60mm×4mmtのシートを調製した。調製した各試験片について、分光色差計(日本電色工業株式会社製 SE−2000)により、C光源反射法にてイエローインデックス(YI)値を測定した(初期YI)。
次に、メタリングウェザーメーター(スガ試験機株式会社製 M6T)を使用し、各試験片について、放射照度1.5kW/m、槽内温度63℃,湿度50%にて20時間の照射処理を実施した。
その後、分光色差計(日本電色工業株式会社製 ZE−2000)を使用し、C光源透過法にて、黄色変色の指標として、イエローインデックス(YI)値を測定した(試験後のYI)。ΔYI=(試験後のYI)−(初期YI)
【0314】
(滞留安定性)
枝管付のガラス管にポリカーボネート樹脂30gを入れ、窒素で置換し、密閉し、250℃のオイルバスに8時間浸漬させた。その後、ポリカーボネート樹脂の還元粘度を測定した(浸漬後還元粘度(ηred)’)。次に、浸漬後還元粘度(ηred)’を、浸漬前のポリカーボネート樹脂の還元粘度(ηred)で除した割合を求めた(単位:%)。
【0315】
(実施例32)
得られた樹脂R−1に表8に記載した配合で、3ベントおよび注水設備を供えた二軸押出機に供給し、各ベント部にてフェノールなどの低分子量物を注水脱揮したのち、ペレタイザーによりペレット化を行って調製したポリカーボネート樹脂組成物について、各種評価を行った。結果を表8に示す。
【0316】
(実施例33〜実施例42)
表8に記載した配合とした以外は実施例32と同様に調製したポリカーボネート樹脂組成物について、各種評価を行った。結果を表8に示す。
【0317】
(比較例17〜比較例20)
表9に示す配合により調製したポリカーボネート樹脂組成物について、各種評価を行った。結果を表9に示す。
酸化防止剤、酸性化合物、紫外線吸収剤を以下に示す。
【0318】
(酸化防止剤)
(1)イルガノックス1010:ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)
(2)アデカスタブPEP−36:ビス(2,6−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト)(株式会社アデカ製)
(3)イルガフォス168:トリス(2,4−ジ−tertブチルフェニル)ホスファイト(株式会社アデカ製)
【0319】
(酸性化合物)
pTSB:p−トルエンスルホン酸ブチル(東京化成株式会社製)
【0320】
(紫外線吸収剤)
(1)UV−1:2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−〔(ヘキシル)オキシ〕−フェノール(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製、TINUVIN1577FF:分子量425)
(2)UV−2:2−エチル2’−エトキシオキサラニリド(クラリアント・ジャパン社製、HostavinVSU)
(3)UV−3:ジメチル(p−メトキシベンジリデン)マロネート(クラリアント・ジャパン社製、HostavinPR−25)
(4)UV−4:2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製、TINUVIN329:分子量323)
(5)UV−5:サリチル酸フェニル(エーピーアイコーポレーション社製、サリチル酸フェニル:分子量214)
(6)UV−6:エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート(BASFジャパン社製、Uvinul3035:分子量277)
【0321】
尚、使用した紫外線吸収剤の、波長210nmにおけるモル吸光係数(ε210)と波長250nmから波長350nmのモル吸光係数(ε250−350)の最大値との比(ε210/ε250−350)は、以下の通りである。
(1)UV−1:(ε210/ε250−350)=0.85
(2)UV−2:(ε210/ε250−350)=1.52
(3)UV−3:(ε210/ε250−350)=0.43
(4)UV−4:(ε210/ε250−350)=1.69
(5)UV−5:(ε210/ε250−350)=4.12
(6)UV−6:(ε210/ε250−350)=1.78
【0322】
【表8】

【0323】
【表9】

【0324】
表8、表9に示す結果から、イソソルビド(ISB)、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)とジフェニルカーボネート(DPC)との重縮合により得られ、前述した構造式(2)で表される末端基(二重結合末端)を有するポリカーボネート樹脂および紫外線吸収剤を用いたポリカーボネート樹脂組成物(実施例32〜42)は、耐光性に優れ、滞留安定性に優れた材料であることが分かる。
【0325】
<熱可塑性樹脂を配合したポリカーボネート樹脂組成物>
<ポリカーボネート樹脂の調製>
(製造例7:複素環含有ポリカーボネート樹脂R−7)
蒸留したイソソルビド(ISB)54,220重量部に対して、トリシクロデカンジメタノール(以下「TCDDM」と略記する。)31,260重量部、ジフェニルカーボネート(DPC)117,957重量部、及び触媒として、炭酸セシウム2.2×10−1重量部を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて撹拌しながら、原料を溶解させた(約15分間)。 次いで、圧力を常圧から13.3kPaに40分間で減圧し、加熱槽温度を190℃まで40分で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
反応容器全体を190℃で15分間保持した後、第2段目の工程として、加熱槽温度を240℃まで、30分間で上昇させた。昇温に入ってから10分後に、反応容器内の圧力を30分間で0.200kPa以下とし、発生するフェノールを溜出させた。所定の撹拌トルクに到達後、反応を停止し、重合機出口より溶融状態のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、酸性化合物としてp−トルエンスルホン酸ブチル0.0006質量部を、3ベントおよび注水設備を供えた二軸押出機に供給し、各ベント部にてフェノールなどの低分子量物を注水脱揮したのち、ペレタイザーによりペレット化を行い、ポリカーボネート樹脂R−7(以下「PC樹脂R−7」と記す)を得た。
得られたペレットの還元粘度は0.571dl/g、全末端に対する二重結合末端の割合は5.6%、フェニル基末端の割合は64%であった。
【0326】
(製造例8:複素環含有ポリカーボネート樹脂R−8)
製造例7の第2段目の工程として、加熱槽温度を240℃から280℃に変更した以外は、製造例7と同様に行い、ポリカーボネート樹脂R−8(以下「PC樹脂R−8」と記す)を得た。還元粘度は0.554dl/g、全末端に対する二重結合末端の割合は9.4%、フェニル基末端の割合は63%であった。
【0327】
(製造例9:複素環含有ポリカーボネート樹脂R−9)
製造例7のDPC量を117,957質量部に代えて、115,688質量部に変更し、製造例8同様に、第2段目の工程として、加熱槽温度を240℃から280℃に変更したことおよび酸性化合物としてpTSBを添加しなかった以外は、製造例7と同様に行い、ポリカーボネート樹脂R−9(以下「PC樹脂R−9」と記す)を得た。還元粘度は0.561dl/g、全末端に対する二重結合末端の割合は9.2%、フェニル基末端の割合は10%であった。
【0328】
(製造例10:複素環含有ポリカーボネート樹脂R−10)
イソソルビド(ISB)73,070重量部に対して、ジフェニルカーボネート(DPC)109,140重量部、及び触媒として、炭酸セシウム2.0×10−1重量部を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて撹拌しながら、原料を溶解させた(約15分間)。
次いで、圧力を常圧から13.3kPaに40分間で減圧し、加熱槽温度を190℃まで40分間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
反応容器全体を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、加熱槽温度を240℃まで、30分間で上昇させた。昇温に入ってから10分後に、反応容器内の圧力を30分間で0.200kPa以下とし、発生するフェノールを溜出させた。所定の撹拌トルクに到達後、反応を停止し、重合機出口より溶融状態のポリカーボネート樹脂100質量部に対して、酸性化合物としてpTSB0.0006質量部を、3ベントおよび注水設備を供えた二軸押出機に供給し、各ベント部にてフェノールなどの低分子量物を注水脱揮したのち、ペレタイザーによりペレット化を行い、ポリカーボネート樹脂R−10(以下「PC樹脂R−10」と記す)を得た。還元粘度は0.562dl/g、全末端に対する二重結合末端の割合は6.3%、フェニル基末端の割合は60%であった。
【0329】
(製造例11:複素環含有ポリカーボネート樹脂R−11)
製造例10の第2段目の工程として、加熱槽温度を240℃から280℃に変更した以外は、製造例10と同様に行い、ポリカーボネート樹脂R−11(以下「PC樹脂R−11」と記す)を得た。還元粘度は0.548dl/g、全末端に対する二重結合末端の割合は8.9%、フェニル基末端の割合は58%であった。
【0330】
使用した熱可塑性樹脂は、以下の通りである。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)(三菱エンプラ社製、商品名ノバデュラン5010)
非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂(PETG)(イーストマン・ケミカル・ジャパン社製、商品名EASTAR PETG 6763)
ビスフェノールAポリカーボネート(PC)(三菱エンプラ社製、商品名ノバレックス 7022J)
高密度ポリエチレン(HDPE)(日本ポリエチレン社製、商品名ノバテックHD HF410)
【0331】
<ポリカーボネート樹脂組成物の物性評価>
(射出成形)
二軸押出機で混練調製したポリカーボネート樹脂のペレットを80℃で4時間予備乾燥し、次いで、このペレットと各種添加剤とを射出成形機(日本製鋼所製J75EII型)に投入し、シリンダー温度230℃、成形サイクル45秒、金型温度60℃の条件にて射出成形を行い、各種試験片を作成した。
【0332】
(シートの色調(YI))
各実施例や比較例で得られたペレットを、射出成形機(日本製鋼所社製、形式:J75EII)にてシリンダー温度230℃、金型温度90℃で、60mm×4mmtのシートを得た。得られたシートを、分光色差計(日本電色工業株式会社製 ZE−2000)を使用し、C光源反射法にて、黄色変色の指標として、イエローインデックス(YI)値を測定した。
【0333】
(滞留安定性)
枝管付のガラス管に樹脂30gを入れ、窒素で置換した後密閉し、250℃のオイルバスに8時間浸漬させた。浸漬後の還元粘度を浸漬前の還元粘度で除した。
【0334】
(実施例43〜実施例46)
表10に示した配合で、ポリカーボネート樹脂と熱可塑性樹脂とを、脱気装置の付いた二軸混練機(テクノベル社製、KZW−15−30MG)を用いて、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量1kg/hで押出し、ペレットを得た。先述の評価方法に従い、シートの色調および滞留熱安定性を測定した。結果を表10に示した。
【0335】
(比較例21〜比較例25)
表11に示した配合で、実施例43と同様に混練し、ペレットを得た。評価結果を表11に示した。
【0336】
【表10】

【0337】
【表11】

【0338】
表10、表11に示す結果から、イソソルビド(ISB)、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)とジフェニルカーボネート(DPC)との重縮合により得られ、前述した構造式(2)で表される末端基(二重結合末端)を全末端に対して0.001%以上7%以下有するポリカーボネート樹脂を用いたポリカーボネート樹脂組成物は(実施例43〜実施例46)、シート色調において黄色変色が小さく、しかも、滞留安定性にも優れた材料であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの重縮合により得られるポリカーボネート樹脂であって、
下記構造式(2)で表される末端基を含み、
前記構造式(2)で表される末端基の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)が0.001%以上7%以下の範囲である
ことを特徴とするポリカーボネート樹脂。
【化1】

(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【化2】

【請求項2】
下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物60ppm以下を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂。
【化3】

(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【請求項3】
下記一般式(3)で表される炭酸ジエステル60ppm以下を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂。
【化4】

(一般式(3)において、A、Aは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族基または置換基を有していてもよい芳香族基であり、AとAは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項4】
炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物700ppm以下を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項5】
下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂であって、
炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が700ppm以下であり、且つ、前記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物の含有量が60ppm以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
【化5】

(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【請求項6】
下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂であって、
炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が700ppm以下であり、且つ、下記一般式(3)で表される炭酸ジエステルの含有量が0.1ppm以上60ppm以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
【化6】

(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【化7】

(一般式(3)において、A、Aは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族基または置換基を有していてもよい芳香族基であり、AとAは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項7】
前記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物の含有量が60ppm以下であることを特徴とする請求項6に記載のポリカーボネート樹脂。
【化8】

(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【請求項8】
下記構造式(2)で表される末端基の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)が0.001%以上7%以下の範囲であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂。
【化9】

【請求項9】
前記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物が、複素環基を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項10】
前記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物が、下記一般式(4)で表される複素環基を有する化合物であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂。
【化10】

【請求項11】
前記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と、下記一般式(3)で表される炭酸ジエステルとの重縮合により得られることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂。
【化11】

(一般式(3)において、A、Aは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族基または置換基を有していてもよい芳香族基であり、AとAは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項12】
さらに、下記構造式(5)で表される末端基の存在数(C)の全末端数(B)に対する割合(C/B)が20%以上の範囲であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂。
【化12】

【請求項13】
ガラス転移温度が90℃以上であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項14】
脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール、環状アセタール構造を有するジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する構成単位をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂100重量部と、
脂肪酸0.0001重量部以上2重量部以下と、
を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂100重量部と、
天然物系ワックス0.0001重量部以上2重量部以下と、
を含むことを特徴とする請求項15に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項17】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂100重量部と、
オレフィン系ワックス、シリコーンオイルから選ばれる少なくとも1種の化合物0.0001重量部以上2重量部以下と、
を含むことを特徴とする請求項15又は16に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項18】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂100重量部と、
酸性化合物0.0001重量部以上0.1重量部以下と、
を含むことを特徴とする請求項15乃至17のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項19】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂100重量部と、
リン系化合物0.001重量部以上1重量部以下と、
を含むことを特徴とする請求項15乃至18のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項20】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂100重量部と、
ブルーイング剤0.000001重量部以上1重量部以下と、
を含むことを特徴とする請求項15乃至19のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項21】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂100重量部と、
炭素数が5以上のアルキル基によって1つ以上置換された芳香族モノヒドロキシ化合物0.001重量部以上1重量部以下と、
を含むことを特徴とする請求項15乃至20のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項22】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂からなることを特徴とする光学フィルム。
【請求項23】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂又は請求項15乃至21のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなることを特徴とするポリカーボネート樹脂成形品。
【請求項24】
前記ポリカーボネート樹脂成形品が、射出成形法により成形されたものであることを特徴とする請求項23に記載のポリカーボネート樹脂成形品。
【請求項25】
下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの重縮合により得られ、且つ、下記構造式(2)で表される末端基の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)が、0.001%以上7%以下の範囲であるポリカーボネート樹脂100重量部と、
無機充填材1重量部以上100重量部以下と、
を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【化13】

(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【化14】

【請求項26】
下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含み、且つ炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が700ppm以下であり、且つ、前記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物の含有量が60ppm以下であるポリカーボネート樹脂100重量部と、
無機充填材1重量部以上100重量部以下と、
を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【化15】

(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【請求項27】
下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含み、且つ炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が700ppm以下であり、且つ、下記一般式(3)で表される炭酸ジエステルの含有量が0.1ppm以上60ppm以下であるポリカーボネート樹脂100重量部と、
無機充填材1重量部以上100重量部以下と、
を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【化16】

(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【化17】

(一般式(3)において、A、Aは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族基または置換基を有していてもよい芳香族基であり、AとAは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項28】
下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの重縮合により得られ、且つ、下記構造式(2)で表される末端基の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)が、0.001%以上7%以下の範囲であるポリカーボネート樹脂100重量部と、
難燃剤0.01重量部以上30重量部以下と、
を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【化18】

(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【化19】

【請求項29】
難燃剤が、燐含有化合物系難燃剤、ハロゲン含有化合物系難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項28に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項30】
下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含み、且つ炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が700ppm以下であり、且つ、前記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物の含有量が60ppm以下であるポリカーボネート樹脂100重量部と、
難燃剤0.01重量部以上30重量部以下と、
を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【化20】

(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【請求項31】
難燃剤が、燐含有化合物系難燃剤、ハロゲン含有化合物系難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項30に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項32】
下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含み、且つ炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が700ppm以下であり、且つ、下記一般式(3)で表される炭酸ジエステルの含有量が0.1ppm以上60ppm以下であるポリカーボネート樹脂100重量部と、
難燃剤0.01重量部以上30重量部以下と、
を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【化21】

(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【化22】

(一般式(3)において、A、Aは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族基または置換基を有していてもよい芳香族基であり、AとAは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項33】
難燃剤が、燐含有化合物系難燃剤、ハロゲン含有化合物系難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項32に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項34】
下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの重縮合により得られ、且つ、下記構造式(2)で表される末端基を含むポリカーボネート樹脂100重量部と、
紫外線吸収剤0.005重量部以上5重量部以下と、
を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【化23】

(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【化24】

【請求項35】
前記紫外線吸収剤が、波長210nmにおけるモル吸光係数と波長250nmから波長350nmのモル吸光係数の最大値との比が1.75未満であることを特徴とする請求項34に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項36】
前記紫外線吸収剤が、トリアジン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、マロン酸エステル系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項34又は35に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項37】
下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含み、且つ炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が700ppm以下であり、且つ、前記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物の含有量が60ppm以下であるポリカーボネート樹脂100重量部と、
紫外線吸収剤0.005重量部以上5重量部以下と、
を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【化25】

(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【請求項38】
前記紫外線吸収剤が、波長210nmにおけるモル吸光係数と波長250nmから波長350nmのモル吸光係数の最大値との比が1.75未満であることを特徴とする請求項37に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項39】
前記紫外線吸収剤が、トリアジン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、マロン酸エステル系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項37又は38に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項40】
下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含み、且つ炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が700ppm以下であり、且つ、下記一般式(3)で表される炭酸ジエステルの含有量が0.1ppm以上60ppm以下であるポリカーボネート樹脂100重量部と、
紫外線吸収剤0.005重量部以上5重量部以下と、
を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【化26】

(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【化27】

(一般式(3)において、A、Aは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族基または置換基を有していてもよい芳香族基であり、AとAは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項41】
前記紫外線吸収剤が、波長210nmにおけるモル吸光係数と波長250nmから波長350nmのモル吸光係数の最大値との比が1.75未満であることを特徴とする請求項40に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項42】
前記紫外線吸収剤が、トリアジン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、マロン酸エステル系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項40又は41に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項43】
下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの重縮合により得られ、且つ、下記構造式(2)で表される末端基の存在数(A)の全末端数(B)に対する割合(A/B)が、0.001%以上7%以下の範囲であるポリカーボネート樹脂10質量部〜90質量部と、
熱可塑性樹脂90質量部〜10質量部と、
を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【化28】

(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【化29】

【請求項44】
熱可塑性樹脂が、スチレン系樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びアクリル系樹脂より選ばれた少なくとも1種類であることを特徴とする請求項43に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項45】
下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含み、且つ炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が700ppm以下であり、且つ、前記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物の含有量が60ppm以下であるポリカーボネート樹脂10質量部〜90質量部と、
熱可塑性樹脂90質量部〜10質量部と、
を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【化30】

(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【請求項46】
熱可塑性樹脂が、スチレン系樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びアクリル系樹脂より選ばれた少なくとも1種類であることを特徴とする請求項45に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項47】
下記構造式(1)の結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含み、且つ炭素数が5以下であるアルキル基を有してもよい芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が700ppm以下であり、且つ、下記一般式(3)で表される炭酸ジエステルの含有量が0.1ppm以上60ppm以下であるポリカーボネート樹脂10質量部〜90質量部と、
熱可塑性樹脂90質量部〜10質量部と、
を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【化31】

(但し、構造式(1)中の酸素原子に水素原子は結合しない。)
【化32】

(一般式(3)において、A、Aは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族基または置換基を有していてもよい芳香族基であり、AとAは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項48】
熱可塑性樹脂が、スチレン系樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びアクリル系樹脂より選ばれた少なくとも1種類であることを特徴とする請求項47に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項49】
請求項25乃至48のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなることを特徴とするポリカーボネート樹脂成形品。
【請求項50】
ポリカーボネート樹脂成形品が、射出成形法により成形されたものであることを特徴とする請求項49に記載のポリカーボネート樹脂成形品。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−21171(P2011−21171A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269724(P2009−269724)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】